特許第6375031号(P6375031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6375031加工用ノズル、加工ヘッドおよび光加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375031
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】加工用ノズル、加工ヘッドおよび光加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/144 20140101AFI20180806BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20180806BHJP
【FI】
   B23K26/144
   B23K26/34
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-160781(P2017-160781)
(22)【出願日】2017年8月24日
(62)【分割の表示】特願2016-510851(P2016-510851)の分割
【原出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-8315(P2018-8315A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2017年9月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 経済産業省「産業技術開発(次世代産業用三次元造形システム技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】津野 聡
(72)【発明者】
【氏名】笹木 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小原 豪
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直忠
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−340583(JP,A)
【文献】 特開2012−66290(JP,A)
【文献】 特開平7−51872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/144
B23K 26/34
B22F 3/115
B33Y 30/00
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を通過させる光線経路を内包するインナーコーンと、
前記インナーコーンの外側に配置されたアウターコーンと、
前記インナーコーンと前記アウターコーンとの間隙で形成され、加工用の粉体を含有する流体を加工面に向けて射出する射出口を備えた流体射出流路と、
前記インナーコーンの外周に設けられ、前記流体を導入する流入口を前記流体射出流路に対して前記光線経路側に有し、前記流入口から導入した前記流体を、前記流入口より前記光線経路から離れる方向に設けられた前記流体射出流路の上流端部に拡散させて誘導する流体誘導流路と、
を備える加工用ノズル。
【請求項2】
前記インナーコーンと前記アウターコーンとは、同軸に配置され、前記流体誘導流路は、前記流体を前記流体射出流路に誘導するように開口された開口部を少なくとも1つ有し、前記開口部と前記流体射出流路との間に前記流体を拡散させるバッファを有する請求項1に記載の加工用ノズル。
【請求項3】
前記流体誘導流路は、前記流入口を少なくとも1つ有し、
前記開口部の数は、前記流入口の数よりも多い請求項2に記載の加工用ノズル。
【請求項4】
前記流体誘導流路は、シーケンシャルに並ぶ複数の分岐部により構成され、
各分岐部は、流体が流入する分岐部流入口と、前記流体が流出する分岐部開口部とを有し、
前記シーケンシャルに並ぶ複数の分岐部のうち最後の分岐部の分岐部流入口は、その分岐部の分岐部開口部よりも光線経路側に配置される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加工用ノズル。
【請求項5】
前記複数の分岐部のうち特定の分岐部の分岐部流入口は、その分岐部の分岐部開口部よりも外側に配置されることにより、その分岐部に流れる前記流体を前記光線経路に近づく方向に誘導する請求項4に記載の加工用ノズル。
【請求項6】
前記開口部は、前記光線経路を軸として、回転対称に配置されている請求項請求項3乃至5のいずれか1項に記載の加工用ノズル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の加工用ノズルを用いた光加工装置。
【請求項8】
前記流体に含まれる材料を収容する材料収容部と、
前記流体を前記加工用ノズルに供給する材料供給部と、
をさらに備えた請求項7に記載の光加工装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の加工用ノズルと、
前記光源と、
前記光源から発生した光を伝送する光伝送部と、
前記光伝送部から伝送された光を前記光線経路に誘導する光学系と、
をさらに有する加工ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の加工ヘッドを備えた光加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工材料を含む流体に光を照射して造形物を造形する光加工装置において、当該流体を加工点に噴射する加工用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、加工ノズル内の粉体流路であるスリットへ向けて、スリットの外側から粉体を供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7223935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、粉体流に乱流が発生するため、粉体流の流速と粉体密度とにムラが生じ、粉体収束性を向上させることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工用ノズルは、
光源からの光を通過させる光線経路を内包するインナーコーンと、
前記インナーコーンの外側に配置されたアウターコーンと、
前記インナーコーンと前記アウターコーンとの間隙で形成され、加工用の粉体を含有する流体を加工面に向けて射出する射出口を備えた流体射出流路と、
前記インナーコーンの外周に設けられ、前記流体を導入する流入口を前記流体射出流路に対して前記光線経路側に有し、前記流入口から導入した前記流体を、前記流入口より前記光線経路から離れる方向に設けられた前記流体射出流路の上流端部に拡散させて誘導する流体誘導流路と、
を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工装置は、
上記加工用ノズルを用いた。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工ヘッドは、
上記加工用ノズルと、
前記光源と、
前記光源から発生した光を伝送する光伝送部と、
前記光伝送部から伝送された光を前記光線経路に誘導する光学系と、
をさらに有する。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る光加工装置は、
上記加工ヘッドを備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉体流に乱流が発生しないので、粉体流の流速と粉体密度とにムラが生じず、粉体収束性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す概略上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す概略側断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す概略側断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルの分岐部(上段)における粉体流の流れの概要を説明する概略上面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルの分岐部(下段)における粉体流の流れの概要を説明する概略上面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る加工用ノズルの構成を示す斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る加工用ノズルの構成および粉体流の流れを示す概略上面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る光加工装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての加工用ノズルについて、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る加工用ノズル100の構成を説明する斜視図である。加工用ノズル100は、光加工装置のヘッド先端に配置され、取り付けられるものである。そして、加工用ノズル100を取り付けた光加工装置は、加工面160上の加工点161に向けてレーザ光などの光線190を集光させる。
【0014】
材料としての金属粉体などは、不活性ガスに混合されて、粉体流170などの流体として加工用ノズル100に対して供給され、加工用ノズル100の先端の射出口131から加工点161に向けて射出される。そして、光加工装置は、加工用ノズル100から噴射された粉体流170に含まれる金属粉体などをレーザ光などの光線190により溶融することにより、3次元造形物の造形や肉盛溶接などを行う。
【0015】
図1に示したように、加工用ノズル100は、インナーコーン101と、アウターコーン102と、流体射出流路(スリット)103と、流体誘導流路(分岐部)104とを含む。インナーコーン101は、図示しない光源からの光線190を通過させる光線経路150を内包する。アウターコーン102は、インナーコーン101の外側に配置されている。スリット103は、インナーコーン101の外面とアウターコーン102の内面とで形成され、加工面160に向けて開口する射出口131を備える。流体誘導流路104およびその流入口142は、同軸に配置された2つの環状壁から構成される。それら2つの環状壁の外周側には、所定間隔に複数形成された分岐通過口141が設けられている。分岐通過口141は、流体が光線経路150から離れる方向に誘導されるように開口されている。以上の構成により、流入口142から流入した流体は、流体誘導流路104によって分岐通過口141に導かれる。さらに、流体射出流路103に向けて光線経路150から離れる方向に誘導される。
【0016】
加工用ノズル100は、全体的な構造として、外面が先細り(円錐)形状のインナーコーン101の外側に、内面で形成される空間が同じく先細り(円錐)形状のアウターコーン102を同軸に配置した構造となっている。そして、このような構造としたことにより、インナーコーン101の外面とアウターコーン102の内面とで形成される隙間、つまり、スリット103が形成される。なお、インナーコーン101とアウターコーン102とは同軸に配置しなくてもよく、インナーコーン101とアウターコーン102との間にスリット103が形成されれば、配置の仕方は限定されない。
【0017】
そして、材料である金属粉体などを含む粉体流170は、このスリット103内を通過して、加工点161まで到達する。また、レーザ光などの光線190は、光線経路150を通過して加工点161まで到達する。
【0018】
分岐部104の外径は、円錐形状のインナーコーン101の底面の外径よりも小さくなっており、分岐部104とアウターコーン102との間には空間が形成され、この空間がバッファ槽143となる。
【0019】
分岐部104には、分岐通過口141と流入口142とが設けられている。流入口142から供給された粉体流170は、分岐部104へと流入する。
【0020】
そして、流体誘導路としての分岐部104内へ流入した粉体流170は、分岐部104に設けられた分岐部104の開口部である分岐通過口141を通過して、分岐部104の内側から外側へと流れていく。分岐通過口141を通過して流れ出た粉体流170は、バッファ槽143へと流入する。その後、粉体流170は、バッファ槽143からスリット103へと流入し、スリット103を通過して加工点161に供給される。したがって、加工用ノズル100の先端の射出口131からは、加工点161に対して、粉体流170が射出され、射出された粉体流170に対して光線経路150からレーザ光などの光線190が照射される。
【0021】
光線経路150には、光線190を通過させると共に不活性ガスを流している。不活性ガスとしては、アルゴンやヘリウム、窒素などがあるがこれらには限定されない。不活性ガスを流すことにより、加工面160や加工点161の酸化を防止し、さらに、加工面160や加工点161からのヒュームなどの異物が、加工用ノズル100へ混入するのを防止できる。
【0022】
次に、図2および図3を用いて、加工用ノズル100による流体の供給経路について説明する。図2は、本実施形態に係る加工用ノズル100の構成を説明する概略上面図である。図3は、本実施形態に係る加工用ノズル100の構成を説明する概略側断面図である。なお、図2においては、図面が煩雑になるのを避けるため、インナーコーン101やアウターコーン102、分岐部104の厚みなどは適宜省略している。
【0023】
図2に示したように、複数の分岐通過口141は、中心軸180に対して回転対称に配置されている。ここで、回転対称とは、対象物を回転軸周りに回転させたときに、回転角360°未満でもとの形状と一致することをいう。なお、本実施形態においては、分岐通過口141の分岐数は、8(8分岐)となっているが、分岐数はこれには限定されず、2分岐、4分岐、16分岐などであってもよい。また、通過分岐口141を回転対称に配置することにより、複数の分岐通過口141が一定の間隔で並ぶので、粉体流170が中心軸180に対して等方的に等分岐される。
【0024】
図3に示したように、図示しない材料供給部から供給された粉体流170は、同図の矢印で示したように加工点161に供給される。詳細には、流入口142から流入した粉体流170は、分岐通過口141を通過してバッファ槽143へ向かって、射出される。すなわち、粉体流170は、分岐部104内から中心軸180に対して外側へ向かって射出され、バッファ槽143へ流入する。そして、バッファ槽143に流入した粉体流170は、インナーコーン101とアウターコーン102との間隙で形成されるスリット103へ流入する。スリット103に流入した粉体流170は、スリット103内を流れ、スリット103の先端部の射出口131から加工点161へ向けて射出される。
【0025】
以上のように、粉体流170は、中心軸180から遠ざかる方向、すなわち、内側から外側へ向かう方向へ誘導される。さらに、分岐通過口141が回転対称に配置されているので、粉体流170などの流体を、等方的に自然に拡散させることができる。これにより、粉体流170の濃度を均一化することができるので、濃度の濃淡ムラを低減することができる。これとは反対に、粉体流170を中心軸180に向かう方向、つまり、粉体流170が圧縮される方向に粉体流170を流すと、粉体流170内の粉体の濃度に濃淡ムラが生じる。つまり、粉体流170を等方的に自然拡散させることにより、粉体流170内の粉体の濃度の濃淡ムラを低減できる。そして、加工用ノズル100内部において、粉体流170の濃淡ムラが低減すると、スリット103における粉体流170の濃度の均一性も増大し、加工点161における粉体流170の粉体収束性が向上する。
【0026】
また、粉体流170は、流入口142という狭い空間から、分岐通過口141を介してバッファ槽143による広い空間に流入することになるので、粉体流170の流速が一旦低下する。そして、粉体流170の流速が低下することにより、粉体流170がバッファ槽143に滞在する時間が増加するので、粉体流170や粉体流170に含まれる粉体が、バッファ槽143において自然拡散される時間が増加する。つまり、バッファ槽143において、粉体流170が十分に拡散されるので、粉体流170に含まれる粉体の濃淡ムラをより低減することができ、乱流の発生も抑制できる。そして、バッファ槽143内部において、粉体流170の濃淡ムラが低減すると、スリット103における粉体流170の濃度の均一性も増大し、加工点161における粉体流170の粉体収束性が向上する。
【0027】
粉体流170の流路としてのスリット103は、加工点161に近づくにつれて、スリット103の中心軸を横切る断面積が小さくなるようになっている。そして、スリット103を流れる粉体流170の流速(速度)は、スリット103の断面積にほぼ反比例するので、粉体流170が加工点161に近づくにつれて流速は、上がっていく。つまり、射出口131において、射出する粉体流170の射出速度を高めることができるので、粉体流170を加工点161まで確実に到達させることができると共に、粉体収束性も向上させることができる。なお、スリット103の中心軸を横切る断面積の大きさは、加工点161に近づくにつれて小さくなるものには限定されず、例えば、一定であっても徐々に大きくなるものであってもよい。
【0028】
また、光線190はレーザ光に限られるものではなく、加工点で粉体材料を溶融することができるものであればどの様な光線でもよい。例えば、赤外線から紫外線領域の電磁波などの光線であってもよい。
【0029】
本実施形態によれば、粉体流に乱流が発生しないので、粉体流の流速と粉体密度とにムラが生じず、粉体収束性を向上させることができる。また、粉体流に含まれる粉体の加工用ノズル内部での濃淡ムラを低減できるので、粉体収束性を向上させることができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る加工用ノズルについて、図4乃至図7を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る加工用ノズルの構成を説明するための斜視図である。図5は、本実施形態に係る加工用ノズルによる流体供給の概要を説明するための概略側断面図である。本実施形態に係る加工用ノズルは、上記第1実施形態と比べると、粉体流の流入用パイプが設けられ、分岐部が上下2段構成になっている点で異なる。その他の構成および動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0031】
加工用ノズル400は、分岐部404a、分岐部404b、導入用パイプ444および分岐通過口445を備える。分岐部404aには、導入用パイプ444が設けられ、導入用パイプ444の導入口442は、加工用ノズル400の外側(外部)に位置している。つまり、導入口442は、分岐部404aよりも中心軸180から離れた位置にある。導入用パイプ444または導入口442をこのように配置することにより、粉体流170が、加工用ノズル400の外側から供給される場合であっても、粉体流170を中心軸180に近い側、すなわち、加工用ノズル400の内部に導入することが可能となる。
【0032】
そして、分岐部404aと分岐部404bとは、上下に2段で並んでおり、分岐部404aおよび分岐部404bにより、粉体流170を誘導する流体誘導流路が形成されている。粉体流170などの流体は、分岐部404aに設けられた分岐部開口部と分岐部404bに設けられた分岐部流入口をつなぐ分岐通過口445から分岐部404bへ流入し、分岐部404bに設けられた分岐部開口部を通過してスリット103へと流れ込んでいく。つまり、導入用パイプ444の導入口442から供給された粉体流170は、上段の分岐部404aを流れ、その後、下段の分岐部404bへ流入する。分岐部404bへ流入した粉体流170は、分岐部404bに設けられた分岐部開口部からバッファ槽143に連通する4か所設けられた分岐通過口441からバッファ槽143へと流出する。バッファ層143へ流出した粉体流170は、スリット103へと流れ込み、射出口131から加工面160へ向かって射出される。
【0033】
次に、図6および図7を用いて、分岐部404aおよび分岐部404bにおける粉体流170の流れについて説明する。図6は、本実施形態に係る加工用ノズルの上段の分岐部404aにおける粉体流170の流れの概要を説明する概略上面図である。図7は、本実施形態に係る加工用ノズルの下段の分岐部404bにおける粉体流170の流れの概要を説明する概略上面図である。なお、図6および図7においては、図が煩雑になるのを避けるため、分岐部の厚みなどは適宜省略している。
【0034】
図6に示したように、導入用パイプ444の導入口442から分岐部404aへ供給された粉体流170は、分岐部404aの内部で2つに分岐される。そして、2つに分岐した粉体流170は、分岐部404aの底面に位置する分岐通過口445から下段の分岐部404bへ流入する。すなわち、粉体流170は、上段の分岐部404aから下段の分岐部404bへと落下することにより、分岐部404bへと流入する。
【0035】
図7に示したように、分岐部404aで2分岐され、分岐部404bに流入した粉体流170それぞれは、分岐部404bの内部でさらに2つに分岐され、粉体流170は、合計4つに分岐される。そして、4つに分岐された粉体流170は、分岐部404bからバッファ槽143に連通する4つの分岐通過口441からバッファ槽143へと流出する。
【0036】
以上のように、粉体流170は、分岐部404aで2分岐された後、分岐部404bでさらに2分岐されて4分岐された粉体流170となる。そして、4分岐された粉体流170は、分岐通過口441からバッファ槽143を通過して、スリット103へと流入し、射出口131から加工点161へ噴射され、供給される。
【0037】
また、分岐通過口441は、中心軸180に対して回転対称に配置されているので、粉体流170を等方的に均等分岐することができる。なお、分岐部404aおよび分岐部404bにおける分岐の数は、本実施形態に示した数(2分岐から4分岐)には限定されず、例えば、4分岐から8分岐、8分岐から16分岐などであってもよい。
【0038】
本実施形態によれば、光線経路に対して粉体流を放射状に広げることで粉体流をノズル内部で拡散させることができる。その際、従来のように外部で分岐された流体同士がノズル内部でぶつかり合って生じる乱流が発生しない。このため、粉体流の流速にムラが生じず、粉体収束性を向上させることができる。また、粉体流に含まれる粉体の加工用ノズル内部での濃淡ムラを低減できるので、粉体収束性を向上させることができる。さらに、粉体流が均等に分岐されるので、スリットにおける粉体流の濃度の均一性が増大し、粉体収束性が向上する。また、光線経路に対して放射状の粉体流の流れを作り出すことができるので、粉体流の自然な拡散を実現できる。
【0039】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る加工用ノズルについて、図8および図9を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る加工用ノズル800の構成を説明するための斜視図である。なお、同図においては、インナーコーンとアウターコーンとで構成される加工用ノズルの先端部分などは適宜図示を省略している。本実施形態に係る加工用ノズル800は、上記第2実施形態と比べると、粉体流を順次2分岐、4分岐して最終的に8分岐する構成となっている点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0040】
加工用ノズル800は、分岐部804cをさらに備える。つまり、加工用ノズル800は、上流側から順に、分岐部404a、分岐部404b、分岐部804cの順に分岐部が並んだ、3段構造の構成となっている。
【0041】
分岐部404bおよび分岐部804cは、分岐部404aの下部に設けられており、分岐部804cは、分岐部404bの外側に設けられている。すなわち、分岐部804cの直径は、分岐部404bの直径よりも大きくなっている。そして、分岐部404a、分岐部404bおよび分岐部804cは、中心軸180に対して同軸に配置されている。
【0042】
このように分岐部404a、404b、804cを順に並べることにより、流体誘導路としての分岐部404a、404b、804cがシーケンシャルに並ぶことになる。粉体流170は、導入用パイプ444の導入口442から、中心軸180に向かって噴射され、分岐部404aに導入される。なお、本実施形態においては、導入用パイプ444を用いて、分岐部404aの外側から粉体流170を導入する例を示したが、上記第1実施形態で示したように、分岐部404aの上側から粉体流170を導入してもよい。
【0043】
図9は、加工用ノズル800の構成および粉体流の流れを模式的に示した概略上面図である。なお、同図においては、図が煩雑になるのを避けるため、各分岐部の厚みなどは適宜省略している。
【0044】
導入用パイプ444から分岐部404aに流入した粉体流170は、左右2つに分岐され、分岐部404aの底面に設けられた2つの分岐通過口445から、分岐部404aの下部に設けられた分岐部404bへと流入する。分岐部404bに流入した粉体流170のそれぞれは、さらに2つに分岐され、合計4つの粉体流170へと分岐される。そして、4つに分岐された粉体流170は、分岐部404bから分岐部804cに連通する4つの分岐通過口441から、分岐部804cへと流出する。
【0045】
分岐部804cへと流出した4つの粉体流170のそれぞれは、さらに2つに分岐され、合計8つの粉体流170へと分岐される。そして、8つに分岐された粉体流170は、分岐部804cからバッファ槽143に連通する8つの分岐通過口841から、バッファ槽143へと流出する。
【0046】
すなわち、加工用ノズル800では、粉体流170は、分岐部404aにおいて2分岐され、次に分岐404bにおいて4分岐され、さらに、分岐部804cにおいて8分岐されて、バッファ槽143へと導かれる。
【0047】
本実施形態によれば、粉体流に乱流が発生しないので、粉体流の流速と粉体密度とにムラが生じず、粉体収束性を向上させることができる。また、分岐部を3段構成としたので、粉体流の流速を抑えられ、粉体流の拡散時間を長くでき、粉体流を均等化することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、分岐部が3段構造の例を用いて説明をしたが、分岐部の構成は3段構造には限定されず、例えば、5段や7段などの3段よりも多い段数構成の構造であってもよい。
【0049】
また、上述の説明では、分岐部404b(第2段目)から分岐部804c(第3段目)へと段数が進むと、粉体流170が中心軸180よりも遠ざかる方向に誘導される例で説明をした。しかしながら、例えば、4段以上の多段構成の構造を採用した場合、最終段の分岐部(バッファ槽143の直前の分岐部)以外の段数の分岐部において、中心軸180に近づく方向に粉体流170を誘導する分岐部を設けてもよい。このような構成とすることで、粉体流170の流速と粉体密度とを自在に制御することが可能となる。
【0050】
[第4実施形態]
次に本発明の第4実施形態としての光加工装置(Optical Machining apparatus)1000について、図10を用いて説明する。光加工装置1000は、上述の実施形態で説明した加工用ノズル100、400、800のいずれかを含み、集光した光が生み出す熱で粉体流に含まれる材料を溶融することにより三次元造形物を造形したり、肉盛溶接を生成したりする装置である。ここでは一例として、加工ノズル200を備えた光加工装置1000について説明する。
【0051】
《装置構成》
光加工装置1000は、光源1001、光伝送部1015、ステージ1005、材料収容装置1006、材料供給部1030、加工ヘッド1008および制御部1007を備えている。
【0052】
光源1001としては、ここではレーザ光源を用いることとするが、LED(Light Emitting Diode)、ハロゲンランプ、キセノンランプなどを用いることができる。材料の溶融に使う光線はレーザ光に限るものではなく、加工点で粉体材料を溶融することができるものであればどのような光線でもよい。例えば、電子ビームや、マイクロ波から紫外線領域の電磁波などの光線であってもよい。
【0053】
光伝送部1015は、例えばコア径がφ0.01〜1mmの光ファイバであり、光源1001で発生した光を加工ヘッド1008に導く。
【0054】
材料収容装置1006は、加工ヘッド1008に対し、材料供給部1030を介して材料を含むキャリアガスを供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子などの粒子である。キャリアガスは、不活性ガスであり、例えばアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、でよい。
【0055】
材料供給部1030は例えば樹脂あるいは金属のホースであり、キャリアガスに材料を混入させた粉体流170を加工ヘッド1008へと導く。
【0056】
加工ヘッド1008は、光線としての光を集束させる集束装置を内部に備え、その集束装置の下流に、加工用ノズル200が取り付けられている。加工ヘッド1008に供給されたレーザ光は、内部に設けられたレンズ等からなる光学系を介することで、加工面160において集光するように調整されており、加工用ノズル200内部を経て加工面160に照射される。光学系は、レンズ間隔等を制御することで、集光位置を制御可能に設けられている。
【0057】
制御部1007は、細書きまたは太書きなどの造形条件を入力し、入力した造形条件に応じて光源1001からのレーザ光の出力値を変更すると共に、加工用ノズル200の外側筐体をスライドさせる。これにより、加工用ノズル200から射出される粉体による粉体スポット径を溶融プール径に合わせて制御する。
【0058】
《装置動作》
次に、光加工装置1000の動作について説明する。造形物1010は、ステージ1005の上で作成される。加工ヘッド1008から射出される射出光は、造形物1010上の加工面160において集光される。加工面160は、集光によって昇温され、溶融され、一部に溶融プール162を形成する。
【0059】
材料は加工用ノズル200から加工面160の溶融プール162へと射出される。そして、溶融プール162に材料が溶け込む。その後、溶融プール162が冷却され、固化することで加工面160に材料が堆積され、3次元造形が実現する。
【0060】
本実施形態によれば、粉体収束性のよい加工用ノズルを用いるので、精度の高い光加工を行うことができる。
【0061】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0062】
上述の説明では、加工用ノズル200、光源1001、光伝送部1015および光学系をそれぞれ別個の部材として説明をしたが、これらの部材を一体的に形成して加工ヘッド1008としてもよい。そして、光源1001から光伝送部1015を伝って伝送された光は、加工用ノズル200に到達し、光伝送部1015の終端から射出される。この際、光は光伝送部1015の終端から所定の発散角で発散される。この発散光は、加工用ノズル200内の光学系によって、いったん平行光に変換され、さらに加工面160に向けて集光される。ここで、発散角が大きいほど、平行光のビーム径は大きくなる。
【0063】
一般的に、発散角を大きくするよりも小さくするほうが技術的に難しい。つまり、ビーム径を小さくするのは技術的に難しく、光源および光伝送部の高コスト化や大型化を招いてしまう。そのため、ビーム径が大きくても動作する光加工ヘッドが望まれる。
【0064】
本ノズルを用いた光加工ヘッド1008は、流体誘導流路を光線経路のまわりに配置することができる。そのため、どのようなビーム径でも設計可能であるという効果がある。一方、従来のノズルの外部で分岐された分岐流体をノズルの外部から内部へ流入させ、ノズル内部で分岐流体同士をぶつけ合い、合流および拡散させる必要がある。そのため、従来では光線経路を大きく取ることが難しかった。
【0065】
また、上述の説明では、加工用ノズル200、材料供給部1030および材料収容装置1006をそれぞれ別個の部材として説明をしたが、これらの部材を一体的に形成して光加工装置1000としてもよい。材料は、粉体流によって材料収容装置1006から材料供給部1030を通り、加工用ノズル200に誘導される。この際、本実施形態においては供給経路に分岐部を必要としない。このため、装置全体の構成がシンプルになり、コンパクト化が可能になるという効果がある。また、分岐部の位置によって粉体流の圧力損失が変動する。粉体流の圧力損失は粉体収束性に影響する。本ノズルを用いれば、分岐部が射出口に対して常に同じ位置に配置されるため、そのような粉体収束性の劣化を低減できるという効果がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10