(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6375071
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】建設物の仮設竪樋の固定治具および固定治具の固定方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20180806BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20180806BHJP
E04G 21/28 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
E04D13/08 Y
E04D13/04 D
E04G21/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-16468(P2018-16468)
(22)【出願日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年2月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 智之
(72)【発明者】
【氏名】平田 吉一
(72)【発明者】
【氏名】北谷 慶夫
【審査官】
坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−072325(JP,U)
【文献】
特開2005−194719(JP,A)
【文献】
米国特許第06612075(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04−13/08
F16L 5/00− 5/14
E04G 21/24−21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレインに設置するための仮設竪樋の固定治具において、
円筒と、
一対の上枠板であって、前記円筒の外部にある上枠板可動部を介して、当該一対の上枠板の互いの一方の一辺と接続されている一対の上枠板と、
一対の中枠板であって、前記円筒の外部にある上中枠板固定部を介して、当該中枠板の一方の一辺と前記一対の上枠板の他の一辺と接続されている一対の中枠板と、
一対の下枠板であって、中下枠板可動部を介して、当該下枠板の一方の一辺と前記一対の中枠板の他の一辺と接続されていると共に前記下枠板の他の一辺が前記円筒の内壁の円筒内固定領域で接続されている一対の下枠板と、
一対の支え枠板であって、当該一対の支え枠板の互いの一方の一辺と接続されているとともに、前記支え枠板の他方の一辺と前記円筒内固定領域で接続されている一対の支え枠板と、
を備え、
定常状態において、前記一対の上中枠板固定部が為す径は、前記ドレインの直径よりも長いことを特徴とする仮設竪樋の固定治具。
【請求項2】
前記上枠板可動部と前記中下枠板可動部とが共に可動するように構成されたことを特徴とする、前記請求項1に記載の固定治具。
【請求項3】
前記中枠板が前記仮設竪樋の固定治具の内側に向かって凹状に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の固定治具。
【請求項4】
更に、前記一対の上枠板に被せるための防塵網を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の固定治具。
【請求項5】
請求項1に記載の固定治具を、天井に設置されたドレインに挿入する工程と、
ドレインに挿入された仮設竪樋の中枠板を、ドレインの上端部で支える工程と、
を備えることを特徴とする仮設竪樋の固定治具の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルなどの建設物の屋上等で排水を行うために好適な仮設竪樋の固定治具に関し、より詳細には、取り付けおよび取り外しが容易な機構を備えた仮設縦樋の固定治具および固定治具の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの建設物を施工している最中に、屋上等に溜まった雨水などを排水するために仮設竪樋を設置する。
【0003】
引用文献1には、外部および内部の係止部材からなる取り付け構造を使って、ドレイン口金に取り付ける仮設竪樋の固定治具が開示されている。引用文献1の仮設竪樋の固定治具は、建設物に取り付けるための構造も複雑であり、また、外部および内部の係止部材をひとつずつ取り外していかないと仮設竪樋を取り外すことができず作業のための時間がかかる。また、引用文献1の固定治具内部の係止部材に、雨風等により流れ込んできた落ち葉やゴミなどが引っかかってしまい、仮設竪樋内で詰まらせてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−173172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様によると、取り付けおよび取り外しが容易な仮設竪樋の固定治具を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の別の一態様によると、取り付けた仮設竪樋を使用中にゴミなどが入り込むことを防ぐまたはゴミを除去することが容易な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、ドレインに設置するための仮設竪樋において、円筒と、一対の上枠板であって、上枠板可動部を介して、当該一対の上枠板の互いの一方の一辺と接続されている一対の上枠板と、一対の中枠板であって、上中枠板固定部を介して、当該中枠板の一方の一辺と前記一対の上枠板の他の一辺と接続されている一対の中枠板と、一対の下枠板であって、中下枠板可動部を介して、当該下枠板の一方の一辺と前記一対の中枠板の他の一辺と接続されている一対の下枠板と、一対の支え枠板であって、当該一対の支え枠板の互いの一方の一辺と接続されているとともに、前記支え枠板の他方の一辺と当該円筒内部の接触領域で接続されている一対の支え枠板と、を備えたことを特徴とする仮設竪樋の固定治具を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によると、仮設竪樋の固定治具の取り付けのみならず取り外しが容易になる。特に、本発明の仮設竪樋の固定治具は、ドレインの下側から引き抜くことによって取り外しができるので、例えば、仮設竪樋内に詰まったゴミなどをすぐに除去することができ、結果的に、建設物を施工する全体的な作業時間を短縮することができる。
【0009】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具の全体図を示す。
【
図2A】本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具をドレインに挿入する前の図を示す。
【
図2B】本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具をドレインに挿入した後の図を示す。
【
図3】本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具がドレインに設置された図を示す。
【
図4】本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具に、防塵網を設置した図を示す。
【
図5】本発明の別の実施例による仮設竪樋の固定治具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具100の全体図を示す。本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具100は、一対の上枠板110と、一対の中枠板120と、一対の下枠板130と、一対の支え枠板140と、円筒160とを備える。本実施例においては、上枠板110、中枠板120、下枠板130と、支え枠板140は、長辺と短辺とからなる長方形の形状であるが、上枠板110、中枠板120、下枠板130と、支え枠板140の長辺と短辺の長さは、本発明を実施できる範囲内であれば、任意でよい。
【0012】
また、上枠板110、中枠板120、下枠板130と、支え枠板140、円筒160の材料は、耐久性と可撓性を有している材料がよく、ドレインと同じ材料でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル(いわゆる塩ビ)のような合成樹脂でもよい。
【0013】
一対の上枠板110と、一対の中枠板120と、一対の下枠板130と、一対の支え枠板140と、円筒160との機械的接続関係の詳細について、
図1−3を参照しながら、以下に説明する。
【0014】
一対の上枠板110は、互いの一辺(本実施例では短辺)111に上枠板可動部151を介して接続されている。ここで、上枠板可動部151は、上枠板110の互いの一辺111が軸として可動するように構成されており、例えば、軸受けのような構造でもよく、一対の上枠板110を蝶番のような機械的部品で接続してもよく、単に、一枚の板を一辺111で物理的に折り曲げて一対の上枠板として可動するように構成されていてもよい。
【0015】
上枠板110の辺111に対向する一辺112は、中枠板120の一辺121に上中枠板固定部152を介して接続されている。ここで、上中枠板固定部152は、上枠板110と中枠板120とが為す角度β(
図2Aを参照)が一定になるように構成されている。本実施例においては、中枠板120と下枠板130とが、中下枠板可動部153を介して接続されているが、別の実施例においては、中枠板120と下枠板130とを一枚板で構成し、中下枠固定部に相当するところを所定の角度βで折り曲げるように構成してもよい。
【0016】
中枠板120の辺121に対向する一辺122は、下枠板130の一辺131に中下枠板可動部153を介して接続されている。ここで、中下枠板可動部153は、上枠板可動部151と同じように構成されている。
【0017】
下枠板130の辺131に対向する辺132を含む一部領域は、支え枠板140の一辺141を含む一部領域に、円筒160の内壁の円筒内固定領域154で重なるように接続されている。更に、円筒内固定領域154よりも上部の領域156(辺132から辺131へ向かう方向にある領域)では、下枠板130の一部領域および支え枠板140の一部領域が互いに接続されて、円筒内固定領域154には接続されないように構成される。このような構成により、下枠板130が支え枠板140側に傾く(別の言い方をすれば、円筒160の内部方向に傾く)ことを容易に構成することができる。本実施例においては、定常状態(仮設竪樋の固定治具100に対して何ら圧力等を加えない状態)で、一対の上中枠板固定部152が為す径r’(
図3を参照)が、ドレイン310の直径r(
図3を参照)よりも長くなるように構成される範囲内で、下枠板130の円筒内方向への傾きが許容されるが、別の実施例においては、下枠板130は、円筒の軸方向と実質的に平行(すなわち、実質的な傾きが無し)でもよい。
【0018】
一対の支え枠板140は、互いの一辺142に支え枠固定部155を介して接続されている。一対の支え枠板140は、円筒160内で山型になるように円筒内固定領域154と支え枠板固定部150とで接続されている。すなわち、一対の支え枠板140の長辺の合計の長さは、円筒160の直径よりも長い。なお、別の実施例においては、一対の支え枠板140の代わりに、一枚板を用いて、山型ではなく、円弧状になるように構成してもよい。
【0019】
図2Aは、本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具100をドレイン310に挿入する前の図を示す。
【0020】
本実施例の仮設竪樋の固定治具100をドレイン310の下側から挿入しようとすると、仮設竪樋の固定治具100の上枠板110がドレイン310の下端部311に当たる。このときに、
図2Aに示すように、仮設竪樋の固定治具の両側部から横方向に押す力Fがかかり、上枠板可動部151と、中下枠板可動部153が動き、上枠板110が為す角度αが小さくなりα2からα1になる。ここで、α2は、定常状態において、上枠板110が為す角度である。このときに、一対の上中枠板固定部152が為す径r’(
図3を参照)がドレインの枠が為す直径r(
図3を参照)よりも短くなるので、ドレイン310内の下側から上側へ(ドレイン310の下端部311から上端部312への方向に)仮設竪樋の固定治具100を挿入することができる。更に、下枠板130は、一端が円筒内固定領域154に接続されているので、横方向に押す力Fに依存して、円筒内内側方向に反る。なお、上中枠板固定部152は、上枠板110と中枠板120とが為す角度βは、ほぼ変化しない。
【0021】
図2Bは、本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具がドレイン310に挿入された後の図を示す。
【0022】
ドレイン内に仮設竪樋の固定治具が挿入された後、仮設竪樋の固定治具100に対して押された力Fの反作用で、下枠板130の反りが元に戻る力が働き、定常状態の角度α2(>α1)まで戻る。ここで、一対の上中枠板固定部152が為す径は、ドレインの枠が為す直径よりも長くなるように構成されているので、中枠板120がドレイン310の上端部312に引っかかって、仮設竪樋の固定治具100が、ぶら下がるような形で、設置される。
【0023】
図3は、本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具100が天井の穴に設置された図を示す。仮設竪樋の固定治具100の下部には、ビニル320などを取り付けて、雨水の通り道を構成することができる。
【0024】
仮設竪樋の固定治具100を取り外すときは、例えば、円筒160を手で押さえて、下方向(ドレイン310の上端部312から下端部311への方向)の力を加える。定常状態では、仮設竪樋の固定治具100の中枠板120を、ドレイン310の上端部312が支えているが、下方向の力が加わると、仮設竪樋の固定治具の両側部から横方向に押す力Fがかかり、上枠板可動部151と、中下枠板可動部153が動き、上枠板110が為す角度αが小さくなりα1になる(
図2Aを参照)。このときに、一対の上中枠板固定部152が為す径r’(
図3を参照)がドレインの枠が為す直径r(
図3を参照)よりも短くなるので、ドレイン310内の上側から下側へ(ドレイン310の上端部312から下端部311への方向に)仮設竪樋の固定治具100を引き抜くことができる。更に、下枠板130は、一端が円筒内固定領域154に接続されているので、横方向に押す力Fに依存して、円筒内内側方向に反る。なお、上中枠板固定部152は、上枠板110と中枠板120とが為す角度βは、ほぼ変化しない。
【0025】
ドレイン内から仮設竪樋の固定治具が引き抜かれると、仮設竪樋の固定治具100に対して押された力Fの反作用で、下枠板130の反りが元に戻る力が働き、当初の角度α2(>α1)まで戻る。
【0026】
図4は、本発明の一実施例による仮設竪樋の固定治具に、防塵網が設置された図を示す。
【0027】
本実施例においては、
図4に示すように、上枠板110の一部に孔113を設けてあると共に、防塵網200には取り付け棒210が取り付け部220で設けられている。好ましくは、防塵網200を、ドレインの上端部312より上側の上枠板110に被せるように設置する。この取り付け棒210を上枠板110の孔113に通すことにより、防塵網200を仮設竪樋の固定治具100に設置することができる。
【0028】
防塵網200を設置することにより、仮設竪樋の固定治具100の上部から、落ち葉やゴミなどが雨水と一緒に流れ込んできても、雨水のみが仮設竪樋の固定治具100の内部を通り、防塵網200で落ち葉やゴミなどを止めることができる。
【0029】
図5は、仮設竪樋の別の実施例を示す。中枠板120が、仮設竪樋の固定治具100の内側に向かって凹状に形成されている。このように形成することにより、仮設竪樋の固定治具100が、天井300に安定して固定することができる。凹状の中枠板120が天井の上端部312に対して、緩やかな角度で接触することができるからである。
【0030】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0031】
100仮設竪樋の固定治具、110上枠板、113孔、120中枠板、130下枠板、140支え枠板、151上枠板可動部、152上中枠可動部、153中下枠板可動部、154円筒内固定領域、155支え枠固定部、156上部領域、160円筒、200防塵網、210取り付け棒、220取り付け部、300天井、310ドレイン、311ドレインの下端部、312ドレインの上端部、320ビニル雨路
【要約】
【課題】取り付けおよび取り外しが容易な仮設竪樋を提供する。
【解決手段】円筒と、上枠板可動部を介して、一対の上枠板の互いの一方の一辺と接続されている一対の上枠板と、上中枠板固定部を介して、中枠板の一方の一辺と前記一対の上枠板の他の一辺と接続されている一対の中枠板と、中下枠板可動部を介して、下枠板の一方の一辺と前記一対の中枠板の他の一辺と接続されている一対の下枠板と、一対の支え枠板の互いの一方の一辺と接続されているとともに、前記支え枠板の他方の一辺と当該円筒内部の円筒内固定領域で接続されている一対の支え枠板とを備えたことを特徴とする仮設竪樋の固定治具を提供する。
【選択図】
図1