(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩が、塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)、塩化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Chloride)、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、臭化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Bromide)、臭化ドデシルピリ
ジニウム(Dodecylpyridinium Bromide)、または臭化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Bromide)である、請求項1に記載の組成物。
前記塩が、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ブチルピリジニウム、臭化ドデシルピリジニウムまたは臭化セチルピリジニウムである、請求項5に記載の分化促進方法。
前記塩が、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ブチルピリジニウム、臭化ドデシルピリジニウムまたは臭化セチルピリジニウムである、請求項9に記載の組成物。
前記塩が、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ブチルピリジニウム、臭化ドデシルピリジニウムまたは臭化セチルピリジニウムである、請求項14に記載の組成物。
【背景技術】
【0003】
筋力の低下を誘発する疾患は、加齢とともに進行するサルコペニア(sarcopenia)、タンパク質代謝の不均衡や筋肉使用の減少から誘発される筋萎縮症(muscle atrophy)、飢餓、消耗性疾患(癌等)、加齢と共に進行する心臓萎縮症(acardiotrophy)などがある。
【0004】
サルコペニア(sarcopenia)とは、老化が進行する間、筋肉量(skletal muscle mass)の減少に伴う筋力の低下をいう。サルコペニアの最大の特徴である筋肉量の減少だけでなく、筋線維の種類の変化も観察される。加齢と共にタイプ1とタイプ2とが類似した割合で減少するのに対し、サルコペニアになるとタイプ2の筋線維の厚さにはそれほど変化がないが、タイプ1の筋線維の厚さは顕著に減少する。このようなサルコペニアは、高齢者の間で起こる老衰および機能障害を誘発すると報告されている。
【0005】
サルコペニアは、様々な要因によって誘発されるが、それぞれの要因についての研究は未だ十分ではない。成長ホルモンの減少または神経学的変化(neurological change)、生理活性(physical activity)の変化、代謝の変化、性ホルモンの量または脂肪やカタボリックサイトカイン(catabolic cytokines)の増加とタンパク質の合成と分化のバランス変化とにより誘導される。サルコペニアの最大の特徴である筋肉量の減少の原因としては、衛星細胞の活性(satellite cell activation)の減少が重要な原因として挙げられる。衛星細胞とは、基底膜(basement membrane)と筋鞘(sarcolemma)との間に位置する小さな単核細胞である。これらは負傷または運動のような刺激により活性化され、筋芽細胞として増殖し、分化が進むと、他の細胞と融合して多核の筋線維を形成する。したがって、衛星細胞の活性が減少することにより、破損した筋肉を再生する能力または分化信号に対する反応が低下し、その結果、筋肉の形成が低下する。
【0006】
筋萎縮症(Muscle atrophy)は、栄養欠乏や長期間筋肉を使用しない場合に誘発されるが、正常なタンパク質の合成と分解とのバランスが崩れ、タンパク質が分解されることによって現れる。
【0007】
一方、心臓萎縮症(acardiotrophy)は、飢餓、消耗性疾患(癌など)、老衰のときに誘発されるが、心筋繊維がやせ細り、核は濃縮されて大小不同になる。したがって、筋肉束(muscle fascicle)も容積が減り、心臓全体が小さくなり、心外膜下の脂肪組織は著しく減少し、冠状動脈は折れ曲がれる。心筋線維の核両端に茶色の色素として消耗色素(リポフスチン)が現れ、脂肪組織の減少と共に心臓全体が茶色を帯びる。
【0008】
サルコペニアの治療方法としては、大まかに3つの方法を挙げることができる。第一の
方法は運動である。運動は、短期的に骨格筋のタンパク質合成能力を増加させ、高齢者の筋肉の力や運動性を増加させると報告されている。しかし、長期の治療方法としては不適切である。第二の方法は、薬物治療としてテストステロン(Testosterone)またはアナボリックステロイド(anabolic steroid)の使用が可能であるが、これは女性には男性化を誘導し、男性の場合、前立腺症状(prostate symptoms)などの副作用が現われる。他に承認された処方としてDHEA(dehydroepiandrosterone)と成長ホルモンとがあるが、SARMs(Selective Androgen Receptor Modulators)を含む部位での治療法として可能であるという研究が報告されている(非特許文献1)。また、食事療法が治療法として知られているが、栄養評価によると、栄養失調または現代の食習慣は、適切な総ボディマス(total body mass)を維持するために不適切である。
【0009】
最近では、衛星細胞を分離してin vitroで分化させた後、体内に導入させる幹細胞治療法(stem cell therapy)と、直接体内の衛星細胞を活性化して筋肉の分化(myogenesis)を促進させて筋肉を維持したり、強化させたりる方法がサルコペニアのような筋力低下を治療する方法として浮上している(非特許文献2)。
【0010】
したがって、筋肉の筋力低下に関連する疾患を治療するために、より根本的で、副作用がない治療方法で筋芽細胞を分化する方法が求められており、よって筋芽細胞の分化を促進する物質の開発が必要とされているのが実情である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む筋芽細胞(myoblast)の分化促進用組成物に関し、ブチルピリジニウムは、下記化学式(1)で示されたとおりである。
【0025】
本発明で使用される用語「誘導体」とは、前記ブチルピリジニウムに官能基を導入、置換、酸化、還元などにより母体の構造と性質を大幅に変化させない程度の範囲で変化させた化合物を意味する。例えば、前記ブチルピリジニウムに結合した炭素数4のアルキル基を炭素数4以上のアルキル基を含む官能基で置換することができる。具体的には、炭素数4〜16のアルキル基を含む官能基で置換することができ、より具体的には、炭素数4、12または16のアルキル基を含む官能基で置換することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
具体的には、前記誘導体は、炭素数12のアルキル基で置換されたドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium)であってもよく、下記化学式(2)で示されるとおりである。
【0028】
また、前記誘導体は、炭素数16のアルキル基で置換されたセチルピリジニウム(Cetylpyridinium)であることができ、下記化学式(3)で示されるとおりである。
【0030】
セチルピリジニウムの国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry、IUPAC)の名称は、1−ヘキサデシルピリジニウム(1-Hexadecylpyridinium)であり、塩酸、臭素などと反応した塩の形態である塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、臭化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium bromide)などの形態で存在することができ、前記塩の形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明においてブチルピリジニウムの誘導体の一つである、「セチルピリジニウム(Cetylpyridinium)」は、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)の形態で口腔内有害菌を殺菌して歯周病に優れた効果を示すことが知られているが、筋芽細胞分化との関連性については知られていない。また、ブチルピリジニウム、ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium)なども筋芽細胞分化との関連性については知られていない。よって、本発明者らはブチルピリジニウム、その誘導体またはその薬学的に許容可能な塩に筋芽細胞分化の用途があることを初めて究明して本発明を完成した。
【0032】
本発明で使用される用語「薬学的に許容可能な塩」とは、化合物が投与される有機体に深刻な刺激を誘発することなく、化合物の生物学的活性と物性とを損なわない化合物の剤形を意味する。前記薬学的塩は、薬学的に許容される陰イオンを含有する無毒性の酸付加塩を形成する酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのような無機酸と、酒石酸、ギ酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、サリチル酸などのような有機カル
ボンと、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのようなスルホン酸と、などにより形成された酸付加塩が含まれてもよい。例えば、薬学的に許容されるカルボン酸塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどにより形成された金属塩またはアルカリ土類金属塩、リジン、アルギニン、グアニジンなどのアミノ酸塩と、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリン及びトリエチルアミンなどのような有機塩と、などが含まれてもよい。
【0033】
本発明の具体的な一具現例として、前記塩は、塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)、塩化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Chloride)、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、臭化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Bromide)、臭化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Bromide)または臭化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Bromide)であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
本発明で使用される用語、「筋芽細胞分化」とは、単核である筋芽細胞(myoblast)が融合により多核の筋管(myotube)を形成する過程である。筋肉前駆体細胞に該当する筋芽細胞は、自己複製(self-renewal)する場合には、Pax7
+マーカーを示し、増殖した場合、Pax7
+/MyoD
+を示す。筋管を形成する分化段階の細胞は、Pax7−MyoD
+MyoG
+マーカーを利用して区別することができる。前記筋管を形成する分化の初期段階の細胞は、ミオシンD(MyoD)のような筋原性制御因子(myogenic transcription factor)の発現が増加し、中期ではミオシンG(MyoG)が増加する。分化がほぼ終わる後期には、ミオシン重鎖(MyHC、 Myosin Heavy Chain)の発現が増加する。
【0035】
具体的には、本発明の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を0.001μM〜5.0μMの濃度で含む、筋芽細胞の分化促進用組成物に関する。前記組成物は、血清が含まれたDMEM分化用培地であってもよいが、筋芽細胞の分化を促進することができる培地または組成物であれば制限なく含むことができる。前記組成物において、より具体的にブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を0.005μM〜2.5μMの濃度で含むことができ、最も具体的に0.01μM〜0.5μMの濃度で含むことができる。また、前記組成物は、細胞培養または分化に必要な付加的な物質をさらに含むことができる。
【0036】
ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を0.001μM未満含む場合、濃度が低すぎて分化促進効果が低下するという問題が生じることがあり、5.0μMを超過して含まれる場合、毒性を惹起することがある。
【0037】
また、本発明の他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を筋芽細胞に処理するステップを含む、筋芽細胞の分化促進方法に関する。ブチルピリジニウム、その誘導体またはその薬学的に許容可能な塩は、前記で説明したとおりである。具体的には、前記筋芽細胞の分化促進方法は、セチルピリジニウム、その誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を体外または体内筋芽細胞に処理して分化を促進することができる。
【0038】
本発明のまた他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩で筋芽細胞を処理して筋芽細胞を分化させるステップを含む分化した筋芽細胞の製造方法を提供する。
【0039】
ブチルピリジニウム、その誘導体またはその薬学的に許容可能な塩は、前記で説明したとおりである。本発明の前記製造方法は、ブチルピリジニウム 、その誘導体、またはそ
の薬学的に許容可能な塩で体外または体内筋芽細胞を処理して筋芽細胞を分化させるステップを含む分化した筋芽細胞を製造することを特徴とする。
【0040】
本発明の一実施例では、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)、塩化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Chloride)でそれぞれ筋芽細胞を0.2μMの濃度で処理した後、筋芽細胞の分化程度を位相差顕微鏡(Phase Contrast microscopy)で観察した結果、陰性対照群(DMSO)に比べて分化が促進され、筋管が多数形成されることを確認し(
図1)、免疫細胞化学法及びウェスタンブロットによっても筋細胞分化促進効果が非常に高いことを確認した(
図2及び
図3)。
【0041】
したがって、本発明は、筋管を形成することができ、MYH3タンパク質を発現する分化した、筋芽細胞を体外または体内で製造することができる。
【0042】
また、本発明のまた他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む筋力低下に関連する疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩の濃度は、前記で説明したとおりである。
【0043】
本発明で使用される用語「筋力低下」とは、1つまたはそれ以上の筋肉の力が減少した状態を意味する。前記筋力低下は、いずれか一つの筋肉や、体の片側、上肢や下肢などに限定されることもあり、全身に亘って現れることもある。また、筋疲労や筋肉痛を含む主観的な筋力低下の症状は、理学的検査によって、客観的な方法で定量化されてもよい。
【0044】
本発明において筋力低下に関連する疾患とは、筋力低下が原因で発生するあらゆる疾患を意味し、例えば、サルコペニア、筋萎縮症、筋ジストロフィー(muscle dystrophy)、または心臓萎縮症(acardiotrophy)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
したがって、本発明の組成物は、筋芽細胞の分化促進によりサルコペニア、筋萎縮症、筋ジストロフィー、または心臓萎縮症の予防または治療のために使用することができる。
【0046】
具体的には、本発明のサルコペニアとは、老化に伴う漸進的な骨格筋量の減少を意味するものであり、直接的に筋力の低下を誘発し、その結果、様々な身体の機能低下及び障害を引き起こす可能性がある状態を意味する。
【0047】
また、筋萎縮症は、四肢の筋肉がほぼ左右対称的に次第に萎縮していくものであり、脊髄にある運動神経線維及び細胞の進行変性を誘発して筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)と脊髄性進行性筋萎縮症(Spinal progressive muscular atrophy、 SPMA)とを起こしうる。
【0048】
筋ジストロフィー(muscle dystrophy)とは、漸進的な筋萎縮と筋衰弱とが現れる疾患であり、病理学的に筋線維の壊死を特徴とする筋ジストロフィーを意味する。筋細胞膜の損傷により筋線維の壊死と退行過程を経て筋力の低下及び萎縮が発生する。
【0049】
本発明の心臓萎縮症(acardiotrophy)とは、心臓が外部的または内部的な要因により萎縮していくものであり、飢餓、消耗性疾患、老衰の際に、心筋線維がやせ細って脂肪組織の減少を誘発する心臓の茶色の萎縮症状を引き起こし得る。
【0050】
本発明で使用される用語「予防」とは、前記組成物の投与により、筋肉弱化に関連する疾患を抑制させたり、発症を遅延させたりするすべての行為を意味する。
【0051】
本発明で使用される用語「治療」とは、前記組成物の投与により、筋肉の弱化に関連する疾患による症状が好転したり、有利に変更されたりするすべての行為を意味する。
【0052】
本発明の薬学的組成物は、投与のために前記ブチルピリジニウム(Butylpyridinium)、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩、具体的に塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)、塩化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Chloride)、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、臭化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Bromide)、臭化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Bromide)または臭化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Bromide)以外に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油を挙げることができる。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩の迅速、持続または遅延された放出を提供し得るように、当業界において周知の方法を用いて薬学的製剤として製造することができる。製剤の製造において、活性成分を担体と共に混合または希釈するか、容器の形態の担体内に封入させることが好ましい。
【0054】
また、本発明の薬学的組成物は、どのような剤形にも適用可能であるが、非経口用に製造することが好ましい。非経口剤形としては、注射用、塗布用、エアゾールなどのスプレー型であってもよい。
【0055】
非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油と、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルと、などを使用することができる。
【0056】
注射型剤形に製剤化するためには、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を安定剤または緩衝剤と共に水で混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアルの単位投与用に製剤することができる。
【0057】
本発明のブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物は、筋力低下に関連する疾患が発症した個体または発症する可能性がある個体の筋力強化が必要な部位に直接注入することができ、体外または体内の筋芽細胞に適用し、分化した筋芽細胞を製造した後、分化した筋芽細胞を筋力低下に関連する疾患が発症した個体または発症する可能性がある個体の筋力強化が必要な部位に注入することができる。
【0058】
また、前記組成物には、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩が筋力低下に関連する疾患の予防または治療の妨げにならない限り、追加成分、例えば、筋力低下に関連する疾患の治療剤として知られている物質が含まれてもよい。
【0059】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、筋芽細胞の分化を促進することを特徴とすることができる。本発明の一実施例では、塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)、塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)、塩化ドデシルピリジニウム(Dodecylpyridinium Chloride)をそれぞれ筋芽細胞に0.2μMの濃度で処理した後
、筋芽細胞の分化程度を位相差顕微鏡(Phase Contrast microscopy)で観察した結果、陰性対照群(DMSO)に比べて分化が促進され、筋管が多数形成されることを確認し(
図1)、免疫細胞化学法及びウェスタンブロットによっても筋細胞分化促進効果が非常に高いことを確認した(
図2及び
図3)。また、前脛骨筋の筋肉の動きを3日間制限(muscle immobilization)し、筋肉の損傷を誘導した後、再び解放し、筋肉が再生されるようにして、7日後に同じ運動能力の向上テストによって、塩化セチルピリジニウムを投与した実験群において、筋肉の運動制限(muscle immobilization)後、対照群に比べて握力が低下する幅が減ることを確認し(
図4)、平衡感覚を維持する運動能力が向上したことを確認し(
図5)、持久力が向上したことを確認した(
図6)。
【0060】
このような結果を通じて、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩が筋芽細胞の分化を促進するのに効果的であり、筋肉の弱化に関連する疾患の予防治療に有用であることを確認した。
【0061】
さらに、本発明の他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその食品学的に許容可能な塩を含む筋力低下に関連する疾患の予防または改善用食品組成物に関する。本発明の組成物は、筋肉の弱化に関連する疾患を予防または改善するために、筋肉の弱化に関連する疾患の発症段階の前または発症後、疾患の治療のための薬剤と同時に、または個別に使用することができる。ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその食品学的に許容可能な塩の濃度は、前記で説明したとおりである。
【0062】
前記筋力低下に関連する疾患とは、筋力低下が原因で発生するすべての疾患を意味し、例えば、サルコペニア、筋萎縮症、筋ジストロフィーまたは心臓萎縮症が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、前記食品組成物は、筋芽細胞(Myoblast)の分化を促進することを特徴とする。
【0063】
本発明で使用される用語「改善」とは、治療される状態に関連するパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為を意味する。
【0064】
また、本発明の食品組成物を食品添加物として使用する場合、前記組成物をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用したりすることができ、常法によって適切に使用することができる。一般には、食品または飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加することができる。しかし、健康及び衛生を目的にしたり、または健康調節を目的としたりする長期間の摂取の場合には、前記範囲以下であってもよく、安全性の面で何ら問題がないため、有効成分は前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0065】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味での健康食品をすべて含む。
【0066】
本発明の健康飲料組成物は、通常の飲料のように種々の香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖などの単糖類、マルトース、スクロースのような二糖類、及びデキストリン、シクロデキストリンなどの天然甘味料、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味料などを使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定することができる。
【0067】
前記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他、本発明の組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合も、当業者によって適切に選択することができる。
【0068】
さらに、本発明の他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、筋力強化用組成物に関する。
【0069】
さらに、本発明の他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその食品学的に許容可能な塩を含む、筋力強化用組成物に関する。
【0070】
本発明の用語「筋力強化」とは、身体能力の強化、最大持久力の強化、筋肉量の増加、筋肉回復の強化、筋肉疲労の軽減、エネルギー収支の改善、またはこれらの組み合わせの効果をいう。
【0071】
本発明のブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的または食品学的に許容可能な塩を含む筋力強化用組成物は、筋芽細胞を筋肉細胞に分化させる能力により筋肉量を増加させ、全体筋肉量を増加させることができ、最大持久力が強化され、これに応じて身体能力が強化され、筋肉疲労も減少させることができる。また、筋肉細胞が急速に入れ替わるため、筋肉の損傷に対して迅速に治癒することができる。
【0072】
本発明の筋力強化用組成物は、投与のために、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的または食品学的に許容可能な塩以外に、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤は、前記で説明したとおりである。
【0073】
また、本発明の筋力強化用組成物は、食品組成物または食品添加物の形態で製造することができ、特に健康食品組成物の形態で製造することができる。前記食品組成物は、前記で説明したとおりである。したがって、本発明の筋力強化用組成物は、加齢による筋肉の減少だけでなく、一般人の筋肉生成、筋力強化に対するサプリメントなどの形で利用することができる。
【0074】
本発明の一実施例では、前記塩化セチルピリジニウム、及び臭化セチルピリジニウムをマウスに処理し、握力テスト、ロータロッドテスト、トレッドミルテストを進め、その筋力強化機能を確認することにより、筋力強化の用途として使用されることを確認した。
【0075】
本発明のまた他の一具現例は、ブチルピリジニウム、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む筋力強化用飼料または飼料添加剤に関する。
【0076】
本発明において「飼料」とは、動物の生命を維持するのに必要な有機または無機栄養素を供給する物質を意味する。飼料は、家畜などの動物が必要とするエネルギー、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を含み、穀物類、堅果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、油脂類、澱粉類、ミール類、穀物副産物類などの植物性飼料またはタンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、単細胞タンパク質などの動物性飼料であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明において「飼料添加物」とは、動物の生産性の向上や健康を増進させるために飼
料に添加される物質を意味し、特にこれに限定されないが、成長促進、疾病予防などのためのアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、香味剤、ケイ酸塩剤、緩衝剤、抽出剤、オリゴ糖などがさらに含まれてもよい。
【0078】
前記本発明の筋力強化用飼料または飼料添加物に含まれるブチルピリジニウム(Butylpyridinium)、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩の含有量は、特にこれに限定されないが、0.001%(w/w)〜1%(w/w)であってもよく、具体的には、0.005%(w/w)〜0.9%(w/w)であってもよく、より具体的には、0.01%(w/w)〜0.5%(w/w)であってもよい。
【0079】
本発明のまた他の一具現例は、ブチルピリジニウム(Butylpyridinium)、その誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を、これを必要とする個体に投与するステップを含む、筋肉の筋力低下に関連する疾患の治療方法に関する。
【0080】
前記筋力低下に関連する疾患とは、筋力低下が原因で発生するすべての疾患を意味し、例えばサルコペニア、筋萎縮症、筋ジストロフィーまたは心臓萎縮症が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0081】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例により制限されるものとは解釈されない。
【実施例】
【0082】
実施例1.筋芽細胞株C2C12の培養
C2Cl2はC3H種の生きたマウスから得た筋芽細胞株であり、筋細胞分化の研究に広く用いられている。
【0083】
C2C12細胞は、一般的な細胞培養用培地と分化用培地でそれぞれ培養した。正常な細胞培養用培地(GM、growth media)としては10%の牛胎児血清(fetal bovine serum)が添加されたDMEMを使用し、分化用培地(DM、differentiation media)としては2%のウマ血清を含まれたDMEMを使用した。
【0084】
実施例2.筋芽細胞(myoblast)の分化誘導
細胞培養用培地に細胞を分注し、24時間培養した後、分化培地をそれぞれDMSO、塩化セチルピリジニウム(0.2μM)、塩化ブチルピリジニウム(0.2μM)、塩化ドデシルピリジニウム(0.2μM)で処理しながら3日間分化を誘導した。実験に使用されたDMSOと塩化セチルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウムは、すべてシグマアルドリッチ社から購入した。
【0085】
実施例3.塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)またはその誘導体の筋芽細胞(myoblast)分化促進の確認(in vitro)
3−1.位相差顕微鏡(Phase contrast microscopy)
塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)とその誘導体である塩化セチルピリジニウム及び塩化ドデシルピリジニウムによる、筋芽細胞からの多量の筋管(myotube)形成を確認するために、0.1%のゼラチンがコーティングされたカバーガラスでC2Cl2細胞を薬物伝達体であるDMSO、塩化ブチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ドデシルピリジニウムでそれぞれ0.2μMずつ処理しながら3日間分化させた後、位相差顕微鏡で観察した。このような実験の結果、対照群であるDMSOに比べて塩化ブチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム及び塩化ドデシルピリジニウムでそれぞれ処理したとき、筋管が多く形成されることから、分化促進効果を確認すること
ができた(×100)(
図1)。
【0086】
3−2.免疫細胞化学染色(Immunocytochemistry)
0.1%のゼラチンがコーティングされたカバーガラスでC2Cl2細胞を3日間分化させた。細胞を1×PBSで洗浄した後、3.7%のパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)で室温にて15分間固定させた後、1×PBSで3回洗浄した後、透過用バッファ(permeabilization buffer)を入れ、常温で15分間反応させた。再び1×PBSで3回洗浄した後、1%のBSAが含まれたPBST(blocking uffer、0.5% Tween 20を含むPBS)で30分間反応させて不特定の抗体の結合を抑制した。MYH3の1次抗体(SC−20641、Santa Cruz Biotechnology社)をブロッキングバッファー(blocking buffer)で1:500に希釈して添加した後、常温で1時間反応させた。1×PBSで3回洗浄した後、ブロッキングバッファーで1:5000に希釈した2次抗体(Goat anti-Rabbit IgG-HRP)を添加し、常温で1時間反応させた後、1×PBSで3回洗浄した。カバーガラスをスライドガラスに載せ、蛍光顕微鏡で写真を撮って結果を分析した。
【0087】
本発明では、DMSO(陰性対照群)、塩化ブチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ドデシルピリジニウムでそれぞれ処理し、C2Cl2細胞株の分化を誘導させた後、3日目になった日、筋芽細胞の分化程度を比較するためにMYH3に対する抗体で染色してタンパク質の発現を確認した。その結果、塩化ブチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム及び塩化ドデシルピリジニウムでそれぞれ0.2μMずつ処理したときMYH3の発現が非常に高いことを確認することができた(
図2)。
【0088】
3−3.ウェスタンブロット(Western Blot)
培養用培地にC2C12細胞を分注し、24時間培養した後、分化培地にそれぞれDMSO(対照群)、塩化エチルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、及び臭化セチルピリジニウムでそれぞれ0.2μMずつ毎日処理しながら分化を誘導した。分化誘導3日目に細胞を収得し、1200rpmで3分間遠心分離した。前記細胞に100μLのライシスバッファー(Lysis buffer)を添加した後、超音波分解(sonication)させ、3000rpmで10分間遠心分離して水溶性タンパク質を得て、4×サンプルバッファー(sample buffer)を添加して沸湯水で5分間反応させた。
【0089】
10μgのタンパク質を12%のSDS−PAGEゲルにロードして展開した後、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)に転写した。前記メンブレンを、5%のスキムミルクで、1時間常温でブロッキングし、TTBS(0.03%Tween
20、Tris2.42 g、NaCl9g、pH7.4、1L)で5分間ずつ5回洗浄した。5%のスキムミルクが含まれたTTBSで1次抗体を1:500に希釈して添加した後、常温で2時間反応させた後、再びTTBSで5分間ずつ5回洗浄した。再び5%のスキムミルクが含まれたTTBSで2次抗体を1:5000に希釈して添加した後、常温で2時間反応させ、TTBSで5分間ずつ5回洗浄した後、ECL(Enhanced Chemiluminescent solution、Pierce)を添加した。その後、前記メンブレンをX−rayフィルムに露出させてタンパク質の量を確認した。
【0090】
実験の結果、同量のタンパク質に含まれたMYH3タンパク質の量が塩化セチルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、及び塩化ドデシルピリジニウム処理群で非常に増加したことを確認した。対照群であるDMSO処理によるMYH3発現は微々たるものであり、塩化セチルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、及び塩化ドデシルピリジニウムによるMYH3の発現は増加した。また、臭化セチルピリジニウムで処理した場合にも、MYH3の発現が増加したことを確認することができた(
図3)。
【0091】
これは、同量のタンパク質に占めるミオシンタンパク質の量が塩化セチルピリジニウム、塩化ブチルピリジニウム、及び塩化ドデシルピリジニウムによって急激に増加したことを示すものであり、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム及び臭化セチルピリジニウムによる筋芽細胞分化促進効果が非常に高いことが分かった。
【0092】
しかし、塩化ブチルピリジニウムの誘導体の一つである2個の炭素骨格を有する塩化エチルピリジニウム(Ethylpyridinium Chloride)では、他の誘導体とは異なり、MYH3のタンパク質が増加しなかった。このことから、ブチルピリジニウムの誘導体中、4個以上の炭素骨格を有する誘導体のみが有効であることを知ることができた。
【0093】
実施例4.塩化ブチルピリジニウム(Butylpyridinium Chloride)の投与後、筋肉再生による動物の運動能力の向上の確認
実験動物は、生後6週齢のC57BL/6雄性マウス20匹を用いた。実験動物は、体重が類似したもの同士10匹ずつ割り当て、投与していない対照群と塩化ブチルピリジニウムとを投与した実験群に分類した。
【0094】
実験群のマウスに塩化ブチルピリジニウムを蒸留水に溶かし、15mg/kgとなるように調製して経口投与した。以下に記載された筋肉の運動制限(muscle immobilization)の期間にも継続的に投与した。
【0095】
本実験では、マウスの筋肉再生を誘導する方法として前脛骨筋の筋肉の運動制限 (TA(tibialis anterior)muscle immobilization)プロトコルを使用した。同方法は、マウスの一方の脚の太ももとすねとを、医療用ステープルを利用して足が動かないように固定して3日間放置した後、固定していた足を解放する方法である。足にギブスをして足の筋肉を使用しなければ、筋肉が消失する原理を利用したものである。すねの筋肉を動かないように固定することにより、筋肉が消失し、再び動けるように解放することにより筋肉が再生されるように誘導する方法である。本実験では、前脛骨筋の筋肉の動きを3日間制限(muscle immobilization)して筋肉の損傷を誘導した後、再び解放し、筋肉が再生するようにして7日後に同じ運動能力の向上テストを行った。
【0096】
4−1.握力(grip strength)テスト
握力はBIOSEB社のマウス用握力測定計を使用して測定した。力の強度をモニタリングすることができる計器板に取り付けられた金網の上にマウスを置いて尻尾をつかんで引きずり下ろしながら、マウスが金網をつかむ力を測定した。連続的に5回繰り返して示された平均値を使用した。
【0097】
握力測定結果、塩化ブチルピリジニウムを投与した実験群において筋肉の運動制限(muscle immobilization)後、対照群に比べて握力が低下する幅が減ることを確認した(
図4)。
【0098】
4−2.ロータロッド(rota-rod)テスト
直径7cm、15cm間隔の仕切りが6個で構成されており、高さが60cmの回転可能な円筒状の棒で構成されているロータロッド装置を利用して運動を適用した。10rpmの回転速度で開始し、5分間、最大40rpmの速度に達するまで加速しながら、マウスが落ちずにロータロッドに残っている時間を測定した。15分間休憩させ、再び運動させる過程を3回繰り返し、示された平均値を測定した。
【0099】
ロータロッド測定結果、塩化ブチルピリジニウムを投与した実験群において筋肉の運動
制限(muscle immobilization)後、対照群に比べてむしろ平衡感覚を維持する運動能力が向上したことを確認した(
図5)。
【0100】
4−3.トレッドミル(treadmill)テスト
トレッドミルは、独自で製作した機器を使用した。マウスを隔離されたレーンにそれぞれ置いて走らせた後、マウスが疲れるまで、即ち、走ろうとする意思がないと判断されるまでの時間を測定した。走ろうとする意思がないという判断はレーン外側に走らずに留まる時間が10秒以上経過したらマウスが疲れたと判断し、時間を記録した。この実験は、同じマウスに対する繰り返し実験を行うことはできなかった。マウスを機器に乗せて8rpmの速度で開始し、10分ごとに2rpmずつ加速し、最大18rpmで走らせ、傾斜度がない状態で開始して30分ごとに傾斜度を5度ずつ上げて加重させた。
【0101】
トレッドミル測定結果、塩化ブチルピリジニウムを投与した実験群において筋肉の運動制限(muscle immobilization)後、対照群に比べて耐久性が向上したことを確認した(
図6)。
【0102】
対照群では、握力、ロータロッド、トレッドミルの全部で筋肉の動きを制限した(muscle immobilization)後に、それ以前に比べて運動能力が低下することを確認することができた。しかし、塩化ブチルピリジニウムを投与した実験群では、対照群に比べて運動能力が落ちず維持されるか、むしろ運動能力が向上したことを確認することができた。
【0103】
実施例5.塩化ブチルピリジニウムの誘導体である塩化セチルピリジニウム(Cetylpyridinium Chloride)の投与後、筋肉再生による動物の運動能力の向上の確認
塩化ブチルピリジニウムと構造的相関関係を有する誘導体も同様な効果を示すことを確認するために、塩化セチルピリジニウムをC57BL/6の雄性マウス20匹に50mg/kgの濃度で2週間経口投与し、運動制限の前後の動き能力の向上を確認した。
【0104】
5−1.握力(grip strength)テスト
実施例4−1と同様な方法でテストを行い、塩化セチルピリジニウムを投与した場合、筋肉運動制限(muscle immobilization)後、対照群に比べて握力が低下する幅が減少することを確認した(
図7)。
【0105】
5−2.ロータロッド(rota-rod)テスト
実施例4−2と同様な方法でテストを行い、塩化セチルピリジニウムを投与した場合、筋肉運動制限後、対照群に比べてむしろ平衡感覚を維持する運動能力が改善されたことを確認した(
図8)。
【0106】
5−3.トレッドミル(treadmill)テスト
実施例4−3と同様な方法でテストを行い、塩化セチルピリジニウムを投与した場合、筋肉運動制限後、対照群に比べて持久力が向上したことを確認することができた(
図9)。
【0107】
このような結果は、塩化ブチルピリジニウムだけでなく、その誘導体も、同じ筋細胞分化の効果だけでなく、筋力低下に関連する疾患の予防または治療効果があることを裏付けることである。
【0108】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることがあることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述
する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。