【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、個々の組成物の違いを明確にするために、分散剤、炭素材料、溶剤からなる分散組成物を「炭素材料分散液」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダーからなる分散組成物を「炭素材料分散ワニス」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダー、活物質からなる電池用分散組成物を「合剤ペースト」と呼称することとする。また、特に断わりの無い限り、溶剤として使用したN−メチル−2−ピロリドンを「NMP」、質量%を「%」と略記する。
【0096】
<トリアジン誘導体>
以下に本発明の一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体A〜Tの構造を示す。本発明に用いる一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体A〜Tの製造方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開2004−217842号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
【0097】
【化2】
【0098】
【化3】
【0099】
<トリアジン誘導体とアミンからなるトリアジン系分散剤の製造例>
以下の実施例に記載した方法で表1記載のトリアジン系分散剤a〜ajを製造した。
【0100】
【表1】
【0101】
(トリアジン系分散剤aの製造)
水200gにトリアジン誘導体Aを0.040モル加えた。これにオクチルアミンを0.040モル加え、60℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、ろ過精製を行った。得られた残渣を90℃で48時間乾燥することにより、トリアジン系分散剤aを得た。
【0102】
(トリアジン系分散剤b〜tの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表1に記載のトリアジン誘導体B〜Tをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤b〜tを得た。
【0103】
(トリアジン系分散剤u〜aeの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表1に記載のトリアジン誘導体をそれぞれ添加し、オクチルアミンの代わりに表1に記載のアミンをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤u〜aeを得た。
【0104】
(トリアジン系分散剤af〜ajの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてオクチルアミンの添加量を表1に記載の添加量にそれぞれ変更した以外はトリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤af〜ajを得た。
【0105】
以下にトリアジン系分散剤ba、bbで使用するトリアジン誘導体AA、ABの構造を示す。比較例に用いるトリアジン誘導体AA、ABの製造方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開2004−217842号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
【0106】
【化4】
【0107】
以下に記載した方法で表2記載のトリアジン系分散剤ba、bbを製造した。
【0108】
【表2】
【0109】
(トリアジン系分散剤ba、bbの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表2に記載のトリアジン誘導体AA、ABをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤ba、bbを得た。
【0110】
<トリアジン誘導体と無機塩基とからなるトリアジン系分散剤の製造例>
以下に記載した方法で表3記載のトリアジン系分散剤ca〜deを製造した。
【0111】
【表3】
【0112】
(トリアジン系分散剤caの製造例)
水200gにトリアジン誘導体Aを0.040モル加えた。これに水酸化ナトリウムを0.020モル加え、60℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、ろ過精製を行った。得られた残渣を90℃で48時間乾燥することにより、分散剤caを得た。
【0113】
(トリアジン系分散剤cb〜ctの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表3に記載のトリアジン誘導体B〜Tをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤cb〜ctを得た。
【0114】
(トリアジン系分散剤cu〜daの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表3に記載のトリアジン誘導体をそれぞれ添加し、水酸化ナトリウムの代わりに表3に記載の無機塩基をそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤cu〜daを得た。
【0115】
(トリアジン系分散剤db〜deの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造において水酸化ナトリウムの添加量を表3に記載の添加量にそれぞれ変更した以外はトリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤db〜deを得た。
【0116】
以下に記載した方法で表4記載のトリアジン系分散剤ea、ebを製造した。
【0117】
【表4】
【0118】
(トリアジン系分散剤ea、ebの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表4に記載のトリアジン誘導体AA、ABをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤ea、ebを得た。
【0119】
実施例、比較例に示す炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、合剤ペーストは、以下に示す材料を用いて作製した。
【0120】
<炭素材料>
デンカブラックHS100(デンカ社製):アセチレンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が48nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が39m
2/g、以下「HS100」と略記する。
super−P(TIMCAL社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が40nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が62m
2/g。
モナーク800(キャボット社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が17nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が210m
2/g、以下「M800」と略記する。
EC−300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製):ケッチェンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が40nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が800m
2/g。
カーボンナノチューブ:多層カーボンナノチューブ、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径10nm、繊維長2〜5μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が600m
2/g、以下CNTと略記する。
VGCF(昭和電工社製):カーボンナノファイバー、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径150nm、繊維長10〜20μm。
【0121】
<バインダー>
KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下PVDFと略記する。
ポリテトラフッ化エチレンエマルション:(三井・デュポンフロロケミカル社製)、以下PTFEと略記する。
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製):以下CMCと略記する。
【0122】
<正極活物質>
LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(戸田工業社製):正極活物質、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が5.0μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m
2/g、以下、NMCと略記する。
HLC−22(本荘ケミカル社製):正極活物質、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が6.6μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m
2/g、以下LCOと略記する。
LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2(住友金属社製):正極活物質、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が5.8μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.38m
2/g、以下、NCAと略記する。
LiFePO
4(クラリアント社製):正極活物質、リン酸鉄リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が0.4μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が15.3m
2/g、以下、LFPと略記する。
【0123】
<負極活物質>
球状黒鉛(日本黒鉛社製):負極活物質、電子顕微鏡で観察して求めた一次粒子径が15μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が1.0m
2/g、以下球状黒鉛と略記する。
【0124】
<ポリマー分散剤>
PVA−103(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度98.0〜99.0mol%
PVA−403(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度78.5〜81.5mol%
KL−506(クラレ社製):アニオン変性ポリビニルアルコール、けん化度74.0〜80.0mol%
AP−17(日本酢ビ・ホバール社製):アニオン変性ポリビニルアルコール、けん化度88〜90mol%
ゴーセネックスL−3266(日本合成化学社製):スルホン酸変性ポリビニルアルコール、けん化度86.5〜89.0mol%(以下、L−3266と略記する)
ゴーセネックスK−434(日本合成化学社製):カチオン変性ポリビニルアルコール、けん化度85.5〜88.0mol%(以下、K−434と略記する)
ポリビニルブチラールA: ポリビニルブチラール、ブチラール化度15mol%、水酸基量84mol%、酢酸基1mol%、重合度300(以下、PVB−Aと略記する)
メトローズSM−4(信越化学社製):メチルセルロース、置換度1.8、20℃における2%水溶液の粘度約4mPa・s、(以下、SM−4と略記する)
メトローズSM−15(信越化学社製):メチルセルロース、置換度1.8、20℃における2%水溶液の粘度約15mPa・s、(以下、SM−15と略記する)
エトセル−10(ダウケミカル社製):エチルセルロース、25℃における5%トルエン/エタノール(8/2)溶液の粘度 9.0〜11.0mPa・s
【0125】
PVB−Aの合成
(合成例)
PVA−103の10%水溶液を調製し、水溶液100質量部に対し、塩酸0.2質量部、ブチルアルデヒド2質量部を撹拌しながら滴下した。続いて80℃に昇温して1時間保持した後放冷した。これを乾燥、粉砕してアセタール化度15mol%のPVB−Aを得た。
【0126】
[実施例1−1]
【0127】
<炭素材料分散液の調製>
表5に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンとトリアジン系分散剤aおよびポリマー分散剤PVA−103を仕込み、混合した後、炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、トリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液を得た。
【0128】
<炭素材料分散ワニスの調製>
表5に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液とバインダー、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
【0129】
<正極合剤ペーストの調製>
表5に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散ワニスと活物質、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、正極合剤ペーストを得た。
【0130】
<電極の作製>
調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む正極合剤ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量17mg/cm
2、密度3.0g/cm
3の電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
【0131】
【表5】
【0132】
[実施例1−2〜1−10]
実施例1−1で用いたポリマー分散剤PVA−103を表6に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0133】
【表6】
【0134】
[参考例1−1]トリアジン系分散剤aのみ
表7に示す通り、実施例1−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤aに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤aのみとした以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0135】
[比較例1−1]分散剤種の比較−1
表7に示す通り、参考例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0136】
[比較例1−2]分散剤種の比較−2
表7に示す通り、実施例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0137】
[比較例1−3、1−4]分散剤種の比較−3
比較例1−2で用いたPVA−103の代わりに、表7に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、比較例1−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0138】
【表7】
【0139】
<剥離強度試験>
電極の剥離強度測定用の試験片は、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットして用いた。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合剤層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
【0140】
<評価結果>
実施例1−1〜1−10、参考例1−1、比較例1−1〜1−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
【0141】
実施例1−1〜1−10、参考例1−1、比較例1−1〜1−4で作製した電極の剥離強度試験結果を表8に示す。剥離強度試験の結果は、参考例1−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、正極合材において、溶剤がNMPである系の剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。トリアジン系分散剤baのみを用いた比較例1−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例1−2〜1−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤baの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤aのみを用いた参考例1−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例1−1〜1−10を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。比較例1−1〜1−4の結果を考慮すると、実施例1−1〜1−10で見られた効果は単に膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことだけによるものではないと予想された。
【0142】
【表8】
【0143】
[実施例1−11〜1−188]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表9に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0144】
【表9】
【表9】
【0145】
[実施例1−189]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用
表10に示す通り、実施例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン誘導体Aに置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0146】
[実施例1−190〜1−193]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用−2
実施例1−189で用いたPVA−103の代わりに、表10に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン誘導体Aの代わりに表10に示したトリアジン誘導体をそれぞれ用いた以外は、実施例1−189と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0147】
【表10】
【0148】
[実施例1−194]ポリマー分散剤の併用
表11に示す通り、実施例1−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0149】
[実施例1−195、1−196]ポリマー分散剤の併用−2
実施例1−194で用いたPVA−103の代わりに、表11に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例1−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0150】
[実施例1−197〜1−199]ポリマー分散剤の併用−3
実施例1−194で用いたPVA−103の代わりに、表11に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン系分散剤aの代わりにトリアジン誘導体Aを用いた以外は、実施例1−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0151】
【表11】
【0152】
[比較例1−5〜1−7]
参考例1−1で用いたトリアジン系分散剤aを表12で示した分散剤に置き換えた以外は、参考例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0153】
【表12】
【0154】
[比較例1−8〜1−13]
実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を表13に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0155】
【表13】
【0156】
<評価結果>
実施例1−11〜1−199、参考例1−1、比較例1−5〜1−13で作製した電極の剥離強度試験結果を表14に示す。トリアジン系分散剤baの場合と同様に、トリアジン系分散剤bb、ea、ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤b〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jの場合は、トリアジン系分散剤aと同様に、各種ポリマー分散剤1種または2種を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
【0157】
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
【0158】
【表14】
【0159】
続いてリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0160】
[実施例2−1]
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
実施例1−1で作製したトリアジン系分散剤aを含む電極を直径16mmに打ち抜き正極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を負極として、正極および負極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を0.1ml満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
【0161】
<イオン抵抗評価>
実施例2−1で組み立てた正極評価用セルを−20℃の恒温槽内で12時間静置し、開回路電位にて周波数0.1Hz、振幅10mVで交流インピーダンス測定を行い、イオン抵抗|Z|
ionを求めた。続いて正極評価用セルを室温(25℃)に移して3時間静置し、同様にインピーダンス測定を行い、イオン抵抗|Z|
ionを求めた。測定にはインピーダンスアナライザーを用いた。
【0162】
<反応抵抗評価>
イオン抵抗評価に続いて、充放電測定装置を用い、室温にて0.1Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、0.1Cの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとして合計5サイクル行った。5サイクル目の0.1C放電容量を記録しておいた。次に、3.0Vまで放電した状態の正極評価用セルをインピーダンスアナライザーに接続し、3.0V、振幅10mV、周波数0.1Hzから1MHzにおいて交流インピーダンス測定を行った。結果をコールコールプロット法にて複素平面上にプロットすると、半円状の曲線が得られる。この円弧の直径を活物質の反応抵抗|Z|
reとした。
【0163】
<室温レート特性・低温放電特性評価>
次に、室温にて0.1Cで同様に満充電にした後、0.5Cの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電し、再度0.1Cで満充電にしてから5Cの定電流で3.0Vまで放電した。反応抵抗評価の試験で記録しておいた5サイクル目の0.1C放電容量に対する5C放電容量の比率を、室温レート特性(%)とした。またここで、室温における0.5C放電容量を記録しておいた。続いて、室温、0.1Cで同様に満充電にしてから−20℃の恒温槽内に移して12時間静置した後に、0.5Cの定電流で同じく放電した。室温の0.5C放電容量に対する−20℃の0.5C放電容量の比率を、低温放電特性(%)とした。室温レート特性、低温放電特性共に100%に近いほど良好である。
【0164】
<サイクル特性評価>
次に、室温で12時間放置し、1Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.3V)で満充電として、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを1サイクルとして500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の比率をサイクル特性(%)とした。サイクル特性評価は100%に近いほど良好である。
【0165】
[実施例2−2〜2−199]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表15に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0166】
【表15】
【表15】
【表15】
【表15】
【0167】
[比較例2−1〜2−4][参考例2−1]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表16に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0168】
【表16】
【0169】
[比較例2−5]
実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を溶剤に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例1−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0170】
<評価結果>
実施例2−1〜2−104のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表17に、実施例2−105〜2−199のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表18に、比較例2−1〜2−5のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の結果を表19に示す。
【0171】
【表17】
【表17】
【0172】
【表18】
【表18】
【0173】
【表19】
【0174】
表17、表18、表19からわかる通り、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jを用いた実施例2−1〜2−199、参考例2−1の正極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例2−1〜2−4や分散剤を用いない比較例2−5の正極と比べて非常に優れていた。
【0175】
トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deは、極めて電子密度の高いLi
+が近傍に存在することで、誘電分極を生じ、電池内では高い誘電率で存在していると考えられる。これによりイオン伝導度を向上させたり、活物質とLiが反応する際のLi
+の脱溶媒和エネルギーや溶媒和エネルギーを低減させ、結果としてイオン抵抗および反応抵抗が小さくなって、電池全体としても特性が向上すると思われる。
【0176】
また、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例2−1〜2−199の正極は、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例2−1〜2−4や分散剤を用いない比較例2−5やトリアジン系分散剤aのみを用いている参考例2−1の正極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
【0177】
実施例と比較例、参考例の正極評価用セルを解体して電極の状態を確認したところ、参考例と比較例の電極は一部剥がれやひび割れが発生していたのに対し、実施例の電極は良好な状態であった。剥離強度が大幅に向上したことによって、サイクルによる電極の剥がれや劣化が抑制され、サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0178】
[実施例3−1〜3−10][比較例3−1〜3−5]炭素材料種の比較
表20に示した炭素材料分散液、表21に示した炭素材料分散ワニス、表22に示した正極合剤ペーストの材料と組成に従い、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−1において実施例1−1で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。高比表面積の炭素材料に対しては分散剤が多く必要であるため、それぞれの炭素材料に合わせて適宜使用量を決定した。
【0179】
炭素材料分散液の組成
【表20】
【0180】
炭素材料分散ワニスの組成
【表21】
【0181】
正極合剤ペーストの組成
【表22】
【0182】
<評価結果>
いずれの実施例、比較例に記載の炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
【0183】
実施例3−1〜3−10、比較例3−1〜3−5の正極評価用セルのイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性、剥離強度の評価結果を表23に示す。
【0184】
【表23】
【0185】
いずれの炭素材料であっても同様の効果が確認できた。実施例3−1〜3−10の差異は炭素材料の導電性による差異であると考えられる。また、比較例3−1〜3−5では、分散剤の添加量が多いものほどいずれの特性も悪い傾向にあった。
【0186】
以上の検証から、先に述べた効果は炭素材料種によらないことが確認できた。
【0187】
[実施例4−1〜4−12]活物質表面積あたりの分散剤量の比較−1
実施例1−2において、用いたトリアジン系分散剤の量、およびポリマー分散剤の量の代わりに、表24、表25、表26に示す分散剤量とした以外は実施例1−2と同様にして電極を作製した。その電極を、実施例2−2において実施例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−2と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。電極中の活物質表面積1m
2に対する分散剤量(mg)と活物質表面積あたりのトリアジン誘導体量(mg)を表27に示した。
【0188】
炭素材料分散液の組成
【表24】
【0189】
炭素材料分散ワニスの組成
【表25】
【0190】
正極合剤ペーストの組成
【表26】
【0191】
活物質表面積あたりのトリアジン系分散剤量およびトリアジン誘導体量
【表27】
【0192】
<評価結果>
比較例2−5、実施例2−2、2−8、4−1〜4−12の反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表28に示す。
【0193】
【表28】
【0194】
実施例4−1から、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤量が少なすぎると効果が小さくなることがわかった。実施例4−2、4−8のトリアジン系分散剤量以上で特に大きな効果が得られるようになり、トリアジン系分散剤量が増えるにつれて徐々に良化した。
【0195】
[実施例5−1〜5−18]活物質表面積あたりの分散剤量の比較−2
表29、表30、表31に示す材料、組成にて実施例1−1と同様に分散し、正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。電極中の活物質表面積1m
2に対するトリアジン系分散剤量(mg)と活物質表面積あたりのトリアジン誘導体量(mg)を表32に示した。
【0196】
炭素材料分散液の組成
【表29】
【0197】
炭素材料分散ワニスの組成
【表30】
【0198】
正極合剤ペーストの組成
【表31】
【0199】
活物質表面積あたりのトリアジン系分散剤量およびトリアジン誘導体量
【表32】
【0200】
<評価結果>
実施例5−1〜5−18の反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表33に示す。
【0201】
【表33】
【0202】
表33より、実施例5−7、5−16のトリアジン系分散剤量を超えると反応抵抗低減効果が小さくなることがわかった。トリアジン系分散剤量が過剰になると、脱溶媒和エネルギーの低減以上に抵抗成分としての悪影響が大きくなることによると考えられる。
【0203】
以上のことから、より大きな反応抵抗低減効果を得るためには、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤添加量の最適な範囲が存在することがわかった。
【0204】
[実施例6−1〜6−12]電解液量に対する分散剤量の比較−1
実施例4−2、4−8で作製した正極を用いて、表34に示す電解液の量に変更した以外は、実施例4−2、4−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。
【0205】
【表34】
【0206】
[実施例7−1〜7−14]電解液量に対する分散剤量の比較−2
実施例5−3、5−12で作製した正極合剤ペーストを用いて、塗布量を28mg/cm
2に変更した以外は実施例5−3と同様な方法で正極を作製した。さらに、正極評価用セルに添加する電解液の量を表35に示す量に変更し、それ以外は実施例5−3、5−12と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。
【0207】
【表35】
【0208】
<評価結果>
実施例4−2、実施例6−1〜6−12、比較例2−5のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表36に示す。実施例7−1〜7−14のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表37に示す。
【0209】
実施例4−2、4−8、6−1〜6−12の反応抵抗はいずれも同等であった。これは、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤量が等しいことによると考えられる。
【0210】
また、実施例6−1〜6−4、6−7〜6−12では室温および低温のイオン抵抗は比較例2−5に比べて大幅に低くなっており、実施例6−4、6−10を下限に実施例6−5、6−6、6−11、6−12では効果が小さくなった。大きな効果を得るには、電解液量に対するトリアジン系分散剤最適量の下限が存在することが示された。
【0211】
室温レート特性および低温放電特性はイオン抵抗と反応抵抗両方の影響を受けるため、電池として優れた特性を得るためには両方の効果が得られるよう設計するのが良い。
【0212】
一方、実施例7−1〜7−14の比較から、電解液量に対するトリアジン系分散剤量が多すぎてもイオン抵抗低減効果が小さくなることがわかった。これは、トリアジン系分散剤は絶縁性の化合物であるため、過剰にあると、それ自体が抵抗成分になってしまうことによると考えられる。
【0213】
以上のことから、電解液量に対するトリアジン系分散剤最適量には上限も存在することがわかった。
【0214】
【表36】
【0215】
【表37】
【0216】
[実施例8−1]電解液の影響調査
実施例2−2で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−2と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0217】
[実施例8−2]
実施例2−2で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−2と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0218】
[実施例8−3]電解液の影響調査−2
実施例2−8で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0219】
[実施例8−4]
実施例2−8で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0220】
[比較例8−1]
比較例2−5で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液を用いた以外は、比較例2−5と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0221】
[比較例8−2]
比較例2−5で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液を用いた以外は、比較例2−5と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0222】
<評価結果>
実施例2−2、2−8、8−1〜8−4、比較例2−5、8−1、8−2のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表38に示す。
【0223】
【表38】
【0224】
実施例8−1〜8−4より、電解液の種類によらず、すべての特性が比較例よりも良化することが確認できた。本実施例に示した電解液以外でも、一般的に用いられる非水電解液であれば、種類によらず同じ効果が得られると思われる。
【0225】
次に、活物質の種類を変更して同様に評価した。
【0226】
[実施例9−1〜9−3]活物質種の比較
実施例1−2で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、実施例2−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−2において実施例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−2と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0227】
[実施例9−4〜9−6]活物質種の比較−2
実施例1−8で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、実施例2−8と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−8において実施例1−8で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−8と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0228】
[比較例9−1〜9−3]
比較例1−2で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、比較例2−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、比較例2−1において比較例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、比較例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0229】
【表39】
【0230】
<評価結果>
実施例9−1〜9−6、比較例9−1〜9−3のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、剥離強度試験、サイクル特性の評価結果を表40に示す。
【0231】
【表40】
【0232】
活物質の性能によって差異はあるものの、同じ活物質で実施例と比較例を比較すると、実施例9−1〜9−6はいずれも電池特性、剥離強度、サイクル特性が向上していることが確認できた。
【0233】
続いて、本発明の電池用組成物を負極に用いた場合の評価を行った。
【0234】
[実施例10−1]
【0235】
<炭素材料分散ワニスの調製>
表41に示す組成に従い、実施例1−1で作製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液とバインダー、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
【0236】
<負極合剤ペーストの調製>
表41に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散ワニスと活物質、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、負極合剤ペーストを得た。
【0237】
【表41】
【0238】
<電極の作製>
調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む負極合剤ペーストを、厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量15mg/cm
2、密度1.8g/cm
3の電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
【0239】
[実施例10−2〜10−10]
実施例10−1で用いたPVA−103を表42に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
【表42】
【0240】
[参考例10−1]トリアジン系分散剤aのみ
表43に示す通り、実施例10−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤aに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤aのみとした以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
【0241】
[比較例10−1]分散剤種の比較−1
表43に示す通り、参考例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
【0242】
[比較例10−2]分散剤種の比較−2
表43に示す通り、実施例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
【0243】
[比較例10−3、10−4]分散剤種の比較−3
比較例10−2で用いたPVA−103の代わりに、表43に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
【0244】
【表43】
【0245】
<評価結果>
実施例10−1〜10−10、参考例10−1、比較例10−1〜10−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
【0246】
実施例10−1〜10−10、参考例10−1、比較例10−1〜10−4で作製した電極の剥離強度試験を行った。その結果を表44に示す。剥離強度試験の結果は、参考例10−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、負極合材においての剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。トリアジン系分散剤baのみを用いた比較例10−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例10−1〜10−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤baの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤aのみを用いた参考例10−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例10−1〜10−10を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。
【0247】
【表44】
【0248】
[実施例10−11〜10−188]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表45に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0249】
【表45】
【表45】
【0250】
[実施例10−189]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用
表46に示す通り、実施例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン誘導体Aに置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0251】
[実施例10−190〜10−193]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用−2
実施例10−189で用いたPVA−103の代わりに、表46に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン誘導体Aの代わりに表46に示したトリアジン誘導体をそれぞれ用いた以外は、実施例10−189と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0252】
【表46】
【0253】
[実施例10−194]ポリマー分散剤の併用
表47に示す通り、実施例10−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0254】
[実施例10−195、10−196]ポリマー分散剤の併用−2
実施例10−194で用いたPVA−103の代わりに、表47に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例10−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0255】
[実施例10−197〜10−199]ポリマー分散剤の併用−3
実施例10−194で用いたPVA−103の代わりに、表47に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン系分散aの代わりにトリアジン誘導体Aを用いた以外は、実施例10−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0256】
【表47】
【0257】
[比較例10−5〜10−7]
参考例10−1で用いたトリアジン系分散剤aを表48で示した分散剤に置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0258】
【表48】
【0259】
[比較例10−8〜10−13]
実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を表49に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0260】
【表49】
【0261】
<評価結果>
実施例10−11〜10−199、参考例10−1、比較例10−5〜10−13で作製した電極の剥離強度試験結果を表50に示す。トリアジン系分散剤baの場合と同様に、トリアジン系分散剤bb、ea、ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤b〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jの場合は、トリアジン系分散剤aと同様に、各種ポリマー分散剤1種または2種を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
【0262】
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
【0263】
【表50】
【0264】
続いてリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0265】
[実施例11−1]
<リチウムイオン二次電池負極評価用セルの組み立て>
実施例10−1で作製したトリアジン系分散剤a含む電極を直径18mmに打ち抜き負極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を正極として、負極および正極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を0.1ml満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
【0266】
<イオン抵抗評価>
実施例2−1と同じ条件でインピーダンス測定を行い、−20℃および室温(25℃)におけるイオン抵抗|Z|
ionを求めた。
【0267】
<反応抵抗評価>
イオン抵抗評価に続いて、充放電測定装置を用い、室温にて0.1Cの定電流定電圧充電(下限電圧0.0V)で満充電とし、0.1Cの定電流で放電上限電圧2.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとして合計5サイクル行った。5サイクル目の0.1C放電容量を記録しておいた。次に、2.0Vまで放電した状態の負極評価用セルをインピーダンスアナライザーに接続し、2.0V、振幅10mV、周波数0.1Hzから1MHzにおいて交流インピーダンス測定を行った。結果をコールコールプロット法にて複素平面上にプロットすると、半円状の曲線が得られる。この円弧の直径を活物質の反応抵抗|Z|
reとした。
【0268】
<室温レート特性・低温放電特性評価>
次に、室温にて0.1Cで同様に満充電にした後、0.5Cの定電流で放電上限電圧2.0Vまで放電し、再度0.1Cで満充電にしてから5Cの定電流で2.0Vまで放電した。反応抵抗評価の試験で記録しておいた5サイクル目の0.1C放電容量に対する5Cの放電容量の比率を、室温レート特性(%)とした。またここで、室温における0.5C放電容量を記録しておいた。続いて、室温、0.1Cで同様に満充電にしてから−20℃の恒温槽内に移して12時間静置し、0.5Cの定電流で同じく放電した。室温の0.5C放電容量に対する−20℃の0.5C放電容量の比率を、低温放電特性(%)とした。
【0269】
<サイクル特性評価>
次に、室温で12時間放置し、1Cの定電流定電圧充電(下限電圧0.0V)で満充電とし、1Cの定電流で2.0Vまで放電した。これを1サイクルとして500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の比率をサイクル特性(%)とした。サイクル特性評価は100%に近いほど良好である。
【0270】
[実施例11−2〜11−199]
実施例11−1において、実施例10−1で作製した電極を用いた代わりに、表51に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0271】
【表51】
【表51】
【表51】
【表51】
【0272】
[比較例11−1〜11−4][参考例11−1]
実施例11−1において、実施例10−1で作製した電極を用いた代わりに、表52に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0273】
【表52】
【0274】
[比較例11−5]
実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を溶剤に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例10−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0275】
<評価結果>
実施例11−1〜11−104のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表53に、実施例11−105〜11−199のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表54に、比較例11−1〜11−5、参考例11−1のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の結果を表55に示す。
【0276】
【表53】
【表53】
【0277】
【表54】
【表54】
【0278】
【表55】
【0279】
表53、表54、表55からわかる通り、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jを用いた実施例11−1〜11−199、参考例11−1の負極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例11−1〜11−4や分散剤を用いない比較例11−5の負極と比べて非常に優れていた。
【0280】
また、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例111〜11−199の負極は、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例11−1〜11−4や分散剤を用いない比較例11−5やトリアジン系分散剤aのみを用いている参考例11−1の負極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
【0281】
このことから本発明の電池用組成物を負極に用いた場合も、正極の場合と同じ効果が得られることが確認できた。
【0282】
[実施例12−1]
<炭素材料分散液の調製>
表56に示す組成に従い、ガラス瓶に水とトリアジン系分散剤caとポリマー分散剤PVA−103を仕込み、混合した後、炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液を得た。
【0283】
<炭素材料分散ワニスの調製>
表56に示す組成に従い、調製した炭素材料分散液とバインダー、水をディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
【0284】
<合剤ペーストの調製>
表56に示す組成に従い、調製した炭素材料分散ワニスと活物質、水をディスパーにて混合し、正極合剤ペーストを得た。
【0285】
<電極の作成>
調製したトリアジン系分散剤caとポリマー分散剤PVA−103を含む正極合剤ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量17mg/cm
2、密度3.0g/cm
3の電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
【0286】
【表56】
【0287】
[実施例12−2〜12−9]
実施例12−1で用いたPVA−103を表57に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0288】
【表57】
【0289】
[参考例12−1] トリアジン系分散剤caのみ
表58に示す通り、実施例12−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤caに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤caのみとした以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0290】
[比較例12−1]分散剤種の比較−1
表58に示す通り、参考例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤eaに置き換えた以外は、参考例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0291】
[比較例12−2]分散剤種の比較−2
表58に示す通り、実施例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤eaに置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0292】
[比較例12−3、12−4]分散剤種の比較−3
比較例12−2で用いたPVA−103の代わりに、表58に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、比較例12−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
【0293】
【表58】
【0294】
<評価結果>
実施例12−1〜12−9、参考例12−1、比較例12−1〜12−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
【0295】
実施例12−1〜12−9、参考例12−1、比較例12−1〜12−4で作製した電極の剥離強度試験を行った。剥離強度試験の結果は、参考例12−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、正極合材において、溶剤が水である系の剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。その結果を表59に示す。トリアジン系分散剤eaのみを用いた比較例12−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例12−2〜12−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤eaの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤caのみを用いた参考例12−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例12−1〜12−9を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。
【0296】
【表59】
【0297】
[実施例12−10〜12−88]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表60に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0298】
【表60】
【0299】
[実施例12−89]ポリマー分散剤の併用
表61に示す通り、実施例12−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0300】
[実施例12−90、12−91]ポリマー分散剤の併用−2
実施例12−89で用いたPVA−103の代わりに、表61に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例12−89と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0301】
【表61】
【0302】
[比較例12−5]
表62に示す通り、参考例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤ebに置き換えた以外は、参考例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【0303】
[比較例12−6、12−7]
実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤ca、ポリマー分散剤PVA−103を表62に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
【表62】
【0304】
<評価結果>
実施例12−10〜12−91、参考例12−1、比較例12−5〜12−7で作製した電極の剥離強度試験結果を表63に示す。トリアジン系分散剤eaの場合と同様に、トリアジン系分散剤ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤cb〜deの場合は、トリアジン系分散剤caと同様に、各種ポリマー分散剤を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
【0305】
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
【0306】
【表63】
【0307】
続いてリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0308】
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
[実施例13−1〜13−91][比較例13−1、13−2][参考例13−1]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表64に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0309】
【表64】
【表64】
【0310】
[比較例13−3]
実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤ca、ポリマー分散剤PVA−103を水に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例13−1において、実施例12−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例13−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
【0311】
<評価結果>
実施例13−1〜13−91、比較例13−1〜13−3、参考例13−1のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表65に示す。
【0312】
【表65】
【表65】
【0313】
表65からわかる通り、トリアジン系分散剤ca〜deを用いた実施例13−1〜13−91、参考例13−1の正極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例13−1、13−2や分散剤を用いない比較例13−3の正極と比べて非常に優れていた。
【0314】
また、トリアジン系分散剤ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例13−1〜13−91の正極は、トリアジン系分散剤ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例13−1、13−2や分散剤を用いない比較例13−3やトリアジン系分散剤caのみを用いている参考例13−1の正極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
【0315】
このことから、溶剤を水とした場合でも同じ効果が得られることが確認できた。