特許第6374908号(P6374908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カプコンの特許一覧

<>
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000002
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000003
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000004
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000005
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000006
  • 特許6374908-ゲームプログラムおよびゲームシステム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374908
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ゲームプログラムおよびゲームシステム
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/54 20140101AFI20180806BHJP
   H04S 5/02 20060101ALI20180806BHJP
   A63F 13/837 20140101ALI20180806BHJP
【FI】
   A63F13/54
   H04S5/02
   A63F13/837
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-120509(P2016-120509)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-221554(P2017-221554A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 一樹
【審査官】 大山 栄成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−102843(JP,A)
【文献】 特開2008−194208(JP,A)
【文献】 特開2001−275199(JP,A)
【文献】 特開2009−237680(JP,A)
【文献】 特開2006−230578(JP,A)
【文献】 特開2003−062327(JP,A)
【文献】 特開2007−236833(JP,A)
【文献】 特開2007−229241(JP,A)
【文献】 特開2012−257144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/00−13/98
A63F 9/24
H04S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間に配置した仮想カメラで撮影した画像をゲーム画面として表示する表示部と、前記仮想空間に配置された音源から発生する音を外部へ出力する音出力部と、コンピュータとを備えたゲームシステムにおいて前記コンピュータに実行させるゲームプログラムであって、
前記コンピュータを、
仮想空間を生成する仮想空間生成手段、
前記仮想空間に、所定の音の音源を配置する音源配置手段、
前記音源から所定の方向に延びる仮想線と、前記仮想空間における音の聴取位置と前記音源の位置とを結ぶ線分とのなす角度を算出する角度算出手段、
前記音源から発生する音を生成する音生成手段、および
前記角度に応じて前記音に対する音響処理を行う音処理手段として機能させ
前記所定の音の音源は、指向性のある音源として設定され、
前記指向性のある音源は、前記所定の方向へ飛翔体を発射する飛翔体発射部であり、
前記音出力部は、左右一対の音出力部を含み、
前記ゲームシステムは、前記仮想空間を行動するプレイヤキャラクタを操作する操作部を備え、
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータを、
ユーザによる前記操作部の操作に基づいて前記プレイヤキャラクタの行動を制御するキャラクタ制御手段、
前記プレイヤキャラクタに前記飛翔体が接触した場合に、前記飛翔体の接触に基づく効果音の再生を含む効果表現を行う効果表現実行手段として機能させ、
前記効果表現実行手段は、前記プレイヤキャラクタにおける前記飛翔体の接触位置にかかわらず、前記飛翔体の発射地点が前記プレイヤキャラクタの向いている方向を基準として左右何れの側に位置するかに応じて、前記左右一対の音出力部のうちの前記飛翔体の発射地点が位置している側の音出力部から出力される前記効果音の音量が他の音出力部から出力される前記効果音の音量より大きく出力されるように前記効果音を再生する、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記音処理手段は、前記角度が大きいほど前記音を減衰させる、請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記音処理手段は、前記音に、当該音の基準周波数以上をカットするローパスフィルタを適用することにより前記音響処理を行い、
前記基準周波数は、前記角度に応じて定められる、請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
請求項1からの何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えた、ゲームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想のゲーム空間でのキャラクタの動作を制御するゲームプログラムおよびゲームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクションゲームやロールプレイングゲームなど、ユーザの操作に応じてプレイヤキャラクタを仮想のゲーム空間内で動作させるゲームがある。このようなゲームにおいて、銃を用いて攻撃を行う場合に、銃声が聞こえることにより、相手の敵キャラクタ(他のユーザが操作するキャラクタまたはコンピュータにより制御されるノンプレイヤキャラクタ)にプレイヤキャラクタの位置が把握されるゲーム性を有するものがある。さらに、このようなゲームにおいては、銃声を低減させる効果のあるサイレンサ(サプレッサとも呼ばれる)を装着可能とし、当該サイレンサを装着した場合には銃を用いて攻撃を行っても敵キャラクタにプレイヤキャラクタの位置を把握し難くする効果を奏するような態様も知られている(例えば、Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)社、「コールオブデューティ」シリーズ等)。このように、実在の装備による実際の効果に応じたゲーム性を備えることにより、よりリアルなゲームが提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、単に音を小さくするだけでは現実に十分即したゲームを実現することができない場合がある。
【0004】
本発明は、より現実に即したゲーム性を提供することができるゲームプログラムおよびゲームシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一の態様に係るゲームプログラムは、仮想空間に配置した仮想カメラで撮影した画像をゲーム画面として表示する表示部と、前記仮想空間に配置された音源から発生する音を外部へ出力する音出力部と、コンピュータとを備えたゲームシステムにおいて前記コンピュータに実行させるゲームプログラムであって、前記コンピュータを、仮想空間を生成する仮想空間生成手段、前記仮想空間に、所定の音の音源を配置する音源配置手段、前記音源から所定の方向に延びる仮想線と、前記仮想空間における音の聴取位置と前記音源の位置とを結ぶ線分とのなす角度を算出する角度算出手段、前記音源から発生する音を生成する音生成手段、および前記角度に応じて前記音に対する音響処理を行う音処理手段として機能させる。
【0006】
前記音処理手段は、前記角度が大きいほど前記音を減衰させてもよい。
【0007】
前記音処理手段は、前記音に、当該音の基準周波数以上をカットするローパスフィルタを適用することにより前記音響処理を行い、前記基準周波数は、前記角度に応じて定められてもよい。
【0008】
前記所定の音の音源は、指向性のある音源として設定されてもよい。
【0009】
前記指向性のある音源は、前記所定の方向へ飛翔体を発射する飛翔体発射部であり、前記音出力部は、左右一対の音出力部を含み、前記ゲームシステムは、前記仮想空間を行動するプレイヤキャラクタを操作する操作部を備え、前記ゲームプログラムは、前記コンピュータを、ユーザによる前記操作部の操作に基づいて前記プレイヤキャラクタの行動を制御するキャラクタ制御手段、前記プレイヤキャラクタに前記飛翔体が接触した場合に、前記飛翔体の接触に基づく効果音の発生を含む効果表現を行う効果表現実行手段として機能させ、前記効果表現実行手段は、前記飛翔体の発射地点が前記プレイヤキャラクタの向いている方向を基準として左右何れの側に位置するかに応じて、前記左右一対の音出力部のうちの前記飛翔体の発射地点が位置している側の音出力部から出力される前記効果音の音量が他の音出力部から出力される前記効果音の音量より大きく出力されるように前記効果音を再生してもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るゲームシステムは、上記のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より現実に即したゲーム性を提供することができるゲームプログラムおよびゲームシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態におけるゲーム装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図1に示すゲーム装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態におけるゲーム中の仮想空間の一例を示す平面図である。
図4】本実施の形態における音響処理の角度θに対する音量の減衰を示すグラフである。
図5】本実施の形態の変形例における音響処理の対象となる音の波形にローパスフィルタを適用する際の概念を示すグラフである。
図6図5に示すローパスフィルタのカットオフ周波数の角度θに対する変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラムおよびゲームシステムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
[ゲーム概要]
以下の説明では、家庭用ゲーム装置において実行されるアクションゲームを例として説明する。本実施の形態に係るアクションゲームは、仮想のゲーム空間内で行動するプレイヤキャラクタを操作して、敵キャラクタを全滅させる、またはゲーム空間内の所定の位置に到達する等といった所定の目標を達成するために、敵キャラクタと戦うことにより進行する。
【0015】
本ゲームにおいては、ゲーム画面として、ユーザが操作可能なプレイヤキャラクタのゲーム空間上における位置周辺の画像が表示される。プレイヤキャラクタ自体は表示されてもよいし、表示されなくてもよい。ユーザによるプレイヤキャラクタの操作が可能となるゲーム本編の進行中においては、プレイヤの装備および操作等に応じて、後述するような、指向性のある音の音源が設定され、当該音源から指向性のある音(効果音)が再生される。
【0016】
[ハードウェア構成]
上述したゲームを実現するゲーム装置の構成について説明する。本実施の形態におけるゲームシステムは、下記ゲーム装置2と、当該ゲーム装置2に接続されるモニタ(表示部)19、スピーカ22およびコントローラ(操作部)24などの外部装置とで構成され、下記ディスク型記憶媒体30から読み込んだゲームプログラム30aおよびゲームデータ30bに基づいてゲームを行い得るものである。ただし、以下では、説明を簡単にするため、単にゲーム装置2と称する場合がある。
【0017】
図1は、本実施の形態におけるゲーム装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、ゲーム装置2は、他のゲーム装置2およびサーバ装置3との間で、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWを介して互いに通信可能である。このゲーム装置2は、その動作を制御するコンピュータであるCPU10を備え、このCPU10にはバス11を介してディスクドライブ12、メモリカードスロット13、プログラム記憶部を成すHDD14、ROM15およびRAM16が接続されている。
【0018】
また、CPU10には、バス11を介してグラフィック処理部17、オーディオ合成部20、無線通信制御部23およびネットワークインタフェース25が接続されている。
【0019】
このうちグラフィック処理部17は、CPU10の指示にしたがってゲーム空間および各キャラクタなどを含むゲーム画像を描画する。また、グラフィック処理部17にはビデオ変換部18を介して外部のモニタ19が接続されており、グラフィック処理部17にて描画されたゲーム画像はビデオ変換部18において動画形式に変換され、モニタ19にて表示されるようになっている。
【0020】
オーディオ合成部20は、CPU10の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生および合成する。また、オーディオ合成部20にはオーディオ変換部21を介して外部のスピーカ22が接続されている。したがって、オーディオ合成部20にて再生および合成されたゲーム音声は、オーディオ変換部21にてアナログ形式にデコードされ、さらにスピーカ22から外部へ出力されるようになっている。このスピーカ22が後述する音響処理後の音を外部へ出力する音出力部となる。なお、ゲーム音声は予め複数のスピーカ22から出力可能なステレオ出力またはサラウンド出力に対応するよう構成されている。このため、CPU10は、ゲーム音声を構成する各音データを、それぞれ何れのスピーカ22から出力するかについて所定のタイミング(例えば数フレームごと)に決定する。本実施の形態におけるスピーカ22は、少なくとも左右一対設けられ、ステレオ出力可能に構成される。
【0021】
さらに、オーディオ合成部20は、ゲーム装置2に接続されるヘッドセットやコントローラ24等に設けられたマイク26から入力されるユーザの音声等がオーディオ変換部21にてデジタル形式にコードされたデータを取得可能である。オーディオ合成部20は、取得したデータをCPU10に入力情報として伝えることができる。
【0022】
無線通信制御部23は、2.4GHz帯の無線通信モジュールを有し、ゲーム装置2に付属するコントローラ24との間で無線により接続され、データの送受信が可能となっている。ユーザは、このコントローラ24に設けられたボタン等の操作子を操作することにより、ゲーム装置2へ信号を入力することができ、モニタ19に表示されるプレイヤキャラクタの動作を制御可能になっている。また、ネットワークインタフェース25は、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWに対してゲーム装置2を接続するものであり、他のゲーム装置2またはサーバ装置3との間で通信可能である。そして、ゲーム装置2を、通信ネットワークNWを介して他のゲーム装置2と接続し、互いにデータを送受信することにより、同一のゲーム空間内で同期して複数のプレイヤキャラクタを表示させることができる。これにより、本ゲームにおいては、複数のユーザに対応する複数のプレイヤキャラクタが協同して敵キャラクタと戦う、または複数のユーザ同士が敵対して対戦する、マルチプレイが可能である。
【0023】
[ゲーム装置の機能的構成]
図2は、図1に示すゲーム装置2の機能的な構成を示すブロック図である。図1に示すようにゲーム装置2は、CPU10、HDD14、ROM15、RAM16、グラフィック処理部17、ビデオ変換部18、オーディオ合成部20、オーディオ変換部21、ネットワークインタフェース25などを含む制御部4を備えたコンピュータとして動作する。そして、図2に示すように、ゲーム装置2の制御部4は、本発明のゲームプログラム30aを実行することで、仮想空間生成手段41、音源配置手段42、角度算出手段43、音生成手段44、音処理手段45、キャラクタ制御手段46、効果表現実行手段47などの機能を発揮する。
【0024】
このうち、仮想空間生成手段41は、ユーザが操作するプレイヤキャラクタが行動する仮想空間(ゲーム空間)を生成する。仮想空間生成手段41は、キャラクタが動作する仮想のゲーム空間および当該ゲーム空間内で動作する各キャラクタを生成し、モニタ19に表示させる。例えば、仮想空間生成手段41は、プレイヤキャラクタの移動に伴って、ゲームデータ30bに含まれるオブジェクトおよびテクスチャなどのデータを読み出し、三次元の仮想ゲーム空間を生成する。さらに、仮想空間生成手段41は、ゲーム装置2のモニタ19にゲーム空間を表示するために、生成したゲーム空間に配置した所定の仮想カメラで撮影したときの二次元画像を生成し、モニタ19にゲーム画面として表示する。
【0025】
キャラクタ制御手段46は、少なくとも当該コンピュータを操作するユーザに対応するキャラクタ(プレイヤキャラクタ)の動作を、当該ユーザによるコントローラ24の操作入力またはゲームの進行状況に応じて制御する。プレイヤキャラクタは、コントローラ24を介して入力されるユーザの少なくとも1つの特定操作に基づいて、当該特定操作に定められた所定の行動を行う。キャラクタ制御手段46は、ユーザによるコントローラ24への入力操作に基づいて、特定操作が行われたと判断した場合に、プレイヤキャラクタに、対応する所定の行動を実行させる。さらに、キャラクタ制御手段46は、ゲーム空間にて行動するノンプレイヤキャラクタの動作を制御する。
【0026】
音生成手段44は、仮想空間に配置された音源から発生する音(効果音)を生成する。生成された音は、スピーカ22から出力される。仮想空間に配置されるオブジェクトの少なくとも一部は、音の発生源として設定されている。例えば、音の発生源に設定されるオブジェクトの位置が仮想カメラの視野内に位置した場合に、音の発生源から音が発生される。なお、これに限られず、音の発生源から音を発生させる領域は、仮想カメラの視野より広くてもよいし、狭くてもよいが、当該領域は、仮想空間内の所定位置に配置される音の聴取位置に基づいて定められる。また、音の発生源は、必ずしもオブジェクトに対応付けて設定されていなくてもよい。例えば、仮想空間の所定の位置座標に音の発生源が設定されてもよい。仮想空間に配置される音の発生源から発生した音は、音の聴取位置において検出され、ゲーム装置2のスピーカ22から出力される。
【0027】
音の発生源には、後述する音響処理の対象となる所定の音の音源が含まれる。当該所定の音は、音響処理が行われることにより、指向性のある音となる。このような指向性のある音の音源は、例えば、銃、弓、吹き矢等の所定の方向へ飛翔体を発射する飛翔体発射部、サイレン、メガホン、声等が含まれる。
【0028】
音源配置手段42は、仮想空間に、上記のような指向性のある音の音源を配置する。角度算出手段43は、当該音源の位置から所定の方向に延びる仮想線と、仮想空間における音の聴取位置と音源の位置とを結ぶ線分とのなす角度を算出する。音処理手段45は、角度算出手段43で算出された角度に応じて上記所定の音に対する音響処理を行う。
【0029】
また、効果表現実行手段47は、プレイヤキャラクタPLに弾等の飛翔体が接触した場合に、当該飛翔体の接触に基づく効果音の再生を含む効果表現を行う。
【0030】
[音響処理]
図3は、本実施の形態におけるゲーム中の仮想空間の一例を示す平面図である。図3に示すように、仮想空間Sには、プレイヤキャラクタPLが配置されるとともに、敵キャラクタE1が配置されている。プレイヤキャラクタPLはユーザのコントローラ24への操作に基づいて、歩いたり、所持する武器W1を使用する等の特定の行動を行う。敵キャラクタE1は、キャラクタ制御手段46によりその動作が制御され、プレイヤキャラクタPLに向かって移動する、武器W2を用いてプレイヤキャラクタPLに対して攻撃を行う等の特定の行動を行う。なお、図3の例ではプレイヤキャラクタPLと敵キャラクタE1との間には障害物(茂み)Zが設けられ、プレイヤキャラクタPLからは、敵キャラクタE1を視認し難い状況となっている。
【0031】
仮想空間S内においてプレイヤキャラクタPL近傍の所定位置(図3の例ではプレイヤキャラクタPLの後方)には、仮想空間Sを撮像するための仮想カメラVCが配置されており、ゲーム装置2のモニタ19には、仮想カメラVCにより撮像された仮想空間Sの二次元画像がゲーム画面として表示される。そして、本ゲームは、ユーザがゲーム画面を見ながら、プレイヤキャラクタPLを操作して敵キャラクタE1等と戦闘を行い、これを討伐するアクションゲームになっている。
【0032】
プレイヤキャラクタPLと仮想カメラVCとは位置関係が互いに関連付けられている。具体的には、仮想カメラVCは、プレイヤキャラクタPLに対して所定の距離だけ離れた状態を保持しており、平面視したときの視野は、仮想カメラVCとプレイヤキャラクタPLとを結ぶ線を中心軸として、左右に所定の角度を有するように設定されている。仮想カメラVCの視野内の仮想空間Sがゲーム画面に表示される。なお、仮想カメラVCは、通常、プレイヤキャラクタPLに所定距離離れた状態でプレイヤキャラクタPLの方向に視野の中心軸が来るように制御される。仮想カメラVCは、自動的にまたはコントローラ24への操作に応じてプレイヤキャラクタPLを中心に仮想カメラVCがプレイヤキャラクタPLへ向いた状態で三次元的に旋回可能に制御される。すなわち、仮想カメラVCの位置を水平方向だけでなく高さ方向にも変更可能に制御される。なお、コントローラ24への操作に応じて仮想カメラVCの位置をプレイヤキャラクタPLに対して変化させる(仮想カメラVCとプレイヤキャラクタPLとの相対距離を変化させる)ことも可能である。
【0033】
また、仮想空間Sに配置されるオブジェクトの少なくとも一部は、音の発生源として設定されている。例えば、音の発生源(に設定されるオブジェクト)の位置が仮想カメラVCの視野内に位置した場合に、音の発生源から音が発生される。なお、これに限られず、音の発生源から音を発生させる領域は、仮想カメラVCの視野より広くてもよいし、狭くてもよいが、当該領域は、音の聴取位置LCに基づいて定められる。また、音の発生源は、必ずしもオブジェクトに対応付けて設定されていなくてもよい。例えば、仮想空間Sの所定の位置座標に音の発生源が設定されてもよい。仮想空間Sに配置される音の発生源から発生した音は、仮想空間Sにおいて予め定められる音の聴取位置LPにおいて検出され、ゲーム装置2のスピーカ22から出力される。本実施の形態において、音の聴取位置LPは、プレイヤキャラクタPLの位置に一致しているが、これに限られず、例えば仮想カメラVCの位置に一致していてもよい。
【0034】
図3の例において、敵キャラクタE1の所持する武器W2は、サイレンサ付きのライフルであり、指向性のある音の音源として設定される。すなわち、音源配置手段42は、音響処理の対象となる所定の音の音源として所定の方向へ飛翔体(弾)を発射する飛翔体発射部である武器W2を配置する。音源配置手段42は、敵キャラクタE1の移動に応じて武器W2の位置を変化させる。敵キャラクタE1が向く方向が武器W2を構えたときの弾の発射方向となる。したがって、音源配置手段42は、音響処理の基準となる所定の方向(指向方向)を、敵キャラクタE1が向く方向であるd方向に設定する。サイレンサは、銃等の発射音を抑制(減衰)させるための効果をもたらす装置であると一般的に認識されているが、実際のサイレンサは、全体的に発射音が小さくなるわけではなく、銃口の向く方向、すなわち、指向方向dは、音が漏れるため、音の減衰効果が小さい。本実施の形態においては、このような実際のサイレンサと同様の音の減衰効果を得るために音響処理が行われる。
【0035】
角度算出手段43は、武器W2から指向方向dに延びる仮想線L1と、仮想空間Sにおける音の聴取位置LPと音源の位置BPとを結ぶ線分L2とのなす角度θを算出する。図3の例においては、θ=0°となる位置に位置するプレイヤキャラクタPLの音の聴取位置をLP(0°)とし、θ=n(0°<n<90°)となる位置に位置するプレイヤキャラクタPLの音の聴取位置をLP(n)とし、θ=90°となる位置に位置するプレイヤキャラクタPLの音の聴取位置をLP(90°)と表記している。そして、対応する線分L2をそれぞれ、LP(0°),LP(n),LP(90°)と表記している。
【0036】
音処理手段45は、敵キャラクタE1が武器W2による射撃を行う場合、角度算出手段43で算出された角度θに応じて、上記所定の音として設定されている武器W2の弾の発射音に対する音響処理を行う。より具体的には、例えば、音処理手段45は、角度θが大きいほど弾の発射音を減衰させる。減衰の態様としては、例えば音量を低下させる。この結果、角度θが0°に近いほど弾の発射音の音量が大きくなり、角度θが180°に近いほど弾の発射音の音量が小さくなる。図3の例においては、指向方向dを向いた敵キャラクタE1からみて左側(図3の紙面右側)の角度θのみ例示しているが、指向方向dを向いた敵キャラクタE1からみて右側(図3の紙面左側)の角度θに対しても同様の処理を行う。
【0037】
図4は、本実施の形態における音響処理の角度θに対する音量の減衰を示すグラフである。図4に示すように、角度θが0°の場合、すなわち、プレイヤキャラクタPLの位置が敵キャラクタE1の所持する武器W2の射線上にある場合、武器W2の弾の発射音が最大となり、角度θが180°に近づくほど音量が小さくなる(サイレンサの効果が大きくなる)ように設定されている。このため、例えば、音の聴取位置がLP(90°)に位置するプレイヤキャラクタPLには、武器W2の弾の発射音はほとんど聞こえない。また、音の聴取位置がLP(n)に位置するプレイヤキャラクタPLには、何かしらの音が聞こえるが、弾の発射音であることははっきりと特定し難い音量となっている。一方、音の聴取位置がLP(0°)に位置するプレイヤキャラクタPLには、弾の発射音がはっきりと聞こえ、プレイヤキャラクタPLが撃たれていることを認識することができる。
【0038】
このように、指向性のある音の音源から音が出る方向(武器W2から発射される弾の射線)dに対する音の聴取位置LPのなす角度θが大きいほど音の減衰効果が高くなり、角度θが小さいほど音の減数効果が低くなることにより、音響処理の対象である音に指向性を持たせることができる。これにより、音響処理の対象である武器W2に実際のサイレンサと同じ効果を与えることができ、より現実に即したゲーム性を提供することができる。例えば、本実施の形態のようにサイレンサが減衰する武器W2の弾の発射音を武器W2の正面では減衰しないまたは減衰の程度を抑えるようにし、側方ないし後方に行くほど減衰するようにすることにより、プレイヤキャラクタPLが正面に位置するほど敵キャラクタE1の武器W2による攻撃を気付き易くし、側方ないし後方に位置するほど気付き難くすることができる。
【0039】
また、サイレンサ付きの武器をプレイヤキャラクタPLが使用可能としてもよい。この場合、プレイヤキャラクタPLは、敵キャラクタの正面で弾を発射する場合には、敵キャラクタに気付かれ易いことを考慮してプレイヤキャラクタPLを操作することになる。したがって、単に全体的に消音化するような従来の態様に比べて、より戦略的なゲーム性を提供することができる。
【0040】
なお、図4では、角度θが増えるに従って音量が指数関数的に減少するような態様を例示したが、これに限られず、例えば、角度θが増えるに従って音量が直線的に減少する態様、または、段階的に(階段状に)減少する態様としてもよい。
【0041】
また、上記のような音響処理は、武器W2のような銃だけに限られず、例えば、吹き矢、弓矢等の所定の方向へ飛翔体を発射するその他の飛翔体発射部から発射される飛翔体の音、サイレンの音、メガホンを介した声、地声等についても同様に適用可能である。
【0042】
[変形例]
角度θが大きくなるほど音響処理の対象となる音(弾の発射音)を減衰させる例は、音量の低下だけに限られない。例えば、音処理手段45は、音響処理の対象となる音に、当該音の基準周波数(カットオフ周波数)fc以上をカットするローパスフィルタを適用することにより音響処理を行ってもよい。カットオフ周波数fcは、角度θに応じて定められる。
【0043】
図5は、本実施の形態の変形例における音響処理の対象となる音の波形にローパスフィルタを適用する際の概念を示すグラフである。図6は、図5に示すローパスフィルタのカットオフ周波数の角度θに対する変化を示すグラフである。図5に示すように、横軸である周波数fに対して音のスペクトル強度が縦軸として示されている。図5においては、角度θ=n1のときのカットオフ周波数fc(n1)を用いたローパスフィルタLPF1を実線で示し、角度θ=n2のときのカットオフ周波数fc(n2)を用いたローパスフィルタLPF2を破線で示している。角度n2は、角度n1より大きい角度である。このため、角度θが大きくなるほど、対象となる音の波形のうち、ローパスフィルタでカットされる周波数領域(おおよそカットオフ周波数より大きい周波数領域)が増える。すなわち、角度θが大きくなるほど、対象となる音の周波数成分が少なくなる。これにより、音響処理の対象となる音は、角度θが大きくなるほどよりこもった音(すなわち、高音部が遮断され、全体として低い音)になる。さらに、角度θが180°に近くなるほどカットオフ周波数fcが0に近づくため、音量自体も小さくなる。
【0044】
このように、角度θとカットオフ周波数fcとが関連付けられたローパスフィルタを適用して音響処理を行うことにより、角度θに応じて音質を変化させる音響処理を簡単な構成で行うことができる。
【0045】
なお、図6では、角度θが増えるに従ってカットオフ周波数fcが直線的に減少する態様を例示したが、これに限られず、例えば、図4と同様に、角度θが増えるに従ってカットオフ周波数fcが指数関数的に減少する態様、または、段階的に減少する態様としてもよい。
【0046】
また、音響処理の他の例として、音処理手段45は、歪み(ディストーション)等の音響効果の付加の程度を角度θに応じて変化させてもよい。角度θに対する音響効果の付加率(%)のグラフは、例えば図4の縦軸の音量(%)を付加率(%)に置き換えたグラフが適用される。この場合、角度θが小さくなるほど音響処理の対象となる音が歪んで迫力のある音になる一方、角度θが大きくなるほど音響処理の対象となる音が歪みのないクリーンな音(乾いた音)になり、存在感の小さい音になる。
【0047】
本実施の形態において、効果表現実行手段47は、プレイヤキャラクタPLに敵キャラクタE1が発射した武器W2の弾等の飛翔体が接触した場合に、当該飛翔体の接触に基づく効果音の再生を含む効果表現を行う。例えば、効果表現は、爆発音、血しぶきの発生音等の着弾によって生じる効果音(以下、着弾関連音)の再生、着弾による効果表示(ヒットマーク、血しぶき等の表示)、着弾したプレイヤキャラクタPLのリアクション(のけぞり等)等が含まれる。
【0048】
ここで、着弾関連音の再生に関して、効果表現実行手段47は、飛翔体の発射地点が、プレイヤキャラクタPLの向いている方向を基準として左右何れの側に位置するかに応じて、左右一対のスピーカ22(音出力部)のうちの飛翔体の発射地点が位置している側のスピーカから出力される着弾関連音の音量が他のスピーカから出力される着弾関連音の音量より大きく出力されるように着弾関連音を再生する。
【0049】
例えば、図3の例において、聴取位置LP(0°)に位置するプレイヤキャラクタPLに、敵キャラクタE1の武器W2から発射された弾が着弾した場合、当該弾は、プレイヤキャラクタPLが向いている方向eを基準として右側から発射されている。したがって、効果表現実行手段47は、左右一対のスピーカ22のうちの右側のスピーカから着弾関連音を再生する。あるいは、効果表現実行手段47は、左右一対のスピーカ22のうちの右側のスピーカから再生される着弾関連音を左側のスピーカから再生される着弾関連音に比べて大きくなるように着弾関連音を再生する。
【0050】
従来より、ゲームにおいて生じる効果音等の音を左右一対のスピーカ22のうちの何れか一方のみ再生する、または、何れか一方を他方に対して大きく再生する態様が知られている。例えば、ゲーム画面の右側でオブジェクトが爆発した場合、右側のスピーカ22から当該爆発音が再生される。このような態様において、プレイヤキャラクタPLに敵キャラクタE1の武器W2から発射された弾が着弾した場合、プレイヤキャラクタPLのゲーム画面における位置に応じて左右一対のスピーカ22のうちの対応する側のスピーカのみから着弾関連音を再生または対応する側のスピーカから出力される着弾関連音の音量を他のスピーカから出力される着弾関連音の音量より大きく再生すると、ユーザに違和感を生じさせ易い。
【0051】
このため、従来では着弾関連音は中央で発生した音として両方のスピーカ22から均等に再生されることがよく行われている。しかし、このような態様では、左右どちら側から撃たれた(弾が飛んできた)のか分からない。このような問題に対して、実際に生じる事象と同様に、プレイヤキャラクタPLへの着弾位置を基準にするということも考えられる。この場合、例えばプレイヤキャラクタPLの右半身に弾が着弾した場合、右側のスピーカから着弾関連音が再生される。しかし、プレイヤキャラクタPLの右半身に着弾したからといって必ずしもプレイヤキャラクタPLの右方(ゲーム画面の右側)から撃たれたとは限られず、プレイヤキャラクタPLの左方から撃たれた弾がプレイヤキャラクタPLの右半身に着弾することもあり得る。
【0052】
ところが、プレイヤキャラクタPLの左方から撃たれた弾がプレイヤキャラクタPLの右半身に着弾した場合に、右側のスピーカから着弾関連音を出力すると、ゲームをプレイするユーザには、右方から撃たれたと誤って感じる場合が多い問題がある。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、上述のように、プレイヤキャラクタPLにおける弾の着弾位置に依らず、プレイヤキャラクタPLの向きを基準とする弾の発射位置に応じて左右一対のスピーカ22のそれぞれにおける着弾関連音の音量を調整している。これにより、ゲームをプレイするユーザに弾の発射位置を着弾関連音から特定し易くすることができ、より現実に即したゲーム性を提供することができる。
【0054】
なお、本実施の形態において、武器W2から発射される弾の着弾音に関連する音(着弾関連音)に基づいて説明したが、プレイヤキャラクタPLに向かって飛んでくるその他の飛翔体(弓矢、ボール、鳥、飛行機等)についても当該その他の飛翔体がプレイヤキャラクタPLに接触した際に生じる音を再生する場合にも上記と同様の態様が適用され得る。また、音響処理は、角度θが大きくなるほど音が減衰するような処理に限られず、角度θが大きくなるほど音が増幅するような処理または音が負荷されるような処理も含まれる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0056】
例えば、上記実施の形態においては、音響処理を角度θが0°から180°まで全域で変化するように設定された例について説明したが、これに限られない。例えば、音処理手段45は、角度θが0°から所定の角度(例えばθ=30°)までの間は音響処理を行わなくてもよい。また、角度θが所定の角度(例えばθ=90°)以上の場合、音処理手段45は、上記音響処理を行う代わりに対象となる音を消音する処理を行ってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態においては、音響処理の具体例として3つの例として、音量を変化させる例、ローパスフィルタのカットオフ周波数を変化させる例、および、音響効果の付加の程度を変化させる例をそれぞれ示したが、これらを独立して用いる場合だけに限られず、複数の音響処理を組み合わせてもよい。複数の音響処理を組み合わせる場合、単に各グラフを並列して組み合わせてもよいし、音響処理を行う角度範囲を複数の音響処理のそれぞれについて異ならせてもよい。例えば角度θが0°からn1までの範囲は、歪みの程度を変化させる音響処理のみを行い、角度θがn1からn1より大きいn2までは歪みの程度の変化に加えてローパスフィルタのカットオフ周波数を変化させ、角度n2から180°までは2つの音響処理に加えて音量の変化も行うこととしてもよい。
【0058】
また、複数種類の音に対して音響処理を行う場合、音の種類ごとに異なる音響処理を適用してもよい。例えば、銃による弾の発射音には、ローパスフィルタのカットオフ周波数を変化させる音響処理を適用し、サイレン音には、歪みの程度を変化させる音響処理を適用してもよい。
【0059】
また、上記実施の形態においては、音響処理の対象となる音の音源と音の聴取位置LPとの距離による当該音の減衰は考慮していない例を示したが、当該距離に応じた音の減衰処理を上記角度θに応じた音響処理と組み合わせてもよい。この場合、距離に応じた音の減衰処理と角度θに応じた音響処理とは同じ種類の音響処理としてもよいし異なる種類の音響処理としてもよい。例えば、距離に応じた音の減衰処理については、音量を変化させる音響処理を適用し、角度θに応じた音響処理についてはローパスフィルタのカットオフ周波数を変化させる音響処理を適用してもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では据え置き型のゲーム装置について説明したが、携帯型のゲーム装置、携帯電話機、およびパーソナルコンピュータなどのコンピュータについても、本発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明はより現実に即したゲーム性を提供するために有用である。
【符号の説明】
【0062】
2 ゲーム装置
30a ゲームプログラム
30b ゲームデータ
41 仮想空間生成手段
42 音源配置手段
43 角度算出手段
44 音生成手段
45 音処理手段
46 キャラクタ制御手段
47 効果表現実行手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6