(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374955
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】熱的に最適化された鉄道車両編成ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20180806BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20180806BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20180806BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20180806BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20180806BHJP
F16D 65/12 20060101ALI20180806BHJP
B60T 13/66 20060101ALI20180806BHJP
B60T 13/68 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T15/36 A
B61H5/00
F16D69/02 D
F16D65/092 C
F16D65/12 J
B60T13/66 A
B60T13/68
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-515036(P2016-515036)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-519018(P2016-519018A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】US2014038896
(87)【国際公開番号】WO2014190003
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/826,268
(32)【優先日】2013年5月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/282,357
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506190681
【氏名又は名称】ワブテク・ホールディング・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】WABTEC HOLDING CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】シャルプ、ロバート・ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】クーン、マリア・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】フィンチ、グリン・エイ・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ポーリ、パオロ
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−129346(JP,U)
【文献】
特開2002−370642(JP,A)
【文献】
特公昭58−002521(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 13/66
B60T 13/68
B60T 15/36
B61H 5/00
F16D 65/092
F16D 65/12
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡して前記ブレーキパイプから加圧流体が提供される少なくとも2つの中継弁と、
各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、
各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットと、
各中継弁と流体連絡し加圧流体を提供する主リザーバと、
各中継弁と流体連絡し必要時に追加の加圧流体を提供する供給リザーバと、
を備える鉄道車両編成ブレーキシステムであって、
電気ブレーキユニットの1つの故障時に、前記故障した電気ブレーキユニットと電気連絡する前記中継弁が、少なくとも1つの他の中継弁に信号を送信して、少なくとも1つの他の中継弁と流体連絡する前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を提供し、加圧流体の圧力を制御することで追加のブレーキ力を提供する鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁である請求項1に記載の鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットである請求項1に記載の鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項4】
前記主リザーバに流体連絡され前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を供給する主リザーバパイプを備え、
各中継弁が、前記ブレーキパイプと前記主リザーバパイプとの両方に接続され、それらと流体連絡する請求項1に記載の鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、鋼セグメント化ディスクブレーキユニットである請求項1に記載の鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットである請求項1に記載の鉄道車両編成ブレーキシステム。
【請求項7】
互いに電気連絡および流体連絡する少なくとも2つの鉄道車両と、
各鉄道車両と流体連絡するブレーキシステムと
を備える鉄道車両編成であって、
前記ブレーキシステムは、
互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡して前記ブレーキパイプから加圧流体が提供される少なくとも2つの中継弁と、
各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、
各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットと、
各中継弁と流体連絡し加圧流体を提供する主リザーバと、
各中継弁と流体連絡し必要時に追加の加圧流体を提供する供給リザーバと、
を備え、
前記ブレーキシステムの1つの前記電気ブレーキユニットの1つの故障時に、前記故障した電気ブレーキユニットと連絡する前記中継弁が、前記ブレーキシステムの少なくとも1つの他の中継弁に信号を送信して、少なくとも1つの他の中継弁と流体連絡する前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を提供し、加圧流体の圧力を制御することで追加のブレーキ力を提供する鉄道車両編成。
【請求項8】
少なくとも1つの鉄道車両の前記ブレーキシステムの前記少なくとも2つの中継弁が、残りの鉄道車両の少なくとも1つの中継弁と電気連絡する請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項9】
各ブレーキシステムの各中継弁が互いに電気連絡する請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項10】
前記少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁である請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項11】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットである請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項12】
前記主リザーバに流体連絡され前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を供給する主リザーバパイプを備え、
各中継弁が、前記ブレーキパイプと前記主リザーバパイプとの両方に接続され、それらと流体連絡する請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項13】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、鋼セグメント化ディスクブレーキユニットである請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項14】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットである請求項7に記載の鉄道車両編成。
【請求項15】
互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡して前記ブレーキパイプから加圧流体が提供される少なくとも2つの中継弁と、
各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、
各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットと、
各中継弁と流体連絡し加圧流体を提供する主リザーバと、
各中継弁と流体連絡し必要時に追加の加圧流体を提供する供給リザーバと、
を有するブレーキシステムを備える鉄道車両編成に追加のブレーキ力を供給する方法であって、
前記中継弁はマイクロプロセッサを含み、
前記ブレーキシステムは、
a)少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットから、前記少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットと連絡する少なくとも1つの中継弁に、前記少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットが信号を送信するステップと、
b)前記少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットと電気連絡する前記少なくとも1つの中継弁から、少なくとも1つの他の中継弁に、前記少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットに電気連絡する前記少なくとも1つの中継弁の前記マイクロプロセッサが信号を送信するステップと、
c)前記少なくとも1つの他の中継弁から、前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに、前記少なくとも1つの他の中継弁が加圧流体を提供するステップと
を含むステップを実行する方法。
【請求項16】
前記電気ブレーキユニットの1つの故障時に、前記ブレーキシステムの前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットをほぼ均等に適用する前記ステップをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁である請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットである請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記主リザーバに流体連絡され前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を供給する主リザーバパイプを備え、
前記各中継弁が、前記ブレーキパイプと前記主リザーバパイプとの両方に接続され、それらと流体連絡する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットである請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、鉄道車両編成ブレーキシステムに関し、より詳細には、熱的に最適化された列車ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2013年5月22日出願の米国仮特許出願第61/826,268号および2014年5月20日出願の米国実用新案出願第14/282,357号の利益を主張するものであり、それらの開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
ヘビーレールメトロタイプ列車車両用の既存のブレーキシステムは、「車両毎」または「台車毎」にブレーキを制御する。この用途において、各台車は、車両または列車の他の台車から独立して動作する。鉄道車両での機器の全てが動作しているとき、制動は、推進システムのモータによって主に行われる。モータは、走行中の列車の運動エネルギーを電気に変換し、この電気は、主として、抵抗バンクで熱に変換されるか、送電網に戻される。電気制動が十分なブレーキ力を提供することができないときにのみ、摩擦ブレーキが高速または低速で適用される。
【0004】
各台車が独立して動作している状態での電気ブレーキの故障時に、故障した台車の摩擦ブレーキが、故障した台車に必要な全制動力を加える。これは、速度制限を課すことなく、要求される全体的な列車ブレーキレートを維持するために行われる。この場合、故障した台車にあるブレーキディスクに加えられる熱負荷が非常に高く、具体的には、鉄道車両編成の各車軸に2枚のディスクを必要とする。
【0005】
各列車車両でのブレーキ機器の量を減少させる鉄道車両編成ブレーキシステムが現在必要である。ブレーキ機器の重量を減少させる鉄道車両編成ブレーキシステムも現在必要である。また、列車車両にわたるブレーキ機器の摩耗を均等にする鉄道車両編成ブレーキシステムも現在必要である。また、ブレーキ機器の温度を低下させる鉄道車両編成ブレーキシステムも現在必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一実施形態では、鉄道車両編成ブレーキシステムは、互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡する少なくとも2つの中継弁と、各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットとを含む。電気ブレーキユニットの1つの故障時に、故障した電気ブレーキユニットと電気連絡する中継弁が、少なくとも1つの他の中継弁に信号を送信して、少なくとも1つの他の中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を提供する。
【0007】
少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁を含んでもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットを含んでもよい。各中継弁は、ブレーキパイプと主リザーバパイプとの間に位置し、それらと流体連絡してもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、鋼セグメント化ディスクブレーキユニットを含んでもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットを含んでもよい。
【0008】
本開示の別の実施形態では、鉄道車両編成は、互いに電気連絡および流体連絡する少なくとも2つの鉄道車両と、各鉄道車両と流体連絡するブレーキシステムとを含む。ブレーキシステムは、互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡する少なくとも2つの中継弁と、各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットとを含む。ブレーキシステムの1つの電気ブレーキユニットの1つの故障時、故障した電気ブレーキユニットと連絡する中継弁が、ブレーキシステムの少なくとも1つの他の中継弁に信号を送信して、少なくとも1つの他の中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を提供する。
【0009】
少なくとも1つの鉄道車両のブレーキシステムの少なくとも2つの中継弁は、残りの鉄道車両の少なくとも1つの他の中継弁と電気連絡してもよい。各中継弁は、互いに電気連絡してもよい。少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁を含んでもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットを含んでもよい。各中継弁は、ブレーキパイプと主リザーバパイプとの間に位置し、それらと流体連絡してもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、鋼セグメント化ディスクブレーキユニットを含んでもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットを含んでもよい。
【0010】
本開示の別の実施形態では、鉄道車両編成にブレーキを適用する方法が、互いに電気連絡し、かつブレーキパイプと流体連絡する少なくとも2つの中継弁と、各中継弁と流体連絡する少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットと、各中継弁と電気連絡する少なくとも1つの電気ブレーキユニットとを含むブレーキシステムを提供するステップと、少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットから、少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットと連絡する少なくとも1つの中継弁に信号を送信するステップと、少なくとも1つの故障した電気ブレーキユニットと電気連絡する少なくとも1つの中継弁から、少なくとも1つの他の中継弁に信号を送信するステップと、少なくとも1つの他の中継弁から、少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットに加圧流体を提供するステップとを含む。
【0011】
この方法は、電気ブレーキユニットの1つの故障時に、ブレーキシステムの少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットをほぼ均等に適用するステップをさらに含んでもよい。少なくとも2つの中継弁は、一体型電気中継弁を含んでもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、ディスクブレーキユニットを含んでもよい。各中継弁は、ブレーキパイプと主リザーバパイプとの間に位置し、それらと流体連絡してもよい。少なくとも2つの摩擦ブレーキユニットは、シンタード系パッドブレーキユニットを含んでもよい。
【0012】
さらなる詳細および利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せて読めば理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本開示による鉄道車両編成でのブレーキシステムの概略図である。
【
図1B】本開示による鉄道車両編成でのブレーキシステムの概略図である。
【
図2】
図1Aおよび
図1Bのブレーキシステムを利用する鉄道車両の連結された対の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では以後、説明の目的で、空間的な向きを表す用語が使用されるとき、それらの用語は、添付図面に示される、または以下の詳細な説明で述べられる参照される実施形態に関する向きを表すものとする。しかし、本明細書で以下に述べる実施形態は、多くの代替変形形態および構成を取ることができることを理解されたい。また、添付図面に示される、または本明細書で述べられる特定の構成要素、デバイス、特徴、および操作順序は、単に例示であり、限定とみなされるべきでないことを理解されたい。
【0015】
本開示は、一般に、鉄道車両編成用のブレーキシステムを対象とし、特に、鉄道車両編成用の熱的に最適化されたブレーキシステムを対象とする。ブレーキシステムの好ましい非限定的な実施形態が、
図1Aおよび
図1Bに示されている。
【0016】
図1Aおよび
図1Bを参照して、鉄道車両編成ブレーキシステム10について詳述する。本明細書では以下、ブレーキシステム10のブレーキを適用する操作順序および方法を説明する。ブレーキシステム10は、鉄道車両編成の台車(図示せず)上に設けてもよい。
図1Aおよび
図1Bに示されるブレーキシステム10は、鉄道車両編成の1つの台車に適用されたブレーキシステム10を示す。同様のブレーキシステム10が、鉄道車両編成の別の台車と流体連絡して配置できることを理解されたい。この実施形態では、鉄道車両編成は2つの台車を含み、各台車が、
図1Aおよび
図1Bに示されるようにブレーキシステム10を含む。また、
図2に示されるように、複数の鉄道車両100、200を互いに結合または「連結」して、複数両編成の鉄道車両編成を形成することも企図される。この例では、各鉄道車両100、200に設けられる各台車が、
図1Aおよび
図1Bに示されるようにブレーキシステム10を含む。各ブレーキシステム10は、互いに流体連絡して、鉄道車両編成に沿って1つの一様なブレーキシステムを形成することもできる。
【0017】
再び
図1Aおよび
図1Bを参照すると、ブレーキシステム10は、第1の一体型電気中継弁(IERV)12Aと、第2のIERV12Bとを含む。IERV12A、12Bは、各鉄道車両100、200の各台車に対する空気圧を個別に制御する。各IERV12A、12Bは、マイクロプロセッサ14A、14Bを含み、マイクロプロセッサ14A、14Bは、キャブ搭載型マスタコントローラ(図示せず)または他の列車制御システムから、要求されるブレーキレベルに関するコマンドを受信する。一実施形態では、マイクロプロセッサ14A、14Bは、IERV12A、12B内の集積回路チップに含まれるコンピュータプロセッサである。IERV12A、12Bは、推進システムによって提供される電気制動を補完するために、電気信号を介して推進システム(図示せず)の電気ブレーキユニット16A、16Bと電気通信することがあり、電気信号は、電気ブレーキユニット16A、16Bによって制御される。鉄道車両100、200での全ての機器が動作している状態では、制動は、推進システムのモータ(図示せず)によって主に行われる。モータは、走行中の列車の運動エネルギーを電気に変換し、この電気は、一般的には、抵抗バンク(図示せず)で熱に変換される。IERV12A、12Bは、ブレーキシステム10内部にマイクロプロセッサ14A、14Bによって確立されたネットワークを介して互いにインターフェースで接続しまたは通信する。ネットワークを介して、IERV12A、12Bは、車両重量、動的ブレーキ力、および加えられる摩擦ブレーキ力などの情報を電気通信により共有することができる。
【0018】
さらに、IERV12A、12Bは、複数の摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dと流体連絡することができる。一実施形態では、2つの摩擦ブレーキユニット18A、18Bが第1のIERV12Aと流体連絡し、2つの摩擦ブレーキユニット18C、18Dが第2のIERV12Bと流体連絡する。一実施形態では、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dは、ディスクブレーキユニットとして設けられる。ディスクブレーキユニットは、鋼セグメント化ディスクブレーキユニットを含んでもよい。代替として、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dは、シンタード系パッドブレーキユニットとして提供してもよい。しかし、当業者には容易に明らかなように、さらなるタイプの摩擦ブレーキユニットを使用することもできることを理解されたい。摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dは、それらに加圧流体が送られるときに、鉄道車両100、200に摩擦制動力を加える。摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dは、IERV12A、12Bによって作動されるとき、鉄道車両100、200に減速力を加える。本開示の一実施形態では、鉄道車両100、200の各車軸に1つの摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが設置される。鉄道車両100、200の各車軸にただ1つの摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dを設けることによって、機器のコストを減少させることができ、鉄道車両100、200の重量を減少させることができ、必要なメンテナンスコストがより小さくなる。したがって、本開示の一実施形態では、各鉄道車両100、200に、2つのIERV12A、12Bと、4つの摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dとが設けられる。
【0019】
図2を参照すると、本開示の一実施形態では、複数の鉄道車両100、200が互いに結合または「連結」されて、鉄道車両編成を形成することができる。この実施形態では、各鉄道車両100、200が、
図1Aおよび
図1Bに示されるようにブレーキシステム10を含んでもよい。ブレーキシステム10は、IERV12A、12Bを介して互いに流体連絡することができ、あるいは互いに電気連絡することもできる。
【0020】
再び
図1Aおよび
図1Bを参照すると、ブレーキシステム10は、電気ブレーキユニット16A、16Bの1つの故障時に、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dによって鉄道車両100、200の台車に提供されるブレーキ力の一部が、別の鉄道車両100、200での他の完璧に動作している台車に伝達されるという制御方式を提供する。IERV12A、12Bを使用して、車両重量および摩擦ブレーキ力を連絡して分散し、故障した電気ブレーキユニット16A、16Bを含む台車に対する摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dの熱負荷を最小限にする。この制御方式の使用により、初期機器コストがより低くなり、全体的な機器重量がより低くなり、接続された鉄道車両100、200の機器摩耗がより均等になる。
【0021】
動作時、鉄道車両編成の台車において、例えば電気ブレーキユニットの1つ(16A)が故障することがあり、追加のブレーキ力を鉄道車両100に提供するために摩擦ブレーキユニット18A、18Bを使用しなければならない。これは、故障した台車の摩擦ブレーキユニット18A、18Bに追加の応力および摩擦を加えることができる。電気ブレーキユニット16Aが故障したとき、この故障に関する情報が、関連の故障した電気ブレーキユニット16AのIERV12Aのマイクロプロセッサ14Aに送信され、そのマイクロプロセッサ14Aによって解釈される。この情報を用いて、マイクロプロセッサ14Aは、他のIERV12Bのマイクロプロセッサ14Bに電気信号を送信する。したがって、他のIERV12Bは、鉄道車両100の他の台車上で電気ブレーキユニット16Aが適切に動作していないことを通知される。電気ブレーキユニット16Aが台車上で適切に動作していない場合、他のIERV12Bは、摩擦ブレーキユニット18C、18Dによって追加の摩擦ブレーキ力を加えて、鉄道車両100に加えられる電気ブレーキ力の失われた分を埋め合わせる。しかし、加えるべき追加のブレーキ力は、鋼ホイールと鋼レールの粘着限度に基づいて制限される。この限度は、一般的には約17%であるが、他の限度も考えられる。動作していない電気ブレーキユニット16Aを含む台車は、摩擦ブレーキユニット18A、18Bを適用し続けるが、他の摩擦ブレーキユニット18C、18Dによって加えられる追加の摩擦ブレーキ力により、電気ブレーキユニット16Aの損失を十分に埋め合わせるのに必要なレベルよりも低いレベルである。故障した台車のブレーキ力を分散させることによって、各摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dに加えられる圧力および摩擦はより小さくなる。これにより、車軸当たりただ1つの摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dを使用すればよく、これは、各車両に関するコストおよび重量を低減させる。したがって、鉄道車両編成の全ての台車に関する合計のブレーキ力は、列車運転士または列車制御システムによって要求されるブレーキレートに見合い、それにより鉄道車両編成を安全に減速または停止させるのに十分なものとなる。
【0022】
この制御方式によって、車軸当たり1つの摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが十分な熱容量を提供し、それにより摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが過熱するのを防止する。摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dで使用される鋼ディスクは、一般的には、従来の鉄ディスクよりも高温で動作することができる。鉄道車両100に摩擦制動作用を提供するために、とりわけ鋼または鉄ディスクを台車上で使用することができる。さらに、許容できる動作をより高い予想温度で行うために、とりわけシンタード系ブレーキパッドまたは従来のオーガニック系ブレーキパッドを設けてもよい。一般的には、シンタード系パッドは、従来組成のブレーキパッドよりも高温で動作させることができる。
【0023】
本開示の一実施形態では、複数の追加の特徴がブレーキシステム10に提供される。ブレーキパイプ20および主リザーバパイプ22が、鉄道車両100、200と流体連絡して設けられる。ブレーキパイプ20および主リザーバパイプ22は、ブレーキシステム10、特にIERV12A、12Bに加圧流体を提供して、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dを作動させる。鉄道車両100、200用の警笛制御器24が、主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。緊急プッシュボタン26が、ブレーキパイプ20と流体連絡することができる。緊急プッシュボタン26は、緊急状況の際に緊急ブレーキ(図示せず)をかけるために、ブレーキパイプ22から加圧流体を抜くように鉄道車両編成の運転士が作動させることができる。第1の気圧計28が、主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。第2の気圧計30が、IERV12Aと摩擦ブレーキユニット18Aとの間に位置するパイプ32と流体連絡することができる。気圧計28、30を使用して、それぞれ主リザーバパイプ22および摩擦ブレーキユニット18Aを通して供給される空気の圧力を監視することができる。
【0024】
第1の供給リザーバ34が、IERV12Aと流体連絡して、必要時に追加の加圧流体をIERV12Aに供給することができる。IERV12Aは、パイプ32、36を介して摩擦ブレーキユニット18A、18Bと流体連絡し、摩擦ブレーキユニット18A、18Bの間に位置することができる。また、IERV12Aは、パイプ38を介して主リザーバパイプ22とも流体連絡することができる。さらに、IERV12Aは、パイプ42、44を介して複数の空気ばね構成要素40とも流体連絡することができる。また、複数の空気ばね構成要素40は、パイプ46を介して主リザーバパイプ22とも流体連絡することができる。空気ばね構成要素40は、鉄道車両100、200のエアサスペンションに基づいて、鉄道車両編成の高さおよびレベルの読取値を運転士に提供する。この読取値によって、運転士は、必要であれば、各鉄道車両100、200に対する制動力の量を調節することができる。また、IERV12Aは、パイプ48を介してブレーキパイプ20とも流体連絡することができる。ブレーキシステム10の動作中、ブレーキパイプ20および/または主リザーバパイプ22からIERV12Aおよび12Bを通して摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dに加圧流体を供給することができる。
【0025】
摩擦ブレーキユニット18A、18Bは、パイプ50を介して互いに流体連絡することができ、あるいはパイプ54を介して駐車ブレーキ制御ユニット52と流体連絡することができる。駐車ブレーキ制御ユニット52は、パイプ56を介して主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。また、摩擦ブレーキユニット18A、18Bは、パイプ58、60を介して摩擦ブレーキユニット18C、18Dとも流体連絡することができる。摩擦ブレーキユニット18C、18Dは、パイプ60を介して互いに流体連絡することができる。
【0026】
ブレーキパイプユニット62は、それぞれパイプ64および66を介してブレーキパイプ20および主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。ブレーキパイプユニット62を使用して、主リザーバパイプ22からブレーキパイプ20に、またはブレーキパイプ20から大気に加圧流体を送ることができる。主リザーバ68は、パイプ70を介して主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。主リザーバ68は、ブレーキパイプ20からの加圧流体で満たすことができ、追加の制動力が必要とされるときに、この加圧流体を、IERV12A、12Bを通して摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dに供給することができる。また、主リザーバ68は、パイプ74を介して空気圧縮機ユニット72とも流体連絡することができる。空気圧縮機ユニット72は、大気から空気を取り込み、空気を圧縮して、ブレーキシステム10に追加の加圧流体を提供することができる。
【0027】
IERV12Bは、それぞれパイプ76および78を介してブレーキパイプ20および主リザーバパイプ22と流体連絡することができる。複数の空気ばね構成要素80が、パイプ82および84を介してIERV12Bと流体連絡することができる。また、複数の空気ばね構成要素80は、パイプ86を介して主リザーバパイプ22とも流体連絡することができる。供給リザーバ88は、パイプ90を介してIERV12Bと流体連絡して、IERV12Bに追加の加圧流体を提供することができる。また、供給リザーバ88は、パイプ92を介して主リザーバパイプ22とも流体連絡することができる。IERV12Bは、パイプ94および96を介して摩擦ブレーキユニット18C、18Dと流体連絡することができる。動作時、IERV12Bは、ブレーキパイプ20および/または主リザーバパイプ22から摩擦ブレーキユニット18C、18Dに加圧流体を供給する。
【0028】
図1Aおよび
図1Bを参照して、鉄道車両100にブレーキを適用する方法を詳述する。この方法と共に使用するために、本明細書で上述したブレーキシステム10が、鉄道車両100に位置する。動作中、例えば、電気ブレーキユニットの1つ(16A)が動作不良を生じ、それにより鉄道車両100の全体的な制動力を低下させることができる。この状況で、電気ブレーキユニット16Aからブレーキシステム10のIERV12Aのマイクロプロセッサ14Aに電気信号が送信される。この信号は、電気ブレーキユニット16Aが故障しており、制動力の低下を補償するためにブレーキシステム10の摩擦ブレーキユニット18A、18Bが適用されていることをマイクロプロセッサ14Aに通知する。次いで、マイクロプロセッサ14Aは、他のIERV12Bのマイクロプロセッサ14Bに電気信号を送信する。マイクロプロセッサ14Aからの信号は、電気ブレーキユニット16Aが故障しており、追加の摩擦制動力が必要とされることを他のマイクロプロセッサ14Bに通知する。それに応答して、動作中のIERV12Bのマイクロプロセッサ14Bは、追加の制動力のために摩擦制動を加えるように、摩擦ブレーキユニット18C、18Dに信号を送信する。このようにして、摩擦ブレーキユニット18C、18Dは、鉄道車両100に追加の制動力を供給することができ、それにより、他の摩擦ブレーキユニット18A、18Bに要求される摩擦制動力はより少量となる。一実施形態では、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが全て、均一であり均等な摩擦制動力を加えることができ、それにより、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dの1つのみが多量の摩擦制動力を供給する必要はない。この方法は、各摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが受ける応力および摩擦を減少させる助けとなる。各摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dの動作温度を低下させることもでき、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dの動作寿命をより長くできるようにする。
【0029】
また、この方法を複数の鉄道車両100、200にわたって使用して、さらなる摩擦制動ユニットに摩擦制動力を分散させることも企図される。この実施形態では、各鉄道車両100、200のIERV12A、12Bが互いに電気連絡している。1つの鉄道車両100、200の台車上で電気ブレーキユニット16A、16Bが故障したとき、他のIERV12A、12Bの少なくとも1つに信号が送信されて、追加の制動力を供給するために摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dが鉄道車両100、200に適用されるべきであるという通知を中継する。ここでも、摩擦ブレーキユニット18A、18B、18C、18Dはそれぞれ、鉄道車両編成を減速または停止させるために等しい量の摩擦制動力を加えることができる。
【0030】
熱的に最適化された鉄道車両編成ブレーキシステムの一実施形態を添付図面に示し、本明細書で詳細に上述したが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく他の実施形態が当業者には明らかであり、当業者によって容易に実現されよう。したがって、前述の説明は、限定ではなく、例示と意図されている。上述した発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に含まれる本発明に対する全ての変更が、特許請求の範囲の範囲内に包含されるものとする。