特許第6374912号(P6374912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374912
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ヒュージブルリンクユニット
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/175 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   H01H85/175
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-133622(P2016-133622)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2017-33925(P2017-33925A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2017年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-151036(P2015-151036)
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−146135(JP,A)
【文献】 特開2010−199024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/00−85/62
H01H 37/76
H01H 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に並んだ複数の可溶部を有するヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられる可溶部カバーと、を備えたヒュージブルリンクユニットであって、
前記ハウジングは、
前記配列方向と交差する交差方向に該ハウジングを貫通した窓部を有すると共に、前記窓部の内側に前記複数の可溶部を収容し、
前記可溶部カバーは、
透明な板状の第1カバーであって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部の一方の開口部を塞ぐ第1カバー、及び、
不透明な板状の第2カバーであって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部の他方の開口部を塞ぐ第2カバー、を含み、
前記第1カバーの前記配列方向における長さと、前記第2カバーの前記配列方向における長さと、が異なる、
ヒュージブルリンクユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーの前記配列方向における長さが、前記第2カバーの前記配列方向における長さよりも短い、
ヒュージブルリンクユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第2カバーが、
繊維強化樹脂の成形体であると共に、該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有する、
ヒュージブルリンクユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーが、
該第1カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有し、
前記第2カバーが、
該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有し、
前記ハウジングが、
前記窓部の前記配列方向における両端の近傍に、前記第1カバーのロック部に対応する被ロック部と、前記第2カバーのロック部に対応する被ロック部と、が隣接するように配置された被ロック領域を有する、
ヒュージブルリンクユニット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーと前記可溶部との前記交差方向における距離が、前記第2カバーと前記可溶部との前記交差方向における距離よりも大きい、
ヒュージブルリンクユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と負荷との間(例えば、車載バッテリと各種機器との間)に設けられるヒュージブルリンクユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載バッテリに直接に取り付けられるヒュージブルリンクユニット(ヒューズユニットとも称呼される。)が知られている。この種のヒュージブルリンクユニットは、一般に、絶縁樹脂製のハウジングと、ハウジングに収容されたヒューズエレメント(車載バッテリに接続されるバスバー、可溶部および端子などを含む導電性部材)と、を備えている。ヒューズエレメントの可溶部(溶断部)は、定格以上の電流が同エレメントを流れた際に溶断するようになっている。
【0003】
例えば、従来のヒュージブルリンクユニットの一つ(以下「従来ユニット」という。)は、ハウジング外装の溶断部に対応する位置に開口部を有すると共に、ハウジング外装に被せたスライド式のカバーにも開口部を有している。従来ユニットにおいては、必要に応じて双方の開口部が重なるようにカバーをスライドさせることにより、重なった開口部を通じてハウジング内部の溶断部を視認できるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−108783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来ユニットは、スライド式のカバーを採用することにより、ハウジングの内部を視認するための開口部(ハウジングの開口部)を開閉可能となっている。しかし、カバーの移動を実現するための機構(例えば、スライド方向を規制するための機構、及び、所定のスライド位置においてカバーを固定する機構など)は、一般に、複雑な形状を有する。そのため、従来ユニットは、低コストでの製造が困難であると考えられる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒューズエレメントの可溶部を外部から視認可能であると共に、製造コストを出来る限り低減可能なヒュージブルリンクユニット、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るヒュージブルリンクユニットは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1)
所定の配列方向に並んだ複数の可溶部を有するヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントを収容するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられる可溶部カバーと、を備えたヒュージブルリンクユニットであって、
前記ハウジングは、
前記配列方向と交差する交差方向に該ハウジングを貫通した窓部を有すると共に、前記窓部の内側に前記複数の可溶部を収容し、
前記可溶部カバーは、
透明な板状の第1カバーであって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部の一方の開口部を塞ぐ第1カバー、及び、
不透明な板状の第2カバーであって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部の他方の開口部を塞ぐ第2カバー、を含み、
前記第1カバーの前記配列方向における長さと、前記第2カバーの前記配列方向における長さと、が異なる、
ヒュージブルリンクユニットであること。
(2)
上記(1)に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーの前記配列方向における長さが、前記第2カバーの前記配列方向における長さよりも短い、
ヒュージブルリンクユニットであること。
(3)
上記(2)に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第2カバーが、
繊維強化樹脂の成形体であると共に、該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有する、
ヒュージブルリンクユニットであること。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーが、
該第1カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有し、
前記第2カバーが、
該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部を前記配列方向における両端に有し、
前記ハウジングが、
前記窓部の前記配列方向における両端の近傍に、前記第1カバーのロック部に対応する被ロック部と、前記第2カバーのロック部に対応する被ロック部と、が隣接するように配置された被ロック領域を有する、
ヒュージブルリンクユニットであること。
(5)
上記(1)〜上記(4)の何れか一つに記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバーと前記可溶部との前記交差方向における距離が、前記第2カバーと前記可溶部との前記交差方向における距離よりも大きい、
ヒュージブルリンクユニットであること。
【0008】
上記(1)の構成のヒュージブルリンクユニットによれば、可溶部カバー(第1カバー)が透明であるため、この第1カバーを通してヒューズエレメントの可溶部を外部から視認できる。更に、可溶部カバーの一方のみ(第1カバーのみ)が透明であるため、可溶部カバーの双方(第1カバー及び第2カバー)が透明である場合に比べ、一般に不透明材料に比べて高価な透明材料(例えば、透明樹脂)の使用量を低減できる。加えて、第1カバー及び第2カバーの配列方向における長さが異なるため、両者を容易に区別でき、可溶部カバーをハウジングへ取り付ける作業の効率を高められる。したがって、本構成のヒュージブルリンクユニットは、ヒューズエレメントの可溶部を外部から視認可能であると共に、製造コストを出来る限り低減可能である。
【0009】
ところで、従来ユニットは、その原理上、ヒュージブルリンクユニットの周辺にカバーをスライド可能な空間を必要とする。そのため、従来ユニットを車載バッテリ等に取り付ける際、取り付け位置が制限される可能性がある。これに対し、上記構成のヒュージブルリンクユニットは、カバーをスライドさせることなくヒューズエレメントの可溶部を視認できる。よって、上記構成のヒュージブルリンクユニットは、従来ユニットに比べ、車載バッテリ等に取り付ける際の取り付け位置の自由度が高い。
【0010】
上記(2)の構成のヒュージブルリンクユニットによれば、透明な第1カバーの長さが不透明な第2カバーの長さよりも短いため、長短が逆の場合(第1カバーが第2カバーよりも長い場合)に比べ、一般に不透明材料に比べて高価な透明材料の使用量を低減できる。よって、本構成のヒュージブルリンクユニットは、製造コストを更に低減可能である。
【0011】
上記(3)の構成のヒュージブルリンクユニットによれば、不透明の第2カバーを繊維強化樹脂によって形成しているため、第2カバーの強度が高まり、特に第2カバーのロック部の破損をより確実に防止できる。一方、強度の向上に起因して第2カバーが撓み難くなるものの、第1カバーよりも第2カバーが長いため(上記(2)を参照。)、長短が逆の場合に比べて第2カバーが撓み易い。よって、本構成のヒュージブルリンクユニットは、第2カバーの強度を高めつつ、第2カバーをハウジングに取り付ける際の作業性を維持できる。更に、本構成のヒュージブルリンクユニットは、取り付け時の撓みに起因する内部応力をより広い範囲に分散できるため、取り付け時の第2カバーの破損をより確実に防止できる。
【0012】
上記(4)の構成のヒュージブルリンクユニットによれば、第1カバー及び第2カバーのロック部に対応する被ロック部が、ハウジングの所定位置(被ロック領域)に一纏めに設けられる。そのため、それら被ロック部が離れた位置に設けられる場合に比べ、ハウジングを成形する金型を単純化できる。よって、本構成のヒュージブルリンクユニットは、金型の製造コスト(ひいては、ヒュージブルリンクユニットの製造コスト)を低減できる。
【0013】
上記(5)の構成のヒュージブルリンクユニットによれば、透明な第1カバーと可溶部との距離が、不透明な第2カバーと可溶部との距離よりも大きい。換言すると、第1カバー(透明)が第2カバー(不透明)よりも可溶部から離れた位置に設けられる。そのため、距離の大小が逆の場合(第1カバーが第2カバーよりも可溶部に近い場合)に比べ、一般に不透明材料に比べて耐熱性に劣る透明材料(第1カバー)への可溶部からの放熱の影響を低減できる。よって、本構成のヒュージブルリンクユニットは、透明な第1カバーの変形および変色などをより確実に防止でき、可溶部を外部から視認可能な状態を長期間に亘って維持できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明な第1カバー及び不透明な第2カバーによってハウジングの窓部を塞ぐことにより、高価な透明材料の使用量を抑えつつ、ヒューズエレメントの可溶部を外部から視認できることになる。更に、可溶部の配列方向における第1カバー及び第2カバーの長さが異なるため、それらカバーを容易に区別でき、ハウジングへの取り付け作業の効率を高められる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るヒュージブルリンクユニットの使用状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1のヒュージブルリンクユニットの構成図であり、図2(a)は同ユニットを前方から見た斜視図であり、図2(b)は同ユニットを後方から見た斜視図である。
図3図3は、図1のヒュージブルリンクユニットの構成図であり、図3(a)は同ユニットを前方から見た正面図であり、図3(b)は同ユニットを後方から見た背面図である。
図4図4は、図3(a)のA−A断面図である。
図5図5(a)は透明樹脂製の前側カバーの三面図であり、図5(b)は不透明樹脂製の後側カバーの三面図である。
図6図6は、図3(a)のB−B断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係るヒュージブルリンクユニットの図3(a)に対応する断面図(一部拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図6を参照しながら、本発明の実施形態に係るヒュージブルリンクユニット1について説明する。
【0018】
図1に示すように、ヒュージブルリンクユニット1は、自動車等に搭載されるバッテリ100に直接取り付けられて使用される。ヒュージブルリンクユニット1は、バッテリ100の上面側に配置される水平ブロック部2と、水平ブロック部2の端縁から垂下されてバッテリ100の側面側に沿って配置される垂直ブロック部3と、を有している。垂直ブロック部3の下端部には、負荷に繋がる電線(図示省略)の端末に取り付けられたコネクタX1〜X4を接続するためのコネクタ部4が、横一列(正面から見て左右方向一列)に配置されている。以下、この左右方向を「配列方向」とも称呼する。更に、この配列方向に直交するように交差する方向(コネクタ部4の前後方向)を「交差方向」とも称呼する。
【0019】
なお、本実施形態では、垂直ブロック部3にコネクタX1〜X4が接続されることにより、垂直ブロック部3の内側に格納されている端子部53(図4を参照)と、コネクタX1〜X4に収容されている端子部(図示省略)と、が電気的に接続されることになる。しかし、両者の電気的接続の手法は、本手法に限定されない。例えば、垂直ブロック部3に格納されている端子部53に対し、電線の端末に取り付けられた端子(図示省略)がボルト及びナット等によって締結されることにより、両者が電気的に接続されてもよい。
【0020】
図2に示すように、ヒュージブルリンクユニット1は、絶縁樹脂製のハウジング10と、電源側の端子部51,52及び複数の負荷側の端子部53(図4を参照。)を外部に露出させた状態にてハウジング10の内部に主要部が埋設されたヒューズエレメント50(バスバー)と、を有している。なお、図1に示すように、電源側の端子部51にはバッテリポストに繋がる端子がボルト61を用いて接続され、別の電源側の端子部52には締め付けボルト62等を用いてオルタネータ等に繋がる端子63が接続される。
【0021】
ヒューズエレメント50(バスバー)は、金属板を打ち抜き加工した回路構成体で、このヒューズエレメント50を金型にセットした状態にてハウジング10をインサート成形することにより、ハウジング10と一体化されている。水平ブロック部2に相当するハウジング10側の部分は、水平な板状部12とされている。垂直ブロック部3に相当するハウジング10側の部分は、前後方向(本例では、交差方向と同じ方向)に厚みを有し前方から見て長方形状に形成された壁部13とされている。
【0022】
ヒューズエレメント50には、電源側の端子部51,52と負荷側の複数の端子部53との間をそれぞれ繋ぐ複数のヒューズ55(図6を参照。)が一体に形成されている。複数のヒューズ55(より詳細には可溶部56)は、上述した配列方向(本例では、ヒュージブルリンクユニット1を正面から見たときの左右方向)に並ぶように配置されている。ヒューズ55は、垂直ブロック部3を構成するハウジング10の壁部13の中に収容されている。負荷側の複数の端子部53は、垂直ブロック部3の下端のコネクタ部4の中にコネクタ端子として設けられており、ヒューズ55の下方に位置している。
【0023】
図4及び図6に示すように、ハウジング10のヒューズ55を収容した壁部13には、前側壁面14から後側壁面15まで貫通した窓部19が設けられている。別の言い方をすると、窓部19は、ヒューズ55(可溶部56)の配列方向と交差する交差方向(本例では、ヒュージブルリンクユニット1を正面から見たときの前後方向)にハウジング10を貫通するように設けられている。より具体的には、窓部19は、ヒューズ55(可溶部56)の配列方向(左右方向)に沿って並ぶ複数の貫通孔として設けられている。
【0024】
窓部19の各々の内側には、ヒューズ55の可溶部56(溶断部)が収容されている(図6も参照。)。即ち、ハウジング10は、ヒューズ55の可溶部56が窓部19から露出するように、ヒューズエレメント50を収容している。
【0025】
窓部19の前面には、窓部19の前面側の開口部14aを塞ぐように、透明樹脂製の前側カバー20(透明な第1カバー)がハウジング10に取り付けられている。前側カバー20は、窓部19の前面側の開口部14aの形状に対応した横長の板状(可溶部56の配列方向に沿って延びる板状)に形成されている。前側カバー20は、透明であることから、ヒューズ55の可溶部56を外部前面から視認可能に覆っている。前側カバー20の材料としては、例えば、透明であり且つ耐熱性のある樹脂材(例えば、PESU及びPAR等)が採用され得る。なお、これら透明な樹脂材は、一般に、後述する不透明な樹脂材に比べて高価である。
【0026】
窓部19の後面には、窓部19の後面側の開口部15aを塞ぐように、不透明樹脂製の後側カバー30(不透明な第2カバー)がハウジング10に取り付けられている。後側カバー30も、前側カバー20と同様、窓部19の後面側の開口部15aの形状に対応した横長の板状(可溶部56の配列方向に沿って延びる板状)に形成されている。後側カバー30の材料としては、不透明であり且つ強度及び耐熱性に優れたガラス繊維入りの樹脂材(例えば、PS−S、PA6T等を繊維強化した樹脂)が採用され得る。なお、後側カバー30の材料としては、ガラス繊維以外の強化繊維(炭素繊維など)を含有した材料を用いてもよい。
【0027】
以下、図5及び図6を参照しながら、前側カバー20及び後側カバー30の構成をより詳細に説明する。
【0028】
図5(a)に示すように、透明な前側カバー20は、窓部19の前面側の開口部14a(図2(a)、図3(a)及び図4を参照。)を塞ぐ大きさの板状の本体部21の長手方向の両端(上述した配列方向の両端)が、本体部21の板面に垂直な方向に湾曲した形状を有している。前側カバー20の両端には、第1ロック部22が形成されている。第1ロック部22は、前側カバー20をハウジング10(具体的には、窓部19の前面側の開口部14a)に取り付けた際、前側カバー20をハウジング10に固定するためのロック部である。
【0029】
図5(b)に示すように、不透明な後側カバー30は、窓部19の後面側の開口部15a(図2(b)、図3(b)及び図4を参照。)を塞ぐ大きさの板状の本体部31の長手方向の両端(上述した配列方向の両端)が、本体部31の板面に垂直な方向に湾曲した形状を有している。後側カバー30の両端には、第2ロック部32が形成されている。第2ロック部32は、後側カバー30をハウジング10(具体的には、窓部19の後面側の開口部15a)に取り付けた際、後側カバー30をハウジング10に固定するためのロック部である。
【0030】
前側カバー20の上述した配列方向の長さL1と、後側カバー30の配列方向の長さL2と、は相違している。具体的には、前側カバー20の配列方向における長さL1は、後側カバー30の配列方向の長さL2よりも短い(L1<L2)。
【0031】
ロック部22,32を固定する(係合する)相手側の構成として、図6に示すように、ハウジング10の壁部13には、窓部19の配列方向における両端の近傍に、前側カバー20の第1ロック部22と係合する第1被ロック部17と、後側カバー30の第2ロック部32と係合する第2被ロック部18と、が隣接するように設けられている。別の言い方をすると、第1被ロック部17及び第2被ロック部18は、窓部19の両端部の近傍に形成された被ロック領域16に設けられている。
【0032】
換言すると、第1被ロック部17及び第2被ロック部18は互いに対向する壁面に設けられており、第1被ロック部17と第2被ロック部18とに挟まれる領域が被ロック領域16である。被ロック領域16は、前側壁面14から後側壁面15まで、ハウジング10を貫通している。
【0033】
前側カバー20及び後側カバー30をハウジング10に装着した場合、前側カバー20の両端の第1ロック部22は、被ロック領域16の内側の内側面16aを挟むように第1被ロック部17(左右に2つの第1被ロック部)と係合し、前側カバー20をハウジング10に固定する。一方、後側カバー30の両端の第2ロック部32は、被ロック領域16の外側の内側面16bを押圧するように第2被ロック部18(左右2つの第2被ロック部)と係合し、後側カバー30をハウジング10に固定する。
【0034】
上記構成によれば、前側カバー20が透明であるため、この前側カバー20を通してヒューズエレメント50の可溶部56を外部から視認できる。更に、前側カバー20のみが透明であるため、前側カバー20及び後側カバー30の双方が透明である場合に比べ、高価な透明材料の使用量を低減できる。加えて、前側カバー20及び後側カバー30の長さが異なるため、両者を容易に区別でき、それらカバーをハウジング10へ取り付ける作業の効率を高められる。したがって、ヒュージブルリンクユニット1は、可溶部56を外部から視認可能であると共に、その製造コストを出来る限り低減可能である。
【0035】
ところで、従来ユニットは、その原理上、従来ユニットの周辺にカバーをスライド可能な空間を必要とする。そのため、従来ユニットを車載バッテリ等に取り付ける際、取り付け位置が制限される可能性がある。これに対し、上記構成のヒュージブルリンクユニット1は、カバーをスライドさせることなくヒューズエレメント50の可溶部56を視認できる。よって、上記構成のヒュージブルリンクユニット1は、従来ユニットに比べ、車載バッテリ等に取り付ける際の取り付け位置の自由度が高い。
【0036】
更に、透明な前側カバー20の長さが不透明な後側カバー30の長さよりも短いため、長短が逆の場合(前側カバー20が後側カバー30よりも長い場合)に比べ、高価な透明材料の使用量を低減できる。よって、ヒュージブルリンクユニット1は、その製造コストを更に低減可能である。
【0037】
更に、不透明の後側カバー30を繊維強化樹脂によって形成しているため、後側カバー30の強度が高まり、特に後側カバー30のロック部の破損をより確実に防止できる。一方、強度の向上に起因して後側カバー30が撓み難くなるものの、前側カバー20よりも後側カバー30が長いため、長短が逆の場合に比べて後側カバー30が撓み易い。よって、ヒュージブルリンクユニット1は、後側カバー30の強度を高めつつ、後側カバー30をハウジング10に取り付ける際の作業性を維持できる。更に、ヒュージブルリンクユニット1は、取り付け時の撓みに起因する内部応力をより広い範囲に分散できるため、取り付け時の後側カバー30の破損をより確実に防止できる。
【0038】
更に、前側カバー20及び後側カバー30のロック部に対応する被ロック部17,18が、ハウジング10の所定位置(被ロック領域16)に一纏めに設けられている。そのため、それら被ロック部17,18が離れた位置に設けられる場合に比べ、ハウジング10を成形する金型を単純化できる。よって、ヒュージブルリンクユニット1は、金型の製造コスト(ひいては、ヒュージブルリンクユニット1の製造コスト)を低減できる。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0040】
例えば、上述した実施形態に係るヒュージブルリンクユニット1では、前側カバー20及び後側カバー30は、ヒューズエレメント50(即ち、バスバー。より具体的には、可溶部56)との交差方向における距離がほぼ同一であるように構成されている。しかし、図7に示すように、前側カバー20とヒューズエレメント50(可溶部56)との交差方向における距離D1が、後側カバー30とヒューズエレメント50(可溶部56)との交差方向における距離D2よりも大きい(即ち、D1>D2である)ように構成され得る。
【0041】
上記構成により、前側カバー20が後側カバー30よりも可溶部56から離れた位置に設けられる。そのため、距離の大小が逆の場合(前側カバー20が後側カバー30よりも可溶部56に近い場合)に比べ、一般に不透明材料に比べて耐熱性に劣る透明材料(前側カバー20)への可溶部56からの放熱の影響を低減できる。よって、透明な前側カバー20の変形および変色などをより確実に防止でき、可溶部56を外部から視認可能な状態を長期間に亘って維持できる。
【0042】
別の言い方をすると、例えば、前側カバー20と可溶部56との距離が上述した実施形態と同一であれば、後側カバー30と可溶部56との距離が小さくなる分、ハウジング10の交差方向における厚さを小さくできる。よって、ハウジング10(ひいては、ヒュージブルリンクユニット1)を小型化できる。
【0043】
ここで、上述した本発明に係るヒュージブルリンクユニットの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(5)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
所定の配列方向に並んだ複数の可溶部(56)を有するヒューズエレメント(50)と、前記ヒューズエレメントを収容するハウジング(10)と、前記ハウジングに取り付けられる可溶部カバー(20,30)と、を備えたヒュージブルリンクユニット(1)であって、
前記ハウジング(10)は、
前記配列方向と交差する方向に該ハウジングを貫通した窓部(19)を有すると共に、前記窓部の内側に前記複数の可溶部(56)を収容し、
前記可溶部カバー(20,30)は、
透明な板状の第1カバー(20)であって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部(19)の一方の開口部を塞ぐ第1カバー、及び、
不透明な板状の第2カバー(30)であって、前記配列方向に沿って延びると共に前記窓部(19)の他方の開口部を塞ぐ第2カバー、を含み、
前記第1カバー(20)の前記配列方向における長さと、前記第2カバー(30)の前記配列方向における長さと、が異なる、
ヒュージブルリンクユニット。
(2)
上記(1)に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバー(20)の前記配列方向における長さ(L1)が、前記第2カバー(30)の前記配列方向における長さ(L2)よりも短い、
ヒュージブルリンクユニット。
(3)
上記(2)に記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第2カバー(30)が、
繊維強化樹脂の成形体であると共に、該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部(22)を前記配列方向における両端に有する、
ヒュージブルリンクユニット。
(4)
上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバー(20)が、
該第1カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部(22)を前記配列方向における両端に有し、
前記第2カバー(30)が、
該第2カバーを前記ハウジングに固定するためのロック部(32)を前記配列方向における両端に有し、
前記ハウジング(10)が、
前記窓部(19)の前記配列方向における両端の近傍に、前記第1カバーのロック部(22)に対応する被ロック部(17)と、前記第2カバーのロック部(32)に対応する被ロック部(18)と、が隣接するように配置された被ロック領域(16)を有する、
ヒュージブルリンクユニット。
(5)
上記(1)〜上記(4)の何れか一つに記載のヒュージブルリンクユニットにおいて、
前記第1カバー(20)と前記可溶部(56)との前記交差方向における距離(D1)が、前記第2カバー(30)と前記可溶部(56)との前記交差方向における距離(D2)よりも大きい、
ヒュージブルリンクユニット。
【符号の説明】
【0044】
1 ヒュージブルリンクユニット
10 ハウジング
13 壁部
14 前側壁面
14a 前面側の開口部
15 後側壁面
15a 後面側の開口部
16 被ロック領域
16a 内側の内側面
16b 外側の内側面
17 第1被ロック部
18 第2被ロック部
19 窓部
20 前側カバー(透明カバー。可溶部カバー)
22 第1ロック部
30 後側カバー(不透明カバー。可溶部カバー)
32 第2ロック部
50 ヒューズエレメント
55 ヒューズ
56 可溶部
L1 前側カバーの長さ
L2 後側カバーの長さ
D1 前側カバーと可溶部(バスバー)との距離
D2 後側カバーと可溶部(バスバー)との距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7