特許第6375038号(P6375038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中央化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6375038-包装用容器及び食品の包装方法 図000002
  • 特許6375038-包装用容器及び食品の包装方法 図000003
  • 特許6375038-包装用容器及び食品の包装方法 図000004
  • 特許6375038-包装用容器及び食品の包装方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6375038
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】包装用容器及び食品の包装方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/34 20060101AFI20180806BHJP
   B65D 21/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   B65D1/34
   B65D21/02 410
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-195686(P2017-195686)
(22)【出願日】2017年10月6日
【審査請求日】2017年10月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大熊 智弘
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04373634(US,A)
【文献】 特開2011−042377(JP,A)
【文献】 実開昭50−130533(JP,U)
【文献】 実開昭62−113033(JP,U)
【文献】 特開2006−327629(JP,A)
【文献】 特開平05−213358(JP,A)
【文献】 米国特許第03288340(US,A)
【文献】 特開2017−154793(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075780(WO,A1)
【文献】 特開2014−101132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/34
B65D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層を含む合成樹脂の積層体がシート成型された状態の包装用容器であって、
底部と、当該底部の周端から立ち上がるように連続して設けられた側壁部と、当該側壁部の上端から外側に延出するように設けられた平面状のフランジ部と、を備え、
前記側壁部は、
前記フランジ部より下側に連続して設けられた上側側壁部と、
前記上側側壁部より下側かつ内側に設けられた下側側壁部と、
前記上側側壁部の下端と前記下側側壁部の上端とが同等の高さに位置し、当該上側側壁部の下端全周から当該下側側壁部の上端全周まで内側に突き出るように設けられた平面状の段差部と、
前記上側側壁部から前記段差部に渡って、当該上側側壁部及び当該段差部を超えない範囲で内側かつ穴状に突き出るように設けられた第一凸部と、
前記上側側壁部から前記段差部に渡って、前記第一凸部を超えない範囲で内側かつ全周に突き出るように設けられた第二凸部と、を有し、
前記フランジ部と前記第一凸部とのガスバリア層の厚みの比率は、1:0.4以上である
ことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
食品が収納された状態の請求項1に記載の包装用容器を蓋体で封止する
ことを特徴とする食品の包装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、小売店で販売される食品を収納する包装用容器及び包装用容器の使用方法に関し、詳細には、生産及び運搬、並びに食品の長期保存に適した包装用容器及び食品の包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売店で販売される弁当や惣菜等の食品を収納する包装用容器は、大量生産及び一括運搬の観点から、空状態の包装用容器同士を積み重ねたとき、互いに嵌合せず取り外し容易な構造が採用されていた。例えば、包装用容器を構成する側壁部分に、段差部分及びこれと近接する位置から側壁部分に対して外方に窪んだ凹部分(スタック機能)を設け、積み重ねたときに上側の包装用容器に設けた凹部分が下側の包装用容器に設けた段差部分に当接することで、上側の包装用容器が下側の包装用容器に沈み込まないようにスタック状態を形成してきた。
【0003】
一方、包装用容器の形状に応じて、上述したスタックの構造が工夫されてきた。例えば、カップ状の包装用容器に関し、下方胴部より外方に窪んだ上方胴部(スタック部含む)と、上方胴部より内方に突き出たビード部とを備え、積み重ねたときに上側の包装用容器のスタック部が下側の包装用容器のビード部に当接する構造が開示されている(特許文献1参照。)。この構造によれば、上方胴部がビード部の下方に連通するように設けられたことにより、上側の包装用容器と下側の包装用容器との距離を上方胴部の分だけ確保することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−280757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、上方胴部が下方胴部及びビード部と比べて外方に窪んでいるため、シート成型時には上方胴部の薄肉化の恐れがある。具体的には、金型に先に接する部分(下方胴部及びビード部)より後に接した部分(上方胴部)の方が、真空や圧空により引っ張られる分、薄肉化する恐れがある。すなわち、上方胴部を構成する基材及び積層フィルムの薄肉化により、ガスバリア機能が部分的に低下する恐れがある。
【0006】
従来に比べ、食品の保存期間の長期化に伴い、容器本体及び蓋体に対し、酸素、窒素、二酸化炭素、及び水蒸気等の透過率を抑制するガスバリア機能が注目されている。しかしながら、部分的な薄肉化によるガスバリア機能の低下は、包装用容器全体として所望のガスバリア水準を満たさない恐れがある。一方、生産効率の高いシート成型にとって、成型品の製造及び運搬時の積み重ねは不可欠なため、スタックの具備は必須要件となっている。
【0007】
このような包装用容器に関する未解決の課題に対し、発明者等は創意工夫の末、従来技術と全く異なる技術的思想に基づく新たな包装用容器の開発に行き着いた。
そこで、本発明の目的は、シート成型による部分的な薄肉化を回避し、所望のガスバリア性を担保するのみならず、積み重ね時の包装用容器の沈み込みや位置ずれを防止し、所望のスタック性を担保する包装用容器、又は上記包装用容器によるガスバリア性にて食品の品質向上を図る食品の包装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明による包装用容器は、容器本体の側壁部より内方に突き出るように設けられた第一凸部と、上記第一凸部より下方かつ上記側壁部より内方に突き出るように設けられた段差部とを少なくとも備え、上記第一凸部は、上記段差部を超えない範囲で突き出ていることを特徴としてもよい。
【0009】
また、上記段差部から上記第一凸部の上端までの範囲内で上記側壁部より内方に突き出るように設けられた段差状の第二凸部をさらに備え、上記第二凸部は、上記第一凸部を超えない範囲で突き出ていることが望ましい。
【0010】
また、上記第一凸部が、上記側壁部に対して部分的に設けられ、上記第二凸部が、上記第一凸部以外の上記側壁部に対して周方向全部に設けられたことが望ましい。
【0011】
また、上記側壁部の上端から外方に延出するように設けられたフランジ部をさらに備え、上記容器本体を構成する積層体には、ガスバリア層が含まれ、上記フランジ部と上記第一凸部とのガスバリア層の厚みの比率は、1:0.4以上であることが望ましい。
【0012】
すなわち、本発明による包装用容器は、ガスバリア層を含む合成樹脂の積層体がシート成型された状態の包装用容器であって、底部と、上記底部の周端から立ち上がるように連続して設けられた側壁部と、上記側壁部の上端から外側に延出するように設けられた平面状のフランジ部と、を備え、上記フランジ部より下側に連続して設けられた上側側壁部と、上記上側側壁部より下側かつ内側に設けられた下側側壁部と、上記上側側壁部の下端と上記下側側壁部の上端とが同等の高さに位置し、上記上側側壁部の下端全周から上記下側側壁部の上端全周まで内側に突き出るように設けられた平面状の段差部と、上記上側側壁部から上記段差部に渡って、上記上側側壁部及び上記段差部を超えない範囲で内側かつ穴状に突き出るように設けられた第一凸部と、上記上側側壁部から上記段差部に渡って、上記第一凸部を超えない範囲で内側かつ全周に突き出るように設けられた第二凸部と、を有し、上記フランジ部と上記第一凸部とのガスバリア層の厚みの比率は、1:0.4以上であってもよい。
さらに、本発明の包装用容器による食品の包装方法は、食品が収納された状態の上記包装用容器を蓋体で封止することを特徴としてもよい。
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による包装用容器は、シート成型による部分的な薄肉化を回避し、所望のガスバリア性を担保するのみならず、積み重ね時の包装用容器の沈み込みや位置ずれを防止し、所望のスタック性を担保することが期待できる。
また、本発明による食品の包装方法は、上記包装用容器のガスバリア性にて食品の品質向上を図ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態による包装用容器の斜視図である。
図2】上記包装用容器の平面図である。
図3】上記包装用容器の正面図である。
図4】上記包装用容器の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1を参照しつつ、本実施形態による包装用容器(以下、「本包装用容器」ともいう。)及び本包装用容器による食品の包装方法の概要を説明する。
【0016】
本包装用容器は、容器本体の側壁部12(1)より内方に突き出るように設けられた第一凸部3と、この第一凸部より下方かつこの側壁部より内方に突き出るように設けられた段差部2とを少なくとも備え、この第一凸部は、この段差部を超えない範囲で突き出ていることを特徴としてもよい。
【0017】
この構成によれば、シート成型によるこの第一凸部の薄肉化を回避できるため、包装用容器としてガスバリア性を担保するのみならず、所定の高さを有する同形状の容器本体の積み重ね時に、第一凸部3が上側の容器本体に備わる段差部2の裏面を支持して沈み込みを防止することができるため、垂直方向のスタック性を担保することができる。
【0018】
また、段差部2から第一凸部3の上端までの範囲内でこの側壁部より内方に突き出るように設けられた段差状の第二凸部4をさらに備え、この第二凸部は、この第一凸部を超えない範囲で突き出ていてもよい。
【0019】
さらに、第一凸部3が、側壁部12(1)に対して部分的に設けられ、第二凸部4が、この第一凸部以外の側壁部に対して周方向全部に設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、積み重ね時に上側の容器本体の沈み込みを防止するのみならず、揺動による位置ずれを防止するため、さらに水平方向のスタック性も担保することができる。すなわち、第一凸部3の上端より第二凸部4が低く位置するため、積み重ねた上側の容器本体をこの第一凸部より高い位置でさらに支持でき、例えば、この第二凸部をこの第一凸部を除いて側壁部12(1)に対して周方向全部に設けることで、この第一凸部による低位置での支持(点接触)とこの第二凸部による高位置での支持(線接触)が実現し、垂直方向及び水平方向のスタック性の担保が期待できる。
【0021】
また、側壁部12(1)の上端から外方に延出するように設けられたフランジ部5をさらに備え、容器本体を構成する積層体には、ガスバリア層が含まれ、このフランジ部と第一凸部3とのガスバリア層の厚みの比率は、1:0.4以上であってもよい。
【0022】
この構成によれば、ガスバリア層を含む積層体である合成樹脂シートを熱成型した容器本体のうち、最も延伸倍率の低いフランジ部5と比べて、所定の延伸倍率にて成型された第一凸部3のガスバリア層が上記比率を満たすため、ピンホールや薄肉化によるガスバリア性の低下を防ぐことができる。
【0023】
すなわち、本実施形態による包装用容器は、ガスバリア層を含む合成樹脂の積層体がシート成型された状態の包装用容器であって、底部Bと、底部Bの周端から立ち上がるように連続して設けられた側壁部1と、側壁部1の上端から外側に延出するように設けられた平面状のフランジ部5と、を備え、フランジ部5より下側に連続して設けられた上側側壁部12と、上側側壁部12より下側かつ内側に設けられた下側側壁部11と、上側側壁部12の下端と下側側壁部11の上端とが同等の高さに位置し、上側側壁部12の下端全周から下側側壁部11の上端全周まで内側に突き出るように設けられた平面状の段差部2と、上側側壁部12から段差部2に渡って、上側側壁部12及び段差部2を超えない範囲で内側かつ穴状に突き出るように設けられた第一凸部3と、上側側壁部12から段差部2に渡って、第一凸部3を超えない範囲で内側かつ全周に突き出るように設けられた第二凸部4と、を有し、フランジ部5と第一凸部3とのガスバリア層の厚みの比率は、1:0.4以上であってもよい。
また、本包装用容器による食品の包装方法は、食品が収納された状態の上記包装用容器を蓋体で封止することを特徴としてもよい。
【0024】
この構成によれば、包装用容器としてのガスバリア性が担保されているため、例えば、シール状の蓋体(トップシール)をフランジ部3に接着して封止すれば、収納された食品の長期保存が期待できる。すなわち、容器本体及び蓋体がガスバリア性を有するため、ガス置換後の容器本体内の状態を長時間維持することができる。
【0025】
次に、図1図4を参照しつつ、本包装用容器の構造の詳細について説明する。
【0026】
本包装用容器は、例えば、食品を盛り付ける容器本体であり、略長方形状の底部Bと、この底部の周端縁から斜め上方に立設された側壁部1と、この側壁部の上端から外方に延出するように設けられたフランジ部5とで構成され、この側壁部の上端又はその近辺が開口縁に該当してもよい。
なお、底部B、側壁部1の水平方向の端面形状、及びフランジ部5の外周形状は、平面視で正方形状や円形状や楕円形状でもよく、それぞれ同形(相似形)でも異形でもよい。
【0027】
側壁部1は、平面状の段差部2を介して、下側の側壁部11と上側の側壁部12とで構成されてもよい。下側の側壁部11と上側の側壁部12との高さの割合は、容器本体の容量を考慮すると、この上側の側壁部が相対的に低いと好ましいが、この上側の側壁部が相対的に高くても、双方同等でもよい。下側の側壁部11及び上側の側壁部12の形状は、それぞれ傾斜状でも湾曲状でも直立状でもよい。
なお、フランジ部5の全周の投影面積とこのフランジ部の内周縁(又は側壁部1の上端)から底部Bに渡って成型された部分の表面積との面積比率は、1:0.5〜1:2でもよい。面積比率が0.5より小さいと、内容物が収容される表面積が小さく、ボリューム感に欠ける。一方、面積比率が2.0より大きいと、局所的に薄肉化が生じて、ピンホールの発生及びガスバリア層の薄肉化によるガスバリア性の低下が生じる恐れがある。
【0028】
段差部2は、空状態の容器本体を上下に積み重ねたときに、下側の容器本体に備えた第一凸部3の表面がこの段差部の裏面に当接し、上側の容器本体の沈み込みを防止するものが該当してもよい。周方向における段差部2の範囲は、上側の側壁部12に対して周設されていても(全周に設けられても)、部分的(例えば、容器本体の角部分周辺)に設けられてもよい。上側の側壁部12からの突き出し量は、容器本体の使用方法を考慮すると、第一凸部3及び第二凸部4より多いのが好ましい。換言すれば、上側の側壁部12の形状に関わらず、第一凸部3及び第二凸部4を超える範囲で突き出ていてもよい。段差部2のうち、第一凸部3の周辺など部分的に突き出し量が相対的に多いところがあってもよい。
なお、側壁部1に段差部2がない場合、この側壁部と連通するように設けられた底部Bの一部に該当する部分が、上述した段差部2と同等の役割を果たしてもよい。
【0029】
第一凸部3は、空状態の容器本体を上下に積み重ねたときに、上側の容器本体に備えた段差部2の裏面がこの第一凸部の表面に当接し、上側の容器本体の沈み込みを防止するものが該当してもよい。第一凸部3は、上側の側壁12及び段差部2又はこの上側の側壁部のみと一体的に成型されてもよい。換言すれば、第一凸部3を設けるには、上側の側壁部12及び段差部2に対して段差状に成型しても、この上側の側壁部のみに対して成型し、第一凸部3と段差部2との間を空けてもよい。第一凸部3の表面の形状は、容器本体の積み重ねを考慮すると、上側の段差部2の形状と同等であるのが好ましい。上側の側壁部12の周方向における第一凸部3の範囲は、上側の側壁部12に対して周設されても(全周に設けられても)、部分的に設けられてもよい。例えば、容器本体の四つ角部分周辺に配され、略直方体状及び略正方形状を含む立体形状に成型され、両側端が上側の側壁部12と連通するように設けられてもよい。上側の側壁部12の高さ方向における第一凸部3の範囲は、段差部2からフランジ部5(上側の側壁部12の上端)までの間の全て又はこの間で部分的に設けられてもよい。換言すれば、第一凸部3の上端が、フランジ部5に届いていても、届かず低くてもよい。上側の側壁部12からの第一凸部3の突き出し量は、容器本体の積み重ねを考慮すると、段差部3より少なく、第二凸部4より多いのが好ましい。換言すれば、上側の側壁部12の形状に関わらず、段差部3を超えない範囲で突き出ており、第二凸部4を超える範囲で突き出ていてもよい。
なお、第一凸部3は、成型上、中空であることが好ましいが、中空でなくてもよい。第一凸部3が上側の側壁部12の周方向に部分的に設けられている場合、容器本体の積み重ねを防止するため、この周方向における位置は容器本体ごとに異なっている(僅かにずれている)ことが好ましい。フランジ部5と第一凸部3との厚み比率は特に制限はないが、1:0.4以上であればよく、好ましくは1:0.6以上でもよい。厚み比率が0.4より小さいと、局所的な薄肉化によりピンホールの発生及びガスバリア層の薄肉化によるガスバリア性の低下が生じる恐れがある。容器本体の大きさに関わらず、第一凸部3の垂直方向の高さは、3mm〜10mmが好ましく、より好ましくは4mm〜8mmが好ましい。3mmより小さいと積み重なった包装用容器を1枚ずつ取り出すのが困難となる恐れがある。また、自動供給器に適用する際に供給アームに干渉してしまい、取り出し不良及びアームの接触による変形が生じる恐れがある。一方、10mmより大きいと積み重ね高さが高くなってしまい、梱包用の段ボールを大きくする必要があり、輸送コストのアップとなる恐れがある。
【0030】
第二凸部4は、空状態の容器本体を上下に積み重ねたときに、下側の包装用容器に備えたフランジ部5の表面がこの第二凸部の裏面に当接し、上側の容器本体の沈み込み及び位置ずれ(特に、横方向)を防止するものが該当してもよい。第二凸部4は、上側の側壁部12及び段差部2と一体的かつ段差状に成型されてもよい。換言すれば、第二凸部4を設けるには、上側の側壁部12及び段差部2に対して段差部分を成型してもよい。第二凸部4の表面の形状は、容器本体の積み重ねを考慮すると、上側の側壁部12とフランジ部5とで形成される形状と同等であるのが好ましい。上側の側壁部12の周方向における第二凸部4の範囲は、上側の側壁部12に対して周設されても(全周に設けられても)、部分的に設けられてもよい。上側の側壁部12の高さ方向における第二凸部4の範囲は、段差部2から第一凸部3の上端までの間の全て又はこの間で部分的に設けられてもよい。換言すれば、第二凸部4の上端が、第一凸部3の上端より低いことが好ましい。上側の側壁部12からの第二凸部4の突き出し量は、容器本体の積み重ねを考慮すると、第一凸部3より少ないのが好ましい。
【0031】
フランジ部5は、シール状や成型された蓋体を接着して容器本体を封止するものや、成型蓋を嵌合(例えば、外嵌合)して容器本体を閉蓋するものや、シュリンクラップで容器本体全体を覆い密封するものが該当してもよい。フランジ部5の形状は、シール状の蓋体の接着を考慮すると、平面状が好ましいが、湾曲状でもよい。
なお、フランジ部5は、平面視で外周縁が円形状や楕円形状でもよい。
【0032】
次に、本包装用容器の成型方法及び素材の概要を説明する。
【0033】
本包装用容器は、例えば、真空成型、熱板圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型等のシート成型を採用し、所定の合成樹脂シートを熱成型することにより形成されてもよい。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で、単層や多層の積層体からなるシートを使用してもよく、エチレン・ビニルアルコール共重合体やポリ塩化ビニリデン、MXナイロン(登録商標)に代表されるガスバリア層が含まれていても良い。フィラーなどの添加物が含まれていても良い。シートとしては、非発泡素材が好ましい。シートの表面又は裏面には、合成樹脂性の積層フィルムがラミネートされていてもよく、この積層フィルムにはガスバリア層や印刷層を積層してもよい。
本包装用容器の一例として、PP層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/PP層のようなポリオレフィン系ガスバリア積層シートでもよく、PP層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/PP層/ドライラミ接着剤層/PPフィラー層のようなガスバリア積層フィルムとシートとの積層シートが挙げられる。
なお、合成樹脂シートの厚みは特に制限はないが、0.2mm〜0.8mmであればよく、好ましくは0.3mm〜0.6mmである。
【0034】
ここで、上述したシート成型による本包装用容器の特徴を補足する。
軟化した合成樹脂シートを本包装容器の金型で成型すると、上側の側壁部12に対して第一凸部3が内方に突出しているため、先にこの第一凸部に該当する部分が金型に接し、真空(圧空)に応じて、その後この上側の側壁部に該当する部分が金型に接する。すなわち、第一凸部3に対し、合成樹脂シートを外側に引っ張ることで、上側の側壁部12を成型する。したがって、第一凸部3は、上側の側壁部12にと比べて厚く(延伸倍率が低く)、又は同程度の厚さで成型されるため、この第一凸部を形成する積層フィルムを含む合成樹脂シートを他の部分と比べて薄肉化することを回避し、ガスバリア性等の機能も担保することができる。
なお、合成樹脂シートそのもの(熱成型前)のガスバリア層が薄い場合に特に効果を発揮してもよい。フランジ部5と第一凸部3とのガスバリア層の厚みの比率は特に制限はないが、1:0.4以上であればよく、好ましくは1:0.6以上でもよい。厚み比率が0.4より小さいと、局所的な薄肉化によりピンホールの発生及びガスバリア層の薄肉化によるガスバリア性の低下が生じる恐れがある。一方、厚み比率が0.6以上だと、ガスバリア層に用いる樹脂量を削減することができ、低コストで十分な品質を担保できる。第一凸部3のガスバリア層の厚みは5μm以上、好ましくは3μm以上が好ましい。5μmより薄いと局所的にガスバリア性が低下し品質を担保することが困難となる恐れがある。
【0035】
次に、図4を参照しつつ、本包装用容器が上下に積み重なる構造の詳細を説明する。
なお、図4は、説明の便宜上、図2のN−N部分におけるM−M部分の拡大端面図に、P−P部分におけるO−O部分の拡大端面図を組み合わせたものであり、図1(A)は容器本体が上下に積み重なる前の状態、図1(B)は積み重なっている状態をそれぞれ示す。
【0036】
上側の容器本体と下側の容器本体とが積み重なると、第一接点として、下側の容器本体の部分的(四つ角周辺)に設けた第一凸部3における略平坦状の上端の表面に、上側の容器本体の段差部2における略平坦状の裏面が当接する。さらに、上記第一接点より高く位置する第二接点として、上側の側壁部12の周方向に設けた上側の容器本体の第二凸部4における段差部分の裏面に、下側の容器本体のフランジ部5における角部分の表面が当接する。この構造によれば、第一接点として点支持する第一凸部3が下側の容器本体に対して上側の容器本体を沈ませず所定の高さを維持すると共に、第二接点として線支持する第二凸部4が上側の容器本体の不安定性(例えば、揺動による横方向の位置ずれ等)を防止することができる。すなわち、第一接点(低い位置での点支持)と第二接点(第一接点より高い位置での線支持)とにより、垂直方向及び水平方向のスタック性の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0037】
1 側壁部
11 下側の側壁部
12 上側の側壁部
2 段差部
3 第一凸部
4 第二凸部
5 フランジ部
【要約】      (修正有)
【課題】シート成型による部分的な薄肉化を回避し、所望のガスバリア性を担保するのみならず、積み重ね時の包装用容器の沈み込みや位置ずれを防止し、所望のスタック性を担保する包装用容器を提供すること。
【解決手段】容器本体の側壁部12(1)より内方に突き出るように設けられた第一凸部3と、この第一凸部より下方かつこの側壁部より内方に突き出るように設けられた段差部2とを少なくとも備え、この第一凸部は、この段差部を超えない範囲で突き出ている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4