特許第6374913号(P6374913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6374913HGFレセプター(cMet)を特異的に結合するペプチドおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374913
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】HGFレセプター(cMet)を特異的に結合するペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20180806BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20180806BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20180806BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180806BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20180806BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20180806BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20180806BHJP
   A61B 8/13 20060101ALI20180806BHJP
   G01N 21/70 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   C07K14/47ZNA
   C07K7/08
   C07K1/22
   A61K47/50
   A61K47/42
   A61K49/00
   A61K49/04
   A61B5/055
   A61B8/13
   G01N21/70
【請求項の数】12
【全頁数】118
(21)【出願番号】特願2016-137140(P2016-137140)
(22)【出願日】2016年7月11日
(62)【分割の表示】特願2014-68150(P2014-68150)の分割
【原出願日】2004年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-19787(P2017-19787A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】60/451,588
(32)【優先日】2003年3月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502352519
【氏名又は名称】ダイアックス、コープ
【氏名又は名称原語表記】DYAX CORP.
(73)【特許権者】
【識別番号】511044009
【氏名又は名称】ブラッコ・スイス・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ドランスフィールド,ダニエル・ティー
(72)【発明者】
【氏名】サトー,アーロン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ラドナー,ロバート・シー
(72)【発明者】
【氏名】ナンジャッパン,パラニアッパ
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−330772(JP,A)
【文献】 国際公開第03/000844(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/000842(WO,A1)
【文献】 特表平11−506327(JP,A)
【文献】 FEBS Letters,1997年,Vol.420,p.1-6
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,1999年,Vol.274, No.41,p.29274-29281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 1/00−15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
cMet又はcMetとHGFとを含む複合体に結合する単離されたポリペプチドであって、配列番号1〜11、13〜34、36〜45、48〜72、74〜81、83〜99、102〜212、214〜332、334〜373、375〜387、390〜404、及び449〜496から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、前記ポリペプチド。
【請求項2】
多量体である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
標識又は治療剤に結合している、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
標識又は治療剤が、リンカーを介してポリペプチドに結合している、請求項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
超音波バブル、微粒子、ミクロスフェア、乳濁液、又はリポソーム内に取り込まれる、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
診断検出に適した標識に結合して画像診断造影剤を形成する、請求項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
標識が、酵素、蛍光性化合物、超音波造影剤、リポソーム、及び光学色素から成る群より選択される、請求項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
標識が:
(i) 18F、124I、125I、131I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Au、及び199Auから成る群より任意に選択される放射性標識;又は
(ii) Gd3+、Mn2+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Eu3+、Dy3+、Pr3+、Cr3+、Co3+、Fe3+、Ti3+、Tb3+、Nd3+、Sm3+、Ho3+、Er3+、Pa4+、及びEu2+から成る群より選択される常磁性金属イオン、
である、請求項に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
cMet又はcMetとHGFとの複合体を、それを必要とする対象内で画像化するための組成物であって、請求項1に記載のポリペプチドを含む、前記組成物。
【請求項10】
対象が、過剰増殖性障害、又は血管新生若しくは新血管形成に関連した障害を有することが疑われるヒト患者である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
画像化を、核磁気共鳴画像、超音波画像、光学画像、音ルミネセンス画像、光音響画像、X線画像、又は放射性核種画像により行う、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
cMet又はcMetとHGFとの複合体を、それを含有する溶液から精製する方法であって:
(a) 該溶液を、固体支持体上に固定されている請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチドと接触させ;そして
(b) 該溶液からポリペプチドを分離する、
ことを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35USC §119(e)に基づいて、2003年3月3日に提出された米国仮特許出願第60/451,588号の優先権を主張し、その全体が本明細書において援用される。
【背景技術】
【0002】
背景技術
肝細胞増殖因子(スキャター(scatter)因子としても知られている)は、胚形成、創傷治癒および血管新生のごとき多様な生理学的過程に関与する、多機能性増殖因子である。HGFは、その高親和性レセプター(cMet)との相互作用を通して、腫瘍増殖、浸潤および転移に関与することが明らかになっている。実際、調節不全のcMet発現(例えば、正常粘膜と比較されるような、直腸結腸腺腫の新生物性上皮および他の癌腫におけるcMetの過剰発現)および/または活性、ならびにHGFによる自己分泌ループを通したcMetレセプターの機能亢進が、多様な腫瘍組織で示されており、そして特別の細胞株の発癌性形質転換を誘導する。
【0003】
一般に、HGFは、多くの上皮腫瘍の一部を形成する間質細胞により産生される;しかしながら、腫瘍細胞それ自身によるHGFの産生は、特別の腫瘍の過剰増殖を導く主経路を含んでいると信じられている。HGF/cMet自己分泌刺激経路が、グリア細胞腫、骨肉腫、および乳腺癌、前立腺癌、乳癌、肺癌および他の癌腫で検出されている。
【0004】
HGFのcMetレセプターとの相互作用を妨害すると、動物モデルにおける腫瘍進行を遅くする。cMetの活性化を通した特定の癌細胞の増殖を刺激することに加え、HGFはまた、過剰増殖表現型に感受性を有する多様な細胞株(例えば乳癌)における、DNA−損傷剤−誘導細胞毒性を保護する。それ故、HGFがcMetへ結合するのを妨げることで、特定の癌細胞が特定の薬剤の細胞毒性を受け易くすることが可能であろう。
【0005】
過剰増殖障害に加え、cMetは血管新生とも関連づけられている。例えば、cMetは血管内皮増殖因子(VEGF)の産生を導き、それは順に、血管新生を刺激する。加えて、cMetの刺激は創傷治癒の促進にも関係している。
【0006】
過剰増殖障害、血管新生および創傷治癒のための治療標的としてcMetレセプターを同定することに加え、新生物と対応する正常組織の発現レベル間の大きな矛盾は、cMetが過剰増殖障害に関する画像化応用のための魅力的な標的であることを示唆している。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、cMetへ結合し、そしてHGFがcMetへ結合するのを妨げることにより、肝細胞増殖因子(HGF)活性に拮抗する能力を有する、ペプチド、ペプチド複合体および組成物に関する。加えて、本発明は、このレセプターを検出しおよび標的化し、HGF拮抗特性とは無関係にcMet活性を阻害するために、および画像診断のために、cMetへ結合する能力を有するこうしたペプチド、ペプチド複合体および組成物に関する。細胞増殖、創傷治癒および血管新生を含めた多様な細胞機能におけるHGF/cMet軸の関与は、癌のごとき過剰増殖性疾患を導くが、本発明は、HGF仲介性生理学的事象を中断すること、物質を標的化すること、例えば、放射線治療を含めたこうした部位への
治療、そして細胞過剰増殖の重要部位を画像化することに特に有用である。
【0008】
例えば過剰増殖および/または血管新生を検出し、局在化し、画像化し、測定し、そして可能ならば阻害しまたは影響を及ぼすための改良された物質および方法に対する要求に応えて、驚くべきことに、12クラスの非天然ポリペプチドがcMetへ特異的に結合することが発見された。こうしたポリペプチドの適切な標識化は、cMet発現細胞またはHGF/cMet複合体を提示する細胞へ、例えば高濃度で結合することが可能な検出可能な造影剤を提供し、細胞増殖部位および/または血管新生部位に特異的な造影剤を提供する。したがって、本発明のcMet結合ポリペプチドは、こうした過剰増殖関連障害および/または血管新生関連障害の検出および診断に使用することが可能である。こうしたポリペプチドとcMet阻害剤または殺腫瘍性剤との結合または融合も、例えば結合物または融合物の活性増殖部位および/または血管新生部位への「回帰」をひき起こすことにより病原性腫瘍を処置するために使用可能であり、それにより、過剰増殖および/または血管新生に関係する病態を処置するために有効な手段を提供する。
【0009】
本発明はcMet結合ポリペプチドに関するものであり、単量体としてまたは多量体若しくは重合体構築物における単一結合ポリペプチドの使用、ならびに多量体または重合体構築物における1より多くの本発明の結合ポリペプチドの使用を含むものである。本発明の結合ポリペプチドは、cMet、またはポリペプチド結合部位を保持するその断片を結合し、阻害し、検出しまたは単離することが好都合な任意の応用において有用である。こうした結合ポリペプチドの特に重要な側面は、cMet結合に関するHGFとの競合を通した、またはHGFが結合しているかどうかに関係なくcMet活性を直接阻害することによる、cMet活性の阻害である。例えば、いくつかの場合において、cMetシグナル伝達は、HGF結合が存在しなくとも生じることが可能であり、こうした状況においては、HGFが結合しているかどうかに関係なくcMetシグナル伝達活性を阻害する結合ポリペプチドが、cMetシグナル伝達を阻害することにおいて有用であろう。
【0010】
本明細書に開示された結合ポリペプチドの、他の特に有利な使用は、インビボで細胞増殖および/または血管新生を画像化する方法におけるものである。本方法は細胞増殖部位および/または血管新生部位を検出するために本発明の特異的結合ポリペプチドの使用を必要とし、ここにおいて結合ポリペプチドは、核磁気共鳴映像法(MRI)造影剤、X線造影剤、放射性医薬品造影剤、超音波造影剤および光学造影剤を含めた造影剤として使用するために検出可能なように標識されている。
【0011】
本明細書に開示された結合ポリペプチドの、さらに他の特に有利な使用は、過剰増殖および/または血管新生、またはcMetを発現している他の組織へ、(治療効果、放射線治療効果または細胞毒性効果を提供することが可能な化合物を含んだ)治療剤を標的化し、または治療のための(薬剤、遺伝子物質などを含んだ)媒体を送達することである。
【0012】
cMetレセプターは、シグナル伝達分子であるレセプターチロシンキナーゼファミリーの一部である。本発明の目的のために、レセプターチロシンキナーゼ機能は:レセプターのオリゴマー化、レセプターリン酸化、レセプターのキナーゼ活性、下流シグナル伝達分子の動員、遺伝子の誘導、細胞増殖の誘導、細胞遊走の誘導、またはこれらの組み合わせの任意の1つを含むことが可能である。本明細書において「ヘテロマー」とは、ヘテロマー分子の各々の結合ペプチドがcMetの異なった部位、例えば「エピトープ」に結合するように、1より多くの本明細書に記載のようなcMet結合ペプチドを含有する分子を指しており、これらも本発明に包含されている。例えば、本明細書で提供される結合ポリペプチドのヘテロマー構築物は、例えば、1つの結合ペプチドを介して例えばcMetのHGF結合部位へ結合することができ、一方、ヘテロマー分子の他の結合ペプチドは、cMetの異なった高親和性結合部位へ結合する。単一結合構築物によってcMet上に
ある2以上の別個のエピトープを標的化することにより、HGF結合および/またはレセプター機能を阻害する構築物の能力を大きく改良することが可能である(こうした阻害はHGF結合に関係なくcMetの直接阻害により起こすことが可能である)。レセプター活性を阻止する能力が弱い結合ペプチドであっても、HGF依存性およびHGF非依存性レセプター機能を阻止する能力が改良されたヘテロマー構築物を作成するために使用することが可能である。
【0013】
従って、本発明は、少なくともその1つはcMetと結合する2以上の結合ポリペプチドを含む多量体分子を産生するための手段を含む構築物を指向している。1つの態様において、多量体構築物は、2以上の単一結合ポリペプチドのコピー、または2以上の単一結合ポリペプチドのコピーをコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、本発明の多量体構築物は、構築物中の結合ポリペプチドの少なくとも2つがcMetの異なったエピトープに特異的であるように、2以上の結合ポリペプチド、または2以上の結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。これらの構築物は、本明細書において「ヘテロマー構築物」、「ヘテロ多量体」などとも称される。本発明の構築物はまた、関連のないペプチドまたは対照ペプチドを含むことも可能である。構築物は、2以上の、3以上の、または4以上の結合ポリペプチド、またはこうしたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことも可能である。本明細書で提供される技術に基づいて、当業者は、本明細書で提供される結合ポリペプチドを多量体構築物へ組み立てること、および標的分子へ結合する改良された能力、またはレセプターチロシンキナーゼ機能を阻害する改良された能力のごとき、改良された特性を有する多量体構築物を選択することが可能である。こうした改良された特性を有する多量体構築物は本発明に含まれている。
【0014】
環状/直鎖状ペプチドライブラリーのスクリーニングに由来する共通配列は、表6に示した12クラスの特異的cMet結合ポリペプチドに基づいて決定された。具体的態様において、本発明のcMet結合ポリペプチドは、1以上のこれらの配列を含む。こうした好ましいcMet結合ポリペプチドは、含まれている不変のシステイン残基間で環状構造またはループ構造を形成する可能性があるポリペプチドを含んでいる。
【0015】
本明細書に記載のポリペプチドは、N末端およびC末端のいずれかまたは両方に付着した追加のアミノ酸を有することが可能である。好ましい態様において、本発明の結合ポリペプチドは、結合ポリペプチドを単離したファージ選択物のディスプレー構築物の隣接ペプチドに対応する1以上の、好ましくは2つのアミノ酸のN末端および/またはC末端隣接ペプチドを有するように調製することが可能である。好ましいN末端隣接ペプチドには、Gly−Ser−(TN6配列に対して最も好ましい)、Ala−Gly−(TN8およびTN9配列に対して最も好ましい)、Gly−Ser−(TN10およびTN11配列に対して最も好ましい)、Gly−Asp−(TN12配列に対して最も好ましい)、Ala−Gln−(直鎖状配列に対して最も好ましい)が含まれる。好ましいC末端隣接ペプチドには、−Ala−Pro(TN6配列に対して最も好ましい)、−Gly−Thr(TN8およびTN9配列に対して最も好ましい)、−Ala−Pro(TN10およびTN11配列に対して最も好ましい)、−Asp−Pro(TN12配列に対して最も好ましい)、−Asp−Phe(直鎖状配列に対して最も好ましい)が含まれる。単一末端アミノ酸も本発明の結合ポリペプチドへ付加することが可能であり、好ましい末端アミノ酸は親ファージディスプレー構築物と一致するであろう。例えば、最も好ましくは、N末端アミノ酸は、Gly−(TN6、TN8およびTN9配列に対して最も好ましい)、Ser−(TN10およびTN11配列に対して最も好ましい)、Asp−(TN12配列に対して最も好ましい)およびGln−(直鎖状配列に対して最も好ましい)から選択されるであろうし、そして最も好ましくは、C末端アミノ酸は、−Gly(TN6、TN8およびTN9、および直鎖状配列に対して最も好ましい)、−Ala(TN10およびTN11配列に対して最も好ましい)および−Asp(TN12配列に対して最も好まし
い)から選択されるであろう。こうした隣接アミノ酸に対する保存的置換(即ち、以下のグループ内で選択される置換アミノ酸)も企図される:{Arg、His、Lys}、{Glu、Asp}、{Asn、Cys、Glu、Gly、Ser、Thr、Tyr}、{Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val}。
【0016】
ループ構造を形成する可能性のあるポリペプチドを含んでいるライブラリー単離物(例えばTN6、TN8、TN9、TN10、TN11およびTN12と命名されたライブラリー;数字はシステインからシステインまでの配列中のアミノ酸数を示している;加えて、直鎖状ディスプレーライブラリーLN20もスクリーニングした)からの配列情報および結合データの試験から、cMet結合ポリペプチドの更なるシリーズが同定された。共通モチーフはTN9ライブラリー(CxGpPxFxC;配列番号512)の最初のスクリーニングから得られた。共通配列は表6に収載した配列から誘導した。この共通配列に加えて、直鎖状ペプチドライブラリーから同定されたcMet結合ペプチド中の配列傾向を、2次スクリーニングで使用した第2世代ライブラリーを設計するために使用した。両方のスクリーニングからの配列を、表6に収載した12クラスのcMet結合モチーフを同定するために使用した。
【0017】
本発明の別の側面は、本発明のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を検出可能なように標識することにより、特異的な細胞増殖および/または血管新生の造影剤を提供するための、本発明のポリペプチドの修飾に関する。こうした検出可能な標識は、放射性標識、酵素標識またはMR常磁性キレートまたは微粒子での標識;超音波バブル、微粒子、ミクロスフェア、乳濁液またはリポソーム内への取り込み;または光学色素との結合を含むことができる。
【0018】
本発明の別の側面においては、本結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を使用したcMet発現細胞の単離方法を提供する。
加えて、本発明のcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、医薬として受容可能な組成物において、単独で、または他の治療剤と結合させて(または組み合わせて)、治療剤として使用することが可能である。組成物は、細胞増殖、血管新生および/または創傷治癒に関する疾患または状態を処置するために使用することが可能である。
【0019】
治療剤として使用する場合、ペプチドの血清滞留時間を増強することが有利であろう。このことは:a)血清アルブミンのごとき血清タンパク質上の遊離スルフヒドリル基と反応するマレイミドのごとき部分とペプチドを結合させること、b)血清タンパク質、特に血清アルブミンへ非共有結合的に結合する脂肪酸のごとき部分とペプチドを結合させること、c)血清滞留時間を増強することが知られているポリエチレングリコール(PEG)のごとき重合体とペプチドを結合させること、およびd)cMet結合ペプチドをコードするDNAを、ヒト血清アルブミンまたは抗体のごとき血清タンパク質をコードするDNAへ融合させ、コードされている融合タンパク質を発現させること、により達成することが可能である。
【0020】
本発明の別の側面において、標的を発現する細胞へ結合する能力についてファージディスプレーで同定されたポリペプチドをスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、標準的細胞結合アッセイで評価するにはあまりにも単量体親和性が低いポリペプチドを含めたポリペプチドの結合能力の迅速なスクリーニングを可能にする。加えて、これらの方法は、血清存在下でのペプチドの安定性を迅速に査定するために使用することが可能である。
【0021】
1つの態様において、本発明はCys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−
−Cysを含むアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物に関するものであり、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得る。特定の態様において、XはProである。
【0022】
別の態様において、本発明のポリペプチドは、1以上のアミノ酸のN末端および/またはC末端隣接ペプチドをさらに含む。例えば、ポリペプチドは:アミノ酸置換、およびアミド結合置換、D−アミノ酸置換、グリコシル化アミノ酸、ジスルフィド模倣置換、アミノ酸転位、レトロ−インベルソ(retro−inverso)ペプチド、ペプトイド、レトロ−インヴェルソペプトイドおよび合成ペプチドから成る群より選択される修飾を含むことが可能である。別の態様において、本明細書に記載したポリペプチドのいずれも、検出可能標識または治療剤へ結合することが可能であり、場合により、ポリペプチドと検出可能標識または治療剤との間にリンカーまたはスペーサーをさらに含む。特定の態様において、検出可能標識または治療剤は:酵素、蛍光性化合物、リポソーム、光学色素、常磁性金属イオン、超音波造影剤および放射性核種から成る群より選択される。特定の態様において、治療剤または検出可能標識は放射性核種を含む。例えば、放射性核種は:18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Auおよび199Auから成る群より選択される1以上の核種であることが可能である。別の態様において、治療剤または検出可能標識はさらにキレート剤を含む。例えば、キレート剤は:式20、21、22、23a、23b、24a、24bおよび25から成る群より選択される化合物を含むことが可能である。特定の態様において、放射性核種は99mTcまたは111Inである。別の態様において、放射性核種は177Lu、90Y、153Smおよび166Hoから成る群より選択される。別の態様において、検出可能な標識は超音波造影剤を含む。例えば、超音波造影剤は、気体、例えばフッ素化気体を含む、リン脂質安定化マイクロバブルまたはマイクロバルーンを含むことが可能である。別の態様において、検出可能な標識は、常磁性金属イオンおよびキレート剤を含む。本発明の別の側面は、本発明のいずれかのポリペプチドに関しするものであり、ここにおいて、治療剤は:生物活性剤、細胞毒性剤、薬剤、化学療法剤または放射線治療剤から成る群より選択される。他の態様において、ポリペプチドは約10μM未満、約1.0μM未満、約0.1μM未満、または約1nM未満のcMet/HGF複合体のcMetに対するみかけのKを有している。
【0023】
1つの態様において、本発明は、下記のクラスのうちの1つのアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するポリペプチドまたは多量体ポリペプチドに関するものである:クラス1:X−X−X−Cys−X−X−X−X−Cys−X−X−X10(TN6)、式中、XはPhe、Leu、Ser、Trp、TyrまたはMetであり;XはIle、Tyr、His、ThrまたはAsnであり;XはIle、Leu、Asp、Met、PheまたはSerであり;XはArg、Asn、Glu、ProまたはTrpであり;XはGlu、Gly、Leu、Pro、Thr、TrpまたはTyrであり;XはAsp、Gln、Glu、Gly、Phe、Ser、ThrまたはTrpであり;XはAla、Arg、Asn、Gln、Glu、Gly、PheまたはTrpであり;XはGly、Asn、His、Arg、Met、Ile、Asp、ValまたはThrであり;XはSer、Lys、Phe、Met、Thr、AspまたはLeuであり;そしてX10はSer、Pro、Thr、Leu、Tyr、Asn、His、GluまたはTrpである;またはク
ラスII:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−Cys−X10−X11−X12(TN8)、式中、XはGly、Val、Trp、Thr、LysまたはGlnであり;XはTrp、Tyr、Leu、PheまたはThrであり;XはTrp、Glu、Phe、Ile、LeuまたはSerであり;XはAsn、GlnまたはGluであり;XはLeu、GluまたはTrpであり;XはGlu、SerまたはTyrであり;XはGlu、MetまたはProであり;XはMet、SerまたはTrpであり;XはLeu、PheまたはValであり;X10はAsp、GluまたはTrpであり;X11はMet、PheまたはTrpであり;そしてX12はGln、LeuまたはTrpである;またはクラスIII:X−X−X−Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cys−X−X(TN9)、式中、XはGlu、Ser、TrpまたはTyrであり;XはPhe、ThrまたはTrpであり;XはHis、PheまたはTrpであり;XはAla、Lys、SerまたはThrであり;XはProまたはTrpであり;XはSerまたはThrであり;XはGluまたはSerであり;XはIle、TrpまたはTyrであり;そしてXはGlu、Met、TrpまたはTyrである;またはクラスIV−1:X−X−X−Cys−X−Gly−Pro−Pro−X−Phe−X−Cys−Trp−X−X−X−X10−X11(TN9)、式中、XはArg、Asp、Asn、IleまたはSerであり;XはLeu、Ile、Phe、TrpまたはValであり;XはAsn、Gln、His、Leu、TyrまたはValであり;XはLeu、LysまたはSerであり;XはAla、Ser、ThrまたはTrpであり;XはLeu、SerまたはTrpであり;XはLeu、SerまたはTrpであり;XはPheまたはTyrであり;XはAsp、Glu、GlyまたはValであり;X10はMet、Pro、ThrまたはSerであり;そしてX11はGluまたはGlyである;またはクラスIV−2:X−X−X−X−Trp−X−CYs−X−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−Trp−X−X(TN9)、式中、XはAsp、GluまたはValであり;XはAla、Asp、Gly、SerまたはValであり;XはAsp、Gly、SerまたはValであり;XはArg、Asn、Gly、SerまたはThrであり;XはGlnまたはHisであり;XはAsn、LysまたはSerであり;XはSerまたはTrpであり;そしてXはPheまたはTyrである;またはクラスV:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X10−X11−Cys−X12−X13−X14(TN10)、式中、XはHis、Phe、Pro、ThrまたはTrpであり;XはAla、Arg、Glu、His、LysまたはPheであり;XはMet、Phe、Pro、ThrまたはValであり;XはHis、Leu、Met、PheまたはTrpであり;XはArg、Asp、Glu、Gly、MetまたはTrpであり;XはGlu、Gly、Ile、Lys、PheまたはProであり;XはAsp、Phe、Pro、Ser、TrpまたはTyrであり;XはAla、Arg、Asn、PheまたはSerであり;XはAla、Gln、Gly、LeuまたはPheであり;X10はGln、Gly、Ile、Leu、TrpまたはTyrであり;X11はArg、Asp、Phe、Pro、TyrまたはValであり;X12はAsn、Gln、His、IleまたはThrであり;X13はAla、Asn、Asp、GluまたはHisであり;そしてX14はAsn、Gln、Glu、HisまたはValである;またはクラスVI:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−Cys−X13−X14−X15、式中、XはGln、Gly、Met、PheまたはSerであり;XはAsn、Gln、LeuまたはMetであり;XはArg、Asn、Gly、HisまたはIleであり;XはAsn、Asp、Leu、ThrまたはTrpであり;XはArg、Gln、Thr、TyrまたはValであり;XはGlu、Gly、Leu、MetまたはThrであり;XはAla、Asn、Asp、His、Ile、LeuまたはSerであり;XはArg、Gln、Ser、ThrまたはTyrであり;XはAsp、Gly、IleまたはPheであり;X
はGln、PheまたはThrであり;X11はGln、His、Phe、Pro、SerまたはTyrであり;X12はAsn、Asp、Phe、ProまたはSerであり;X13はAla、Asn、Gly、LeuまたはSerであり;X14はArg、Pro、SerまたはValであり;そしてX15はAsp、Glu、LeuまたはMetである;またはクラスVIII:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−Cys−X14−X15−X16、式中、XはAla、His、Leu、PheまたはTyrであり;XはArg、Asp、Leu、SerまたはTyrであり;XはGlu、MetまたはTrpであり;XはAsp、Gln、Glu、PheまたはSerであり;XはGlu、Ile、PheまたはTrpであり;XはAsn、AspまたはSerであり;XはAsn、AspまたはLeuであり;XはAsp、GluまたはLysであり;XはGly、PheまたはThrであり;X10はGly、Phe、TrpまたはTyrであり;X11はGlu、SerまたはTrpであり;X12はGlu、Phe、TyrまたはValであり;X13はGlu、Lys、ThrまたはValであり;X14はGluまたはTrpであり;X15はAsp、Phe、Pro、SerまたはTrpであり;そしてX16はAla、AsnまたはIleである;またはクラスIX−1:Ser−Cys−X−Cys−X−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−Trp−Cys−Tyr−X−X−X、式中、XはAsn、HisまたはTyrであり;XはGlyまたはSerであり;XはAla、Asp、Glu、GlyまたはSerであり;XはSerまたはThrであり;そしてXはAspまたはGluである;またはクラスIX−2:Glu−X−Gly−Ser−Cys−His−Cys−Ser−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−X−Cys−X、式中、XはAla、Glu、GlyまたはSerであり;XはPhe、TrpまたはTyrであり;そしてXはPheまたはTyrである。
【0024】
別の態様において、本発明はアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するポリペプチドまたは多量体ポリペプチドに関するものであり、ここにおいてアミノ酸配列は配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む。特定の態様において、単量体として、または多量体構築物中に使用されるポリペプチドは、配列番号1〜511、配列番号1〜10、配列番号11〜47、配列番号48〜101、配列番号102〜364、配列番号365〜370、配列番号371〜387、配列番号388または配列番号399、配列番号390〜404、配列番号405〜447、配列番号448、配列番号449〜496および配列番号497〜511から成る群より選択することが可能である。
【0025】
別の態様において、本発明は、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を結合するファージを単離するための方法に関するものであり、前記方法は、固体支持体上にcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を固定し;潜在的cMetまたはcMet/HGF複合体結合ファージのライブラリーを固体支持体と接触させて、ライブラリー中のcMetまたはcMet/HGF複合体結合ファージを結合させ;そして、固体支持体からファージライブラリーの非結合部分を除去し、それによりcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を結合するファージを単離する、工程を含む。
【0026】
別の態様において、本発明は、動物またはヒト対象におけるcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を検出し、場合により、動物またはヒト対象の少なくとも一部を画像化する方法に関しており、前記方法は、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列であって、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得る配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を検出可能なよう
に標識し;標識したポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を対象に投与し;そして、対象中の標識したポリペプチドまたは構築物を検出する、そして場合により、画像を構築し、それによりcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を検出する、工程を含む。
【0027】
特定の態様において、本発明の方法は、標識が:酵素、蛍光性化合物、超音波造影剤、リポソームおよび光学色素から成る群より選択され、標識は場合によりさらにリンカーおよび/またはスペーサーを含む方法を包含している。特定の態様において、超音波造影剤は気体、例えばフッ素化気体を含むリン脂質安定化マイクロバブルまたはマイクロバルーンである。他の態様において、標識は放射性標識または常磁性金属原子であり、場合によりさらにリンカーまたはスペーサーを含む。別の態様において、放射性標識は:18F、124I、125I、131I、123I、77Br、76Br、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Auおよび199Auから成る群より選択される放射性核種を含む。別の態様において、放射性標識はさらにキレート剤を含み、例えばキレート剤は:式20、21、22、23a、23b、24a、24bおよび25から成る群より選択される。別の態様において、放射性核種は99mTcまたは111Inである。特定の態様において、常磁性標識は:Mn2+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Gd3+、Eu3+、Dy3+、Pr3+、Cr3+、Co3+、Fe3+、Ti3+、Tb3+、Nd3+、Sm3+、Ho3+、Er3+、Pa4+およびEu2+から成る群より選択される常磁性金属原子を含む。別の態様において、常磁性標識はさらにキレート剤を含み、例えばキレート剤は:DTPA、DO3A、DOTA、EDTA、TETA、EHPG、HBED、NOTA、DOTMA、TETMA、PDTA、TTHA、LICAMおよびMECAMから成る群より選択される。特定の態様において、標識されたポリペプチドまたは多量体構築物の検出は過増殖性障害の指標である。他の態様において、標識されたポリペプチドまたは多量体構築物の検出は血管新生または新血管新生の指標である。特定の態様において、標識は、SFフレオン、CF、C、C、C10、CBrF、CCl、CClF、CBrClFおよび過フルオロ炭素から成る群より選択されるフッ素化気体を含む超音波造影剤である。特定の態様において、超音波造影剤は、式Cn+2を有し、式中、nは1〜12である過フルオロ炭素気体を含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、動物またはヒト対象におけるcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を検出し、そして場合により、動物またはヒト対象の少なくとも一部を画像化する方法に関しており、前記方法は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を検出可能なように標識し;標識されたポリペプチドまたは構築物を対象に投与し;そして、対象中の標識されたポリペプチドまたは構築物を検出し、そして場合により、画像を構築し、それによりcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を検出する、工程を含む。
【0029】
別の態様において、本発明はcMetの活性化が関与する状態を処置する方法に関しており、前記方法は、こうした状態の処置を必要とする動物またはヒト対象に、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含み、X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得るアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築
物を含む組成物を投与することを含む。別の態様において、本発明はcMetの活性化が関与する状態を処置する方法に関しており、前記方法は、こうした状態の処置を必要とする動物またはヒト対象に、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を含む組成物を投与することを含む。特定の態様において、状態とは固形腫瘍増殖であり、例えば、ここにおいて腫瘍は乳癌、グリア芽細胞腫、前立腺癌、悪性中皮腫、直腸結腸癌、肝細胞癌、肝胆道癌、腎臓癌、骨肉腫および子宮頚部癌から成る群より選択される。特定の態様において、ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は殺腫瘍性剤と結合することが可能である。
【0030】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載した1以上のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を提示し、またはファージがcMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するように本明細書に記載した1以上の共通配列を有する組換えバクテリオファージに関しており、ここにおいて、ポリペプチドは組換えバクテリオファージの表面上に示されている。別の態様において、本発明は、核磁気共鳴映像法造影剤に関しており、前記造影剤は、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得、または式中、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有するポリペプチドを含む組成物を含む。特定の態様において、核磁気共鳴映像法造影剤はさらに、少なくとも1つの常磁性金属原子、例えば、DTPA、DOTA、EDTA、TETA、EHPG、HBED、NOTA、DOTMA、TETMA、PDTA、TTHA、LICAMおよびMECAMから成る群より選択される少なくとも1つのキレート剤を含む。特定の態様において、キレート剤は、ジエチレントリアミン、テトラアザシクロドデカンおよびそのカルボキシメチル置換誘導体から成る群より選択される。他の態様において、常磁性金属原子は、Mn2+、Cu2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Gd3+、Eu3+、Dy3+、Pr3+、Cr3+、Co3+、Fe3+、Ti3+、Tb3+、Nd3+、Sm3+、Ho3+、Er3+、Pa4+およびEu2+から成る群より選択される。特定の態様において、多価カチオンはGd3+である。
【0031】
別の態様において、本発明は、cMetまたはcMet/HGF複合体を同定するための方法に関しており、前記方法は、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得る、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、cMetまたはcMet/HGF複合体結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を利用して、cMetまたはcMet/HGF複合体標的との複合体を形成させ;複合体と1以上の潜在的cMetまたはcMet/HGF複合体結合化合物を接触させ;そして潜在的cMetまたはcMet/HGF複合体結合化合物がcMetまたはcMet/HGF複合体結合ポリペプチドと競合して、cMetまたはcMet/HGF複合体標的との複合体を形成するかどうかを決定する、工程を含む。
【0032】
1つの態様において、本発明は画像診断造影剤に関しており、前記造影剤は、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得、または式中、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を含む。
【0033】
別の態様において、本発明は医学画像の方法に関しており、前記方法は、動物またはヒト対象に、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得るcMetまたは複合体へ結合する能力を有する少なくとも1つのポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を含む造影剤の医薬製剤を投与し、そして、磁気共鳴映像法、超音波画像、光学画像、音ルミネセンス画像、光音響画像および核画像から成る群より選択される方法により造影剤を画像化する、工程を含む。別の態様において、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含み、そして、磁気共鳴イ映像法、超音波画像、光学画像、音ルミネセンス画像、光音響画像および核画像から成る群より選択される方法により造影剤を画像化する。
【0034】
別の態様において、本発明は放射線治療の方法に関しており、前記方法は、こうした治療を必要とする動物またはヒト対象に、放射線治療に有用な放射線核種と結合させた、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得、または式中、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、少なくとも1つのポリペプチドまたは多量体構築物を含む、化合物を投与することを含む。特定の態様において、化合物はさらにキレート剤を含み、例えば化合物は、式20、21、22、23a、23b、24a、24bおよび25から成る群より選択される。別の態様において、化合物はさらにスペーサーまたはリンカーを含む。特定の態様において、放射線核種は186Re、188Re、177Lu、90Y、153Smまたは166Hoであることが可能である。
【0035】
別の態様において、本発明は放射線医薬の調製のためのキットに関しており、前記キットは、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得、または式中、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む、cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体構築物、放射線核種のためのキレート剤および還元剤を含む。
【0036】
別の態様において、本発明は、遺伝子物質をcMet発現細胞へ標的化する方法に関しており、前記方法は、こうした遺伝子物質を必要とする動物またはヒトへ、遺伝子物質またはこうした遺伝子物質を含む送達媒体と結合または会合した、Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cysを含むアミノ酸配列を含み、式中X、X、XおよびXは任意のアミノ酸であり得、または式中、アミノ酸配列は、配列番号1〜511から成る群より選択される配列由来の連続9アミノ酸ストレッチのうち少なくとも6アミノ酸を含む、cMetまたは複合体へ結合する能力を有する、ポリペプチドまたは多量体構築物を投与することを含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、cMetまたはcMet/HGF標的を発現する細胞へ結合する能力についてファージディスプレイにより同定された結合ポリペプチドをスクリーニングする方法に関しており、前記方法は、1以上の結合ポリペプチドを含む多量体構築物を調製し;多量体構築物と標的を発現している細胞を接触させ、そして標的へ結合する多量体構築物の能力を評価する工程を含む。特定の態様において、標的を発現するように、組換えDNA技術により細胞を工学処理することが可能である。別の態様において、多量体構築物は検出可能なように標識することが可能である。別の態様において、標的へ結合する多量体構築物の能力は血清存在下で評価する。別の態様において、多量体構築物
は、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラビジンと複合体形成されたビオチニル化結合ポリペプチドを含むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1Aは模倣物の表示であり、それらは構造的モチーフおよび回転特性を模倣するために用いることが可能であり、そして同時に、タンパク質分解に対する安定性を提供しそして他の特性を促進する(構造1A:Hart,S.およびEtzkorn,F.、1999.J.Org.Chem.、64:2998−2999)。
図1B図1Bは模倣物の表示であり、それらは構造的モチーフおよび回転特性を模倣するために用いることが可能であり、そして同時に、タンパク質分解に対する安定性を提供しそして他の特性を促進する(構造1B:Hanessian,S.およびMcNaughton−Smith,G.、分子医学法、第23巻:ペプチドミメティクス プロトコール中、「多目的ペプチド模倣体骨格の合成」、W.Kazmierski、監修(Humana Press Inc.、トトワ、N.J.、1999)、10章、pp.161−174)。
図1C図1Cは模倣物の表示であり、それらは構造的モチーフおよび回転特性を模倣するために用いることが可能であり、そして同時に、タンパク質分解に対する安定性を提供しそして他の特性を促進する(構造1C:WO01/16135)。
図2図2はアミノアルコール官能性を含んでいるアミノ酸(4)、およびアルコキシアミノ官能性を含んでいるアミノ酸(5)の表示である。
図3図3は、ペンダントブロモアセトアミド官能性を有するシステインの環化を描いている表示である(このプロセスは本明細書において「スキーム1」と称される)。
図4図4は、2環性ペプチドの形成を生じるチアゾリジンを提供するための、適切に位置された近接アミノメルカプタン官能性およびアルデヒド官能性の分子内環化を示している表示であり、その1つの環は主鎖中の残基により形成され、そして第2の環はチアゾリジン環で存在している(このプロセスは本明細書において「スキーム2」と称される)。
図5図5は、標準ペプチドカップリング試薬(HATU、PyBOPその他のごとき)を経る分子内カップリングにより利用可能なラクタム官能基がどのように、ジスルフィドのための代用物として作用することができるかを示している表示である。Dde/Dmabアプローチが示されている(そして本明細書において「スキーム3」と称される)。
図6】Grubbs反応(本明細書において「スキーム4」と称される)を示している表示である。
図7A図7Aはリン脂質部分の化学構造である。
図7B図7Bはリン脂質部分の化学構造である。
図8A図8Aは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図8B図8Bは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図8C図8Cは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図8D図8Dは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図8E図8Eは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図8F図8Fは好ましい金属キレート剤の構造を描いている。
図9図9は、cMet結合ポリペプチドを同定するために用いられた選択戦略のスキーム的表示である。TEA=トリエチルアミン、ビーズ感染=cMet−Fc/プロテイン−Aビーズに結合されて残っている非溶出ファージの捕捉。
図10図10は、cMet結合ペプチド配列番号365の増殖阻害特性を示している。
図11図11は、6−PnAO−Glut部分へ結合した配列番号514の製造のためのスキーム的図を示している(本明細書において「スキーム5」と称される)。
図12図12は、K(PnAO6−Glut)リンカーにより連結された配列番号514および515を含んでいるヘテロ2量体の製造のためのスキーム的図を示している(本明細書において「スキーム5」と称される)。
図13A図13Aは、以下のようなヘテロ2量体の化学構造を示している:図13Aは配列番号515へ連結された配列番号514を示している(Ac−GSPEMCMMFPFLYPCNHHAPGGGK{PnAO6−Glut−K[Ac−GSFFPCWRIDRFGYCHANAPGGGKJJ−Glut]−NH}−NH)。
図13B図13Bは、以下のようなヘテロ2量体の化学構造を示している:図13Bは配列番号516へ連結された配列番号515を示している(Ac−GSFFPCWRIDRFGYCHANAPGGGK{PnAO6−Glut−K[Ac−AQEWEREYFVDGFWGSWFGIPHGGGK(JJ−Glut)−NH]}−NH)。
図13C図13Cは、以下のようなヘテロ2量体の化学構造を示している:図13Cは配列番号517へ連結された配列番号514を示している(Ac−GSPEMCMMFPFLYPCNHHAPGGGK{PnAO6−Glut−K[Ac−GDYSECFFEPDSFEVKCYDRDPGGGK(JJ−Glut)−NH]}−NH)。
図14図14は、異なったスペーサー長およびビオチンを有する配列番号514の誘導体の結合を示しているグラフ表示である。誘導体は、標的化配列およびビオチン間に、各々、なし、1つのJおよび2つのJスペーサーを有している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明を以下に記載する。
本発明は、肝細胞増殖因子レセプター(「HGFr」または「cMet」)へ結合する新規結合部分を提供する。こうした結合部分は、上方制御されたcMet発現を示す活性化細胞、そしてcMetへのHGFの結合の効率よい検出、画像化および限局化を可能にする。こうした活性化細胞は、細胞増殖のイニシエーターであり、従って、本明細書に記載したポリペプチドは、増殖部位を検出し、モニタリングしおよび限局化する手段を提供する。特に、ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物を含む、本発明の結合部分は、適切に標識された場合、腫瘍または調節不全細胞増殖から生じる他の増殖性障害(例えば癌)を検出し、モニタリングしおよび限局化するために有用である。それ故、本発明の結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物は、新生物腫瘍増殖または他の増殖性障害を診断し処置するための、多様な診断剤および治療剤を形成するために使用することが可能である。加えて、結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物は、それら自身、治療剤として使用することが可能である。
【0040】
本発明に従った具体的cMet結合ポリペプチドは、ファージディスプレイライブラリー、即ち、その表面に外因性ペプチドを発現するように形質転換された組換えバクテリオファージの集団のスクリーニングにより最初に単離された。cMetのごとき特定標的のための新規ポリペプチド結合部分を単離するためには、例えば、ファージディスプレイ技術を使用する、大きなペプチドライブラリーのスクリーニングが特に有利であり、そこにおいては、非常に大きな数(例えば5×10)の潜在的結合体を試験することが可能であり、そして短い時間で好結果の結合体が単離された。
【0041】
cMet結合ポリペプチドおよび/またはcMetへ結合したHGFを含む複合体へ結合するポリペプチドのごとき結合ポリペプチドをスクリーニングするための、提示ポリペプチドのファージライブラリーを調製するため、候補結合ドメインを、ライブラリーで提示されるべきペプチドのための構造鋳型として働くように選択する。ファージライブラリーは、非常に多数の親ドメインまたは鋳型の類似体で作られている。結合ドメイン鋳型は、天然に存在するかまたは合成のタンパク質、またはタンパク質の領域またはドメインで
あることができる。結合ドメイン鋳型は、結合ドメイン鋳型および結合標的間の既知の相互作用の知識に基づいて選択することが可能であるが、それは決定的ではない。実際、それはライブラリーのために鋳型として働くように選択されたドメインには必須ではなく、または標的に対する親和性を少しも有していない;その目的は、多数(ライブラリー)の類似の構造を有するポリペプチド(類似体)を発生することが可能である構造を提供することであり、その多数の類似体は、所望の結合特性(そして、スクリーニングする任意の他の特性)を示す1以上の類似体を含んでいるであろう。
【0042】
ライブラリーの斑入り(variegated)アミノ酸配列の基礎となる親結合ドメインまたは鋳型の選択において、重要な考慮は、どのように斑入りペプチドドメインが標的に提示されるか、即ち、ペプチド類似体のいかなるコンホメーションが標的と接触するようになるのかである。ファージディスプレイ方法論においては、例えば、ファージ内への類似体をコードする合成DNAの挿入により類似体を発生させ、ファージ表面上での類似体のディスプレーを生じる。多様な異なったポリペプチドを示する、M13ファージのごときファージのこうしたライブラリーは、例えば、本明細書に援用されている、Kayら、ペプチド及びタンパク質のファージディスプレイ:実験室マニュアル(アカデミックプレス社、サンディエゴ、1996)および米国特許第5,223,409号(Ladnerら)に記載されている技術を使用して調製することが可能である。
【0043】
本発明に従った具体的ポリペプチドの単離において、TN6、TN7、TN8、TN9、TN10、TN11、TN12と命名された7つの環状ペプチド(または「ループ」)、およびLN20と命名された線状ライブラリーを最初にスクリーニングした。各々のライブラリーは、M13ファージ上の多様化されたポリペプチドの発現のために構築した。「TN」命名を有する7つのライブラリーは、M13ファージの表面上、タンパク質IIIのアミノ末端に、各々、6、7、8、9、10、11または12アミノ酸の、短い、斑入り外因性ペプチドループを示すように命名された。ライブラリーはTN6(3.3×1012アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN7(1.2×1014アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN8(2.2×1015アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN9(4.2×1016アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN10(3.0×1016アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN11(1.5×1019アミノ酸配列多様性の可能性を有する)、TN12(4.6×1019の配列多様性を有する)およびLN20(3.8×1025アミノ酸配列多様性の可能性を有する)と命名された。
【0044】
TN6ライブラリーは、12アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN6ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Cys−Xaa10−Xaa11−Xaa12の鋳型配列を利用した。鋳型の2、3、5、6、7、8、10および11位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。鋳型の1および12位のアミノ酸は、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、イソロイシン(Ile)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)およびスレオニン(Thr)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0045】
TN7ライブラリーは、13アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN7ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Cys−Xaa11−Xaa12−Xaa13の鋳型配列を利用した。鋳型の1、2、3、5、6、7、8、9、11、12および13位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0046】
TN8ライブラリーは、14アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN8ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Cys−Xaa12− Xaa13−Xaa14の鋳型配列を利用した。鋳型の1、2、3、5、6、7、8、9、10、12、13および14位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0047】
TN9ライブラリーは、15アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN9ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Cys−Xaa13−Xaa14−Xaa15の鋳型配列を利用した。鋳型の1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、13、14および15位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0048】
TN10ライブラリーは、16アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN10ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Cys−Xaa14−Xaa15−Xaa16の鋳型配列を利用した。鋳型の1、2、15および16位のアミノ酸は10アミノ酸:D、F、H、L、N、P、R、S、WまたはY、の群から選択される任意のアミノ酸を許容するように変化させた。鋳型の3および14位のアミノ酸は14アミノ酸:A、D、F、G、H、L、N、P、Q、R、S、V、WまたはY、の群から選択される任意のアミノ酸を許容するように変化させた。鋳型の5、6、7、8、9、10、11および12位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0049】
TN11ライブラリーは、17アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN11ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Cys−Xaa15−Xaa16−Xaa17の鋳型配列を利用した。鋳型の1から3、5から13および15から17位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0050】
TN12ライブラリーは、18アミノ酸鋳型に含まれている単一微小タンパク質結合ループを示すように構築した。TN12ライブラリーは、Xaa1−Xaa2−Xaa3−Cys−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Cys−Xaa16−Xaa17−Xaa18の鋳型配列を利用した。鋳型の1、2、17および18位のアミノ酸は12アミノ酸:A、D、F、G、H、L、N、P、R、S、WまたはY、の群から選択される任意のアミノ酸を許容するように変化させた。3、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および16位のアミノ酸はシステイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0051】
LN20ライブラリーはファージの表面上に、多線状ペプチドを示すために構築した。しかしながら、各々のファージは同一配列の多コピーを示している。それ故、単一のファージは、例えば、異なった配列の5コピーその他を示すであろう。線状ペプチドは20アミノ酸鋳型で提供した。鋳型中の各々の位置でのアミノ酸は、システイン(Cys)を除く任意のアミノ酸を許容するように変化させた。
【0052】
本明細書に提供された結合ポリペプチドは、Nおよび/またはC末端に付加または切断を含むことが可能である。こうした修飾結合ポリペプチドは、cMetへ結合すると期待
される。例えば、−GGGKリンカー(配列番号513)が本明細書に提供された結合ポリペプチドのN末端に存在することが可能である。−GSGK(配列番号551)または−GSGSK(配列番号652)のごとき他のリンカーを使用することができる。鋳型のループ部分および本明細書に提供された配列を含む結合ポリペプチドは、cMetへ結合することが期待され、そして本発明にまた包含されている。鋳型のループ部分および配列は、ジスルフィド結合を形成すると期待される2つのシステイン残基を含むその間の配列を含んでおり、それにより、ペプチドループ構造を発生させている。さらに、本発明の結合ポリペプチドは、Nおよび/またはC末端に追加のアミノ酸残基を含むことが可能である。
【0053】
ファージディスプレイライブラリーは、ポリペプチド鋳型のためのコード配列内に設計された一連の変異(mutation)または変動(variation)を作ることにより作り出し、ペ
プチド類似体をコードしている各々の変異体は全体の構造において、鋳型の配列中に1以上のアミノ酸変動を有していることを除いて、鋳型に対応している。新規斑入り(変異)DNAは配列多様性を提供し、そして各々の形質転換体ファージは、DNAによりコードされた当初の鋳型アミノ酸配列の1つの変異体を示し、莫大な数の異なったしかし構造的に関連したアミノ酸配列を示すファージ集団(ライブラリー)を導いている。アミノ酸変動は、少なくともほとんどの置換で、その構造を有意に改変することなく、結合ペプチドまたはドメインの結合特性を改変することが期待される。変動のために選択されたアミノ酸位置(可変アミノ酸位)は、表面アミノ酸位、即ち、ドメインがその最も安定なコンホメーションにある場合、ドメインの外部表面(即ち、溶液に暴露されている表面)に現れる、ドメインのアミノ酸配列中の位置であろう。最も好ましくは、変動されるべきアミノ酸位置は、置換の効果を最大にするように、お互いに隣接しているかまたは近接しているであろう。
【0054】
前に示したように、Kayら、ペプチド及びタンパク質のファージディスプレイ:実験室マニュアル(アカデミックプレス社、サンディエゴ、1996)および米国特許第5,223,409号に議論されている技術は、選択された親鋳型に対応する潜在的結合体のライブラリーの調製において特に有用である。上で議論したようなライブラリーを、こうした技術に従って調製し、そしてそれらを以下の実施例で説明するように、固定化した標的に対してcMet結合ポリペプチドをスクリーニングした。
【0055】
典型的スクリーニングにおいて、ファージライブラリーは標的またはその特定の副成分と接触させ、そして結合させる。結合体および非結合体の分離を容易にするため、標的を固形支持体上に固定化することが都合がよい。標的結合部分を有しているファージは固形支持体上の標的と複合体を形成し、一方、非結合ファージは溶液中に残り、そしてそれは過剰の緩衝液で洗い流すことが可能である。結合されたファージは次に、極端なpH(pH2またはpH10)へ緩衝液を変化させることにより、緩衝液のイオン強度を変化させることにより、変性剤を加えることにより、または他の既知の手段により、標的から遊離させる。本発明のポリペプチドを示している結合ファージを単離するため、タンパク質溶離を行う。即ち、いくらかのファージは、HGF溶液を使用して標的から溶離する(競合溶離)。加えて、例えば、HGFでの1晩インキュベーションの間に競合溶離できない、非常に高い親和性結合ファージは、大腸菌細胞感染のための基質へまだ結合されているファージを使用することにより捕捉した。
【0056】
次に回収されたファージは、細菌細胞感染を通して増幅可能であり、そして非結合体が枯渇されて結合体が濃縮されている新しいプールを用いてスクリーニングプロセスを繰り返すことが可能である。ほんの少数の結合ファージの回収でさえも、プロセスを完了させるまで行うのに十分である。数ラウンドの選択後、結合プール中の選択されたファージクローンから誘導された結合部分をコードしている遺伝子配列を、以下に記載した慣用的方
法により決定し、標的へのファージの結合親和性を与えるペプチド配列を明らかにする。選択プロセスが働いている場合、集団の配列多様性は、所望の結合体が残るまで、選択の各々のラウンドで減少する。配列は少数の関連結合体、典型的には各々のライブラリーからの、約10〜1010の最初の候補の中から10〜50へ収斂する。選択の各々のラウンドで回収されたファージ数の増加、そしてもちろん、密接に関連した配列の回収は、ライブラリーの収斂がスクリーニングで起こったことの良好な指標である。結合ポリペプチドのセットを同定した後、配列情報は、追加の所望の特性を有しているメンバーのための偏った、他の2次ファージライブラリーを設計するために使用することが可能である。
【0057】
ジスルフィド結合ループの形成は、こうしたペプチドへの親和性および特異性を増加させることを導くので都合がよい。しかしながら、血清において、ジスルフィド結合は遊離システインまたは他のチオール含有分子により解離し得る。従って、ジスルフィド架橋を別のより低い反応性の結合で置き換えるようにシステイン残基を修飾するのが有用であろう。−CH−S−S−CH−架橋は、硫黄間の2面角が90度に近い、好ましい幾何学的配置を有しているが、正確な幾何学的配置は、他の側基および分子の結合状態の状況により決定される。結合ループの架橋を閉じる好ましい修飾は、全体の結合の長さおよび角度をできるだけ保存しようとするであろう。適した、こうした代替架橋には−CH−S−CH−CH−、−CH−CH−S−CH−、−CH−CH−S−CH−CH−のごときチオエーテル結合;−CH−NH−CO−CH−および−CH−CO−NH−CH−のごときラクタムまたはアミド結合;−CH−CH−O−CH−CH−のごときエーテル結合;−(CH−(式中、n=4、5または6)のごときアルキレン架橋;結合−CH−NH−CO−NH−CH−、および当該技術分野で知られている同様の基が含まれる。
【0058】
安定なジスルフィド連結結合ループを含むポリペプチドが最も好ましいが、例えば1方または両方のシステイン残基の置換により、前記の配列から誘導される線状ポリペプチドを容易に調製することが可能であり、それはジスルフィド結合を含有している本来のポリペプチドの少なくともいくらかのcMet結合活性を保持することができる。Cysに関するこうした置換の作製においては、アミノ酸Gly、SerおよびAlaが好ましく、そして、ポリペプチドが2量体化することができる、または溶液中の他の遊離チオール基と反応することができる1つのCysを残さないように、両方のCys残基を置換するのも好ましい。cMet結合特性を保持するこうした線状化誘導体のすべてが、本発明の範囲内である。
【0059】
本発明のポリペプチドの直接合成は、固相ペプチド合成、液相合成その他を含む慣用的技術を使用して達成することが可能である。固相ペプチド合成が好ましい(例えば本明細書において援用される、Stewartら、固相ペプチド合成(W.H.Freeman
Co.、サンフランシスコ、1989);Merrifield,J.、1963、Am.Chem.Soc.、85:2149−2154;BodanszkyおよびBodanszky、ペプチド合成の実践(Springer−Verlag、ニューヨーク、1984)を参照されたい)。
【0060】
本発明に従ったポリペプチドはまた、サービスとしてペプチド合成を提供している会社によって商業的に調製することも可能である(例えば、BACHEM Bioscience,Inc.、キングオブプロシア、PA;Quality Controlled Biochemicals,Inc.、ホプキントン、MA)。
【0061】
パーキン−エルマー アップライド バイオシステムズにより製造されているごとき自動化ペプチド合成機もまた利用可能である。
ポリペプチド化合物は好ましくは、化学的または組換え技術により単離または合成され
た後に精製する。精製目的には、使用可能な多くの標準法が存在しており、C−、C−またはC18−シリカのごときアルキル化シリカカラムを使用する、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)が含まれる。例えば、通常少量のトリフルオロ酢酸を含む、水性緩衝液中のアセトニトリルのような、有機含有量を増加させる濃度勾配移動相を、一般的に精製を達成するために使用する。イオン交換クロマトグラフィーもまた、ペプチドの電荷に基づいて、ペプチドを分離するために使用することが可能である。ポリペプチドの純度の程度は、HPLCでの主たる大きなピークの同定を含む、多様な方法により決定することが可能である。HPLCカラム上、投入物質の少なくとも95%である、単一ピークを生じるポリペプチドが好ましい。さらにより好ましいのは、HPLCカラム上、投入物質の少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに99.5%以上である、単一ピークを生じるポリペプチドである。
【0062】
上記のいずれかの技術を使用して得られたペプチドが、本発明の組成物における使用のための所望のペプチドであることを確かめるため、ペプチド成分の分析を実施することができる。こうした成分分析は、ペプチドの分子量を決定するための高分解能質量分析法を使用して行うことが可能である。あるいは、水性酸中でペプチドを加水分解し、そしてHPLCまたはアミノ酸分析機を使用して、混合物の成分を分離し、同定しそして定量することにより、ペプチドのアミノ酸含量を確認することが可能である。ペプチドを逐次的に分解し、そして順にアミノ酸を同定する、タンパク質配列決定装置もまたペプチドの配列を決定するために使用することが可能である。
【0063】
本発明に従ったcMet結合ポリペプチドはまた、本発明に従ったポリペプチドをコードしている核酸(ポリヌクレオチド)を利用し、そして次に、組換え的にそれらを発現させる、即ち、宿主細胞が所望のcMet結合ポリペプチドを産生するように、既知の方法で外因性核酸分子を導入することで宿主細胞を操作することによる、組換えDNA技術を使用して産生することも可能である。こうした方法は、当業者の能力内である(例えば本明細書において援用される、Davisら、分子生物学の基本法(1986)を参照されたい)。本明細書に記載したような短いペプチドの組換え産生は、直接合成と比較して実際的ではないであろう。しかしながら、本発明のcMet結合部分がハイブリッドポリペプチドまたは融合タンパク質に取り込まれている場合は、産生の組換え手段は非常に有利でありうる。
【0064】
本発明の実施において、別のタンパク質または標的と相対的なcMetに対するcMet結合部分の親和性の決定は有用な尺度であり、そしてcMetに対する特異性と称される。結合を定量しそして親和性を決定するための標準アッセイには、平衡透析法、平衡結合法、ゲル濾過法または、結合部分およびその標的の相互作用で生じる多数の分光学的変化(蛍光偏光における変化のごとき)のモニタリングが含まれる。これらの技術は、リガンド(またはタンパク質)濃度の関数として、結合および遊離リガンドの濃度を測定する。結合ポリペプチドの濃度([結合])は、以下の式に記されているように、遊離ポリペプチドの濃度([遊離])およびポリペプチド、即ち、cMet上の結合部位の濃度(N)に関連している:
[結合]=N×[遊離]/((1/K)+[遊離])
この方程式の解は、結合親和性の定量的尺度である会合定数Kを与える。会合定数Kは、解離定数Kの逆数である。Kが親和性の尺度としてより頻繁に報告されている。好ましいcMet結合ポリペプチドは、例えば、1ナノモル(nM)未満、1nM〜100マイクロモル(μM)(これには10nM未満、20nM未満、40nM未満、60nM未満、80nM未満、1μM未満、5μM未満、10μM未満、20μM未満、40μM未満、60μM未満、および80μM未満のK値を含んでいる)の範囲のcMetに対するKを有している。
【0065】
cMet結合部分が造影剤として用いられる場合、結合特異性の他の側面が重要になる;造影剤は、標的(例えば活性化細胞上のcMet)に対する造影剤の結合が、画像化過程を通して安定な平衡状態ではないであろう動的なシステムで作用する。例えば、造影剤が最初に注射された時、造影剤および造影剤−標的複合体の濃度は急速に増加する。しかしながら、注射のすぐ後、循環している(遊離)造影剤は腎臓または肝臓を通して排除され始め、そして造影剤の血漿濃度は低下し始める。血漿中の遊離造影剤濃度のこの低下は、ついには造影剤−標的複合体の解離をひき起こす。造影剤の有用性は、造影剤の排除速度と相対的な造影剤−標的解離の速度の相違に依存している。理想的には、解離速度が排除速度と比較して遅いであろうし、それにより長い造影時間を生じ、その間、血漿中では高い濃度の造影剤−標的複合体および低い濃度の遊離造影剤(バックグラウンド信号)が存在している。
【0066】
解離速度の定量的測定は、光ファイバー蛍光定量(例えば、AndersonおよびMiller、1988、Clin.Chem.、34:1417−21、を参照されたい)、表面プラスモン共鳴(例えば、Malmborgら、1996、J.Immnunol.Methods、198:51−7;およびSchuck、1997、Curr.Op.Biotechnol.、8:498−502、を参照されたい)、共鳴鏡、およびゲート開閉共役平面導波(例えば、Hutchinson、1995、Molec.Biotechnol.、3:47−54、を参照されたい)のごとき、当該技術分野では既知のいくつかの方法を使用して実行することが可能である。自動化バイオセンサーが結合速度論を測定するために商業的に利用可能である:BIAcore表面プラスモン共鳴センサー(Biacore AB、ウプサラ SE)、IAsys共鳴鏡センサー(Fisons Applied Sensor Technology、ケンブリッジ GB)、BIOS−1ゲート共役平面導波センサー(Artificial Sensor Instruments、チューリッヒ CH)。
【0067】
標的発現細胞へ結合する能力で、ファージディスプレイにより同定されたポリペプチドをスクリーニングする方法
本発明の別の側面において、標的を発現している細胞へ結合する能力で(標的を発現していない細胞へは結合しない)、ファージディスプレイにより同定された結合ポリペプチドをスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、ファージディスプレイにより同定されたペプチドのスクリーニングに付随する重大な問題に取り組んでいる:しばしば、そのようにして同定されたペプチドは、慣用的アッセイにおいて、標的発現細胞に対し、スクリーニングされるべき標的への十分な親和性を有していない。しかしながら、標的を発現する細胞へファージディスプレイ同定ペプチドが結合することを(そして発現しない細胞へは結合しないことを)確かめることは、それらが単量体としてまたは多量体構築物の一部として使用されているにせよ、潜在的インビボ標的化部分である結合ペプチドの同定において、決定的な情報の一部である。本方法は、多価結合に付随する親和性および結合活性(avidity)の増加を利用し、そして標的発現細胞に対する低い親和性を有する
ポリペプチドのスクリーニングを可能にする。
【0068】
本方法は一般的に、1以上の結合ポリペプチドを含んでいる多量体構築物の製造およびスクリーニングから成っている。例えば、標的への結合でファージディスプレイにより同定されたポリペプチドをビオチニル化し、そしてアビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラビジンと複合体形成させて、4量体構築物を形成させる。これらの4量体構築物は次ぎに、所望の標的を発現する細胞および発現しない細胞とインキュベートし、そして4量体構築物の結合を検出する。結合は、当該技術分野では既知の任意の検出法を使用して検出することが可能である。例えば、結合を検出するため、アビジン、ストレプトアビジンまたはニュートラビジンを検出可能なマーカー(例えば、放射性標識、蛍光標識、またはHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)、TMB(テトラメチルベンジジン)または
アルカリ性ホスファターゼのごとき色変化を起こす酵素標識)と結合することができる。
【0069】
ビオチニル化ペプチドは、好ましくはニュートラビジン−HRPと複合体形成させる。ニュートラビジンは、ニュートラビジン中にレクチン結合炭化水素部分および細胞接着レセプター−結合RYDドメインが存在しないため、他の代替物よりも、分子に対するより低い非特異的結合を示す(Hiller,Y.ら、1987.Biochem.J.、248:167−171;Alon,R.ら、1990.Biochem.Biophys.Res.Commun.、170:1236−41)。
【0070】
4量体構築物は、標的を天然に発現する細胞、または標的を発現するように組換えDNA技術により工学処理されている細胞(例えば、トランスフェクト体、形質転換体その他)に対してスクリーニングすることが可能である。標的を発現するようにトランスフェクトされた細胞が使用され、偽トランスフェクト細胞(即ち、標的をコードする遺伝子物質なしでトランスフェクトされた細胞)を対照として使用することが可能である。
【0071】
4量体複合体は、所望により血清存在下でスクリーニングすることが可能である。それ故、アッセイは、標的へのペプチドの結合に対する血清の影響を迅速に評価するためにも使用することが可能である。
【0072】
本明細書に記載した方法は、2以上の結合ポリペプチドを含む、2量体または多量体標的化構築物で使用のための、別個の結合ポリペプチドの組み合わせを調製する、そして評価することにおいて特に有用である。ビオチン/アビジン複合体の使用は、1〜4の異なった結合ポリペプチドを含んでいる4量体構築物の比較的容易な調製を可能にする。さらに、標的化構築物の親和性および結合活性は、同一の標的上の異なったエピトープへ結合する2以上の標的化部分の包含により増加可能であることが現在見出されている。本明細書に記載したスクリーニング法は、こうした多量体構築物中に含まれている場合、親和性を増加させることができる結合ポリペプチドの組み合わせを同定することにおいて有用である。
【0073】
好ましい態様において、本明細書に記載したスクリーニング法は、本明細書で記載したようなcMet結合ポリペプチドのごとき、ファージディスプレイにより同定されたcMet結合ポリペプチドをスクリーニングするために使用することが可能である。これらの方法は、cMetを発現する、またはcMetを発現するように工学処理された細胞に対するcMet結合ポリペプチドの特異的結合を評価するために使用することが可能である。本発明のビオチニル化cMet結合ポリペプチドの4量体複合体、および、例えば、ニュートラビジン−HRPは調製可能であり、cMetを発現するようにトランスフェクトされた細胞、ならびに、cMetを発現しない偽トランスフェクト細胞をスクリーニングすることが可能である。
【0074】
本アッセイは、ポリペプチドの単座Kが200nM〜300nMである場合でさえも、cMet発現細胞へ結合する(そしてcMetを発現しない細胞へは結合しない)cMet結合ポリペプチドを同定するために使用することが可能である。本アッセイは、本発明の単一cMet結合ポリペプチドの4つのコピーを含んでいるホモ4量体、ならびにヘテロ4量体(2以上の異なったcMet結合ポリペプチドを含んでいる構築物)をスクリーニングするために使用することが可能である。本明細書に記載した方法は、多量体構築物で使用するためのcMet結合ポリペプチドの組み合わせ、特に、cMetの異なったエピトープへ結合する2以上のcMet結合ポリペプチドを含んでいる構築物を評価するために特に有用である。
【0075】
cMet結合ポリペプチドの修飾または最適化
議論したように、cMet結合ポリペプチドの修飾または最適化は本発明の範囲内であり、そして修飾または最適化されたポリペプチドは「cMet結合ポリペプチド」の定義に含まれる。特に、ファージディスプレイにより同定されたポリペプチド配列は、その効力、薬物動態学的挙動、安定性および/または他の生物学的、物理的および化学的特性を修飾して最適化することが可能である。
【0076】
アミノ酸残基の置換
例えば、生じたポリペプチドが上記の特質と同様なまたは改良されたプロフィールを有するであろうことを期待して、親ポリペプチド配列中の、以下の同じ立体的配置のおよび/または保存的アミノ酸変化を行うことが可能である。
【0077】
アルキル置換疎水性アミノ酸の置換:分枝、環状および直鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニル置換を含んだ、C10炭素脂肪族側鎖により置換された、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ノルロイシン、S−2−アミノ酪酸、S−シクロヘキシルアラニンまたは他の単純α−アミノ酸を含む。
【0078】
芳香族置換疎水性アミノ酸の置換:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ビフェニルアラニン、1−ナルチルアラニン、2−ナルチルアラニン、2−ベンゾチエニルアラニン、3−ベンゾチエニルアラニン、ヒスチジン、前に掲げた芳香族アミノ酸の、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アザ、ハロゲン化(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)またはアルコキシ(C〜C)−置換形、を含み、その実例となる例は以下のものである:2−、3−または4−アミノフェニルアラニン、2−、3−または4−クロロフェニルアラニン、2−、3−または4−メチルフェニルアラニン、2−、3−または4−メトキシフェニルアラニン、5−アミノ−、5−クロロ−、5−メチル−または5−メトキシトリプトファン、2’−、3’−または4’−アミノ−、2’−、3’−または4’−クロロ−、2、3または4−ビフェニルアラニン、2’−、3’−または4’−メチル−2、3または4−ビフェニルアラニンおよび2−または3−ビリジルアラニン。
【0079】
塩基性機能を含んでいる置換アミノ酸:アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、ホモアルギニン、前記のアミノ酸のアルキル、アルケニルまたはアリール置換(C〜C10、分枝、線状または環状)誘導体、置換基はヘテロ原子(α窒素または遠位窒素または複数の窒素のごとき)上であるかまたは、α炭素上(例えば、プロ−R位の)、を含む。実例となる例には、N−イプシロン−イソプロピル−リジン、3−(4−テトラヒドロピリジル)−グリシン、3−(4−テトラヒドロピリジル)−アラニン、N,N−γ,γ’−ジエチル−ホモアルギニンが含まれる。アルキル基がα炭素のプロ−R位を占有する、αメチルアルギニン、αメチル2,3−ジアミノプロピオン酸、αメチルヒスチジン、αメチルオルニチンのごとき化合物もまた含まれる。アルキル、芳香族、ヘテロ芳香族(ここにおいて、ヘテロ芳香族基は、1以上の窒素、酸素または硫黄原子を、単独でまたは組み合わせて有する)カルボン酸、または任意の多くの既知の活性化誘導体(塩化物、活性エステル、活性アゾライドおよび関連誘導体のごとき)およびリジン、オルニチンまたは2,3−ジアミノプロピオン酸、から形成されたアミドもまた含まれる。
【0080】
酸性アミノ酸の置換:グルタミン酸、ホモグルタミン酸、チロシン、2,4−ジアミノプロピオン酸、オルニチンまたはリジンのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリール スルホンアミド、およびテトラゾール置換アルキルアミノ酸を含む。
【0081】
側鎖アミド残基の置換:アスパラギン、グルタミン、およびアスパラギンまたはグルタミンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含む。
ヒドロキシ含有アミノ酸の置換:セリン、スレオニン、ホモセリン、2,3−ジアミノプロピオン酸、およびセリンまたはスレオニンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含む。上に掲げた各々の分類内のアミノ酸は、同一の基のもう1つで置換することが可能なことも理解されている。
【0082】
アミド結合の置換
本発明の範囲内である別の型の修飾は、ポリペプチドの主鎖内のアミド結合を置換するものである。例えば、血清安定性を弱め、生物活性の減少させるまたは破壊する、望まれないタンパク質分解または他の分解経路を減少させるまたは排除するため、または、コンホメーション融通性を制限するまたは増加させるため、存在しているコンホメーションを模倣するまたは望まれる様式にコンホメーションを改変する官能性で、ポリペプチドの主鎖中のアミド結合を置換することが可能である。こうした修飾は、増加した結合親和性または改良された薬物動態学的挙動を生み出すことが可能である。ペプチドの分野におけるこれらの知識から、生じたペプチドは、同一または改良された活性を有することができることを期待して、2つのアミノ酸を連結している任意のアミド結合に、以下のアミド結合変形を行うことが可能であることが理解されている:α−N−メチルアミドまたはペプチドアミド主鎖チオアミドの挿入、同族2級アミンを産生するためのカルボニルの除去、セミカルバゾン誘導体を産生するための1つのアミノ酸のアザアミノ酸による置き換え、アミド結合代用物としてのE−オレフィンおよび置換E−オレフィンの使用。
【0083】
D−アミノ酸の導入
本発明の範囲内の別のアプローチは、不安定なペプチド結合に対して遠位のまたは近位の、D−アラニンまたは他のD−アミノ酸の導入である。この場合、こうしたD−アミノ酸置換は、置き換えられているL−アミノ酸の側鎖に対し、その側鎖が保存的置換ではないD−アミノ酸で行うことが可能であり、そして時には、そうしなければならないことも当業者には理解されている。このことは、キラリティーにおける、そしてその故に、側鎖配向の相違のためであり、それは、置き換えられたL−アミノ酸の側鎖により供されるものとは異なった電荷、疎水性、立体的要求の部分を有する、標的の結合部位のあらかじめ探索されていない領域へアクセスすることを生じることがありうる。
【0084】
薬物動態学的または薬物動力学的特性を改良するための修飾
特定の応用における1以上のcMet結合ポリペプチドの使用は、薬物動態学的または薬物動力学的挙動を改良するためのペプチドの修飾またはペプチドの処方により利することができることも理解されている。ペプチドの特性を、所望の物理的または化学的特性をもたらすことが予期される部分の結合により変化できることが期待される。こうした部分は、ペプチドのNまたはC末端へ、または適切に位置したリジンまたはリジン誘導体、2,3−ジアミノプロピオン酸、オルニチンまたはペンダント(pendant)アミノ基または
ペンダントアルコキシアミンまたはヒドラジン基を有する、ペプチド中の他のアミノ酸のペンダントアミノ基へ、酸またはアミンを使用して、各々、アミド結合または尿素結合を経て、付け加えることが可能である。逆に、AspまたはGluの側鎖のごとき酸性アミノ酸側鎖は、所望の修飾官能性を有しているアミンで選択的にアンマスクし、そしてアミド化することが可能であり、またはそれらはペプチド鎖内への取り込み前に、この様式で修飾可能である。導入された部分は、問題とするペプチド、およびその特性の修飾ための実存の要求に依存して、親水性、塩基性または非極性アルキルまたは芳香族の基である基でありうる。
【0085】
アミノ酸残基のグリコシル化
本発明の範囲内のさらに別の修飾は、cMet結合ポリペプチド中の1以上のアミノ酸残基(例えば、セリンまたはスレオニン残基)のグリコシル化である。標準条件を使用して実行することが可能なグリコシル化は、溶解性を促進するため、薬物動態学および薬物
動力学を改変するため、またはグリコシド部分が関与する特異的または非特異的相互作用を経た結合を促進するために使用することが可能である。
【0086】
塩の形成
水溶解性を増加させるまたは減少させる、またはこれらのペプチドの処方を容易にすることができる、異なった塩を形成するのも本発明の範囲内である。これらには、限定するわけではないが、N−メチルグルカミン(メグルミン)、酢酸塩、シュウ酸塩、アスコルビン酸塩その他を含むことができる。
【0087】
構造的特性を保持した構造修飾
本発明の範囲内のさらに別の修飾は、環状ポリペプチドの切断である。本発明の多くのポリペプチドの環状性は、特に環内でペプチド配列が利用できるコンホメーションの空間を限定している。それ故、N末端かまたはC末端領域での、環に対して遠位またはさらには近位の1以上の残基によるペプチドの切り詰めは、類似のまたは改良された生物学的活性を有する切り詰めペプチドを提供することができる。結合活性の原因である、アミノ酸の独特の配列は、3アミノ酸ほど小さくても、RGDペプチドで記述されているように同定することが可能である(Plow,E.ら、1987.Blood、70:110−5;Oldberg,A.ら、1988.J.Biol.Chem.、263:19433−19436;Taub,R.ら、1989.J.Biol.Chem.、264:259−65;Andrieux,A.ら、1989.J.Biol.Chem.、264:9258−65;および米国特許第5,773,412号および第5,759,996号、これらの各々は本明細書において援用される)。
【0088】
大きなペプチド環は、無関係のアミノ酸を除去しても実質的に決定的結合残基を含んでいるように、実質的に短くすることが可能であることが文献に示されている。本明細書において援用される、米国特許第5,556,939号を参照されたい。
【0089】
短くされた環状ペプチドは、ジスルフィド結合、または適当に位置したカルボン酸基およびアミノ基のアミド結合を使用して形成することが可能である。
さらに、回転特性を安定化するために(特にグリシンの場合)、ペプチド配列へD−アミノ酸を加えることが可能である。別のアプローチにおいて、α、β、γまたはδジペプチドまたは回転模倣体(α、β、γまたはδ回転模倣体のごとき)を、そのいくつかは図1A〜1Cに示されている、ペプチドの構造モチーフおよび回転特性を模倣し、そして同時にタンパク質分解に対する安定性を提供し、そして、例えば、コンホメーション安定性および溶解性のごとき他の特質を促進するために用いることが可能である(構造1A:Hartら、J.Org.Chem.、64、2998−2999(1999);構造1B:Hanessianら、分子医学法、第23巻:ペプチドミメティクス プロトコール中、「多目的ペプチド模倣体骨格の合成」、W.Kazmierski、監修(Humana Press Inc.、トトワ、ニュージャージー、1999)、第10章、pp.161−174;構造1C:WO01/16135号)。
【0090】
ジスルフィド模倣体の置換
本発明のcMet結合ポリペプチド内のジスルフィド結合に対するジスルフィド模倣体の置換もまた、本発明の範囲内である。
【0091】
99mTcに基づいた放射性医薬品、または他の同位元素に基づいた他の有用な放射性医薬品の発生にジスルフィド含有ペプチドが用いられた場合、重大な問題はジスルフィド結合の存在である。例えば、ジスルフィド結合の完全性は、ペルテクネテートイオンの還元、そして続いての、Tc特異的キレート基を有している物質内への還元型Tc種の取り込みに頼っている経路を経て99mTcを取り込むように設計された過程の間、維持する
ことは困難である。これは、放射性医薬品の1工程製造のために考案されたキットで普通に使用される還元剤により、ジスルフィド結合がかなり容易に還元されるためである。それ故、ジスルフィド結合がTcキレート化の間に還元されることがありうる容易さは、ジスルフィド結合の模倣体での置換を必要とするであろう。従って、本発明の範囲内の別の修飾は、本明細書に記載されている方法、または当業者には既知である方法を利用してジスルフィド部分を模倣体で置換し、一方、本発明のcMet結合ポリペプチドの活性および他の所望の特性を維持することである。
【0092】
1)オキシムリンカー
多くの状況において、オキシム部分がリンカーとして研究者により用いられてきた(Wahl,F.およびMutter,M.、1996.Tetrahedron Lett.、37:6861−6864)。図2に示したように、アミノアルコール官能性を含んでいるアミノ酸4、およびアルコキシアミノ官能性を含んでいる5を、ペプチド鎖内に取り込むことが可能である(ペプチド鎖の末端である必要性はない)。ペプチド形成後、側鎖保護基を取り除くことが可能である。アルデヒド基を次ぎに、アンマスクし、そしてオキシム結合を形成させる。
【0093】
2)ランチオニンリンカー
ランチオニンは環状スルフィドであり、ジスルフィド結合(S−S)が炭素-硫黄(−
S)結合で置き換えられている。それ故、還元に対する不安定性ははるかに低い。ランチオニンは、以下に議論する方法を含む、多数の方法により製造することが可能である。
【0094】
1)ブロモアセチル化ペプチドを使用するランチオニンの製造
ランチオニンは既知の方法を使用して容易に製造することが可能である(Robey,F.およびFields,R.、1989.Anal.Biochem.、177:373−377;Inman,J.ら、1991.Bioconjug Chem.、2:458−463;Ploinsky,A.ら、1992.J.Med.Chem.、35:4185−4194;Mayerら、第15回米国ペプチドシンポジウム会報中、「ペプチド、ペプチド科学のフロンティア」、TamおよびKaumaya(監修)、1995年6月14−19日、ナッシュビル、テネシー(Klumer Academic Pub.、ボストン)、pp.291−292;Wakaoら、日本公開特許公報JP07300452 A2(1995))。Boc自動化ペプチド合成を使用してのペプチドの製造、続いての、ペプチド末端とブロモ酢酸とのカップリングは、ブロモアセチル化ペプチドを好収率で与えた。ペプチドの切断および脱保護は、HF/アニソールを使用して達成することが可能である。もしペプチド鎖がシステイン基を含んでいれば、その反応性は低pHで制御することが可能である。もし媒質のpHが6〜7へ上昇すると、その時はペプチドの重合化かまたは環化のいずれかが起こる。重合化は高濃度(100mg/mL)で有利であり、一方、環化、例えば、へ環化する(図3に示したように、本明細書において「スキーム1」と称される)、は低濃度(1mg/mL)で有利である。Inmanらは、Bocペプチド合成で用いることができるブロモアセチル基の坦体としてのNa−(Boc)−Ne−[N−(ブロモアセチル)−β−アラニル]−L−リジンの使用を示しており、従って、配列中の任意の場所での、ブロモアセチル運搬部分の配置を可能にしている。予備的実験において、システインから4〜6のアミノ酸離れているブロモアセチル−リジンを有するペプチドが環化する傾向があることが見出されており、この戦略の潜在的有用性を示している。
【0095】
2)アクリルアミドへのシステインチオール付加を経たランチオニンの製造
この戦略のいくつかの変法を実行することが可能である。樹脂結合セリンを、ブロム化−デヒドロブロム化−チオール付加シークエンス、かまたはジスクシンイミジルカーボネートによる脱水、続いてのチオール付加、を使用して樹脂上にランチオニン環を製造する
ために使用することが可能である。アクリルアミドへのチオールの共役付加は詳細に示されており、そしてアクリルアミドへの2−メルカプトエタノールの付加についての参考文献が提供されている(Wakaoら、日本公開特許公報JP07300452 A2、1995)。
【0096】
3)アリールボロン酸およびチロシンの分子内環化からのジアリールエーテルまたはジアリールアミン結合
酢酸第2銅存在下、空気雰囲気下、室温、ジクロロメタン中で、塩基としてピリジンかまたはトリエチルアミンを使用し、非対称ジアリールエーテルおよび関連するアミンを好収率(98%ほどの高さ)で提供する、アリールボロン酸とフェノール、アミンおよびヘテロ環式アミンとの反応が報告されている(Evans,D.ら、1998.Tetrahedron Lett.、39:2937−2940;Chan,D.ら、1998.Tetrahedron Lett.、39:2933−2936;Lam,P.ら、1998.Tetrahedron Lett.、39:2941−2944)。フェノール成分としてN−保護チロシン誘導体の場合も、収率は98%もの高さであった。このことは、アミノ酸アミド(ペプチド)は転換に対して安定であること、および収率が高いことが期待される。ラクタムへのペプチドの容易な分子内環化を考慮した、分子内反応の前例が存在しており、分子内ビアリールエーテル形成はSNRr反応、そして高希釈条件下または樹脂上、ここにおいて偽希釈効果が高希釈条件を模倣している、での分子内環化反応の普遍性に基づいていた。
【0097】
4)ペプチドアルデヒドとシステイン部分の分子内反応を経た、チアゾリジン結合での環状ペプチドの形成
用いることができる別のアプローチには、適切に位置された隣接アミノメルカプタン官能性(通常、線状配列の末端の、または例えば、リジンの側鎖窒素を経て配列に繋ぎ止められたシステインの配置から誘導される)およびアルデヒド官能性の分子内環化が含まれて、2環式ペプチドの形成を生じるチアゾリジンを提供し、その1つの環は主鎖中の残基により形成された環であり、そして第2の環はチアゾリジン環で存在している。スキーム2(図4)は例を提供している。必要とされるアルデヒド官能性は、適切に位置された隣接アミノアルコール官能基のメタ過ヨウ素酸ナトリウム切断により発生することが可能であり、それは、リジン部分の側鎖アミノ基への付加物により、鎖へ繋ぎ止められている非保護セリンとして存在することが可能である。いくつかの場合において、必要とされるアルデヒド官能基は、鎖のC末端またはN末端での、保護アルデヒド誘導体のアンマスキングにより発生する(Botti,P.ら、1996.J.Am.Chem.Soc.、118:10018−10034)。
【0098】
5)ペンダントアミノ基と樹脂上のカルボキシル基の分子内環化に基づいたラクタム
大環状ペプチドは、頭−尾によるかまたはペンダント基環化によるラクタム形成により製造することが可能である。基本的戦略は、選択的に除去することが可能なアミン保護基およびカルボキシ保護基が存在する、完全に保護されたペプチドを製造することである。直交保護スキームが開発されている。開発された方法の内、アリル、トリチルおよびDde法がほとんど用いられてきた(Mellorら、Fmoc固相合成:実践アプローチ中、「修飾されたペプチドの合成」、WhiteおよびChan(監修)(オックスフォード大学出版、ニューヨーク、2000)、第6章、pp.169−178)。Ddeアプローチは、カルボン酸官能基(Dmabエステル)およびアミノ基(Dde基)の両方に類似の保護基を利用するので、興味を引かれる。両方ともDMF中、室温にて、2〜10%ヒドラジンで除去される。もしくは、Ddeをアミノ基に対して使用でき、そしてアルル基をカルボキシルに対して使用できる。
【0099】
標準ペプチドカップリング試薬(HATU、PyBOPその他のごとき)を経る分子内
カップリングにより利用できるラクタム官能基は、ジスルフィド結合の代用物として作用することが可能である。Dde/Dmabアプローチはスキーム3(図5)に示されている。
【0100】
従って、例えば、Dde保護リジンおよびDmabエステルを含んでいる線状配列は、低い充填での(〜0.1−0.2ミリモル/g)Tentagelに基づいたRinkアミド樹脂上で製造することが可能である。ヒドラジンによる両方の官能基の脱保護、続いての樹脂上での環化により、所望の生成物を得る。続いて、樹脂からの切断および精製も実施することができる。ペプチドのN末端の官能化のためには、トランス−4−(iv−Dde)メチルアミノシクロヘキサンカルボン酸または4−(iv−Dde)メチルアミノ安息香酸のごときジアミノ酸が必要とされることが理解されている。代替のシナリオは、樹脂からの切断の間、分子内ラクタム形成に安全な捕捉法を用いることである。
【0101】
6)オレフィンメタセシス(metathesis)に基づいた環状ペプチド
Grubbs反応(スキーム4、図6)は、オレフィン結合のメタセシス/環化を含んでいる(Schusterら、1997.Angew.Chem.Int.Edn Engl.、36:2036−2056;Millerら、1996.J.Am.Chem.Soc.、118:9606−9614)。もし出発物質がジオレフィン16であれば、得られる生成物は環状化合物17であろうことが容易にわかる。本反応は、オレフィン官能化ペプチドからの環の創造に応用されてきた(Pernerstorferら、1997.Chem.Commun.、20:1949−50;Clarkら、1999.Chem.Eur.J.、5:782−792;Blackwellら、1998.Angew.Chem.Int.Ed.、37:3281−3284;Ripka,A.ら、1998.Bioorg.Med.Chem.Lett.、8:357−360;Millerら、1996.J.Am.Chem.Soc.、118:9606−9614;Clarkら、1995.J.Am.Chem.Soc.、117:12364−12365;Millerら、1995.J.Am.Chem.Soc.、117:5855−5856)。ジスルフィド結合含有ペプチドの代用物としての炭素−架橋環状ペプチドを製造するため、C−アリル化アミノ酸かまたは可能であればN−アリル化アミノ酸を製造し、そしてそれらをこの反応に用いることが可能である。
【0102】
また、オレフィン基を有する新規化合物も製造することが可能である。オレフィン含有テザー(tether)によるチロシンヒドロキシルの官能化は1つの選択肢である。リジンε−アミノ基は別の選択肢であり、例えば、アシル化部分の一部としてのオレフィン含有単位という利点を有している。もし代わりにリジン側鎖アミノ基がオレフィン含有テザーでアルキル化されていたら、それは同様にレポーターのための付着点として機能することが可能である。リジン、オルニチンまたはジアミノプロピオン酸側鎖アミノ基のためのアシル化剤としての5−ペンタン酸の使用は、別の可能性である。オレフィン含有テザーの長さはまた、構造活性相関を探求するために変化させることも可能である。
【0103】
ペプチド配列の操作
本発明の範囲内の他の修飾には、同様のまたは改良された生物学的特質を有するペプチドを得ることが期待できる、ペプチド配列の操作が含まれる。これらには、アミノ酸転位(配列中のアミノ酸の交換)、本来の配列または修飾された本来の配列に代えたレトロ−インヴェルソペプチド、ペプトイドおよびレトロ−インヴェルソペプトイド配列が含まれる。特異的残基がペプチド性の代わりにペプトイドである構造(それは完全にペプチド性でも完全にペプトイドでもないハイブリッド分子を生じる)も同様に予測される。
【0104】
リンカー
追加として、本発明内の修飾には、結合部分または結合ポリペプチドの標的化配列と、
検出可能標識または治療剤の間に、リンカーまたはスペーサーの導入が含まれる。例えば、こうしたリンカー/スペーサーの使用は、結合ペプチドの関連した特性を改良することが可能である(例えば血清安定性を増加させる、その他)。これらのリンカーには、限定されるわけではないが、置換または非置換アルキル鎖、ポリエチレングリコール誘導体、アミノ酸スペーサー、糖、または当該技術分野においては普通の脂肪族または芳香族スペーサーが含まれる。
【0105】
例えば、適したリンカーには、ホモ2官能性およびヘテロ2官能性架橋分子が含まれる。ホモ2官能性分子は、同一である、少なくとも2つの反応性官能基を有している。ホモ2官能性分子上の反応性官能基には、例えば、アルデヒド基および活性エステル基が含まれる。アルデヒド基を有しているホモ2官能性分子には、例えば、グルタルアルデヒドおよびスベルアルデヒドが含まれる。
【0106】
少なくとも2つの活性エステルを有しているホモ2官能性リンカー分子は、ジカルボン酸およびN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含んでいる。こうしたN−スクシンイミジルエステルのいくつかの例には、ジスクシンイミジル スベラートおよびジチオ−ビス−(スクシンイミジル プロピオナート)およびナトリウムおよびカリウム塩のごとき、その可溶性ビス−スルフィン酸およびビス−スルホン酸塩が含まれる。
【0107】
ヘテロ2官能性リンカー分子は、少なくとも2つの異なった反応性基を有する。反応性ジスルフィド結合を含んでいるヘテロ2官能性試薬のいくつかの例には、N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジル−ジチオ)プロピオナート(Carlssonら、1978.Biochem.J.、173:723−737)、ナトリウム S−4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオスルファートおよび4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−(2−ピリジルジチオ)トルエンが含まれる。N−スクシンイミジル 3−(2−ピリジル−ジチオ)プロピオナートが好ましい。チオール基と反応する2重結合を有している反応性基を含むヘテロ2官能性試薬のいくつかの例には、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラートおよびスクシンイミジル m−マレイミドベンゾアートが含まれる。他のヘテロ2官能性分子には、スクシンイミジル 3−(マレイミド)プロピオナート、スルホスクシンイミジル 4−(p−マレイミド−フェニル)ブチラート、スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル−シクロヘキサン)−1−カルボキシラート、マレイミドベンゾイル−5N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルが含まれる。
【0108】
さらに、上記の分子および/または部分の組み合わせであるリンカーもまた、ペプチドの特性に特別な利点を与えるために用いることが可能である。リンカーを有する脂質分子は、超音波バブル、リポソームまたは凝集に基づいた構築物の処方を可能にするために結合させることができる。こうした構築物は、診断レポーター、治療剤(例えば、治療のための化学的「弾頭」)またはこれらの組み合わせの標的化および搬送のための剤として用いることが可能である。
【0109】
cMet結合ポリペプチドの多量体構築物
本発明の1以上のcMet結合ポリペプチドの2量体、多量体または重合体を用いている構築物もまた企図される。実際、低効力ペプチドまたは小分子の結合を、2量体および多量体の形成により実質的に増加させることが可能であるという、十分な文献的証拠がある。それ故、2量体および多量体構築物(均質および異質の両方)は本発明の範囲内である。2量体構築物中のポリペプチド配列は、そのNまたはC末端で、または適切に配置されたリジン部分のN−イプシロン窒素(またはペンダントオキシアミノまたは他の求核基のごとき選択的に誘導体化可能基を有している別の官能基)で付着することが可能であり、または、適切な付着化学を用い、1以上のリンカー(例えば、本明細書において議論さ
れたリンカー)を経て連結することが可能である。このカップリング化学は、アミド、尿素、チオ尿素、オキシムまたはアミノアセチルアミド(クロロまたはブロモアセトアミド誘導体から、しかしそのように限定されるわけではない)を含むことが可能である。例えば、本発明のcMet結合ポリペプチドも2量体または多量体構築物を製造するための方法は、少なくとも以下に議論される方法を含んでいる。
【0110】
方法A
完全保護cMet結合ペプチドは、Ellman型安全捕捉樹脂上、自動化または手動Fmocペプチド合成プロトコールを使用して組み上げることが可能である(Backesら、1996.J.Am.Chem.Soc.、118:3055−56)。別に、ペプチド合成の分野では既知の標準法を使用して、ジ−リジン誘導体を2−クロロトリチル樹脂上で構築することが可能である(Fieldsら、合成ペプチド、ユーザーガイド中、「固相合成の原理および実際」、Grant、監修(W.H.Freeman Co.、ニューヨーク、1992)、第3章、pp.77−183;Barlosら、Fmoc固相ペプチド合成中、「コンバージェント(convergent)ペプチド合成」、Chan,W.C.およびWhite,P.D.、監修(オックスフォード大学出版、ニューヨーク、2000)、第9章、pp.215−228)。側鎖保護基の除去なしの2−クロロトリチル樹脂からの遊離、カルボキシル基の活性化、そして任意のアミン官能化標識基へのカップリングは、ジ−リジン誘導体を提供し、その保護ペンダント窒素原子はアンマスクできて、2つの遊離アミノ基を与える。前述の安全捕捉樹脂を活性化し、そして所望のN−脱保護標識基−官能化ジ−リジン誘導体を活性化安全捕捉樹脂へ加える。ペンダントアミノ基は安全捕捉樹脂−結合ペプチドのカルボキシ末端によりアシル化され、それはここで樹脂から脱離され、そしてジ−リジン構造の肝要な部分に相当している。ジ−リジン構築物のアミノ基の完全な反応を保証するため、大過剰の安全捕捉樹脂−結合ペプチドを用いることが可能である。このスキームにおける反応パートナーの比の最適化は、収率を最適化する。cMet結合ペプチド上の保護基は、トリフルオロ酢酸に基づいた切断プロトコールを用いて除去する。
【0111】
1つの構築物に2以上のcMet結合ペプチドが存在する、2量体および多量体構築物の合成は容易に達成される。直交保護スキーム(1つの窒素上のアリルオキシカルボニル基および他のものの上にあるFmoc基、または、例えば、他のものの上にあるiV−Dde保護基と共にFmoc基を用いて)を、前に記載したジ−リジン誘導体のペンダント窒素原子を識別するために用いることが可能である。アミノ基の1つのアンマスキング、続いての、生じた生成物と前記のような活性化安全捕捉樹脂−結合cMet結合ペプチドのカップリングは、結合された単一のcMet結合ペプチドを有しているジ−リジン構築物を提供する。第2の保護基の除去は、残っている窒素をアンマスクする(Mellorら、Fmoc固相ペプチド合成中、「修飾されたペプチドの合成」、Chan,W.C.およびWhite,P.D.監修(オックスフォード大学出版、ニューヨーク、2000)、第6章、pp.169−176)。生じた生成物は、完全に保護されたホモ2量体構築物を提供するため、別のcMet結合ペプチドを有している第2の安全捕捉樹脂と反応させることが可能であり、それはトリフルオロ酢酸で保護基の除去後、所望の物質を提供する。
【0112】
方法B
cMet結合ペプチドを、通常Fmocペプチド合成プロトコールを用いる、自動化または手動ペプチドカップリング法により、Rink−アミド樹脂上で組み立てる。ペプチドは、リンカーで官能化したC末端またはN末端、または、例えば、リジン部分のε−アミノ基のごとき追加の求核基を有することができる、リンカー−標識基構築物を有することが可能である。保護基の切断は、ペプチドの性質に依存した適切な調節剤と共にトリフルオロ酢酸を用いて達成される。完全脱保護ペプチドは次ぎに、大過剰の、商業的に入手
可能なグルタール酸 ビス−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Tyger Scientific,Inc.、プリンストン,NJ)のごとき、2官能性親電子剤と反応させる。生じたモノアミド化物、グルタール酸のモノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルは次ぎに、追加の当量の同一ペプチド、または当量の異なったcMet結合ペプチドで処理する。生じた物質のHPLCによる精製で、適した標識基を有する所望のホモ2量体構築物が得られる。
【0113】
方法C
モジュラー(modular)スキームを、前に定義したような適した標識基を有する2量体またはより高度な多量体を製造するために用いることが可能である。簡単な例示においては、fmoc部分を除去するため、fmoc−リジン(iV−Dde)Rinkアミド樹脂をピペリジンで処理する。次ぎに、ビオチン、5−カルボキシフルオレセインまたはN,N−ジメチル−Gly−Ser(O−t−Bu)−Cys(Acm)−Gly−OHのごとき、標識官能基を窒素原子へカップリングする。樹脂は次ぎに、iV−Dde基を除去するために、ヒドラジンで処理する。十分に洗浄後、樹脂に結合された1官能化ジクロロトリアジンを提供するため、DMF、NMPまたはジクロロメタンのごとき適した溶媒中、樹脂を塩化シアヌルおよびジイソプロピルエチルアミンのごときヒンダード(hindered)塩基で処理する。続いての2当量のcMet結合ペプチドによる、残存する塩素原子の連続的置換は、樹脂−結合ホモ−2量体標識基−官能化構築物を提供する(Falorni,M.ら、1998.Tetrahedron Lett.、39:7607−7610;Johnson,C.ら、1998.Tetrahedron、54:4097−4106;Stankova,M.およびLebl,M.、1996.Mol.Divers.、2:75−80)。入来ペプチドは、状況の正当な理由として保護されまたは保護されないことが可能である。保護基の切断は、前述のようなトリフルオロ酢酸に基づいた脱保護試薬を用いることにより達成され、そして所望の物質を高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0114】
これらの方法の各々において、多量体の多重性を増加させるため、リジン誘導体を連続的に用いることができることが理解されている。cMet結合ペプチド間の距離を変化させるための足場として働くために、構築物の剛性を増加させるために(お互いのおよびレポーターに関するcMet結合ペプチドの動きおよび相対的位置を束縛することにより)、必要とされる数のマスクされた、または直交的に保護された窒素原子を有する、関連した、より硬い分子の使用は、完全に方法A−C、および本明細書に記載された全ての他の方法の範囲内である。上で引用された参考文献は、その全体が本明細書において援用される。
【0115】
cMet結合ポリペプチドおよび多量体ペプチド構築物の使用
本発明のcMet結合部分はまた、細胞増殖に付随する疾患状態(例えば、過剰増殖、例えば、癌)を含む、多様な疾患状態の処置においても有用性を有している。本発明のcMet結合部分(例えば、ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物)はそれ自身を治療剤として使用することが可能であり、または、細胞増殖の部位を含む、cMet発現細胞へ、1以上の治療剤(例えば、化学治療剤、放射線治療剤、遺伝子物質その他)を局在化するために使用できる。cMetをアッセイするまたは画像化する任意の方法も用いることが可能である。本発明に従ったcMet結合部分は、インビトロまたはインビボでのcMetの検出および/または画像化に、そして特に、本明細書において説明したように、HGFおよびcMetが本質的に関与する血管新生部位の検出および/または画像化に有用である。
【0116】
インビトロ
溶液中でのHGFまたはcMetの検出のため、本発明に従った結合ポリペプチドまた
は多量体ポリペプチド構築物を検出可能に標識(例えば、蛍光的に標識、酵素的に標識または放射性または常磁性金属での標識)することが可能であり、次ぎに、溶液と接触させ、そしてその後、結合ポリペプチドおよびcMet標的間の複合体の形成を検出することが可能である。例として、蛍光的に標識されたcMet結合ペプチドを、インビトロcMetまたはHGF/cMet複合体検出アッセイに使用することが可能であり、ここにおいて、結合が起こることを可能にする条件下、cMetまたはHGF/cMet複合体が試験されるべき溶液へ、ペプチドを加える。蛍光的に標識されたcMet結合ペプチドおよびcMetまたはHGF/cMet複合体標的間の複合体は、例えば、遊離ペプチドと比較して、cMetまたはHGF/cMet複合体−結合ペプチドから生じる増強された蛍光偏光を測定することにより、検出するおよび定量することが可能である。
【0117】
もしくは、サンドイッチ型「ELISA」アッセイを使用することが可能であり、ここにおいては、cMet結合ポリペプチドを、プラスチックチューブまたはウェルのごとき固形支持体上に固定し、次ぎにcMetまたはHGF/cMet複合体標的を含んでいると疑われる溶液を固定化された結合部分と接触させ、結合していない物質を洗い流し、そして複合体形成したポリペプチドを、cMetまたはHGF/cMet複合体を認識するモノクローナル抗体のごとき適した検出試薬を使用して検出する。モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の慣用的手段により検出可能であり、例えば、放射性標識され、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのごとき酵素と結合され、または蛍光的に標識されるなど、検出可能なように標識されている。
【0118】
溶液中または溶液からの、可溶性cMetまたはHGF/cMet複合体の検出または精製のため、本発明の結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、クロマトグラフ支持体または他のマトリックス物質のごとき固形物質上に固定化することが可能であり、次ぎに、結合ポリペプチド/cMet複合体の形成に適した条件下、固定化された結合体に溶液を添加または接触させることが可能である。溶液の非結合部分は除去可能であり、そして複合体は、例えば、抗HGFまたは抗HGF/cMet複合体抗体、または抗結合ポリペプチド抗体を使用して検出することが可能であり、またはcMetまたはHGF/cMet複合体標的を、適切な溶離条件で結合部分から放出させることも可能である。
【0119】
細胞増殖の生物学およびそれを開始するおよび維持することにおけるHGFおよびcMetの役割は、多くの研究者により探求されてきており、そして研究および開発の活性な分野であり続けている。こうした研究および開発の推進において、大量のcMetまたはHGF/cMet複合体を純粋な形で精製する方法が望ましく、そして本発明に従った結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、前述の一般精製方法論を使用するその目的には特に有用である。
【0120】
インビボ
画像診断
本発明に従ったポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物の特に好ましい利用法は、例えば、過剰増殖を示す新生物腫瘍のごとき、cMet発現組織の視覚的に読み取り可能な画像を作成することである。本明細書において開示されたcMet結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物は、ポリペプチドを診断検出に適切な標識、所望によりリンカー、と結合することにより、画像化試薬へ変換することが可能である。好ましくは、他の血清タンパク質よりもcMetまたはHGF/cMetに対してより高い特異性を示しているペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を、用いられるべき検出方法論に適切な標識へ結合または連結する。例えば、cMetまたはHGF/cMet複合体結合ポリペプチドは、リンカーとまたはリンカーなしで磁気共鳴映像法(MRI)に適した常磁性キレートと、X線、ポジトロン放出断層撮影(PET)またはシンチグラフィー画像に
適した放射性標識と、超音波検出に適した超音波造影剤(例えば、安定化マイクロバブル、マイクロバルーン、ミクロスフェアーまたは気体充填「リポソーム」として称されてきたもの)と、または光学画像化色素と結合することが可能である。
【0121】
適したリンカーは本明細書に議論したものを含むことができ、置換または非置換アルキル鎖、アミノ酸鎖(例えば、ポリグリシン)、ポリエチレングリコール、ポリアミド、および当該技術分野で既知の他のリンカーが含まれる。
【0122】
一般に、検出可能なように標識されたcMet結合部分を使用する技術は、標識が患者の体の外側で検出可能である信号を発生するという前提に基づいている。例えば、検出可能なように標識されたcMet結合部分が、例えば、過剰増殖を検出することが望ましい患者に投与された場合、cMetに対するcMet結合部分の高親和性が、結合部分が過剰増殖の部位へ結合し、そしてその部位に標識が蓄積することを起こす。標識された結合部分が過剰増殖の部位に局在化するために十分な時間が与えられる。標識されたペプチドを、使用された標識の型に従って異なるであろう走査装置により検出し、そして次ぎに、信号を増殖部位の画像へ変換する。
【0123】
別の態様において、検出可能標識または放射線治療構築物により、cMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物を直接的に標識することよりもむしろ、本発明の1以上のペプチドまたは構築物を、例えば、アビジン、ビオチンまたは検出可能標識または放射治療剤を結合するであろう抗体または抗体断片と結合することが可能である。例えば、1以上のcMet結合ペプチドを、cMet発現細胞へのインビボ結合のために、ストレプトアビジン(多価結合を発生させる可能性を有する)と結合することが可能である。非結合標的化構築物を体内から排出した後、ビオチニル化検出可能標識または放射線治療構築物(例えば、放射性金属と複合体形成したキレート分子)を注入でき、そして標的化構築物が結合されている部位で濃縮されるであろう。いくつかの状況において、このアプローチは、検出可能標識の投与後、画像化が行えるまでに必要とされる時間を短縮することが可能である。それはまた、標的部位における信号雑音比を増加させることができ、そして必要とされる検出可能標識または放射治療構築物の用量を減少させることができる。このことは、骨髄、腎臓および肝臓のごとき、体内の正常ではあるが放射線感受性である部位へ送達される放射線の量を減少させるので、放射性標識または放射治療剤が使用される場合に特に有用である。しばしばプレ標的化または2工程と称されるこのアプローチ、または3工程アプローチは、本明細書において援用される、Q.J.Nucl.Med.、40:234−251(1996)において、S.F.Rosebroughにより概説されている。
【0124】
A.磁気共鳴映像法
本発明のcMet結合部分は、MRIで使用のための造影剤を形成するため、常磁性金属キレートと都合よく結合可能である。好ましい常磁性金属イオンは、21〜29、42、44または57〜83の原子番号を有している。これは、1つ、そしてより好ましくは5以上、の不対電子、そして少なくとも1.7ボーア磁子の磁気モーメントを有する、遷移金属またはランタニド系列のイオンを含んでいる。好ましい常磁性金属には、限定するわけではないが、クロム(III)、マンガン(II)、マンガン(III)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、ユーロピウム(III)およびイッテルビウム(III)、クロム(III)、鉄(III)およびガドリニウム(III)が含まれる。3価カチオン、Gd3+は、その高い緩和度および低い毒性のためにMRI造影剤に特に好ましく、患者による金属の望ましくない代謝分解を最小にする、1つのみの生物学的に利用できる酸化状態でしか存在
しないというさらなる利点も有している。別の有用な金属は、比較的安価であるCr3+である。Gd(III)キレートは1988年から臨床および放射線学的MR応用に使用されてきており、そして約30%のMR試験で、ガドリニウムに基づいた造影剤が現在用いられている。
【0125】
従業者は、細胞増殖を検出するために必要とされる用量に従って、そして対象への金属の毒性のごとき他の因子を考慮して金属を選択するであろう。Tweedleら、核磁気共鳴映像法(第2版)、第1巻、Partainら、監修(W.B.Saunders Co.1988)、pp.796−797、を参照されたい。一般に、個々の金属に対して望まれる用量は、体内分布により改変されたその緩和度、金属の薬物動態学および代謝に比例するであろう。
【0126】
常磁性金属キレート剤は、常磁性金属のリガンドとして働く1以上の極性基を有している分子であり、常磁性金属と複合体形成する。適したキレート剤が当該技術分野で知られており、そしてメチレンホスホン酸基、メチレンカルボヒドロキサミン酸基、カルボキシエチリデン基またはカルボキシメチレン基を有する酸が含まれる。キレート剤の例には、限定されるわけではないが、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、1,4,4,7,10−テトラアザシクロ−テトラデカン−1,4,7,10−4酢酸(DOTA)、1−置換1,4,7,−トリカルボキシメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(DO3A)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)および1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン−1,4,8,11−4酢酸(TETA)、が含まれる。追加のキレート形成リガンドは、エチレン ビス−(2−ヒドロキシ−フェニルグリシン)(EHPG)および5−Cl−EHPG、5−Br−EHPG、5−Me−EHPG、5−t−Bu−EHPGおよび5−sec−Bu−EHPGを含むその誘導体;ベンゾジエチレントリアミン5酢酸(ベンゾ−DTPA)およびジベンゾ−DTPA、フェニル−DTPA、ジフェニル−DTPA、ベンジル−DTPAおよびジベンジル−DTPAを含むその誘導体;ビス−2(ヒドロキシベンジル)−エチレン−ジアミン2酢酸(HBED)およびその誘導体;少なくとも3つの炭素原子、より好ましくは少なくとも6つ,そして少なくとも2つのヘテロ原子(Oおよび/またはN)を含む大環状化合物の部類、その大環状化合物は、1つの環、またはヘテロ環要素で一緒に連結された2つまたは3つの環から成ることができ、例えば、ベンゾ−DOTA、ジベンゾ−DOTAおよびベンゾ−NOTA(ここで、NOTAは1,4,7−トリアザシクロノナン N,N’,N’’−3酢酸である)、ベンゾ−TETA、ベンゾ−DOTMA(ここで、DOTMAは1,4,7,10−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,7,10−テトラ(メチル4酢酸)である)およびベンゾ−TETMA(ここで、TETMAは1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−(メチル4酢酸)である);1,3−プロピレン−ジアミン4酢酸(PDTA)およびトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)の誘導体;1,5,10−N,N’,N’’−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)−トリカテコラート(LICAM);および1,3,5−N,N’,N’’−トリス(2,3−ジヒドロキシベンゾイル)アミノメチルベンゼン(MECAM)。本発明での使用に好ましいキレート剤はDTPAであり、そしてDO3Aの使用が特に好ましい。本発明により企図された代表的キレート剤およびキレート形成基は、WO98/18496号、WO86/06605号、WO91/03200号、WO95/28179号、WO96/23526号、WO97/36619号、PCT/US98/01473号、PCT/US98/20182号およびUS4,899,755号、US5,474,756号、US5,846,519号およびUS6,143,274号、これらの全ては本明細書において援用される、に記載されている。
【0127】
本発明に従うと、MRI造影剤のキレート剤は、cMet結合ポリペプチドへ結合されている。キレートの位置取りは、cMet結合ポリペプチドの結合親和性または特異性を
妨害しないように選択すべきである。好ましくは、キレートはN末端かまたはC末端のいずれかに付け加えられるであろう、しかしながら、キレートはまた配列内のどこにでも結合することも可能である。好適な態様において、遊離中央カルボン酸基を有しているキレート剤(例えば、DTPA−Asp(β−COOH)−)OtBu)を、アミド結合の形成により、ペプチドのN末端へ結合させるのは容易である。キレートはまた、リンカーの助けにより、C末端へ結合させることも可能である。もしくは、適切なイソチオシアナート基を有するDTPAを、ペプチド配列内の任意の場所の遊離アミノ基へ連結する方法として、イソチオシアナート結合化学を用いることが可能である。
【0128】
一般に、cMet結合部分は金属キレート剤(または他の検出可能標識)へ、直接または共有結合で結合することができ、または、限定ではないが、アミド、尿素、アセタール、ケタール、2重エステル、カルボニル、カルバメート、チオ尿素、スルホン、チオエステル、エステル、エーテル、ジスルフィド、ラクトン、イミン、ホスホリルまたはホスホジエステル結合;置換または非置換飽和または不飽和アルキル鎖;単一アミノ酸または異なったアミノ酸の線状、分枝または環状アミノ酸鎖(例えば、cMet結合部分のNまたはC末端の伸長);誘導体化または非誘導体化ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンまたはポリビニルピリジン鎖;置換または非置換ポリアミド鎖;誘導体化または非誘導体化ポリアミン、ポリエステル、ポリエチレンイミン、ポリアクリラート、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロールまたはオリゴサッカリド(例えば、デキストラン)鎖;交互ブロック共重合体;マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸およびピメリン酸;カプロン酸;単純ジアミンおよびジアルコール;本明細書において開示されている、任意の他のリンカー;または当該技術分野で知られている、任意の他の単純重合体性リンカー(例えば、WO98/18497号およびWO98/18496号を参照されたい)でありうるリンカーを使用して、金属キレート剤へカップリングまたは結合することが可能である。好ましくは、リンカーの分子量はしっかりと制御することが可能である。分子量は、100未満〜1000を超えるサイズの範囲であることが可能である。好ましくは、リンカーの分子量は100未満である。加えて、本発明の画像化試薬のための有効な排泄経路を提供するため、インビボで生分解可能であるリンカーを利用することが望ましい。リンカー内のその位置に依存して、こうした生分解可能な官能性は、エステル、2重エステル、アミド、リン酸エステル、エーテル、アセタールおよびケタール官能性を含むことが可能である。
【0129】
一般に、こうしたリンカーを使用して、金属キレートおよびcMet結合部分を結合するためには、既知の方法を使用することが可能である(WO95/28967号、WO98/18496号、WO98/18497号および本明細書における議論)。cMet結合部分は、アミド結合を経たNまたはC末端を通して、例えば、金属キレートの金属配位主鎖窒素、または金属キレートそれ自身のアセテート腕へ連結することが可能である。本発明は、毒性を最小にするため、金属キレートが金属を強固に結合する能力を保持するという条件で、任意の位置でキレートを連結することを企図している。同様に、cMet結合部分は、修飾または伸長がcMetを結合するその能力を消去しないという条件で、金属キレートの付着のための座位を発生させるため、修飾または伸長することが可能である。
【0130】
本明細書の開示に従って調製されたMRI造影試薬は、同一の様式で慣用的MRI造影試薬として使用することが可能である。過剰増殖の部位を画像化する場合、特定のMR技術およびパルス系列が、バックグラウンド血液および組織に対する前記部位のコントラストを促進するために好ましいであろう。これらの技術には(限定されるわけではないが)、例えば、ファストスピンエコー系列(Alexander,A.ら、1998.Magn.Reson.Med.、40:298−310)のごとき、血液を黒くするように探索するブラックブラッド(black blood)血管造影法系列、およびフロー−ス
ポイルドグラジエントエコー(flow−spoiled grradient echo)系列(Edelman,R.ら、1990.Radiology、177:45−50)が含まれる。これらの方法にはまた、血管新生腫瘍とバックグラウンド組織間のコントラストを増加させるであろう、インバージョン−リカバリープレペアード(inversion−recovery prepared)またはサチュレーション−リカバリープレペアード(saturation−recovery prepared)のごとき、コントラストの相違を増強するフロー非依存性技術も含まれる。最後に、マグネタイゼーション トランスファー プリパレーション(magnetization transfer preparation)もまたこれらの剤でコントラストを改良できる(Goodrich,K.ら、1996.Invest.Radiol.、31:323−32)。
【0131】
標識された試薬は、患者に注射可能組成物の形で投与する。MRI造影剤の投与法は、好ましくは、非経口、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、組織間腔または腔内である。活性血管新生を画像化するためには、静脈内または動脈内投与が好ましい。MRIには、対象は血管新生部位でのMR信号を少なくとも10%増強するために十分な造影剤の投与量を受けるであろうことが企図される。cMet結合部分−含有MRI試薬を注射した後、過剰増殖の部位の位置を決定するため、患者をMRI装置で走査する。治療的設定においては、過剰増殖(例えば、腫瘍)の部位を同定したうえで、殺腫瘍性剤または抗過剰増殖剤(例えば、HGFの阻害剤)が直ちに投与でき、必要に応じ、そして腫瘍退行または血管新生の停止を可視化するため、患者を続けて走査することが可能である。
【0132】
B.超音波画像
超音波が物質を通って伝達する場合、物質の音響特性は伝達の速度および物質の密度に依存するであろう。音響特性の変化は、異なった物質(固体、液体、気体)の界面で最も顕著であろう。超音波造影剤は、剤および周りの組織間の音響差異のため、強い音波反射物である。気体含有または気体発生超音波造影剤は、液体(例えば、血液)および気体含有または気体発生超音波造影剤間の音響差異のため、特に有用である。そのサイズのため、マイクロバブル、マイクロバルーンなどを含む超音波造影剤は、注射後、他の検出可能部分よりも血流中により長く留まることが可能である;標的化cMet特異性超音波造影剤はそれ故、過剰増殖(例えば、癌)および血管新生の部位の優れた画像を示すことができる。
【0133】
本発明のこの側面において、cMet結合部分は、超音波画像に有用である物質へ連結することが可能である。例えば、1以上のcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、小胞(例えば、マイクロバブル、マイクロバルーン、ミクロスフェアーなど)または検出可能標識として機能する液体または気体含んでいる乳濁液(例えば、エコー源性気体またはエコー源性気体を発生することが可能な物質)を形成するために用いられる物質へ連結することが可能である。こうした小胞の調製のための物質には、界面活性剤、脂質、スフィンゴ脂質、オリゴ脂質、リン脂質、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物および合成または天然の重合性物質が含まれる(WO98/53857号、WO98/18498号、WO98/18495号、WO98/18497号、WO98/18496号およびWO98/18501号、その全体が本明細書において援用される)。
【0134】
安定化されたマイクロバブルの懸濁疫を含む造影剤(好適な態様)のためには、リン脂質、そして特に飽和リン脂質が好ましい。適したリン脂質の例には、1つまたは2つの(同一でも異なっていても)脂肪酸分子およびリン酸を有するグリセロールのエステルが含まれ、ここにおいてリン酸残基は順に、コリン、セリン、イノシトール、グリセロール、エタノールアミンおよびその他の基のごとき、親水性基へ結合されている。リン脂質中に存在する脂肪酸は、一般に、飽和されているかまたは1以上の不飽和を含むことができる
、典型的には12〜24の、好ましくは14〜22の炭素原子を含んでいる、長鎖脂肪族酸である。適した脂肪酸の例は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。リン脂質のモノエステルもまた「リソ」として当該技術分野で知られており、リン脂質を形成する。リン脂質のさらなる例は、ホスファチジン酸(即ち、グリセロール−リン酸と脂肪酸のジエステル)、スフィンゴミエリン(即ち、脂肪酸とのグリセロールジエステルの残基がセラミド鎖により置き換えられている、ホスファチジルコリン類似体)、カルジオリピン(即ち、1,3−ジホスファチジルグリセロールと脂肪酸のエステル)、ガングリオシド、セレブラシドなどである。
【0135】
本明細書において、用語「リン脂質」は、個別かまたは混合物として用いることが可能である、天然に存在する、半合成的にまたは合成的に製造された生成物を含んでいる。
天然に存在するリン脂質の例は、典型的には大豆または卵黄レシチンのごとき、天然レシチン(ホスファチジルコリン(PC)誘導体)である。
【0136】
合成リン脂質の例は、例えば、ジラウリロイル−ホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(「DAPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1−ミリストイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1−パルミトイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1−パルミトイル−2−ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1−ステアロイル−2−パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジオレイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチル−DSPC)、ジラウリロイル−ホスファチジルグリセロール(「DLPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジアラキドイルホスファチジルグリセロール(「DAPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジン酸(「DSPA」)、ジアラキドイルホスファチジン酸(「DAPA」)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイル ホスファチジル−エタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイル ホスファチジル−エタノールアミン(「DPPE」)、ジステアロイル ホスファチジル−エタノールアミン(「DSPE」)、ジミリストイル
ホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジアラキドイル ホスファチジルセリン(「DAPS」)、ジパルミトイル ホスファチジルセリン(「DPPS」)、ジステアロイルホスファチジルセリン(「DSPS」)、ジオレオイルホスファチジルセリン(「DOPS」)、ジパルミトイル スフィンゴミエリン(「DPSP」)およびジステアロイル
スフィンゴミエリン(「DSSP」)。好適な態様において、リン脂質部分の少なくとも1つは、図7Aまたは7Bに示されたような、そして本明細書において援用されるUS5,686,060号に記載されているような構造を有している。
【0137】
他の好ましいリン脂質には、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジン酸およびジパルミトイルホスファチジルセリンが含まれる。組成物はまたPEG−4000および/またはパルミチン酸も含むことが可能である。本明細書に開示された、または当業者には既知の任意の気体を用いることが可能である;しかしながら、SFまたはCF、CおよびC10のごとき不活性気体が好ましい。
【0138】
本発明の好ましい気体充填マイクロバブルは、例えば、以下の特許の任意の1つに記載されている方法によるごとく、当該技術分野では既知の手段により調製することが可能である:EP554213号、US5,413,774号、US5,578,292号、EP744962号、EP682530号、US5,556,610号、US5,846,518号、US6,183,725号、EP474833号、US5,271,928号、US5,380,519号、US5,531,980号、US5,567,414号、US5,658,551号、US5,643,553号、US5,911,972号、US6,110,443号、US6,136,293号、EP619743号、US5,445,813号、US5,597,549号、US5,686,060号、US6,187,288号およびUS5,908,610号、これらはその全体が本明細書において援用される。
【0139】
本発明の好ましいマイクロバブル懸濁液は、適した溶媒中、粗リン脂質の溶液の凍結乾燥または噴霧乾燥のごとき既知のプロセスを使用して、またはEP554213号;US5,413,774号;US5,578,292号;EP744962号;EP682530号;US5,556,610号;US5,846,518号;US6,183,725号;EP474833号;US5,271,928号;US5,380,519号;US5,531,980号;US5,567,414号;US5,658,551号;US5,643,553号;US5,911,972号;US6,110,443号;US6,136,293号;EP619743号;US5,445,813号;US5,597,549号;US5,686,060号;US6,187,288号;およびUS5,908,610号(これらはその全体が本明細書において援用される)に示されているプロセスを使用してリン脂質から調製することが可能である。最も好ましくは、リン脂質を有機溶媒に溶解し、そして溶液はリポソーム形成段階を通り越さないように乾燥する。このことは、親水性安定化剤物質または有機溶媒および水の両方に溶解する化合物と一緒に、リン脂質を適した有機溶媒に溶解し、そして溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥することにより行うことが可能である。この態様において、親水性安定化剤の選択に使用された基準は、選択された有機溶媒におけるその溶解度である。水および有機溶媒に可溶な親水性安定化剤化合物の例は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)などのような重合体、リンゴ酸、グリコール酸、マルトールなどのである。こうした親水性化合物はまた、マイクロバブルサイズ分布の均質化の助けとなり、そして保存中の安定性を促進する。続いての乾燥を容易にするため、沸点が十分低くそして融点が十分に高い限りは、任意の適した有機溶媒が使用できる。典型的な有機溶媒には、例えば、ジオキサン、シクロヘキサノール、3級ブタノール、テトラクロロジフルオロエチレン(CCl)または2−メチル−2−ブタノールが含まれる。2−メチル−2−ブタノールおよびCClが好ましい。
【0140】
水性坦体中での分散によるマイクロバブルの懸濁液の形成に先だって、凍結乾燥または噴霧乾燥したリン脂質粉末を、空気または別の気体と接触させる。水性坦体と接触した場合、その構造が破壊されていた粉末化リン脂質は、分散された気体のマイクロバブルを安定化するであろう、ラメラ化または積層化されたセグメントを形成するであろう。この方法は、長期保存した場合でも安定である、マイクロバブルの懸濁液の産生を可能にし、それは、乾燥積層化リン脂質を単純に溶解させることにより得られ、振盪または激しく撹拌することなく、所望の気体下で保存した。
【0141】
特別の保存条件で必要とされることが知られている、過分極した気体を含むことなしに、凍結乾燥した(lyophilized)または凍結乾燥した(freeze-dried)残渣は、その環境
の温度調節を必要とせずに保存および輸送が可能であり、そして特に、病院および医者へ(こうした使用者が特別の保存設備を有していなくとも)、すぐに使える投与可能懸濁液への現場処方製剤として供給することが可能である。
【0142】
好ましくは、こうした場合において、それは2成分キットの形で提供することが可能である。2成分キットは、2つの別々の容器、または2重チャンバー容器を含むことができる。前者の場合、好ましくは、容器は慣用的セプタムシール化バイアルであり、ここにおいて、工程b)の凍結乾燥残渣を含んでいるバイアルはセプタムで封じられており、それを通して坦体液体を、所望により前もって充填されている注射器を使用して注入することが可能である。こうした場合において、第2の成分の容器として使用された注射器はまた、次ぎに造影剤を注射するためにも使用する。後者の場合、好ましくは、2重チャンバー容器は2重チャンバー注射器であり、ひとたび凍結乾燥物/凍結乾燥残渣が再構築され、そして適切に混合または穏やかに振盪されれば、容器は造影剤を注射するために直接使用することが可能である。両方の場合において、容器の内容物内へ、十分なバブル形成エネルギーの適用を指示するまたは許すための手段を提供する。しかしながら、前に記述したように、安定化された造影剤において、気体マイクロバブルのサイズは、再構築された乾燥生成物へ適用される撹拌エネルギーの量とは実質的に無関係である。従って、一貫したマイクロバブルサイズを有する再現可能な製品を得るためには、穏やかな手による振盪のみが一般的に必要とされる。
【0143】
乾燥粉末と水性溶液を無菌様式で混合することができる、他の2チャンバー再構築システムもまた本発明の範囲内であることが、当業者により認められるであろう。こうしたシステムにおいて、製品の有効期間を長くするため、もし水不溶性気体および環境間に水を差し挟むことが可能であれば、特に有利である。造影剤を形成するために必要な物質がまだ容器中に存在しないとすると(例えば、リン脂質へ連結されるべき本発明のcMet結合部分は再構築の間に)、それはキットの他の成分と共に、好ましくはキットの他の成分との準備された配合を容易にするように適合された形または容器で、包装することが可能である。
【0144】
特別の容器、バイアルまたは接合システムは必要とされない;本発明は慣用的容器、バイアルおよびアダプターを使用することが可能である。ただ1つに要求は、栓および容器間の良好なシールである。それ故、シールの品質は第1級の関心事になる;シール完全性のどんな低下も、望ましくない物質がバイアルへ入ることを可能にできる。無菌性を保証することに加え、安全で適切な再構築を確かにするために周囲のまたは減じた圧力で栓をされた製品に対して、真空保持は必須である。栓はどうかといえば、それはポリ(イソブチレン)またはブチルゴムのごときエラストマーに基づいた化合物または多成分調合物であることができる。
【0145】
もしくは、マイクロバブルは、例えば、WO97/29783号に開示されているように、高撹拌速度で水性溶液中へ気体を浮遊させることによって調製することが可能である。マイクロバブルを調製するためのさらなるプロセスは、本明細書において援用される、同時係属中の欧州特許出願第03002373号に記載されており、それは、リン脂質存在下、水性媒質中で有機溶媒の乳濁液を調製し、そしてその後、随意の洗浄および/または濾過工程後に前記乳濁液を凍結乾燥することを含む。
【0146】
当業者には既知の添加物を、安定化マイクロバブルの懸濁液中に含ませることが可能である。例えば、ポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシエチレングリコールおよび類似の化合物ならびに多様なその共重合体を含む非薄膜形成表面活性剤;ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸またはその誘導体のごとき脂肪酸、エルゴステロール、フィトステロール、シトステロール、ラノステロール、トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビルパルミタートおよびブチル化ヒドロキシトルエンを加えることができる。これらの非薄膜形成表面活性剤の量は、表面活性剤の総量の重量で通常50%まで、しかし好ましくは0〜30%の間である。
【0147】
超音波応用において、リン脂質安定化マイクロバブルにより形成された造影剤は、例えば、注入されるリン脂質の量は、0.1〜200μg/kg体重の範囲、好ましくは約0.1〜30μg/kgであるように、投与することが可能である。
【0148】
他の気体含有懸濁液には、例えば、その全体が本明細書において援用されるUS5,798,091号、WO97/29783号またEP881 915号に開示されているものが含まれる。これらの剤はUS5,798,091号またはWO97/29783号に記載されているように調製することが可能である。
【0149】
別の好ましい超音波造影剤はマイクロバルーンを含む。用語「マイクロバルーン」とは、境界または包膜を有する気体充填体を指している。マイクロバルーン処方および製造方法についてより詳しいことは、その内容が本明細書において援用される、EP324 938号(US4,844,882号);US5,711,933号;US5,840,275号;US5,863,520号;US6,123,922号;US6,200,548号;US4,900,540号;US5,123,414号;US5,230,882号;US5,469,854号;US5,585,112号;US4,718,433号;US4,774,958号;WO95/01187号;US5,529,766号;US5,536,490号;およびUS5,990,263号に見ることができる。
【0150】
好ましいマイクロバルーンは、生分解性で生理学的に適合性の重合体または生分解性固体脂質を含んでいる包膜を有している。本発明のマイクロバルーン調製に有用な重合体は、以下のいずれかの特許に記載されているもののごとき、生分解性で生理学的に適合性の重合体から選択される:EP458745号;US5,711,933号;US5,840,275号;EP554213号;US5,413,774号;およびUS5,578,292号、その全内容は本明細書において援用される。特に、重合体は、低い水溶解性のポリサッカリド、ポリラクチド(polylactide)およびポリグリコリド(polyglycolide)そしてその共重合体、e−カプロラクトン、γ−バレロラクトンおよびポリペプチドのごときラクチド(lactide)およびラクトンの共重合体、のごとき生分解性で生理学的に
適合性の重合体から選択することができる。他の適した重合体には、ポリ(オルト)エステル(例えば、US4,093,709号;US4,131,648号;US4,138,344号;US4,180,646号を参照されたい)、ポリ乳酸およびポリグリコール酸そしてその共重合体、例えば、DEXON(Heller,J.、1980.Biomaterials,1:51−57);ポリ(DL−ラクチド−co−e−カプロラクトン)、ポリ(DL−ラクチド−co−γ−バレロラクトン)、ポリ(DL−ラクチド−co−γ−ブチロラクトン)、ポリアルキルシアノアクリラート;ポリアミド、ポリヒドロキシブチラート;ポリジオキサノン;ポリ−β−アミノケトン(Polymer、23:1693(1982));ポリホスファゼン(Allcock,H.、1976.Science、193:1214−1219);およびポリ酸無水物、が含まれる。本発明のマイクロバルーンはまた、本明細書において援用される、WO96/15815の方法に従っても調製することが可能であり、そこでは、マイクロバルーンは、好ましくはモノ−、ジ−、トリ−グリセリド、脂肪酸、ステロール、ワックスおよびその混合物から選択される生分解性脂質、を含む生分解性膜から作成される。好ましい脂質はジ−またはトリ−グリセリド、例えば、トリ−ミリスチン、−パルミチンまたは−ステアリン、特にトリパルミチンまたはトリステアリンである。
【0151】
マイクロバルーンは、当業者には既知の、本明細書に開示されている任意の気体を用いることが可能である;しかしながら、フッ素化気体のごとき不活性気体が好ましい。マイクロバルーンは、当業者には既知の随意の添加物、そして安定剤と共に医薬として受容可能な液体坦体に懸濁することが可能である。
【0152】
マイクロバルーン含有造影剤は典型的には、壁形成重合体または脂質の量が約10μg/kg〜約20μg/kg体重、であるように投与する。
他の気体含有造影剤には、中に含まれた、またはさもなければ会合されている(表面上に吸着されているおよび/または空隙、空洞または孔内に含まれている)気体を有する、微粒子が含まれる。これらの剤の調製法は、その全体が本明細書において援用される、EP0122624号;EP0123235号;EP0365467号;US5,558,857号;US5,607,661号;US5,637,289号;US5,558,856号;US5,137,928号;WO95/21631号またはWO93/13809号に記載されている。
【0153】
これらの超音波組成物はまた、可能な限り、血液と等張であるべきである。この故、注射前、少量の等張剤を、いずれの上記超音波造影剤懸濁液にも加えることが可能である。等張剤は、医学において普通に使用される生理学的溶液であり、それらは水性塩溶液(0.9% NaCl)、2.6%グリセロール溶液、5%デキストロース溶液その他を含む。加えて、超音波組成物は、例えば、乳化剤、粘性調節剤、凍結保護物質、溶解保護物質、充填剤を含む、標準の医薬として受容可能な添加物を含むことができる。
【0154】
任意の生物適合性気体を、本発明において有用な超音波造影剤に使用することが可能である。本明細書において、用語「気体」とは、正常ヒト体温で実質的に気体形である任意の物質(混合物を含む)を含んでいる。それ故気体は、例えば、空気、窒素、酸素、CO、アルゴン、キセノンまたはクリプトン、フッ素化気体(例えば、過フルオロ炭素、SF,SeFを含んで)、低分子量炭化水素(例えば、1〜7の炭素原子を含んでいる)、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンまたはペンタンのごときアルカン、シクロプロパン、シクロブタンまたはシクロペンタンのごときシクロアルカン、エチレン、プロペン、プロパジエンまたはブテンのごときアルケン、またはアセチレンまたはプロピンのごときアルキン、および/またはその混合物、を含むことができる。フッ素化気体には、SF、フレオン(1以上の炭素原子およびフッ素を含んでいる有機化合物、即ち、CF、C、C、C、C10、CBrF、CCl、CClFおよびCBrClF)および過フルオロ炭素のごとき、少なくとも1つのフッ素原子を含む物質が含まれる。用語「過フルオロ炭素」とは、炭素およびフッ素のみを含んでいる化合物を指し、特に飽和、不飽和および環状過フルオロ炭素を含んでいる。通常好ましい飽和過フルオロ炭素は、式Cn+2(式中、nは1〜12、好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜8、そしてさらにもっと好ましくは3〜6である)を有している。適した過フルオロ炭素には、例えば、CF、C、C、C、C10、C12、C12、CI4、C18およびC20が含まれる。最も好ましくは、気体または気体混合物は、SF、またはC、C、C10、C12、C12、C14、C18から成る群より選択される過フルオロ炭素(C10が特に好ましい)を含む。WO97/29783号、WO98/53857号、WO98/18498号、WO98/18495号、WO98/18496号、WO98/18497号、WO98/18501号、WO98/05364号、WO98/17324号、もまた参照されたい。
【0155】
特定の状況において、気体性物質の前駆体(例えば、インビボで気体へ変換されることが可能な物質、しばしば「気体前駆体」と称される)を含むのが望ましいことがありうる。好ましくは、気体前駆体およびそれが産生する気体は生理学的に受容可能である。気体前駆体は、pH活性化、光活性化、温度活性化などでありうる。例えば、特定の過フルオロ炭素を、温度活性化気体前駆体として使用することが可能である。過フルオロペンタンのごときこれらの過フルオロ炭素は、室温(または剤が製造および/または保存される温度)より上の、しかし体温より下の液体/気体相転移温度を有している;それ故、それら
はヒト体内で相変化を行い、そして気体へ変換される。
【0156】
気体は、気体の混合物を含むことが可能である。以下の組み合わせが特に好ましい気体混合物である:気体(A)および(B)の混合物、ここにおいて、容量で0.5〜41%の量で存在する気体(B)の少なくとも1つは、80ダルトンより大きな分子量を有しており、そしてフッ素化気体であり、そして(A)は、空気、窒素、2酸化炭素およびこれらの混合物から成る群より選択され、混合物のバランスは気体Aである。
【0157】
超音波小胞は、本明細書に記載した他の検出可能標識よりも大きいことが可能であるので、それらは剤の標的化効率を増加させるため、多数のcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物へ連結または結合することが可能である。前記の(または当業者には既知の)超音波造影剤の結合は、cMet結合ポリペプチドおよび小胞を作製するために使用された物質間の直接共有結合を経るか、または、前に記載したようなリンカーを経るものであろう。例えば、一般に、2官能性PEGリンカーへのペプチドの結合の記述にはWO98/53857を参照されたく、それは次ぎにリポソーム組成物と反応させる(Lanza,G.ら、1997.Ultrasound Med.Biol.、23:863−870)。これらの化合物の構造は典型的には下記のものを含む:
a)疎水性部分、小胞の包膜中の化合物の有効な取り込みを可能にするため、マイクロバブルの、またはマイクロバルーンの包膜を形成している物質と適合性である;前記部分は典型的には脂質部分である(例えば、ジパルミチン、ジステアロイル);
b)スペーサー(典型的には、異なった分子量のPEG)、それはある場合は任意であることができ(例えば、もしスペーサーがあまりにも長ければ、マイクロバブルを凍結乾燥するのが困難であると証明することができる)、またはある場合は好ましい(例えば、ペプチドは、短いスペーサーでマイクロバルーンに結合した場合、活性が低いことがあり得る);
c)結合されるべきペプチド上の、対応する反応性部分と反応することが可能な反応性基(例えば、マレイミドとシステインの−SH基)。
【0158】
多くの方法を、cMet結合ポリペプチドへ結合されたマイクロバブルの懸濁液を調製するために使用することが可能である。例えば、5%(w/w)のN−MPB−PE(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−4−(p−マレイミド−フェニルブチルアミド)(Avanti Polar− Lipids,Inc.、アラバスター,AL)をリン脂質処方に取り込むことにより、マレイミド誘導体化マイクロバブルを調製することが可能である。次ぎに、脱アセチル化溶液(50mMリン酸ナトリウム、25mM EDTA、0.5Mヒドロキシルアミン.HCl、pH7.5)中でインキュベートされたメルカプトアセチル化cMet結合ペプチドの溶液(10mg/mL、DMF溶液)を、マレイミド活性化マイクロバブル懸濁液へ加える。穏やかに撹拌して暗所でインキュベーション後、ペプチド結合化マイクロバブルは、遠心分離により精製することが可能である。
【0159】
あるいは、cMet結合ポリペプチド結合化マイクロバブルは、ビオチン/アビジンを使用して調製することが可能である。例えば、アビジン結合化マイクロバブルは、前記のように調製されたマレイミド活性化リン脂質マイクロバブル懸濁液を使用して調製することが可能であり、それをメルカプトアセチル化アビジン(脱アセチル化溶液中でインキュベートされた)へ加える。ビオチニル化cMet結合ペプチド(本明細書に記載したように調製された)を、アビジン結合化マイクロバブルの懸濁液へ加えると、cMet結合ペプチドへ結合したマイクロバブルの懸濁液を得る。
【0160】
本発明に従って使用することが可能な超音波画像技術には、カラードップラー、パワードップラー、ドップラー振幅、刺激音響画像、および2または3次元画像技術のごとき既
知の技術が含まれる。画像化は高調波(共鳴周波数)または基礎的モードで行うことができるが、2倍の高調波が好ましい。
【0161】
C.光学画像、音ルミネセンスまたは光音響画像
本発明に従うと、対象に光学的に標識したcMet結合ポリペプチドを注射後、インビボ光画像で、cMetまたはHGF/cMet複合体の位置を決定するために、多数の光学パラメーターを用いることが可能である。画像の調製において、検出されるべき光学パラメーターには、透過放射、吸収、蛍光またはリン光発光、光反射、吸光度振幅または極大の変化、および弾性散乱放射を含むことができる。例えば、生物学的組織は、650〜1000nmの範囲の近赤外(NIR)波長の光に対して比較的半透明である。NIR放射は数センチメートルまで組織を透過することが可能であり、cMetまたはHGF/cMet複合体のインビボ光学画像のための、本発明のcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物の使用を可能にしている。
【0162】
cMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、例えば、広範な非局在化環システムを有し、そして400〜1500nmの範囲に吸収または発光を有する、有機発色団または蛍光団を含んでいる光学色素のごとき光標識と結合することが可能である。cMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物はもしくは、生体発光分子で誘導体化することが可能である。光標識の吸収極大の好ましい範囲は、ヘモグロビンからの信号による妨害を最小にするため、600〜1000nmの間である。好ましくは、光吸収標識は、大きなモル吸光係数(例えば、10cm−1−1より大きな)を有しており、一方、蛍光光学色素は高い量子収量を有するであろう。光学色素の例には、限定されるわけではないが、WO98/18497号、WO98/18496号、WO98/18495号、WO98/18498号、WO98/53857号、WO96/17628号、WO97/18841号、WO96/23524号、WO98/47538号およびそれらに引用されている参考文献に記載されているものが含まれる。光標識は、前に記載したように、cMet結合ペプチドへ直接共有結合で連結するか、またはリンカーを経てcMet結合ペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物へ連結することが可能である。
【0163】
光学的に標識されたcMet結合部分の注射後、剤中に用いられた光標識に適切な波長範囲の、1以上の光源(例えば、レーザー)で患者を走査する。使用される光は、単色または多色、そして連続的またはパルスでもよい。放射された、散乱されたまたは反射された光は、対象中のcMetまたはHGF/cMet複合体の位置を決定するために、1つまたは多数の波長に同調された光検出器を経て検出する。光学パラメーターの変化は、時間を通してモニターすることが可能であり、過剰増殖の部位での光学的に標識された試薬の蓄積を検出する。標準画像処理および検出装置が、本発明の光学画像化試薬に関連して使用することが可能である。
【0164】
前記光学画像化試薬はまた、光学標識造影剤で実行された超音波光学または音ルミネセンス画像にも使用することが可能である(US5,171,298号、WO98/57666号、およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい)。超音波光学においては、超音波放射を対象に適用し、そして透過した、放射されたまたは反射された光に影響を及ぼす。音ルミネセンス画像においては、適用された超音波が実際に検出される光を発生する。こうした技術を使用する、適した画像化法はWO98/57666号に記載されている。
【0165】
D.核画像(放射性核種画像)および放射線治療
cMet結合部分は、シンチグラフィー、SPECT、またはPET画像に適切な放射性核種と、および/または放射線治療に適切な放射性核種と結合することが可能である。cMet結合部分が、画像診断に有用な放射性核種のためのキレート剤、および放射線治
療に有用なキレート剤の両方と結合されている構築物は、本発明の範囲内である。
【0166】
PET剤として使用するためには、ペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物は、51Mn、52Fe、60Cu、68Ga、72As、94mTcまたは110Inのごとき多様な陽電子放射金属イオンと複合体形成されている。本発明の結合部分はまた、18F、124I、125I、131I、123I、77Brおよび76Brのごとき放射性核種を使用するハロゲン化により標識することも可能である。シンチグラフィーまたは放射線治療に好ましい金属放射線核種には、99mTc、51Cr、67Ga、68Ga、47Sc、51Cr、167Tm、141Ce、111In、168Yb、175Yb、140La、90Y、88Y、153Sm、166Ho、165Dy、166Dy、62Cu、64Cu、67Cu、97Ru、103Ru、186Re、188Re、203Pb、211Bi、212Bi、213Bi、214Bi、105Rh、109Pd、117mSn、149Pm、161Tb、177Lu、198Auおよび199Auが含まれる。金属の選択は、所望の治療または診断応用に基づいて決定されるであろう。例えば、診断目的のためには、好ましい放射線核種として64Cu、67Ga、68Ga、99mTcおよび111Inが含まれる。治療目的のためには、好ましい放射線核種として64Cu、90Y、105Rh、111In、117mSn、149Pm、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、175Yb、177Lu、186/188Reおよび199Auが含まれる。99mTcは、その低い価格、入手可能性、画像化特性および高い比活性のため、診断応用に特に好ましい。99mTcの核および放射性特性は、この同位元素を理想的なシンチグラフィー造影剤となしている。この同位元素は140keVの単一光子エネルギーを、そして約6時間の放射性半減期を有し、そして99Mo−99mTc発生装置から容易に入手可能である。
【0167】
金属放射線核種は、例えば、線状、大環状、テルピリジンおよびNS、NまたはNキラント(chelant)によりキレートすることができ(また、US5,367,080、US5,364,613号、US5,021,556号、US5,075,099号、US5,886,142号も参照されたい)、当該技術分野で既知の他のキレート剤には、限定されるわけではないが、HYNIC、DTPA、EDTA、DOTA、DO3A、TETAおよびビスアミノ ビスチオール(BAT)キレート剤が含まれる(また、US5,720,934号も参照されたい)。例えば、Nキレート剤はUS6,143,274号;US6,093,382号;US5,608,110号;US5,665,329号;US5,656,254号;およびUS5,688,487号に記載されている。特定のNSキレート剤は、PCT/CA94/00395号、PCT/CA94/00479号、PCT/CA95/00249号およびUS5,662,885号;US5,976,495号;およびUS5,780,006号に記載されている。キレート剤はまた、NSを含むメルカプト−アセチル−アセチル−グリシル−(MAG3)およびMAMA(モノアミドモノアミンジチオール)のごときNシステム、DADS(NS ジアミンジチオール)、CODADSなどのキレート化リガンドの誘導体を含むことも可能である。これらのリガンドシステムおよび多様な他のものは、例えば、Liu,S.およびEdwards,D.、1999.Chem Rev.、99:2235−2268およびその中の参考文献に記載されている。
【0168】
キレート剤はまた、4座配列で金属に供与しないリガンド原子を含んでいる複合体も含むことが可能である。これらには、その開示が全体として本明細書に援用される、US5,183,653号;US5,387,409号;およびUS5,118,797号に記載されているごとき、テクネチウムおよびレニウムジオキシムのボロン酸付加物が含まれる。
【0169】
別の態様においては、本発明のcMet結合ポリペプチドのジスルフィド結合を、99
Tcのごとき放射性核種のキレート形成のための2つのリガンドとして使用する。この方法において、ペプチドループはTcの導入により拡大される(ペプチド−S−S−ペプチドはペプチド−S−Tc−S−ペプチドへ変化する)。この方法はまた、文献(Chen,J.ら、2001.J.Nucal Med.、42:1847−1855)で他のジスルフィド含有ペプチドで使用されており、一方、生物学的活性は維持している。Tcのための他のキレート化基は、主鎖アミド窒素、別のシスチンアミノ酸または他のアミノ酸の修飾により供給することが可能である。
【0170】
特に好ましい金属キレート剤には、図8A〜8Fに示した式20、21、22、23a、23b、24a、24bおよび25のキレート剤が含まれる。式20−22は常磁性Gd3+のごときランタニド、および177Lu、90Y、153Sm、111Inまたは166Hoのごとき放射性ランタニドに対して特に有用である。式23a〜24bは、放射性核種99mTc、186Reまたは188Reに対して特に有用である。式25は、99mTc対して特に有用である。これらおよび他の金属キレート化基は、その全体が本明細書において援用される、US6,093,382号およびUS5,608,110号に記載されている。加えて、式22のキレート化基は、例えば、US6,143,274号に記載されている;式24のキレート化基は、例えば、US5,627,286号およびUS6,093,382号に記載されている;および式25のキレート化基は、例えば、US5,662,885号;US5,780,006号;およびUS5,976,495号に記載されている。
【0171】
図8Eの式24aおよび24b、式中、XはCHかまたはOであり;YはC〜C10分枝または非分枝アルキル、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、またはC〜C10分枝または非分枝アルキル基、ヒドロキシまたはC〜C10分枝または非分枝ポリヒドロキシアルキル基、C〜C10分枝または非分枝ヒドロキシまたはポリアルコシキアルキルまたはポリヒドロキシ−ポリアルコキシアルキル基、を含むアリールアルキルであり;JはC(=O)−、OC(=O)−、SO−、NC(=O)−、NC(=S)−、N(Y)、NC(=NCH)−、NC(=NH)−、N=N−、合成または天然に存在するアミノ酸に由来するホモポリアミドまたはホモポリアミンであり;nは1〜100である。これらの構造の他の変異体は、例えば、US6,093,382号に記載されている。各々の前述の特許、出願および参考文献の開示は、その全体が本明細書において援用される。
【0172】
キレート剤は、cMet結合部分または多量体ポリペプチド構築物へ直接、共有結合で、前記のようにリンカーを経てcMet結合ポリペプチドへ連結することが可能であり、そしてその後、選択された放射性金属で直接標識する(WO98/52618、US5,879,658号およびUS5,849,261号を参照されたい)。
【0173】
放射性テクネチウムの複合体は画像診断に特に有用であり、そして放射性レニウムの複合体は放射線治療に特に有用である。放射性テクネチウムと本発明の試薬との複合体の形成において、テクネチウム複合体、好ましくは99mTc過テクネチウム酸の塩を、還元剤存在下で試薬と反応させる。好ましい還元剤はジチオナイト、スズおよび鉄イオンであり;最も好ましい還元剤は塩化第1スズである。こうした複合体を調製する手段は、標識されるべき本発明の前もって決定された量、および99mTcで試薬を標識するために十分な量の還元剤を含んでいる密封バイアルを含むキット形で都合よく提供される。あるいは、適切なキレート剤と結合した本発明のペプチドと、前もって形成されたテクネチウムの不安定複合体および転移(transfer)リガンドとして知られている別の化合物を反応させることにより、前記複合体を形成させることが可能である。このプロセスはリガンド交換として知られており、当業者にはよく知られている。不安定複合体は、こうした転移リガンドとして、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコナートまたはマンニトールを使用する
ことにより形成することが可能である。本発明で有用な99mTc過テクネチウム酸塩には、ナトリウム塩、またはアンモニウム塩または低級アルキルアンモニウム塩が含まれる。
【0174】
金属が放射性レニウムである本発明の複合体の調製は、+5または+7酸化状態のレニウム出発物質を使用して達成することが可能である。レニウムがRe(VII)状態である化合物の例は、NHReOまたはKReOである。Re(V)は、例えば、[ReOCl](NBu)、[ReOCl](AsPh)、ReOCl(PPhおよびReO(ピリジン)4+(式中、Phはフェニルであり、そしてBuはn−ブチルである)として入手可能である。レニウム複合体を形成することができる他のレニウム試薬もまた使用可能である。
【0175】
本発明により提供される放射性的に標識されたシンチグラフィー造影剤には、適した量の放射能を有するものが包含される。一般には、投与されるべき単位服用量は、約0.01mCi〜約100mCi、好ましくは1mCi〜20mCiの放射能を有している。単位剤形として注射されるべき溶液は、約0.01mL〜約10mLである。99mTc放射性複合体の形成においては、mL当たり約0.01mCi〜約100mCiの濃度で放射能を含んでいる溶液中で放射性複合体を形成させるのが一般的に好ましい。
【0176】
本発明に従った放射性核種標識cMet結合造影剤の典型的投与量は、10〜20mCiで供給される。cMet特異的放射性核種造影剤を患者内に投与後、造影剤中に取り込まれた核種のγ線エネルギーのために較正されたγカメラを、剤の取り込みの範囲を画像化する、そして部位中に存在する放射能量を定量するために使用する。インビボでの部位の画像化は、約数分で行うことが可能である。しかしながら、画像化は、場合により、患者内へ放射標識ペプチドを注射した後、数時間以内にまたはより後に行うことが可能である。ほとんどの例において、投与された量の内の十分な量が、画像化されるべき領域に約10分の1時間以内に蓄積し、シンチ写真を撮ることを可能にするであろう。
【0177】
本発明の放射線治療化合物の適切な投与スケジュールは当業者には既知である。本化合物は、標的化cMet発現組織の損傷または消失を起こすために十分であるが、しかし非標的(正常組織)に実質的な損傷を起こすほどは多くない放射能量を使用して、限定されるわけではないが、1回または多数回IVまたはIP注射を含む多くの方法を使用して投与することが可能である。必要とされる投与量は、異なった構築物、使用された同位元素のエネルギーおよび半減期に依存して、取り込みの程度および体からの剤のクリアランス、および腫瘍の大きさで異なっている。一般には、投与量は、約30〜50mCiの1回用量から約3Ciまでの蓄積用量の範囲でありうる。
【0178】
本発明の放射線治療組成物は、生理学的に受容可能な緩衝液を含むことが可能であり、そして注射に先立った化合物の放射線分解損傷を防止するための放射線安定剤が必要とされる。放射線安定剤は当業者には既知であり、そして例えば、パラ−アミノ安息香酸、アスコルビン酸、ゲンチジン酸などを含むことが可能である。
【0179】
放射性核種以外の、本発明の複合体を調製するために必要とされる全ての成分を含む単一または多バイアルキットはこの発明の不可欠な部分である。
単一バイアルキットは、好ましくはキレート化リガンド、第1スズ塩源または他の医薬として受容可能な還元剤を含んでおり、そしてpH値を約3から約9へ調整するため、医薬として受容可能な酸または塩基で適切に緩衝化されている。使用される還元剤の量および型は、形成されるべき交換複合体の性質に依存するであろう。適切な条件は、当業者にはよく知られている。キット内容物は凍結乾燥された形であることが好ましい。こうした単一バイアルキットは、所望により、グルコヘプトナート、グルコナート、マンニトール
、リンゴ酸塩、クエン酸または酒石酸のごとき不安定または交換リガンドを含むことが可能であり、そして最終生成物の放射化学的純度および安定性を改良するために働く、ジエチレントリアミン−5酢酸(DPTA)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)またはα、βまたはγシクロデキストリンのごとき反応修飾剤も含むことが可能である。キットはまた、安定剤、凍結乾燥過程を助けるために設計されたマンニトールのごとき充填剤、および当業者には既知の他の添加物も含むことが可能である。
【0180】
多バイアルキットは、好ましくは、同一の一般成分を含んでいるが、放射性医薬の再構築における1以上のバイアルを用いている。例えば、1つのバイアルは、過テクネチウム酸塩の添加で不安定Tc(V)複合体を形成するために必要とされる全ての成分を含んでいる(例えば、第1スズ源または他の還元剤)。過テクネチウム酸塩をこのバイアルに添加し、そして適当な期間待った後、このバイアルの内容物を、リガンドならびにそのpHを最適な値に調整するために適切な緩衝液を含む、第1のバイアルに加える。約5〜60分の反応時間後、本発明の複合体が形成される。この多バイアルキットの両方のバイアルの内容物は凍結乾燥されていることが便利である。前記のように、反応修飾剤、交換リガンド、安定化剤、充填剤などが片方または両方のバイアルに存在することが可能である。
【0181】
治療応用
本発明のcMet結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物は、限定されるわけではないが、cMet活性に関連した疾患を含むcMetに付随した疾患を示す、処置する、または望まれない細胞増殖(新生物性腫瘍、例えば、癌のごとき;cMetに対する親和性そして例えば、上皮細胞のごとき増殖細胞上のHGF/cMet複合体での滞留時間を提供するまたは改良することにより)に対する、抗増殖または殺腫瘍性剤のごとき治療剤の活性を改良するために使用することが可能である。本発明のこの側面において、ハイブリッド剤を、本発明に従ったcMet結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物と治療剤を結合することにより提供する。治療剤は上で議論した放射線治療剤、薬剤、化学療法剤または殺腫瘍剤、遺伝子物質または遺伝子搬送媒体などであり得る。結合体のcMet結合ポリペプチド部分は、治療剤がcMetまたはHGF/cMet複合体の部位(即ち、活性化上皮細胞)の「回帰」ことを起こし、そして結合体の治療活性が細胞増殖の部位により局在化および濃縮されるように、内皮に対する結合の親和性を改良する。加えて、これらのcMet結合部分は、HGFのcMetに対する結合を阻止することにより、HGF媒介シグナル伝達事象を阻害することが可能である。こうした結合は、ヒトを含む哺乳動物において、過剰増殖性障害、特に新生物性腫瘍増殖の処置において有用である。本方法は、治療剤と結合された、本発明に従ったcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物の有効量を哺乳動物に投与することを含む。本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物における、血管新生関連疾患の処置のための医薬の製造における、こうした結合体の使用も提供する。
【0182】
本発明のこの側面における使用のために適した治療剤には、限定されるわけではないが、白金化合物(例えば、スピロプラチン、シスプラチンおよびカルボプラチン)、メトトレキセート、アドリアマイシン、ミトマイシン、アンサミトシン、ブレオマイシン、サイトシン、アラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メリファラン(例えば、PAM、L−PAMまたはフェニルアラニンマスタード)、メルカプトプリン、ミトタン、プロカルバジン塩酸塩、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルブシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩、タキソール、ミトマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ロイプロリド酢酸塩、メゲストロール酢酸塩、タモキシフェンクエン酸塩、テストイアクトン、トリロスタン、アムサクリン(m−AMSA)、アパラギナーゼ(L−アパラギナーゼ)、エルウィナ アパラギナーゼ、エトポシド(VP−16)、インターフェロンCX−2a、インターフェロンCX−
2b、テニポシド(VM−26)、ビンブラスチン硫酸塩(VLB)、ビンクリスチン硫酸塩、ブレオマイシン硫酸塩、アドリアマインおよびアラビノシルのごとき抗新生物剤;SU5416およびSU6668(Sugen/PharmaciaおよびUpjohn)、エンドスタチン(EntreMed)、アンギオスタチン(EntreMed)、コムブレスタチン(Oxigene)、シクロスポリン、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ダウノルブシン、免疫毒素のごとき、血管新生および/または腫瘍増殖に重要なシグナル伝達分子に対して活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤のごとき抗血管新生剤;凝固因子;アシクロビル、アマンタジン アジドチミジン(AZTまたはジドブジン)、リバビリンおよびビダラビン1水和物(アデニン アラヒノシド、ara−A)のごとき抗ウイルス剤;クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メトロイダゾール、キニンおよびメグルミンアンチモン酸塩のごとき抗生物質、抗マラリア剤、抗原虫剤;ジフルミサール、イブプロフェン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック、トルメチン、アスピリンおよびサリチル酸塩のごとき抗炎症剤、が含まれる。
【0183】
本発明の1つの態様において、治療剤は超音波造影剤組成物と会合させることが可能であり、そこにおいて、本発明のcMet結合部分は、本明細書に記載したように、小胞を形成するために用いられた物質へ連結されている。超音波造影剤の投与およびcMetまたはHGF/cMet複合体を発現している組織へ結合された造影剤の随意の画像化後、微小胞を破裂またはバーストするために、組織をエネルギービーム(好ましくは超音波、例えば、0.3〜3MHzの周波数)で照射することが可能である。このように、治療剤の治療効果を、微小胞の破裂により放出されるエネルギーにより促進することが可能であり、特に、標的化組織への治療剤の有効な搬送を引き起こしている。例えば、治療剤は標的化超音波造影剤と会合させ、本明細書において援用されるUS6,258,378号に記載されているように搬送することが可能である。
【0184】
本発明のcMet結合ポリペプチドおよび多量体ポリペプチド構築物はまた、遺伝子物質をcMet発現細胞へ標的化するためにも使用することが可能である。それ故、それらは遺伝子治療、特に過剰増殖性障害の処置に有用であることができる。この態様において、過剰増殖性障害を処置することにおいて有用な遺伝子物質または1以上の遺伝子物質を含んでいる媒体を、本発明の1以上のcMet結合部分へ結合し、そして患者に投与することができる。遺伝子物質は、天然の、または組換えRNAおよびDNAおよびアンチセンスRNAおよびDNAを含む合成起源の、RNAまたはDNAのごとき核酸を含むことが可能である。遺伝子物質の型は、例えば、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)および欠陥または「ヘルパー」ウイルスのごとき発現ベクターを運んでいる遺伝子、アンチジーン核酸、1本鎖および2本鎖両方のRNAおよびDNA、およびホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート オリゴデオキシヌクレオチドのごときその類似物を含むことが可能である。加えて、遺伝物質を、例えば、脂質、タンパク質または他の重合体と組み合わせることが可能である。遺伝子物質の搬送媒体は、例えば、ウイルス粒子、レトロウイルスまたは他の遺伝子治療ベクター、リポソーム、脂質(特にカチオン性脂質)と遺伝子物質の複合体、デキストラン誘導体と遺伝子物質の複合体などを含むことが可能である。
【0185】
本発明の構築物の好ましい態様は、過剰増殖性障害の処置のための遺伝子治療に利用される。この態様において、遺伝子物質または遺伝子物質を含んでいる1以上の搬送媒体(例えば、過剰増殖性障害の処置において有用な)は、本発明の1以上のcMet結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物と結合でき、そして患者に投与することが可能である。
【0186】
遺伝子物質および本発明のcMet結合部分を含んでいる構築物は、特に、増殖してい
る癌細胞(例えば、上皮細胞)内へ遺伝子を選択的に導入するために使用することが可能であり、癌を処置するために有用であり得る。
【0187】
治療剤および本発明のcMet結合部分は、所望により本出願の別の場所で議論されたリンカーと同一の型を使用して、既知の方法で連結または融合することが可能である。好ましいリンカーは、置換または非置換アルキル鎖、アミノ酸鎖、ポリエチレングリコール鎖および当該技術分野で既知の他の単純な重合体リンカーであろう。より好ましくは、もし治療剤が、コードDNA配列が知られているタンパク質それ自身であれば、治療タンパク質およびcMet結合ポリペプチドを、前に記載したように、組換えDNA技術を使用して作成された同一合成遺伝子から同時発現することが可能である。cMet結合ポリペプチドのコード配列を、治療タンパク質のアミノまたはカルボキシ末端で、または末端の間に配置して(もしこうした配置が治療タンパク質かまたはcMet結合ポリペプチドの必要とされる生物学的機能を破壊しないことが決定されたら)発現するように、治療タンパク質の読み枠内へ融合することが可能である。この一般的アプローチの特別な利点は、多、縦列配置cMet結合ポリペプチドのコンカタメリゼーション(concatamerization
)が可能であることであり、それにより、各々の治療タンパク質に会合されたcMet結合部位の数および濃度を増加させる。この様式において、cMet結合活性が増強され、それは組換え治療融合タンパク質の有効性を改良することが期待される。
【0188】
加えて、本発明のcMet結合ポリペプチドを含んでいる構築物は、それ自身、cMet活性に関係する多くの疾患を処置するための治療剤として使用することが可能である。例えば、タンパク質または他の分子(例えば、増殖因子、ホルモンなど)の結合が疾患過程に必要であるかまたは寄与し、そして結合部分がこうした結合を阻害する場合、こうした結合部分を含んでいる構築物は、治療剤として有用であることができる。同様に、結合部分の結合それ自身が疾患過程を阻害する場合、こうした結合部分を含んでいる構築物はまた、治療剤として有用であることができる。
【0189】
cMetへのHGFの結合は、多数の細胞内シグナル伝達経路の活性化を生じ、多様な細胞の過剰増殖を導いている。それ自身、1つの態様において、cMetへのHGFの結合を阻害する(または、さもなければcMetの活性化を阻害する)cMet結合ポリペプチドを含んでいる構築物は、抗新生物剤として使用することが可能である。加えて、血管新生活性に、HGFの結合およびcMetの活性化が示唆されているので、別の態様において、cMetへのHGFの結合を阻害するcMet結合ポリペプチドを含んでいる構築物は、抗血管新生剤として使用することが可能である。cMetの活性化を阻害する単量体、多量体およびヘテロ多量体を含んでいる本発明の特定の構築物が、実施例に議論されており、そして、例えば、配列番号365(図10)を含んでいる。本発明の結合ポリペプチドおよびその構築物は、cMetを発現している内皮および/または上皮細胞が関与する状態を処置するための治療剤として有用である。内皮の重要な機能は血管新生であるので、ポリペプチドおよびその構築物は、血管新生および/または過剰増殖を含む状態を処置するために特に有用である。血管新生が関与する状態の例には、例えば、固形腫瘍、腫瘍転移および良性腫瘍が含まれる。cMet活性化によりそして血管新生を通して起こされる腫瘍は、当該技術分野でよく知られており、そして、例えば、乳房、甲状腺、グリア芽細胞腫、前立腺、悪性中皮腫、直腸結腸、肝細胞、肝胆道、腎臓、骨肉腫および頚部が含まれる。追加の腫瘍および関連する障害は、Mosesらにより2000年2月15日に発行された米国特許第6,025,331号、その教示は本明細書において援用される、の表Iに収載されている。良性腫瘍には、例えば、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび発熱性肉芽腫が含まれる。血管新生および/または過剰増殖が関与する他の関連する疾患には、例えば、関節リウマチ、乾癬および糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、新生血管緑内障、水晶体後線維増殖症のごとき眼疾患、オスラー−ウェーバー症候群、心筋血管新生、プラーク新血管新生、末梢血管拡張、血友
病関節症、血管線維腫および創傷肉芽が含まれる。血管成長が関与する他の関連する疾患または状態には、腸管癒着症、アテローム性動脈硬化症、強皮症および肥厚性瘢痕および潰瘍が含まれる。さらに、本発明の結合ポリペプチドおよびその構築物は、着床に必要とされる子宮新血管新生を減少させるまたは防止するために、例えば、受胎調節剤として使用することが可能である。
【0190】
結合ペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびその構築物結合体は、状態の性質および所望の結果に依存して、適した時間経過で個体へ投与することが可能である。結合ポリペプチドおよびその構築物は、予防的に、例えば、状態が診断される前に、または状態になりやすい個体に投与することが可能である。結合ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物は、個体が状態の症状を示している間に、または症状が去った、またはさもなければ解放された後(腫瘍の除去後のごとき)に投与することが可能である。加えて、本発明の結合ポリペプチドおよびその構築物は、維持的療法の一部として、例えば、症状または状態の再発を防止するまたは減らすために投与することが可能である。以下に記載するように、本発明の結合ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物は、全身的にまたは局所的に投与することが可能である。
【0191】
投与される物質の量は状態の重度に依存するであろう。例えば、過剰増殖の処置には、例えば、新生物性腫瘍増殖の場合、腫瘍の位置およびサイズが投与されるべき物質の量に影響するであろう。用いられるべき正確な投与量および投与様式は、苦情の質を考慮して、処置を監督している医者が情況に従って、必然的に決定しなければならない。一般に、剤を結合した本発明のポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物および結合体の投与量は、その標的に対する本発明の結合ポリペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物の改良された親和性が標準投与量を減少させることができるであろうが、治療剤単独に対して日常的である投与量に従うであろう。
【0192】
こうした結合医薬組成物は、好ましくは非経口投与、そして最も好ましくは静脈内または動脈内投与のために処方する。一般に、そして投与が静脈内または動脈内である場合は特に、2回以上の服用量として離れた時間での大量瞬時投与、または一定または非線形流量注入として医薬組成物を与えることが可能である。
【0193】
本明細書において、用語「治療」とは、既定の状態の症状の少なくとも一部の軽減を含んでいる。本発明の結合ポリペプチド、多量体構築物およびその構築物結合体は、有用であるべき、症状の完全な軽減を生み出さなくてもよい。例えば、個体の処置は、腫瘍または疾患領域のサイズの減少、または腫瘍または疾患領域のサイズの増加防止を生じることができる。処置はまた、主腫瘍の転移性増殖の数またはサイズを防止するまたは減らすことができる。
【0194】
軽減することができる症状は、cMet活性のごとき生理学的特徴を含んでいる。本発明の結合ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物は、cMetへ結合し、そしてその活性を阻害することにより、もしくはcMetへ結合し、そしてこのレセプターを活性化するHGFを阻害することにより、cMetおよびその同族体の活性を阻害することができる。こうした阻害は、例えば、結合ポリペプチドまたはその構築物の存在下または処理後に、レセプターのリン酸化状態を測定することにより、検出することが可能である。本明細書に提供された教示に基づいて、当業者は本明細書に提供されたような結合ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物および結合体またはその構築物の適した量を投与し、そして目的のパラメーターに対する処置の効果を測定する、やり方およびそれが可能であることを知るであろう。例えば、目的の領域(例えば、腫瘍または病変)のサイズを処置前後に測定することが可能である。細胞またはcMetそれ自身、試料から単離でき、そして本明細書に記載したアッセイで使用できる。
【0195】
ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物の投与量は、個体の年齢、性、健康状態および体重、ならびに状態の性質および全体の処置計画に依存しなければならない。ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物の生物学的効果は、本明細書に記載されている。それ故、本明細書において提供された結合ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物および結合体およびその構築物の生物学的効果、および処置の所望の結果に基づいて、好ましい投与量が、日常的最適化手法を通して当業者により決定される。典型的には、1日の投与計画は、約0.1mg/kg〜約1mg/kgの範囲である。
【0196】
本明細書で提供された、結合ポリペプチド部分およびその構築物結合体は、単独の活性成分として、所望により医薬として受容可能な賦形剤と一緒に投与することが可能であり、もしくは、他の結合ポリペプチドおよびその構築物、他の治療剤またはその組み合わせと一緒に(例えば、同時にまたは連続的に)投与することが可能である。加えて、結合ポリペプチド部分およびその結合体構築物を、例えば、特異性、体における滞留時間または治療効果を改良するため、治療剤へ結合することが可能である。こうした他の治療剤には、例えば、他の抗増殖化合物および殺腫瘍性化合物が含まれる。治療剤はまた、抗体を含むことが可能である。さらに、本発明の結合ポリペプチド多量体ポリペプチド構築物およびその構築物を、癌細胞回帰装置として使用することも可能である。従って、結合ポリペプチドまたはその構築物を、核酸を間質細胞へ標的化するため、例えば、治療ポリペプチドをコードしている核酸へ結合することができる。核酸コンジュゲート結合ポリペプチド部分またはその結合体へ暴露されると、間質細胞は結合核酸を内部移行しそして発現することができ、それにより治療ペプチドを標的細胞へ搬送する。
【0197】
結合ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびコンジュゲートおよびそのコンジュゲートは、任意の適した経路により、局所的にまたは全身的に投与することが可能である。投与の適した経路には、限定されるわけではないが、局所適用、経皮、非経口、消化管、膣内および経肺胞が含まれる。所望の投与経路のための組成物は、医薬分野でよく知られた方法、例えば、レミントン:薬学の科学と実践、第20版、Lippincott,WilliamsおよびWilkins、2000、のいずれかにより調製することが可能である。
【0198】
局所適用には、結合ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートを、例えば、ポリペプチドまたは構築物が、全身搬送のために皮膚へ浸透するおよび血流中へ入る、もしくは、局所的搬送のために目的とする領域に接触することを許容するクリーム、ゲルまたはリンス液に懸濁することが可能である。局所適用に適した組成物には、ポリペプチドまたは構築物が少なくとも最小限には可溶である、任意の医薬として受容可能な基剤が含まれる。
【0199】
経皮投与のためには、ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートを、適した経皮装置または「パッチ」と一緒に、医薬として受容可能な懸濁液中で適用することが可能である。本発明のポリペプチドまたは構築物の投与のために適した経皮装置の例は、例えば、Foldvariらにより2000年12月26日に発行された米国特許第6,165,458号、Sintovらにより2001年8月4日に発行された米国特許第6,274,166B1号、それらの教示は本明細書において援用される、に記載されている。
【0200】
非経口投与のためには、ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートを、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下に注射することが可能である。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌、等張水性緩衝液の溶液である。他の医薬として受
容可能な坦体には、限定されるわけではないが、無菌水、食塩液および緩衝化食塩水(リン酸塩または酢酸塩のような緩衝液を含んで)、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、パラフィンなどが含まれる。必要な所では、組成物はまた、活性化合物を害するように反応しない限り、可溶化剤、そして注射の部位での痛みを楽にするため、リドカインのごとき局所麻酔剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、塩、滑沢剤などを含むことも可能である。同様に、慣用的賦形剤、即ち、活性化合物を害するように反応しない、非経口、経腸または鼻腔内適用に適した、医薬として受容可能な有機または無機担体物質を含む。一般に、活性単位で活性剤の量を示しているアンプルまたはサシェット(sachette)のごとき、密封された容器中に、例えば、凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、別々にあるいは一緒に混合された単一剤形で、成分は供給されるであろう。組成物が注入により投与されるべきであるところでは、無菌医薬品グレードの「注射用水」または食塩水を含んでいる注入瓶で調剤することが可能である。組成物が注射により投与されるべきであるところでは、成分が投与に先立って混合できるような、無菌注射用水または食塩水のアンプルを提供することが可能である。
【0201】
消化管および膣内投与のためには、ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートを、医薬として受容可能な粉末、ピルまたは液体、そして直腸または膣投与のための座剤内へ取り込ませることが可能である。
【0202】
経肺胞、頬側または肺投与のためには、ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートを、エアロゾル化および吸入に、または洗口液として適した医薬として受容可能な賦形剤に懸濁することが可能である。噴霧器および気化器のごとき経肺胞に適した装置は、本発明の範囲内に含まれる。頬側または肺経路を使用する、ポリペプチドなどのエアロゾル搬送に適した処方は、例えば、その教示が本明細書において援用される、Pankaj Modiにより2001年11月6日に発行された、米国特許第6,312,665B1号にみることができる。
【0203】
加えて、本発明のポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートは、鼻腔内または眼に投与することが可能であり、ここにおいて、ポリペプチドまたは構築物は滴下様式投与に適した、医薬として受容可能な液体剤に懸濁する。
【0204】
本発明のポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートは、ポリペプチドなどが個体において長期間に渡って放出されるように(徐放性または制御放出)投与することが可能である。例えば、ポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートは、1回投与が少なくとも1週間、あるいは1年またはそれ以上に渡るポリペプチドなどの搬送を提供するように、組成物内へ処方することが可能である。制御放出システムには、一体化したまたは貯蔵器型マイクロカプセル、デポーインプラント、浸透圧ポンプ、小胞、ミセル、リポソーム、経皮パッチおよびイオン泳動的装置が含まれる。1つの態様において、本発明のポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートは、徐々に分解する、無毒性重合体中でカプセルに詰めるかまたは混合される。本明細書に提供されたポリペプチド、多量体ポリペプチド構築物およびそのコンジュゲートの制御放出に適した追加の処方は、その教示が本明細書において援用される、Folkmanらにより1983年7月5日に発行された米国特許第4,391,797号に記載されている。
【0205】
個体へ本発明のポリペプチドを搬送するための別の適した方法は、ポリペプチドのインビボ産生を経るものである。ポリペプチドをコードしている遺伝子を、コードされたポリペプチドが発現されるように個体へ投与することが可能である。特定の態様において、ポリペプチドをコードしている遺伝子を、患者から得られた細胞内へトランスフェクトする
(生体外遺伝子治療と称されている方法)。ポリペプチドを発現している細胞を次ぎに、患者の体へ戻す。生体外遺伝子治療の方法は当該技術分野ではよく知られており、例えば、その教示が本明細書において援用される、Andersonらにより1998年3月21日に発行された、米国特許第4,391,797号に記載されている。
【0206】
cMet結合部分ポリペプチドの単離および本発明に従ったcMet結合部分およびそのコンジュゲートの調製および使用が、以下の実施例でさらに例示されるであろう。以下の実施例に含まれている具体的パラメーターは、本発明の実施を例示することを意図しており、そしてそれらは本発明の範囲をどのような様式においても限定するために示されているのではない。
【実施例】
【0207】
実施例1:cMet結合ポリペプチドの同定法
多様なペプチド展示ファージライブラリーを使用する4叉選択戦略を、cMet結合ポリペプチドをスクリーニングするために利用した。cMetレセプターの細胞外ドメイン(Fc融合タンパク質として発現される)および、その細胞表面に高レベルのcMetを発現する結腸直腸癌細胞株、DLD−1の両方を、選択のための道具として使用した。
【0208】
簡単には、選択は、標的として可溶性cMet−Fc融合タンパク質かまたはDLD−1細胞を使用することを含んでいた。HGFによる特異的溶離(低および高親和性cMet結合体の両方を同定するため、最初に1時間、そして次ぎに1晩)を実行した。加えて、可溶性cMetレセプターを使用すると同時に、リガンド結合部位へは結合しないが、それにもかかわらず、造影剤に発展する可能性があるペプチドを同定するため、レセプターに結合されて残ったすべてのペプチド展示ファージを採取した。図9は、用いられた選択戦略を示している。簡単には、21の異なった選択作戦/溶離の組み合わせを、各々のライブラリープールで実施した。可溶性Met−Fc融合タンパク質を使用し、ラウンド3および4で表される追加の10の選択作戦もまた実施した。HGF溶離は、100ng/mLの濃度であった。
【0209】
実施例2:可溶性cMet−Fc融合タンパク質へ結合するペプチド展示ファージの決定「タンパク質ファージELISA」
多様な選択作戦から単離されたペプチド展示ファージを使用するタンパク質ファージELISAを、非相関Fc−融合タンパク質(TRAIL−Fc)に対する、cMetのためのペプチドの特異性を決定するために実施した。簡単には、384ウェルプレートを0.5μg/mLのcMet−Fc融合タンパク質またはTRAIL−Fc融合タンパク質(バックグラウンド)を用い、4℃で1晩被覆した。プレートは、0.05%(v/v)のTween−20を含んでいるPBS(PBST)に溶解した3%(w/v)BSAを用いて、37℃で2時間ブロックした。プレートをPBSTで洗浄し、そして各々のウェルに100μLのペプチド展示ファージを加えた。プレートを2時間室温でインキュベートし、そしてPBSTで洗浄した。cMet結合ペプチド展示ファージはHRP結合抗M13抗体を使用して検出した。
【0210】
TRAIL−Fc融合タンパク質に対して、cMet−Fc融合タンパク質へ>3倍の結合を示すペプチド展示ファージを、本明細書においては「陽性ヒット」と称する。前記スクリーニングで同定された陽性ヒットのDNA配列決定を行った。続いての配列分析から、187の独特なペプチド配列を同定した。cMet結合ファージ展示ペプチドの対応するアミノ酸配列は、表1に収載されている(配列番号001〜101、365〜387、390〜404、449〜496)。
【0211】
実施例3:細胞モデルにおけるcMet結合の決定
陽性ヒットが細胞表面発現ヒトcMetへの特異的結合を示すかどうかを評価するため、全細胞ELISAを実施した。
【0212】
全細胞ELISAは、ヒトcMetを過剰発現する3T3細胞を使用して実施した。cMetを発現しない3T3細胞(「非発現細胞」)を対照細胞株として使用した。簡単には、96ウェルプレートにウェル当たり10の細胞を播種した。プレートを1600rpmで5分間遠心分離して細胞をペレット化した。生じた細胞層を、0.1%(v/v)グルタルアルデヒドを用い、37℃で12分間固定した。細胞をPBSで洗浄し、そして続いて3%BSAのPBST溶液を用い、37℃で1時間ブロックした。ペプチド展示ファージもまた前記溶液中、37℃で1時間ブロックした。100μLのブロックされたファージを各々のウェルに加え、そしてプレートを室温で1時間インキュベートした。プレートはPBSTで洗浄した。cMet結合ペプチド展示ファージは、HRP結合抗M13抗体を使用して検出した。
【0213】
実施例4:HGF競合タンパク質ELISA
HGF競合タンパク質ELISAは、cMet結合ペプチドのいずれが、cMet上の同様の結合部位に対してHGFと競合するかどうかを決定する試みにおいて実施した。この競合ELISAは、HGF仲介シグナル伝達事象(例えば、増殖)をブロックするペプチド、「HGF拮抗ペプチド「として働くペプチドを同定する。これらのアッセイは、最初の選択そして第1世代ペプチドライブラリーを使用するスクリーニング作戦で発見されたペプチド展示ファージを使用して行った。簡単には、96ウェルプレートを0.5μg/mLのcMet−Fc融合タンパク質またはTRAIL−Fc融合タンパク質(バックグラウンド)を用い、4℃で1晩被覆した。プレートは、3%(w/v)BSAのPBST溶液を用いて、37℃で2時間ブロックした。プレートをPBSTで洗浄し、そして各々のウェルに100μLのHGF(100ng/mLかまたは500ng/mLのPBST溶液)を加えた。プレートを2時間室温でインキュベートし、その後プレートをPBSTで洗浄し、そして70μLのHGF(143ng/mLまたは714ng/mL)または70μLのPBSTを各々のウェルに加えた。これに続き、各々のウェルに30μLのペプチド展示ファージ1晩培養物を加えた。プレートを2時間室温でインキュベートし、PBSTで洗浄し、そしてcMet結合ペプチド展示ファージはHRP結合抗M13抗体を使用して検出した。
【0214】
タンパク質ELISA、全細胞ELISAおよびHGF競合実験のデータは、表7に示されている。
【0215】
実施例5:ペプチド合成および蛍光標識
陽性ファージ単離物に相当する、選択された番号のcMet結合ペプチドを、9−フルオレニルメトキシカルボニル プロトコールを使用して固相マトリックス上で合成した。これらのペプチドは逆相クロマトグラフィーで精製した。ペプチド質量は、エレクトロスプレー質量分析により確認し、そして280nmでの吸光度を測定することによりペプチドを定量した。合成のため、ペプチドが切り出されたファージベクター配列からの2つのN末端および2つのC末端アミノ酸を保持し、そしてリンカー、例えば、−Gly−Gly−Gly−Lys−NH(配列番号513)を各々のペプチドのC末端に付加した。各々のペプチドのN末端をアセチル化した。選択されたリジン残基は、適切な場所で、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキシシクロヘキサ−1−イリデン)−3−メチルブチル(ivDde)で保護した。保護基はC末端リジンへの選択的カップリングを可能にし、ペプチド切断の間は除去されないが、カップリング後、2%ヒドラジンDMF溶液または0.5Mヒドロキシルアミン、pH8、水溶液で除去することが可能である。
【0216】
各々のペプチドは、フルオレセイン(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体)
またはフルオレセイン イソチオシアナート(FITC)の2%ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)含有DMF溶液を使用し、C末端リジンをフルオレセインで標識した。ペプチドがivDde保護リジンを含んでいた場合、遊離NHS−フルオレセインと反応し、内部保護基を除去する2%ヒドラジンの添加で反応を停止させた。全ての他のペプチドに対しては、等量の0.5Mヒドロキシルアミン、pH8の添加により、反応を停止した。停止させた反応液は次ぎに10%DMF未満になるように水で希釈し、次ぎにC18逆相クロマトグラフィーを使用して精製した。ペプチドは、LC−MSシステム(インラインSCIEX AP150単一4重極質量分析計を備えたHP1100 HPLC)を使用し、それらの期待される質量を分析することにより確認し、そしてペプチドの純度を決定した。
【0217】
実施例6:蛍光異方性測定
蛍光異方性測定は、384ウェルマイクロプレート中、10μLの結合緩衝液(PBS、0.01%Tween−20、pH7.5)を用い、Tecan Polarion蛍光偏光プレートリーダー(カラカス、ベネズエラ)を使用して実施した。フルオレセイン標識ペプチドの濃度を一定(20nM)に保ち、そしてcMet−Fc融合タンパク質(または同様の標的)の濃度を変化させた。結合混合物は、測定前、マイクロプレート中、30℃で10分間平衡化した。観察された異方性の変化は、非線形回帰を経て以下の式へ当てはめ、見掛けのKを得た。この式(1)は、合成ペプチドおよびcMetが溶液中、1:1の化学量論で可逆複合体を形成することを仮定している。
【0218】
【数1】
【0219】
式中、robsは観察された異方性であり、rfreeは遊離ペプチドの異方性であり、rboundは結合されたペプチドの異方性であり、Kは見掛けの解離定数であり、cMetは総cMet濃度であり、そしてPは総フルオレセイン標識ペプチド濃度である。Kは直接結合アッセイで計算され(KD,B)、そしてそれ故、これらの値はフルオレセイン標識ペプチドへのcMet結合を表している。
【0220】
実施例7:ペプチド競合蛍光偏光アッセイ
ペプチド競合蛍光偏光アッセイは、cMetへの結合に対し、どのペプチドがお互いに競合するかを決定するために実施した。これは、個々のペプチド単独よりも、cMetレセプターに対してより高い親和性を示す、潜在的ヘテロマーペプチド複合体を同定するであろう。
【0221】
簡単には、cMet結合ペプチドの交叉競合を、3μLの総反応液中、Cartesian液体ハンドラー(アーヴィン、CA)で実施した。フルオレセイン標識ペプチドを20nMの最終濃度に希釈し、そして非標識競合ペプチドを10nMの最終濃度に希釈した。cMet−Fc融合タンパク質は、反応液中の各々のフルオレセイン標識ペプチドに対するKまで希釈した。結合混合物は、異方性の変化を測定する前に、マイクロプレート中、30℃で10分間平衡化した。これらの研究から、3つの対のcMet結合ペプチドが、非競合物であり、そしてヘテロマーcMet結合ペプチド複合体の理想的な候補を代表すると同定された(表9を参照されたい)。
【0222】
実施例8:ヘテロマーcMet結合ペプチド複合体製造のための一般法
各々の2量体は配列を有しているTc−キレート化6−PnAO(一般にAと称される)および官能化されたスペーサー(スペーサー=JJ;J=8−アミノ−3,6−ジオキ
サオクタン酸)部分(一般にBと称される)から成っている。化合物Bを、DMF中、室温で30分、10倍過剰のグルタール酸ビスNHSエステル(Tyger Scientific、プリンストン、NJ)および約20倍過剰のジイソプロピルエチルアミンで処理した。反応混合物をエーテル(容量で15倍)で希釈すると、グルタリル化ペプチドのモノNHSエステルが沈殿した。エーテルをデカントし、固形物をエーテルでさらに3回洗浄すると、未反応のグルタール酸ビスNHSエステルの痕跡が除去される。得られた固形物を乾燥DMFに再懸濁し、そして化合物A(1当量)、続いてジイソプロピルエチルアミン(20当量)を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を水(50倍)で希釈し、そして混合物を直接逆相HPLCカラムにかけ、それは水(0.1%TFA)からアセトニトリル(0.1%TFA)への濃度勾配で溶出した。所望の生成物を含んでいる分画を合わせ、凍結乾燥すると所望の物質を得た。
【0223】
特別の実施例:ヘテロ2量体cMet結合ペプチド複合体の製造
1)PnAOG−Glut修飾配列番号514ペプチド(A型化合物)の製造
6−グルタリル−PnAO(40mg、0.1ミリモル)の乾燥DMF(0.2mL)溶液へ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、14mg、0.12ミリモル)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC、15mg、0.12ミリモル)を加え、4時間室温で撹拌した。エーテル:ヘキサン(5mL、1:1)を反応混合物へ加えた。混合物を撹拌し、そして上清をデカンテーションにより除去し、フラスコにペーストを残した。ペーストはエーテル:ヘキサン(1:1)で洗浄し(3×5mL)、そして乾燥DMF(0.2mL)に溶解した。この溶液に、K−(ivDde)−修飾配列番号518(50mg、0.017ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、10mg、0.08ミリモル)を加え、生じた混合物を、18時間撹拌した。ヒドラジン(10μL)を加え、そして溶液を30分撹拌した。反応混合物を水(20mL)で希釈し、逆相(C18)HPLCカラムに加え、水(0.1%TFA)−アセトニトリル(0.1%TFA)系で溶出した。必要とされる生成物を含んでいる分画(>95%純度)を集め、そして凍結乾燥すると、配列番号518−(6−PnAO−Glut)(図11に示されたようなスキーム5を参照されたい)を無色のふわふわした固形物として得た。収量は25.1mg(47.4%)であった。
【0224】
2)配列番号515に連結された配列番号514を含んでいる2量体の製造
配列番号515(B型化合物)(10mg、0.0034ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(10mg、0.08ミリモル)を含んでいるペプチドの乾燥DMF(0.2mL)溶液へ、ジスクシンイミジルグルタラート(10mg、0.031ミリモル)を加え、室温で30分撹拌した。反応混合物をエーテル(3mL)で希釈して撹拌した。上清をデカントし、フラスコに半固形物を残した。反応生成物を洗浄するこの過程をエーテルで繰り返した(3×5mL)。こうして得られた半固形物を乾燥DMF(0.2mL)に溶解し、そしてペプチド配列番号514−(6−PnAO−Glut)(10mg、0.0032ミリモル)およびジイソプロピルエチルアミン(10mg、0.08ミリモル)を加え、反応混合物を24時間室温で撹拌した。反応混合物を水(20mL)で希釈し、逆相(C18)HPLCカラムに加え、水(0.1%TFA)−アセトニトリル(0.1%TFA)系で溶出した。必要とされる生成物を含んでいる分画(>95%純度)を集め、そして凍結乾燥すると、6−PnAO−Glut結合を経て配列番号515に連結された配列番号514を有しているヘテロ2量体(図12に示されたようなスキーム6を参照されたい)を無色のふわふわした固形物として得た。収量6.7mg(33%)。このおよび他のヘテロ2量体の構造は、図13A〜13Cに示されている。
【0225】
実施例9:細胞増殖アッセイ
細胞増殖アッセイは、HGF刺激増殖に拮抗するcMet結合ペプチドを同定するために実施した。これらのインビトロ研究は、細胞がHGFに応答して増殖する、レオミオ肉
腫細胞株、SK−LMS−1を利用した。SK−LMS−1細胞を、96ウェルプレート上、2000細胞/ウェルの密度で播種した。37℃で24時間のインキュベーション後、10%ウシ胎児血清の代わりに0.1%BSAを含んでいる培養培地中、37℃で36時間飢餓状態にした。cMet結合ペプチド(10μM)を含むまたは含んでいない、新鮮な飢餓培地を各々のウェルに加え、そして細胞を37℃で2時間インキュベートした。DMFを対照媒質として使用し、そしてそれはcMet結合ペプチドを含んでいない。50ng/mLかまたは100ng/mLの濃度でHGFを次ぎに加え、そして細胞をさらに37℃で12時間インキュベートした。製造元により説明されているように、BrdU(Calbiochem、サンディエゴ、CA)の取り込みを測定することにより、増殖を評価した。結果は配列番号365に対して示されている(図10)。
【0226】
実施例10:第2世代cMet結合ペプチドライブラリーの設計
線状および環状ペプチドライブラリーからの最初の選択は、cMetに対する多数の陽性ヒットを同定した。TN9ヒットは高度に保存されたモチーフを含んでいた(CxGpPxFxC、配列番号512、‘p’は、大文字のアミノ酸ほど強くは選択されない)ライブラリーは環状および線状メンバー両方を有しており、そして、遺伝子IIIスタンプ(stump)ディスプレイを有しているファージ中で築かれた。
【0227】
【表1-1】
【0228】
【表1-2】
【0229】
【表1-3】
【0230】
【表1-4】
【0231】
実施例11:94−E08およびcMetを結合するために選択された他の線状ペプチドの分析
線状単離物94−E08(配列番号454)はcMetに対して高い親和性を有しているが、さらに、94−E08にいくらかの相同性を有する、そして非常に短い領域に渡って非常に限られた同一性を有する、いくつかの他のペプチド単離物が存在した。従って、94−E08に基づいて3つの可変オリゴヌクレオチドを作製した:(1)最後の7を一定に保ちながら、最初の13コドンを変化させる;(2)他の単離物といくらかの類似性を示した5を固定して保ちながら、最初の18の内の13を変化させる;(3)最初の5を固定して保ちながら、最後の13コドンを変化させる、下記表4を参照されたい。
【0232】
【表2-1】
【0233】
【表2-2】
【0234】
【表2-3】
【0235】
【表2-4】
【0236】
【表2-5】
【0237】
【表2-6】
【0238】
実施例12:第2世代cMet結合ペプチドライブラリーの構築
ファージベクターDV3P82をNheIおよびNcoIで消化し、精製しそしてアル
カリ性ホスファターゼで処理した。10の鋳型、CM2−V1からCM2−V7、加えてCM2−V8vg、CM2−V9vgおよびCM2−V10vg、を下記表5に収載したプライマー対を使用し、別々に増幅した。
【0239】
【表3】
【0240】
各々の試料は別々にNheIおよびNcoIで消化し、フェノール/クロロホルムで抽出し、そしてライゲーションを実施する前に等モル比で混合した。1:5のベクター:挿入物比を使用した。ライゲートされたDNA構築物は、DH5α細胞内へ電気穿孔した。生じたライブラリーサイズは1.12×10の異なった形質転換体であった。
【0241】
実施例13:cMetへのペプチド2量体の結合の測定
BIAcoreの器械を使用し、固定化cMet−Fcへのペプチド2量体(図13A〜13Cに示されている)結合についての結合定数を決定した。
【0242】
3つの密度のcMet−Fc(R&D Systems)を、標準アミンカップリング法によりCM5センサーチップの表面のデキストランへ架橋した(3μM溶液を、50mMアセテート、pH5.5、で1:100、1:50または1:20に希釈)。フローセル1を活性化し、そして次ぎに、対照減算として働くようにブロックした。
達成された最終固定化レベル:
Fc 2 cMet−Fc = 2582
Fc 3 cMet−Fc = 5048
Fc 4 cMet−Fc = 9721。
【0243】
実験はPBST緩衝液(5.5mMリン酸塩、pH7.65、0.15M NaCl+0.05%(v/v)Tween−20)中で実施した。ペプチド2量体を脱イオンHOに、1mg/mL溶液になるように溶解した。2量体は50nMまでPBSで希釈した。25、12.5、6.25および3.125nM溶液が得られるように連続的希釈を実施した。すべての試料は2重に注入した。会合のためには、kinjectプログラムを使用し、2量体を30μL/分で3分間注入した。10分の会合後、4M MgClを50μL/分で2分間、の2回の急速注入で、残存するペプチドをcMet表面から剥がした。センソグラムは、BIAevaluationソフトウェアー3.1を使用して分
析した。ヘテロ2量体、Ac−GSPEMCMMFPFLYPCNHHAPGGGK{PnAO6−Glut−K[Ac−GSFFPCWRIDRFGYCHANAPGGGKJJ−Glut]−NH}−NH(配列番号515へ連結された配列番号514)、が0.79nMのKを示した。
【0244】
実施例14:cMet結合ペプチドの血清滞留の促進:マレイミドへの結合
マレイミドおよびチオールと反応可能な他の基を含む化合物は、化合物が注射された場合、血清タンパク質、特に血清アルブミン上のチオールと反応することが当該技術分野で知られている。付加物は血清アルブミンと同等の血清寿命、例えば、ヒトにおいては14日を超える、を有している。
【0245】
本発明に包含されるマレイミド標識線状ペプチドの直接合成を可能にする方法が利用可能である(Holmes,D.ら、2000.Bioconjug Chem.、11:439−444)。
【0246】
ジスルフィドを含むペプチドは、いくつかの方法の1つを用い、マレイミドで誘導体化することが可能である。例えば、第3のシステインをカルボキシ末端に付加することが可能である。付加されたシステインを、ジスルフィドを形成するシステインのために使用された基の型に対して直交性である保護基で保護する。ジスルフィドは、意図されたシステインを選択的に脱保護し、そしてペプチドを酸化することにより形成させる。最後のシステインを次ぎに脱保護し、そしてペプチドを大過剰モルのビスマレイミドと反応させる。生じた化合物は、血清アルブミンまたは他のチオール含有血清タンパク質と自由に反応するための1つのマレイミドを有している。
【0247】
あるいは、本発明の環状ペプチドは、−GGGK(配列番号513)のごとき、リジン含有C末端伸長を有するように合成する。cMet結合モチーフのリジンをivDdeで保護し、そしてC末端リジンを脱保護する。このリジンをN−[e−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(Pierce Biotechnology、ロックフォード、IL)またはN−[a−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル(Pierce Biotechnology)のごとき、マレイミド含有化合物と反応させる。
【0248】
実施例15:cMet結合ペプチドの血清滞留の促進:非共有結合的に血清を結合する部分への結合
50〜60kDa未満の分子量を有しているポリペプチドは、迅速に排泄される。脂肪酸のごとき多くの小分子は、血清アルブミンへ結合する。ペプチドへの脂肪酸または他の血清アルブミン結合部分の付着は、ペプチドが血清アルブミンへ非共有結合的に結合することを起こし、そして血清滞留を非常に延長することができる。本発明のペプチドへ付着された脂肪酸は、少なくとも12の炭素、好ましくは少なくとも14の炭素、より好ましくは少なくとも16の炭素を含んでいなければならない。脂肪酸は直鎖でもまたは分枝鎖でもよい。脂肪酸は飽和でもまたは不飽和でもよい。パルマート(CH−(CH14−CO−は好ましい脂肪酸である。血清におけるこの結合は、排出の速度を減少させることが可能である(Knudsen,L.ら、2000.J.Med.Chem.、43:1664−1669)。当該技術分野で既知の方法を使用し、血清アルブミン結合部分を、本明細書に開示されているペプチドまたは多量体ポリペプチド結合構築物の任意の1つに結合することが可能である。血清アルブミン結合部分は、リンカーを通してcMet結合ペプチドへ連結することが可能である。リンカーはペプチド性またはPEGのごとき他のものであることが可能である。0〜約30のリンカーが好ましい。リンカーは親水性であることが好ましい。血清アルブミン結合部分は、末端でかまたは付加されたアミノ酸の側基を通してcMet結合ペプチドまたは構築物へ結合することが可能である。適した
側基にはリジンおよびシステインが含まれる。こうした化合物はまた、本明細書において議論したような、例えば、放射性核種のためのキレート剤、または他の検出可能な標識または治療構築物を含むことが可能である。血清アルブミン結合部分へ連結されたcMetペプチドまたは構築物はcMetを結合するであろう。
【0249】
実施例16:cMet結合ペプチドの血清滞留の促進:PEGへの結合
タンパク質およびペプチドへのPEGの付着は、これらの分子の血清滞留を促進する。cMet結合ペプチドまたは多量体ポリペプチド構築物へのPEG(直鎖状または分枝)の付着は、血清滞留時間の実質的な促進を与えることが期待される。PEGの分子量は、少なくとも10kDa、より好ましくは少なくとも20kDa、そして最も好ましくは少なくとも30kDaまたはそれ以上であるべきである。PEGはNまたはC末端に付着することが可能である。ペプチドへPEGを付着させる方法は当該技術分野ではよく知られている。PEGは、リジンまたはシステインのごとき、反応性側基へ付着することが可能である。
【0250】
実施例17:cMet結合ペプチドの血清滞留の促進:血清タンパク質との融合
血清アルブミン(SA)を含むタンパク質およびその他のタンパク質は、増強された血清滞留時間を有している。ヒトSA(hSA)のアミノ酸配列が表10に示されている。表11は、配列番号657、成熟hSAおよび配列番号658を含む融合タンパク質を示している。cMet結合ペプチドは成熟hSAから、融通性のあるスペーシング(spacing)を可能にするためのグリシンに富んだリンカーにより分離されている。増強された血清滞留時間を有するであろう注射可能タンパク質を得るために、hSAの全てを使用する必要はない。マレイミドおよびαブロモカルボキシラートのごとき化学基は不対のシステイン(残基34)と反応して、安定な付加体を形成する。従って、付加体が放射性核種を結合するように、hSA融合タンパク質へ1つのキレート剤を結合することが可能である。マレイミド基を有するキレート剤を製造し、そしてhSAまたはhSA誘導体とカップリングすることが可能である。もしくは、hSAまたはhSA誘導体をビスマレイミドと反応させることができ、そして反応性チオールを運んでいるキレート剤をビスマレイミド誘導体化hSAと反応させることができる。
【0251】
既定のアミノ酸配列をコードする遺伝子の構築は、当該技術分野で知られている。サッカロミセス セレビジエにおけるhSA融合物の発現も当該技術分野で知られている。
【0252】
実施例18:cMet発現腫瘍への放射能または毒素のプレ標的化
慣用的放射免疫癌療法は2つの問題に悩まされている。一般に達成可能な標的化比(血液中に循環している投与量に対する腫瘍に局在化している投与量の比、あるいは、骨髄に移動している投与量に対する腫瘍に局在化している投与量の比)が低い。また、腫瘍へ搬送された放射線または治療剤の絶対量が、多くの場合、有意な腫瘍応答を惹起するには不十分である。腫瘍に対する標的化比および絶対量の改良は、癌治療のためには非常に重要であろう。
【0253】
本発明は、哺乳動物レシピエントの標的細胞部位での活性剤局在化を増加させる方法を提供する。本方法は、例えば、a)標的化部分およびリガンド−抗−リガンド結合対のメンバーを含む融合タンパク質をレシピエントへ投与し;b)その後、レシピエントの肝細胞レセプターを経て、循環している融合タンパク質のクリアランスを方向付けることが可能なクリアリング剤を、レシピエントへ投与し;そしてc)続いて、リガンド/抗リガンド結合対メンバーを含む活性剤を、レシピエントへ投与する。
【0254】
ヘキソース、特にヘキソースガラクトース、グルコース、マンノース、マンノース−6−リン酸、N−アセチルグルコサミン、ペンタマンノシルリン酸、N−アセチルガラクト
サミン、ガラクトースのチオグリコシド、およびその混合物は、肝クリアランスを起こすことに有効であることが知られている。しかしながら、肝臓レセプターへの糖の結合は、分子を肝臓へ方向付ける唯一の手段ではない。
【0255】
循環系からの癌胎児性抗原(CEA)のクリアランスは、肝臓中のクッパー細胞への結合による。我々は、クッパー細胞へのCEAの結合は、CEA配列のアミノ酸107−112に示されているペプチド配列YPELPKを経て起こることを示した。このペプチドはN末端および第1の免疫グロブリン様ループドメイン間の領域に位置している。天然のCEAおよびヘテロ2官能性架橋剤と複合体形成されたこの配列を含んでいるペプチド、およびビオチニル化CEAおよびNCAでのリガンドブロッティングを使用し、我々はクッパー細胞上の80kDaタンパク質への結合を示した。この結合タンパク質は肝臓転移の開発に重要であろう。(Thomas,P.ら、1992.Biochem.Biophys.Res.Commun.、188:671−677)。
【0256】
クリアランス剤としてYPELPK(配列番号655)を使用するため、この配列を、リンカーを経て、融合タンパク質(Ab)を結合する部分へ融合する。例えば、もしAbがDOTA/Reに対する親和性を有していれば、DOTA/Reへ結合されたYPELPKを有している誘導体を作製するであろう;例えば、rvYPELPKpsGGG−DOTA。‘rvYPELPKps’はCEAの断片であり、それはThomasら(前記文献)により同定されたYPELPK配列を含んでいる。DOTA上の任意の都合のよい点を結合に使用することが可能である。RVYPELPKPSGGG−DOTA/コールドRe(配列番号656)がクリアリング剤として使用されるであろう。融合Abに相当するFabは、Kd<100nM、好ましくはKd<10nM、そしてより好ましくはKd<1nMのクリアリング剤に対する親和性を有するであろう。
【0257】
治療剤はDOTA/185Reを含んでいるであろう。好ましい態様において、治療剤は、腫瘍上に固定化されたAbが高い結合活性でビス−DOTA化合物を結合するように、2以上のDOTA部分を含むであろう。2つのDOTA部分は好ましくは、10〜30ユニットのPEGの親水性リンカーで連結されるであろう。PEGは分解せず、溶解性を促進するので、好ましいリンカーである。10〜30ユニットのPEGは、ビスDOTA化合物に非常に長い血清滞留時間を与えるには十分ではない。30分〜10時間の半減期が受容可能である。ほとんどの放射線が腫瘍または外部環境へ搬送されるように、血清半減期は使用された放射性核種の放射性半減期よりも長くあるべきである。
【0258】
1つの態様において、本発明の「融合タンパク質」は、ヒト抗体の軽鎖(LC)かまたは重鎖(HC)のいずれかのアミノ末端またはカルボキシ末端へ融合された少なくとも1つのcMet結合ペプチドを含む。所望によりおよび好ましくは、2以上のcMet結合ペプチドを抗体へ融合する。抗体は、放射性にできるまたは結合された毒素を有することができる小分子に対する高い親和性を有するように選択する。好ましくは、Abに対応するFabの親和性は、小分子に対して100nM未満、より好ましくは10nM未満、そして最も好ましくは1nM未満のKの親和性を有している。小分子は、有用な放射性原子を結合可能なキレート剤であることができ、その多くは本明細書に収載されている。小分子は、ペプチドの結合特性に強く影響することなく放射性ヨウ素が結合できる1以上のチロシンを有しているペプチドであることができる。
【0259】
本発明の任意のcMet結合ペプチドは、小さな放射性化合物の結合が可能である、抗体のいずれかの鎖のいずれかの末端へ融合することが可能である。有用な態様には以下のものが含まれる:
1)CMBP#1::link::LC/HC、
2)LC::link::CMBP#l/HC、
3)LC/CMBP#1::link::HC、
4)LC/HC::link::CM#1、
5)CMBP#1::link1::LC::link2::CMBP#2/HC、
6)LC/CMBP#1::link1::HC::link2::CMBP#2、
7)CMBP#1::link1::LC/CMBP#2::link2::HC、
8)CMBP#1::link1::LC/HC::link2::CMBP#2、
9)LC::link1::CMBP#1/CMBP#2::link2::HC、
10)LC::link1::CMBP#1/HC::link2::CMBP#2、
11)CMBP#1::link1::LC::link2::CMBP#2/CMBP#3::link3::HC、
12)CMBP#1::link1::LC::link2::CMBP#2/HC::link3::CMBP#3、
13)CMBP#3::link3::LC/CMBP#1::link1::HC::link2::CM#2、
14)LC::link3::CMBP#3/CMBP#1::link1::HC::link2::CM#2、および
15)CMBP#1::link1::LC::link2::CMBP#2/CMBP#3::link3::HC::link4::CMBP#4。
(5)−(15)の場合、リンカー(「link1」、「link2」、「link3」および「link4」として示されている)は、同一でもまたは異なっていてもよく、または非存在でもよい。これらのリンカーは、もし存在すれば、好ましくは親水性、プロテアーゼ耐性、無毒、非免疫原性および可動性である。好ましくは、リンカーは、グリコシル化部位または肝クリアランスを起こすことが知られている配列を含んでいない。0から15のアミノ酸の長さが好ましい。cMet結合ペプチド(CMBP#1、#2、#3および#4)は同一でもまたは異なっていてもよい。もしコードされたアミノ酸配列が同一であれば、これらの配列をコードしているDNAは異なっている。
【0260】
抗体は2量体であるので、各々の癒合タンパク質は、融合ペプチドの各々の2つのコピーで存在するであろう。(15)の場合、8つのCMBPが存在するであろう、そしてcMet展示細胞への結合は高度に強くあるべきである。腫瘍浸透は、最大のcMet親和性よりむしろ、CMBPの各々における中程度のcMet親和性により促進されるであろう。
【0261】
融合タンパク質を、HCの定常部分がグリコシル化されるであろうように、真核細胞中で産生する。好ましくは、細胞はCHO細胞のごとき哺乳動物細胞である。
融合タンパク質を患者に注射し、融合タンパク質が腫瘍に蓄積されるように時間を与える。腫瘍に固定化されなかった融合タンパク質がクリアランスされるであろうように、クリアリング剤を注射する。前のプレ標的化法においては、抗体合併部位が腫瘍を標的化するために使用され、そしてビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンが、固定化された抗体へ放射性または毒性剤を結合するために使用された。ビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン結合は本質的に不可逆である。それ故、我々は、放射性または毒性剤を結合するように選択された抗体へ、標的結合ペプチドを融合した。融合タンパク質は2、4、6または8のCMBPを含んでいるので、腫瘍への融合タンパク質の結合は非常に強い。腫瘍で固定化されていない融合タンパク質のクリアランスを起こすであろうクリアリング剤は、融合タンパク質注射の2〜48時間後に投与することが可能である。クリアランス剤は、抗体へ結合する部分では単量体性であるので、クリアランス剤と固定化融合タンパク質の複合体は、非常に長い寿命を持ってはいないであろう。クリアランス剤を注射して4〜48時間以内に、固定化された抗体は、そこに結合されたいかなるクリアランス剤も失うであろう。活性剤は、好ましくは、融合剤を結合する部分で2量体性である。活性剤は、クリアランス剤の注射後、2〜約48時間の間に注射する。
【0262】
実施例19:MDA−MB−231細胞へのcMet結合ペプチド/アビジンHRP複合体の結合
cMet発現MDA−MB−231細胞へのcMet結合ペプチドのビオチニル化誘導体の結合に必要とされるスペーサー長を決定した。ペプチドおよびビオチン間に配置されるべきスペーサー長を決定するため、スペーサーを有しない、1つのスペーサー(J)および2つのスペーサー(JJ)を有する誘導体を合成した。cMet結合ペプチド配列番号514のこれら3つの異なった誘導体は、cMet発現MB−231細胞へ結合する能力について、ニュートラビジンHRPとの4量複合体として試験した。cMet結合ペプチドの4量複合体の3つ全てが、対照ペプチドと比較してMB−231細胞へ結合した;しかしながら、JJスペーサーを有するペプチドが最良のK(12.62nM)を示した。このことは、cMet結合ペプチドおよびビオチン間での2つのスペーサー(JJ)の包含は、1つのスペーサーまたはスペーサー無しよりも良好であることを示唆している。
【0263】
細胞培養:MDA−MB231細胞はATCCから得、そして推薦培地に1mL/Lのpen/strep(インビトロジェン、カールスバッド、CA)を加えて、単層培養物として増殖させた。細胞は、アッセイ前日に分割し、96ウェルの各々のウェルへ35000細胞を加えた。
【0264】
MDA−MB−231細胞へのペプチド/ニュートラビジンHRPの結合
対照ペプチドおよび前記配列番号514誘導体とニュートラビジン−HRPの複合体を、前記のように製造し、そしてMDA−MB−231細胞に結合する能力を試験した。ペプチド/ニュートラビジン−HRP複合体の製造の間、ニュートラビジン上の4つのビオチン結合部位全てが占有されることを確かにするため、ニュートラビジン−HRPより7.5倍過剰のビオチニル化ペプチドを使用した。複合体形成後、遊離ビオチニル化ペプチドおよびニュートラビジン−HRP複合体形成ビオチニル化ペプチド間のいかなる競合も避けるため、過剰の遊離ビオチニル化ペプチドを、軟放出アビジン−セファロースを使用して除去した。実験は、Jスペーサーなしのおよび単一Jスペーサーを有する誘導体の飽和結合曲線を発生させるために0.28nM〜33.33nMの(図14)、JJスペーサーを有する誘導体の飽和結合曲線を発生させるために0.28nM〜16.65nMの(図14)、ペプチド/ニュートラビジン−HRPのいくつかの異なった濃度で実施した。飽和結合曲線を描くため、試験された各々の濃度について、ニュートラビジン−HRPとの複合体中の配列番号514誘導体の結合から、対照ペプチド/ニュートラビジン−HRP複合体のバックグラウンド結合を差し引いた。それ故、図14のY軸の吸光度は異なった吸光度であり(cMet結合ペプチドマイナス対照ペプチド)、そして絶対吸光度ではない。Graph Pad Prismソフトウェアー(バージョン3.0)を使用した図中の飽和結合データの分析は、JJスペーサーを有する4量体誘導体に対して12.62nM(±3.16)、Jスペーサーを有する4量体誘導体に対して155.4nM(±86.56)、そしてスペーサーを有しないペプチド複合体に対して123.8nM(±37.71)のKを与えた。これらの結合定数は、予測されたように、関連単座ペプチド配列番号514についてFPにより測定された値(880nM)よりも低かった。
【0265】
結果:JJスペーサーを有する誘導体は、バックグラウンド結合(n=1)として対照ペプチドの結合を差し引いた後に12.62nMのKを有し、他の2つの誘導体のいずれよりもMDA−MB−231細胞上のcMetへ、より良好な結合を示したことが、図14から明らかである。このことは、細胞上の複数の異なった結合部位へ到達できるためには、特定の最小スペーサー長が必要とされ、そしてその故に多量体結合が達成されることを示唆している。この最小スペーサー長は、細胞上の異なった標的分子間のスペーシングに依存するであろう。結合標的がKDRであった場合がそのケースであったように、フ
ァージディスプレイで同定されたビオチニル化ペプチドによるニュートラビジン−HRPアッセイは、単量体結合配列の親和性がELISA型アッセイ(結合後の洗浄工程を有する)でうまく働くにはあまりにも低い場合でさえも、固定化標的への結合が可能なペプチドを同定するために有用であった。
【0266】
【表4-1】
【0267】
【表4-2】
【0268】
【表4-3】
【0269】
【表4-4】
【0270】
【表4-5】
【0271】
【表4-6】
【0272】
【表4-7】
【0273】
【表4-8】
【0274】
【表4-9】
【0275】
【表4-10】
【0276】
【表4-11】
【0277】
【表4-12】
【0278】
【表4-13】
【0279】
【表4-14】
【0280】
【表4-15】
【0281】
【表4-16】
【0282】
【表4-17】
【0283】
【表4-18】
【0284】
【表4-19】
【0285】
【表4-20】
【0286】
【表4-21】
【0287】
【表4-22】
【0288】
【表4-23】
【0289】
【表5-1】
【0290】
【表5-2】
【0291】
【表5-3】
【0292】
【表5-4】
【0293】
【表5-5】
【0294】
【表5-6】
【0295】
【表5-7】
【0296】
【表5-8】
【0297】
【表5-9】
【0298】
【表5-10】
【0299】
【表6-1】
【0300】
【表6-2】
【0301】
【表7】
【0302】
【表8】
【0303】
【表9】
【0304】
本発明を、その好ましい態様を参照して特別に示しそして説明したが、付随する特許請求の範囲により包含された本発明の範囲から離れることなく、形式および詳細における多様な変更をその中で行うことができることを当業者は理解するであろう。
本発明の多くの態様が記載されているが、それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくさまざまな改変がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の態様も以下の請求の範囲の範囲内である。
[態様1]
cMetまたはcMetとHGFとを含む複合体を結合するポリペプチドまたは多量体ペプチド構築物。
[態様2]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−X−X−X−Cys−X−X−X10を含み、式中、
はPhe、Leu、Ser、Trp、TyrまたはMetであり;
はIle、Tyr、His、ThrまたはAsnであり;
はIle、Leu、Asp、Met、PheまたはSerであり;
はArg、Asn、Glu、ProまたはTrpであり;
はGlu、Gly、Leu、Pro、Thr、TrpまたはTyrであり;
はAsp、Gln、Glu、Gly、Phe、Ser、ThrまたはTrpであり;
はAla、Arg、Asn、Gln、Glu、Gly、PheまたはTrpであり;
はGly、Asn、His、Arg、Met、Ile、Asp、ValまたはThrであり;
はSer、Lys、Phe、Met、Thr、AspまたはLeuであり;そして
10はSer、Pro、Thr、Leu、Tyr、Asn、His、GluまたはTrpである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様3]
配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号9および配列番号10から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様4]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−Cys−X10−X11−X12を含み、式中、
はGly、Val、Trp、Thr、LysまたはGlnであり;
はTrp、Tyr、Leu、PheまたはThrであり;
はTrp、Glu、Phe、Ile、LeuまたはSerであり;
はAsn、GlnまたはGluであり;
はLeu、GluまたはTrpであり;
はGlu、SerまたはTyrであり;
はGlu、MetまたはProであり;
はMet、SerまたはTrpであり;
はLeu、PheまたはValであり;
10はAsp、GluまたはTrpであり;
11はMet、PheまたはTrpであり;そして
12はGln、LeuまたはTrpである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様5]
配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;配列番号15;配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26;配列番号27;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番
号39;および配列番号40から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様6]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−Gly−X−Pro−X−Phe−X−Cys−X−Xを含み、式中、
はGlu、SerまたはTrpであり;
はPhe− ThrまたはTrpであり;
はHis、PheまたはTrpであり;
はAla、Lys、SerまたはThrであり;
はProまたはTrpであり;
はSerまたはThrであり;
はGluまたはSerであり;
はIle、TrpまたはTyrであり;そして
はGlu、Met、TrpまたはTyrである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様7]
配列番号48;配列番号49;配列番号50;配列番号51;配列番号52;配列番号53;配列番号54;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号60;配列番号61;配列番号62;配列番号63;配列番号64;配列番号65;配列番号66;配列番号67;配列番号68;配列番号69;配列番号70;配列番号71;配列番号72;配列番号73;配列番号74;配列番号75;配列番号76;配列番号79;配列番号80;配列番号81;配列番号82;配列番号83;配列番号84;配列番号85;配列番号86;配列番号87;配列番号88;配列番号89;配列番号90;配列番号91;配列番号92;配列番号93;配列番号94;配列番号95;配列番号96;配列番号97;配列番号98;配列番号99;配列番号100;および配列番号101から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様8]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−Gly−Pro−Pro−X−Phe−X−Cys−Trp−X−X−X−X10−X11を含み、式中、
はArg、Asp、Asn、IleまたはSerであり;
はLeu、Ile、Phe、TrpまたはValであり;
はAsn、Gln、His、Leu、TyrまたはValであり;
はLeu、LysまたはSerであり;
はAla、Ser、ThrまたはTrpであり;
はGluまたはSerであり;
はLeu、SerまたはTrpであり;
はPheまたはTyrであり;
はAsp、Glu、GlyまたはValであり;
10はMet、Pro、ThrまたはSerであり;そして
11はGluまたはGlyである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様9]
配列番号103;配列番号104;配列番号106;配列番号108;配列番号111;配列番号114;配列番号117;配列番号119;配列番号120;配列番号121;配列番号128;配列番号130;配列番号132;配列番号133;配列番号140;配列番号143;配列番号145;配列番号146;配列番号147;配列番号150;配列番号151;配列番号153;配列番号155〜配列番号158;配列番号163;配列番号165;配列番号167;配列番号169;配列番号170;配列番号172;配列番号173;配列番号178;配列番号179;配列番号184;配列番号185
;配列番号188;配列番号189;配列番号190;配列番号192;配列番号195;配列番号198;配列番号201〜配列番号204;配列番号208;配列番号209;配列番号211;配列番号215;配列番号216;配列番号217;配列番号219;配列番号221;配列番号224;配列番号226;配列番号227;配列番号230〜配列番号234;配列番号236;配列番号237;配列番号238;配列番号242;配列番号246〜配列番号254;配列番号256;配列番号259〜配列番号264;配列番号266;配列番号267;配列番号269〜配列番号271;配列番号273;配列番号275〜配列番号282;配列番号284;配列番号285;配列番号287;配列番号288;配列番号293〜配列番号295;配列番号297;配列番号298;配列番号301〜配列番号303;配列番号305〜配列番号308;配列番号311;配列番号313〜配列番号320;配列番号323;配列番号324;配列番号326〜配列番号328;配列番号331〜配列番号335;配列番号337〜配列番号341;配列番号345;配列番号347;配列番号349;配列番号352;配列番号354〜配列番号357;および配列番号361〜配列番号364から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様10]
アミノ酸配列:X−X−X−X−Trp−X−Cys−X−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−Trp−X−Xを含み、式中、
はAsp、GluまたはValであり;
はAla、Asp、Gly、SerまたはValであり;
はAsp、Gly、SerまたはValであり;
はArg、Asn、Gly、SerまたはThrであり;
はGlnまたはHisであり;
はAsn、LysまたはSerであり;そして
はSerまたはTrpである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様11]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X10−X11−Cys−X12−X13−X14を含み、式中、
はHis、Phe、Pro、ThrまたはTrpであり;
はAla、Arg、Glu、His、LysまたはPheであり;
はMet、Phe、Pro、ThrまたはValであり;
はHis、Leu、Met、PheまたはTrpであり;
はArg、Asp、Glu、Gly、MetまたはTrpであり;
はGlu、Gly、Ile、Lys、PheまたはProであり;
はAsp、Phe、Pro、Ser、TrpまたはTyrであり;
はAla、Arg、Asn、PheまたはSerであり;
はAla、Gln、Gly、LeuまたはPheであり;
10はGln、Gly、Ile、Leu、TrpまたはTyrであり;
11はArg、Asp、Phe、Pro、TyrまたはValであり;
12はAsn、Gln、His、IleまたはThrであり;
13はAla、Asn、Asp、GluまたはHisであり;そして
14はAsn、Gln、Glu、HisまたはValである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様12]
配列番号365;配列番号366;配列番号367;配列番号368;配列番号369;および配列番号370から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様13]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X
10−X11−X12−Cys−X13−X14−X15を含み、式中、
はGln、Gly、Met、PheまたはSerであり;
はAsn、Gln、LeuまたはMetであり;
はArg、Asn、Gly、HisまたはIleであり;
はAsn、Asp、Leu、ThrまたはTrpであり;
はArg、Gln、Thr、TyrまたはValであり;
はGlu、Gly、Leu、MetまたはThrであり;
はAla、Asn、Asp、His、Ile、LeuまたはSerであり;
はArg、Gln、Ser、ThrまたはTyrであり;
はAsp、Gly、IleまたはPheであり;
10はGln、PheまたはThrであり;
11はGln、His、Phe、Pro、SerまたはTyrであり;
12はAsn、Asp、Phe、ProまたはSerであり;
13はAla、Asn、Gly、LeuまたはSerであり;
14はArg、Pro、SerまたはValであり;そして
15はAsp、Glu、LeuまたはMetである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様14]
配列番号371;配列番号372;配列番号373;配列番号374;配列番号375;配列番号376;配列番号377;配列番号378;配列番号379;配列番号380;配列番号381;配列番号382;配列番号383;配列番号384;配列番号385;配列番号386;および配列番号387から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様15]
アミノ酸配列:X−X−X−Cys−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−Cys−X14−X15−X16を含み、式中、
はAla、His、Leu、ProまたはTyrであり;
はArg、Asp、Leu、SerまたはTyrであり;
はGlu、MetまたはTrpであり;
はAsp、Gln、Glu、PheまたはSerであり;
はGlu、Ile、PheまたはTrpであり;
はAsn、AspまたはSerであり;
はAsn、AspまたはLeuであり;
はAsp、GluまたはLysであり;
はGly、PheまたはThrであり;
10はGly、Phe、TrpまたはTyrであり;
11はGlu、SerまたはTrpであり;
12はGlu、Phe、TyrまたはValであり;
13はGlu、Lys、ThrまたはValであり;
14はGluまたはTrpであり;
15はAsp、Phe、Pro、SerまたはTrpであり;そして
16はAla、AsnまたはIleである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様16]
配列番号390;配列番号391;配列番号392;配列番号393;配列番号394;配列番号395;配列番号396;配列番号397;配列番号398;配列番号399;配列番号400;配列番号401;配列番号402;配列番号403;および配列番号404から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項15に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様17]
アミノ酸配列:Ser−Cys−X−Cys−X−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−Trp−Cys−Tyr−X−X−Xを含み、式中、
はAsn、HisまたはTyrであり;
はGlyまたはSerであり;
はAla、Asp、Glu、GlyまたはSerであり;
はSerまたはThrであり;そして
はAspまたはGluである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様18]
配列番号405;配列番号406;配列番号407;配列番号408;配列番号409;配列番号410;配列番号411;配列番号412;配列番号413;配列番号414;配列番号415;配列番号416;配列番号417;配列番号418;配列番号419;配列番号420;配列番号421;配列番号422;配列番号423;配列番号424;配列番号425;配列番号426;配列番号427;配列番号428;配列番号429;配列番号430;配列番号431;配列番号432;配列番号433;配列番号434;配列番号435;配列番号436;配列番号437;配列番号438;配列番号439;配列番号440;配列番号441;配列番号442;配列番号443;配列番号444;配列番号445;配列番号446;および配列番号447から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様19]
アミノ酸配列:Glu−X−Gly−Ser−Cys−His−Cys−Ser−Gly−Pro−Pro−Thr−Phe−Glu−Cys−X−Cys−Xを含み、式中、
はAla、Glu、GlyまたはSerであり;
はPhe、TrpまたはTyrであり;そして
はPheまたはTyrである、
請求項1に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様20]
配列番号406;配列番号415;配列番号427;配列番号445および配列番号447から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様21]
該ポリペプチドまたは多量体ポリペプチドのcMetに対するKが約1.0μM未満である、請求項2〜20のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチド。
[態様22]
配列番号516または配列番号517のアミノ酸配列をさらに含む、請求項12に記載の多量体ポリペプチド。
[態様23]
配列番号514または配列番号515のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の多量体ポリペプチド。
[態様24]
配列番号514および配列番号515を含む、請求項12に記載の多量体ポリペプチド。
[態様25]
動物またはヒト対象においてcMetまたはcMetとHGFとの複合体を検出する方法であって、
標識された請求項1〜24のいずれかに記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチドを提供し;
標識ポリペプチドまたは多量体ポリペプチドを対象に投与し;そして
対象中の標識ポリペプチドまたは多量体ポリペプチドを検出する、
ことを含む前記方法。
[態様26]
標識が放射性標識または常磁性標識である、請求項25に記載の方法。
[態様27]
cMetの活性化が関与する状態を処置する方法であって、請求項1〜24のいずれかに記載のポリペプチドまたは多量体ポリペプチドを含む組成物を動物またはヒト対象に投与することを含む、前記方法。
[態様28]
疾患が固形腫瘍である、請求項27に記載の方法。
[態様29]
腫瘍が、乳房、甲状腺、グリア芽細胞腫、前立腺、悪性中皮腫、直腸結腸、肝細胞、肝胆道、腎臓、骨肉腫および頚部の腫瘍からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
[態様30]
cMetまたはcMetとHGFとの複合体を、それを含有する溶液から精製する方法であって、
該溶液を請求項1〜24のいずれかに記載の少なくとも1つのポリペプチドまたは多量体ポリペプチドと接触させ;そして
該溶液からポリペプチドまたは多量体ポリペプチドを分離する、
ことを含む前記方法。
[態様31]
ポリペプチドがバクテリオファージの表面上に展示される、請求項1〜21のいずれかに記載のポリペプチドをコードする外因性DNAを発現する組換えバクテリオファージ。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]