特許第6375079号(P6375079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6375079プレキャスト合成床版の橋軸直角方向の継手構造及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6375079
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】プレキャスト合成床版の橋軸直角方向の継手構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20180806BHJP
【FI】
   E01D19/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-93559(P2018-93559)
(22)【出願日】2018年5月15日
【審査請求日】2018年5月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)公開日:平成30年 4月 9日 公開場所:西日本高速道路株式会社 関西支社 (2)公開日:平成30年 4月16日 公開場所:阪神高速道路株式会社 大阪管理局 (3)公開日:平成30年 5月 7日 公開場所:東日本高速道路株式会社 八王子支社 松本保全サービスセンター
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河住金ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】藤川 敬人
(72)【発明者】
【氏名】水上 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 康行
(72)【発明者】
【氏名】利根川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏実
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−219514(JP,A)
【文献】 特開2012−225144(JP,A)
【文献】 特開2004−137686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1径間に相当する長さを有する橋軸方向の主桁と、前記主桁の上面に固定された底鋼板と、前記底鋼板の上面に橋軸方向に間隔をおいて配置された複数の形鋼と、前記底鋼板の上面に打設された床版コンクリートとを構成要素とするプレキャスト合成パネルユニットが橋軸直角方向に複数並列配置されて連結されてなる合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造であって、
前記床版コンクリートの橋軸直角方向の継手面は平面視で凹凸形状に形成されており、前記形鋼が前記継手面の凹凸形状の凸部から突出しており、
橋軸直角方向に隣り合うパネルユニットどうしのうちの一方のプレキャスト合成パネルユニットの継手位置では、前記凸部および前記形鋼の端部が前記底鋼板の端部より内側に位置しており、他方のプレキャスト合成パネルユニットの継手位置では、前記凸部および前記形鋼の端部が前記底鋼板の端部より外側に張り出しており、
前記一方のプレキャスト合成パネルユニットの底鋼板上に、前記他方のプレキャスト合成パネルユニットの前記凸部および前記形鋼の端部の張出し部が、双方のプレキャスト合成パネルユニットの床版コンクリートの凸部および形鋼の端部が橋軸方向に交互に位置するように配置され、双方の形鋼の端部を橋軸方向にみてオーバーラップするように配置した状態で、継手部に間詰めコンクリートが打設されている
ことを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造。
【請求項2】
請求項1記載の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造において、橋軸直角方向に複数並列配置されて連結されてなる前記プレキャスト合成パネルユニットのうち、一部のプレキャスト合成パネルユニットは前記橋軸方向の主桁を有さず、底鋼板と、前記底鋼板の上面に橋軸方向に間隔をおいて配置された複数の形鋼と、前記底鋼板の上面に打設された床版コンクリートとを構成要素とするプレキャスト合成パネルユニットであることを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造において、前記凸部の橋軸直角方向の断面が上方向に広がる逆台形状であることを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造。
【請求項4】
請求項1または2記載の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造において、前記凸部の橋軸直角方向の断面の両側が凹凸形状であることを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造において、前記形鋼はI形鋼であることを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造を備えた合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手部の施工方法であって、
橋台と橋脚または橋脚間に前記一方のプレキャスト合成パネルユニットを架設した後、前記他方のプレキャスト合成パネルユニットを、前記凸部および前記形鋼の端部の張出し部が前記一方のプレキャスト合成パネルユニットの底鋼板上に載置され、双方のプレキャスト合成パネルユニットの凸部および形鋼の端部が橋軸方向に交互に位置するように橋台または橋脚間に架設し、双方の形鋼の端部が橋軸方向にみてオーバーラップするようにして、継手部に間詰めコンクリートを打設することを特徴とする合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手部の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋などに用いられるプレキャスト合成床版の橋軸直角方向の継手構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の施工においては、交通規制や施工コストの問題などから急速施工が可能な工法が期待されている。特に、既設橋梁の老朽化に対し床版の架け替えを行う場合には、既設橋梁の周辺も含め、交通規制が必要となることから急速施工の必要性が高い。
【0003】
例えば、特許文献1には、所要の剛性を有し、かつ製作コストを低減した鋼・コンクリートの合成パネル構造と、その合成パネルを用いて現地工期短縮および施工の単純化を図った合成パネル橋梁の施工方法が記載されている。
【0004】
この特許文献1記載の合成パネルは、底鋼板の下面に間隔をおいて配置した主桁の役割を担う複数の縦桁が固定され、底鋼板の上面には縦桁と直交方向にI形鋼などの形鋼からなりジベルの機能を持たせた横リブが間隔をおいて固定配置され、横リブが埋没するように現場打ちの床版コンクリートが充填された構造のものである。
特許文献2には、橋梁の改修工事におけるプレキャスト床版の継手部に多用されてきたいわゆるループ継手が記載されている。
【0005】
特許文献3には、プレキャスト部材同士を高い耐力で接合可能な耐久性に優れた接合構造として、接合される双方のプレキャスト部材の接合側端部から有孔板(孔明き鋼板ジベル)を突設させ、隙間に充填材を充填するとともにそれらの有孔板の孔に挿通させたPC鋼材によって充填材の充填部にプレストレスを導入するようにした接合構造が記載されている。
【0006】
特許文献4には、既設橋の改修などにおいて急速施工を可能とするプレキャスト床版の継手構造に関し、継手端部に複数の切欠部を設けて凹凸形状とし、プレキャスト床版の凸部から突出させた継手用鉄筋を他方のプレキャスト床版の凹部内に納める形で間詰め材を充填するようにしたことで、間詰め材の充填量を低減して工期を短縮するとともに、継手部に構造的な弱点が生じないようにした継手構造が記載されている。
【0007】
特許文献5には、プレキャストコンクリート床版の接続構造として、プレキャストコンクリート床版本体から橋軸方向に突出する上側継手鉄筋および下側継手鉄筋の先端部にネジ切りしてナットを取り付けるか、または圧着グリップを固着し、継手鉄筋を突出させた対向する床版本体の端面間に間詰めコンクリートを充填する構造において、床版本体の端面厚さ方向の中央部に溝形のせん断キー部を形成した構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−137686号公報
【特許文献2】特開2008−303538号公報
【特許文献3】特開2009−209600号公報
【特許文献4】特開2012−225144号公報
【特許文献5】特開2015−001045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の発明は、鋼・コンクリートの合成床版構造の橋梁の現地工期短縮および施工の単純化を図ったものであるが、合成床版を構成するコンクリートは現場打ちであるため、工期を最小限に短縮する急速施工には適さない。
【0010】
特許文献2記載の発明は、ループ継手を形成する鉄筋の加工の問題などから床版厚を薄くすることが難しく、またループ継手と継手部に配置された鉄筋および充填コンクリートのみでは十分な継手強度が得られにくい。
【0011】
特許文献3記載の発明は、継手部に孔明き鋼板ジベルを用いたものであるが、継手端部に孔明き鋼板ジベルを埋め込んでプレキャスト床版を製作しなければならず、製造コストが高く付き、また孔明き鋼板ジベルと鉄筋および充填コンクリートのみでは継手部が強度的な弱点となりやすい。
【0012】
特許文献4記載の発明は、プレキャスト床版の継手端部を平面的にみて凹凸形状となるようにし、プレキャスト床版の凸部から突出させた継手用鉄筋を他方のプレキャスト床版の凹部内に納める形で間詰め材を充填するようにしたことで、間詰め材の充填量を低減して工期を短縮するとともに、継手部に構造的な弱点が生じないようにしたものであるが、継手部に作用するせん断力に対し、必ずしも十分な構造とは言えない。
【0013】
特許文献5記載の発明は、継手部において橋軸方向に突出させた鉄筋の先端部にナットまたは圧着グリップを取り付けて重ね継手の機能を高めるとともに、床版本体の端面に形成した溝形のせん断キー部により、継手部の一体化を図ったものであるが、この場合も必ずしも継手部の強度が十分とは言えない。
【0014】
また、特許文献2〜5記載の発明は、橋軸方向の継手を対象としており、主桁あるいは橋脚、橋台などに支持されているが、橋軸直角方向の継手の場合、継手部が主桁位置とは限らず、むしろ主桁位置から外れる場合も多く、その場合、継手部自体に大きなせん断耐力が要求される。
【0015】
本願発明は、上述のような従来技術における課題の解決を図ったものであり、現場での急速施工が可能であり、かつプレキャスト合成床版を補剛している補剛桁を利用することで強度的に優れた継手部を構成し、かつ間詰めコンクリートの量を低減でき、現場作業が容易なプレキャスト合成床版の橋軸直角方向の継手構造およびその施工方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、1径間に相当する長さを有する橋軸方向の主桁と、前記主桁の上面に固定された底鋼板と、前記底鋼板の上面に橋軸方向に間隔をおいて配置された複数の形鋼と、前記底鋼板の上面に打設された床版コンクリートとを構成要素とするプレキャスト合成パネルユニット(以下、単に「パネルユニット」と呼ぶ)が橋軸直角方向に複数並列配置されて連結されてなる合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手構造を工夫したものである。
【0017】
本発明では、前記床版コンクリートの橋軸直角方向の継手面は平面視で凹凸形状に形成されており、前記形鋼が前記継手面の凹凸形状の凸部から突出しており、橋軸直角方向に隣り合うパネルユニットどうしのうちの一方のパネルユニットの継手位置では、前記凸部および前記形鋼の端部が前記底鋼板の端部より内側に位置しており、他方のパネルユニットの継手位置では、前記凸部および前記形鋼の端部が前記底鋼板の端部より外側に張り出している。
【0018】
そして、前記一方のパネルユニットの底鋼板上に、前記他方のパネルユニットの前記凸部および前記形鋼の端部の張出し部が、双方のパネルユニットの床版コンクリートの凸部および形鋼の端部が橋軸方向に交互に位置するように配置され、双方の形鋼の端部を橋軸方向にみてオーバーラップするように配置した状態で、継手部に間詰めコンクリートが打設されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の合成パネル橋梁の橋軸直角方向の継手部の施工方法においては、橋台と橋脚または橋脚間に前記一方のパネルユニットを架設した後、前記他方のパネルユニットを、凸部および形鋼の端部の張出し部が前記一方のパネルユニットの底鋼板上に載置され、双方のパネルユニットの凸部および形鋼の端部が橋軸方向に交互に位置するように橋台または橋脚間に架設し、双方の形鋼の端部が橋軸方向にみてオーバーラップするようにして、継手部に間詰めコンクリートを打設する。
【0020】
本発明では、パネルユニットを構成する床版コンクリートの継手面を凹凸形状に形成し、パネルユニットに内蔵された補剛桁の機能を有する形鋼の突出部がこの継手面の凸部から突出する形態となっているため、隣り合う双方のパネルユニットの継手面の凹凸形状をフィンガージョイントのように噛み合わせる形で形鋼の端部が他方のパネルユニットの継手面の凹部に納まるため、この部分に充填される間詰めコンクリートの打設量を少なくしつつ強固な接合構造が得られる。
【0021】
また、本発明ではパネルユニットに1径間に相当する長さを有する橋軸方向の主桁が一体化されているため、鋼とコンクリートからなる合成床版構造のパネルユニットを橋台または橋脚間に架設する際に、パネルユニット自体に十分な剛性が確保されているため、施工がスムーズであり、継手部の間詰め部分についても剛性的に安定した状態で間詰めコンクリートの打設を行うことができる。
【0022】
なお、上述の橋軸直角方向に複数並列配置されるパネルユニットは、全てのパネルユニットが一体化された主桁を有する場合に限らず、一部のパネルユニットについては主桁を有さないパネルユニット、すなわち底鋼板と底鋼板の上面に橋軸方向に間隔をおいて配置された複数の形鋼とを構成要素とするパネルユニットを用いることもできる。
【0023】
床版コンクリートの継手面の凸部の形状については、さらにこの凸部の橋軸直角方向の断面が上方向に広がる逆台形状となるようにすれば、継手部に後から打設される間詰めコンクリートの上方への抜け出しを拘束する効果が得られる。
【0024】
その他、床版コンクリートの継手面の凸部の形状については、橋軸直角方向の断面の両側が凹凸形状となるようにしても、同様に間詰めコンクリートの上方への抜け出しの拘束効果や一体性の向上の効果が得られる。
【0025】
パネルユニットの床版コンクリート内に埋設されて補剛桁の機能を有する形鋼の断面形状は特に限定されないが、断面剛性や価格、取り扱いの容易さなどからI形鋼などの形鋼が有利である。また、I形鋼などの場合、フランジ形状によるアンカー効果も得られる。
【0026】
また、本発明ではパネルユニットの下面に鋼板が一体化されている構造であるため、製作や運搬に便利であり、また架設状態において床版下面の止水性が高いという利点がある。
【発明の効果】
【0027】
本発明ではパネルユニットに1径間に相当する長さを有する橋軸方向の主桁が一体化されているため、鋼とコンクリートからなる合成床版構造のパネルユニットを橋台または橋脚間に架設する際に、パネルユニット自体に十分な剛性が確保されているため、施工がスムーズであり、継手部の間詰め部分についても剛性的に安定した状態で間詰めコンクリートの打設を行うことができる。
【0028】
本発明では、橋軸直角方向に並列するパネルユニットに内蔵された補剛桁の機能を有する形鋼の端部が隣り合うパネルユニット間の継手部に突出し、双方のパネルユニットの形鋼の端部が橋軸方向にみてオーバーラップする形で継手部の間詰めコンクリート内に配置されるため、強固な継手構造が得られる。
【0029】
また、本発明では、パネルユニットを構成する床版コンクリートの継手面を凹凸形状に形成し、補剛桁の機能を有する形鋼の端部がこの継手面の凸部から突出する形態となっており、隣り合う双方のパネルユニットの継手面の凹凸形状をフィンガージョイントのように噛み合わせる形で形鋼の端部が他方のパネルユニットの継手面の凹部に納まるため、この部分に充填される間詰めコンクリートの打設量を少なくしつつ強固な接合構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態について、パネルユニットの橋脚への架設の状態を示したもので、(a)は架設された状態の平面図、(b)は一方のパネルユニットが架設され、他方のパネルユニットが架設される直前の断面図、(c)は双方のパネルユニットが架設された状態の断面図である。
図2】両側のパネルユニットが架設された状態で、間のパネルユニットを架設する様子を示した斜視図である。
図3】本発明の継手構造の他の実施形態における橋軸方向の断面図である。
図4】本発明の継手構造のさらに他の実施形態における橋軸方向の断面図である。
図5】本発明の継手構造のさらに他の実施形態における橋軸方向の断面図である。
図6】本発明が適用される合成パネル橋梁の架設における施工手順を示す斜視図である。
図7図6に続く施工手順を示す斜視図である。
図8図7に続く施工手順を示す斜視図である。
図9図8に続く施工手順を示す斜視図である。
図10図9に続く施工手順を示す斜視図である。
図11図10に続く施工手順を示す斜視図である。
図12図11に続く施工手順を示す斜視図である。
図13図12に続く施工手順を示す斜視図である。
図14図13に続く施工手順を示す斜視図である。
図15】本発明の継手構造の他の実施形態(一部のパネルユニットは橋軸方向の主桁を有さない場合)における施工手順を示した斜視図である。
図16図15に続く施工手順を示した斜視図である。
図17図16に続く施工手順を示した斜視図である。
図18図16で用いられるパネルユニットを拡大して示した斜視図である。
図19図17に続く施工手順を示した斜視図である。
図20図19で用いられるパネルユニットを拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の継手構造の一実施形態について、パネルユニット1(プレキャスト合成パネルユニット)の橋脚への架設の状態を示したもので、図2は両側のパネルユニット1a、1cが架設された状態で、間にパネルユニット1bを架設する様子を示した斜視図である。
【0032】
パネルユニット1は、図2および後述する図6図14に示すように、1径間(橋台11と橋脚12間、または隣り合う橋脚12間の距離に相当)に相当する長さを有する橋軸方向の主桁2と、主桁2の上面に固定された底鋼板3と、底鋼板3の上面に橋軸方向に間隔をおいて配置された複数の形鋼(本実施例ではI形鋼4)と、底鋼板3の上面に打設された床版コンクリート5とを構成要素とする。
【0033】
このパネルユニット1を橋台11と橋脚12または橋脚12間に架設し、橋軸直角方向に複数並列配置して連結し、橋軸方向にも複数径間架設して行くことで鋼コンクリート合成構造の合成パネル橋梁が構築される。
【0034】
なお、図示した実施例は、既設橋梁の老朽化に対し橋梁の床版の架け替え工事を行う場合を想定した例であり、橋脚12の既設の支承14上に橋軸直角方向の横桁15を設置し、パネルユニット1を構成する主桁2を橋台11上に設置した支承13と橋脚12の横桁15間に架設する構造としている。主桁2の横桁15への架設部分は、主桁2の上フランジ側の一部が突出部2aとして残された形で切欠かれた形状となっており、この突出部2aを横桁15の上面に載置している。
【0035】
パネルユニット1を構成する床版コンクリート5の橋軸直角方向の継手面は平面視で凹凸形状に形成されており、前述のI形鋼4が継手面の凹凸形状の凸部6から突出しており、図1に示すように橋軸直角方向に隣り合うパネルユニット1どうしのうちの一方のパネルユニット1の継手位置では、凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より内側に位置しており、他方のパネルユニット1の継手位置では、凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より外側に張り出している。
【0036】
そして、一方のパネルユニット1の底鋼板3上に、他方のパネルユニット1の凸部6およびI形鋼4の端部の張出し部が載った状態で、双方のパネルユニット1の床版コンクリートの凸部6およびI形鋼4の端部が橋軸方向に交互に位置し、橋軸方向にみて双方のI形鋼4の端部オーバーラップした状態で、継手部に間詰めコンクリート9が打設されている。
【0037】
なお、図示した実施例において、継手部で隣接する底鋼板3の端部どうしは、図1に示すように、あらかじめ一方のパネルユニット1の底鋼板3の端部に取り付けておいた添接板7とボルト8を介して接合されるようになっているが、これに限定されるものではない。
【0038】
このように、橋軸直角方向に並列するパネルユニット1に内蔵された補剛桁の機能を有するI形鋼4の端部が隣り合うパネルユニット1間の継手部に突出し、双方のパネルユニット1のI形鋼4の端部がオーバーラップする形で間詰めコンクリート9内に配置されるため、強固な継手構造が得られる。
【0039】
なお、必要に応じ、この継手部の間詰めコンクリート9内に橋軸方向の緊張材を配置して間詰めコンクリート9の橋軸方向のはらみ出しの抑制を図ることもできる。
【0040】
また、隣り合う双方のパネルユニット1の継手面の凹凸形状をフィンガージョイントのように噛み合わせる形でI形鋼4の端部が他方のパネルユニット1の継手面の凹部に納まるため、この部分に充填される間詰めコンクリート9の打設量を少なくしつつ強固な接合構造が得られる。
【0041】
図3は、本発明の継手構造の他の実施形態における継手部分の橋軸方向の断面を示したものである。図3の例ではパネルユニット1を構成する床版コンクリート5の継手面の凸部6の橋軸直角方向の断面形状が上方向に広がる逆台形状となるように凸部6の側面にテーパーを設けている。
【0042】
このような逆台形状の断面形状とすることで、継手部に後から打設される間詰めコンクリート9の上方への抜け出しを拘束する効果が得られる。
【0043】
図4は、本発明の継手構造のさらに他の実施形態における継手部分の橋軸方向の断面を示したものである。図4の例は凸部6の橋軸直角方向の断面形状において、両側が凹凸形状となるようにして、継手部に後から打設される間詰めコンクリート9の上方への抜け出しを拘束するとともに、床版コンクリート5と間詰めコンクリート9の一体性の強化を図ったものである。
【0044】
図5は、図4の実施形態に対し、床版コンクリート5の凸部6の側面における上下方向の凹凸形状の凹凸を逆にした場合であり、効果は図4の場合とほぼ同様である。
【0045】
図6図14は、図2で説明した本発明が適用される合成パネル橋梁の架設における施工手順を参考的に示したものであり、以下の手順で施工が行われる。
【0046】
(1) 横桁15の設置(図6〜7参照)
既設の床版を取り除いた橋台11上に主桁2の配置に応じた支承13を設置する。橋脚12側については、既設の支承14を使用し、支承14の上に、橋軸直角方向の横桁15を設置する。
【0047】
(2) パネルユニット1aの架設(図8〜9参照)
パネルユニット1aを構成する主桁2を橋台11上に設置した支承13と橋脚12の横桁15間に架設する。主桁2の横桁15への架設部分は、図2で説明したように、主桁2の上フランジ側の一部が突出部2aとして残された形で切欠かれた形状となっており、この突出部2aを横桁15の上面に架設する。
【0048】
パネルユニット1aは、図2に示すように、凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より内側に位置している。
【0049】
(3) パネルユニット1cの架設(図10〜11参照)
同様に、凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より内側に位置しているパネルユニット1cを橋台11上に設置した支承13と橋脚12の横桁15間に架設する。
【0050】
(4) パネルユニット1cの架設(図12〜14参照)
凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より外側に張り出しているパネルユニット1cを橋台11上に設置した支承13と橋脚12の横桁15間に架設する。
【0051】
パネルユニット1bの架設により、パネルユニット1bの両側の凸部6およびI形鋼4の端部が両側のパネルユニット1a、1cの底鋼板3上に載る。隣接する底鋼板3どうしは図1で説明したように、添接板7とボルト8を介して接合する。
【0052】
(5) 間詰めコンクリート9の打設
両側からI形鋼4が突出する凹凸形状の継手部に図1に示される間詰めコンクリート9を打設する。
【0053】
以上の作業により、橋台11と橋脚12間の1径間の床版パネルの架設が完了する。続く径間についても基本的には同様の手順で施工を行うことができる。
【0054】
図15図20は、本発明の継手構造の他の実施形態として、一部のパネルユニットは橋軸方向の主桁を有さない場合における施工手順とパネルユニットの構造を示したものである。
【0055】
一部のパネルユニットについて、橋軸方向の主桁を有さないパネルユニット1´を用いる点以外は、基本的に前述の実施形態と同様である。
【0056】
(1) 横桁15の設置(図15図16参照)
既設の床版と橋桁を取り除いた橋台11上に主桁2の配置に応じた支承13を設置する。橋脚12への橋軸直角方向の横桁15の設置については、前述の実施形態と同様、既設の支承14を使用し、支承14の上に、橋軸直角方向の横桁15を設置する。
【0057】
(2) 主桁2を一体化したパネルユニット1の架設(図17図18参照)
パネルユニット1を構成する主桁2を橋脚12上に設置した横桁15間に架設する。なお、パネルユニット1の片端が横桁15を介さず、直接、橋台または橋脚上の支承上に架設される場合もある。
【0058】
(3) 主桁2を有さないパネルユニット1´の架設(図19図20参照)
本実施形態では、主桁2を有さないパネルユニット1´も用いており、先に架設したパネルユニット1´間に、主桁2を有さないパネルユニット1´に架設して行く。
【0059】
その他の構成および施工手順は、基本的に前述の実施形態と同様であるので、共通する事項の説明は省略する。
【符号の説明】
【0060】
1…パネルユニット、2…主桁、2a…突出部、3…底鋼板、4…I形鋼、5…床版コンクリート、6…凸部、7…添接板、8…ボルト、9…間詰めコンクリート、
11…橋台、12…橋脚、13…支承、14…支承、15…横桁
【要約】
【課題】急速施工が可能であり、強度的に優れ、かつ間詰めコンクリートの量を低減でき、現場作業が容易なプレキャスト合成床版の橋軸直角方向の継手構造を提供する。
【解決手段】
1径間の長さの主桁2と、底鋼板3と、底鋼板3上の複数のI形鋼4と、床版コンクリート5を構成要素とするプレキャスト合成パネルユニット1の橋軸直角方向の継手構造である。床版コンクリート5の継手面を凹凸形状とし、その凸部6からI形鋼4を突出させる。隣り合うパネルユニット1どうしの一方のパネルユニット1の継手位置では凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より内側に位置し、他方のパネルユニット1の継手位置では凸部6およびI形鋼4の端部が底鋼板3の端部より外側に張り出している。これらを突き合わせて、双方のパネルユニット1の床版コンクリートの凸部6およびI形鋼4の端部が交互に位置するようにし、継手部に間詰めコンクリート9を打設する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20