(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374946
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】遊星歯車式多段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/66 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
F16H3/66 Z
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-504526(P2016-504526)
(86)(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公表番号】特表2016-514808(P2016-514808A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014053569
(87)【国際公開番号】WO2014154411
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】102013205377.0
(32)【優先日】2013年3月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ベック
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン シブラ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング リーガー
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−349153(JP,A)
【文献】
特開2006−349001(JP,A)
【文献】
特開2010−132283(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0197733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車式多段変速機であって、
a)ハウジング長手方向軸(2)を備えるハウジング(3)と、
b)駆動部と結合可能であり、駆動トルクを前記駆動部から前記遊星歯車式多段変速機(1)へ伝達する入力軸(10)と、
c)出力軸(11)と、
d)前記ハウジング長手方向軸(2)に沿って配置された4つの遊星歯車セット(12、13、14,15)であって、各々が、太陽歯車(18、22、26、30)、内歯車(19、23、27、31)、およびキャリア(20、24、28、32)および遊星歯車(21、25、29、33)を備える遊星歯車セット(12、13、14,15)と、
e)4つのクラッチ(4、5、6、7)および2つのブレーキ(8、9)として構成され、前記ハウジング(3)の内部に配置された6つのシフト要素と、
f)前記遊星歯車セット(12、13、14、15)、前記入力軸(10)、前記出力軸(11)、前記クラッチ(4、5、6、7)または前記ブレーキ(8、9)の間を結合する結合軸(34、35、36、37、38、39、40、41、44)と、を備え、
g)前記遊星歯車セット(12、13、14、15)を、前記シフト要素(4、5、6、7、8、9)により、前記入力軸(10)および前記出力軸(11)の間で、種々の変速比(i)が作用するよう切り替え可能であり、
h)前記入力軸(10)が、
i)第1クラッチ(4)を介して、独立した第3遊星歯車装置(14)のキャリア(28)と結合可能であり、
ii)第2クラッチ(5)を介して、第1遊星歯車セット(12)の内歯車(19)および第2遊星歯車セット(13)の太陽歯車(22)と結合可能であり、
iii)第3クラッチ(6)を介して、第1遊星歯車セット(12)の太陽歯車(18)と結合可能であり、および第3クラッチ(6)と第1ブレーキ(8)を介して、前記ハウジング(3)と結合可能である遊星歯車式多段変速機。
【請求項2】
前記クラッチ(4、5、6、7)が、前記入力軸(10)または前記出力軸(11)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項3】
第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第3クラッチ(6)が、前記入力軸(10)に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項4】
第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第3クラッチ(6)が、前記ハウジング長手方向軸(2)に沿って並び、配置されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項5】
第4クラッチ(7)が、前記出力軸(11)に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機であって、
前記出力軸(11)が、
i)第3遊星歯車セットの内歯車(27)と結合され、
ii)第4クラッチ(7)を介して、独立した第4遊星歯車装置(15)のキャリア(32)と結合可能であり、
第1遊星歯車セット(12)のキャリア(20)が、第2遊星歯車セット(13)のキャリア(24)と結合され、
独立した第2遊星歯車装置(13)の内歯車(23)が、第2ブレーキ(9)を介して、前記ハウジング(3)と結合可能であり、
第2遊星歯車セット(13)のキャリア(24)が、第4遊星歯車セット(15)の内歯車(31)および第3遊星歯車セット(14)の太陽歯車(26)と結合され、
第4遊星歯車セット(15)の太陽歯車(30)が、前記ハウジング(3)に固定されていることを特徴とする遊星歯車式多段変速機。
【請求項7】
前記シフト要素(4、5、6、7、8、9)が、2つの隣接する変速段の間の変速の際、その都度、厳密に1つの、事前に締結されていたシフト要素(4、5、6、7、8、9)を解放し、および厳密に1つの、事前に解放されていたシフト要素(4、5、6、7、8、9)を締結するよう切り替え可能であることを特徴とする、請求項6に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機であって、全ての変速段(G1、G2、G3、G4、G4a、G4b、G4c、G5、G6、G7、G8、G9、R)において、その都度、3つのシフト要素(4、5、6、7、8、9)を締結し、前進第1速(G1)において第2ブレーキ(9)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第2速(G2)において第1ブレーキ(8)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第3速(G3)において第2クラッチ(5)、第3クラッチ(6)および第4クラッチ(7)が、前進第4速(G4)において第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第5速(G5)において第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第3クラッチ(6)が、前進第6速(G6)において第1ブレーキ(8)、第1クラッチ(4)および第2クラッチ(5)が、前進第7速(G7)において第2ブレーキ(9)、第1クラッチ(4)および第2クラッチ(5)が、前進第8速(G8)において第1ブレーキ(8)、第2ブレーキ(9)および第1クラッチ(4)が、前進第9速(G9)において第2ブレーキ(9)、第1クラッチ(4)および第3クラッチ(6)が締結され、ならびに後退速(R)において第2ブレーキ(9)、第3クラッチ(6)および第4クラッチ(7)が締結されることを特徴とする遊星歯車式多段変速機。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機であって、全ての変速段(G1、G2、G3、G4、G4a、G4b、G4c、G5、G6、G7、G8、G9、R)において、その都度、3つのシフト要素(4、5、6、7、8、9)を締結し、前進第1速(G1)において第2ブレーキ(9)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第2速(G2)において第1ブレーキ(8)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第3速(G3)において第2クラッチ(5)、第3クラッチ(6)および第4クラッチ(7)が、前進第4速(G4a;G4b;G4c)において、第1ブレーキ(8)、第1クラッチ(4)および第4クラッチ(7)が、または、第2ブレーキ(9)、第1クラッチ(4)および第4クラッチ(7)が、または、第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、前進第5速(G5)において第1クラッチ(4)、第2クラッチ(5)および第3クラッチ(6)が、前進第6速(G6)において第1ブレーキ(8)、第1クラッチ(4)および第2クラッチ(5)が、前進第7速(G7)において第2ブレーキ(9)、第1クラッチ(4)および第2クラッチ(5)が、前進第8速(G8)において第1ブレーキ(8)、第2ブレーキ(9)および第1クラッチ(4)が、前進第9速(G9)において第2ブレーキ(9)、第1クラッチ(4)、および第3クラッチ(6)が締結され、ならびに後退速(R)において第2ブレーキ(9)、第3クラッチ(6)および第4クラッチ(7)が締結されることを特徴とする遊星歯車式多段変速機。
【請求項10】
全ての遊星歯車セット(12、13、14、15)がマイナス遊星歯車装置として構成されていることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項11】
少なくとも1つの遊星歯車セット(12、13、14、15)がプラス遊星歯車装置として構成されていることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項12】
前記遊星歯車セット(12、13、14、15)の配置が、前記ハウジング長手方向軸(2)に沿って前記ハウジング(3)内で変化可能であることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項13】
前記結合軸(34、35、36、37、38、39、40、41、44)の少なくとも1つ、前記入力軸(10)および/または前記出力軸(11)が、自由走行要素を備え、該自由走行要素により前記ハウジング(3)に結合されるか、および/またはその都度異なる軸(10、11、34、35、36、37、38、39、40、41、44)に結合されることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項14】
少なくとも1つの、前記結合軸(35、36、37、38、39、40、41、44)のうちの1つの結合軸、前記入力軸(10)および/または前記出力軸(11)に取り付けられた駆動部により、該駆動部が装備された軸(10、11、34、35、36、37、38、39、40、41、44)が駆動されることを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項15】
摩擦接合型および/または形状接合型のシフト要素(4、5、6、7、8、9)を特徴とする、請求項1〜14の何れか一項に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項16】
第2クラッチ(5)および第4クラッチ(7)が、噛み合い型シフト要素として構成されていることを特徴とする、請求項15に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項17】
請求項1または2に記載の遊星歯車式多段変速機であって、前記入力軸が、第3遊星歯車セットのキャリアと結合され、前記入力軸が、第2クラッチ(5)を介して、第2遊星歯車セットの太陽歯車と結合可能であり、前記入力軸が、第3クラッチ(6)を介して、第1遊星歯車セットの太陽歯車と結合可能であり、第1遊星歯車セットの太陽歯車が、第1ブレーキを介して、前記ハウジングと結合可能であり、第1遊星歯車セットのキャリアが、第2遊星歯車セットのキャリアと結合され、第1遊星歯車セットの内歯車が、第2遊星歯車セットの太陽歯車と結合され、第2遊星歯車セットの内歯車が、第2ブレーキ(9)を介して、前記ハウジングと結合可能であり、第2遊星歯車セットのキャリアが、第4遊星歯車セットの内歯車と結合され、第3遊星歯車セットの内歯車が、第4クラッチを介して、第4遊星歯車セットのキャリアと結合可能であり、および第4遊星歯車セットの太陽歯車が、前記ハウジングと結合されていることを特徴とする遊星歯車式多段変速機。
【請求項18】
第2遊星歯車セットのキャリアが、第1クラッチ(4b)を介して、第3遊星歯車セットの太陽歯車と結合可能であり、および第3遊星歯車セットの内歯車が、前記出力軸と結合されていることを特徴とする、請求項17に記載の遊星歯車式多段変速機。
【請求項19】
第2遊星歯車セットのキャリアが、第3遊星歯車セットの太陽歯車と結合され、および第3遊星歯車セットの内歯車が、第1クラッチを介して、前記出力軸と結合可能であることを特徴とする、請求項17に記載の遊星歯車式多段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊星歯車式多段変速機、特に自動車用の自動変速機に関する。この種の変速機は、例えば自動車において、駆動部と駆動輪に間に配置される。この種の遊星歯車式多段変速機は、複数の独立した遊星歯車装置を備え、これら遊星歯車装置は、クラッチおよび/またはブレーキの形状であるシフト要素により、互いに切り替え可能である。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車式多段変速機においては、シフト要素が使用される場合が多く、シフト要素は油圧的に作動する。そうしたシフト要素が変速機の内部で、特に変速機ハウジングに対して可動な状態で配置されている場合、油圧ラインは、回転する構成部品への移行部を備える必要がある。そうした移行部においてはしばしば圧力損失が発生するため、油圧ラインの内部の圧力を積極的に保持する必要がある。この保持のための作動は、例えば油圧ポンプを介して実行される。同様のことは、電気的、空気圧的または機械的に作動可能なシフト要素を使用した場合にも当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、シフト要素において、アクセスが容易な部分の割合を可及的に高めた遊星歯車式多段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、請求項1に記載の特徴に従って遊星歯車式多段変速機を規定する。このような遊星歯車式多段変速機において、4つのクラッチおよび2つのブレーキとして構成されたシフト要素はアクセスが容易である。同時に遊星歯車式多段変速機は、入力軸および出力軸の間に配置された、4つの独立した遊星歯車装置を備える。各独立した遊星歯車装置は、各々が、太陽歯車、内歯車、および各キャリアに割り当てられた、複数の遊星歯車を備える。
【0005】
遊星歯車式多段変速機は、有利にも標準的な構造で構成可能であるため、入力軸および出力軸は同軸上でハウジング内に配置される。しかし代替的に、遊星歯車式多段変速機のフロント横置き構造も可能であり、出力軸は、入力軸に対して軸をシフトさせて配置可能である。
【0006】
入力軸は、駆動クラッチを介して、自動車の駆動トレインと結合可能な状態で構成可能である。駆動クラッチは、特に流体力学的トルクコンバータ、流体力学的クラッチ、追加的な始動クラッチ、一体化された始動クラッチ、一体化された始動ブレーキまたは追加的な電気モータとして構成される。全体として本発明による遊星歯車式多段変速機は、構造または組立てに関する労力が低減されることを特徴とする。遊星歯車式多段変速機の費用ならびに重量も低減される。
【0007】
遊星歯車式多段変速機の有利な実施形態は、請求項1に従属する請求項に記載の特徴により明らかとなる。
【0008】
実施形態においては、クラッチ要素が、外側に位置する軸、特に入力軸および/または出力軸に配置されることが好適である。軸が外側に位置すると、特に外側から到達可能であるため、必要に応じ、全てのクラッチ要素に対して僅かの労力でアクセス可能となる。
【0009】
更なる好適な一実施形態により、第4クラッチは出力軸に配置されるため、外側から容易にアクセス可能な状態で配置される。
【0010】
更なる好適な一実施形態により、独立した遊星歯車装置は、遊星歯車式多段変速機が良好な変速比レンジを備えるよう、シフト要素により結合可能である。
【0011】
更なる好適な一実施形態により、2つの隣接する変速段の間で変速する際、つまり、特に前進第1速から後退速、およびその反対に変速する際、その都度、厳密に1つの、事前に締結されていたシフト要素を解放し、および厳密に1つの、事前に解放されていたシフト要素を締結することを確実に実行する。
【0012】
更なる好適な一実施形態により、各々の独立した遊星歯車装置は、いわゆるマイナス遊星歯車装置(シングルピニオン式遊星歯車装置)として構成される。つまり、各々の独立した遊星歯車装置のキャリア固定時変速比は、負の値となる。これは、同軸上に配置された複数の中央歯車、つまり内側に位置する太陽歯車、および太陽歯車に対して同心的に配置された外側に位置する内歯車が、互いに反対の回転方向を備えることで達成される。更なる好適な一実施形態により、マイナス遊星歯車装置(シングルピニオン式遊星歯車装置)のうちの少なくとも1つの遊星歯車装置は、いわゆるプラス遊星歯車装置(ダブルピニオン式遊星歯車装置)として構成される。これは例えば、独立した遊星歯車装置において、キャリアと内歯車の結合を交換し、および同時にキャリア固定時変速比の値を1だけ高めることで達成される。
【0013】
更なる好適な一実施形態により、独立した遊星歯車装置の配置を、ハウジング内で、特に入力軸および/または出力軸に沿って変化可能とする。つまり、各々の独立した遊星歯車装置の幾何学的な位置、特にその順番を、入力軸および/または出力軸に沿って自由に選択可能とする。同時にまたは代替的に、シフト要素もその幾何学的な位置をハウジング内で自由に選択可能である。
【0014】
更なる好適な一実施形態により、結合軸
の少なくとも1つ、入力軸および/または出力軸を、自由走行要素によりハウジングに結合するか、および/または互いに結合させる。これにより、独立した遊星歯車装置の切り替え、ならびに独立した遊星歯車装置のハウジング内の連結に関して追加的な自由度が生じる。
【0015】
更なる好適な一実施形態により、結合軸、入力軸および/または出力軸上に、駆動部を取り付け可能である。追加的な駆動部は、例えば電気モータとして構成可能である。他の動力源および/または出力源を駆動部として使用することも考慮可能である。
【0016】
更なる好適な一実施形態により、シフト要素は摩擦接合型および/または形状接合型で構成される。
【0017】
更なる好適な一実施形態により、第2ブレーキ、第2クラッチ要素および第4クラッチ要素は、噛み合い型シフト要素として構成される。噛み合い型シフト要素である上述のシフト要素を備えた実施形態においては、遊星歯車式多段変速機の特徴に起因して燃料消費が顕著に低減される。
【0018】
請求項に記載の特徴、ならびに以下に記載された本発明の装置の実施形態の特徴の両方は、各々の特徴そのものが独立して、または互いに組み合わされて、本発明の対象物をさらに発展させる。組み合わされた特徴の各々は、本発明の対象物を発展させることに関して制限を与えるものではなく、実質的には、単に例示的な特徴を示すものである。
【0019】
本発明の更なる特徴、利点および詳細は、図面に参照した実施形態に関する以下の記述により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】遊星歯車式多段変速機の第1実施形態の図である。
【
図2】各変速段のために締結されるシフト要素を示すシフトロジック説明図である。
【
図3】シフト要素の配置を変更した、
図1の遊星歯車式多段変速機の第2実施形態の図である。
【
図4】シフト要素の配置が異なる、
図1の遊星歯車式多段変速機の第3実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至
図4において互いに対応する部分には、同一の符号を付している。下記に詳述される実施形態の各々は、それ自体が発明となるか、または発明対象の部分となることが可能である。
【0022】
図1は遊星歯車式多段変速機1の概略図である。遊星歯車式多段変速機1は、特に自動車用の変速機として構成されている。
【0023】
図1の遊星歯車式多段変速機1は、遊星歯車式多段変速機1の、変速機長手方向軸2から上に配置された部分のみを示し、簡略化されている。
【0024】
遊星歯車式多段変速機1は、ハウジング3を備える。ハウジング3の内部には、第1クラッチ4、第2クラッチ5、第3クラッチ6および第4クラッチ7、ならびに、第1ブレーキ8および第2ブレーキ9である、6つのシフト要素が配置されている。さらに遊星歯車式多段変速機は、駆動トルクを、図示されていない駆動部から遊星歯車式多段変速機1へ伝達するための入力軸10を備える。これに対応して、遊星歯車式多段変速機1は出力軸11を備える。入力軸10および出力軸11は、ハウジング長手方向軸2に対して同軸上に配置されている。入力軸10ならびに出力軸11は各々、ハウジング3から外に導かれる。
【0025】
さらに遊星歯車式多段変速機は、ハウジング長手方向軸2に沿って配置された、4つの遊星歯車セット12乃至15を備える。
図1に従い、入力軸10から出力軸11へ、変速機長手方向軸2に平行して導かれる参照方向16に沿って、第1遊星歯車セット12、第2遊星歯車セット13、第3遊星歯車セット14および第4遊星歯車セット15が配置されている。
【0026】
第1ブレーキ8および第2ブレーキ9は、固定された状態で、ハウジング3の内壁に配置されている。さらに参照方向16に沿って、第1クラッチ4、第2クラッチ5および第3クラッチ6が、直接隣り合って並び、配置されている。図示の実施形態においては、3つのクラッチ4乃至6が、共通の外部ディスクキャリア17を備える。クラッチ4、5および6は、外側に位置する入力軸10に配置されている。第4クラッチ7は同様に、外側に位置する出力軸11に配置されている。
【0027】
図示の実施形態により、遊星歯車セット12乃至15の各々は、内側に位置して外側に歯を有する太陽歯車、外側に位置して内側に歯を有し、特に変速機長手方向軸2に対して同心的に配置された内歯車、および各々がキャリアを備え、太陽歯車と内歯車の間に配置された複数の遊星歯車を供える。遊星歯車式多段変速機
が伝達するトルクの大きさに従い、遊星歯車の個数が変化可能である。対応して第1遊星歯車セット12は、太陽歯車18、内歯車19、および少なくとも1つのキャリア20を有する遊星歯車21を備える。対応して第2遊星歯車セット13は、太陽歯車22、内歯車23、およびキャリア24を有する、少なくとも1つの遊星歯車25を備える。第3遊星歯車セット14は、太陽歯車26、内歯車27、およびキャリア28を有する、少なくとも1つの遊星歯車29を備える。第4遊星歯車セット15は、太陽歯車30、内歯車31、およびキャリア32を有する、少なくとも1つの遊星歯車33を備える。
【0028】
以下に、遊星歯車セット12乃至15をシフト要素4乃至9により切り替える、ならびに、遊星歯車セット12乃至15を入力軸10および出力軸11に結合する場合に関して詳細に既述する。
【0029】
入力軸10は、第1クラッチ4を介して、第3遊星歯車セット14のキャリア28と結合可能である。入力軸10は、第2クラッチ5を介して、第1遊星歯車セット12の内歯車19と結合可能である。同時に入力軸10は、第2クラッチ要素5を介して、第2遊星歯車セット13の太陽歯車22と結合可能である。入力軸10は、第3クラッチ6を介して、第1遊星歯車セット12の太陽歯車18に結合可能である。同時に入力軸10は、第3クラッチ要素6を介して、第1ブレーキ8と結合可能である。
【0030】
出力軸11は、第3遊星歯車セット14の内歯車27と結合されている。出力軸11は、第4クラッチ要素7を介して、第4遊星歯車セット15のキャリア32と結合可能である。
【0031】
第1遊星歯車セット12のキャリア20は、第2遊星歯車セット13のキャリア24と結合されている。第2遊星歯車セット13の内歯車23は、第2ブレーキ9と結合されている。第2遊星歯車セット13のキャリア24は、第4遊星歯車セット15の内歯車31と結合されている。第2遊星歯車セット13のキャリア24は、第3遊星歯車セット14の太陽歯車26と結合されている。
【0032】
第4遊星歯車セット15の太陽歯車30は、第8結合軸41を介して、ハウジング3と結合されている。
【0033】
好適なキャリア固定時変速比として、第1遊星歯車セット12は、i
0 = -1.898、第2遊星歯車セット13は、i
0 = -1.609、第3遊星歯車セット14は、i
0 = -1.500、第4遊星歯車セットは、i
0 = -1.500を備える。
【0034】
図2は、切り替えられる変速段Gのためのシフトロジック説明図を示す。変速段はシフトロジック説明図において、第1変速段G1から開始して第9変速段G9まで上がり、後退速Rを備えて構成されている。例えばシフトロジック説明図からは、第1変速段G1を実現するためには第2ブレーキ9、第2クラッチ5および第4クラッチ7が締結されたシフト位置にあるべきことが読み取れる。さらにシフトロジック説明図は、各変速段に対して変速比iを開示する。さらにシフトロジック説明図において、各速度ステップjが示される。例えば、第1変速段G1と第2変速段G2の間の速度ステップjは、1.709である。この値は、第1変速段の変速比である4.348の、第2変速段の変速比、2.545に対する比率に対応する。
【0035】
シフトロジック説明図の最後の三行には、G4a、G4bおよびG4cが付され、第4変速段G4を実現するための代替的なシフト構成を示す。基本的に、変速段G1乃至G9およびRを実現するためには、2つの隣接する変速段の間で変速段を変速する際、その都度、厳密に1つの、事前に締結されていたシフト要素を解放し、および厳密に1つの、事前に解放されていたシフト要素を締結する。つまり、常に2つのシフト要素が同時に締結されている。特に代替的な変速段配置G4aおよびG4bにおいては、この原則が破られている。なぜなら、第3変速段G3から、例えば第4変速段の第1代替の第4変速段G4aにアップシフトする場合、第2クラッチ5および第3クラッチ6を解放し、そして同時に第1クラッチ4および第1ブレーキ8を締結しなければならないためである。
【0036】
上記には左右されずに、代替的な第4変速段G4a乃至G4cは、1.267の同一の変速比iを有する。つまり、第4変速段G4a乃至G4cのための代替的なシフト位置により、速度ステップjが、特に第3変速段と第4変速段の間で、および、第4変速段と第5変速段の間で、変わることはない。
【0037】
変速比iおよび速度ステップjの個々の値は、上記で参照した
図2のシフトロジック説明図から直接読み取れる。
【0038】
図3は、更なる遊星歯車式多段変速機の一実施形態を示す。
図3の遊星歯車式多段変速機は、
図1の遊星歯車式多段変速機1とは、クラッチの配置が異なる。第2クラッチ5および第3クラッチ6は、遊星歯車式多段変速機1と同様に入力軸10に配置されており、対応して切り替えられる。さらに第4クラッチ7は、
図1の遊星歯車式多段変速機1と同様に、出力軸11に配置され、切り替えられる。しかし第1クラッチ要素4aは、
図1の遊星歯車式多段変速機1とは対照的に、入力軸10ではなく出力軸11に配置され、出力軸11を、第4結合軸37を介して、第3遊星歯車セット14の内歯車27と結合することが可能である。
【0039】
全てのクラッチ4a、5、6、7は、外側の軸10、11に配置されている。ブレーキ8、9は、ハウジング3に固定されている。全てのシフト要素4a、5乃至9は、外側からのアクセスが容易である。
【0040】
図4は、更なる遊星歯車式多段変速機の一実施形態を示す。
図4の遊星歯車式多段変速機は、
図1の遊星歯車式多段変速機1とは、第1クラッチ4bが直接には入力軸11に配置されておらず、第7結合軸40に配置されている点が異なる。対応して、第1クラッチ4bは、第7結合軸40を介して、第2遊星歯車セット13のキャリア38を、第3遊星歯車セット14の太陽歯車26と結合可能にしている。
【符号の説明】
【0041】
1 遊星歯車式多段変速機
2 変速機長手方向軸
3 ハウジング
4 第1クラッチ
4a 第1クラッチ
4b 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 第3クラッチ
7 第4クラッチ
8 第1ブレーキ
9 第2ブレーキ
10 入力軸
11 出力軸
12 独立した第1遊星歯車装置
13 独立した第2遊星歯車装置
14 独立した第3遊星歯車装置
15 独立した第4遊星歯車装置
16 参照方向
17 ディスクキャリア
18 太陽歯車
19 内歯車
20 キャリア
21 遊星歯車
22 太陽歯車
23 内歯車
24 キャリア
25 遊星歯車
26 太陽歯車
27 内歯車
28 キャリア
29 遊星歯車
30 太陽歯車
31 内歯車
32 キャリア
33 遊星歯車
34 第1結合軸
35 第2結合軸
36 第3結合軸
37 第4結合軸
38 第5結合軸
39 第6結合軸
40 第7結合軸
41 第8結合軸
42 遊星歯車式多段変速機
43 遊星歯車式多段変速機
44 第9結合軸
G 変速段
i 変速比
j 速度ステップ