(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接触工程(b1)が、120℃の温度および60トール(8kPa)の2,2−ジメチルブタンの圧力で測定されたときに2,2−ジメチルブタンについての約0.1〜15秒−1の拡散パラメーターを有する多孔性結晶質物質を含む触媒の存在下に実施される、請求項1に記載の方法。
(h1)前記少なくとも1つのパラキシレンに乏しい流の少なくとも一部を、前記パラキシレンに乏しい流中のキシレンを異性化しかつエチルベンゼンを脱アルキル化しまたは異性化して異性化されたかつエチルベンゼンに乏しい流を製造するのに有効な気相条件の下でキシレン異性化触媒と接触させる工程、および
(i1)前記異性化されたかつエチルベンゼンに乏しい流の少なくとも一部を(c1)にリサイクルする工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記気相条件が、前記パラキシレンに乏しい流中のエチルベンゼンを脱アルキル化して副生成トルエン流を製造するのに有効であり、前記副生成トルエン流を接触工程(b1)に供給することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、改質油または同様の芳香族留分からパラキシレンを、任意的にベンゼンおよび/またはオルトキシレンとともに製造する方法および装置を説明する。本発明のプロセスでは、メチル化装置がパラキシレン製造装置複合体に加えられて、改質油留分中のトルエンおよび/またはベンゼンが追加のキシレンに転化される。このメチル化装置は、追加されるエチルベンゼンをほとんどまたは全く含まないでパラキシレンに富むC
8芳香族製品を製造することができるので、キシレン分離部門の生産および操業コストは低減されることができ、また、比較的高価でない液相プロセスがキシレン異性化部門に使用されることができる。必要ならば、キシレン製造ループ中へのエチルベンゼンの蓄積は、気相異性化装置の追加によっておよび/もしくはパラキシレンに乏しい流の一部をトランスアルキル化装置に供給することによって、ならびに/または従来の技術、たとえば蒸留法、膜分離法もしくは選択的吸着法もしくはこれらの組み合わせによって避けられることができる。
【0013】
メチル基をフェニル環に付加するための当該技術分野で知られた任意の方法が、本発明のプロセスのメチル化工程で使用されることができる。しかし、ある好ましい実施形態では、このメチル化工程は、高度にパラ選択性のメチル化触媒、たとえば米国特許第6,423,879号および第6,504,072号で用いられたものを用いるものであり、これらの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。このような触媒は、120℃の温度および60トール(8kPa)の2,2−ジメチルブタンの圧力で測定されたときに、2,2−ジメチルブタンについての約0.1〜15秒
−1、たとえば0.5〜10秒
−1の拡散パラメーターを有するモレキュラーシーブを含む。本明細書で使用される特定の多孔性結晶質物質の拡散パラメーターは、D/r
2x10
6と定義され、この式でDは拡散係数(cm
2/秒)であり、rは結晶半径(cm)である。要求される拡散パラメーターは、平面シートモデルが拡散過程を説明するという仮定がされるならば、収着量の測定値から誘導されることができる。したがって、所与の収着質充填量Qに対して、値Q/Q
∞(Q
∞は平衡収着充填量である。)は、(Dt/r
2)
1/2と数学的に関連し、この式でtは収着質充填量Qに達するのに必要な時間(秒)である。平面シートモデルの図解法が、J.Crankによって「The Mathematics of Diffusion」、Oxford University Press、Ely House社刊、ロンドン、1967年に示されており、この全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0014】
パラ選択性メチル化プロセスで使用されるモレキュラーシーブは通常、中孔径サイズのアルミノケイ酸塩ゼオライトである。中孔径ゼオライトは一般に、該ゼオライトがn−ヘキサン、3−メチルペンタン、ベンゼンおよびp−キシレンのような分子を支障なく吸着するような約5〜約7オングストロームの孔サイズを有するものと定義される。中孔径ゼオライトの別の一般的な定義は拘束指数によるものであり、これは米国特許第4,016,218号に記載されており、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。この場合、中孔径ゼオライトは、酸化物変性剤の導入なしにかつ該触媒の拡散性を調節するための何らかのスチーミングの前にゼオライト単独で測定されて約1〜12の拘束指数を有する。好適な中孔径ゼオライトの特定の例は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48およびMCM−22を含み、ZSM−5およびZSM−11が特に好ましい。
【0015】
上に記載された中孔径ゼオライトは、本発明のメチル化プロセスに特に有効である。というのは、これらの空孔のサイズおよび形状が、p−キシレン以外のキシレン異性体よりもp−キシレンの製造に有利に働くからである。標準的な形態のこれらのゼオライトは、上で言及された0.1〜15秒
−1の範囲を超える拡散パラメータ値を有する。しかし、該触媒に要求される拡散性は、スチーミングされていない触媒の細孔容積の50%以上までの、好ましくは50〜90%までの該触媒の細孔容積の調節された減少を達成するように、該触媒を厳しくスチーミングすることによって達成されることができる。細孔容積の減少は、スチーミング前後のその触媒のn−ヘキサン吸着容量を、90℃および75トール(10kPa)のn−ヘキサン圧力で測定することによって導かれる。
【0016】
ゼオライトのスチーミングは、少なくとも約950℃、好ましくは約950〜約1075℃、最も好ましくは約1000〜約1050℃の温度で約10分間〜約10時間、好ましくは30分間〜5時間で達成される。
【0017】
拡散性および細孔容積の所望の調節された減少を達成するために、スチーミング前にゼオライトを少なくとも1種の酸化物変性剤、たとえば周期表の第2〜4族および13〜16族の元素から選ばれた少なくとも1種の酸化物と一緒にすることが望ましいことがある。最も好ましくは、当該少なくとも1種の酸化物変性剤は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、ランタンおよび最も好ましくはリンの各酸化物から選ばれる。いくつかの場合には、ゼオライトは1種を超える酸化物変性剤と、たとえばリンとカルシウムおよび/またはマグネシウムとの組み合わせと一緒にされてもよい。というのは、目標とする拡散性の数値を達成するのに必要とされるスチーミングの過酷度を低下させることが可能になることがあるからである。いくつかの実施形態では、触媒中に存在する酸化物変性剤の元素基準で測定された合計量は、最終触媒の重量基準で約0.05〜約20重量%、好ましくは約0.1〜約10重量%である。
【0018】
変性剤がリンを含む場合、触媒中への変性剤の導入は、米国特許第4,356,338号、第5,110,776号、第5,231,064号および第5,348,643号に記載された方法によって好都合に達成され、これらの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。リン含有化合物による処理は、ゼオライトを単独であるいはバインダーもしくはマトリクス材料と一緒に適当なリン化合物の溶液に接触させ、引き続いて乾燥および焼成をしてリンをその酸化物形態に変換することによって、容易に達成されることができる。リン含有化合物との接触は一般に、約25℃〜約125℃の温度で約15分間〜約20時間行なわれる。接触混合物中のリンの濃度は、約0.01〜約30重量%であることができる。好適なリン化合物は、ホスホン酸、亜ホスフィン酸、亜リン酸およびリン酸、このような酸の塩およびエステル、ならびに三ハロゲン化リンを含むが、これらに限定されない。
【0019】
リン含有化合物と接触した後、多孔性結晶質物質は乾燥されそして焼成されて、リンが酸化物形態に変換されることができる。焼成は、不活性雰囲気中でまたは酸素が存在する状態で、たとえば空気中で約150〜750℃、好ましくは300〜500℃の温度で少なくとも1時間、好ましくは3〜5時間実施されることができる。当該技術分野で知られた同様の手法が、他の変性剤酸化物をこのアルキル化プロセスで用いられる触媒中に導入するために使用されることもできる。
【0020】
ゼオライトおよび変性剤酸化物に加えて、メチル化プロセスで用いられる触媒は、このプロセスで用いられる温度および他の条件に耐性を有する1種以上のバインダーまたはマトリクス材料を含んでいてもよい。このような材料は、活性または不活性の材料、たとえばクレー、シリカおよび/または金属酸化物、例としてアルミナを含む。後者の不活性の材料は、天然に存在するものまたはゼラチン状の沈殿もしくはゲルの形態をしているもの、たとえばシリカと金属酸化物との混合物を含むことができる。活性である材料の使用は、触媒の転化率および/または選択率を変えてしまう傾向があり、したがって一般的に好ましくない。不活性の材料は、反応速度を調節するための他の手段を用いずに製品が経済的かつ計画どおりに得られることができるように、所与のプロセスにおける転化率の程度を調節する希釈剤としての役割を適切に果たす。これらの材料は、天然に存在するクレー、たとえばベントナイトおよびカオリン中に導入されて、商業的操業条件の下での触媒の破砕強度を改善する。当該材料、すなわちクレー、酸化物等は、触媒用バインダーとしての機能を果たす。良好な破砕強度を有する触媒を準備することが望ましい。何故ならば、商業的使用において、触媒が粉体状の材料に崩壊するのを防ぐことが望ましいからである。これらのクレーおよび/または酸化物バインダーは通常、触媒の破砕強度を改善する目的のためにのみ用いられている。
【0021】
天然に存在するクレーは、多孔性結晶質材料と複合化されることができ、モンモリロナイトおよびカオリンのファミリーを含み、これらのファミリーはサブベントナイト、ならびにディキシー、マクナミー(McNamee)、ジョージアおよびフロリダクレーとして一般に知られているカオリン、または主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライトもしくはアナウキサイトである他のものを含む。このようなクレーは、元々採掘されたままの、または最初に焼成、酸処理もしくは化学変性に付されたままの未加工の状態で使用されることができる。
【0022】
上記の材料に加えて、多孔性結晶質材料は、多孔性マトリクス材料、たとえばシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカジルコニア、シリカトリア、シリカベリリア、シリカチタニア、またこれらと同様に三元組成物、たとえばシリカアルミナトリア、シリカアルミナジルコニア、シリカアルミナマグネシアまたはシリカマグネシアジルコニアと複合化されることができる。
【0023】
多孔性結晶質材料と無機酸化物マトリックスとの相対的割合は広く様々であり、前者の含有量が複合物の約1〜約90重量%の範囲であり、より一般的には、特に複合物がビーズの形態で調製される場合は、約20〜約80重量%の範囲である。好ましくは、マトリクス材料はシリカまたはカオリンクレーを含む。
【0024】
本発明のプロセスで使用されるメチル化触媒は、任意的に前コーク処理されてもよい。前コーク処理工程は、最初にメチル化反応器に未コーク処理触媒を充填することによって実施されることができる。次に、反応が進むとともにコークが触媒表面に堆積し、その後は高められた温度で酸素含有雰囲気に曝露することによる周期的な再生によって、堆積量が所望の範囲内に、典型的には約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約5重量%に調節されることができる。
【0025】
本発明のプロセスによるトルエンのメチル化は、任意の公知のメチル化剤を用いて達成されることができるが、好ましいメチル化剤はメタノールおよび/または一酸化炭素と水素との混合物を含む。
【0026】
メチル化反応に好適な条件は、350〜700℃、たとえば500〜600℃の温度、100〜7000kPa絶対圧の圧力、0.5〜1000時
−1の単位時間当たりの重量空間速度、および少なくとも約0.2、たとえば約0.2〜約20の(反応器への供給物中の)トルエンとメタノールとのモル比を含む。このプロセスは、固定床、移動床または流動床の触媒床中で好適に行なわれることができる。コーク堆積量の程度を連続的に調節することが望まれる場合、移動床または流動床の配置が好ましい。移動床または流動床の配置では、コーク堆積量の程度は、触媒再生塔における連続的酸化再生操作の過酷度および頻度を変えることによって調節されることができる。トルエンをメチル化する好適な流動床プロセスの1つの例は、トルエン供給場所の下流の1箇所以上の場所からのメチル化剤の段階的な注入を含む。かかるプロセスは米国特許第6,642,426号に記載され、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明のプロセスを使用して、トルエンは、(合計C
8芳香族製品基準で)少なくとも約75重量%の選択率、少なくとも約15重量%の1パス当たり芳香族転化率および1重量%未満のトリメチルベンゼン生成量でパラキシレンを製造するように、メタノールでアルキル化されることができる。未反応のトルエンおよびメチル化剤、および副生成水の一部は、メチル化反応器にリサイクルされることができ、重質副生成物は燃料分処理先に送られる。C
8留分はパラキシレン分離部門に送られ、この部門は典型的には分別結晶法または選択吸着法もしくはその両方によって操業され、パラキシレン製品流がアルキル化流出物から回収され、主としてC
7およびC
8炭化水素を含有する、パラキシレンに乏しい流が残される。トルエンメチル化装置は、改質油C
8留分のパラキシレン含有量を高めるので、パラキシレン分離部門の規模が縮小されることができる。パラキシレン分離部門は、資本コストおよび操業経費の両方の観点から芳香族装置複合体の中で最も費用のかかるプロセスの1つであるので、このことは重要な利点である。
【0028】
パラキシレン分離部門においてパラキシレンが回収された後、残ったパラキシレンに乏しい流は異性化されて平衡にまで戻され、その後パラキシレン分離部門にリサイクルされる。本発明のプロセスでは、パラキシレンに乏しい流の異性化は、液相異性化装置単独で、あるいは気相異性化装置が液相異性化装置と並列に接続されて両装置が同時にまたは交互に操業されるように実施される。
【0029】
当業者に知られた任意の液相接触異性化プロセスが、この液相キシレン異性化装置に使用されることができるが、1つの好ましい接触装置は、米国特許出願公開第2011/0263918号および第2011/0319688号に記載され、これらのそれぞれの全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明で使用される液相異性化プロセスに適した条件は、パラキシレンに乏しい流を実質的に液相に維持するために選ばれた、約230℃〜約300℃の温度および約1300〜約3500kPaの圧力を含む。いくつかの実施形態では、単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)は約0.5〜約10時
−1であることができる。
【0030】
気相異性化装置が存在する場合にはそれもまた、任意の公知の異性化触媒系を使用することができるが、好ましくは、パラキシレンに乏しい流中のエチルベンゼンの一部または全てを変換するとともにキシレンを平衡濃度に戻すのに有効な触媒系を用いる。エチルベンゼンの除去は、ベンゼンへの脱アルキル化によって、あるいはキシレンへの異性化によって達成されることができる。1つの好ましい気相異性化プロセスは、米国特許第5,516,956号に記載され、この全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。気相異性化プロセスに適した条件は、約660°F〜約900°F(350℃〜480℃)の温度、約50〜約400psig(446〜2860kPa)の圧力、約3〜約50時
−1のWHSV、および約0.7〜約5の水素と炭化水素とのモル比を含む。
【0031】
本発明のプロセスは、改質油供給原料中のC
9芳香族、C
10芳香族およびいくらかのC
11芳香族を、直接に、あるいは本発明のプロセスの他の部分から転送されたベンゼンまたはトルエンとの反応によって平衡キシレンに転化するトランスアルキル化装置も使用する。トランスアルキル化流出物中のキシレンは次にパラキシレンを回収するためにパラキシレン分離部門に供給されることができ、他方、トランスアルキル化プロセスで製造されたあり得るベンゼンまたはトルエンは付加的なキシレンへとさらにアップグレードするためにトルエンメチル化装置に好都合に供給される。本発明のプロセスには任意の液相または気相異性化装置が使用されることができるが、1つの好ましい装置は米国特許第7,663,010号に記載された多段接触装置を使用するものであり、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。トランスアルキル化装置は、米国特許出願公開第2012/0149958号に記載されたようにキシレンおよびC
9+芳香族供給原料を使用してベンゼンおよびトルエンを生成するために使用されることができ、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。このベンゼンおよび/またはトルエンはトルエンメチル化装置への供給原料として使用されて、パラキシレン回収段階へのより高いパラキシレン純度の供給原料が製造されることができる。さらに、オフサイトベンゼンの一部もしくは全てまたは輸入ベンゼン供給原料が、C
9+芳香族供給原料とトランスアルキル化されてトルエンおよび/またはベンゼンが生成されることができる。最後にC
9+芳香族分子が、プロピルベンゼンおよびメチルエチルベンゼンから成る高濃度C
9流に分留されることができ、これはベンゼンとトランスアルキル化されてトルエンおよびエチルベンゼンが製造される。このトルエンおよびエチルベンゼンは、次にトルエンメチル化装置で処理されてパラキシレンおよび軽質オレフィンが生成されて回収されることができる。改質部門および/またはトランスアルキル化部門によって製造されたトルエンに加えて、輸入トルエンも、増加分のパラキシレンの生産のためにトルエンメチル化装置に供給されることができる。かかる輸入トルエンは好ましくは酸素がストリッピングによって除去され、かかる輸入トルエン貯蔵用タンクは好ましくは窒素雰囲気にされる。本発明はこれから、添付された図面を参照してしてより詳細に記載される。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態によってパラキシレンを製造するプロセスを示し、ナフサ供給原料がライン11によって接触改質装置(たとえば、半再生式改質装置、サイクル式改質装置または連続式接触改質装置)12に供給される。接触改質装置12からの留出物は、脂肪族および芳香族炭化水素の複雑な混合物であり、デペンタナイザー(図示されていない。)でC
5−留分が除かれた後、残りのC
6+留分はライン13によって改質油スプリッター15に供給される。水素もまた接触改質装置12で生成され、下記の気相異性化部門で、または製油所の様々な装置で、またはシクロヘキサン装置で、または芳香族装置複合体が製油所の隣に設置されていない場合は何らかの他の石油化学プロセスで使用されるためにライン14を経由して取り出される。あるいは、水素は輸出用に販売され、または燃料に使用され、またはフレアとして燃やされることができる。。
【0033】
改質油スプリッター15は、任意的に分割壁蒸留塔であることができ、これはライン13のC
6+留分を、1つの実施形態では、C
6−含有塔頂流、C
7−含有中間流およびC
8+含有塔底流へと分離する。改質油スプリッター塔頂分はまた、ライン13中に存在するトルエンおよび/またはC
8芳香族の一部または全て、ならびにこれらとともにこれらの非芳香族同沸点成分を、特定の経済的目的に応じて含むこともある。別の実施形態(図示されていない。)では、改質油スプリッター15は、ライン13のC
6+留分をC
7−含有塔頂流およびC
8+含有塔底流へと分離し、中間流の回収が省略される。この場合でも、C
7−含有塔頂流はまた、ライン13中に存在するC
8芳香族の一部または全て、ならびにこれらとともにこれらの非芳香族同沸点成分を、特定の経済的目的に応じて含むこともある。
【0034】
図1に戻ると、改質油スプリッター15からのC
6−含有塔頂流は、または代わりの実施形態ではC
7−含有塔頂流は、ライン16を経由して抽出部門17に送られ、この抽出部門17は液液抽出プロセス、抽出蒸留タイプのプロセスまたはこれらの混成であることができる。非芳香族抽出残分(ラフィネート)はライン18を経由して抽出部門17から取り出され、オレフィンオリゴマー化もしくは改質油アルキル化装置で、またはスチームクラッカーへのもしくは製油所ガソリンプールへの供給原料として、または燃料として使用されることができる。ラフィネートはまた、芳香族化装置への供給原料として使用されて、水素を生成しながら追加の芳香族分子を製造することができる。抽出部門17からの芳香族製品はライン19を経由して取り出され、ベンゼン蒸留塔21に供給され、任意的にその前にクレーまたはモレキュラーシーブ触媒で前処理されて微量のオレフィンまたは他の低レベルの不純物が除かれる。同伴された水はベンゼン蒸留塔21で芳香族抽出製品から除かれ、ベンゼン製品がベンゼン蒸留塔21から、典型的にはベンゼン蒸留塔21からの側流としてライン22を経由して集められる。ベンゼン蒸留塔底製品はトルエンに富んでおり、もっともいくらかの微量のキシレンおよび重質アルキル芳香族も含むけれども、ライン23を経由してトルエンメチル化部門31に送られる。ライン22のベンゼンは、販売または水素化されてシクロヘキサンを製造するために回収されることができるか、あるいは付加的なキシレン生産のためにトルエンメチル化部門31に供給されることができる。
【0035】
トルエンメチル化部門31はまた、改質油スプリッター15からのC
7−含有中間流を、メチル化剤、典型的にはメタノール(
図1に示されていない。)またはジメチルエーテルの供給とともにライン32を経由して受け取る。ライン16(改質油スプリッター15からのC
6−含有塔頂流)とライン32(改質油スプリッター15からのC
7−含有中間流)との間の振り分けが、トルエンメチル化部門31に送り込まれる非芳香族分のレベルを有効に調節するために使用されることができることに留意しなければならない。というのは、改質油スプリッター15を出てライン16を経由して抽出部門17に行く非芳香族分は、ライン18を経由して除かれるからである。したがって、ライン16を通る流れを増やすと、トルエンメチル化部門31への供給原料中の全非芳香族分含有量を減少させることになる。
【0036】
トルエンメチル化部門31では、ライン23とライン32とからのトルエンは、任意的に蒸留塔21からのライン22のベンゼンと一緒に、メタノールと反応させられてキシレンおよび水が製造される。いくつかの例では、C
8芳香族もまた、トルエンメチル化部門31にライン23およびライン32を経由して供給されて、トルエンメチル化部門31でベンゼンへのエチルベンゼンの脱アルキル化が実施され、当該部門31でその後にベンゼンがメチル化されてトルエンまたはキシレンにされることが可能となる。
【0037】
トルエンは、トルエンメチル化部門31に入れられる前に、トルエン炉および/または熱交換装置(図示されていない。)を通されてトルエンが蒸発されメチル化反応を維持するのに必要な温度にまで加熱されてもよく、その温度はメチル化プロセスに使用される(1種または複数の)触媒の種類に依存する。触媒の中にはトルエンが予め400℃に加熱されることが必要とするものがあり、またトルエンが予め600℃に加熱されることが必要とするものもある。トルエンは、プロセス熱交換器装置および/または炉の中でそのプロセスで利用可能な熱源に応じて、これらの温度に加熱されることができる。高温に加熱される、たとえば炉の中で加熱されるトルエンは、そのトルエンをコークまたは重質炭化水素へと分解する温度に達することがあり、該コークまたは重質炭化水素は伝熱率に影響を及ぼすことがある。この分解速度は、伝熱装置の上流でトルエンとともに希釈剤、たとえば窒素、水素、燃料ガス、スチームまたはこれらの組み合わせを一緒に供給することによって低減されることができる。これらの希釈剤とトルエンとのモル比は0.01から10超まで様々であることができる。トルエンの分解はまた、当業者であれば理解できるように、対流区画あるいは放射区画の金属管についての適正な金属管材料を使用して対処されることができる。その例としては、炭素鋼、ステンレス鋼、チタンまたは他の合金が挙げられる。特別のコーティング物および施与物が、トルエンの分解の影響を最小限にし、またコーキングを最小限にするために使用されてもよい。さらに、添加物がトルエンのコーキングを最小限にするために使用されてもよい。
【0038】
メチル化反応の効率は、メチル化剤、典型的にはメタノールが反応器内に幅広く広範囲に分配されると改善される。メチル化剤は、固定床または流動床反応器中に多くの異なる方法で、たとえば単一の注入点を経由して、いくつかの注入点を経由して、またはスーパージャー配列を経由してさえも導入されることができる。メチル化剤は、反応器容器と同一面上のノズルを通してあるいは反応器内分配ネットワークを通して反応器中に分散されることができる。反応器と同一面上のノズルの数は1個、いくつかまたは多数であることができる。あるいはメチル化剤は、固定床または流動床中に反応器内分配器を通して導入されることができる。反応器内分配器は、単一の注入点、いくつかの注入点または多くの注入点であってもよい。いくつかのまたは多くの注入点の場合には、分配器は、1個以上の共通ヘッダーから分岐する動脈を含むことができ、また付加的な副動脈が各動脈から分岐して動脈のネットワークを形成してもよい。動脈は、均一の直径を有するように、共通ヘッダーと同じもしくは異なる直径を有するように、または様々な直径および異なる長さに先細りになるように設計されてもよい。各共通ヘッダーまたは動脈に沿って、メチル化剤を導入する1個またはいくつかまたは多くのノズルがあることができる。これらのノズルのサイズおよび長さは、反応器中へのメチル化剤の必要な分配に応じて同様なものまたは異なるものであってよい。反応器内分配器、動脈およびノズルは、流動床または固定床反応器で使用される場合、断熱保温される。断熱保温するかしないかの決定は、金属管材料の要件を変えることがあり、この金属管材料は炭素鋼からステンレス鋼またはチタンまたは一般に使用される他の種類の合金までの範囲であることができる。メチル化流体のバルク温度および分配ネットワークの内側の表面温度は、メチル化剤の分解温度より低いことが好ましく、それは当業者に知られている。メチル化剤の分解速度は、希釈剤、たとえば窒素、水素、燃料ガス、スチームまたはこれらの組み合わせを一緒に供給することによって低減されることができる。これらの希釈剤とメチル化剤とのモル比は、0.01から10超まで様々であることができる。メチル化剤のための好ましい分配装置はフラクタル分配器であり、これは反応ゾーン全体の半径方向および軸方向の両方に配置された1桁大きい数の動脈およびノズルを含む。フラクタル分配装置は、反応器の内側の軸方向に同じまたは異なる速度でメチル化剤を導入するように設計されることができる。軸方向の分配はまた、通常の技術手段、すなわちバルブ、ポンプ、制限オリフィス等によってメチル化剤の流量が反応器の外部から制御される2個以上のフラクタル分配器を有することによって調節されることもできる。
【0039】
トルエンメチル化部門31からのプロセスオフガスは、ライン33によって集められ、オレフィンオリゴマー化装置もしくは改質油アルキル化装置で使用されることができ、またはオレフィン回収のためにスチームクラッカーもしくは製油所に送られることができ、または燃料ガスとして使用されることができる。トルエンメチル化部門31からの製品の残りは、ライン34を経由してキシレン蒸留塔35に供給され、キシレン蒸留塔35はメチル化製品をパラキシレンに富むC
8芳香族塔頂流およびC
9+塔底流に分離する。C
9芳香族の量は少ないので、該蒸留塔の塔底回路、すなわちリボイラー回路内のC
9芳香族の滞留時間は非常に長くなることがある。これらのC
9芳香族は高い温度および長い時間に曝露されるとその後重合しまたは縮合して高級炭化水素成分になることがあり、これは塔底回路または熱交換装置を汚染することがある。添加物が使用されて重質分の重合または縮合の速度を制御することができる。あるいはC
9芳香族の別の源が蒸留塔に添加されて、トルエンメチル化プロセスからのC
9芳香族を希釈することができる。C
9芳香族のこの追加源は、連続的に、バッチ方式でまたは半バッチ方式で導入され、装置からトルエンメチル化C
9芳香族とともに連続的に、バッチ方式でまたは半バッチ方式でパージされることができる。C
9芳香族のこの追加源は、蒸留塔の任意の位置で蒸留塔に導入されることができ、その位置は当業者であれば決定することができる。
【0040】
キシレン蒸留塔35の前に、トルエンメチル化部門31からの製品流はトルエン蒸留塔(図示されていない。)を通して供給されて、キシレンおよび重質成分から未転化のトルエンが回収されてもよい。新鮮なトルエンもまた、トルエン蒸留塔を通して供給されてもよい。製品流および新鮮なトルエン用のトルエン蒸留塔への供給点は同じまたは異なっていてもよく、当業者であれば決定することができる。さらに、トルエン蒸留塔に供給されることができる他の流れ、たとえばナフサ改質装置、キシレン異性化装置、不均化装置、トランスアルキル化装置またはトルエンおよび重質芳香族を含むことがある任意の他の装置からのキシレン流および重質流があってもよい。トルエン蒸留装置からのトルエンは、典型的には慣用の冷却方法、たとえば並列あるいは直列の配置にされたエアフィン、水冷却器もしくはプロセス冷却器またはこれらの組み合わせによって凝縮された後、液状塔頂製品として回収される。トルエンはまた、蒸留塔の塔頂で、任意の冷却装置の上流でまたは蒸留塔からの側流として気相製品として回収されてもよい。同様に、トルエンは、蒸留塔のトレーの1つから、たとえば蒸留塔の塔頂の下3〜5トレーから液状製品として回収されることができる。蒸留塔が、トルエンより軽質の1種または複数の成分、たとえば水、軽質炭化水素を含む場合にこれは特に有効である。というのは、これらの成分は稀釈によってトルエンの濃度を低減することがあるからである。重質芳香族および不純物からトルエンを分離する蒸留塔はまた、1つ以上の隔壁を備えた分割壁蒸留塔であってもよい。回収されたトルエンはその後トルエンメチル化部門31にリサイクルされ、重質成分はさらなる処理のために下流に送られることができる。
【0041】
キシレン蒸留塔35からのパラキシレンに富むC
8芳香族塔頂流は、ライン36を経由して分離部門37に送られ、そこでパラキシレン製品がライン38を経由して回収される。分離部門37は吸着法もしくは晶析法または両方の任意の組み合わせに基くことができるが、いずれの場合でもそれは3つの別個の流れから、すなわち1つは約20%のパラキシレン含有量(改質油のC
8部分)であり、1つは好ましくは75%以上のパラキシレン含有量(トルエンメチル化プロセスからの流出物)であり、および1つは平衡(約24%)のパラキシレン含有量(トランスアルキル化および/または異性化からの流出物)である3つの別個の流れからのパラキシレンの分離を管理するように最適化されることができる。このような最適化は、分離部門37全体の相当な小型化とともに用役消費量の相当な節約をもたらすことになる。このような最適化は、米国特許第8,168,845号、第8,529,757号、第8,481,798号、第8,569,564号、第8,580,120号、米国特許出願公開第2012/0241384号および米国特許仮出願第61/946,052号に記載されているように、平衡キシレン流とは無関係に、パラキシレンの濃縮されたキシレン流を供給することを含むことができ、これらの全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。あるいは、吸着プロセスからのパラキシレンに富む製品または中間製品は99.7重量%未満のパラキシレン純度を有しており、これは晶析装置に供給されてパラキシレンがより高い濃度に濃縮されてもよい。同様に、99.7重量%未満のパラキシレン純度を有する晶析の製品または中間製品は吸着プロセスに供給されてパラキシレンがより高い濃度に濃縮されてもよい。
【0042】
パラキシレン分離部門37へのキシレン供給原料には常に少量のトルエンが存在する。擬似移動床(SMB)吸着装置がパラキシレンを回収するために使用される場合、キシレン供給原料中に存在するトルエンの一部は、「粗」トルエン製品として分留され、これは微量のキシレンまたは水を含むことがある。この流れは、微量のキシレンまたは水を除くための何らの処理もされずにトルエンメチル化部門31に直接送られることができる。というのは、トルエンメチル化部門31への供給原料は、メタノールの利用率を改善し供給原料の予熱コーキングを抑えるために一般に水を一緒の供給原料として含むからである。分離部門37における吸着プロセスおよび晶析プロセスの両方の組み合わせは、小さいSMB装置(図示されていない。)および該SMB装置と直列または並列に操業される小さい晶析装置(図示されていない。)を含んでいてもよく、該小さいSMB装置は平衡キシレンからのパラキシレンの分離に主として専用され、該小さい晶析装置はパラキシレンが濃縮された流からのパラキシレンの分離に主として専用される。
【0043】
パラキシレンを回収した後、分離部門37からの残りの液相のパラキシレンに乏しい流出物は、ライン39を経由して集められ、液相でライン41を経由して液相キシレン異性化部門42に供給されることができ、そこでキシレンは平衡にまで異性化される。液相異性化部門42からの流出物は、平衡に近いパラキシレン(約24%)を含み、ライン43によってキシレン再蒸留塔44に供給され、キシレン再蒸留塔44は改質油スプリッター15からライン45を経由してC
8+含有塔底流を受け入れる。キシレン再蒸留塔44からの塔頂流としてC
8に富む塔頂流が取り出され、ライン46を経由して分離部門37に供給され、そこでパラキシレン製品がライン38を経由して集められる。
【0044】
いくつかの実施形態(図示されていない。)では、液相異性化部門42からの流出物は、液相異性化部門42を通って製造された重質芳香族の濃度が分離部門37で使用される分離プロセスの規格内であるならば、分離部門37に(キシレン再蒸留塔44で分離されることなく)直接送られることができる。米国特許第7,989,672号はその全内容が参照によって本明細書に組み込まれるが、これは晶析装置についての最大許容C
9+芳香族濃度を教示し、その濃度は、限界内で擬似移動床吸着法または晶析法と擬似移動床吸着法との混成プロセスにも適用されることができる。液相異性化装置から擬似移動床吸着装置に直接供給する場合には、該吸着装置を通して処理されたC
9芳香族は、脱着剤の全流またはスリップ流を取り出して脱着剤中のC
9芳香族を重質成分、すなわち脱着剤よりも重質の沸点を有する成分として、あるいは軽質成分、すなわち脱着剤よりも軽質の沸点を有する成分として除くように設計された分留塔で処理されることによって脱着剤流体から取り出されることができる。脱着剤の例はトルエン、パラジエチルベンゼンまたはテトラリンを含む。他の可能な脱着剤が、パラキシレンと吸着ラフィネート、すなわちメタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼンとの相対的な選択性に応じて使用されてもよい。米国特許第8,697,929号はその全内容が参照によって本明細書に組み込まれるが、これは、溶解された水素が液相異性化装置に一緒に供給され、それによって擬似移動床吸着プロセス内で要求される重質分のパージ量が減少される場合には、C
9芳香族の生成量が低減されることができることを教示する。この場合には、C
9芳香族の生成量は、液相異性体をキシレン再蒸留塔44またはキシレン蒸留塔35のトップトレーに導入することによってキシレン留分からの適切な分離をもたらすほどに十分低いことがある。存在し得る溶解水素は、分留設計分野の当業者によってこの装置からベントされることができる。
【0045】
液相異性化触媒を通ってのC
9芳香族の生成量はまた、供給原料中に存在するエチルベンゼン量の関数でもある。液相異性化装置への供給原料中のEBをなくすことまたはEB量を低減することはC
9芳香族の生成を低減することになり、その結果、吸着装置の前でC
9芳香族の分留が必要でなくなる。EBは、EBに選択的な膜分離または吸着技術を使用して、液相異性化装置供給原料から除かれることができる。
【0046】
あるいは、ライン39を経由して集められた分離部門37のパラキシレンに乏しい流出物は、気相でライン47を経由して気相キシレン異性化部門48に供給されることができ、そこでキシレンが平衡にまで異性化される。気相異性化部門48からの流出物は平衡に近いパラキシレン(約24%)を含み、ライン49によってスタビライザー蒸留塔51に供給され、そこでC
7含有塔頂流がライン52を経由して取出され、C
8+塔底流がライン53によって集められキシレン再蒸留塔44に供給される。異性化部門48で使用される気相異性化プロセスがエチルベンゼン脱アルキル化タイプであるときは、ライン52の塔頂流は脱アルキル化製品であるベンゼンおよびいくらかの副生成物であるトルエンを含む。異性化部門48で使用される気相異性化プロセスがエチルベンゼン異性化タイプであるときは、ライン52の塔頂流はベンゼンをほとんど含まずトルエン副生成物を含む。いずれの場合でも、ベンゼンは抽出部門17に供給され、製品として販売されまたはシクロヘキサン装置に送られることができる。ベンゼンはまた、付加的なキシレン生産のためにトルエンメチル化部門31でまたはトランスアルキル化部門(以下に記載される。)で処理されることができる(以下に図示される他の芳香族複合体の配置を参照せよ。)。異性化部門48からのトルエン流出物は、付加的なキシレン生産のためにトルエンメチル化部門31でまたはトランスアルキル化部門で処理されることになる。ライン52の合体された気相ベンゼン/トルエン流は、トルエンメチル化部門に直接送られ、それによって分留コストが下げられ資本稼働率が最大限にされることができる。
【0047】
スタビライザー蒸留塔51からライン53を経由して抜き出されたC
8+塔底流は、改質油スプリッター15からのC
8+含有塔底流45および任意的に液相異性化部門42からの流出物とともにキシレン再蒸留塔44に供給される。キシレン再蒸留塔44は、これらの流れからC
9+芳香族を分離してライン54を経由してこのC
9+芳香族を重質芳香族蒸留塔55に供給し、重質芳香族蒸留塔55はまた、ライン56を経由してキシレン蒸留塔35からC
9+塔底流も受け入れる。重質芳香族蒸留塔55は、流れ54および56からC
9芳香族、C
10芳香族およびいくらかのC
11芳香族を取り除き、これらの成分をライン57を経由してトランスアルキル化部門58に供給し、他方、流れ54および56中のより重質の化合物はライン59を経由して集められ、燃料油プールへおよび/または該より重質の化合物をより望ましい高付加価値の1種または複数の製品にアップグレードすることができる可能性のある別の炭化水素処理装置へ供給される。
【0048】
トランスアルキル化部門58では、C
9芳香族、C
10芳香族およびいくらかのC
11芳香族は、直接にあるいは本発明のプロセスの他の部分から回送されたベンゼンまたはトルエンとの反応によって平衡キシレンに転化される。トルエンメチル化装置(たとえば、トルエンメチル化部門31)およびトランスアルキル化装置(たとえば、トランスアルキル化部門58)を操業する芳香族装置複合体ではパラキシレンの生産を最適化する多くの選択肢があるけれども、トルエンメチル化はパラキシレンに高度に選択的であり、またトランスアルキル化は混合キシレン製品を製造するので、好ましい実施形態では、芳香族装置複合体に導入されたまたはそこで製造された全てのトルエンは、トランスアルキル化部門58ではなくトルエンメチル化部門31に送り込まれる。
図1に示された複合体におけるトルエン源は、任意的なライン32の改質油スプリッター15からのトルエン、ライン23のベンゼン蒸留塔21からのトルエン、トルエンメチル化部門からの流出物中の未転化のトルエン、パラキシレン分離部門37からの「粗」トルエン、気相異性化部門48がEB脱アルキル化タイプであるときの当該気相異性化からの副生成トルエン、およびトランスアルキル化部門58で製造されたトルエンを含むとともに、輸入されたトルエンの任意の流れ(図示されていない。)を含む。したがって、トランスアルキル化部門58からの流出物中のトルエンは、ほとんどあるいは全くトランスアルキル化部門58にリサイクルされない。好ましい実施形態では、ベンゼン蒸留塔21からのベンゼンはトランスアルキル化部門58に、当該装置でのキシレン製造が最大になるようにメチル基と環との比を最適化する量で送られる(
図1に示されていない。)。トランスアルキル化部門58で処理されないベンゼンは、販売もしくは水素化されてシクロヘキサンを製造するために回収されることができ、またはトルエンメチル化部門31に付加的なキシレン生産のために供給されることができる。トランスアルキル化部門58からの流出物はライン60によってスタビライザー蒸留塔51に供給される。
【0049】
任意的にオルトキシレンの製造が望まれる場合には、キシレン再蒸留塔44からの塔底流の一部または全ては、ライン61を経由してオルトキシレン蒸留塔62に供給されることができる。オルトキシレン製品はライン63を経由して塔頂分として集められ、他方、オルトキシレン蒸留塔塔底重質分はライン64を経由して重質芳香族蒸留塔55に送られる。過剰のオルトキシレンが生産必要量以上に製造される場合には、オルトキシレンの一部または全ては、液相異性化部門42または気相異性化部門48またはトランスアルキル化部門58を通して処理されて、より多くのパラキシレンが製造されることができる。
【0050】
図1に示されたプロセスの1つの変形が
図2に示され、そこでは、
図1に示された要素と同じような要素を示すために同じような参照符号が使用される。特に、
図2に示されたプロセスでは、非芳香族またはベンゼンの回収のための設備はなく、したがって
図1の抽出部門17およびベンゼン蒸留塔21は省略される。したがって、この変形では、改質装置流出物のC
5−留分がデペンタナイザー(図示されていない。)で除かれた後、該流出物はライン13を経由して改質油スプリッター部門15に供給され、改質油スプリッター部門15はC
8+含有塔底流からC
6/C
7含有塔頂流を分離する。このC
6/C
7含有塔頂流はライン16を経由して、ベンゼン抽出工程なしにトルエンメチル化部門31に供給され、
図1の実施形態と同様にC
8+含有塔底流はライン45を経由してキシレン再蒸留塔44に供給される。別の注目すべき変更がスタビライザー蒸留塔51塔頂の液状C
6/C
7流に影響を及ぼし、これはライン52を経由して集められる。この流れは、ライン71を経由してトランスアルキル化部門58の入口あるいはライン72を経由してトルエンメチル化部門31の入口あるいはこれらの両選択肢の任意の組み合わせにリサイクルされることができる。流れ52の一部をトランスアルキル化およびトルエンメチル化のいずれにリサイクルするかの決定に影響を及ぼす要因は、トランスアルキル化部門での所望の触媒サイクル寿命(これはトランスアルキル化部門への供給原料中の軽質成分、たとえばC
6/C
7の存在によって延長されることができるだろう。)およびトランスアルキル化部門58での所望のメチル基/環の比を含む。
【0051】
図1に示されたプロセスの別の変形が
図3に示され、そこでは、
図1に示された要素と同じような要素を示すために同じような参照符号がここでも使用される。特に、
図3に示されたプロセスでは、
図1の気相キシレン異性化部門48は省略される。代わりに、分離部門37のパラキシレンに乏しい流出物はライン39によって集められ、ライン41を経由して液相で液相キシレン異性化部門42に供給されることができ、そこでキシレンが平衡に異性化される。あるいは、分離部門37のパラキシレンに乏しい流出物はライン39によって集められ、ライン47を経由してトランスアルキル化部門58に移送され、そこで残りのエチルベンゼンがベンゼンに転化され、いくらかのキシレン異性化がトランスアルキル化触媒系上で生じることになる。分離部門37の流出物についてのこれらの両選択肢の任意の組み合わせ、すなわち液相異性化またはトランスアルキル化が許容される。分離部門37の流出物を一方および他方のいずれのプロセスに向けるかの決定は、当該分離部門37の流出物中のエチルベンゼン含有量に依存する。あるいは、液相異性化部門42へのまたはその部門からのパージ流は、トルエンメチル化部門31を通してまたはエチルベンゼン異性化装置(図示されていない。)を通して処理されて、エチルベンゼン濃度が調節されることができる。
図3のプロセスは
図1の抽出部門17およびベンゼン蒸留塔21が省略された
図2の実施形態で示されているけれども、
図3のプロセスが
図1の抽出部門17およびベンゼン蒸留塔21が存在しても実施されることができることは理解されるだろう。
【0052】
図1〜3のプロセスのそれぞれに適用可能なさらなる変形が
図4に示され、そこではキシレン蒸留塔35がキシレン再蒸留塔44と一緒にされて単一の蒸留塔になる。この実施形態では、トルエンメチル化部門31の流出物はここではライン34を経由して、ライン53のスタビライザー蒸留塔51からのC
8+塔底流、改質油スプリッター15からのC
8+含有塔底流45および任意的にライン43の液相異性化部門42からの流出物と一緒に、より大きいキシレン再蒸留塔44へ送られる。
【0053】
図1〜4に示されたプロセスのいずれかの変形(図示されていない。)では、トルエンメチル化部門31からの製品は分離ドラムに供給され、この分離ドラムは液状炭化水素流、液状の水およびメタノール流、ならびにオレフィン含有オフガス流を含む3つの別個の相を生成する。この分離は、空気、冷却水または冷凍を含む何らかの適当な冷却剤流から成る各ドラム間の冷却設備を備えた1個以上のドラムで行なわれることができる。ドラムは水平もしくは垂直型、またはその組み合わせであることができる。水平ドラムは内部邪魔板を含んでいてもよい。水平ドラムは水相を集めるために水ブーツを含んでいてもよい。内部デミスターパッドが、オフガスによる液体のキャリーオーバーを最小限にするために使用されてもよい。垂直ドラムもまた、当業者が設計することができるような水平ドラムと同じ造作物を含んでいてもよい。冷却器の組み合わせもまた、各ドラム間の流れを冷却するために使用されることができる。冷却剤交換器が分離ドラムの内部に置かれてもよい。1個または複数の分離ドラムはまた、投下資本を節約するために急冷塔と組み合わされてもよい。
【0054】
炭化水素流は、炭化水素をさらに分離するために蒸留部門、たとえばトルエン蒸留塔および/またはキシレン蒸留塔35によってさらに処理されてもよい。水/メタノール流は、メタノールストリッピング塔に供給されて、水から炭化水素、メタノールおよび他の含酸素化合物が取り除かれる。このメタノール、炭化水素および他の含酸素化合物を含む流れは、トルエンメチル化部門31にリサイクルされてもよい。水の流れは酸、たとえばギ酸、酢酸等を含むことがあり、これは該水の流れのpHを低減することがある。この水の流れは、苛性アルカリ、アンモニア、炭酸ナトリウムまたは当業者に知られた任意の他の中和剤で処理することによって中和されることができる。排水流は別の場所で、たとえばメタノールストリッピング塔塔底への反応器流出物中でまたはその間の任意の場所で処理されることができる。オレフィン含有流はさらなる処理に送られて、高価値のオレフィン成分の最終回収の前に汚染物質が除去される。
【0055】
1つの実施形態では、トルエンメチル化部門31は、反応器、触媒再生器、触媒冷却器、熱交換装置およびガス/固体分離装置を含む。反応器流出物は触媒微粒子を含むことがあり、これはガス/固体分離装置、たとえばサイクロン、遠心分離機、ガスフィルター、液体フィルター、洗浄塔もしくは蒸留塔、タンクもしくは沈降槽さえも、またはこれらの組み合わせを使用して、リアクター流出物流から分離されることができる。このガス/固体分離装置は反応器容器の内部に、たとえばサイクロンまたはマルチサイクロンに置かれることもできるが、反応器容器の外部が好ましい。ガス/固体装置は、反応器流出物流から熱を回収するために使用される任意の熱交換装置の上流にあるいは該熱交換装置の下流に置かれることができる。このような熱交換装置は、10psig〜1200psig(170kPa〜8380kPa)の範囲の圧力を有するスチームを製造するスチーム発生器、またはリアクター流出物流からのエンタルピーを使用してプロセス流体を加熱する熱交換装置、またはこれらの組み合わせを含む。再生器からの燃焼排ガスは触媒微粒子も含むことがあり、これは燃焼排ガスを大気中に放出するために減少されなければならない。これらの微粒子は、様々な技術、たとえばサイクロンもしくはマルチサイクロン、静電集塵器、洗浄塔、遠心分離機またはこれらの組み合わせを使用して燃焼排ガスから回収されることができる。燃焼排ガス固形分回収装置は、任意のプロセス熱交換装置、たとえばCOボイラーもしくは燃焼排ガス設備において一般に使用される任意の他の熱交換装置の上流または下流にあることができる。反応器流出物または再生器から回収された触媒微粒子は、直接にあるいは間接的に、たとえば中間貯蔵容器を通ってまたは系から放出されて、反応ゾーンもしくは再生器ゾーンまたはこれらの両方に戻されることができる。
【0056】
触媒は再生器から抜き出され、触媒上のコークおよび他の炭化水素の燃焼によって再生器中で発生した熱を除くために、触媒冷却器としても知られている熱交換装置に供給されることができる。再生器からの触媒の抜き出しは、連続的にまたは断続的におよび様々な速度によって行われることができる。冷却された触媒はその後再生器にフィードバックされる。触媒冷却器を通る触媒の流量および/または熱除去量を調節することによって、再生器中の触媒床の温度は調節される。再生器中で燃焼されるべきコークの量に応じて、触媒冷却器は最大流量と全面的休止との間で操業されることができる。再生器からの触媒の抜き出し流量は、触媒冷却器入口および出口の両方の配管中に注入された適当なガス流(エアレーション媒体)によって流動化された固体を含む固体の流量を調節するために、スライド弁または他の適当な弁を使用して調節される。エアレーション媒体は、空気、スチーム、窒素、炭化水素および/または触媒冷却器内の固体の流動化を確実にするために触媒冷却器中に注入されてもよい他の適当なガスであることができ、かつ流動化された触媒の熱伝達率を調節することができ、それによって熱い触媒から冷却媒体への適切な伝熱を確実にする。触媒冷却器はまた、ボイラー用水を予熱し、異なる圧力のスチームを発生し、プロセス流を予熱しおよび/もしくは蒸発させ、または空気を加熱するために使用されてもよい。触媒冷却器は典型的には、再生器に取り付けられ、支持用の別の構造物に取り付けられ、または再生器容器の内部に完全にもしくは部分的に(スタブイン)埋め込まれる。
【0057】
本発明は、これから以下の非限定的な実施例を参照して、より詳細に記載される。
【実施例1】
【0058】
このシミュレートされた実施例は、メタノールによるトルエンのアルキル化装置の追加が、キシレンが改質部門およびトランスアルキル化部門で生成される従来の芳香族装置複合体と同じ供給原料に基づいて、どのように芳香族装置複合体のパラキシレン生産量を増加させるかを示す。この実施例では、全てのキシレンがパラキシレンに転化される(オルトキシレンの生産はない)と仮定している。その結果が以下の表1に示される。
【表1】
【0059】
表1において、各芳香族装置複合体は、定性的および定量的に同じ供給原料(1245.3kTA(キロトン/年)のナフサ)を使用する。さらに、改質部門は全てのケースに同じ製品スレートを提供し、この製品スレートは第1欄に「CCR改質油」と表示される。第2欄は「キシレン回収(のみ)」と表示され、改質装置のキシレンのみが回収される(トランスアルキル化装置はない)場合のパラキシレンの生産量を示す。第3欄は「キシレン回収およびトランスアルキル化」と表示され、従来の芳香族装置複合体におけるパラキシレンの生産量を示し、この芳香族装置複合体にはトランスアルキル化装置が加えられて付加的なキシレンが製造される。第4欄は「(TAMおよびトランスアルキル化)を備えたキシレン回収」と表示され、メタノールによるトルエンアルキル化装置(TAM)がトランスアルキル化装置を備えた従来の芳香族装置複合体に加えられた芳香族装置複合体からのパラキシレンの生産量を示す。
【0060】
表1から分かるように、同じ供給原料および改質部門の生産量基準で、従来の芳香族装置複合体についてのパラキシレン生産量は560.9kTaであり、これに対してメタノールによるトルエンアルキル化装置が追加された従来の芳香族装置複合体についてのパラキシレン生産量は645.1kTaである。
【0061】
さらに、パラキシレンの生産は、より大きい利幅の故に多くの場合にベンゼンの生産よりも好まれる。ベンゼンは、付加的なキシレン生産のためにトランスアルキル化部門に供給されることができるが、この生産はメチル基と環との比によって制限される。しかしながら、トルエンメチル化部門が利用可能な場合には、所望であれば全てのベンゼンはキシレンに、さらにパラキシレンに転化されることができる。したがって、第4欄のケースでは、付加的な135.2 kTaのベンゼンがさらなるパラキシレンの生産に利用可能である。このケースでは、芳香族装置複合体のパラキシレンの量は約829kTaに増加されることができ、これはトルエンメチル化のない複合体に対しておよそ50%のパラキシレン生産量の増加である。
【0062】
したがって、芳香族装置複合体におけるメタノールによるトルエンアルキル化装置とトランスアルキル化装置との組み合わせは、同じ供給原料および改質部門生産量を備えた従来の芳香族装置複合体よりも著しく大きいパラキシレンの生産をもたらす。逆に言えば、従来の芳香族装置複合体と似たようなパラキシレンの生産を達成するためには、メタノールによるトルエンアルキル化装置とトランスアルキル化装置との組み合わせを使用することは、要求される供給原料がより少なくて済み、上流の製油所部門をより小さくすることを可能にする。言い換えれば、芳香族装置複合体におけるメタノールによるトルエンアルキル化装置とトランスアルキル化装置との組み合わせは、より少ない原油を使用して、従来の芳香族装置複合体と似たようなパラキシレンの生産を可能にする。
【0063】
本発明が特定の実施形態を参照することによって説明され例証されてきたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも示されていない変形にも役立つことを理解するだろう。この理由から、したがって、本発明の真の範囲を決定する目的のためには、添付された特許請求の範囲のみが参照されなければならない。