(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374928
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】リニア駆動システム
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20180806BHJP
A61F 2/70 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
F16H25/20 E
A61F2/70
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-178213(P2016-178213)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-42642(P2018-42642A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2017年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】王 仁政
【審査官】
白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−532391(JP,A)
【文献】
特開平11−325213(JP,A)
【文献】
特表2002−543310(JP,A)
【文献】
特開2014−088919(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0265588(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0170357(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102013224479(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20−25/24
A61F 2/68− 2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの第一端部座、一つの第二端部座、及び前記第一端部座と前記第二端部座とを連結する一つの連結座を有する一つの固定枠と、
モーターを含み、前記固定枠の前記第一端部座の外周面に設けられている一つの動力源と、
原位置で回転可能に前記固定枠の前記第一端部座の内部に設けられており、前記モーターとは異なる軸上で前記動力源に連結されており、前記動力源により伝動ベルトを介して駆動され原位置で回転可能である一つのナットと、
一つの制限スライドレール及び一つの制限スライドブロックを有し、前記制限スライドレールは前記固定枠の前記連結座に設けられており、前記制限スライドレールの延伸方向と前記ナットの軸方向とが平行であり、前記制限スライドブロックは移動可能に前記制限スライドレールに設けられている一つのネジ制限装置と、
前記ナットに螺接されており、一端が前記ネジ制限装置の前記制限スライドブロックに連結されており、前記ナットの回転により前記ナットの軸方向に沿って往復移動する一つのネジと、
両端がそれぞれ前記固定枠の前記第一端部座及び前記第二端部座に連結されている二つの伝動スライドレール装着座と、
前記伝動スライドレール装着座に設けられ、前記ネジ制限装置の前記制限スライドレールの側辺に位置し、前記ネジ制限装置の前記制限スライドレールの延伸方向と平行な方向に延伸する二つの伝動スライドレールと、
前記伝動スライドレールに移動可能に設けられている二つの伝動スライドブロックと、
前記第一端部座と前記第二端部座との間に位置し、前記伝動スライドブロックに設けられており、前記ネジ制限装置の前記制限スライドブロックに連結されており、前記制限スライドブロックにより前記ネジと同期移動する一つの可動座と、
を備えることを特徴とするリニア駆動システム。
【請求項2】
前記制限スライドレールと前記伝動スライドレールの間は、前記ネジを中心として90度と成るよう並んでいることを特徴とする請求項1に記載のリニア駆動システム。
【請求項3】
前記固定枠の前記第一端部座と前記可動座との間に設けられた一つ以上の緩衝弾性ユニット、及び、前記固定枠の前記第二端部座と前記可動座との間に設けられた他の一つ以上の緩衝弾性ユニットを有することを特徴とする請求項1に記載のリニア駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は義肢の内部の収容空間を減少させるリニア駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、義肢装置(Prosthesis)中のリニア駆動システム、例えば、ボールネジは、いずれも動力源、例えば、モーター、減速機によりネジを駆動回転させ、ネジがナットを連動させネジに沿って往復変位させ、ナットを介してナットに設けられている構造を前進または後退させる。しかし、動力源によりネジを駆動し、そしてネジによりナットを駆動する方法は、動力源をネジの両端に設けることに限られ、リニア駆動システムの義肢内の位置が制限される。ナットの行程を考量し、動力源を設置するとき、ナットが自由に移動する空間を残す必要が有る。これにより、義肢内においてリニア駆動システムを設ける空間を有効に低減することができず、義肢の体積が大きくなる。
【0003】
例えば、一般のボールネジは、ネジの長さがナットより長い。前述の動力源によりネジを回転させることでナットを回転させる方法は、二つの場合が有る。例えば、特許文献1、特許文献2では、モーターはネジの互いに対向する端部に連結されており、リニア駆動器の全体長さがネジの長さより大きくなる。これにより、義肢内の空間は必ずネジの長さより長くないと、リニア駆動器を収容することができない。また、例えば、特許文献3では、モーターがナットの移動の邪魔と成らないようにし、且つリニア駆動器を収容する必要があるため、ナットがネジに沿って進行する空間以外の箇所にリニア駆動器のモーターを設置する必要がある。これにより、義肢内の空間の幅は、必ずモーターの幅とナットの幅の和より大きくなる。これも同様に、義肢内のリニア駆動システムを収容する空間を有効に減少することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8231687号公報
【特許文献2】米国特許第8287477号公報
【特許文献3】米国特許第8500823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟な設計を可能にし、義肢内部の収容空間を減少させることができるリニア駆動システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明のリニア駆動システムは、一つの固定枠と、一つの動力源と、一つのナットと、一つのネジ制限装置と、一つのネジとを備える。
固定枠は、
一つの第一端部座、一つの第二端部座、及び第一端部座と第二端部座とを連結する一つの連結座を有する。動力源は、
モーターを含み、固定枠
の第一端部座の外周面に設けられて
いる。ナットは、原位置で回転可能に固定枠
の第一端部座の内部に設けられ、
モーターとは異なる軸上で動力源に連結されており、動力源に
より伝動ベルトを介して駆動され原位置で回転可能である。ネジ制限装置は、一つの制限スライドレール及び一つの制限スライドブロックを有し、制限スライドレールは固定枠
の連結座に設けられており、制限スライドレールの延伸方向とナットの軸方向とが平行であり、制限スライドブロックは移動可能に制限スライドレールに設けられている。ネジは、ナットに螺接されており、一端がネジ制限装置の制限スライドブロックに連結されており、ナットの回転によりネジ制限装置に制限されることによってナットの軸方向に沿って往復移動する。
【0007】
これにより、本発明のリニア駆動システムは、ナットに動力を加え、ナットによりネジを連動させ、ネジに搭載されている各部材がネジの軸方向に沿って往復移動するように各部材を連動させる。よって、ナットの位置を選ぶ時、ナットをネジのいずれの位置に設けても制限を受けない。また、ナットの移動に合わせて空間を残す必要がないため、義肢内で占める収容空間を減少することができる。
【0008】
また、本発明のリニア駆動システムは、
二つの伝動スライドレール装着座、
二つの伝動スライドレール、
二つの伝動スライドブロック、及び、一つの可動座をさらに備える。
伝動スライドレール装着座は
、両端がそれぞれ固定枠の第一端部座及び第二端部座に連結されている。伝動スライドレールは
、伝動スライドレール装着座に設けられ
、ネジ制限装置の制限スライドレール
の側辺に位置し、
ネジ制限装置の制限スライドレールの延伸方向と平行
な方向に延伸する。伝動スライドブロックは
、伝動スライドレールに移動可能に設けられて
いる。可動座は
、第一端部座と第二端部座との間に位置し、伝動スライドブロックに設けられ
ており、ネジ制限装置の制限スライドブロックに連結されており、制限スライドブロックによ
りネジと同期移動する
。
これにより、リニア駆動システムは、可動座を利用して、異なる装着方式において、他の部材と結合することができる。また、緩衝弾性ユニットにより、可動座に対して作動時の緩衝応力を提供する。同時に、一つの位置測定装置を設け、可動座の位置を即時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施例の外観を示す立体図である。
【
図2】本発明の第2実施例の外観を示す立体図である。
【
図3】本発明の第3実施例の外観を示す立体図である。
【
図4】本発明の第3実施例の外観を別の角度で示す立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本発明の第1実施例のリニア駆動システム10は、一つの固定枠20と、一つの動力源30と、一つのナット40と、一つのネジ制限装置50と、一つのネジ60とを備える。
【0011】
固定枠20は、一つの第一端部座21、一つの第二端部座22、及び第一端部座21と第二端部座22を連結する一つの連結座23を有する。
【0012】
動力源30は、一つのモーター31、一つの第一ベルトプーリー32、一つの第二ベルトプーリー33、及び一つの伝動ベルト34を有する。モーター31は固定枠20の第一端部座21の外周面に設けられており、動力供給源を提供する。第一ベルトプーリー32は固定枠20の第一端部座21の外周面に回転可能に設けられており、モーターに連結されている。第二ベルトプーリー33は、固定枠20の第一端部座21の外部端面に回転可能に設けられている。伝動ベルト34は、第一ベルトプーリー32及び第二ベルトプーリー33に巻き付けられている。これにより、モーター31が作動する時、第一ベルトプーリー32はモーター31により駆動され回転し、第一ベルトプーリー32は伝動ベルト34を介して第二ベルトプーリー33を連動させ、ともに回転する。
【0013】
ナット40は、固定枠20の第一端部座21内に設けられており、動力源30の第二ベルトプーリー33にスリーブ接続され、動力源30の第二ベルトプーリー33と連動し、原位置で回転する。
【0014】
ネジ制限装置50は、一つの制限スライドレール51及び一つの制限スライドブロック52を有する。制限スライドレール51は固定枠20の連結座23に固定されている。制限スライドレール51の延伸方向とナット40の軸方向とが平行である。制限スライドブロック52は移動可能に制限スライドレール51に設けられている。
【0015】
ネジ60は、ナット40に螺接されている。ネジ60の一端は一つの従動アセンブリ(図示せず)を接続するのに用いられる。ネジ60の他端は固定枠20の第一端部座21を通過し、ネジ制限装置50の制限スライドブロック52に連結されていることによって、ネジ60は、ナット40が回転する時、ネジ制限装置50により制限され、ナット40の軸方向に沿って往復移動する。
【0016】
上述したように、本発明のリニア駆動システム10は以下のメリットを有する。
【0017】
1.本発明では、動力源30は主にナット40に動力を加え、そして、ナット40がネジ60を連動させ、ネジ60がネジ60に搭載されている従動アセンブリを連動させナット40の軸方向に沿って往復移動させる。よって、ナット40の位置を選ぶ時、ナット40をネジ60のいずれの位置に設けても制限を受けない。また、動力源30はナット40を避ける必要がないため、動力源30及びナット40の位置ずれにより、義肢の収容空間は動力源30の幅とナット40の幅の和より小さくなる。そのため義肢の設計の柔軟性を高めることができる。
【0018】
2.従来の技術では、従動アセンブリとナットとを一緒に設ける必要が有り、使用空間を有効に減少することができない。本発明では、従動アセンブリは、ネジ60に設けられており、ナット40に設けられていない。よって、ナット40の位置に合わせる必要がない。このため、全体の体積を縮小することができ、使用空間を減少する効果を達成する。
【0019】
図2及び
図4に示すように、本発明の第二実施例では、二つの互いに対向する伝動スライドレール装着座70、二つの互いに対向する伝動スライドレール71、二つの伝動スライドブロック72、及び一つの可動座73を有する。
【0020】
伝動スライドレール装着座70の両端は固定枠20の第一端部座21及び第二端部座22に設けられている。
【0021】
伝動スライドレール71は、伝動スライドレール装着座70の外側の側面に設けられており、ネジ制限装置50の制限スライドレール51の二つの互いに対向する側辺に位置する。伝動スライドレール71とネジ制限装置50の制限スライドレール51との間は、ネジを中心として90度と成るよう並んでいる。伝動スライドレール71の延伸方向とネジ制限装置50の制限スライドレール51の延伸方向とが平行である。
【0022】
伝動スライドブロック72は、伝動スライドレール71に移動可能に設けられており、固定枠20の第一端部座21と第二端部座22の間に位置する。
【0023】
可動座73は伝動スライドブロック72に設けられており、ネジ制限装置50の制限スライドブロック52に連結されている。制限スライドブロック52により可動座73がネジ60と同期移動するようにする。
【0024】
上述したように、本実施例のリニア駆動システム12は主に可動座73を利用して従動アセンブリを搭載する。全体構造が前述の実施例より安定するほか、実際のニーズに合わせて異なる使用方式に変えることができる。
【0025】
また、
図3及び
図4に示すように、固定枠20は四つのバネ固定柱24をさらに有する。四つのバネ固定柱24は、可動座73の四つの角部に貫設されており、固定枠20の第一端部座21及び第二端部座22に連結されている。各バネ固定柱24には一つの緩衝弾性ユニット74が設けられている。一方の二つの緩衝弾性ユニット74は固定枠20の第一端部座21と可動座73の間に当接されており、他方の二つの緩衝弾性ユニット74は固定枠20の第二端部座22と可動座73の間に当接されている。これにより、可動座73が移動する過程において緩衝弾性ユニット74を利用して緩衝効果を得ることができ、可動座73の作動安定性を高めることができる。他に、可動座73は一つの位置測定装置75と組み合わせて使用することができ、可動座73の位置を即時に測定することができ、測定結果に基づいて適切な調整を行う。
【0026】
上述したように、本発明は、ナット40がネジ60を駆動し移動させ、設計の柔軟性を増加するだけでなく、使用空間を縮小し、外力を抵抗する能力を高めることができる。他に、可動座73と組み合わせて使用することにより、異なる方式で本発明に対して操作を行うことができ、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 リニア駆動システム
20 固定枠
21 第一端部座
22 第二端部座
23 連結座
24 バネ固定柱
30 動力源
31 モーター
32 第一ベルトプーリー
33 第二ベルトプーリー
34 伝動ベルト
40 ナット
50 ネジ制限装置
51 制限スライドレール
52 制限スライドブロック
60 ネジ
70 伝動スライドレール装着座
71 伝動スライドレール
72 伝動スライドブロック
73 可動座
74 緩衝弾性ユニット
75 位置測定装置