(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6374997
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】ミルクを加熱する及び/又は泡立たせる装置用の加熱ユニット
(51)【国際特許分類】
A47J 31/44 20060101AFI20180806BHJP
A47J 43/12 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A47J31/44 410
A47J43/12
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-11928(P2017-11928)
(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-148495(P2017-148495A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】16156809.2
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517028306
【氏名又は名称】エバーシス ホールディング エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレゴイル ロウチャー
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/074770(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0101021(US,A1)
【文献】
米国特許第04949631(US,A)
【文献】
特開2015−119960(JP,A)
【文献】
特開2007−130480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00 − 31/60
A47J 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱キャリアとして機能する蒸気、または蒸気と空気の混合気がミルク中に吹き込まれるところの、ミルクを加熱する及び/又は泡立たせる装置用の加熱ユニットであり、
当該加熱ユニットは、リアクターブロック(4)を備え、そのリアクターブロック内には、内側の蒸気導管(1)、ミルク用の外側の環状導管(2)および出口導管(3)が設けられており、熱い蒸気または蒸気と空気の混合気が、前記蒸気導管(1)の上流側端部(1a)に導入されると共に、ミルクが前記環状導管(2)の上流側端部(2a)に導入される加熱ユニットにおいて、
前記蒸気導管(1)および前記環状導管(2)双方の下流側端部(1b,2b)が、熱せられた及び/又は泡立ったミルクを排出するための前記出口導管(3)内に向けて開口しており、
前記蒸気導管(1)は、前記リアクターブロック(4)の軸方向に延びており、
前記蒸気導管の上流側端部(1a)は蒸気導入ライン(12)に接続可能であり、
前記蒸気導入ラインを介して導入された蒸気、又は、前記蒸気導入ラインを介して導入された蒸気と空気の混合気は、前記蒸気導管(1)内を当該蒸気導管(1)の下流側端部(1b)に向かって底部から頂部へ重力に抗して垂直に流れ、
前記出口導管(3)は、管状に構成された出口導管であり、
前記環状導管(2)は、その下流側端部(2b)において、前記出口導管(3)内に向けて開口する円錐部(2c)を備えると共に、その円錐部(2c)は、管状に構成された出口導管(3)に結合しており、
前記蒸気導管(1)及び環状導管(2)は、それらの下流側端部(1b,2b)の領域を除いて、互いに分離されており、
前記外側の環状導管(2)は、その長さ全体にわたって、前記内側の蒸気導管(1)を同軸的に取り囲んでいる、ことを特徴とする加熱ユニット。
【請求項2】
前記リアクターブロック(4)はプラスチック材料製である、ことを特徴とする請求項1に記載の加熱ユニット。
【請求項3】
前記リアクターブロック(4)は、少なくとも大部分において、長手方向中心軸線(A)を有するシリンダの形態で構成されており、
前記蒸気導管(1)および前記出口導管(3)は、前記リアクターブロック(4)の長手方向中心軸線(A)にわたって延びており、
前記環状導管(2)は、前記リアクターブロック(4)の長手方向中心軸線(A)に対して同軸的に配置されており、
前記蒸気導管(1)の上流側端部(1a)は、前記リアクターブロック(4)における前端開口部(4a)によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱ユニット。
【請求項4】
前記環状導管(2)は、その上流側端部(2a)において、前記リアクターブロック(4)内の環状導管(2)の長手方向軸線に対し直角又は斜角をなして延びるラジアル穴(5)に接続されており、当該ラジアル穴(5)はミルク供給ライン(11)に接続可能である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱ユニット。
【請求項5】
前記ラジアル穴(5)は、前記環状導管(2)に向けて接線方向に開口している、ことを特徴とする請求項4に記載の加熱ユニット。
【請求項6】
前記リアクターブロック(4)の上端部において前端開口部(4b)を更に備え、その開口部は、前記出口導管(3)から加熱された及び/又は泡立ったミルクを放出するための出口を形成する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱ユニット。
【請求項7】
加熱された及び/又は泡立ったミルクの温度を測定するための温度センサ(6)が、前記出口導管(3)に配置されている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱ユニットを用いて、ミルクを加熱する及び/又は泡立たせるための装置であって、
前記蒸気導管(1)の上流側端部(1a)が蒸気導入ライン(12)に接続されると共に、前記環状導管(2)の上流側端部(2a)がミルク供給ライン(11)に接続されており、蒸気と空気の混合気を前記蒸気導入ライン(12)を介して前記蒸気導管(1)内に導入できると共に、ミルクを前記ミルク供給ライン(11)を介して前記環状導管(2)内に導入できる、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
蒸気と空気の混合気を発生するためのデバイス(20)を更に備え、
当該デバイスは、蒸気発生器(18)及び圧縮ガス源(19)を具備し、それぞれが前記蒸気導入ライン(12)に接続されており、
前記蒸気発生器(18)は、前記蒸気導入ライン(12)を蒸気で満たし、
前記圧縮ガス源(19)は、圧力パルスを発生してそれらを前記蒸気導入ライン(12)に注入する、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記圧縮ガス源(19)は、パルス幅変調で作動され、及び/又は、調節可能なパルス周波数(f)で圧力パルスを放出する、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の加熱ユニットを用いて、ミルクを加熱する及び/又は泡立たせる方法であって、
熱い蒸気または蒸気と空気の混合気を前記蒸気導管(1)の上流側端部(1a)に供給すると共に、ミルクを前記環状導管(2)の上流側端部(2a)に供給し、
前記の蒸気または蒸気と空気の混合気が前記蒸気導管(1)内を流れてそこから前記出口導管(3)内に流入すると共に、前記ミルクが前記外側の環状導管(2)内を流れてそこから前記出口導管(3)内に流入し、そこで前記の蒸気または蒸気と空気の混合気と混ぜられて、その結果、ミルクが熱せられ及び/又は泡立てられる、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分(おいて書き部分)に準拠するミルクを加熱する及び/又は泡立たせる装置のための加熱ユニット、並びに、そのような加熱ユニットを用いてミルクを加熱する及び/又は泡立たせる装置(器具)および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱ユニットは、コーヒー、ミルク飲料および泡立ちミルク飲料を用意すべくミルクを加熱し泡立たせるために、例えば、ミルクを加熱し泡立たせるための装置(器具)を有する完全自動化のコーヒー製造機のような飲料製造機械において使用され得る。完全自動化のコーヒー製造機では、例えば、ココア、ミルクコーヒー、あるいはカプチーノといったミルク飲料または混合ミルク飲料を、加熱され且つ泡立ったミルクを使って用意することが可能である。
【0003】
先行技術から知られるところでは、ベンチュリシステム(Venturi system)、例えばEP0234236B1公報やEP0344859B1公報に開示されたようなシステムを具備したミルクの加熱及び泡立て装置(器具)が存在する。これらの装置(器具)では、熱い蒸気は、ミルクを加熱するための加熱媒体として、及び、ミルクを押し出すための推進媒体(propellant)として(二つの役目で)用いられている。しかしながら、ベンチュリシステムを具備した装置の熱出力は低く、加熱ミルクの温度や泡状ミルクの多孔率といった製品特性は、限られた程度にまでしか制御できなかった。
【0004】
ミルクを加熱する及び/又は泡立たせるための改良された装置が、国際公開WO2013/064232 A1公報に開示されている。この装置はミルクを蒸気で加熱するための加熱ユニットを備え、当該加熱ユニットで熱キャリア(熱運搬媒体)として機能する熱い蒸気(熱蒸気)は、ミルク内にインジェクト(注入)されるインジェクタ(注入物)として作用する。当該加熱ユニットは、熱蒸気用の内側の流路と、ミルク及び/又は泡状ミルク用の流路とを備え、後者の流路は内側の流路を同軸的に取り囲んでおり、前記二つの流路は、流れ方向に対し直角に延びる複数の放射状通路(半径方向通路)によって相互に連結されている。この加熱ユニットは、ミルク及び熱蒸気が分離して供給されることを許容するものであり、そのことは、ミルクを泡立たせ、加熱とは独立して泡状ミルクを生み出すことを可能にする。その結果として、泡状ミルクの特性及び組成を、加熱プロセスから独立して制御することができる。加えて、蒸気吹き込みの原理に基づいてミルクを加熱することはまた、加熱プロセスが泡状ミルクの品質を損なわないという利点を有する、というのも、分離状態で供給される蒸気のために、熱せられたミルクの温度が正確にコントロールされること、及び、調製システムの熱慣性が最小化されることが、確実なものとされ得るからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 0234236 B1公報
【特許文献2】EP 0344859 B1公報
【特許文献3】国際公開WO2013/064232 A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、WO2013/064232 A1に開示された加熱ユニットにおいては、乳石(milk stone)及び/又はミルクの堆積物や石灰かす(lime scale)が、蒸気用の内側流路とミルク用の外側流路とをつなぐ狭い放射状通路内に形成し得ることが判明した。放射状通路におけるそのような沈着物や堆積物が、ミルクが高温度に加熱される加熱局面(時)又はその後に形を成して、放射状通路を更に狭くすることがあり、今度はそのことが加熱ユニットの熱出力および効率を低下させる。放射状通路から沈着物や堆積物を除去することは、非常に労力及び時間を要するものである。
【0007】
本発明によって解決されるべき課題は(更に)、ミルクを加熱及び/又は泡立てる装置についての主クレームの前提部分に開示されるような加熱ユニットを、当該加熱ユニットの熱出力及び効率が改善されるように発展させることである。更にもう一つの目的は、主クレームの前提部分に開示されるような加熱ユニットのメンテナンス(保守管理)の必要性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題は、請求項1の特徴を有する加熱ユニットによって、及び、
請求項11の特徴を有するところのミルクを加熱する及び/又は泡立たせるための方法によって解決されるものである。
【0009】
本発明に従う加熱ユニットでは、ミルクを加熱する及び/又は泡立たせるために、熱キャリア(熱運搬媒体)として機能する熱い蒸気、または蒸気と空気の混合気がミルク中に吹き込まれる。当該加熱ユニットは、内側の蒸気導管およびミルク用の外側の環状導管を備え、後者(外側の環状導管)は内側の蒸気導管を同軸的に取り囲み、熱い蒸気または蒸気と空気の混合気が、蒸気導管の上流側端部に導入されると共に、(冷えた)ミルクが環状導管の上流側端部に導入される。本発明によれば、蒸気導管および環状導管の双方の下流側端部が、前記の蒸気または蒸気と空気の混合気によって熱せられたミルクを排出すると共に、ミルクフォーム(泡状ミルク)を排出するべく、出口導管内に向けて開口している。両導管の下流側端部の領域を除いて、蒸気導管とミルク用環状導管は互いに分離した関係にある。
【0010】
結果として、このことは、蒸気導管及び環状導管の流れの方向に対して直角に延びると共に、内側の蒸気導管と、その内側蒸気導管に対して同軸的に配置されたミルク用の環状導管とを連結するところの放射状通路(半径方向通路)を配設する必要性を取り除く(不要なものとする)。かくして、狭い放射状通路内において乳石及び/又はミルクの堆積物や石灰かすが形成されるリスクが取り除かれる。
【0011】
好ましくは、内側の蒸気導管、その内側導管を同軸的に取り囲む外側の環状導管、および出口導管はそれぞれ、プラスチック材料製のリアクターブロック(加熱ユニットの本体部又は筐体)内を通って形成されている。リアクターブロックの製造に際して使用に適すると思われるプラスチック材料は、高温度耐性の熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、ポリスルホン(polysulfone)(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等である。約150℃までの温度耐性を持つと共に食品等級の品質を持つ又は食品規則に合致するリアクターブロックのプラスチック材料については、熱伝導を大いに避けるべきであり、そのことは加熱ユニットの効率を更に改善する。
【0012】
リアクターブロックにおいて、内側の蒸気導管は軸方向に延びており、蒸気導管の上流側端部は、該リアクターブロックに接続可能な蒸気(導入)ラインに取付け可能である。そして、前記蒸気(導入)ラインを介して導入された蒸気、又は蒸気と空気の混合気は、前記蒸気導管内を当該蒸気導管の下流側端部に向かって底部から頂部へ重力に抗して垂直に流れ、そこから出口導管内に流れ入る。その全体の長さ(即ち軸方向への広がり)にわたり、外側の環状導管は、好ましくは内側の蒸気導管の周りに同軸的に配設される。
【0013】
内側蒸気導管の下流側端部において、この導管は、蒸気導管の下流側端部と同軸的に隣接している出口導管内に直接的に開口しており、出口導管の直径は、蒸気導管の直径よりも大きくなるように構成されている。内側蒸気導管が同軸的に隣接する出口導管内に開口するポイント(地点)では、ミルク用の外側環状導管の下流側端部も出口導管内に開口している。この目的のために、外側環状導管は、その下流側端部の領域において円錐部(conical section)を有している。この外側環状導管の円錐部では、その外径が、流れ方向において、当該外側環状導管の(最)外径から、(外側環状導管の円錐部の下流端がその中に開口するところの)出口導管の外径に一致する外径に(向けて)円錐的に減少している。この構成、並びに、ミルク用外側環状導管及び内側蒸気導管が出口導管内に開口するという事実のために、前記二つの導管が開口する領域において、内側蒸気導管からの熱い蒸気、及び/又は、蒸気と空気との混合気が外側環状導管からのミルクと効率的且つ均一に混ぜられるということが、確実なものとなる。蒸気、または蒸気と空気との混合気と、ミルクとの追加的で均一な混合は出口導管の更に下流(域)で起きる。出口導管の下流側端部では、この導管は好ましくは、加熱されたミルク又は泡立った泡状ミルクを運び出すための出口ラインに接続されている。この点を達成すべく、出口ラインを接続するための接続ノズルを具備した前端開口が、リアクターブロックの一面(一側面)に設けられることは、好ましい。
【0014】
熱い蒸気、または蒸気と空気の混合気を蒸気導管内に供給すべく、追加の前端開口がリアクターブロックの他の面(他の側面)に設けられ、その開口には、好ましくは蒸気導入ラインを接続するための接続ノズルが配置される。蒸気導入ラインは蒸気発生器に接続されており、その蒸気発生器は、蒸気導入ラインを介して加熱ユニットの内側蒸気導管を熱い蒸気で満たす。
【0015】
蒸気と空気の混合気を発生させるために、蒸気導入ラインは好ましくは、蒸気発生器および圧縮ガス源の両方に接続されており、これにより、蒸気発生器が蒸気導入ラインを蒸気で満たすと共に、圧縮ガス源が加圧されたガス(具体的には圧縮空気)を蒸気導入ラインに吹き込むことが可能になる。蒸気および加圧ガス(具体的には圧縮空気)を同時的に導入することにより、加熱ユニットにおいて、ミルクを加熱できると同時に泡立てることができる。
【0016】
製造される泡状ミルクの特性、例えば、その濃度、クリーム状の程度(クリーミーさ)、多孔性(多孔率)、泡濃度および泡安定性(廃液特性、drainage)に関する特に高い柔軟性は、圧縮ガス源が圧力パルス(圧力の脈動)を発生すると共に、前記パルスを蒸気導入ラインに周期的に注入することで達成することができる。圧縮ガス源によって発生される圧力パルスのパラメーター、例えば、振幅、パルス持続時間、パルス反復数(パルス周波数)等は、該装置のオペレータ(操作者)により、例えばボタンやダイヤルによって合目的的に変更又は調節され得る。蒸気と圧縮ガスの圧力パルスを注入することで、蒸気とガスの混合気(具体的には蒸気と空気の混合気)が蒸気導入ライン内に発生され、その蒸気導入ラインを介して加熱ユニットの蒸気導管内に伝えられ、そこから、ミルクを加熱し泡立てるべく蒸気とガスの混合気がミルクと混ぜられる該ユニットの出口導管に伝えられる。このやり方で生み出される泡状ミルクの濃度(具体的には液体に対する泡の比率)、並びに、泡のその他のパラメーター、例えば、クリーム状の程度(クリーミーさ)、多孔性(多孔率)、泡濃度および泡安定性(廃液特性、drainage)等は、圧縮ガスの圧力パルスの選択されたパラメーターに依存しており、圧力パルスの適切なパラメーターを選択することにより影響を及ぼすことができる。それ故、当該装置のオペレータ(操作者)は、泡立てプロセスに先だって及び泡立てプロセス中でさえ、圧力パルスのパラメーターを変更することで泡の特性に影響を及ぼすことができる。かくして例えば、蒸気導入ラインに周期的に注入される圧力パルスのパルス反復数(即ちパルス周波数)を、泡立てプロセス中でも変えることができる。圧力パルスのパルス周波数を変更することは、ミルク中に作り出される泡の濃度に影響を与えることを可能ならしめる。
【0017】
このやり方では、例えば、該装置に配置された制御ダイヤルによってパルス周波数を最小値と最大値との間で無制限に(無限定に)調節し、そのことにより、生み出される泡状ミルクの濃度を予め定めた制限内で「微細」と「粗」の間で選択することが可能である。このやり方では、本発明に従う加熱ユニットを具備した装置を用いて、泡立てプロセス中でさえ、泡の濃度を(ある程度まで)調節することができる可能性を伴って、所望の濃度の泡状ミルクを作り出すことができる。
【0018】
ミルクを加熱ユニット内に搬送するという目的のために、環状導管の長手軸線に対して直角に又は斜角で延びるラジアル穴(半径方向穴)が、リアクターブロック内に、外側環状導管の上流側端部の領域に構成されている。このラジアル穴には、ミルク供給ラインを接続するための接続ノズルが配置される。この接続ノズルを介して、ミルク供給ラインの一端がリアクターブロックの前記ラジアル穴に接続され、ミルク供給ラインの他端がミルク容器(ミルク・コンテナ)内に開口している。ミルク容器内に開口するミルク供給ラインの端部は、例えば、ミルクで満たされたタンク内に浸漬される浸漬チューブの形態で構成され得る。ミルク容器からミルクを引出し可能とするめたに、ミルク供給ラインにはポンプが配置される。そのポンプはミルク容器からミルクを引出し、引き出されたミルクをミルク供給ライン及びリアクターブロックのラジアル穴を経由して外側環状導管に搬送し、それにミルクを供給する。
【0019】
ミルクを外側環状導管に導入する特に効率的な方法は、前記ラジアル穴を環状導管内に向けて接線方向に(tangentially)開口させることで確実なものとされる。このことは、ミルクが外側環状導管に流入する際の乱流(の発生)を防止することを可能ならしめる。
【0020】
本発明についてのこれらの及び追加の利点及び特徴は、添付の図面を参照して以下に、より詳細に説明される実施形態の例示から導き出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に従う加熱ユニットの縦断面図(軸方向の断面図)である。
【
図2】
図1の加熱ユニットにおけるB−B線での横断面図である。
【
図3】
図1の加熱ユニットにおけるA−A線での縦断面図である。
【
図4】本発明に従う加熱ユニットを用いた、ミルクを加熱する及び/又は泡立たせる装置のダイアグラムによる表現図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図3に示す本発明に従う加熱ユニットは、プラスチック材料、とりわけPEEK,PSU,又はPEIといったプラスチックから作られたリアクターブロック4を備え、当該リアクターブロックは本質的に、長手方向中心軸線Aを持ったシリンダの形態を有している。内側の蒸気導管1、外側の環状導管2(それは内側の蒸気導管1を同軸的に取り囲む)、及び出口導管3(それは前記蒸気導管1に対して同軸的に配置される)が、リアクターブロック4内を通って形成されている。
蒸気導管1は上流側端部1aを有し、その端部はリアクターブロック4の前端開口部4aによって形成されている。加えて、内側の蒸気導管1は下流側端部1bを有し、その端部は出口導管3(それは下流方向において蒸気導管1と同軸的に隣接している)内に向けて開口している。出口導管3は、リアクターブロック4の前端開口部4bで終わっている。出口導管3の直径は、蒸気導管1の直径よりも大きく、例えば2倍の大きさがある。外側の環状導管2は、その長さ全体にわたって(即ちその軸方向への広がりにわたって)、
図1及び
図3に示すように内側の蒸気導管と同軸的となるようにアレンジ(配設)されており、図示した実施例における内側の蒸気導管1は、その内側蒸気導管1を同軸的に取り囲む環状導管2よりも僅かに長い。しかしながら、内側蒸気導管1と環状導管2が同じ長さを持つように構成することも可能である。
【0023】
蒸気導管1には上流側端部1aの領域において、接続ノズル13が配置されている。この接続ノズル13を介して、内側蒸気導管1は蒸気導入ラインに接続することができ、
図1〜3には示されていないが、それによって、熱い蒸気、又は蒸気と空気との混合気が導入され得る。出口導管3の下流側端部には、出口ラインを接続できるように、追加の接続ノズル14が設けられている。
【0024】
内側蒸気導管1を同軸的に取り囲む外側の環状導管2はまた、上流側端部2a及び下流側端部2bを有している。外側環状導管2の上流側端部2aでは、この導管は、(
図2に示すような)リアクターブロック4のラジアル穴(半径方向穴)5と接続されている。
図2が示すように、外側環状導管の上流側端部2aにおけるラジアル穴5は、環状導管2の中に向けて接線方向に開口している。ラジアル穴5には、追加の接続ノズル16が配置される。この接続ノズル16を介して、ラジアル穴5はミルク供給ライン(
図1〜3には示さず)に接続され得る。このミルク供給ラインを介して(冷たい)ミルクをラジアル穴5内に導入することができ、そしてそこから外側環状導管2内に導入することができる。
【0025】
図1及び
図3が示すように、外側の環状導管2は、その下流側端部2bの領域において、円錐部2cを備える。この円錐部2cでは、環状導管2の外径は、円錐形態またはテーパな形態で、通路径(通路幅)が同じままで、出口導管3の直径Dにまで減少する。外側環状導管2の下流側端部2b(そこでは、円錐部2cが出口導管3の直径Dに一致する外径を有する)では、環状導管2が出口導管3内に向けて開口している。内側の蒸気導管1および外側の環状導管2の両方が出口導管3内に開口する領域では、前記蒸気導管1により供給される蒸気、または蒸気と空気の混合気が、外側環状導管により供給されるミルクと混ぜられる。熱い蒸気、または蒸気と空気の混合気をミルクと混合する過程で、ミルクが加熱されると共に、蒸気と空気の混合気が使用される場合には泡立てられてミルク・フォーム(泡状のミルク)が生み出される。
【0026】
熱した又は泡立ったミルクの温度を測定するために、好ましくは温度センサ6が、出口導管3の下流領域に設けられる。温度センサ6は、出口導管3内に開口するラジアル穴(半径方向穴)17に配置される。
【0027】
図4は、本発明に従う加熱ユニット10を用いたミルクを加熱し泡立たせるための装置(又は器具)のダイアグラム表示を示す。このダイアグラムでは、蒸気導管1の上流側端部1aが蒸気導入ライン12に接続されている。この蒸気導入ライン12(そこには逆止弁12aが配置されている)は、当該加熱ユニット10を、蒸気と空気の混合気を発生させるためのデバイス20に接続する。その蒸気と空気の混合気を発生させるためのデバイス20は、蒸気発生器18及び圧縮ガス源19を備えている。蒸気発生器18は、蒸気ライン18aを介して蒸気導入ライン12に接続され、圧縮ガス源19は、圧縮ガスライン19aを介して蒸気導入ライン12に接続されている。圧縮ガスライン19aには、電気的に制御されるスイッチ弁19b(例えばソレノイド弁)、逆止弁19c、および制御可能なスロットル弁19dが配置されている。蒸気ライン18aにも、電気的に制御されるスイッチ弁18b(例えばソレノイド弁)が配置されている。
【0028】
図4に示す装置において、本発明に従う加熱ユニット10の環状導管2の上流側端部2aは、ミルク供給ライン11に接続されている。ミルク供給ライン11の一方の自由端は浸漬チューブの形態に構成され、冷たいミルクを蓄えるタンク22内に浸されている。ミルク供給ライン11には、逆止弁11a、ポンプ21、および制御可能なスロットル弁11bが配置されている。ポンプ21によって、冷たいミルクが浸漬チューブを介してタンク22から引き出され得ると共に、そこから加熱ユニット10の環状導管2内に搬送され得る。引き出したミルクの温度を測定するために、好ましくは温度センサ23がミルク供給ライン11に配置される。
【0029】
出口ライン15は、加熱ユニット10の出口導管3の下流端に接続されている。出口ライン15の一方の自由端はカップ24内に開口する。加熱ユニット10で生み出された製品は、それは
図4に示す実施例では泡状ミルクであるが、出口ライン15を経由してカップ24に搬送される。
【0030】
制御ユニット25が当該装置を制御する目的で設けられている。制御ユニット25は、冷えたミルクの温度を測定する温度センサ23、及び、製品(つまり、熱したミルクや泡状ミルク)の温度を測定する温度センサ6とリンクしている。加えて、制御ユニット25は、蒸気ライン18a及び圧縮ガスライン19aにそれぞれ配置されたスイッチ弁18b,19bの開閉を制御するように構成されている。制御ユニット25はまた、ミルク供給ライン11におけるポンプ21を制御する役割も担う。
【0031】
図4に示す装置の好ましい実施例によれば、圧縮ガス源19は、圧縮ガスの圧力パルス(圧力の脈動)を発生する。この目的のために、圧縮ガス源19は、ガス(具体的には空気)を圧縮して圧縮ガス(圧縮空気)を生み出す圧縮機を備える。圧縮ガス源19は好ましくは、圧縮ガスライン19aを介して蒸気導入ライン12の中に、予め設定可能な周波数で圧縮ガスの周期的な圧力パルスを注入(又は噴入)可能となる態様で構成されている。圧縮ガス源19は好ましくは、パルス幅変調で作動させることができる。そのような作動は、制御ユニット25によって実行される。
【0032】
圧縮ガス源19の圧力パルスは、圧縮ガスライン19aを介し、制御可能なスロットル弁19dを通って蒸気導入ライン12の中へ、調節可能な周波数で周期的に注入されることが好ましい。蒸気導入ライン12においては、圧縮ガス(具体的には圧縮空気)のパルスが、蒸気源18により蒸気ライン18aを経由して蒸気導入ライン12に搬送された熱い蒸気と混ぜられ、蒸気導入ライン12内には蒸気と空気のパルス化(脈動化)された混合気が発生する。蒸気及び空気のパルス化混合気は、蒸気導入ライン12を介して加熱ユニット10の内側蒸気導管1に導かれ、そこから出口導管3内に流れ込む。出口導管3では、蒸気及び空気の混合気のパルスが、外側環状導管2を介して加熱ユニット10内に導かれた冷えたミルクと混合され、そのことにより、ミルクが加熱され且つ泡立てられて泡状ミルクが作り出される。こうして作り出された製品(泡状ミルク)は、出口導管3を経由して出口ライン15に搬送され、更にそこからカップ24内に搬送される。
【0033】
圧縮ガス源19によって発生される圧力パルスのパラメーター、例えばパルスの周波数や振幅を調節することで、加熱ユニット10で製造される泡状ミルクの組成に影響を及ぼしたり、その組成を調節したりすることが可能である。圧力パルスの周波数および振幅を所望の値に調節できるようにするために、制御ユニット25は調節手段(例えば、制御ダイヤル若しくはボタン)を備え、そのような調節手段によって、圧力パルスの周波数及び/又は振幅が最小値と最大値との間で無制限に(無限定に)調節可能であることは好ましい。圧力パルスの振幅は、例えば、圧縮ガス源19の圧縮機の出力を、又は制御可能なスロットル弁19dの位置を調節することで、制御することができる。
【0034】
製造された泡状ミルクの濃度(具体的には液体に対する泡の比率)、並びに、泡のその他のパラメーター、例えば、そのクリーム状の程度、多孔性(多孔率)、泡濃度および泡安定性(廃液特性、drainage)は、圧力パルスの適切なパラメーターを選択することにより影響され得る。よって、該装置のオペレータ(操作者)は、泡立てプロセスに先だって及び泡立てプロセス時においてさえ、圧力パルスのパラメーターを変更することで泡の特性に影響を及ぼすことができる。かくして例えば、蒸気導入ライン12に周期的に注入される圧力パルスのパルス反復数(即ちパルス周波数)を、泡立てプロセス時でも変えることができる。このやり方では、例えば、該装置に配置された制御ダイヤルによってパルス周波数を最小値と最大値との間で無制限に(無限定に)調節し、そのことにより、生み出される泡の濃度を予め定めた制限内で「微細」と「粗」の間で選択することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 内側の蒸気導管
1a 上流側端部
1b 下流側端部
2 外側の環状導管
2a 上流側端部
2b 下流側端部
2c 円錐部
3 出口導管
4 リアクターブロック(加熱ユニットの本体部)
4a 前端開口部
4b 前端開口部
5 ラジアル穴
6 温度センサ
10 加熱ユニット
11 ミルク供給ライン
12 蒸気導入ライン
18 蒸気発生器
19 圧縮ガス源
20 デバイス
A リアクターブロックの長手方向中心軸線