特許第6374939号(P6374939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

<>
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000002
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000003
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000004
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000005
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000006
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000007
  • 特許6374939-ニッケル基超合金及びその作製方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374939
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ニッケル基超合金及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20060101AFI20180806BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20180806BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20180806BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20180806BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20180806BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20180806BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180806BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20180806BHJP
【FI】
   C22C1/04 B
   B22F3/10 F
   B22F3/105
   B22F3/16
   B22F3/24 C
   C22C19/05 C
   B33Y10/00
   B33Y80/00
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-234615(P2016-234615)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-137567(P2017-137567A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年1月31日
(31)【優先権主張番号】14/963,366
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・セルリー・ディアル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・フランシス・グザヴィエ・ジグリオッティ,ジュニア
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−277721(JP,A)
【文献】 特公昭56−020345(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む粉末を少なくとも部分的に溶融して固化し、柱状結晶領域(206)と柱間結晶領域(204)とを含む樹枝状結晶組織を含む中間合金を形成する工程であって、樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔がμm未満である工程と、
中間合金を、050℃〜1250℃の温度範囲で熱処理してNi基超合金(600)を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
中間合金組成物に存在する金属カーバイドの量が、組成物の.5モル%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中間合金組成物に存在する金属カーバイドの量が、組成物の.3モル%未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属カーバイドが樹枝状結晶組織の柱間結晶領域(204)に主に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
Ni基超合金(600)がガンマ相マトリックスを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
Ni基超合金(600)がガンマプライム相の析出物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Ni基超合金(600)におけるガンマプライム相の量が、40体積%より多い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Ni基超合金(600)が、ガンマ相マトリックスから析出した金属カーバイドを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
Ni基超合金(600)に存在する金属カーバイドの量が、Ni基超合金(600)の組成物の.3モル%未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Ni基超合金(600)が固化の際に溶融物から析出した金属カーバイドを実質的に含まない、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
直接金属レーザー溶融(DMLM)を含む、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
柱状結晶領域(206)と柱間結晶領域(204)とを含む樹枝状結晶組織であって、樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔がμm未満である、樹枝状結晶組織と、
〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む組成物と
を含む、中間合金。
【請求項13】
中間合金に存在する金属カーバイドの量が組成物の.5モル%未満である、請求項1に記載の中間合金。
【請求項14】
中間合金に存在する金属カーバイドの量が、組成物の.3モル%未満である、請求項1に記載の中間合金。
【請求項15】
金属カーバイドが、樹枝状結晶組織の柱間結晶領域(204)に主に配置される、請求項1に記載の中間合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル基(Ni基)超合金及びその作製方法に関する。より詳しくは、本発明は、中間合金及び特定の組成を有するテクスチャフリーNi基超合金、並びにそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ni基超合金は、高温、しばしばその絶対融解温度を0.7超える温度で実質的なクリープ抵抗性及び酸化抵抗性を有し、高温で使用されるように設計することができる非常に有用な一連の合金である。特に興味深い1つの型の高温ニッケル基合金は、所望のクリープ、並びに例えば酸化抵抗性及び高温腐食抵抗性などの環境特性を有するように設計された鋳造型である。特に高温ガス流路コンポーネントにおいて広く使用されているニッケル基組成物の1つは、General Electric Companyによって商標登録されたRene80(商標)材料である。
【0003】
付加製造は、典型的に積層状に層を配置して、それらをその場で結合させることによる付加プロセスを通してデジタルモデルから直接3次元オブジェクトを加工する一連の新興技術である。サブトラクション(例えば、切断及びせん断)及び形成(例えば、スタンピング、ベンディング、及びモールディング)を伴う従来の製造プロセスとは異なり、付加製造は、材料を共に結合させて、製品を製造する。
【0004】
例えばニッケル基超合金で作製されるタービンエンジンの高温ガス流路コンポーネントなどのある一定のコンポーネントは、付加製造技術の設計の融通性により恩恵を受けることができる。しかし、付加製造法は、ニッケル基超合金の製造可能性において、及びさらに従来の鋳造法によって製造されたニッケル基超合金と類似の特性を有するニッケル基超合金の作製において、ある一定の問題を有し得る。それゆえ、付加製造法を使用して製造することができ、その鋳造相対物と類似の特性を有するニッケル基超合金を設計することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/263977号明細書
【発明の概要】
【0006】
簡単に説明すると、一実施形態は方法に向けられる。方法は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む粉末を少なくとも部分的に溶融して固化し、柱状結晶領域と柱間結晶領域とを含む樹枝状結晶組織を含む中間合金を形成する工程を含む。樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔は、約3μm未満である。方法はさらに、約1050℃〜約1250℃の温度範囲で中間合金を熱処理して、テクスチャフリー超合金を形成する工程を含む。
【0007】
別の実施形態は、中間合金に向けられる。中間合金は、柱状結晶領域と柱間結晶領域とを含む樹枝状結晶組織を含む。樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔は、約3μm未満である。中間合金は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む組成を有する。
【0008】
別の実施形態は、Ni基超合金に向けられる。Ni基超合金は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む組成を含む。Ni基超合金は、ガンマ相マトリックス、ガンマプライム相の析出相、及びガンマ相マトリックスから析出した金属カーバイドを含む。Ni基超合金に存在する金属カーバイドは、組成の約0.3モル%未満であり、金属カーバイドの平均サイズは約1μm未満である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるであろう。
図1】基本Rene80組成物を使用することによって形成された鋳造時合金の先行技術の低倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
図2】基本Rene80組成物を使用することによって形成され、直接金属レーザー溶融(DMLM)プロセスによって加工された完成時合金の低倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
図3】基本Rene80組成物を使用することによって形成された鋳造時合金の先行技術のミクロ組織画像を説明する図である。
図4】基本Rene80組成物を使用することによって形成され、DMLMプロセスによって加工された完成時合金の高倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
図5】基本Rene80組成物を使用することによって形成され、DMLMプロセスによって加工された完成時合金の高倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
図6】基本Rene80組成物を使用することによって形成され、DMLMプロセスによって加工されたニッケル基超合金の低倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
図7】本発明の技術の実施形態に従って、DMLMプロセスによって加工されたNi基超合金の低倍率ミクロ組織画像を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一般的に、ニッケル基(Ni基)超合金を含むシステム、並びに比較的高温を特徴とする環境内で作動し、それゆえ過酷な酸化環境及び高い力学的応力を受けるNi基超合金を形成する方法に適用可能である。そのようなコンポーネントの顕著な例には、タービンノズル及びブレード、シュラウド及びガスタービンエンジンの出力増大ハードウェアが挙げられる。本発明の利点を、ガスタービンエンジンのハードウェアを参照して説明するが、本発明の教示は、一般的に、高温及び厳しい環境で使用することができる任意のコンポーネントに適用可能である。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲を通して本発明において使用される近似を示す用語は、それが関連する基本的な機能に変化を生じることなく許容可能に変化し得る任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。したがって、「約」及び「実質的に」などの用語又は複数の用語によって修飾される値は、明記された正確な値に限定されない。いくつかの例において、近似を示す用語は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、範囲の制限を組合せて及び/又は相互交換してもよく、そのような範囲は、同定され、本文又は用語がそれ以外であることを示している場合を除き、その中に含まれるすべての小範囲を含む。
【0012】
以下の明細書及び特許請求の範囲において、単数形「1つの」、「1つの(an)」、及び「その」は、本文が明確にそれ以外であることを示している場合を除き、複数形を含む。本明細書において使用される用語「又は」は、排他的であることを意味するのではなく、本文が明白にそれ以外であることを示している場合を除き、存在する参照コンポーネントの少なくとも1つを指し、参照コンポーネントの組合せが存在し得る例を含む。
【0013】
本明細書において使用される用語「し得る」及び「あり得る」は、一連の状況において、明記された特性、特徴、又は機能の保有が起こる可能性を示すか、及び/又は修飾される動詞に関連する能力、実行可能性、又は可能性の1以上を表現することによって別の動詞を修飾する。したがって、「し得る」及び「あり得る」の使用は、何らかの状況において、修飾される用語が時に適切でない、可能でない、又は好適ではないことがあり得ることを考慮に入れながら、修飾される用語が、表記の能力、機能、又は使用にとって見たところ適切、可能、又は好適であることを示す。
【0014】
本明細書において記述される本発明の実施形態は、技術の現状の顕著な短所に取り組む。いくつかの実施形態は、付加製造技術を使用して、中間合金及びNi基超合金を作製する方法を示す。さらに、他のいくつかの実施形態は、付加製造技術を使用してテクスチャフリーNi基超合金を作製する方法を示す。
【0015】
付加製造は、デジタル3次元(3D)設計データを使用して、材料の堆積層を追加することによってコンポーネントを製造するプロセスを指す。材料は、コンポーネントを積層状に製造するために粉末型で使用され得る。付加製造は、3D印刷、ラピッドプロトタイピング(RP)、ダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)、積層造形、及びアディティブファブリケーションを含み得る。付加製造は、複雑な設計を有する組織の製造を容易にするデザイン・ドリブン製造プロセスであることが好ましい。さらに、付加製造は、高い設計自由度、機能的特色の最適化及び統合、並びに比較的高度の製品カスタム化を提供する。
【0016】
付加製造は、例えば、選択的レーザー焼結、直接金属レーザー焼結、選択的レーザー溶融、及び直接金属レーザー溶融等などのある特定のプロセスを含み得る。本明細書において開示される実施形態は、直接金属レーザー溶融(DMLM)プロセスを参照して記述するが、必要な設計及びプロセスの変更を加えた他の付加製造技術を、本明細書において開示される中間合金、Ni基超合金、又は中間合金とNi基超合金の両方を生成するために使用してもよい。
【0017】
ある実施形態では、DMLMプロセスは、製造プラットフォームに粉末材料の薄層を適用することによって始まる。レーザー光線を使用して1以上の定義された部分で粉末を溶融又は融合させる。一例において、部分は、コンピューターが作成するコンポーネント設計データによって定義され得る。次に、粉末の第二層を前回の粉末層の上に適用する。任意で、粉末の第二層を適用する前に、製造プラットフォームを調節してもよい(例えば、低下させてもよい)。さらに、粉末の第二層の材料は、粉末の第二層の材料を1以上の既定の部分で下層に結合させるために溶融又は融合され得る。同様に、次の粉末層を第二の層の上に堆積させて、これらの次の層における1以上の部分を溶融して固化し、隣接する層の間で結合を形成させることができる。さらに、中間工程での又はすべての層を積層後の溶融部分は、必要なサイズ及び形状の所望のコンポーネントにおいて固化され得る。その上、いくつかの実施形態では、例えば必要なミクロ組織及び高温安定性などの所望の特性をコンポーネントに付与するために、得られたコンポーネントにさらなる熱処理を行うことができる。
【0018】
Ni基超合金のミクロ組織は、超合金の組成に依存し得る。そのため、サービスの際に、Ni基超合金で作製されたコンポーネントが示す特性は、超合金の組成に依存する。さらに、サービスの際に、このNi基超合金で作製されたコンポーネントが示す特性はまた、コンポーネント形成時の超合金を作製する方法にも依存する。特に、Ni基超合金において、製造方法及びコンポーネントに行われるさらなる熱処理は、コンポーネントの強度及びロバストネスを左右し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、DMLMプロセスを使用して、Ni基超合金からコンポーネントを製造する。Ni基超合金は、高温及び/又は高圧での応用にとって望ましい、高温強度、酸化抵抗性、及びクリープ抵抗性などの、しかしこれらに限定されるわけではない特性を得るのを補助する組成を有する。ガスタービンコンポーネントに使用され得るNi基超合金組成物の一例は、Rene80(商標)組成物である。標準的なRene80組成物は、コバルト(Co)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、炭素(C)、及びホウ素(B)をニッケル(Ni)と共に含み得る。必要とされる応用に応じて、これらの元素の各々の量は、所定の標準的なRene80合金において望ましい程度に変化し得る。いくつかの実施形態では、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.8〜5.2重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.15〜0.2重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含む標準的なRene80組成物が、ガスタービンコンポーネントにおいて使用される所定の応用のために使用される。この標準的なRene80組成物は、本出願において以降「基本Rene80組成物」と呼ばれ得る。
【0020】
一般的に、基本Rene80組成物を使用して形成されるNi基超合金は、ガンマ(γ)相を含むマトリックスを含む。ガンマ相は、面心立方(fcc)格子と無秩序に分布した異なる種の原子とを有する固溶体である。いくつかの実施形態では、Ni基超合金はさらに、ガンマ−プライム(γ’)相及び/又はガンマダブルプライム(γ’’)相の析出物を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、基本Rene80組成を有するNi基超合金を、DMLMプロセスを使用して加工して、加工後に熱処理を行う場合、超合金は、鋳造プロセスなどの他のプロセスによって形成された同じ組成の超合金と比較して異なるクリープ現象を有することが観察される。いかなる理論にも拘束されないが、本発明者らは、クリープ現象のこの差が、DMLMプロセスの結果として基本Rene80組成物の完成時超合金に存在するミクロ組織の差によるものであると考えている。おそらくDMLMプロセスにおいて達成される冷却速度が大きいために、Ni基超合金をDMLMプロセスによって作製する場合に形成されるミクロ組織は、従来の鋳造又はインベストメント鋳造プロセスを使用して合金を作製する場合に形成されるミクロ組織とは明白に異なる。
【0022】
図1は、基本Rene80組成物の鋳造時合金100の先行技術の低倍率ミクロ組織画像を説明し、図2は、DMLM法によって加工された基本Rene80組成物の完成時合金200の低倍率ミクロ組織を説明する。本明細書において使用される用語「鋳造時合金」は、通常の鋳造法を使用して作製された合金を意味し、用語「完成時合金」は、DMLMプロセスを使用して作製された合金を意味する。基本Rene80組成物の完成時合金200のミクロ組織は、柱状結晶組織を含む。しかし、図2で説明される実施形態では、柱状結晶組織は小さすぎて、図1の鋳造時合金100で説明される倍率と同じ倍率ではいかなるより微細な細部にも分解することができない。図3は、20μmの倍率スケールで基本Rene80組成物の先行技術の鋳造時合金100の別の画像を示す。図4及び5は、基本Rene80組成物の完成時合金200の比較的高倍率の画像(図2より)を示す。詳細には、図4及び5はそれぞれ、1μm(μm)及び500ナノメートル(nm)の倍率スケールで基本Rene80組成物の完成時合金200を説明する。
【0023】
図3の鋳造時合金100を図4及び5の完成時合金200と比較すると、図3の鋳造時合金100に存在するカーバイド102は、合金100では無秩序に散乱していることが観察されるが、図4及び5の完成時合金200で見られるカーバイド202は、柱間結晶領域204に選択的に位置することが観察されることが認められ得る。柱間結晶領域204は、DMLMプロセスの識別特性として存在する完成時合金200の柱状結晶領域206によって定義される。
【0024】
さらに、図3で見られる基本Rene80組成物の鋳造時合金100のミクロ組織に存在するカーバイド102は、図4及び5で見られる基本Rene80組成物の完成時合金200のミクロ組織に存在するカーバイド202とは、その形態及び分布が明白に異なることに注目することができる。例えば、鋳造時合金100のカーバイド102は、完成時合金200の柱間結晶領域204に存在するカーバイド202と比較してサイズが比較的大きい。例えば、鋳造時合金100に存在するカーバイド102は約2〜10μm(μm)の平均直径を有し得るが、図4及び5で見られる完成時合金200において観察されるカーバイド202の平均直径は約300ナノメートル(nm)未満である。
【0025】
その上、本発明者らは、基本Rene80組成物の完成時合金200の柱間結晶領域204に存在するカーバイド202の数が比較的多く、柱間結晶領域204においてカーバイドのフィルム又はアレイなどの実質的に密接配置のセクションを形成することを観察している。完成時合金200の柱間結晶領域204におけるより小さいカーバイドがこのようなフィルム又はアレイを形成することは、予想外であり、これまで認識されていなかった。例として、鋳造時合金100では、そのような実質的に密接配置のセクションは一般的に見出されていない。
【0026】
一般的に、Ni基超合金の強化機構は、複雑であることが知られており、結晶粒並びに結晶粒界における金属間相及びカーバイドの析出を主に伴う。Ni基超合金において見出されるカーバイドには3つのタイプ、すなわちMCタイプ、M236タイプ、及びM6Cタイプのカーバイドが存在し得る。MCタイプのカーバイドは、MC組成を有するカーバイドであり、式中Mは金属でCは炭素である。MCタイプカーバイドは、一次カーバイド又は固化タイプカーバイドとしても知られており、二次カーバイド(例えば、M236タイプ、及びM6Cタイプのカーバイド)の炭素源として作用する。結晶粒界に存在する一次及び二次カーバイドは、Ni基超合金によって作製されるコンポーネントの形成又はサービスの際に転位及び結晶粒界のいかなる運動も妨害し得る。
【0027】
完成時合金200の柱間結晶領域204において観察されるカーバイド202の高い数密度及び密接配置は、完成時合金200のさらなる熱処理の際の任意の結晶粒成長を妨害し得る。その上、密接配置のカーバイド202は、完成時合金200によって作製されるコンポーネントの形成又はサービスの際の熱処理を通して、結晶粒の応力緩和を有効に制限し得る。加えて、応力の増大に適応できないことにより、合金にクラックの形成が起こり得て、それによってこれらの合金によって作製されるコンポーネントの力学的完全性及び高温特性を損ない得る。
【0028】
図6は、基本Rene80組成物の完成時合金200の熱処理後に得られるNi基超合金600の低倍率ミクロ組織を示す。熱処理は、熱間等方圧加圧(HIP)プロセスを使用して約1200℃で行われる。図2の完成時合金200のミクロ組織を図6のNi基超合金600のミクロ組織と比較すると、Ni基超合金600の結晶粒サイズの増加は、完成時合金200の結晶粒サイズとは有意差がないことが観察される。結晶粒成長のこの欠如は、完成時合金200の十分に固定されたミクロ組織によるものであり得る。加えて、完成時合金200の結晶粒の柱状結晶の性質及びその後のテクスチャは、この方法によって形成されたNi超合金600において良好に維持される。したがって、ある実施形態では、DMLMプロセスによって得られた完成時合金200の熱処理後に形成された基本Rene80組成物のNi基超合金600は、例えば異方性クリープ現象などの実質的に異方性の力学的特性を有し得る。いくつかの実施形態では、Ni基超合金600のクリープ特性の減少及びクリープ能の方位変化は望ましくない。いかなる特定の理論にも拘束されないが、本発明者らは、この変化したクリープ現象は完成時合金200の熱処理時の結晶粒成長の減少のためであると考えている。
【0029】
例えば、高温ガス通路部コンポーネントなどのいくつかの応用に関して、実質的に等軸の結晶粒、ガンマプライム及びカーバイドの微細分散を有するガンマ−ニッケル固溶体のマトリックスを含むNi基超合金ミクロ組織は、カーバイドフィルム又は相を実質的にもろくすることなく結晶粒界について望ましい。
【0030】
これらの実施形態のいくつかにおいて、Ni基超合金600のクリープ特性は、熱処理の際に完成時合金200の結晶粒の成長を可能にすることによって改善され得る。さらに、いくつかの実施形態では、無秩序な配向を生じる結晶粒の成長は、DMLMプロセスによって製造された合金の特性を、熱処理した鋳造時合金の特性により厳密にマッチさせるために望ましい。
【0031】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、本発明者らは、完成時合金200の結晶粒の再結晶化及び実質的に等軸配向を有する結晶粒の成長が、DMLMプロセスによって製造された合金の柱間結晶領域204における微細なカーバイドのフィルム又はアレイの形成を低減させることによって形成され得ると想像する。本明細書において記述されるそのような実施形態は、完成時合金200の柱間結晶領域204におけるカーバイド含有量を減少させることに向けられる。
【0032】
ある実施形態では、結晶粒界におけるカーバイド含有量は、最初の反応性粉末中の炭素含有量を減少させること、カーバイド形成に関与する金属含有量を減少させること、利用可能な炭素を使用してより多くの一次カーバイド形成を可能にして二次カーバイド形成を妨害すること、二次カーバイドを形成する傾向がある材料よりも他の元素と反応するように利用可能な炭素を向けること、炭素含有量を結晶粒領域に向けること、又はそれらの組合せによってカーバイドの結晶粒界凝集を妨害することなどの、しかしこれらに限定されるわけではないアプローチを使用することによって、減少し得る。
【0033】
本明細書において記述されるいくつかの実施形態は、二次カーバイド形成に関与する金属元素の割合を任意で減少させることと共に、最初の開始粉末における炭素量を減少させることによって、結晶粒界におけるカーバイド形成を減少させる方法に向けられる。ある実施形態では、DMLMプロセスによる加工のために考慮される最初の開始粉末に存在する炭素の量を、Ni基超合金を形成するために使用される粉末において一般的に使用される炭素含有量と比較して減少させる。例えば、基本Rene80組成物を有するNi基超合金において、炭素含有量が約0.15重量%〜約0.2重量%の範囲であれば、ある実施形態では使用される変更組成物は、全粉末組成物の0.15重量%未満である炭素含有量を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、一次カーバイド形成元素の量も同様に、DMLMプロセスによってNi基超合金の形成のために使用される開始粉末における炭素含有量を減少させることと共に減少させる。いくつかの実施形態では、開始粉末におけるチタンの量は、形成される合金におけるカーバイド形成を制限するために、炭素元素を制限することと共に制限される。例えば、鋳造のために使用される基本Rene80粉末組成物において、チタンが一般的に約4.8重量%〜約5.2重量%の範囲で存在する場合、本発明のある実施形態では使用される変更Rene80粉末組成物は、全粉末組成物の4.7重量%未満のチタン含有量を有する。
【0035】
炭素含有量を減少させることと共に、一次カーバイド形成元素の量を減少させることは、基本Rene80組成物の鋳造時合金100と名目上類似の完成時合金200のマトリックス合金化学を保持するために特に有益である。本明細書において使用されるように、「マトリックス合金化学」は、マトリックス相の合金組成を表す。マトリックス合金化学を保持することは、例えば相不安定、形成された合金の強度の減少、様々な相間での格子の不整合などの合金化学関連特性のいくつかの変化を実質的に回避するために特に有益である。
【0036】
開始粉末における炭素含有量を減少させることに加え、又は減少させることの代わりに、いくつかの実施形態では、2つ以上の一次カーバイド形成金属元素の量もまた減少させる。ある実施形態では、一次カーバイド形成金属元素の全量を、開始粉末の全組成物の5重量%未満に減少させる。一次カーバイド形成金属元素のこの減少は、炭素含有量を減少させることと共に、又は減少させることの代わりに行われ得る。本明細書において使用される「一次カーバイド形成金属元素」は、DMLMプロセスを使用して完成時合金200を形成する通常の加工条件で一次カーバイドを形成し得る金属元素を含み、このように形成されたカーバイドは、完成時合金200の柱間結晶領域204へと分離する可能性を有する。いくつかの実施形態では、一次カーバイド形成金属元素には、周期表の4A族及び5A族の遷移金属元素が挙げられ得る。一次カーバイド形成金属元素の非制限的な例には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、及びタンタルの1以上が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、一次カーバイド形成金属元素の量の減少は、開始粉末における炭素レベルの減少に加えて行われ、炭素レベルの減少に比例し得る。一実施形態では、一次カーバイド形成金属元素の総原子百分率の減少は、開始粉末における炭素の原子百分率減少に実質的に等しい。
【0037】
さらに、いかなる理論にも拘束されないが、本発明者らは、炭素及びカーバイド形成金属元素の百分率が、変更Rene80組成物によってRene80合金を形成するために使用される最初の粉末中の決定された値より低い場合、合金において形成される一次カーバイド(MCタイプの)は、それ自身の溶融物からの固化の際ではなくてむしろ、固化後の冷却時にガンマ相マトリックスから主に析出すると考えている。このことは、炭素及びカーバイド形成金属が比較的大量に存在して固化タイプの(すなわち、溶融物から固化する)一次カーバイド析出の形成を誘導する、基本Rene80組成物による合金の形成とは対比をなす。基本Rene80組成物において形成されたこれらの固化タイプカーバイドは、結晶粒界の中及びその周囲に存在することが観察されている。しかし、変更Rene80組成物においてガンママトリックスから析出する一次カーバイドは、結晶粒界に限定されない。ガンマ相マトリックスから析出する一次カーバイドは、完成時合金200のミクロ組織全体に十分に分布することが好ましいが、樹枝状結晶の柱間結晶領域に選択的に分布する。その結果、変更Rene80組成物(より低い量の炭素及びカーバイド形成元素を有する)を使用してDMLMプロセスから形成された完成時合金200を熱処理する場合、ミクロ組織に良好に分散した一次カーバイドは、その後の熱処理の際に二次カーバイド(M236/M6C)へと再析出して、このように形成された熱処理Ni基超合金の結晶粒及び結晶粒界の両方に良好に分散され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、DMLMプロセスを使用して完成時合金200を作製する方法は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む粉末を少なくとも部分的に溶融して固化する工程を含む。ある実施形態では、チタン含有量は、粉末の約4.2重量%〜約4.7重量%の範囲であり得て、いくつかの実施形態では、チタン含有量は、粉末の約4.4重量%〜約4.6重量%の範囲であり得る。さらに、ある実施形態では、炭素含有量は、粉末の約0.01重量%〜約0.04重量%の範囲であり得て、いくつかの実施形態では、炭素含有量は、粉末の約0.01重量%〜約0.03重量%の範囲であり得る。本明細書において提供される選択された炭素範囲は、結晶粒及びセル間境界におけるカーバイドの密な分布を減少させるために特に役立つ。
【0039】
いくつかの実施形態では、完成時合金200は、粉末の約0.015重量%〜約0.060重量%の範囲の炭素と、約4.2重量%〜約4.7重量%の範囲の量のチタンとを有する変更Rene80組成物を有する粉末を使用することによって形成される。上記の変更Rene80組成物を有する粉末を使用して形成されるこの完成時合金200は、本出願において以降「中間合金」と呼ばれ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、中間合金の製造においてDMLMプロセスの一部として部分的な溶融及び固化が行われ得る。本明細書において既に記述したように、変更Rene80組成物を溶融して固化することによって形成される中間合金は、柱状結晶領域を有する。柱状結晶領域は、選択配向を有する伸長した樹枝状結晶領域である。柱状結晶領域は、固化工程の際の特定の方位での競合的成長の結果として形成され得る。柱間結晶領域は、隣接する柱状結晶領域の間の領域である。樹枝状結晶の成長は、金属、合金、及び多くの他の材料が低い熱勾配下で固化する際に遭遇する結晶成長の一般的な型である。樹枝状結晶の成長は、柱状結晶領域及び柱間結晶領域を含む。
【0041】
樹枝状結晶又は樹枝状結晶組織は一般的に、樹枝状結晶に関連するミクロ組織パラメータを特徴とする。中間合金の樹枝状結晶組織のミクロ組織は通常、一次樹枝状結晶又はセル状結晶の枝の間隔を特徴とする。一次樹枝状結晶の枝の間隔は、合金の固化における分離パターンを決定するために使用される特徴的な長さのスケールである。一般的に、一次樹枝状結晶の枝の間隔は、隣接する樹枝状結晶のコア(中心)の間の距離を測定することによって得られる。いくつかの実施形態では、中間合金の樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔は、約3μm未満である。ある実施形態では、中間合金の樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔は、約2μm未満である。ある実施形態では、樹枝状結晶組織の一次樹枝状結晶の枝の間隔は、約3μm未満である。中間合金は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む組成を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、中間合金において形成される樹枝状結晶組織は、一次樹枝状結晶の枝及び枝の間隔のみを有し、いかなる実質的な二次的な枝及び二次的な枝の間隔も含有しない。一次樹枝状結晶の枝及び枝の間隔のみを有するこれらの樹枝状結晶組織は、セル組織と呼ばれる。
【0043】
粉末の溶融及び固化の際に、粉末に存在する元素の間で多数の化学反応が起こり、中間合金を形成し得る。融解及び固化の際に、相対的に低レベルの炭素及びカーバイド形成金属元素を有する中間合金は、通常レベルの炭素及びカーバイド形成金属元素を有する基本Rene80組成物を使用した鋳造時合金100と比較して、比較的低レベルの金属カーバイド形成を有し得る。したがって、方法のいくつかの実施形態では、中間合金に存在する金属カーバイドの量は、中間合金の組成物の約0.5モル%未満である。詳細には、中間合金の形成のために使用される最初の粉末組成物は、中間合金の平衡カーバイド含有量が固相線温度付近の温度で約0.5モル%未満である量のカーバイド形成体を含む。ある実施形態では、金属カーバイドの量は、中間合金組成物の約0.3モル%未満であるようにさらに制限され得る。
【0044】
ある実施形態では、中間合金において析出する金属カーバイドは、柱状結晶及び柱間結晶領域の両方に存在し得る。いくつかの実施形態では、金属カーバイドは、中間合金の柱間結晶領域に配置される。柱間結晶領域に存在する金属カーバイドは、柱状結晶領域内に存在する金属カーバイドと比較して熱処理の際により大きい程度に結晶粒の成長を妨害し得る。いくつかの実施形態では、樹枝状結晶組織の柱間結晶領域に存在する金属カーバイドの量は、中間合金組成物の約0.3モル%未満である。柱間結晶領域における金属カーバイドの量は、ある実施形態に従って、中間合金組成物の約0.2モル%未満であるようにさらに制限され得る。
【0045】
方法はさらに、約1050℃〜約1250℃の温度範囲で中間合金を熱処理して、テクスチャフリーNi基超合金を形成する工程をさらに含む。中間合金(変更Rene80組成物の)を熱処理することによって形成されるこのNi基超合金は、本出願において以降「改変Ni基超合金」と呼ばれ得る。
【0046】
改変Ni基超合金の組成は、中間合金の組成と実質的に類似の組成を有すると考えられると留意され得る。特に、中間合金に熱処理を行って改変Ni基超合金を形成する場合、中間合金のマトリックス合金化学に実質的な変化は起こらない。改変Ni基超合金のマトリックス合金組成物は、中間合金型そのものにおいて実質的に形成される。詳細には、中間合金を改変Ni基超合金に変換するために使用される熱処理工程は、改変Ni基超合金の組成物を形成するためではなくて、中間合金のミクロ組織を改変Ni基超合金のミクロ組織に変化させるために使用される加工工程である。中間合金及び改変Ni基超合金の組成におけるわずかな変化は、存在する場合、すでに形成された中間合金と環境と間の相互作用が原因であり得る。熱処理の際のそのような組成物のいかなる変化も、改変Ni基超合金の約1体積%未満であるように限定される。いくつかの実施形態では、方法は、約1150℃〜1250℃の温度範囲で中間合金を熱処理して、改変Ni基超合金を形成する工程を含む。
【0047】
上記のように柱間結晶領域に低いカーバイド含有量を有する中間合金に熱処理を行うと、このように形成された改変Ni基超合金において結晶粒を実質的に成長させることができる。改変Ni基超合金は、結晶粒、結晶粒界、及び金属カーバイドを含む。金属カーバイドは、結晶粒又は結晶粒界に配置され得る。いくつかの実施形態では、改変Ni基超合金は、合金の溶融物又は液体状態から析出したカーバイドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、改変Ni基超合金は、固体のガンマ相マトリックスから析出した金属カーバイドを含む。さらに、改変された(低下した)炭素含有量を有する粉末から得られたNi基超合金において等軸配向が観察される。したがって、低下した炭素含有量は実質的に改変されたNi基超合金を得るために役立つ。
【0048】
図7は、中間合金の熱処理後に得られる改変Ni基超合金700の低倍率ミクロ組織を説明する。熱処理は、約1200℃で行われる。いくつかの実施形態では、熱処理は、熱間等方圧加圧(HIP)プロセスを使用して行われる。上記で開示される熱処理は、改変Ni基超合金を形成するために、特に中間合金において所望のミクロ組織変化を形成するために向けられるが、例えばガンマプライム相分布の変化などの、熱処理の際に合金に起こり得るある一定の他の強制的な変化が存在し得る。いくつかの実施形態では、熱処理中間合金に追加の熱処理を行って、改変Ni基超合金700が形成され得る。例として、カーバイドの再析出を得るために及び/又は好ましいガンマプライム分布を達成するために、中間合金に追加の処置を行うことができる。
【0049】
最初の粉末における炭素又はカーバイド形成体の量の効果は、図7の改変Ni基超合金700のミクロ組織を、図6に示される基本Rene80組成物の完成時合金200の熱処理後に得られるNi基超合金600のミクロ組織と比較することによって、明らかに観察することができる。改変Ni基超合金700のミクロ組織は、Ni基超合金600のより小さい結晶粒サイズを有する柱状結晶粒と比較して、より大きい等軸の結晶粒を示す。改変Ni基超合金700における個々の結晶粒のサイズ及び配向を、電子後方散乱検出(EBSD)技術(示していない)の使用によってさらに測定した。EBSDは、改変Ni基超合金700では、基本Rene80組成物によって得られたNi基超合金600と比較して、熱処理後に無秩序な方位の結晶粒並びに実質的な結晶粒の成長が得られることを示した。
【0050】
このように、いくつかの実施形態では、上記の方法によって形成された改変Ni基超合金700は、テクスチャフリーである。本明細書において使用される「テクスチャフリー合金」は、「任意の方位の結晶選択配向が、考慮される合金の任意の代表的な領域の20体積%未満である合金」として定義される。いくつかの実施形態では、改変Ni基超合金700における結晶配向は、10体積%未満であり、ある実施形態では、改変Ni基超合金700は、任意の特定の方位の結晶選択配向を実質的に有しない。
【0051】
改変Ni基超合金の組成が中間合金の組成と実質的に同じであることを考慮すると、いくつかの実施形態では、改変Ni基超合金の組成物に存在する金属カーバイドの量は、組成物の約0.5モル%未満である。金属カーバイドの量は、ある実施形態に従って改変Ni基超合金組成の約0.3モル%未満であるようにさらに制限され得る。改変Ni基超合金における金属カーバイドの量は、ある実施形態に従って改変Ni基超合金組成物の約0.2モル%未満であるようにさらに制限され得る。さらに、改変Ni基超合金における金属カーバイドの平均サイズは、約1μm未満であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書において形成される改変Ni基超合金は、約5〜15重量%のCo、10〜20重量%のCr、3〜6重量%のMo、3〜6重量%のW、2〜4重量%のAl、4.2〜4.7重量%のTi、0.01〜0.05重量%のZr、0.015〜0.060重量%のC、0.001〜0.030重量%のBを含み、残部が実質的にNiを含む組成物を含む。改変Ni基超合金は、本明細書において上記の方法によって形成されてもよく、ガンマ相マトリックス、析出ガンマプライム相、及びガンマ相マトリックスから析出した金属カーバイドを含むテクスチャフリー型を有する。改変Ni基超合金に配置される金属カーバイドは、組成物の約0.3モル%未満であり、改変Ni基超合金に存在する金属カーバイドの平均サイズは、約1μm未満である。
【0053】
改変Ni基超合金は、単なる炭素量の減少ではなくて、その組成物中のカーバイド含有量が減少していることが好ましい。カーバイド含有量の減少は、例えばガンマ相及びガンマプライム相などの合金に存在する(カーバイド以外の)異なる相の局所化学を維持するために役立つ。局所化学の維持は、合金がマトリックスと析出相との間にサイズの変化及び格子不整合の変化を受けにくいという点において、特に有利である。
【0054】
さらに、改変Ni基超合金におけるカーバイド含有量(炭素含有量ではなくて)の減少と、従来の経路を使用して調製された標準的な親合金と類似の局所相化学の維持は、改変Ni基超合金の長期間のミクロ組織安定性を増強して、形成された改変Ni基超合金と既存の標準的な合金との結合をさらに支持する。
【0055】
本発明のごく一部の特色を本明細書において説明及び記述してきたが、多くの改変及び変更が当業者に想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるそのようなすべての改変及び変化を含むと意図されると理解すべきである。
【符号の説明】
【0056】
100 鋳造時合金
102 鋳造時合金に存在するカーバイド
200 完成時合金
202 完成時合金に存在するカーバイド
204 柱間結晶領域
206 柱状結晶領域
600 Ni基超合金
700 改変Ni基超合金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7