特許第6375065号(P6375065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6375065アンテナ溝を備えた電子製品金属シェル、電子製品金属シェル製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375065
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】アンテナ溝を備えた電子製品金属シェル、電子製品金属シェル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/02 20060101AFI20180806BHJP
   C25D 11/10 20060101ALI20180806BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20180806BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H04M1/02 C
   C25D11/10
   C25D11/04 101B
   H01Q1/52
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-534539(P2017-534539)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公表番号】特表2018-504036(P2018-504036A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】CN2015098304
(87)【国際公開番号】WO2016101878
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】201410834560.7
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、バオロン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ、チョンチョン
(72)【発明者】
【氏名】リ、アイファ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リャン
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103945662(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0203975(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0126172(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0283687(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0066588(US,A1)
【文献】 米国特許第8400368(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/02
C25D 11/04
C25D 11/10
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、
前記金属層の上面上に形成される第1硬質陽極酸化層と、
前記金属層の下面上に形成される第2硬質陽極酸化層と、
前記金属層および前記第1硬質陽極酸化層を貫通するアンテナ溝と、
前記アンテナ溝に充てんされる非導電材と、
を有することを特徴とする電子製品金属シェル。
【請求項2】
前記アンテナ溝の上側開口の幅は前記アンテナ溝の下側開口の幅より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電子製品金属シェル。
【請求項3】
前記上側開口は約3〜15mmの幅を有し、前記下側開口は約1〜3mmの幅を有することを特徴とする請求項2に記載の電子製品金属シェル。
【請求項4】
前記金属層は約0.5〜1.5mmの厚さを有し、前記第1硬質陽極酸化層および前記第2硬質陽極酸化層は共に約0.02〜0.06mmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電子製品金属シェル。
【請求項5】
(1)金属層に硬質陽極化成処理およびインク吹き付け処理を順に施して第1硬質陽極酸化層、第2硬質陽極酸化層、第1インク層および第2インク層を形成し、第1硬質陽極酸化層は前記金属層の上面上に形成され、前記第2硬質陽極酸化層は前記金属層の下面上に形成され、前記第1インク層は前記第1硬質陽極酸化層の上面上に形成され、前記第2インク層は前記第2硬質陽極酸化層の下面上に形成され、
(2)ステップ(1)の後に得られた製品の上面上にアンテナ溝を形成し、前記アンテナ溝は前記製品の厚さ方向において前記第1インク層、前記第1硬質陽極酸化層および前記金属層を貫通し、
(3)前記第1インク層および前記第2インク層を除去し、前記アンテナ溝に非導電材を充てんするステップを有することを特徴とする電子製品金属シェルの製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、前記アンテナ溝の形成は、さらに、
(2−1)前記第1インク層から前記金属層に伸び、前記第1インク層および前記第1硬質陽極酸化層を少なくとも貫通するアンテナ溝スリットを形成し、
(2−2)前記アンテナ溝スリットの伸長方向に沿って前記金属層の一部を除去して前記金属層を貫通する前記アンテナ溝を形成することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンテナ溝スリットは前記第1インク層および前記第1硬質陽極酸化層を貫通し、前記金属層に入ることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属層に入る前記アンテナ溝スリットの厚さは前記金属層の全体厚さの40%未満であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属層に入る前記アンテナ溝スリットの厚さは前記金属層の全体厚さの約20〜30%であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(2−1)において、前記アンテナ溝スリットは約0.05〜0.1mmの幅を有することを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップ(2−2)において、前記金属層の一部はエッチングにより除去されることを特徴とする請求項乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ステップ(1)において、前記硬質陽極化成処理は前記金属層にアルカリ性エッチング処理、スマット除去処理、酸化処理および封止処理を順に施し、前記アルカリ性エッチング処理、前記スマット除去処理、前記酸化処理および前記封止処理それぞれの後に洗浄することを特徴とする請求項乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(1)において、前記インク吹き付け処理は、
前記第1硬質陽極酸化層および前記第2硬質陽極酸化層それぞれの面上にUVインクを吹き付け、摂氏約110〜120℃で約20〜30分間焼き、約1〜2分、紫外線に露光することを特徴とする請求項乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1インク層および前記第2インク層は約40〜60μmの厚さを有することを特徴とする請求項乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項乃至14のいずれかに記載の方法により得られる電子製品金属シェル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子製品製造技術、特に、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シェルにより引き起こされる信号遮蔽の問題を解決するため、金属製の携帯電話のような電子製品は上側および下側の二つのアンテナスロットを備えたHTC ONE、側部アンテナスロットを備えたiPhone(登録商標) 5/5s等のように、ほとんど、携帯電話の後部カバー上におけるスロット法および射出成形を採用している。しかし、上述した電子製品金属シェル(たとえば金属製携帯電話の後部カバー)におけるアンテナスロットの作成および射出成形の方法は電子製品金属シェルの全体構造に損傷を引き起こし、電子製品金属シェルの外観の清潔さおよび連続性に影響を与える。その一方、電子製品金属シェル(たとえば金属製携帯電話の後部カバー)の目に見えるプラスチックは電子製品金属シェル全体の金属質感も損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、電子製品金属シェルにおいてアンテナスロットの作成および射出成形の従来技術の方法が電子製品金属シェルの外観の清潔さおよび連続性に影響を与え、電子製品金属シェル全体の金属質感を損なうという問題を解決し、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルおよびその製造方法を提供する。本開示の電子製品金属シェル上に形成されるアンテナ溝は肉眼では外観上において見えず、電子製品金属シェルの外観面の表面層は損なわれず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、電子製品金属シェルの外観の清潔さおよび連続性を維持し、電子製品金属シェル全体の金属質感を損なわない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述した目的を達するために本開示の第1の態様実施例は、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルを提供する。電子製品金属シェルは、金属層と、前記金属層の上面上に形成される第1硬質陽極酸化層と、前記金属層の下面上に形成される第2硬質陽極酸化層と、前記金属層および前記第1硬質陽極酸化層を貫通するアンテナ溝と、前記アンテナ溝に充てんされる非導電材と、を有する。
【0005】
本開示の第2の態様の実施例は、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルの製造方法を提供する。方法は、(1)金属層に硬質陽極化成処理およびインク吹き付け処理を順に施して第1硬質陽極酸化層、第2硬質陽極酸化層、第1インク層および第2インク層を形成し、第1硬質陽極酸化層は前記金属層の上面上に形成され、前記第2硬質陽極酸化層は前記金属層の下面上に形成され、前記第1インク層は前記第1硬質陽極酸化層の上面上に形成され、前記第2インク層は前記第2硬質陽極酸化層の下面上に形成され、(2)ステップ(1)の後に得られた製品の上面上にアンテナ溝を形成し、前記アンテナ溝は前記製品の厚さ方向において前記第1インク層、前記第1硬質陽極酸化層および前記金属層を貫通し、(3)前記第1インク層および前記第2インク層を除去し、前記アンテナ溝に非導電材を充てんするステップを有する。
【0006】
本開示の第3の態様の実施例は、電子製品金属シェルを提供する。電子製品金属シェルは、上述した方法により得られる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電子製品金属シェル上に形成されるアンテナ溝は肉眼では外観上において見えず、電子製品金属シェルの外観面の表面層は損なわれず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、電子製品金属シェルの外観の清潔さおよび連続性を維持し、電子製品金属シェル全体の金属質感を損なわない。
【0008】
本開示の実施例のこれらの態様および利点を以下の詳細な説明を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施例1のラジウム彫刻(深ラジウム彫刻)後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図
図2】本開示の実施例1のエッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図
図3】本開示の実施例1のインク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図
図4】本開示の実施例1の硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図
図5】本開示の実施例1のラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図
図6】本開示の実施例1の非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図
図7】本開示の実施例1のラジウム彫刻(標準ラジウム彫刻)後のアルミニウム合金シェルの図
図8】本開示の実施例の電子製品金属シェルの概略図
図9】本開示の実施例の電子製品金属シェルの製造方法の処理概要図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施例を詳細に説明する。記載する実施例は、本開示を全体として理解するための説明および事例である。実施例は本開示を制限しない。
【0011】
本開示の実施例の第1の態様において、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルが設けられる。図8に示すように、電子製品金属シェルは、金属層1、金属層の上面上に形成される第1硬質陽極酸化層21、金属層の下面上に形成される第2硬質陽極酸化層22、金属層1および第1硬質陽極酸化層21を貫通するアンテナ溝5、アンテナ溝に充てんされる非導電材(不図示)を有する。
【0012】
すなわち、本開示の電子製品金属シェルは、金属層1、金属層1の面上に覆われる硬質陽極酸化層(21、22)、厚さ方向において後部の硬質陽極酸化層21および金属層1を貫通して前側の硬質陽極酸化層22の内側を露出させるアンテナ溝5を有し、非導電材はアンテナ溝5内に充てんされる。
【0013】
本開示の実施例において、アンテナ溝5の上側開口の幅L1はアンテナ溝5の下側開口の幅L2より大きい。本開示の実施例において、上側開口は約3〜15mmの幅L1を有する。本開示の実施例において、上側開口は約3〜6mmの幅L1を有する。本開示の実施例において、下側開口は約1〜3mmの幅L2を有する。本開示の実施例において、下側開口は約1〜1.6mmの幅L2を有する。すなわち、本開示の実施例の電子製品金属シェルにより、電子製品金属シェルの後部面上のアンテナ溝5の開口は上側開口として定義され、アンテナ溝は上側開口が下側開口より大きい台形の断面構造を有し、上側開口は約3〜15mmの幅L1を有し、たとえば、本開示の実施例において上側開口は約3〜6mmの幅L1を有し、下側開口は約1〜3mmの幅L2を有し、たとえば本開示の実施例において下側開口は約1〜1.6mmの幅L2を有する。
【0014】
本開示の実施例において、金属層1は約0.5〜1.5mmの厚さを有し、第1硬質陽極酸化層21および第2硬質陽極酸化層22は共に約0.02〜0.06mmの厚さを有する。すなわち、本開示の電子製品金属シェルにおいて金属層1は約0.5〜1.5mmの厚さを有し、たとえば本開示の実施例において金属層1は約0.5〜0.8mmの厚さを有する。硬質陽極酸化層(21、22)は約0.02〜0.06mmの厚さを有し、たとえば本開示の実施例において硬質陽極酸化層(21、22)は約0.04〜0.06mmの厚さを有する。
【0015】
本開示の実施例において、金属層1はアルミニウム合金層を含む。
【0016】
本開示の実施例において、電子製品金属シェルは携帯電話金属シェルまたはタブレット金属シェルを含む。
【0017】
本開示の実施例の第2の態様により、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルの製造方法を提供する。図9に示すように、アンテナ溝を有する電子製品金属シェルの製造方法は以下のステップを有する。
【0018】
ステップ(1)で、金属層1に硬質陽極化成処理およびインク吹き付け処理を順に施し、第1硬質陽極酸化層21、第2硬質陽極酸化層22、第1インク層31、第2インク層32を形成する。第1硬質陽極酸化層21は金属層1の上面上に形成され、第2硬質陽極酸化層22は金属層1の下面上に形成され、第1インク層31は第1硬質陽極酸化層21の上面上に形成され、第2インク層32は第2硬質陽極酸化層22の下面上に形成される。
【0019】
ステップ(2)で、ステップ(1)の後に得られた製品の上面上にアンテナ溝5を形成する。アンテナ溝5は製品の厚さ方向において第1インク層31、第1硬質陽極酸化層21および金属層1を貫通する。
【0020】
ステップ(3)で、第1インク層31および第2インク層32を除去し、アンテナ溝5に非導電材を充てんする。
【0021】
すなわち、電子製品金属シェルの製造方法は、(A)金属層に硬質陽極化成処理およびインク吹き付け処理を順に施して硬質陽極酸化層(21、22)およびインク層(31、32)をそれぞれ形成し、(B)ステップ(A)から得られた第1の製品の後部面上にアンテナ溝5を形成し、アンテナ溝5は第1の製品の厚さ方向において後部インク層31、後部硬質陽極酸化層21および金属層1を貫通して前部硬質陽極酸化層22の内側を露出させ、(C)インク層(31、32)を除去し、アンテナ溝(5)に非導電材を充てんするステップを有する。
【0022】
本開示の実施例において、硬質陽極化成処理の工程に特別な限定はなく、技術的に共通して使用される硬質陽極化成処理である。実施例において、ステップ(1)またはステップ(A)の硬質陽極化成処理は、金属層にアルカリ性エッチング処理、スマット除去処理、酸化処理および封止処理を順に施し、アルカリ性エッチング処理、スマット除去処理、酸化処理および封止処理それぞれの後に洗浄する。本開示の実施例において、洗浄の方法に特別な限定はなく、たとえば脱イオン水による2〜3回の洗浄のように、技術的に共通して使用される洗浄方法である。
【0023】
本開示の実施例において、アルカリ性エッチング処理の条件に特別な限定はなく、技術的にアルカリ性エッチング処理で共通して使用される条件である。たとえば、実施例において、アルカリ性エッチング処理は、摂氏約50〜70℃の温度で約1〜2分、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムから構成される群から選択される少なくとも一つを含む、約30〜60g/Lの濃度のエッチング液の条件で行われる。
【0024】
本開示の実施例において、スマット除去処理の条件に特別な限定はなく、技術的にスマット除去処理で共通して使用される条件である。実施例において、スマット除去処理は摂氏約20〜30℃の温度で約1〜3分、硝酸水溶液を有するスマット除去液で、スマット除去液1Lにつき、硝酸は約130〜270gの含有量(濃度約65〜68wt%の濃度の硝酸が約200〜400mLとほぼ等価である)、すなわち、硝酸がスマット除去液1Lごとに約130〜270gの含有量を有する条件で行われる。
【0025】
本開示の実施例において、酸化処理の条件に特に限定はなく、技術的に酸化処理で共通して使用される条件である。実施例において、酸化処理の条件は摂氏約5〜12℃の温度で約30〜50分、正矩形波パルスのインパルス波形で約50〜90%の負荷率、約500〜1000Hzの周波数、約2〜7Admの電流密度、硫酸、シュウ酸/リンゴ酸の水溶液を有する酸化溶液で、酸化溶液1Lにつき、硫酸の含有量が約120〜220g、シュウ酸またはリンゴ酸の含有量が約8〜20g、すなわち、酸化溶液1Lごとに硝酸の含有量が約120〜220g、シュウ酸またはリンゴ酸の含有量が約8〜20gの条件で行われる。硫酸、シュウ酸/リンゴ酸の水溶液を有する酸化溶液は、硫酸およびシュウ酸を有する溶液、または硫酸およびリンゴ酸を有する溶液のことをいう。
【0026】
本開示の実施例において、封止処理の条件は特に限定はなく、技術的に封止処理で共通して使用される条件である。実施例において、封止処理の条件は摂氏約20〜30℃で約2〜3分である。実施例において、シーリング材はニッケルフリーシーリング材、微量ニッケルシーリング材および重金属フリーシーリング材からなる群から選択される少なくとも一つを含む。当業者であれば想到し得るが、硬質陽極化成処理は封止処理後に洗浄処理を行い、洗浄処理後後の乾燥時に硬質陽極酸化層が形成される。すなわち、第1硬質陽極酸化層21および第2硬質陽極酸化層22は洗浄処理後の乾燥時に得られる。乾燥の方法は特に限定はなく、技術的に共通して使用される方法である。たとえば、乾燥は摂氏約20〜30℃の温度で約5〜10分間、オイルフリー圧縮ガスで行われ、これは当業者には公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
本開示の実施例において、インク吹き付け処理の工程に特に限定はなく、技術的に共通して使用されるインク吹き付け処理である。実施例において、ステップ(1)でインク吹き付け処理はさらに、第1硬質陽極酸化層21および第2硬質陽極酸化層22それぞれの面上にUVインクを吹き付け、摂氏約110〜120℃で約20〜30分間焼き、約1〜2分、紫外線に露光する。形成される第1インク層または第2インク層は厚さ約40〜60μmを有する。あるいは、ステップ(A)において、インク吹き付け処理はUVインクを付き付けて厚さ約40〜60μmを有するインク層(31、32)を形成し、摂氏約110〜120℃で約20〜30分焼き、約1〜2分、紫外線に露光する。
【0028】
本開示の実施例において、当業者であれば想到し得るが、電子製品金属シェルの前面(すなわち下部面)は電子製品金属シェルを完成電子製品で組み立て時に空気に露出される電子製品金属シェルの面のことであり、後面(すなわち上部面)は前面と反対側の電子製品金属シェルの面である。
【0029】
また、本開示の実施例において、ステップ(2)のアンテナ溝の形成はさらに、(2−1)第1インク層31から金属層1に伸び、第1インク層31および第1硬質陽極酸化層21を少なくとも貫通するアンテナ溝スリット4を形成し、(2−2)アンテナ溝スリット4の伸長方向に沿って金属層1の一部を除去して金属層1を貫通するアンテナ溝5を形成する。すなわち、ステップ(B)において、アンテナ溝の形成は、ステップ(A)で得られた製品の後面上にアンテナ溝スリット4を形成して後部インク層31および後部硬質陽極酸化層21を少なくとも除去し、前部硬質陽極酸化層22の内側を露出するまでアンテナ溝スリットに対応する金属層1を除去する。
【0030】
本開示の実施例において、アンテナ溝スリット4は第1インク層31および第1硬質陽極酸化層31を貫通し、金属層1に入る。本開示の実施形態において、金属層1に入るアンテナ溝スリット4の厚さは金属層1の全体厚さの40%未満であり、本開示の実施形態において金属層に入るアンテナ溝スリット4の厚さは金属層1の全体厚さの約20〜30%である。そして、ステップ(2−1)においてアンテナ溝スリット4を深ラジウム彫刻により形成する。
【0031】
すなわち、本開示の実施形態において電子製品金属シェルの面上の破壊を低減するため、電子製品金属シェルの第2の面上に凸状マークが形成されないことを保証し、堅牢性および硬度をさらに向上させ、ステップ(B)において、アンテナ溝スリット4はラジウム彫刻によりステップ(A)から得られた製品の後面上に形成されて後部インク層31、後部硬質陽極酸化層21、金属層1の一部を除去する。金属層1の一部の厚さは金属層1の全体厚さの約0〜40%、好ましくは20〜30%を除去する。なお、除去する金属層1の一部の厚さは金属層1の全体厚さの約0〜10%の場合、ラジウム彫刻は標準ラジウム彫刻である。除去する金属層1の一部の厚さが金属層1の全体厚さの約10〜40%の場合、ラジウム彫刻は深ラジウム彫刻である(なお、除去する金属層1の一部の厚さが金属層1の全体厚さの10%の場合、ラジウム彫刻は標準ラジウム彫刻である)。
【0032】
本開示の実施例において、ラジウム彫刻の工程に特に限定はなく、技術的に共通して使用されるラジウム彫刻である。たとえば、ラジウム彫刻はラジウム彫刻機により行われる。本開示の実施形態において、アンテナ溝スリット4は約0.0〜0.1mmの幅である。
【0033】
本開示の実施例において、ステップ(2−2)で金属層の一部はエッチングにより除去される。すなわち、アンテナ溝スリットに対応する金属層1はエッチングにより除去される。エッチングの条件は特に限定はなく、技術的に共通して使用されるエッチングの条件である。あるいは、エッチングは酸エッチング液で行われる。酸エッチング液に特に限定はなく、技術的に共通して使用される酸エッチング液である。たとえば、本開示の実施例において、酸エッチング液は三塩化鉄型酸エッチング液、塩化銅型酸エッチング液または塩酸型酸エッチング液である。本開示の実施形態において、ステップ(2−2)でエッチングは三塩化鉄および塩酸を含む水溶液を有するエッチング液で行われ、エッチング液は1Lにつき、三塩化鉄の含有量が約800〜1000g、塩酸の含有量が約35〜75gである。また、エッチングは約20〜30℃の温度で約30〜40分間行われる。すなわち、ステップ(B)においてエッチングは温度が摂氏約20〜30℃、時間が約30〜40分の条件で行われ、エッチング液は三塩化鉄および塩酸を含む水溶液を有し、三塩化鉄の含有量は約800〜1000g、塩酸の含有量は約35〜75gである。なお、エッチングの時間はラジウム彫刻により除去される金属層の一部の厚さに関連し、金属層の除去部分が厚くなるとエッチングの時間は短くなり、また、金属層の除去部分が薄くなるとエッチングの時間は長くなる。
【0034】
本開示の実施例において、電子製品金属シェルの後面に対応するアンテナ溝の開口は上側開口として定義され、アンテナ溝は上側開口がアンテナ溝の下側開口より大きい台形の断面構造を有する。アンテナ溝が深ラジウム彫刻により形成される場合、エッチング後に形成されるアンテナ溝5の上側開口は約3〜6mmの幅L1を有し、下側開口部は約1〜1.6mmの幅L2を有する。アンテナ溝スリット4が標準ラジウム彫刻により形成される場合、エッチング後に形成されるアンテナ溝5の上側開口は約10〜15mmの幅L1を有し、下側開口は約2〜3mmの幅L2を有する。
【0035】
本開示の実施例において、金属層1は銅、マンガンのような他の金属不純物を有する。よって、本開示の実施例において、電子製品金属シェルの製造方法は、さらに、ステップ(2−2)またはステップ(B)でエッチング後に洗浄し、洗浄後に黒膜を剥がして露出された黒不純物を除去し、再び洗浄する。洗浄の方法に特に限定はなく、技術的に共通して使用される洗浄方法であり、たとえば脱イオン水による2〜3回の洗浄である。
【0036】
本開示の実施例において、インク層(31、32)の除去方法に特に限定はなく、インク層(31、32)が除去できる限り、技術的に共通して使用される方法である。本開示の実施形態において、ステップ(3)またはステップ(C)においてインク層(31、32)は中性ペンキ除去剤により除去してもよい。中性ペンキ除去剤に特に限定はなく、技術的に共通して使用される中性ペンキ除去剤であり、たとえば、中性ペンキ除去剤は一般的な溶剤型ペンキ除去剤、塩素化炭化水素型ペンキ除去剤および水溶性ペンキ除去剤からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0037】
当業者であれば想到し得るが、本開示の実施例において、電子製品金属シェルの製造方法はさらに、インク層(31、32)除去後、非導電材を充てんする前に洗浄、乾燥する。乾燥の方法に特に限定はなく、技術的に共通して使用される乾燥方法である。たとえば、乾燥は温度が摂氏約80〜120℃、時間が約5〜10分の時間の条件で行われる。
【0038】
また、非導電材の充てんの方法に特に限定はなく、非導電材に特に限定はない。本発明の実施例において、非導電材はUV接着剤、加熱硬化接着剤および室温硬化性接着剤からなる群から選択される少なくとも一つである。
【0039】
本開示の例において、金属層1はアルミニウム合金層を含む。
【0040】
本開示の実施例において、電子製品金属シェルは携帯電話金属シェルまたはタブレットコンピュータ金属シェルを含む。
【0041】
本開示の第3の態様により、上述した方法から得られる電子製品金属シェルを提供する。電子製品金属シェルは上述した電子製品金属シェルと同様の特徴および利点を有し、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0042】
後述する実施例は、さらに本開示を説明する。実施例は本開示を限定しない。
【0043】
以下の実施例において、厚さ0.5mmのseries5のアルミニウム材料はFUJIAN NANPING ALUMINUM CO.,LTDから購入した。ニッケルフリー封止材、微量ニッケルシーリング材および重金属フリー封止材はSHENZHEN ODM TECHNOLOGY CO.,LTDから購入した。塩素化炭化水素ペンキ除去剤はDONGGUAN SIHUISURFACE PROCESSING TECHNOLOGY CO.,LTDから購入した。UV接着剤は日本ASEC会社から購入し、UV接着剤はAS−210604Cである。ラジウム彫刻機はSHENZHEN GDLASER TECHNOLOGY CO.,LTDから購入し、ラジウム彫刻機はFM20Dである。
【実施例1】
【0044】
本実施例は、本開示による携帯電話のアンテナ溝を有するアルミニウム合金シェルおよびアルミニウム合金シェルの製造方法を説明する。
【0045】
ステップ(1)のアルカリ性エッチング処理は、厚さ0.5mmのseries5アルミニウム合金層1を切断し、5×3.5cmの大きさのアルミニウム合金板を形成する。そして、アルミニウム合金板を摂氏60℃で1.5分、40g/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液でアルカリ性エッチング処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄する。
【0046】
ステップ(2)のスマット除去処理は、ステップ(1)で得られたアルミニウム合金板に摂氏25℃で2分、スマット除去溶液(スマット除去液1Lにつき濃度65wt%の濃縮硝酸を300mL)でスマット除去処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0047】
ステップ(3)の酸化処理は、ステップ(2)で得られたアルミニウム合金板を酸化槽に置き、硬質酸化処理を行う。硬質酸化処理は正矩形波パルスで摂氏10℃、負荷率50%、周波数800Hzおよび電流密度2A/dmで40分行い(酸化溶液1Lにつき、98wt%の硫酸の含有量が200g、シュウ酸の含有量が15g、その他は水)、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0048】
ステップ(4)の封止処理は、ステップ(3)で得られたアルミニウム合金板を摂氏25℃で2.5分、ニッケルフリーシーリング材で封止し、アルミニウム合金板は脱イオン水で2回洗浄し、アルミニウム合金板を摂氏25℃でオイルフリー圧縮ガスにより乾燥させ、厚さ35μmの硬質陽極酸化層2を得る。
【0049】
ステップ(5)のインク吹き付け処理は、UVインクをステップ(4)で得られたアルミニウム合金板の面上に吹き付けて厚さ50μmのインク層2を形成し、アルミニウム合金板を摂氏115℃で25分焼き、1.5分、紫外線に露光する。
【0050】
ステップ(6)は、0.07mmの幅のアンテナ溝スリット4をラジウム彫刻機によりステップ(5)で得られたアルミニウム合金板の後面上にラジウム彫刻してインク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの25%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部を除去する。
【0051】
ステップ(7)は、アルミニウム合金板を摂氏25℃で35分、エッチング液(1Lのエッチング液につき、三塩化鉄六水和物の含有量が900g、37wt%塩酸の含有量が150mL、その他は水)でエッチングしてアンテナ溝スリットに対応するアルミニウム合金層の一部を除去する。観察により、アルミニウム合金板の前面上に覆われる硬質陽極酸化層の内側が全体的に露出される。そして、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、露出された黒不純物層を剥がし、アルミニウム合金板を脱イオン水により再び2回洗浄する。そして、上側開口がアンテナ溝の下側開口より大きい台形の断面構造を有するアンテナ溝5が得られ、上側開口の幅は4.5mm、下側開口の幅は1.25mmである。
【0052】
ステップ(8)は、インク層を塩素化炭化水素溶剤ペンキ除去剤により除去し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、摂氏100℃で7分焼く。
【0053】
ステップ(9)は、UV接着剤をアンテナ溝内に充てんする。
【0054】
本実施例において、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図を図1に示し、エッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図を図2に示し、インク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図を図3に示し、硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図を図4に示し、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図を図5に示し、非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図を図6に示す。
【0055】
本実施例によるアルミニウム合金シェル上に形成されるアンテナ溝は肉眼では外観上で見えず、アルミニウム合金シェルの外観面の表面層を損なわず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、これは電話本体の外観の清潔さおよび連続性を維持し、電話本体全体の金属質感を損なわない。
【実施例2】
【0056】
本実施例は、携帯電話のアンテナ溝を有するアルミニウム合金シェルおよび本開示のアルミニウム合金シェルの製造方法を説明する。
【0057】
ステップ(1)のアルカリ性エッチング処理は、厚さ0.5mmのseries5アルミニウム合金層1を切断し、5×3.5cmの大きさのアルミニウム合金板を形成する。そして、アルミニウム合金板を摂氏50℃で2分、30g/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液でアルカリ性エッチング処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄する。
【0058】
ステップ(2)のスマット除去処理は、ステップ(1)で得られたアルミニウム合金板に摂氏20℃で2分、スマット除去溶液(スマット除去液1Lにつき濃度65wt%の濃縮硝酸を400mL)でスマット除去処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0059】
ステップ(3)の酸化処理は、ステップ(2)で得られたアルミニウム合金板を酸化槽に置き、硬質酸化処理を行う。硬質酸化処理は正矩形波パルスで摂氏5℃、負荷率50%、周波数500Hzおよび電流密度2A/dmで50分行い(酸化溶液1Lにつき、98wt%の硫酸の含有量が220g、シュウ酸の含有量が20g、その他は水)、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0060】
ステップ(4)の封止処理は、ステップ(3)で得られたアルミニウム合金板を摂氏20℃で3分、ニッケルフリーシーリング材で封止し、アルミニウム合金板は脱イオン水で2回洗浄し、アルミニウム合金板を摂氏25℃でオイルフリー圧縮ガスにより乾燥させ、厚さ40μmの硬質陽極酸化層2を得る。
【0061】
ステップ(5)のインク吹き付け処理は、UVインクをステップ(4)で得られたアルミニウム合金板の面上に吹き付けて厚さ40μmのインク層2を形成し、アルミニウム合金板を摂氏110℃で30分焼き、1分、紫外線に露光する。
【0062】
ステップ(6)は、0.05mmの幅のアンテナ溝スリット4をラジウム彫刻機によりステップ(5)で得られたアルミニウム合金板の後面上にラジウム彫刻してインク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの20%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部を除去する。
【0063】
ステップ(7)は、アルミニウム合金板を摂氏20℃で30分、エッチング液(1Lのエッチング液につき、三塩化鉄六水和物の含有量が1000g、37wt%塩酸の含有量が200mL、その他は水)でエッチングしてアンテナ溝スリットに対応するアルミニウム合金層の一部を除去する。観察により、アルミニウム合金板の前面上に覆われる硬質陽極酸化層の内側が全体的に露出される。そして、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、露出された黒不純物層を剥がし、アルミニウム合金板を脱イオン水により再び2回洗浄する。そして、上側開口がアンテナ溝の下側開口より大きい台形の断面構造を有するアンテナ溝5が得られ、上側開口の幅は5mm、下側開口の幅は1.3mmである。
【0064】
ステップ(8)は、インク層を塩素化炭化水素溶剤ペンキ除去剤により除去し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、摂氏80℃で10分焼く。
【0065】
ステップ(9)は、UV接着剤をアンテナ溝内に充てんする。
【0066】
本実施例において、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、エッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、インク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図、非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図は実施例1に示した図と同じである。
【0067】
本実施例によりアルミニウム合金シェル上に形成されたアンテナ溝は肉眼では外観上で見えず、アルミニウム合金シェルの外観面の表面層を損なわず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、これは電話本体の外観の清潔さおよび連続性を維持し、電話本体全体の金属質感を損なわない。
【実施例3】
【0068】
本実施例は、本開示のタブレットコンピュータのアンテナ溝を有するアルミニウム合金シェルおよびアルミニウム合金シェルの製造方法を説明する。
【0069】
ステップ(1)のアルカリ性エッチング処理は、厚さ0.5mmのseries5アルミニウム合金層1を切断し、5×3.5cmの大きさのアルミニウム合金板を形成する。そして、アルミニウム合金板を摂氏70℃で1分、60g/Lの濃度の水酸化ナトリウム溶液でアルカリ性エッチング処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄する。
【0070】
ステップ(2)のスマット除去処理は、ステップ(1)で得られたアルミニウム合金板に摂氏30℃で3分、スマット除去溶液(スマット除去液1Lにつき濃度65wt%の濃縮硝酸の量が200mL)でスマット除去処理を施し、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0071】
ステップ(3)の酸化処理は、ステップ(2)で得られたアルミニウム合金板を酸化槽に置き、硬質酸化処理を行う。硬質酸化処理は正矩形波パルスで摂氏12℃、負荷率90%、周波数1000Hzおよび電流密度7A/dmで30分行い(酸化溶液1Lにつき、98wt%の硫酸の含有量が120g、シュウ酸の含有量が8g、その他は水)、アルミニウム合金板を脱イオン水で2回洗浄する。
【0072】
ステップ(4)の封止処理は、ステップ(3)で得られたアルミニウム合金板を摂氏30℃で2分、重金属フリーシーリング材で封止し、アルミニウム合金板は脱イオン水で2回洗浄し、アルミニウム合金板を摂氏25℃でオイルフリー圧縮ガスにより乾燥させ、厚さ50μmの硬質陽極酸化層2を得る。
【0073】
ステップ(5)のインク吹き付け処理は、UVインクをステップ(4)で得られたアルミニウム合金板の面上に吹き付けて厚さ60μmのインク層2を形成し、アルミニウム合金板を摂氏120℃で20分焼き、2分、紫外線に露光する。
【0074】
ステップ(6)は、0.1mmの幅のアンテナ溝スリット4をラジウム彫刻機によりステップ(5)で得られたアルミニウム合金板の後面上にラジウム彫刻してインク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの30%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部を除去する。
【0075】
ステップ(7)は、アルミニウム合金板を摂氏30℃で40分、エッチング液(1Lのエッチング液につき、三塩化鉄六水和物の含有量が800g、37wt%塩酸の含有量が100mL、その他は水)でエッチングしてアンテナ溝スリットに対応するアルミニウム合金層の一部を除去する。観察により、アルミニウム合金板の前面上に覆われる硬質陽極酸化層の内側が全体的に露出される。そして、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、露出された黒不純物層を剥がし、アルミニウム合金板を脱イオン水により再び2回洗浄する。そして、上側開口がアンテナ溝の下側開口より大きい台形の断面構造を有するアンテナ溝5が得られ、上側開口の幅は4mm、下側開口の幅は1.2mmである。
【0076】
ステップ(8)は、インク層を塩素化炭化水素溶剤ペンキ除去剤により除去し、アルミニウム合金板を脱イオン水により2回洗浄し、摂氏120℃で5分焼く。
【0077】
ステップ(9)は、UV接着剤をアンテナ溝内に充てんする。
【0078】
本実施例において、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、エッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、インク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図、非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図は実施例1に示した図と同じである。
【0079】
本実施例によりアルミニウム合金シェル上に形成されたアンテナ溝は肉眼では外観上で見えず、アルミニウム合金シェルの外観面の表面層を損なわず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、これは電話本体の外観の清潔さおよび連続性を維持し、電話本体全体の金属質感を損なわない。
【実施例4】
【0080】
実施例の方法は、ステップ(6)を除いて実施例1に類似しており、インク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの15%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部を除去する。
【0081】
本実施例において、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、エッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、インク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図、非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図は実施例1に示した図と同じである。アンテナ溝の上側開口は幅6mmであり、アンテナ溝の下側開口は幅1.5mmである。
【0082】
本実施例によりアルミニウム合金シェル上に形成されたアンテナ溝は肉眼では外観上で見えず、アルミニウム合金シェルの外観面の表面層を損なわず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、これは電話本体の外観の清潔さおよび連続性を維持し、電話本体全体の金属質感を損なわない。
【実施例5】
【0083】
実施例の方法は、ステップ(6)を除いて実施例1に類似しており、インク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの5%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部を除去する。
【0084】
本実施例において、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、エッチング後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、インク層除去後のアルミニウム合金シェルの断面構造概略図、硬質陽極化成処理(左)およびインク吹き付け処理(右)後のアルミニウム合金シェルの図、ラジウム彫刻後のアルミニウム合金シェルの図、非導電材充てん後のアルミニウム合金シェルの図は実施例1に示した図と同じである。ラジウム彫刻はステップ(5)で得られたアルミニウム合金板の後面で行われ、インク層、硬質陽極酸化層、およびアルミニウム合金板の後面上にアルミニウム合金層の全体厚さの5%の厚さを有するアルミニウム合金層の一部が除去され、標準ラジウム彫刻アンテナ溝スリット6を形成する。アンテナ溝の上側開口は幅12mmであり、アンテナ溝の下側開口は幅2.5mmである。
【0085】
本実施例によりアルミニウム合金シェル上に形成されたアンテナ溝は肉眼では外観上で見えず、アルミニウム合金シェルの外観面の表面層を損なわず、アルミニウム合金シェルの外観面は平坦で綺麗であり、これは電話本体の外観の清潔さおよび連続性を維持し、電話本体全体の金属質感を損なわない。
【0086】
アンテナ溝の上側開口およびアンテナ溝の下側開口の幅がより小さいと、アルミニウム合金シェルの堅固性および硬度がより良好であることは当業者であれば想到し得る。実施例1を実施例4および5と比較することにより、アルミニウム合金層の一部を除去した場合、残りのアルミニウム合金層の厚さがアルミニウム合金層の全体厚さの約20〜30%の場合、エッチング後に形成されるアンテナ溝の上側開口および下側開口の幅は明らかに低減され、アルミニウム合金シェルの堅固性および硬度を効果的に向上することができる。
【0087】
(試験例)
実施例1〜5から得られたアルミニウム合金シェルに信号遮蔽試験を施した。試験方法は、二つの導電位置を見えないアンテナ溝によりそれぞれ分離されるアルミニウム合金シェルの二つの部分でラジウム彫刻し、二つの導電位置の間の導電率を試験した。実施例1〜5の全ての試験結果は、二つの導電位置の間の非導電性を示した。したがって、電子製品金属シェルの外観の清潔さおよび連続性を維持し、電子製品金属シェル本体の金属質感を損なわないだけではなく、電子製品金属シェル本体の信号遮蔽問題も解決する。
【0088】
以上、実施例を詳細に説明したが、当業者であれば、上記実施例は本開示に限定されず、各種の簡単な変形例は技術的思想および本開示の原理の範疇内において行われ、これらの全ての簡単な変形例は本開示の範疇であることは想到し得る。
【0089】
また、上述した実施例において説明した技術的特徴は、矛盾することなく、適切な方法で組み合わせ、不要な繰り返しを回避するため、さまざまな可能な組み合わせの方法は本開示において説明しない。
【0090】
また、本開示のさまざまな各実施形態も本開示の思想および原理から逸脱することなく組み合わせることも可能であり、これも本開示の内容であると了解される。
【符号の説明】
【0091】
1………金属層
2………硬質陽極酸化層
21………第1硬質陽極酸化層
22………第2硬質陽極酸化層
3………インク層
31………第1インク層
32………第2インク層
4………深ラジウム彫刻形成アンテナ溝スリット
5………アンテナ溝
6………標準ラジウム彫刻形成アンテナ溝スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9