(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6375075
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤、水性懸濁農薬組成物及び水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20180806BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20180806BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20180806BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20180806BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20180806BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20180806BHJP
C08G 10/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/30
A01N25/04 102
A01P3/00
A01P7/04
A01P13/00
C08G10/02
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-25077(P2018-25077)
(22)【出願日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206863
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 博太郎
(72)【発明者】
【氏名】織田 匡博
【審査官】
佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−174834(JP,A)
【文献】
特開平03−255002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00
A01N 25/04
A01N 25/30
A01P 3/00
A01P 7/04
A01P 13/00
C08G 10/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤において、下記ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物を含有することを特徴とする水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤。
ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物:
ブチルナフタレンスルホン酸塩が0.6モル当量超1.0モル当量以下、ナフタレンスルホン酸塩が0.4モル当量未満0モル当量以上、ホルムアルデヒドが0.6モル当量以上1.0モル当量未満から成り、質量平均分子量が500〜3000であるブチルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物。
【請求項2】
前記ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の質量平均分子量が1000〜2200である請求項1記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤。
【請求項3】
ブチルナフタレンスルホン酸塩が0.7モル当量以上0.9モル当量以下、ナフタレンスルホン酸塩が0.1モル当量以上0.3モル当量以下、及びホルムアルデヒドが0.6モル当量以上0.9モル当量以下から成るブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物である請求項1又は2記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤。
【請求項4】
前記ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、その製造過程において生成する副生成物との割合が、ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物/副生成物=40/60〜60/40(質量比)である請求項1〜3のいずれか一つの項記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの項記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤及び農薬原体を含有する水性懸濁農薬組成物。
【請求項6】
前記水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤/前記農薬原体を5/95〜45/55(質量比)の割合で含有する請求項5記載の水性懸濁農薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一つの項記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤の製造方法であって、下記工程1〜3を経る製造方法。
工程1:ナフタレンを1.0モル当量と、ブチルアルコールを0.6モル当量超1.0モル当量以下用いた混合物に、濃硫酸を用いてスルホン化する工程。
工程2:工程1で得られたスルホン化した反応物に、ホルムアルデヒドが0.6モル当量以上1.0モル当量未満用いて共縮合させる工程。
工程3:工程2で得られた共縮合物をアルカリで中和した後、乾燥し粉末化する工程。
【請求項8】
前記ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、前記工程1〜3における該ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の製造過程において生成する副生成物との割合が、ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物/副生成物=40/60〜60/40(質量比)である請求項7記載の水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤、これを用いた水性懸濁農薬組成物及び水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬の主要な剤型として、乳剤、粉剤、水和剤等が挙げられる。しかしながら、農薬の環境及び人体に対する安全性の観点から、水性懸濁農薬製剤やエマルジョン製剤、顆粒水和剤へ移行している。水性懸濁農薬製剤は水不溶性の固体原体を水に分散させた液体製剤であり、水ベースのため作業者に対する被ばくが少なく、また粉剤と比較すると粉立ちも抑えられ、人体や環境への安全性が高い製剤である。また水ベース製剤であるので、引火の危険性も回避できる。
一方で、水性懸濁農薬製剤は、水中で界面活性剤及び増粘剤により農薬原体が分散・懸濁した製剤である為、長期保存や温度変化により農薬原体が沈降して分離し、再分散が困難な固化層を形成したり、農薬原体の粒子が成長し、効果の著しい低下を招く場合がある。農薬原体の粒子成長を抑制するために、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩/ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム/結晶セルロース及び尿素を必須成分として含有するもの(例えば特許文献1参照)、低融点の農薬原体に対してリグニンスルホン酸金属塩及び蔗糖脂肪酸エステルを必須成分として含有するもの(例えば特許文献2)、スルホニルウレア系の農薬原体に対してカルボキシメチルセルロース塩/リグニンスルホン酸塩/界面活性剤を含有するもの(例えば特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163401号公報
【特許文献2】特開2015−40191号公報
【特許文献3】特開2008−69142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、水性懸濁農薬組成物に関し、さらに農薬原体の継時的な粒子成長を抑制し、より優れた保存安定性を付与する水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤及びそれを用いて調製した水性懸濁農薬組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定のアルキル基を有するアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物を含む水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤が好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物を含有することを特徴とする水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤(以下、「粒子成長抑制剤」と略称することもある)に係る。
【0007】
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物:
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物のアルキル基がブチル基であって、且つ該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が、ブチルナフタレンスルホン酸塩が0.6モル当量超1.0モル当量以下、ナフタレンスルホン酸塩が0.4モル当量未満0モル当量以上、ホルムアルデヒドが0.6モル当量以上1.0モル当量未満から成り、質量平均分子量が500〜3000であるブチルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物。
【0008】
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の質量平均分子量は、SEC法(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)で算出することができる。
【0009】
該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物のアルキル基のブチル基は直鎖でも分岐でもよい。
【0010】
該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の塩の種類としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられ、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0011】
本発明において、前記アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物の質量平均分子量が1000〜2200とすることが好ましい。
【0012】
本発明において、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は、ブチルナフタレンスルホン酸塩が0.7モル当量以上0.9モル当量以下、ナフタレンスルホン酸塩が0.1モル当量以上0.3モル当量以下、及びホルムアルデヒドが0.6モル当量以上0.9モル当量以下から成るアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明において、前記アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、その製造過程において生成する副生成物との割合が、該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物/副生成物=40/60〜60/40(質量比)であることが好ましい。
【0014】
前記副生成物としては、例えば、硫酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステルの塩等が挙げられる。
【0015】
本発明は、以上で説明した水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤及び農薬原体を含有する水性懸濁農薬組成物(以下、「農薬組成物」ということもある)としてもよい。
【0016】
本発明の農薬組成物は前記水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤/前記農薬原体を5/95〜45/55(質量比)の割合で含有することが好ましい。
【0017】
本発明の農薬組成物に用いる農薬原体は、水不溶性の固体原体が好ましい。水溶解度としては、20℃において100ppm以下であることが好ましく、さらに80ppm以下であることがより好ましい。また、該農薬原体は、それ自体は公知の各種除草剤、殺虫剤、殺菌剤等が挙げられ、それらのうち1種または2種以上を併用してもよい。
【0018】
除草剤としては、例えば、シメトリン、フェントラザミド、オキサジアゾン、ペンディメタリン、アメトリン、エトフメセート、メタザクロール、ナプロパミド、オキシフルオルフェン、キザロホップ−p−エチル、ブロモブチド等が挙げられる。
【0019】
殺虫剤としては、例えば、エスフェンバレレート、トルフェンピラド、アクリナトリン、ビフェントリン、アルファーサイパーメスリン、ベーターサイパーメスリン、インドキサカルブ、フラチオカルブ等が挙げられる。
【0020】
また、殺菌剤としては、例えば、ジフェノコナゾール、フェノキサニル、フルシラゾール、イプコナゾール、ミクロブタニル、トリクロホスメチル、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン等が挙げられる。
【0021】
本発明の農薬組成物には、必要に応じて湿潤剤、増粘剤、消泡剤、凍結防止剤等の補助剤を含有することができる。
【0022】
湿潤剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
増粘剤としては、例えば、(1)キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム等の天然ガム類、(2)カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、(3)ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸とその誘導体、ポリビニルピロリドン等の水溶性合成高分子、(4)モンモリロナイト、ヘクトライト、スメクライト等の無機鉱物質等が挙げられる。
【0024】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、アセチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
凍結防止剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0026】
本発明の農薬組成物は、公知の方法で調整できる。例えば、農薬原体を予めジェット・オ・マイザーのような乾式粉砕機にて微粉砕し、これに水、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物及び所望によりその他の消泡剤等の農薬補助剤を混合し、その混合液をサンドグラインダーのような湿式粉砕機にて混合粉砕し、更に凍結防止剤、増粘剤等を配合して、調製することができる。湿式粉砕機としては、サンドグラインダーの他に、ダイノーミル、ビスコミル、グレンミル等も使用できる。
【0027】
本発明は、前記水性懸濁農薬用粒子成長抑制剤の製造方法としてもよい。本発明の製造方法は、前記水性懸濁農薬用粒子成長抑制剤の製造方法であって、下記工程1〜3を経る製造方法である。
工程1:ナフタレンを1.0モル当量と、ブチルアルコールを0.6モル当量超1.0モル当量以下用いた混合物に、濃硫酸を用いてスルホン化する工程。
工程2:工程1で得られたスルホン化した反応物に、ホルムアルデヒドが0.6モル当量以上1.0モル当量未満用いて共縮合させる工程。
工程3:工程2で得られた共縮合物をアルカリで中和した後、乾燥し粉末化する工程。
【0028】
工程1では、ナフタレンとブチルアルコールが濃硫酸中で反応し、その副生成物を含む反応物のスルホン化物が得られることを示唆する。ブチルアルコールのモル当量は0.7〜0.9モル当量であることがより好ましい。反応温度は85〜100℃が好ましく、反応時間は2〜5時間が好ましい。反応に用いる濃硫酸は2.5〜4.0モル当量が好ましい。得られる副生成物としては、例えば、硫酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステルの塩、ブチル硫酸エステル等が挙げられる。工程1から工程2へと移る際、該副生成物を含む未反応硫酸の除去は行わない方が好ましい。
【0029】
工程2では、工程1で得られたスルホン化した反応物に、85〜100℃の温度下でホルムアルデヒドを共縮合させる。ホルムアルデヒドが0.6モル当量以上0.9モル当量であることがより好ましい。共縮合させる温度は、85〜95℃が好ましい。
【0030】
工程3で中和に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム等が挙げられる。アルカリで中和した後、生成する芒硝の分離は行わない方が好ましい。乾燥し粉末化する方法としてはスプレードライ等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の製造方法において、前記アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、前記工程1〜3における該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の製造過程において生成する副生成物との割合が、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物/副生成物=40〜60/60〜40(質量比)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明した本発明に係る粒子成長抑制剤及びこれを用いた農薬組成物は、農薬原体の継時的な粒子成長を抑制し、優れた保存安定性を付与する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0034】
試験区分1(粒子成長抑制剤の製造):
実施例、比較例に用いた粒子成長抑制剤は下記製造方法により製造し、SEC法により、質量平均分子量を測定した。その内容を表1に纏めた。
【0035】
(P−1の合成):
ナフタレン128.0g(1mol)、n−ブチルアルコール59.2g(0.8mol)をフラスコに仕込んだ。フラスコを水浴で冷却しながら、攪拌下に濃硫酸300.0g(3mol)を90分かけて滴下した。ヒーターに切替えて85℃まで昇温させた後、温度を85〜95℃に維持し3時間反応させた。反応終了後、温度を85〜95℃に維持しつつ、37%ホルマリン56.8g(0.7mol)を1時間かけて滴下し、同温度で3時間反応させ、蒸留水370gにて希釈し、反応中間物Xの水溶液を得た。
30%NaOH水溶液680.0g(5.1mol)をビーカーに仕込んだ。ビーカーを氷浴で冷却しながら、攪拌下に反応中間物Xの水溶液を滴下した。pHが7.2になるまで反応中間物Xの水溶液を添加し、反応物Yの水溶液を得た。
反応物Yの水溶液をスプレードライヤーに仕込み、乾燥温度110〜130℃で水分を揮発・乾燥させて、粉末状のP−1を得た。
【0036】
(P−1の質量平均分子量の測定):
P−1を固形分0.5質量%になるように溶離液(酢酸ナトリウム3水和物/水/アセトニトリル=45.1/4288.9/2340)で希釈し、フィルターろ過した。得られたろ液を、島津社製送液ユニットLC−10ATと示唆屈折率検出器RID−6Aを用い、検出温度40℃、流速0.8ml/minの条件のもとカラム(東ソー製TSK−Gel SWXL−guardcolumn、G4000SWXL、G3000SWXL、G2000SWXLの4連結カラム)に通液した。分子量既知のポリエチレングリコールとポリエチレンオキシドの検量線を用い、検出したピーク値から質量平均分子量を算出した。
【0037】
同様にして粒子成長抑制剤(P−2)〜(P−8)、(RP−1)〜(RP−7)、(RP−9)を合成し、質量平均分子量を測定した。(RP−8)のみ、ホルマリン縮合の温度を120〜135℃で合成した。
【0038】
【表1】
【0039】
試験区分2(水性懸濁農薬組成物の製造):
試験区分1で製造した粒子成長抑制剤を用い、水性懸濁農薬組成物を下記製造方法により製造し、その内容を表2に纏めた。
【0040】
[実施例1]
農薬原体としてインドキサカルブ (A−1)20部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−1)3部、湿潤剤としてアルキルナフタレンスルホン酸塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンBX−C)0.5部、増粘剤としてキサンタンガム1%水溶液10部、消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越シリコーン社製のKM−73)0.1部及び市水66.4部を混合した後、サンドグラインダーを用いて湿式粉砕し、実施例1の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤13質量部と農薬原体87質量部となる。
【0041】
[実施例2]
農薬原体としてインドキサカルブ (A−1)30部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−2)4部、湿潤剤としてアルキルナフタレンスルホン酸塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンBX−C)1部、増粘剤としてキサンタンガム1%水溶液10部、消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越シリコーン社製のKM−73)0.1部及び市水54.9部を混合した後、サンドグラインダーを用いて湿式粉砕し、実施例2の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤12質量部と農薬原体88質量部となる。
【0042】
[実施例3]
農薬原体としてブロモブチド (A−2)5部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−3)3.5部、湿潤剤としてアルキルナフタレンスルホン酸塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンBX−C)0.5部、消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越シリコーン社製のKM−73)0.1部及び市水80.9部を混合した後、サンドグラインダーを用いて湿式粉砕し、懸濁液を調製した。別に、市水98部に増粘剤としてモンモリロナイト系増粘剤(クニミネ工業社製の商品名クニピア−G)2部を均一分散させた溶液を調製し、この増粘剤溶液10部と前記の懸濁液とを混合して、均一な実施例3の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤41質量部と農薬原体59質量部となる。
【0043】
[実施例4]
農薬原体としてブロモブチド (A−2)50部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−4)5部、湿潤剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンSX−C)2部、増粘剤としてキサンタンガム1%水溶液10部、消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越シリコーン社製のKS−66)0.1部及び市水32.9部を混合した後、サンドグラインダーを用いて湿式粉砕し、実施例4の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤9質量部と農薬原体91質量部となる。
【0044】
[実施例5]
農薬原体としてアゾキシストロビン (A−3)30部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−5)7.5部、湿潤剤としてアルキルサルフェート金属塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンLX−C)1部、増粘剤としてキサンタンガム1%水溶液10部、消泡剤としてシリコーンエマルジョン(信越シリコーン社製のKM−73)0.1部及び市水51.4部を混合した後、サンドグラインダーを用いて湿式粉砕し、実施例5の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤20質量部と農薬原体80質量部となる。
【0045】
[実施例6]
農薬原体としてアゾキシストロビン (A−3)20部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−6)4部、湿潤剤としてアルキルサルフェート金属塩(竹本油脂社製の商品名ニューカルゲンLX−C)1部、市水64.9部とした以外は実施例4と同様にして、実施例6の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤17質量部と農薬原体83質量部となる。
【0046】
[実施例7]
農薬原体としてインドキサカルブ (A−1)20部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−7)3部とし、以下実施例1と同様にして、実施例7の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤13質量部と農薬原体87質量部となる。
【0047】
[実施例8]
農薬原体としてブロモブチド(A−2)5部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−8)3.5部とし、以下実施例3と同様にして、実施例8の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤41質量部と農薬原体59質量部となる。
【0048】
[実施例9]
農薬原体としてアゾキシストロビン (A−3)30部、粒子成長抑制剤としてブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物(P−8)7.5部とし、以下実施例5と同様にして、実施例9の水性懸濁農薬組成物を調製した。粒子成長抑制剤と農薬原体の合計に対する割合では、粒子成長抑制剤20質量部と農薬原体80質量部となる。
【0049】
[比較例1〜2、4〜11、13]
実施例1と同様にして、比較例1〜2、4〜11、13の水性懸濁農薬組成物を調製した。各例で用いた成分等を表2にまとめて示した。
【0050】
[比較例3、12]
実施例3と同様にして、比較例3、12の水性懸濁農薬組成物を調製した。各例で用いた成分等を表2にまとめて示した。
【0051】
試験区分3(粒子成長率の評価):
試験区分2で製造した水性懸濁農薬組成物を用い、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所製)によりメジアン径を測定して、以下の基準で粒子成長率を評価し、その内容を表2に纏めた。尚、次式の粒径(54℃×2weeks)とは、54℃の条件下で、2週間静置した後の粒径を意味する。
粒子成長率:
【数1】
評価基準:
◎:粒子成長率が0以上26%未満
○:粒子成長率が26%以上51%未満
×:粒子成長率が51%以上
【0052】
【表2】
【0053】
尚、表2において、各記号の意味は以下のとおりである。
P−1〜P−8、RP−1〜RP−9:試験区分1で製造した粒子成長抑制剤
A−1:インドキサカルブ(水溶解度:0.0136ppm)
A−2:ブロモブチド(水溶解度:3.54ppm)
A−3:アゾキシストロビン(水溶解度:6ppm)
CP−1:竹本油脂社製ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、質量平均分子量:22872
CP−2:第一工業製薬社製ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、質量平均分子量:6544
CP−3:花王社製メチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、質量平均分子量:4807
CP−4:花王社製ブチルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、質量平均分子量:8976
【0054】
以上表1〜2の結果からも明らかなように、本発明によれば、水性懸濁農薬組成物に関し、農薬原体の継時的な粒子成長を抑制し、優れた保存安定性を付与する水性懸濁農薬用粒子成長抑制剤及びそれを用いて調製した水性懸濁農薬組成物を提供することができる。
【要約】
【課題】
水性懸濁農薬組成物に関し、農薬原体の継時的な粒子成長を抑制し、優れた保存安定性を付与する水性懸濁農薬用粒子成長抑制剤及びそれを用いて調製した水性懸濁農薬組成物を提供する。
【解決手段】
水性懸濁農薬製剤用粒子成長抑制剤において、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物のアルキル基がブチル基であって、且つ該アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が、0.6モル当量超1.0モル当量以下のブチルナフタレンスルホン酸塩、0.4モル当量未満0モル当量以上のナフタレンスルホン酸塩、及び0.6モル当量以上1.0モル当量未満のホルムアルデヒドから成り、500〜3000の質量平均分子量であるアルキルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物を含有させる。
【選択図】 なし