特許第6375081号(P6375081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6375081半導体加工用粘着テープ、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375081
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着テープ、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20180806BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20180806BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20180806BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180806BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   B23K26/53
   C09J7/29
   C09J201/00
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
   B32B27/36
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-503402(P2018-503402)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】JP2017008313
(87)【国際公開番号】WO2017150675
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-41259(P2016-41259)
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】富永 知親
(72)【発明者】
【氏名】堀米 克彦
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/156389(WO,A1)
【文献】 特開2015−183008(JP,A)
【文献】 特開2005−343997(JP,A)
【文献】 特開2012−209429(JP,A)
【文献】 特開2011−151355(JP,A)
【文献】 特開2013−129723(JP,A)
【文献】 特開2013−087131(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136897(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B32B 27/00
B32B 27/30
B32B 27/36
C09J 7/29
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ表面に溝が形成され、又は半導体ウエハに改質領域が形成された半導体ウエハの裏面を研削して、その研削により半導体ウエハを半導体チップに個片化する工程において、半導体ウエハの表面に貼付されて使用される半導体加工用粘着テープであって、
基材と、前記基材の一方の面に設けられる緩衝層と、前記基材の他方の面に設けられる粘着剤層とを備え、
前記緩衝層の厚さ(D2)の基材の厚さ(D1)に対する比(D2/D1)が0.7以下であるとともに、
先端曲率半径100nm及び稜間角115°の三角錘形状圧子の先端を10μm/分の速度で、粘着テープの緩衝層側の面に押し込んだ際の圧縮荷重が2mNに到達するのに必要な、前記緩衝層側表面の押し込み深さ(X)が2.4μm以下である半導体加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記基材のヤング率が1000MPa以上である請求項1に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記基材の厚さ(D1)が、110μm以下である請求項1又は2に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記基材が少なくともポリエチレンテレフタレートフィルムを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記緩衝層が、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)、及び官能基を有する重合性化合物(a3)を含む緩衝層形成用組成物から形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項6】
成分(a2)が、脂環基含有(メタ)アクリレートであるとともに、成分(a3)が、水酸基含有(メタ)アクリレートである請求項5に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層の23℃における弾性率が0.10〜0.50MPaである請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層の厚さ(D3)が、70μm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープを、半導体ウエハの表面に貼付する工程と、
半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は半導体ウエハの表面若しくは裏面から半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程と、
前記半導体加工用粘着テープが表面に貼付され、かつ前記溝又は改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、前記溝又は改質領域を起点として複数のチップに個片化させる工程と、
前記複数のチップから半導体加工用粘着テープを剥離する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先ダイシング法により半導体装置を製造する際に、半導体ウエハに貼付して使用する半導体加工用粘着テープ、及びその粘着テープを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の小型化、多機能化が進む中、それらに搭載される半導体チップも同様に、小型化、薄型化が求められている。チップの薄型化のために、半導体ウエハの裏面を研削して厚さ調整を行うことが一般的である。また、ウエハの表面側から所定深さの溝を形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、その研削によりチップを個片化する先ダイシング法と呼ばれる工法を利用することもある。先ダイシング法では、ウエハの裏面研削と、チップの個片化を同時に行うことができるので、薄型チップを効率よく製造することが可能である。また、先ダイシング法には、上述のように、ウエハ表面側から所定深さの溝を形成した後、ウエハ裏面側から研削する方法のほかに、レーザーでウエハ内部に改質層を設け、ウエハ裏面研削時の圧力等でチップの個片化を行う方法もある。
【0003】
従来、半導体ウエハの裏面研削時には、ウエハ表面の回路を保護し、また、半導体ウエハ及び個片化された半導体チップを固定しておくために、ウエハ表面にバックグラインドシートと呼ばれる粘着テープを貼付するのが一般的である。先ダイシング法において使用するバックグラインドシートとしては、基材と、基材の一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着シートにおいて、基材の他方の面側にさらに緩衝層を設けたものが知られている。
バックグラインドシートは、緩衝層を設けることで、ウエハ裏面研削時に生じる振動を緩和することが可能である。また、半導体ウエハは、裏面研削時、バックグラインドシートを設けたウエハ表面側がチャックテーブルに吸着されることで、該テーブルに固定されるが、緩衝層によって、テーブル上に存在する異物等による凹凸を吸収することも可能である。バックグラインドシートは、以上の緩衝層の作用によって、裏面研削時に生じる半導体ウエハの割れや、チップの欠け等を防止している。
【0004】
また、特許文献1では、上記したような基材、粘着剤層、及び緩衝層を有する粘着シートにおいて、基材の厚さを10〜150μmとし、かつそのヤング率を1000〜30000MPaとするとともに、緩衝層の厚さを5〜80μmとし、かつその動的粘弾性のtanδ最大値を0.5以上とした粘着シートが開示されている。特許文献1には、この粘着シートをバックグラインドシートとして使用することで、先ダイシング法により半導体チップを製造する際に、チップの欠け及び変色を防止できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−343997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、半導体チップの薄型化及び小型化の要求はさらに高まりつつあり、例えば、厚さ50μm未満のものや、0.5mm角程度の半導体チップを製造することも求められるようになってきている。このように小型化及び薄型化された半導体チップを製造する際には、特許文献1に記載されるように、基材のヤング率及び緩衝層のtanδ最大値を調整しつつ、基材及び緩衝層それぞれの厚さを一定の範囲に設定するのみでは、半導体チップの端部や角部で発生するチップ欠け(チップクラック)を十分に抑制することが難しいことがある。
【0007】
また、クリーンルームの清浄度が低い場合には、ウエハ裏面研削装置のチャックテーブルの上に比較的大きな異物が吸着されることがある。したがって、使用環境によっては、異物吸収性を高めるために、粘着テープの緩衝層側の面の柔軟性を高めることも考えられる。しかし、緩衝層側の柔軟性を高めると、通常の厚さの緩衝層と基材では、裏面研削時に半導体チップに生じる振動を十分に抑制できないことがあり、薄型化及び小型化された半導体チップを製造する場合には、そのような振動によりチップ欠けが生じることがある。
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、先ダイシング法において、薄型化及び小型化された半導体チップを製造するような場合であっても、半導体チップに欠けが生じるのを防止することが可能な半導体加工用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、緩衝層と基材の厚さ比を一定範囲としつつ、緩衝層側表面の押し込み深さを所定値以下とすることで、半導体ウエハを研削して半導体チップに個片化するときに生じる半導体チップの欠けを防止できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)半導体ウエハ表面に溝が形成され、又は半導体ウエハに改質領域が形成された半導体ウエハの裏面を研削して、その研削により半導体ウエハを半導体チップに個片化する工程において、半導体ウエハの表面に貼付されて使用される半導体加工用粘着テープであって、
基材と、前記基材の一方の面に設けられる緩衝層と、前記基材の他方の面に設けられる粘着剤層とを備え、
前記緩衝層の厚さ(D2)の基材の厚さ(D1)に対する比(D2/D1)が0.7以下であるとともに、前記緩衝層側表面の押し込み深さ(X)が2.5μm以下である半導体加工用粘着テープ。
(2)前記基材のヤング率が1000MPa以上である上記(1)に記載の半導体加工用粘着テープ。
(3)前記基材の厚さ(D1)が、110μm以下である上記(1)又は(2)に記載の半導体加工用粘着テープ。
(4)前記基材が少なくともポリエチレンテレフタレートフィルムを有する上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
(5)前記緩衝層が、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)、及び官能基を有する重合性化合物(a3)を含む緩衝層形成用組成物から形成される上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
(6)成分(a2)が、脂環基含有(メタ)アクリレートであるとともに、成分(a3)が、水酸基含有(メタ)アクリレートである上記(5)に記載の半導体加工用粘着テープ。
(7)前記粘着剤層の23℃における弾性率が0.10〜0.50MPaである上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
(8)前記粘着剤層の厚さ(D3)が、70μm以下である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープ。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着テープを半導体ウエハの表面に貼付する工程と、
半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は半導体ウエハの表面若しくは裏面から半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程と、
前記半導体加工用粘着テープが表面に貼付され、かつ前記溝又は改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、前記溝又は改質領域を起点として複数のチップに個片化させる工程と、
前記複数のチップから半導体加工用粘着テープを剥離する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、先ダイシング法において、半導体ウエハを研削してチップに個片化するときに生じる半導体チップの欠けを防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0012】
本発明の半導体加工用粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」ともいう)は、基材と、基材の一方の面に設けられる緩衝層と、基材の他方の面(すなわち、緩衝層が設けられた面とは反対側の面)に設けられる粘着剤層とを備えるものである。
粘着テープは、先ダイシング法において、粘着剤層を介して半導体ウエハの表面に貼付されて使用されるものである。すなわち、粘着テープは、後述するように、半導体ウエハ表面に溝が形成され、又は半導体ウエハに改質領域が形成された、半導体ウエハの裏面を研削して、その研削により半導体ウエハを半導体チップに個片化する工程において、半導体ウエハの表面に貼付されて使用されるものである。
【0013】
本発明の粘着テープは、緩衝層の厚さ(D2)の基材の厚さ(D1)に対する比(D2/D1)が0.7以下であるとともに、緩衝層側表面の押し込み深さ(X)が2.5μm以下となるものである。
なお、本発明において緩衝層側表面の押し込み深さ(X)とは、先端曲率半径100nm及び稜間角115°の三角錘形状圧子の先端を10μm/分の速度で、粘着テープの緩衝層側の面に押し込んだ際の圧縮荷重が2mNに到達するのに必要な押し込み深さを意味する。押し込み深さ(X)の具体的な測定方法は、実施例に記載されるとおりである。
【0014】
本発明では、厚さ比(D2/D1)を0.7以下とすることで、裏面研削時に粘着テープの粘着剤以外の部分の振動が生じにくい。すなわち、粘着テープ全体としても、厚さ比が0.7より大きい場合と比較して振動が小さくなる。振動が小さいことにより、先ダイシング法で小型かつ薄型の半導体チップを製造するような場合であっても、裏面研削によって個片化する際に生じる半導体チップの欠けを防止することが可能になる。
【0015】
一方で、押し込み深さ(X)が2.5μmより大きいと、緩衝層の異物吸収性等の性能は良好になるが、半導体ウエハを先ダイシング法により、小型かつ薄型の半導体チップに個片化するような場合には、半導体チップの欠けを適切に防止することができない。また、厚さ比(D2/D1)が0.7より大きくなると、粘着テープにおいて、剛性の低い部分が多くなり、裏面研削時に半導体ウエハやチップに振動が起こりやすくなり、例えば、先ダイシングにより小型かつ薄型の半導体チップに個片化するような場合には、半導体チップの欠けが防止しにくくなる。
【0016】
押し込み深さ(X)は、緩衝層の衝撃吸収性を適切なものとしつつ、半導体チップに個片化する際のチップ欠けを防止するために、1.0〜2.5μmであることが好ましく、1.5〜2.4μmであることがより好ましい。
また、裏面研削時のチップ欠けをより低減させつつ、緩衝層を適切な厚さとして粘着テープの緩衝性能を良好にするために、厚さ比(D2/D1)は、0.10〜0.70であることが好ましく、0.13〜0.66であることがより好ましい。
なお、押し込み深さ(X)は、例えば、緩衝層を形成する緩衝層形成用組成物中に含まれる成分の種類や含有量、緩衝層の硬化の程度等を適宜変えることで、上記範囲に属するように調整することが可能である。さらには、緩衝層の厚さや、基材の厚さを変更することによっても調整可能である。例えば、押し込み深さ(X)は、緩衝層を薄くすると小さくなる傾向がある。一方で、基材を薄くすると、押し込み深さ(X)は大きくなる傾向がある。
【0017】
次に、本発明の粘着テープの各部材の構成をさらに詳細に説明する。
[基材]
粘着テープの基材としては、各種の樹脂フィルムが挙げられ、具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン−ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル;ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、アクリル系重合体などから選ばれる1種以上からなる樹脂フィルムが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。基材は、これら樹脂から選ばれる1種又は2種以上の樹脂からなる樹脂フィルムの単層フィルムであってもよく、これらの樹脂フィルムを2種以上積層した積層フィルムであってもよい。
【0018】
また、基材は、ヤング率が1000MPa以上である剛性基材であることが好ましく、より好ましくは1800〜30000MPa、さらに好ましくは2500〜6000MPaである。
このように、基材としてヤング率が高い剛性基材を使用すると、粘着テープによる裏面研削時の振動抑制効果が高く、半導体チップの欠けを防止しやすくなる。また、ヤング率が上記範囲であることで、粘着テープを半導体チップから剥離する際に必要となる応力が小さくなり、テープ剥離時に生じるチップの破損を防止しやすくなる。さらに、粘着テープを半導体ウエハに貼付する際の作業性も良好とすることが可能である。
【0019】
ここで、ヤング率が1000MPa以上の剛性基材としては、上記した樹脂フィルムの中から適宜選択すればよいが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等のフィルムが挙げられる。
これら樹脂フィルムの中でも、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる1種以上を含むフィルムが好ましく、ポリエステルフィルムを含むことがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムを含むことがさらに好ましい。
【0020】
基材の厚さ(D1)は、110μm以下であることが好ましく、15〜110μmであることがより好ましく、20〜105μmであることがさらに好ましい。基材の厚さを110μm以下とすることで、厚さ比(D2/D1)を上記した所定の値に調製しやすくなる。また、15μm以上とすることで、基材が粘着テープの支持体としての機能を果たしやすくなる。
【0021】
また、基材には、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒等を含有させてもよい。また、基材は、透明なものであっても、不透明なものであってもよく、所望により着色又は蒸着されていてもよい。
また、基材の少なくとも一方の表面には、緩衝層及び粘着剤層の少なくとも一方との密着性を向上させるために、コロナ処理等の易接着処理を施してもよい。また、基材は、上記した樹脂フィルムと、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に被膜された易接着層とを有しているものでもよい。
【0022】
易接着層を形成する易接着層形成用組成物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物が挙げられる。易接着層形成用組成物には、必要に応じて、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等を含有してもよい。
易接着層の厚さとしては、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.03〜5μmである。なお、易接着層は、その厚さが基材の厚さに対して小さいことによりヤング率に与える影響が小さく、基材のヤング率は、易接着層を有する場合でも、樹脂フィルムのヤング率と実質的に同一である。
【0023】
[緩衝層]
緩衝層は、半導体ウエハの研削による振動を緩和して、半導体ウエハに割れ及び欠けが生じることを防止する。また、粘着テープを貼付した半導体ウエハは、裏面研削時に、真空テーブル上に配置されるが、粘着テープは緩衝層を設けたことで、真空テーブルに適切に保持されやすくなる。
本発明の緩衝層は、23℃における貯蔵弾性率が100〜1500MPaであることが好ましく、200〜1200MPaであることがより好ましい。また、緩衝層の応力緩和率は、70〜100%が好ましく、78〜98%がより好ましい。
緩衝層が、上記範囲内の貯蔵弾性率及び応力緩和率を有することで、粘着テープが貼付された半導体ウエハをチャックテーブルに適切に保持させることが可能になる。また、裏面研削時に生じる砥石の振動や衝撃を緩衝層が吸収する効果が高くなる。そのため、上記のように、厚さ比(D2/D1)が0.7以下となり緩衝層の厚みが薄い場合でも、裏面研削時に生じるチップ欠けを防止しやすくなる。
【0024】
緩衝層の−5〜120℃における動的粘弾性のtanδの最大値(以下、単に「tanδの最大値」ともいう)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上である。なお、tanδの最大値の上限は、特に限定されないが、通常、2.0以下である。
緩衝層のtanδの最大値が0.7以上であれば、裏面研削時に生じる砥石の振動や衝撃を緩衝層が吸収する効果が高くなる。そのため、先ダイシング法において、半導体ウエハ又は個片化された半導体チップを、極薄になるまで研削しても、チップの角等において欠けが生じたりすることを防止しやすくなる。
なお、tanδは損失正接と呼ばれ、「損失弾性率/貯蔵弾性率」で定義され、動的粘弾性測定装置により対象物に与えた引張り応力やねじり応力等の応力に対する応答によって測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0025】
緩衝層の厚さ(D2)は、8〜70μmであることが好ましく、10〜65μmであることがより好ましく、10〜40μmであることがさらに好ましい。緩衝層の厚さを8μm以上とすることで、緩衝層が裏面研削時の振動を適切に緩衝できるようになる。また、70μm以下であることで、テープ総厚、厚さ比(D2/D1)を上記した所定の値に調製しやすくなる。
【0026】
緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含む緩衝層形成用組成物から形成される層であることが好ましい。緩衝層は、エネルギー線重合性化合物を含むことで、エネルギー線が照射されることで硬化することが可能になる。なお、「エネルギー線」とは、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線を使用する。
また、緩衝層形成用組成物は、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート(a1)、及び環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2)を含むことが好ましい。緩衝層形成用組成物は、これら2成分を含有しつつ、緩衝層の厚さ(D2)及び基材の厚さ(D1)を上記した範囲とすることで、押し込み深さ(X)を2.5μm以下としやすくなる。さらには、緩衝層の弾性率、緩衝層の応力緩和率、及びtanδの最大値を上記した範囲内としやすくなる。また、緩衝層形成用組成物は、これら観点から、上記(a1)及び(a2)成分に加えて、官能基を有する重合性化合物(a3)を含有することがより好ましい。
また、緩衝層形成用組成物は、上記(a1)及び(a2)又は(a1)〜(a3)成分に加えて、光重合開始剤を含有することがさらに好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤や樹脂成分を含有してもよい。
以下、緩衝層形成用組成物中に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0027】
(ウレタン(メタ)アクリレート(a1))
ウレタン(メタ)アクリレート(a1)としては、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有するものである。ウレタン(メタ)アクリレート(a1)は、オリゴマー等のポリマーである。
【0028】
成分(a1)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜60,000、更に好ましくは3,000〜20,000である。また、成分(a1)中の(メタ)アクリロイル基数(以下、「官能基数」ともいう)としては、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、単官能又は2官能であることが好ましい。
成分(a1)は、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、成分(a1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
成分(a1)の原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。具体的なポリオール化合物としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリエステル型ジオールがより好ましい。
【0030】
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0031】
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(a1)を得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0032】
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0033】
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60〜100℃で、1〜4時間反応させる条件が好ましい。
緩衝層形成用組成物中の成分(a1)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜55質量%、より更に好ましくは30〜50質量%である。
【0034】
(環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物(a2))
成分(a2)は、環形成原子数6〜20の脂環基又は複素環基を有する重合性化合物であり、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。この成分(a2)を用いることで、得られる緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させることができる。
【0035】
成分(a2)が有する脂環基又は複素環基の環形成原子数は、好ましくは6〜20であるが、より好ましくは6〜18、更に好ましくは6〜16、より更に好ましくは7〜12である。当該複素環基の環構造を形成する原子としては、例えば、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
なお、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造の化合物の当該環自体を構成する原子の数を表し、環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子に結合した水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。
【0036】
具体的な成分(a2)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等の脂環基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等の複素環基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
なお、成分(a2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、脂環基含有(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0037】
緩衝層形成用組成物中の成分(a2)の含有量は、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜55質量%、より更に好ましくは30〜50質量%である。
【0038】
(官能基を有する重合性化合物(a3))
成分(a3)は、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有する重合性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
成分(a3)は、成分(a1)との相溶性が良好であり、緩衝層形成用組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすくなる。また、当該組成物から形成される緩衝層の弾性率やtanδの値を上記した範囲としやすくなり、緩衝層を比較的薄くしても緩衝性能が良好になる。
成分(a3)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物、アミド基含有化合物、アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらの中では、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
アミド基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する水酸基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
なお、成分(a3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
緩衝層形成用組成物中の成分(a3)の含有量は、緩衝層の弾性率及び応力緩和率を上述の範囲としやすくし、かつ、緩衝層形成用組成物の成膜性を向上させるために、緩衝層形成用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは7〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、より更に好ましくは13〜25質量%である。
また、緩衝層形成用組成物中の成分(a2)と成分(a3)との含有量比〔(a2)/(a3)〕は、好ましくは0.5〜3.0、より好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.3〜3.0、より更に好ましくは1.5〜2.8である。
【0042】
(成分(a1)〜(a3)以外の重合性化合物)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(a1)〜(a3)以外のその他の重合性化合物を含有してもよい。
その他の重合性化合物としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル化合物:等が挙げられる。なお、これらのその他の重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
緩衝層形成用組成物中のその他の重合性化合物の含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0044】
(光重合開始剤)
緩衝層形成用組成物には、緩衝層を形成する際、光照射による重合時間を短縮させ、また、光照射量を低減させる観点から、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8−クロールアンスラキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
緩衝層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0045】
(その他の添加剤)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、緩衝層形成用組成物中の各添加剤の含有量は、エネルギー線重合性化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0046】
(樹脂成分)
緩衝層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂成分を含有してもよい。樹脂成分としては、例えば、ポリエン・チオール系樹脂や、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、及びスチレン系共重合体等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。緩衝層形成用組成物中のこれらの樹脂成分の含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0047】
[粘着剤層]
粘着剤層は、23℃における弾性率が0.10〜0.50MPaであるものが好ましい。半導体ウエハの表面には、回路等が形成され通常凹凸がある。粘着テープは、弾性率が上記範囲内となることで、凹凸があるウエハ表面に貼付される際、ウエハ表面の凹凸と粘着剤層とを十分に接触させ、かつ粘着剤層の接着性を適切に発揮させることが可能になる。そのため、粘着テープの半導体ウエハへの固定を確実に行い、かつ裏面研削時にウエハ表面を適切に保護することが可能になる。これらの観点から、粘着剤層の弾性率は、0.12〜0.35MPaであることがより好ましい。なお、粘着剤層の弾性率とは、粘着剤層がエネルギー線硬化性粘着剤から形成される場合には、エネルギー線照射による硬化前の弾性率を意味し、後述する実施例の測定法により測定されて得た貯蔵弾性率の値である。
【0048】
粘着剤層の厚さ(D3)は、70μm以下が好ましく、40μm未満であることがより好ましく、35μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。また、厚さ(D3)は、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましい。粘着剤層をこのように薄くすると、粘着テープにおいて剛性の低い部分の割合が少なくなる。そのため、上記した押し込み深さ(X)が大きくなりにくくなって、裏面研削時に生じる半導体チップの欠けを一層防止しやすくなる。また、テープ総厚を後述するように比較的薄くすることが可能である。
【0049】
粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等から形成されるが、アクリル系粘着剤が好ましい。
また、粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤から形成されることが好ましい。粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤から形成されることで、エネルギー線照射による硬化前には、23℃における弾性率を上記範囲に設定しつつ、硬化後においては粘着テープを半導体チップから剥離しやすくすることが可能である。
【0050】
エネルギー線硬化性粘着剤としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(「粘着性樹脂I」ともいう)に加え、粘着性樹脂以外のエネルギー線硬化性化合物を含むエネルギー線硬化性粘着剤組成物(以下、「X型の粘着剤組成物」ともいう)が使用可能である。また、エネルギー線硬化性粘着剤として、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂の側鎖に不飽和基を導入したエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(以下、「粘着性樹脂II」ともいう)を主成分として含み、粘着性樹脂以外のエネルギー線硬化性化合物を含まない粘着剤組成物(以下、「Y型の粘着剤組成物」ともいう)を使用してもよい。
さらに、エネルギー線硬化性粘着剤としては、X型とY型の併用型、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着性樹脂IIに加え、粘着性樹脂以外のエネルギー線硬化性化合物も含むエネルギー線硬化性粘着剤組成物(以下、「XY型の粘着剤組成物」ともいう)を使用してもよい。
これらの中では、XY型の粘着剤組成物を使用することが好ましい。XY型のものを使用することで、硬化前においては十分な粘着特性を有する一方で、硬化後においては、半導体ウエハに対する剥離力を十分に低くすることが可能である。
ただし、粘着剤としては、エネルギー性を照射しても硬化しない非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物から形成してもよい。非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物は、少なくとも非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂Iを含有する一方、上記したエネルギー線硬化性の粘着性樹脂II及びエネルギー線硬化性化合物を含有しないものである。
【0051】
なお、以下の説明において“粘着性樹脂”は、上記した粘着性樹脂I及び粘着性樹脂IIの一方又は両方を指す用語として使用する。具体的な粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂が好ましい。
以下、粘着性樹脂として、アクリル系樹脂が使用されるアクリル系粘着剤についてより詳述に説明する。
【0052】
アクリル系樹脂には、アクリル系重合体(b)が使用される。アクリル系重合体(b)は、少なくともアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを重合して得たものであり、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む。アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1〜20のものが挙げられ、アルキル基は直鎖であってもよいし、分岐であってもよい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)メタクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
また、アクリル系重合体(b)は、粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4以上であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むことが好ましい。該アルキル(メタ)アクリレートの炭素数としては、好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜6である。また、アルキル基の炭素数が4以上であるアルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレートであることが好ましい。
アクリル系重合体(b)において、アルキル基の炭素数が4以上であるアルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系重合体(b)を構成するモノマー全量(以下単に“モノマー全量”ともいう)に対して、好ましくは40〜98質量%、より好ましくは45〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。
【0054】
アクリル系重合体(b)は、アルキル基の炭素数が4以上であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位に加えて、粘着剤層の弾性率や粘着特性を調整するために、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む共重合体であることが好ましい。なお、該アルキル(メタ)アクリレートは、炭素数1又は2のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートが最も好ましい。アクリル系重合体(b)において、アルキル基の炭素数が1〜3であるアルキル(メタ)アクリレートは、モノマー全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜26質量%、更に好ましくは6〜22質量%である。
【0055】
アクリル系重合体(b)は、上記したアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位に加えて、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。官能基含有モノマーの官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。官能基含有モノマーは、後述の架橋剤と反応し、架橋起点となったり、不飽和基含有化合物と反応して、アクリル系重合体(b)の側鎖に不飽和基を導入させたりすることが可能である。
官能基含有モノマーとしては、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0056】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物、2−カルボキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0057】
官能基モノマーは、アクリル系重合体(b)を構成するモノマー全量に対して、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは3〜32質量%、更に好ましくは6〜30質量%である。
また、アクリル系重合体(b)は、上記以外にも、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等の上記のアクリル系モノマーと共重合可能なモノマー由来の構成単位を含んでもよい。
【0058】
上記アクリル系重合体(b)は、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂I(アクリル系樹脂)として使用することができる。また、エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂としては、上記アクリル系重合体(b)の官能基に、光重合性不飽和基を有する化合物(不飽和基含有化合物ともいう)を反応させたものが挙げられる。
不飽和基含有化合物は、アクリル系重合体(b)の官能基と結合可能な置換基、及び光重合性不飽和基の双方を有する化合物である。光重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、不飽和基含有化合物が有する、官能基と結合可能な置換基としては、イソシアネート基やグリシジル基等が挙げられる。したがって、不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、不飽和基含有化合物は、アクリル系重合体(b)の官能基の一部に反応することが好ましく、具体的には、アクリル系重合体(b)が有する官能基の50〜98モル%に、不飽和基含有化合物を反応させることが好ましく、55〜93モル%反応させることがより好ましい。このように、エネルギー線硬化性アクリル系樹脂において、官能基の一部が不飽和基含有化合物と反応せずに残存することで、架橋剤によって架橋されやすくなる。
なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万〜160万、より好ましくは40万〜140万、更に好ましくは50万〜120万である。
【0059】
(エネルギー線硬化性化合物)
X型又はXY型の粘着剤組成物に含有されるエネルギー線硬化性化合物としては、分子内に不飽和基を有し、エネルギー線照射により重合硬化可能なモノマー又はオリゴマーが好ましい。
このようなエネルギー線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
これらの中でも、比較的分子量が高く、粘着剤層の弾性率を低下させにくい観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
エネルギー線硬化性化合物の分子量(オリゴマーの場合は重量平均分子量)は、好ましくは100〜12000、より好ましくは200〜10000、更に好ましくは400〜8000、より更に好ましくは600〜6000である。
【0060】
X型の粘着剤組成物におけるエネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは40〜200質量部、より好ましくは50〜150質量部、更に好ましくは60〜90質量部である。
一方で、XY型の粘着剤組成物におけるエネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜20質量部、更に好ましくは3〜15質量部である。XY型の粘着剤組成物では、粘着性樹脂が、エネルギー線硬化性であるため、エネルギー線硬化性化合物の含有量が少なくても、エネルギー線照射後、十分に剥離力を低下させることが可能である。
【0061】
(架橋剤)
粘着剤組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、例えば粘着性樹脂が有する官能基モノマー由来の官能基に反応して、粘着性樹脂同士を架橋するものである。架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等、及びそれらのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤;エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤;アルミニウムキレート等のキレート系架橋剤;等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋反応を促進させる観点から、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜7質量部、更に好ましくは0.05〜4質量部である。
【0062】
(光重合開始剤)
また、粘着剤組成物がエネルギー線硬化性である場合には、粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することで、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線でも、粘着剤組成物の硬化反応を十分に進行させることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8−クロールアンスラキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜5質量部、更に好ましくは0.05〜5質量部である。
【0063】
(その他の添加剤)
粘着性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、添加剤の配合量は、粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部である。
【0064】
また、粘着性組成物は、基材や剥離シートへの塗布性を向上させる観点から、更に有機溶媒で希釈して、粘着性組成物の溶液の形態としてもよい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、粘着性樹脂の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、該粘着剤組成物の溶液を均一に塗布できるように、合成時に使用された有機溶媒以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0065】
[剥離シート]
粘着テープの表面には、剥離シートが貼付されていてもよい。剥離シートは、具体的には、粘着テープの粘着剤層の表面、及び緩衝層の表面の少なくとも一方に貼付される。剥離シートは、これら表面に貼付されることで粘着剤層及び緩衝層を保護する。剥離シートは、剥離可能に粘着テープに貼付されており、粘着テープが使用される前(すなわち、ウエハ裏面研削前)には、粘着テープから剥離されて取り除かれる。
剥離シートは、少なくとも一方の面が剥離処理をされた剥離シートが用いられ、具体的には、剥離シート用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離シート用基材としては、樹脂フィルムが好ましく、当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜150μmである。
【0066】
粘着テープのテープ総厚は、特に限定されないが、好ましくは30〜300μmである。粘着テープのテープ総厚を上記範囲内とすることで、粘着剤層の粘着性能及び緩衝層の衝撃吸収性能を適切に維持して、粘着テープとしての機能を十分に発揮することが可能になる。以上の観点から、テープ総厚は、より好ましくは40〜220μm、さらに好ましく45〜160μmである。粘着テープは、テープ総厚を160μm以下とすることで、半導体チップを粘着テープから剥離する際の剥離力を小さくしやすくなる。
なお、本明細書において、テープ総厚とは、半導体ウエハに貼付され、半導体ウエハを研削する際に、粘着テープに含有される層の合計厚さを意味する。したがって、粘着テープに剥離可能に貼付された剥離シートが設けられる場合には、その剥離シートの厚さは総厚に含まれない。通常、粘着テープの総厚は、基材と、粘着剤層と、緩衝層の合計厚さである。
【0067】
(粘着テープの製造方法)
本発明の粘着テープの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、剥離シート上に設けた緩衝層と、剥離シート上に設けた粘着剤層とを、基材の両面それぞれに貼り合わせ、緩衝層及び粘着剤層の両表面に剥離シートが貼付された粘着テープを製造することができる。緩衝層及び粘着剤層の両表面に貼付される剥離シートは、粘着テープの使用前に適宜剥離して除去すればよい。
剥離シート上に緩衝層又は粘着剤層を形成する方法としては、剥離シート上に緩衝層形成用組成物又は粘着剤(粘着剤組成物)を、公知の塗布方法にて、直接塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜にエネルギー線を照射し、又は加熱乾燥することで、緩衝層又は粘着剤層を形成することができる。
【0068】
また、基材の両面それぞれに、緩衝層形成用組成物及び粘着剤(粘着剤組成物)それぞれを直接塗布して、緩衝層及び粘着剤層を形成してもよい。さらには、基材の一方の面に、緩衝層形成用組成物又は粘着剤(粘着剤組成物)を直接塗布して緩衝層及び粘着剤層を形成するとともに、基材の他方の面に、剥離シート上に設けた粘着剤層又は緩衝層を貼り合せてもよい。
【0069】
緩衝層形成用組成物及び粘着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。また、塗布性を向上させるために、緩衝層形成用組成物や粘着剤組成物に対して有機溶媒を配合し、溶液の形態として、剥離シート上に塗布してもよい。
【0070】
緩衝層形成用組成物がエネルギー線重合性化合物を含む場合、緩衝層形成用組成物の塗布膜に対して、エネルギー線を照射することで硬化させ、緩衝層を形成することが好ましい。緩衝層の硬化は、一度の硬化処理で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。例えば、剥離シート上の塗布膜を完全に硬化させて緩衝層を形成した後に基材に貼り合わせてもよく、当該塗布膜を完全に硬化させずに半硬化の状態の緩衝層形成膜を形成し、当該緩衝層形成膜を基材に貼り合わせた後、再度エネルギー線を照射して完全に硬化させて緩衝層を形成してもよい。当該硬化処理で照射するエネルギー線としては、紫外線が好ましい。なお、硬化する際は、緩衝層形成用組成物の塗布膜が暴露された状態でもよいが、剥離シートや基材で塗布膜が覆われ、塗布膜が暴露されない状態でエネルギー線を照射して硬化することが好ましい。
【0071】
[半導体装置の製造方法]
本発明の粘着テープは、上記したように、先ダイシング法において、半導体ウエハの表面に貼付してウエハの裏面研削が行われる際に使用されるものであるが、より具体的には、半導体装置の製造方法において使用される。
【0072】
本発明の半導体装置の製造方法は、具体的には、以下の工程1〜工程4を少なくとも備える。
工程1:上記の粘着テープを、半導体ウエハの表面に貼付する工程
工程2:半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は半導体ウエハの表面若しくは裏面から半導体ウエハ内部に改質領域を形成する工程
工程3:粘着テープが表面に貼付され、かつ上記溝又は改質領域が形成された半導体ウエハを、裏面側から研削して、溝又は改質領域を起点として複数のチップに個片化させる工程
工程4:個片化された半導体ウエハ(すなわち、複数の半導体チップ)から、粘着テープを剥離する工程
【0073】
以下、上記半導体装置の製造方法の各工程を詳細に説明する。
(工程1)
工程1では、半導体ウエハ表面に、本発明の粘着テープを粘着剤層を介して貼付する。本工程は、後述する工程2の前に行われてもよいが、工程2の後に行ってもよい。例えば、半導体ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1を工程2の前に行うことが好ましい。一方で、半導体ウエハ表面に、ダイシング等により溝を形成する場合には、工程2の後に工程1を行う。すなわち、後述する工程2で形成した溝を有するウエハの表面に、本工程1にて粘着テープを貼付することになる。
本製造方法で用いられる半導体ウエハはシリコンウエハであってもよいし、またガリウム・砒素などのウエハや、ガラスウエハであってもよい。半導体ウエハの研削前の厚さは特に限定されないが、通常は500〜1000μm程度である。また、半導体ウエハは、通常、その表面に回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。
【0074】
(工程2)
工程2では、半導体ウエハの表面側から溝を形成し、又は半導体ウエハの表面又は裏面から半導体ウエハの内部に改質領域を形成する。
本工程で形成される溝は、半導体ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のウエハダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。また、半導体ウエハは、後述する工程3において、溝に沿って複数の半導体チップに分割される。
また、改質領域は、半導体ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、半導体ウエハが薄くなったり、研削による力が加わったりすることにより半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化される起点となる領域である。すなわち、工程2において溝及び改質領域は、後述する工程3において、半導体ウエハが分割されて半導体チップに個片化される際の分割線に沿うように形成される。
改質領域の形成は、半導体ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射により行い、改質領域は、半導体ウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、半導体ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程2を工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、粘着テープを介して半導体ウエハにレーザーを照射することになる。
粘着テープが貼付され、かつ溝又は改質領域を形成した半導体ウエハは、チャックテーブル上に載せられ、チャックテーブルに吸着されて保持される。この際、半導体ウエハは、表面側がテーブル側に配置されて吸着される。
【0075】
(工程3)
上記工程1、2の後、チャックテーブル上の半導体ウエハの裏面を研削して、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化する。
ここで、裏面研削は、半導体ウエハに溝が形成される場合には、少なくとも溝の底部に至る位置まで半導体ウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、半導体ウエハは切り込みにより分割されて、個々の半導体チップに個片化される。
一方、改質領域が形成される場合には、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点として半導体ウエハが破壊されて半導体チップに個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。例えば、半導体チップの実際の個片化は、後述するビップアップテープを貼付してからビップアップテープを延伸することで行ってもよい。
【0076】
個片化された半導体チップの形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化された半導体チップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5〜100μm程度であるが、より好ましくは10〜45μmである。また、個片化された半導体チップの大きさは、特に限定されないが、チップサイズが好ましくは50mm2未満、より好ましくは30mm2未満、さらに好ましくは10mm2未満である。
本発明の粘着テープを使用すると、このように薄型及び/又は小型の半導体チップであっても、裏面研削時(工程3)に半導体チップに欠けが生じることが防止される。
【0077】
(工程4)
次に、個片化された半導体ウエハ(すなわち、複数の半導体チップ)から、半導体加工用粘着テープを剥離する。本工程は、例えば、以下の方法により行う。
まず、粘着テープの粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤から形成される場合には、エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化する。次いで、個片化された半導体ウエハの裏面側に、ピックアップテープを貼付し、ピックアップが可能なように位置及び方向合わせを行う。この際、ウエハの外周側に配置したリングフレームもピックアープテープに貼り合わせ、ピックアップテープの外周縁部をリングフレームに固定する。ピックアップテープには、ウエハとリングフレームを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ上に固定された複数の半導体チップから粘着テープを剥離する。
その後、ピックアップテープ上にある複数の半導体チップをピックアップし基板等の上に固定化して、半導体装置を製造する。
なお、ピックアップテープは、特に限定されないが、例えば、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層を備える粘着シートによって構成される。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0079】
本発明における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
[質量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0080】
[押し込み深さ(X)の測定]
ダイナミック微小硬度計(島津製作所(株)製、製品名「DUH−W201S」)、及び圧子として、先端曲率半径100nm、稜間角115°の三角錐形状圧子を使用し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で測定した。
具体的には、緩衝層が剥離シートで保護されている場合にはその剥離シートを除去した後、ダイナミック微小硬度計のガラスプレート上に、粘着テープの緩衝層が表出するように設置し、当該緩衝層に対して、上記三角錐形状圧子の先端を10μm/分の速度で押し込み、圧縮荷重が2mNに到達した際の押し込み深さ(X)の測定を行った。
【0081】
[基材のヤング率]
試験速度200mm/分でJISK−7127(1999)に準拠して、基材のヤング率を測定した。
【0082】
[緩衝層の弾性率、及びtanδの最大値]
基材の代わりに、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP−PET381031」、厚さ:38μm)を用い、かつ、得られる緩衝層の厚さを200μmとした以外は、後述する実施例、比較例の緩衝層と同様の方法で、試験用緩衝層を作製した。試験用緩衝層上の剥離シートを除去した後、所定の大きさに切断した試験片を用いて、動的粘弾性装置(オリエンテック社製、商品名「Rheovibron DDV−II−EP1」)により、周波数11Hzで、温度範囲−20〜150℃における、損失弾性率及び貯蔵弾性率を測定した。
各温度の「損失弾性率/貯蔵弾性率」の値を、その温度のtanδとして算出し、−5〜120℃の範囲におけるtanδの最大値を、「緩衝層のtanδの最大値」とした。
[緩衝層の応力緩和率]
上記と同様に試験用緩衝層を剥離シート上に作製し、15mm×140mmにカットしてサンプルを形成した。万能引張試験機(SHIMADZU社製オートグラフAG−10kNIS)を用いて、このサンプルの両端20mmを掴み、毎分200mmの速度で引っ張り、10%伸張したときの応力A(N/m2)と、テープの伸張停止から1分後の応力B(N/m2)とを測定した。これらの応力A、Bの値から、(A−B)/A×100(%)を応力緩和率として算出した。
【0083】
[粘着剤層の弾性率]
粘弾性測定装置(Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDAII」)を用いて、実施例及び比較例で用いた粘着剤組成物の溶液から形成された単層の粘着剤層を積層させて得た直径8mm×厚さ3mmサイズのサンプルを、1Hzで23℃の環境下で貯蔵弾性率G’をねじりせん断法により測定し、得られた値を粘着剤層の弾性率とした。
【0084】
[粘着テープの厚さ測定]
定圧厚さ測定器(テクロック社製、PG−02)により粘着テープの総厚、基材、粘着剤層、及び緩衝層の厚さを測定した。この際、任意の10点を測定し、平均値を算出した。
なお、本実施例において、粘着テープの総厚は、剥離シート付き粘着テープの厚さを測定し、その厚さから剥離シートの厚さを減じた値である。さらに、緩衝層の厚さは、緩衝層付き基材の厚さから、基材の厚さを減じた値である。また、粘着剤層の厚さは、粘着テープ総厚から緩衝層及び基材の厚さを減じた値である。
【0085】
[チッピング試験1]
直径12インチ(30.48cm)のシリコンウエハのウエハ表面から溝を形成し、その後粘着テープをウエハ表面に貼付して、裏面研削によりウエハを個片化する、先ダイシング法により厚さ30μm、チップサイズ1mm角のチップに個片化した。その後粘着テープを剥離せず、ウエハ研削面から個片化されたチップの角部分をデジタル顕微鏡(株式会社キーエンス製 VE−9800)により観察し、各チップの角のチッピングの有無を観察し、700チップにおけるチッピング発生率を測定し、以下の評価基準で評価した。
A:1.0%未満、B:1.0〜2.0%、C:2.0%超
【0086】
[チップクラック試験2]
まず、直径12インチ(30.48cm)のシリコンウエハ表面に粘着テープを貼付した。次に、粘着テープを貼付した面の反対側の面からレーザーソーを用い、シリコンウエハに格子状の改質領域を形成した。なお、格子サイズは1mm角とした。続いて、裏面研削装置を用いて、厚みが30μmになるまで研削し、1mm角のチップに個片化した。研削工程後にエネルギー線照射を行い、粘着テープの貼付面の反対面にダイシングテープ(リンテック株式会社、製品名「D−821HS」)を貼付後、粘着テープを剥離せず、ダイシングテープ越しに個片化されたチップをデジタル顕微鏡により観察し、各チップ角のチップクラックの有無を観察し、700チップにおけるチップクラック発生率を測定し、以下の評価基準で評価した。
A:1.0%未満、B:1.0〜2.0%、C:2.0%超
【0087】
なお、以下の実施例、及び比較例の質量部は全て固形分値である。
[実施例1]
(1)ウレタンアクリレート系オリゴマーの合成
ポリエステルジオールと、イソホロンジイソシアネートを反応させて得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて、質量平均分子量(Mw)5000の2官能のウレタンアクリレート系オリゴマー(UA−1)を得た。
(2)緩衝層形成用組成物の調製
上記で合成したウレタンアクリレート系オリゴマー(UA−1)40質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)40質量部、及びフェニルヒドロキシプロピルアクリレート(HPPA)20質量部を配合し、さらに光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名「イルガキュア184」)2.0質量部、及びフタロシアニン系顔料0.2質量部を配合し、緩衝層形成用組成物を調製した。
(3)粘着剤組成物の調製
ブチルアクリレート(BA)52質量部、メチルメタクリレート(MMA)20質量部、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)28質量部を共重合して得たアクリル系重合体(b)に、アクリル系重合体(b)の全水酸基のうち90モル%の水酸基に付加するように、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂(重量平均分子量:50万)を得た。
このエネルギー線硬化性のアクリル系樹脂100質量部に、エネルギー線硬化性化合物である多官能ウレタンアクリレート(商品名.シコウUT−4332、日本合成化学工業株式会社製)6重量部、イソシアネート系架橋剤(トーヨーケム株式会社製、商品名:BHS−8515)を固形分基準で0.375質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドからなる光重合開始剤1重量部を添加し、溶剤で希釈することにより粘着剤組成物の塗工液を調整した。
(4)粘着テープの作製
基材としての厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ヤング率:2500MPa)の一方の面に、上記で得た緩衝層形成用組成物を塗工し、かつ照度160mW/cm2、照射量500mJ/cm2の条件で紫外線照射をすることで緩衝層形成用組成物を硬化させて、厚さ13μmの緩衝層を得た。
また、剥離シート基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである剥離シート(リンテック株式会社製、商品名:SP−PET381031)の剥離処理面に、上記で得た粘着剤組成物の塗工液を乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工し、加熱乾燥させて、剥離シート上に粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、緩衝層付き基材の他方の面に貼付して、剥離シート付き粘着テープを得た。
なお、実施例1における粘着剤層の23℃における弾性率は、0.15MPaであった。また、緩衝層の貯蔵弾性率は250MPa、応力緩和率は90%、tanδの最大値は1.24であった。
【0088】
[実施例2〜9、比較例1〜9]
基材、緩衝層、及び粘着剤層の厚さを表1に記載されるように変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
なお、各実施例及び比較例において基材としては、実施例1と同様のヤング率を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。
【0089】
【表1】

表中の“−”は未実施であることを示す。
【0090】
以上のように、実施例1〜9では、粘着テープの厚さ比(D2/D1)を0.7以下で、かつ押し込み深さ(X)を2.5μm以下としたことで、先ダイシング法において、半導体ウエハを裏面研削してチップに個片化する際のチップ欠けを防止できた。一方で、比較例1〜9では、厚さ比(D2/D1)及び押し込み深さ(X)が所定範囲内でないため、チップ欠けを十分に防止することができなかった。