(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の複合体及び藻抑制装置の概略構成を示している。藻抑制装置1は、水中での藻の発生を抑制するための装置である。同図では、熱帯魚等の飼育に用いられる藻抑制装置1を示している。なお、藻抑制装置1は、家庭用の小型の形態に限られることなく、水族館等で使用される大型の形態にも適用される。
【0021】
藻抑制装置1は、水槽2と、複合体3を備えている。水槽2は、透光性を有する壁21によって区画されている。本実施形態では、正面の側壁21a、左右側面の側壁21b及び21cが、透光性を有する材料、例えば、透明又は半透明のガラス又は樹脂等によって構成されている。このような壁21は、水槽2内で飼育される動物の観賞に好適である。
【0022】
なお、本実施形態では、側壁21a、21b及び21cの全てが、上記ガラス等によって構成されているが、側壁21a、21b又は21cのうち、少なくともいずれかが、上記透明なガラス等によって構成されている形態であってもよい。また、本実施形態では、側壁21a、21b及び21cのそれぞれにおいて、全体が上記ガラス等によって構成されているが、一部が上記透明なガラス等によって構成されている形態であってもよい。
【0023】
複合体3は、水中での藻の発生を抑制するために用いられる。本実施形態では、水槽2の背面の側壁22及び底面の底壁23の内表面に、複合体3が配されている。側壁22又は底壁23のうち、少なくともいずれかの内表面に、複合体3が配されていてもよい。また、本実施形態では、側壁22及び底壁23のそれぞれにおいて、内表面の全体に複合体3が配されているが、内表面の一部に複合体3が配されている形態であってもよい。また、側壁22及び/又は底壁23の全体が複合体3によって構成されていてもよい。
【0024】
図2は、複合体3の構成を拡大して示している。複合体3は、粒子41と拘束手段42とを含んでいる。
【0025】
粒子41は、その表面で水とラジカル反応により活性酸素を発生させる。このような粒子41の一例として、例えば、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、その表面に無数の官能基を有し、官能基が水Wとラジカル反応することにより、活性酸素を発生させる。なお、粒子41は、表面での水Wとのラジカル反応により活性酸素を発生させる粒状の物質であれば、カーボンブラックに限られない。従って、粒子41の粒径は限定されず、遮光性も要求されない。
【0026】
拘束手段42は、粒子41を水Wに接触させた状態で拘束(バインド)する。これにより、水中への粒子41の遊離・分散が抑制され、水中生物の体内への粒子41の侵入が抑制される。また、水槽2の壁21への粒子41の付着が抑制され、壁21の透光性が維持される。拘束手段42の一例としては、樹脂を含むバインダが挙げられる。樹脂によって拘束手段42を構成することにより、安価に複合体3を製造できる。
【0027】
上記特許文献1に示されるように、遮光により藻の抑制効果が得られるのは、従来から知られている。しかしながら、遮光によって藻を抑制する手法は、コスト面のみならず、適用範囲が限定されるため、本願発明者は、遮光に頼ることなく藻を抑制するための良好な作用効果を生じさせる新たな思想について、種々の実験を通して鋭意研究を積み重ね、ついに、活性酸素の作用を用いた藻抑制装置1を発明した。
【0028】
本発明では、粒子31の表面におけるラジカル反応によって発生した活性酸素は、その高い反応性によって原始的な単細胞生物である藻を攻撃し、死滅させる。また、上記ラジカル反応によって、藻の光合成に必要な水素イオンや水酸化物イオンが粒子41の表面に吸着される。その結果、藻への上記イオンの供給が妨げられ、藻の発育が阻害される。これにより、遮光に頼ることなく、すなわち、水槽2等の一部又は全部に遮光性を付与することなく藻を抑制でき、その適用範囲を大幅に拡大することが可能となる。
【0029】
拘束手段42を構成する樹脂は、多孔質構造を有する形態が望ましい。このような拘束手段42は、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン又は発泡ポリプロピレン等の発泡樹脂によって容易に形成される。発泡樹脂の多孔質構造によって複合体3の表面積が大幅に増加し、複合体3の表面に露出する粒子41の数が増加する。従って、複合体3によって発生する活性酸素が増加し、藻の抑制効果が高められる。なお、多孔質構造を有する樹脂は、金型等により成形された発泡樹脂製品に限られず、原粒ビーズを加熱膨張(予備発泡)させることにより得られた発泡ビーズであってもよい。
【0030】
複合体3は、粒子41及び拘束手段42を含む塗料であってもよい。このような複合体3は、拘束手段42を構成する樹脂を溶かす溶剤をさらに含んでいる。溶剤が揮発すると樹脂は固体となり、粒子41を拘束する拘束手段42として機能する。このような塗料である複合体3が、水槽2の背面の側壁22及び底壁23等の内表面に塗布されることによっても、表面に露出した粒子41が、活性酸素を発生させ、上記と同様に防藻効果が得られる。
【0031】
藻抑制装置1は、水槽2内を照らすための照明手段(図示せず)を含んでいてもよい。照明手段は、水槽2内又は水槽2の上部等に、例えば、LED(発光ダイオード)等の発光装置を配設することにより、容易に実現される。本実施形態は、遮光に頼ることなく藻を抑制する構成を有しているので、水槽2内に照明手段を配する場合であっても、藻を抑制することが可能となる。そして、照明手段によって水槽2内で飼育される水中動物等が照らされ、明瞭に観賞される。
【0032】
図3は、本発明の別の実施形態である複合体及び藻抑制装置1Aの概略構成を示している。藻抑制装置1Aは、植物の水耕栽培等において、水中での藻の発生を抑制するための装置である。
【0033】
藻抑制装置1Aは、水槽5と、複合体6を備えている。水槽5は、透光性を有する壁によって区画されている。本実施形態では、側壁51及び底壁52が、透光性を有する材料、例えば、白色の発泡樹脂等によって構成されている。このような水槽5は、安価であり、かつ、発泡樹脂の強度を低下させるおそれのある顔料が混合されていないため、強靱である。
【0034】
水槽5は、藻抑制装置1の水槽2と同様に、透明な樹脂等によって構成されていてもよい。このように水槽5によれば、側壁51等を透視して、栽培される植物の根の発育状況を確認できる。
【0035】
藻抑制装置1Aでは、水槽5が透光性を有しているので、光合成に必要な光が、側壁51を透過して水中に入射する。しかしながら、藻抑制装置1の複合体3と同様に、複合体6が水中での藻の繁殖を抑制する。
【0036】
図2に示されるように、複合体6の構成は、複合体3と同様である。すなわち、複合体6は、粒子41と拘束手段42とを含んでいる。粒子41は、その表面で水Wとラジカル反応により活性酸素を発生させる。拘束手段42は、粒子41を水Wに接触させた状態で拘束する。
【0037】
複合体6は、例えば、板状に形成されたフロート体7として、水槽5内に配される。フロート体7は、植物を支持した状態で、水槽等の水中に浮かべて使用される。フロート体7は、水中で浮力を発生させる本体部71と、植物を起立姿勢で支持した状態で本体部71に装着される支持体72等によって構成されている。
【0038】
本体部71は、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン又は発泡ポリプロピレン等の発泡樹脂によって形成されている。このような発泡樹脂によって形成された本体部71は、軽量であり、水中で十分な浮力を発生する。フロート体7が発生する浮力は、本体部71を構成する発泡樹脂の発泡倍率によって調整される。
【0039】
粒子41は、例えば、拘束手段42となる上記樹脂及びペンタン等の発泡剤と混合され、予備発泡前の原粒ビーズを構成する。
【0040】
本実施形態では、白色の発泡樹脂によって形成された本体部71の裏面(水中に没する下面)に、粒子41及び拘束手段42を含む塗料が塗布されていてもよい。この場合、本体部71の上面が白色にて構成されることにより、上面にて光が上方に反射され、植物の光合成が促進される。
【0041】
また、発泡樹脂の多孔質構造によって複合体6の表面積が大幅に増加し、複合体6の表面に露出する粒子41の数が増加する。従って、複合体6によって発生する活性酸素が増加し、藻の抑制効果が高められる。このため、水槽5の側壁51等の遮光は不要であり、簡素な構成で藻の繁殖を抑制できる。
【0042】
また、本発明の複合体3、6は、水中での藻の発生を抑制するための藻抑制方法を新たに提供する。すなわち、本発明の藻抑制方法は、水Wとのラジカル反応により活性酸素を発生させる工程を含む。上記工程は、複合体3、6の粒子41を水Wに接触させることにより、容易に実行される。より具体的には、藻抑制装置1においては、側壁22及び底壁23の内表面に複合体3が配された水槽2に水Wを注ぐことにより、実行される。藻抑制装置1Aにおいては、水Wが注がれた水槽2に複合体6が配されたフロート体7を浮かべることにより、実行される。
【0043】
以上、本発明の複合体及び藻抑制装置が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0044】
すなわち、本発明の複合体3、6は、水中での藻の発生を抑制するための複合体3、6であって、少なくとも、表面での水Wとのラジカル反応により活性酸素を発生させる粒子41と、粒子41を水Wに接触させた状態で拘束する拘束手段42とを含むように構成されていればよい。
【0045】
例えば、複合体は、
図1及び3に示される形態に限られず、ブロック状の形態、粒状の形態であってもよい。このような複合体は、水中に浮遊又は沈めることにより、複合体3、6と同等の藻の抑制効果が得られる。なお、粒状の複合体は、水槽内の水を濾過する濾過装置の流路内に充填されることにより、藻を抑制する効果が得られる。
【0046】
また、粒子41及び拘束手段42を含む塗料を船底やスクリュー等に塗布することにより、船底等への藻の発生・繁殖を抑制できる。また、上記塗料をプール等の内壁面に塗布することにより、プール内の藻の発生・繁殖を抑制できる。また、上記塗料を港湾等の岸壁面に塗布することにより、岸壁面での藻の発生・繁殖を抑制でき、美感が維持される。
【0047】
また、拘束手段42は、天然又は合成の繊維構造を有する素材(例えば、寒天等)であってもよい。粒子41及び繊維構造を有する拘束手段42によって構成される複合体の別の例として、魚網や水中で使用される綱等が挙げられる。繊維構造を有する拘束手段42によって魚網等を構成することにより、長期間にわたって、魚網等への藻の発生・繁殖を抑制できる。
【0048】
また、本発明の藻抑制装置は、少なくとも、上記複合体3、6と、透光性を有する壁21(側壁51、底壁52)によって区画される水槽2(5)とを備え、粒子41は、水槽2、(5)内の水Wと接触されていればよい。
【0049】
また、本発明の藻抑制方法は、水中での藻の発生を抑制するための方法であって、少なくとも、水Wとのラジカル反応により活性酸素を発生させる工程を含んでいればよい。
【実施例】
【0050】
<実験室での藻培養試験1>
実施例1として、
図2の粒子41としてカーボンブラック、拘束手段42として寒天が適用されたブロック状の複合体が試作され、比較例1として、粒子41を含まないブロック状の寒天が試作され、無菌状態に管理された実験室内の同一の条件で、藻が培養された。実施例1は、10重量%のカーボンブラック(05-1530シグマアルドリッチ)を加えた10%重量アガロースゲル(010-15815wako)のブロック体であり、比較例1は、無添加の10%重量アガロースゲルのブロック体である。各ブロック体のサイズは、30mm×30mm×5mmである。
【0051】
各ビーカーには、実施例1及び比較例1の各ブロック体が投入され、「微生物系統保存施設」から購入したC培地が50mL投入され、懸濁液が5滴(約0.10mL)加えられ、アルミニウム箔の蓋で封じられた。実施例1及び比較例1の各ビーカーは、一定の室内温度25゜Cで、25μmol photons/m
2/sec (蛍光灯1本分)の光が14時間/日、継続して照射される実験室に持ち込まれて藻が培養された。
【0052】
図4は、培養開始から9日経過後の各ビーカーの写真である。
図4において、(a)が実施例1、(b)が比較例1である。
図4の比較例1で、ビーカー内の液全体に漂って写っている影が藻である(以下、
図5以降においても、同様とする)。なお、いずれのビーカーにも、側方から藻の繁殖に十分な光が入射するため、実施例1の遮光作用による藻の抑制効果はほとんど得られないと考えられる。
【0053】
図4から明らかなように、本願発明の実施例1の複合体は、比較例1に対して、藻の発生・繁殖を抑制する効果に優れていることが確認された。さらに、実施例1の複合体における藻の抑制効果は、遮光作用によるものではなく、無色透明な水槽を用いても藻を抑制できることが確認された。なお、本願発明者は、拘束手段42として上記寒天に替えて発泡ポリスチレンを用いて試作された実施例及び比較例においても実験を行い、同等の結果を確認している。
【0054】
<実験室での藻培養試験2>
本願発明者は、カーボンブラックを含む黒色の物質からは、遠赤外線等の電磁波が放出され、藻の生育に遠隔的に作用している可能性がある、と考えた。そこで、本試験では、黒色の物質から放出される電磁波が藻の生育に及ぼす影響について検証された。
【0055】
比較例2として、白色の発泡樹脂製パネルの上方に載置されたビーカーにて藻が培養され、比較例3として、カーボンブラックで着色された黒色の発泡樹脂製パネルの上方に載置されたビーカーにて藻が培養された。比較例3でのカーボンブラックの添加量は、パネル全体の4重量%である。各ビーカーには、上記C培地及び懸濁液が加えられ、アルミニウム箔の蓋で封じられた。比較例2、3の各ビーカーは、上記実験室に持ち込まれて藻が培養された。
【0056】
図5は、培養開始から20日経過後の各ビーカーの写真である。
図5において、(a)が比較例2、(b)が比較例3である。
【0057】
図5から明らかなように、比較例3においても、比較例2と同様に藻が発生している。このことから、実施例1における藻の抑制効果は、電子波の遠隔作用に起因するものではなく、水と直接的に接触する物質により生ずることが確認された。
【0058】
<実験室での藻培養試験3>
本願発明者は、カーボンブラック等の炭素を含む黒色の物質からは、何らかの成分が水中に溶出し、藻の生育に作用している可能性がある、と考えた。そこで、本試験では、カーボンブラックからの溶出成分が藻の生育に及ぼす影響について検証された。
【0059】
比較例4として、上記C培地150mLに0.1重量%のカーボンブラックの粉末が投入され、25℃の室温下で3日間にわたって振とうされ、10,000rpmで30分間にわたって遠心分離することにより作成された30mLの上澄み液が用いられた。比較例5には、カーボンブラックの粉末が投入されていない上記C培地30mLが用いられた。比較例4及び5の各ビーカーには、緑藻(NIES−2463)の懸濁液が1滴加えられ、アルミニウム箔の蓋で封じられた。比較例4、5の各ビーカーは、上記実験室に持ち込まれて藻が培養された。
【0060】
図6は、培養開始から18日経過後の各ビーカーの写真である。
図6において、(a)が比較例4、(b)が比較例5である。
【0061】
図6から明らかなように、比較例4においても、比較例5と同様に藻が発生している。このことから、実施例1における藻の抑制効果は、カーボンブラックからの溶出成分に起因するものではないことが確認された。
【0062】
<試験管を用いた藻培養試験4>
上記実験室での藻培養試験1〜3の結果、本願発明者は、実施例1における藻抑制効果は、粒子41の表面で水とのラジカル反応により発生する活性酸素が作用している可能性が高い、と考えた。そこで、本試験では、ラジカル反応を抑制し活性酸素の発生を妨げる作用を有するヒドロキノンを用いて、活性酸素が藻の生育に及ぼす影響について検証された。
【0063】
実施例2として、
図2の粒子41としてカーボンブラック、拘束手段42として発泡ポリスチレンが適用されたブロック状の複合体が試作され、比較例7として、発泡ポリスチレン製のブロック状の複合体が試作され、それぞれ試験管内で藻が培養された。比較例6でのカーボンブラックの添加量は、ブロック体全体の4重量%である。各ブロック体のサイズは、12mm×12mm×60mmで、発泡倍率は同一である。各試験管には、培養液として園試処方培養液(硝酸カルシウム4 水塩944mg/L、硝酸カリウム808mg/L、硫酸マグネシウム7 水塩492mg/L、第1リン酸アンモニウム152mg/L、微量要素< Mn0.5ppm、B0.5ppm、Fe3.0ppm、Zn0.05ppm、Mo0.01ppm >、pH6.5)の1/2希釈養液が用いられ、懸濁液として養液栽培において発生した緑藻類数種類を含む藻の混合溶液が0.2mL加えられた。さらに各試験管には、50ppmのヒドロキノンが添加された。各試験管は、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所のビニルハウス内に持ち込まれ、太陽光の下で藻が培養された。
【0064】
図7は、培養開始から7日経過後の各試験管が撮影されている。
図7において、(a)が実施例2、(b)が比較例6である。
【0065】
図7から明らかなように、実施例2では、比較例6と比較すると僅かに藻の抑制効果が認められるものの、その効果の大部分は消失している。このことから、実施例2における藻の抑制効果は、ヒドロキノンの添加によって消失する活性酸素の作用に起因していることが確認された。
【0066】
本願発明者による以上の藻培養試験1〜4の結果、水とのラジカル反応により発生した活性酸素によって藻が抑制されるという本願発明の作用効果が確認された。
【0067】
<実験室での藻培養試験5>
実施例3として、
図2の粒子41としてカーボンブラック、拘束手段42として発泡ポリスチレンが適用されたブロック状の複合体が試作され、実施例4として、
図2の粒子41としてカーボンブラック、拘束手段42としてポリスチレン、溶剤としてテトラヒドロフランを含む塗料が塗布されたブロック状の複合体が試作された。実施例3でのカーボンブラックの添加量は、ブロック全体の4重量%である。実施例4では、発泡ポリスチレンのブロック体の一面に、上記塗料が刷毛にて塗布された30mm×30mm×1mmのアクリル板が貼り付けられている。なお、アクリル板上のカーボンブラックの質量は、7.2mg〜18.0mgと推定される。比較例7、8として、ブロック状の発泡ポリスチレンが試作された。比較例8では、ブロック体の一面に30mm×30mm×1mmのアクリル板が貼り付けられている。各ブロック体のサイズは、30mm×30mm×10mmである。
【0068】
実施例3、4及び比較例7、8の各ブロック体は、各ビーカーの内底面に接着され、各ビーカーには、上記C培地が30mL投入され、緑藻(NIES−2463)の懸濁液が2滴加えられ、アルミニウム箔の蓋で封じられた。各ビーカーは、上記実験室に持ち込まれ、藻が培養された。
【0069】
図8は、培養開始から10日経過後の各ビーカーの写真である。
図8において、(a)が実施例3、(b)が実施例4、(c)が比較例7(d)が比較例8である。
【0070】
図8から明らかなように、本願発明の実施例4においても、実施例3と同様に藻が抑制されている。このことから、粒子41としてカーボンブラックを、拘束手段42としてポリスチレンを含む塗料によっても、藻を抑制する効果が得られることが確認された。
【0071】
<実験室での藻培養試験6>
実施例3に加え、実施例5として、
図2の粒子41としてカーボンブラック、拘束手段42としてポリスチレンが適用されたビーズ状の複合体が試作された。実施例5は、実施例2の作成に用いられる未発泡ビーズ(9g)である。また、比較例7に加え、比較例9として、ポリスチレン製のビーズが試作された。比較例9は、比較例7の作成に用いられる未発泡ビーズ(9g)である。
【0072】
実施例5及び比較例9の各ビーズは、ポリエステル製の白色の網に包まれて各ビーカーに収容される。条件を統一するために、実施例3及び比較例7の各ブロック体も、上記網に包まれて各ビーカーの内底面に接着されている。各ビーカーには、上記C培地が30mL投入され、緑藻(NIES−2463)の懸濁液が1滴加えられ、アルミニウム箔の蓋で封じられた。各ビーカーは、上記実験室に持ち込まれ、藻が培養された。
【0073】
図9は、培養開始から12日経過後の各ビーカーの写真である。
図9において、(a)が実施例3、(b)が実施例5、(c)が比較例7、(d)が比較例9である。
【0074】
図9から明らかなように、本願発明の実施例5においても、実施例3と同様に藻が抑制されている。このことから、未発泡のビーズ、すなわち拘束手段42として未発泡のポリスチレン樹脂を適用しても、藻を抑制する効果が得られることが確認された。
【解決手段】水中での藻の発生を抑制するための複合体3は、表面での水とのラジカル反応により活性酸素を発生させる粒子41と、粒子41を水に接触させた状態で拘束する拘束手段42とを含む。