(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374983
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】プラスチック押出機のストランド切れの検出方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
B29B9/06
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-562055(P2016-562055)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2017-501065(P2017-501065A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2014095488
(87)【国際公開番号】WO2015101277
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年4月20日
(31)【優先権主張番号】201410003744.9
(32)【優先日】2014年1月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516198673
【氏名又は名称】天津金発新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100155848
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 東成
(72)【発明者】
【氏名】李 東
(72)【発明者】
【氏名】陳 智敏
(72)【発明者】
【氏名】張 景晰
(72)【発明者】
【氏名】斉 文良
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲イ▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 国雄
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−289092(JP,A)
【文献】
特開2003−141978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック押出機のストランド切れの検出方法であって、
検出用ストランドをプラスチック押出機の吐出口の真下に置くステップ(1)と、
一旦製造過程においてストランド切れが発生した場合、切れたストランドが前記検出用ストランドの上に落ち、前記切れたストランドの余熱が前記検出用ストランドをそのガラス転移温度にまで加熱することで、前記検出用ストランドが常温時のガラス状態からゴム状態に変化し、引き裂き或いは溶断するまでとするステップ(2)と、
前記検出用ストランドの切れを検出した後、警報を発報するステップ(3)と、
を含み、
前記検出用ストランドの材料は、前記プラスチック押出機で現在製造している製品の材料、又は前記プラスチック押出機から吐出して切れたストランドの余熱作用によって当該検出用ストランドが溶断若しくは引き裂かれる材料であることを特徴とするプラスチック押出機のストランド切れの検出方法。
【請求項2】
前記検出用ストランドは、ストランドサポート上に固定され、前記ストランドサポートの少なくとも一端がプレテンションを通じて押し付け又は緊張することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出方法。
【請求項3】
ストランドサポートの一端は、ロック機構で、他端が緊張機構とし、バネの一端が前記緊張機構の末端に固定され、他端が前記ストランドサポート上に固定され、通常検出時に伸びた状態にあることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出方法。
【請求項4】
前記ステップ(3)において、前記検出用ストランドの切れの有無を検出するステップは、前記ストランドサポートの側面に2個の接触検出器を設けており、通常検出時前記緊張機構の末端が前記接触検出器のいずれかと接触し、前記検出用ストランドが切れた後前記バネが元位置に復帰され、前記緊張機構は前記バネの弾性力が働く状態で同時に2個の前記接触検出器と接続することで、音と光の警報装置と接触回路を形成し、前記音と光の警報装置が音と光による警報を発すること特徴とする請求項1に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出方法。
【請求項5】
プラスチック押出機から吐出されたストランドに対して、ストランド切れが発生したことを検出する装置であって、
前記ストランドと、検出用ストランドと、ストランドサポートと、2個の接触検出器と、音と光の警報装置とを含み、
前記検出用ストランドの材料は、前記ストランドの材料、又はストランド切れが発生した場合に切れたストランドの余熱作用によって当該検出用ストランドが溶断若しくは引き裂かれる材料であり;
前記検出用ストランドは、前記プラスチック押出機の吐出口の真下であって、前記切れたストランドの余熱作用によって当該検出用ストランドが溶断又は引き裂かれるように前記ストランドと離間した位置に配置され;
前記ストランドサポートはロック機構と緊張機構とを含み、通常作業時前記検出用ストランドの両端が前記ロック機構及び前記緊張機構に各々固定され、前記緊張機構が前記検出用ストランドに対し上向き又は下向きのプレテンションを掛け、前記緊張機構の末端を前記2個の接触検出器のいずれかに接触させ;
前記ストランドが切れて前記検出用ストランド上に落ちた時、前記検出用ストランドが溶断又は引き裂かれ、前記緊張機構はプレテンションの作用で移動され、従って前記緊張機構が同時に前記2個の接触検出器と接触することで、前記音と光の警報装置と接触回路を形成することを特徴とするプラスチック押出機のストランド切れの検出装置。
【請求項6】
前記ストランドサポートは、水槽上端の両側に設けられ、前記検出用ストランドと水槽の水面と距離が5mm〜150mmとすることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出装置。
【請求項7】
前記距離は、10mm〜30mmとすることを特徴とする請求項6に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出装置。
【請求項8】
前記緊張機構の末端は、前記バネに固定され、前記バネの他端が前記ストランドサポートに固定され、通常検出時前記バネが伸びた状態にあることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック押出機のストランド切れの検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック押し出し造粒研究分野に関し、特に、プラスチック押出機のストランド切れの検出方法および検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック押し出し造粒・製造プロセスにおいて、原材料特性の不安定、材料の不均一な混合、工程変更等の要因影響によりストランド切れ等といった異常現象が多発している。製造プロセスにおいてストランド切れの異常現象が発生すると、オペレータが直ちに当該異常を発見して処理することができない場合、ストランド切れはヘッドの他のストランドにも影響を及ぼすため目やにが堆積してしまい、その製造進捗に影響を及ぼすだけでなく、原材料の無駄、労働力、物資及び製造コストも増加していた。
【0003】
ストランド切れが起きた時、直ちにストランド切れを検出すると共に直ちにオペレータに処理するよう通知できるように、現在すでに幾つかのストランド切れ警報装置の研究がなされている。これらの警報装置の検出方法はそれぞれ異なり、例えば赤外線検出、圧力センサー、導電棒による伝動方法があり、原理上、実現可能性があるが、上記方法はいずれもプラスチック押し出し造粒という工程が複雑で運転条件が悪い製造プロセスにとって余り適していないため、大幅な普及に至っていない。
【0004】
現在のプラスチック押し出し造粒のストランド切れ検出警報装置には、主に以下の3つの欠陥が存在する。(1)赤外線検出又は圧力センサーを問わず、抗干渉能力が悪く、システムに信頼性がなく、誤操作或いは検出手段の故障による誤報の状況が存在する。(2)赤外線検出、圧力センサー、導電棒はいずれも比較的精密な検出装置で、購入コストも高く、クリーニング時に損傷しやすいためプラスチック造粒製造時に実用的でない。(3)圧力センサーと導電棒は、いずれも接触式検出装置であり、プラスチックが検出装置に凝結することによる検出装置の損傷を招きやすく、繰り返し使用ができないため、結局使用におけるコストが増えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、従来技術に存在している欠陥と不足を克服し、材料取得が簡単で、コストが安く、実現が簡単で且つ監視効果も良好で、高い普及効果を見込めるプラスチック押出機のストランド切れ検出方法を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、構造が簡単で、配置も便利で、ストランド切れが発生した時に自動的に警報を発するため、監視効果が良好で、高い普及効果が見込まれ、前記プラスチック押出機のストランド切れ検出方法に基づく検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の技術方案であるプラスチック押出機のストランド切れの検出方法は、
現在プラスチック押出機が製造している製品の材料、又は製造している製品の溶融特性に似た検出用ストランドをプラスチック押出機の吐出口の真下に置くステップ(1)と、
一旦製造過程においてストランド切れが発生した場合、切れたストランドが前記検出用ストランドの上に落ち、切れたストランドの余熱が検出用ストランドをそのガラス転移温度にまで加熱することで、検出用ストランドが常温時のガラス状態からゴム状態に変化し、引き裂き或いは溶断するまでとするステップ(2)と、
検出用ストランドの切れを検出した後、警報を発報するステップ(3)と、
を含む。
【0008】
前記検出用ストランドは、ストランドサポート上に固定され、ストランドサポートの少なくとも一端がプレテンションを通じて押し付け又は緊張することで、検出用ストランドがゴム状態に変化した時に、容易に引き裂かれることがより一層好ましい。
【0009】
具体的にストランドサポートの一端は、ロック機構で、他端が緊張機構とし、バネの一端が緊張機構の末端に固定され、他端がストランドサポート上に固定され、通常検出時に伸びた状態にある。
【0010】
前記ステップ(3)において、検出用ストランドの切れの有無を検出するステップは、ストランドサポートの側面に2個の接触検出器を設けており、通常検出時緊張機構の末端が接触検出器のいずれかと接触し、検出用ストランドが切れた後バネが元位置に復帰され、緊張機構はバネの弾性力が働く状態で同時に2個の接触検出器と接続することで、音と光の警報装置と接触回路を形成し、音と光の警報装置が音と光による警報を発することが好ましい。
【0011】
プラスチック押出機のストランド切れ検出方法に基づく検出装置であって、検出用ストランドとストランドサポートと2個の接触検出器と音と光の警報装置とを含み、検出用ストランドの材料は現在プラスチック押出機で製造している製品の材料又は製造している製品の溶融特性に似た材料であり;ストランドサポートはロック機構と緊張機構とを含み、通常作業時検出用ストランドの両端がロック機構及び緊張機構に各々固定され、緊張機構が検出用ストランドに対し上向き又は下向きのプレテンションを掛け、検出用ストランドは押出機吐出口の真下に位置し、緊張機構の末端を接触検出器のいずれかに接触させ;切れたストランドがプラスチック押出機吐出口から検出用ストランド上に落ちた時、検出用ストランドが溶断又は引き裂かれ、緊張機構はプレテンションの作用で移動され、従って緊張機構が同時に2個の接触検出器と接触することで、音と光の警報装置と接触回路を形成する。よって、押し出し造粒のストランド切れが発生した時、自動的に音と声による警報を発することができる。
【0012】
ストランドサポートは、水槽上端の両側に設けられ、検出用ストランドと水槽の水面と距離が5mm〜150mmとする。検出用ストランドは溶断した後、直接水槽内に落ちるため、火傷等の危険を避け、装置の安全性を高めることが好適である。
【0013】
前記距離は、10mm〜30mmとすることがより好適である。
【0014】
緊張機構の末端は、バネに固定され、バネの他端がストランドサポートに固定され、通常検出時バネが伸びた状態にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、従来技術と比べ、次の利点と有益な効果を有する。
【0016】
1、本発明の装置構造は簡単で、配置も便利で、ストランド切れが発生した時自動的に警報を発報してオペレータに直ちに清掃を行うよう促すことができ、成形品収率及び製造効率を高めるだけでなく、検査監視の人件費を削減し、更に製品の品質を向上させ、損失や無駄を減少でき、高い普及効果が見込まれる。
【0017】
2、本発明方法の安定性は高く、検出用ストランドが切れたストランドの余熱により溶断された時に2個の接触検出器が導通されることで警報を発報することができるので、誤報の発生を避ける。
【0018】
3、本発明において、オペレータが操作時に容易に接触する検出用ストランド、ストランドサポートは、いずれも簡単に損傷することなく、実用性が高い。
【0019】
4、本発明において、検出用ストランドに採用した材料は、現在製造している製品とすることができ、よって製造時にストランドを切り取って材料にできるので、使用コストが低く、検出用ストランドの切れ又は製品に残留したとしても成形品への品質面に対するリスクをもたらすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の装置の構造を示す模式図である。図中、1は検出用ストランドであり、2はロック機構であり、3は緊張機構であり、4は接触検出器であり、5はバネであり、6は水槽である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例及び添付図面を組み合わせて本発明について更なる詳細説明を行うが、本発明の実施形態はこれに限られるものではない。
<実施例1>
本実施例のプラスチック押出機のストランド切れの検出方法及び検出装置は、プラスチック押し出し造粒工程中に応用されている補助検出方法及び検出装置である。装置の構造は具体的に
図1に示すように、検出用ストランド1とストランドサポートと2個の接触検出器4と音と光の警報装置とを含み、検出用ストランド1の材料は現在プラスチック押出機で製造している製品の材料又は製造している製品の溶融特性に似た材料であり;ストランドサポートはロック機構2と緊張機構3とを含み、検出開始時検出用ストランド1の両端がロック機構2及び緊張機構3に各々固定され、緊張機構3上にバネ5を設け、検出用ストランド1に対し上向き又は下向きのプレテンションを掛けるために用いられ、検出用ストランド1は押出機吐出口の真下に位置する。緊張機構3の末端を接触検出器のいずれかに接触させ;切れたストランドがプラスチック押出機吐出口から検出用ストランド1上に落ちた時、検出用ストランド1が溶断又は引き裂かれ、緊張機構3はプレテンションの作用で移動され、従って緊張機構3が同時に2個の接触検出器と接触することで、音と光の警報装置と接触回路を形成する。
【0022】
本実施例において、通常作業状態の下でバネは、伸びた状態にある。切れたストランドが押出機吐出口から検出用ストランド1に落ち、検出用ストランド1は溶断され、緊張機構3がバネの引張作用で下向きに運動してバネを元位置に復帰させる。
【0023】
本実施例において、ストランドサポートは、水槽6の上端に設けられ、ロック機構2、緊張機構3が各々水槽の両側に設けられ、検出用ストランド1と水槽6の水面との距離が30mmとする。実際の応用においてこの距離は水槽の大きさ、切れたストランドの温度等を総合的に考慮してもよい。
【0024】
本実施例において、検出用ストランドに採用する材料は、現在プラスチック押出機が製造している製品の材料とし、また現在製造している製品の溶融特性に似た材料でもよく、例えば、PP類製品、PS類製品等である。ここで述べる「溶融特性類似」とは、検出用ストランドが切れたストランドの余熱作用で溶断又は引き裂くことができることをいう。溶融特性が高すぎると検出用ストランドは溶断されることができないため、検出の目的を達成できない。また、溶融特性が低すぎると、切れたストランド以外の物質が検出用ストランドに接触した際に該検出装置も警報を発報することになる可能性がある。
【0025】
本実施例において、ロック機構は検出用ストランドの一端を固定するために用いられ、プレテンションはあってもなくてもよい。プレテンションがない機構を用いた場合、一般のボルトや合板等の装置をロック機構として使ってもよい。プレテンションがある機構を用いた場合、前記装置をベースに、伸びた又は圧縮したバネを追加し、これにより検出用ストランドがゴム状態にある時より引き裂かれやすくなる。同様に、オペレータもバネ付きカム構造を用い、ストランドの軌道半径の変更を通じて緊張を実現できる。
【0026】
同様に、本実施例における緊張機構は、検出用ストランドの一端を固定しながら検出用ストランドに上向き又は下向きのプレテンションを掛け、つまり緊張するために用いられる。従来技術内の様々な既存緊張機構を用いることができ、例えばバネ付きカム構造を用い、ストランドの軌道半径の変更を通じて緊張を実現することができる。
【0027】
本実施例の方法は、押出機でストランドを押し出して造粒する前に、検出用ストランドを、ロック機構及び緊張機構によってストランドサポートに固定し、押出機ヘッド下方に横に配置し、押し出し造粒製造にストランド切れが発生した時、切れたストランドがまず横に配置した検出用ストランド上に落下し、温度がガラス転移温度以上まで上昇するまで検出用ストランドが絶え間なく切れたストランドから吸熱し、検出用ストランドの分子形態もガラス状態からゴム状態に変化する。この過程において、検出用ストランドの断面上に耐えられる張力が益々小さくなり、水槽一側のバネと連接する緊張機構で引き裂かれるまでとし、このようにバネを元位置に復帰させることで、緊張機構とストランドサポート側壁に取り付けられた2個の接触検出器との間で接触回路を形成させ、音と光の警報装置もこの回路内にあるため、音と声による警報を発報する。
【0028】
実際の応用において、音と光による警報を発報しながらエアカッターを制御して自動的にストランドをカットすることもできる。また目やにが堆積して製造過程の中断を防止するため、オペレータが音と光による警報を発見した後に直ちにストランド切れの異常現象を処理することもよい。オペレータが異常現象の処理を終えた後、ロック機構と緊張機構を通じて再度新しい検出用ストランドをストランドサポートに固定することで、次の検出へ進むことができる。
【0029】
以上に説明する実施例は、本発明を実施するにあたって好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の精神と原理を逸脱せずに行った変更、修飾、代替、組み合わせ、簡素化、置換は本発明の保護範囲に含まれる含めるものであるのが勿論である。