(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6375042
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】接続回路およびパワーコンディショナー
(51)【国際特許分類】
H02S 40/30 20140101AFI20180806BHJP
【FI】
H02S40/30
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-209133(P2017-209133)
(22)【出願日】2017年10月30日
【審査請求日】2018年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】田淵電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕司
(72)【発明者】
【氏名】仲石 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】新谷 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光央
【審査官】
嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−134445(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/166699(WO,A1)
【文献】
特許第6148782(JP,B1)
【文献】
特開2002−092755(JP,A)
【文献】
特開2017−169436(JP,A)
【文献】
特開2016−039766(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0318320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/02−31/078
H01L31/18−31/20
H01L51/42−51/48
H02S10/00−10/40
H02S30/00−99/00
H02J1/00−1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルの出力とパワーコンディショナーの入力との間に設けられる接続回路であって、
前記太陽光パネルの正極と前記パワーコンディショナーの正極とを接続する第1電力線と、
前記太陽光パネルの負極と前記パワーコンディショナーの負極とを接続する第2電力線と、
前記第1および第2電力線のうち一方に挿入されたFET(Field Effect Transistor)と、
前記FETを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記FETをオフにする制御回路と、
前記一方の電力線の、前記FETよりも前記太陽光パネル側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子とを備える
ことを特徴とする接続回路。
【請求項2】
太陽光パネルの出力とパワーコンディショナーの入力との間に設けられる接続回路であって、
前記太陽光パネルの正極と前記パワーコンディショナーの正極とを接続する第1電力線と、
前記太陽光パネルの負極と前記パワーコンディショナーの負極とを接続する第2電力線と、
前記第1および第2電力線のうち一方に挿入されたリレーと、
前記リレーを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記リレーをオフにする制御回路と、
前記一方の電力線の、前記リレーよりも前記太陽光パネル側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子とを備える
ことを特徴とする接続回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の接続回路において、
前記抵抗素子は、1MΩ以上の抵抗値を有する
ことを特徴とする接続回路。
【請求項4】
太陽光パネルの出力とパワーコンディショナーの入力との間に設けられる接続回路であって、
前記太陽光パネルの正極と前記パワーコンディショナーの正極とを接続する第1電力線と、
前記太陽光パネルの負極と前記パワーコンディショナーの負極とを接続する第2電力線と、
前記第1および第2電力線のうち一方に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子と、
前記一方の電力線の、前記抵抗素子よりも前記パワーコンディショナー側に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき、前記抵抗素子よりも高いインピーダンスを有する、高インピーダンス部と、
前記第1および第2電力線のうち他方に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき、前記抵抗素子よりも高いインピーダンスを有する、第2高インピーダンス部を備える
ことを特徴とする接続回路。
【請求項5】
請求項4記載の接続回路において、
前記高インピーダンス部は、
前記一方の電力線に挿入されており、前記パワーコンディショナーから前記太陽光パネルに向かう方向を順方向とするダイオードを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項6】
請求項4記載の接続回路において、
前記高インピーダンス部は、
前記一方の電力線に挿入されたFET(Field Effect Transistor)と、
前記FETを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記FETをオフにする制御回路とを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項7】
請求項4記載の接続回路において、
前記高インピーダンス部は、
前記一方の電力線に挿入されたリレーと、
前記リレーを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記リレーをオフにする制御回路とを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項8】
請求項4記載の接続回路において、
前記抵抗素子は、1MΩ以上の抵抗値を有する
ことを特徴とする接続回路。
【請求項9】
請求項4〜8のうちいずれか1項記載の接続回路において、
前記第2高インピーダンス部は、
前記他方の電力線に挿入されており、前記太陽光パネルから前記パワーコンディショナーに向かう方向を順方向とするダイオードを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項10】
請求項4〜8のうちいずれか1項記載の接続回路において、
前記第2高インピーダンス部は、
前記他方の電力線に挿入されたFETと、
前記FETを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記FETをオフにする制御回路とを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項11】
請求項4〜8のうちいずれか1項記載の接続回路において、
前記第2高インピーダンス部は、
前記他方の電力線に挿入されたリレーと、
前記リレーを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記リレーをオフにする制御回路とを含む
ことを特徴とする接続回路。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか1項記載の接続回路において、
前記パワーコンディショナーは、非絶縁方式であり、かつ、蓄電池が接続可能なように構成されている
ことを特徴とする接続回路。
【請求項13】
太陽光パネルの出力を受けるパワーコンディショナーであって、
インバータ部と、
前記太陽光パネルの出力と前記インバータ部の入力との間に設けられた接続回路とを備え、
前記接続回路は、
前記太陽光パネルの正極と前記インバータ部の正極とを接続する第1電力線と、
前記太陽光パネルの負極と前記インバータ部の負極とを接続する第2電力線と、
前記第1および第2電力線のうち一方に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子と、
前記一方の電力線の、前記抵抗素子よりも前記パワーコンディショナー側に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき、前記抵抗素子よりも高いインピーダンスを有する、高インピーダンス部とを備える
ことを特徴とするパワーコンディショナー。
【請求項14】
非絶縁方式であり、かつ、蓄電池が接続可能なように構成されている
ことを特徴とする請求項13記載のパワーコンディショナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムに関し、例えばPID現象への対策に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムでは、PID(Potential Induced Degradation)現象が問題となっている。PID現象とは、太陽光パネルの性能が対地電圧の影響によって劣化し、発電量が下がってしまう現象のことをいう。すなわち、太陽光パネルのフレーム(アース)と電極との間に直流電圧が印加されると、その間にある樹脂層が劣化し、パネル出力が低下してしまう。
【0003】
特許文献1では、PID現象への対策手法の一例として、太陽電池ストリングの負極側または正極側を接地する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−32601号公報(
図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、太陽光発電システムが稼働する昼間に関しては、太陽光パネル側でPID現象への対策がある程度とられていた。一方で、近年、太陽光発電システムで用いられるパワーコンディショナーについて、高効率化のために非絶縁方式が増加している。また、太陽光パネルの他に蓄電池や電気自動車(EV)等が接続されるハイブリッドタイプのパワーコンディショナーも、普及し始めている。
【0006】
その中で、本願発明者らは、非絶縁方式でハイブリッドタイプのパワーコンディショナーを用いた場合には、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間であっても、PID現象を引き起こす要因があることが分かった。
【0007】
前記の問題に鑑み、本発明は、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接続回路は、太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する高インピーダンス部を電力線に設け、太陽光パネル側の電力線を、抵抗素子を介して接地する。これにより、パワーコンディショナー側の電力線の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル側の電力線の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0009】
すなわち、本発明の態様では、太陽光パネルの出力とパワーコンディショナーの入力との間に設けられる接続回路は、前記太陽光パネルの正極と前記パワーコンディショナーの正極とを接続する第1電力線と、前記太陽光パネルの負極と前記パワーコンディショナーの負極とを接続する第2電力線と、前記第1および第2電力線のうち一方に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する、高インピーダンス部と、前記一方の電力線の、前記高インピーダンス部よりも前記太陽光パネル側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子とを備える。
【0010】
この態様によると、接続回路は、第1および第2電力線のうち一方に、太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する高インピーダンス部が挿入されている。そして、当該一方の電力線の、高インピーダンス部よりも太陽光パネル側が、抵抗素子を介して接地されている。これにより、パワーコンディショナー側の電力線の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル側の電力線の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0011】
そして、前記態様において、前記高インピーダンス部は、前記一方の電力線に挿入されており、前記パワーコンディショナーから前記太陽光パネルに向かう方向を順方向とするダイオードを含む、としてもよい。
【0012】
また、前記態様において、前記高インピーダンス部は、前記一方の電力線に挿入されたFET(Field Effect Transistor)と、前記FETを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記FETをオフにする制御回路とを含む、としてもよい。
【0013】
また、前記態様において、前記高インピーダンス部は、前記一方の電力線に挿入されたリレーと、前記リレーを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記リレーをオフにする制御回路とを含む、としてもよい。
【0014】
また、前記態様において、前記抵抗素子は、1MΩ以上の抵抗値を有する、としてもよい。
【0015】
また、前記態様において、前記第1および第2電力線のうち他方に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する、第2高インピーダンス部を備える、としてもよい。
【0016】
この態様により、他方の電力線においても、パワーコンディショナー側の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル側の電位と接地電位との差を小さく抑えることができる。
【0017】
そして、前記態様において、前記第2高インピーダンス部は、前記他方の電力線に挿入されており、前記太陽光パネルから前記パワーコンディショナーに向かう方向を順方向とするダイオードを含む、としてもよい。
【0018】
また、前記態様において、前記第2高インピーダンス部は、前記他方の電力線に挿入されたFETと、前記FETを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記FETをオフにする制御回路とを含む、としてもよい。
【0019】
また、前記態様において、前記第2高インピーダンス部は、前記他方の電力線に挿入されたリレーと、前記リレーを制御するものであり、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき前記リレーをオフにする制御回路とを含む、としてもよい。
【0020】
そして、前記態様において、前記パワーコンディショナーは、非絶縁方式であり、かつ、蓄電池が接続可能なように構成されている、としてもよい。
【0021】
また、本発明の別の態様では、太陽光パネルの出力を受けるパワーコンディショナーは、インバータ部と、前記太陽光パネルの出力と前記インバータ部の入力との間に設けられた接続回路とを備え、前記接続回路は、前記太陽光パネルの正極と前記インバータ部の正極とを接続する第1電力線と、前記太陽光パネルの負極と前記インバータ部の負極とを接続する第2電力線と、前記第1および第2電力線のうち一方に挿入されており、前記太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する、高インピーダンス部と、前記一方の電力線の、前記高インピーダンス部よりも前記太陽光パネル側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子とを備える。
【0022】
この態様によると、パワーコンディショナーに内蔵された接続回路は、第1および第2電力線のうち一方に、太陽光パネルが出力を停止しているとき高インピーダンスを有する高インピーダンス部が挿入されている。そして、当該一方の電力線の、高インピーダンス部よりも太陽光パネル側が、抵抗素子を介して接地されている。これにより、インバータ部側の電力線の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル側の電力線の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0023】
そして、前記態様において、前記パワーコンディショナーは、非絶縁方式であり、かつ、蓄電池が接続可能なように構成されている、としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成
【
図2】
図1の接続回路の動作を示す図であり、(a)は太陽光パネルの出力変化、(b)は負極側電力線の電圧変化
【
図3】第2実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成
【
図4】第3実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成
【
図5】接続回路を内蔵したパワーコンディショナーの概略構成
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成を示す図である。
図1の太陽光発電システム1は、太陽光エネルギーを利用して発電する太陽光パネル10と、太陽光パネル10から出力される直流電力を受けるパワーコンディショナー20とを備える。太陽光パネル10では、電気的に直列に接続された複数の太陽電池モジュール11によって、3つの太陽電池ストリング12a,12b,12cが構成されている。太陽電池ストリング12a,12b,12cは電気的に並列に接続されている。そして、各太陽電池ストリング12a,12b,12cの正極(+)は共通に接続されており、各太陽電池ストリング12a,12b,12cの負極(−)は共通に接続されている。
【0028】
なお、
図1の構成では、各太陽電池ストリング12a,12b,12cはそれぞれ、直列に接続された3個の太陽電池モジュール11によって構成されているが、直列に接続される太陽電池モジュールの個数は3に限られるものではない。また、
図1の構成では、3つの太陽電池ストリング12a,12b,12cが並列に接続されているが、並列に接続される太陽電池ストリングの個数は3に限られるものではない。
【0029】
パワーコンディショナー20は、ここでは非絶縁方式であり、かつ、蓄電池25や電気自動車(EV)26等が接続されるいわゆるハイブリッドタイプである。パワーコンディショナー20は太陽光パネル10から出力された直流電力を、商用系統向けの交流電力に変換するインバータ部21を備える。
【0030】
そして本実施形態では、太陽光パネル10の出力とパワーコンディショナー20の入力との間に、接続回路30が設けられている。接続回路30は、太陽光パネル10の正極とパワーコンディショナー20の正極とを接続する第1電力線31と、太陽光パネル10の負極とパワーコンディショナー20の負極とを接続する第2電力線32とを備える。そして、第2電力線32に、パワーコンディショナー20から太陽光パネル10に向かう方向を順方向とするダイオード41が挿入されている。本実施形態では、ダイオード41によって、太陽光パネル10が出力を停止しているとき高インピーダンスを有する高インピーダンス部が構成されている。ダイオード41の逆方向におけるインピーダンスは、例えば100MΩ程度である。また、接続回路30は、第2電力線32の、ダイオード41よりも太陽光パネル10側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子42を備える。抵抗素子42の抵抗値は1MΩ以上である。なお、ダイオード41の逆方向におけるインピーダンスは、抵抗素子42の抵抗値に対して十分高いものであることが好ましい。
【0031】
さらに、接続回路30では、第1電力線31に、太陽光パネル10からパワーコンディショナー20に向かう方向を順方向とするダイオード51が挿入されている。ダイオード51によって、太陽光パネル10が出力を停止しているとき高インピーダンスを有する第2高インピーダンス部が構成されている。ダイオード51の逆方向におけるインピーダンスは、例えば100MΩ程度である。また、接続回路30は、第1電力線31の、ダイオード51よりも太陽光パネル10側に一端が接続され、他端が接地されている、抵抗素子52を備える。抵抗素子52の抵抗値は1MΩ以上である。なお、ダイオード51の逆方向におけるインピーダンスは、抵抗素子52の抵抗値に対して十分高いものであることが好ましい。
【0032】
図2は本実施形態に係る接続回路30の動作を示す図であり、太陽光パネル10の出力が停止したときの電力線の電圧変化の例を示す。
図2(a)は太陽光パネル10の出力変化、
図2(b)は第2電力線32の電圧変化を示す。
【0033】
太陽光パネル10は動作中のとき、その出力として例えば300Vを出力している。このとき、第2電力線32の太陽光パネル10側の電圧は約−150Vである。また、第2電力線32のパワーコンディショナー20側の電圧は、それよりも少し高い電圧になっている。そして例えば夜間になり、太陽光パネル10の出力が低下し、やがて出力が停止したとする。このとき、第2電力線32の太陽光パネル10側の電圧は徐々に0Vに近づいていき、0Vを超えて数10Vに達してから、徐々に低下していく。第2電力線32の太陽光パネル10側の電圧は、最終的には、第2電力線32のパワーコンディショナー20側の電圧をダイオード41のインピーダンスと抵抗素子42の抵抗値とによって分圧した電圧に近づいていく。
【0034】
これに対して、第2電力線32にダイオード41と抵抗素子42が設けられていない場合には、太陽光パネル10の出力が停止したとき、第2電力線32の太陽光パネル10側の電圧は、第2電力線32のパワーコンディショナー20側の電圧とほぼ同じ電圧になってしまう。一方、非絶縁方式のパワーコンディショナー20に蓄電池25等が接続されているとき、第2電力線32に大きな電圧が出力されている場合がある。この場合には、太陽光パネル10の出力が停止していても、太陽光パネル10のアースと負電極との間に直流電圧が印加された状態になってしまうので、その間にある樹脂層が劣化し、パネル出力が低下してしまう。すなわち、いわゆるPID(Potential Induced Degradation)現象を引き起こしてしまう。したがって、第2電力線32にダイオード41と抵抗素子42を設けたことによって、夜間など太陽光発電システム1が稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0035】
同様に、第1電力線31にダイオード51と抵抗素子52を設けたことによって、夜間など太陽光発電システム1が稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0036】
このように本実施形態によると、第1および第2電力線31,32に、太陽光パネル10が出力を停止しているとき高インピーダンスを有するダイオード41,51を設け、太陽光パネル10側の電力線31,32を、抵抗素子42,52を介して接地する。これにより、パワーコンディショナー20側の電力線31,32の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル10側の電力線31,32の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成を示す図である。
図3では、
図1と共通の構成要素については
図1と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
図3の構成では、接続回路30Aは、第1電力線31に挿入されたFET(Field Effect Transistor)53と、FET53を制御する制御回路54とを備えている。制御回路54は、太陽光パネル10が出力を停止しているとき、FET53をオフにする。ここでは、制御回路54は、第1電力線31の電圧をモニターして太陽光パネル10の出力の停止を検知する。本実施形態では、FET53および制御回路54によって、第2高インピーダンス部が構成されている。オフ時におけるFET53のインピーダンスは、例えば10MΩ程度である。第2電力線32に関する構成は、第1実施形態と同様である。
【0038】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、第1電力線31では、太陽光パネル10が出力を停止しているときオフになるFET53が設けられている。これにより、パワーコンディショナー20側の電力線31の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル10側の電力線31の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0039】
(第3実施形態)
図4は第3実施形態に係る接続回路を含む太陽光発電システムの構成を示す図である。
図4では、
図1と共通の構成要素については
図1と同一の符号を付しており、ここではその詳細な説明を省略する。
図4の構成では、接続回路30Bは、第1電力線31に挿入されたラッチングリレー55と、ラッチングリレー55を制御する制御回路56とを備えている。ここで、ラッチングリレー55は、リレーの一例である。制御回路56は、太陽光パネル10が出力を停止しているとき、ラッチングリレー55をオフにする。ここでは、制御回路56は、第2電力線32の電圧の立ち上がりを検知する立ち上がり検知回路56aと、第2電力線32の電圧の立ち下がりを検知する立ち下がり検知回路56bとを備える。立ち上がり検知回路56aは第2電力線32の電圧の立ち上がりを検知すると、ラッチングリレー55をオフにする。立ち下がり検知回路56bは第2電力線32の電圧の立ち下がりを検知すると、ラッチングリレー55をオンにする。本実施形態では、ラッチングリレー55および制御回路56によって、第2高インピーダンス部が構成されている。オフ時におけるラッチングリレー55のインピーダンスは、例えば5000MΩ以上である。第2電力線32に関する構成は、第1実施形態と同様である。
【0040】
本実施形態においても、第1および第2実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、第1電力線31では、太陽光パネル10が出力を停止しているときオフになるラッチングリレー55が設けられている。これにより、パワーコンディショナー20側の電力線31の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル10側の電力線31の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。したがって、夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制することができる。
【0041】
なお、ラッチングリレー55に代えて、他の機械式リレー(有接点リレー)を適用してもよい。
【0042】
(接続回路の変形例)
(その1)
図1の接続回路30において、第1電力線31に設けられたダイオード51および抵抗素子52を省いてもよい。あるいは、第2電力線32に設けられたダイオード41および抵抗素子42を省いてもよい。
【0043】
(その2)
パワーコンディショナー20がインバータ部21の前段に昇圧回路を備えており、この昇圧回路が、第1電力線31と接続された電力線に挿入されたダイオードを有している場合がある。この場合には、
図1の接続回路30において、第1電力線31に設けられたダイオード51を省いてもかまわない。
【0044】
(その3)
第2電力線32に設けられたダイオード41に代えて、
図3に示したようなFET53および制御回路54を設けてもよい。この場合は、FET53および制御回路54によって、高インピーダンス部が構成される。あるいは、第2電力線32に設けられたダイオード41に代えて、
図4に示したようなラッチングリレー55および制御回路56を設けてもよい。この場合は、ラッチングリレー55および制御回路56によって、高インピーダンス部が構成される。
【0045】
(その4)
第2電力線32に、ダイオード41に加えて、
図3に示したようなFET53および制御回路54を設けてもよい。この場合は、ダイオード41、FET53および制御回路54によって、高インピーダンス部が構成される。あるいは、第2電力線32に、ダイオード41に加えて、
図4に示したようなラッチングリレー55および制御回路56を設けてもよい。この場合は、ダイオード41、ラッチングリレー55および制御回路56によって、高インピーダンス部が構成される。
【0046】
<他の構成例>
上述した接続回路はパワーコンディショナーに内蔵してもよい。
図5は上述した接続回路30を内蔵したパワーコンディショナー20Aの概略構成である。パワーコンディショナー20Aは、非絶縁方式であり、かつ、いわゆるハイブリッドタイプであって蓄電池25やEV26等が接続可能なように構成されている。
【0047】
図5に示すように、パワーコンディショナー20Aは、インバータ部21と、太陽光パネル10の出力とインバータ部21の入力との間に設けられた接続回路30とを備える。接続回路30の構成は、上述の第1実施形態と同様である。すなわち、接続回路30は、太陽光パネル10の正極とインバータ部21の正極とを接続する第1電力線31と、太陽光パネル10の負極とインバータ部21の負極とを接続する第2電力線32とを備える。そして、第2電力線32に、ダイオード41と抵抗素子42が設けられており、第1電力線31に、ダイオード51と抵抗素子52が設けられている。
【0048】
なお、
図5における接続回路30は、上述の第2および第3実施形態のような構成を適用してもよいし、上述した変形例を適用してもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明では、太陽光発電システムにおいてPID現象を引き起こす要因を抑制できるので、例えば、太陽光パネルの長寿命化に有用である。
【符号の説明】
【0050】
10 太陽光パネル
20,20A パワーコンディショナー
30,30A,30B 接続回路
31 第1電力線
32 第2電力線
41 ダイオード
42 抵抗素子
51 ダイオード
52 抵抗素子
53 FET
54 制御回路
55 ラッチングリレー(リレー)
56 制御回路
【要約】
【課題】夜間など太陽光発電システムが稼働しない期間において、PID現象を引き起こす要因を抑制する。
【解決手段】太陽光パネル10とパワーコンディショナー20との間に接続回路30を設ける。接続回路30では電力線31,32に、太陽光パネル10が出力を停止しているとき高インピーダンスを有する高インピーダンス部41,51が設けられ、太陽光パネル10側の電力線31,32が抵抗素子42,52を介して接地されている。パワーコンディショナー20側の電力線31,32の電位と接地電位との差が大きくても、太陽光パネル10側の電力線31,32の電位と接地電位との差は小さく抑えられる。
【選択図】
図1