特許第6375090号(P6375090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375090
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】開き扉の施解錠機構
(51)【国際特許分類】
   E05C 19/02 20060101AFI20180806BHJP
   E05B 13/00 20060101ALI20180806BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20180806BHJP
   E05B 17/14 20060101ALI20180806BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
   E05C19/02 A
   E05B13/00 B
   E05B65/00 A
   E05B17/14
   E05F5/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-231899(P2016-231899)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-87467(P2018-87467A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基次
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−206196(JP,A)
【文献】 特開2012−149476(JP,A)
【文献】 特開2011−214370(JP,A)
【文献】 特開2008−308943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00−21/02
E05B 1/00−85/28
E05F 1/00−13/04
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に開設した開口を開閉する開き扉の戸先側木口部において、前記壁体の外側に鍵穴を臨ませて前記開き扉に設置され、上記鍵穴にを差し込んで、前記開き扉の施錠及び解錠を行う装置と、
前記壁体の外側から前記鍵穴を臨む開き角度である施解錠操作位置と、前記開き扉が収納状態である閉扉位置との間で、前記開き扉を移動自在に案内する開ガイド装置と、を備える開き扉の施解錠機構において、
前記開ガイド装置は、
前記開き扉の前記閉扉位置におけるロック状態と、前記ロック状態の解除との切替機構を有するロック手段と、
前記開き扉を前記施解錠操作位置と閉扉位置との間を移動させるスライド装置と、を備え、
前記ロック手段及び前記スライド装置は、前記開ガイド装置の取付フレームに設けられており、
前記スライド装置は、スライダと、前記開き扉の移動を抑制するための、前記スライダの移動方向と反対方向に摩擦力を発生させる制動部材である摺接突起を一体として備え、
前記開ガイド装置の取付フレームには、前記摺突起と摺接する第2の制動部材である凸条を一体として備えること、を特徴とする開き扉の施解錠機構。
【請求項2】
前記ロック手段は、前記開き扉を前記閉扉位置でロックするとともに、前記開き扉をロック解除位置まで押し込むことでロックを解除するプッシュラッチ構造であること、を特徴とする請求項1に記載の開き扉の施解錠機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパネルを列設して構築した壁体における開き扉の施解錠機構に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のビル建築物では、複数の金属製パネルを列設させ、突出部が生じないように一面フラットに室内壁を構築している。そのため、配電盤やパイプユニット等の各種設備の点検口を開閉する開き扉の設置個所も、施解錠操作のためのドアハンドルのような突起物が扉の表面に突出することなく、一見して壁のように見える外観であることが要請されている。そこで、出願人は、閉状態において開き扉の外側に施解錠操作用ハンドルのような突出物のない美的外観を得られる一方、開き扉を外側から容易に施解錠できる開き扉の施解錠機構を発明した。
【0003】
すなわち、この開き扉の施解錠機構は、戸先側縦框の内側に組み付ける錠装置と、当該錠装置と開き扉の戸先側に隣接した袖パネルの扉側縦框に取り付けるプッシュラッチを備え、上記錠装置は、鍵穴を取付穴から外側に臨ませて戸先側縦框に設置する錠前と、当該錠前の鍵を鍵穴に差し込んで回動した場合に、開き扉の施錠位置又は解錠位置に鍵と一体に回動する施錠レバーを備えている。そして、上記プッシュラッチは、先端に施錠レバーが施錠位置に回動すると係止するフックを有するスライダと、当該スライダを直線往復移動可能に収納する本体ケースと、当該本体ケース内から前進する方向にスライダを常時付勢する付勢ばねと、施錠レバーがフックに係止して直線往復移動するスライダを案内するガイド手段を備えている。また、上記ガイド手段は、基端部を本体ケースに取り付けたガイドピンの先端部をスライダに刻設したガイド溝に係止し、閉時、開き扉を押圧してスライダが付勢ばねに抗して後退すると、ガイドピンの先端部をガイド溝の往路を通して第1ラッチ位置に案内してスライダをロックする一方、開時、開き扉を再押圧すると、ロック解除されるスライダが付勢ばねのばね復帰力により前進し、ガイドピンの先端部をガイド溝の復路を通して第2ラッチ位置に案内してスライダをロックする構成とし、これら第1ラッチ位置と第2ラッチ位置との間をスライダが直線往復移動するストロークを開き扉の扉厚に合わせて設定している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−206196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記開き扉の施解錠機構によれば、施解錠操作のためのハンドル等を使用しなくても、支障なく簡単に開き扉を開けることができ、しかも、開き扉が半開きの状態において戸先側縦框と袖パネルの扉側縦框とが密接したロック状態となっているため、悪戯されることなく安全に施解錠操作することができる。
【0006】
しかし、開き扉を開放する際には、勢いよく、かつ、必要以上に広い間隔となるように開放される場合がある。このとき、側方に人がいる場合には、衝突する等の事態が想定されうることが懸念されていた。
また、開き扉を開け、解錠するために鍵穴に鍵を挿入した状態において、意図せずに扉を閉める向きに力を作用させてしまう場合がある。その場合には、鍵の頭部が誤って目地部の両縁に衝突し、当該目地部に傷がつき美感が損なわれる等の問題点を有していた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、開扉時において想定範囲内の間隔で、緩やかに開けられるとともに、開扉時又は開扉終了後において、閉扉する向きに意図しない力が作用した場合であっても、容易に閉まることがないようにした開き扉の施解錠機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の開き扉の施解錠機構(以下、「本施解錠機構」という場合がある。)は、壁体に開設した開口を開閉する開き扉の戸先側木口部において、上記壁体の外側に鍵穴を臨ませて上記開き扉に設置され、上記鍵穴にを差し込んで、上記開き扉の施錠及び解錠を行う装置と、上記壁体の外側から上記鍵穴を臨む開き角度である施解錠操作位置と、上記開き扉が収納状態である閉扉位置との間で、上記開き扉を移動自在に案内する開ガイド装置と、を備える開き扉の施解錠機構において、上記開ガイド装置は、上記開き扉の上記閉扉位置におけるロック状態と、上記ロック状態の解除との切替機構を有するロック手段と、上記開き扉を上記施解錠操作位置と閉扉位置との間を移動させるスライド装置と、を備え、上記ロック手段及び上記スライド装置は、上記開ガイド装置の取付フレームに設けられており、上記スライド装置は、スライダと、上記開き扉の移動を抑制するための、上記スライダの移動方向と反対方向に摩擦力を発生させる制動部材である摺接突起を一体として備えること、を特徴としている。
【0009】
本施解錠機構によれば、開ガイド装置におけるスライド手段に、当該開き扉の移動を抑制するための制動部材を備えているため、作用した力に抗する抵抗力を発生させることにより、開き扉の移動量及び移動速度を適切に抑制させることができる。したがって、開き扉の開扉時において、所定間隔以上に開扉されることや、突発的に開扉することを防止することができるため、安全性を向上させることができる。また、開扉時又は開扉終了後において、閉扉する向きに意図しない力が作用した場合であっても、容易に閉まることを防止することができる。
【0010】
さらに、制動部材は、スライド手段自体に一体として設けられているため、部品数を減らして、簡易な構造を実現することができる。
【0011】
また、本施解錠機構において、上記ロック手段は、上記開き扉を上記閉扉位置でロックするとともに、上記開き扉をロック解除位置まで押し込むことでロックを解除するプッシュラッチ構造であってもよい。
【0012】
本発明によれば、上記ロック手段は、開き扉の押圧動作でロックと、当該ロックの解除を交互に行うことが可能であるプッシュラッチ構造を採用するとともに、制動部材は、スライド手段の移動方向と反対方向に摩擦力を発生させる摺接部材として構成することで、簡易な構造とすることができる。
【0013】
また、本施解錠機構において、上記開ガイド装置の取付フレームには、上記摺突起と摺接する第2の制動部材である凸条を一体として備える構成とすれば、好適である。
【0014】
なお、本施解錠機構において、上記錠装置の基端部に連結され、当該基端部と先端部間に回動規制部を設けるクランクと、当該クランクに回動可能に枢着し、上記スライド手段の受具に係脱させることにより上記開き扉を施解錠するフック部及び廻り止め部を備えたリンクと、を有するレバー部材を備え、上記開ガイド装置は、上記開き扉を解錠操作位置に案内したとき、上記レバー部材のフック部が突き当たる高さ位置の壁体側に上記受具が設けられており、上記レバー部材は、常時、当該受具に上記フック部が係止する向きに回動付勢する一方、上記廻り止め部が上記クランクの回動規制部に突設して、上記フック部が施錠姿勢位置に位置決め保持され、上記開き扉を閉めて上記フック部が上記記受具に突設した場合に、当該フック部が上記受具に係止する構成とすることにより、開き扉を自動的に施錠することができる。
【0015】
また、本施解錠機構において、上記レバー部材は、解錠時において、上記リンクを解錠方向に回動して起立状態の解錠姿勢位置に保持し、当該リンクに可撓性を有する戻り止め部材を装着し、当該戻り止め部材が上記クランクの回動規制部に突き当った回動抑制状態で、上記リンクを起立状態の解錠姿勢位置に保持することができるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、開扉時において想定範囲内の間隔で開けられるとともに、開扉時等において、閉扉する向きに意図しない力が作用した場合であっても、容易に閉まることがないようにした開き扉の施解錠機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の開き扉の施解錠機構を適用した壁体の斜視図である。
図2】本発明の開き扉の施解錠機構を適用した壁体の平面図である。
図3】開閉ガイド装置を示す分解斜視図である。
図4】開閉ガイド装置を示す斜視図である。
図5装置を示す分解斜視図である。
図6】本発明の開き扉の施解錠機構を示す側面図である。
図7】開閉ガイド装置の動作を示す一部を省略した側面図であり、(a)は、開き扉が閉まっている状態、(b)は、開き扉を開ける動作を開始した状態である。
図8】開閉ガイド装置の動作を示す一部を省略した側面図であり、(a)は、開き扉が半開した状態、(b)は、開き扉が全開した状態である。
図9】本発明の開き扉の施解錠機構を適用した壁体の動作を示す斜視図であり、(a)は、開き扉が閉まっている状態、(b)は、開き扉を開ける動作を開始した状態である。
図10】本発明の開き扉の施解錠機構を適用した壁体の動作を示す斜視図であり、(a)は、開き扉が半開した状態、(b)は、開き扉が全開した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本施解錠機構の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、左右の方向を表す場合には、図1を基準とする。
【0019】
[壁体W]
本施解錠機構Mは、下記開閉ガイド装置Gと装置Aとから構成されているが、まず、当該本施解錠機構Mを適用した壁体Wについて説明する。
壁体Wは、隣接する各パネルW1,W2,W3との間に段差がなくフラットな状態(面一)となるように、厚さが一定規格(例えば40m~45mm)であるスチール製の複数のパネルW1、W2,W3を立設することにより形成されている。
【0020】
図1は、壁体Wを室内側から見た場合の概略の斜視図である。例えば、右側及び左側の袖パネルW1,W3に対して、中間パネルW2が、室内設備の点検口Tを開閉する開き扉Dとなるように配設されている。各パネルW1,W2,W3は、各々隣り合う縦框相互の継目において、室外側から室内側を臨むことができないように縦目地が形成されている(以下、図2も参照)。
【0021】
右袖パネルW1は、スチール板をクランク状に折り返し、上面視で、略L字形状の閉合断面となるように形成されており、段差部が中間パネルW2側となるように配設されている。
【0022】
下記開き扉Dは、中間パネルW2の右側端部が、概略で右袖パネルW1の幅狭部の奥行長となるように、その端部を略直角に折り返すことにより、吊元側縦框5が形成されている。上記吊元側縦框5において、当該右端部の折曲部W11と、中間パネルW2の側端部W21が、蝶番18により回動自在に取り付けられている。
【0023】
一方、左袖パネルW3は、スチール板をクランク状に折り返し、上面視で、3段の段差部を有する略ピストル形状の閉合断面となるように形成されており、段差部が中間パネルW2側となるように配設されている。
【0024】
左袖パネルW3の一段目の段差部における室外側の面は、戸当り部11a(以下、「左戸当たり部」という。)を構成すると共に、当該左戸当り部11aと接続する中間パネルW2側の端面は、下記開閉ガイド装置Gの取付部11b(以下、「取付部」という。)を構成しており、当該左戸当り部11aと取付部11bとによって、縦框6を構成することになっている。そして、左戸当り部11aと取付部11bとの間には、折り重ね部11cが設けられることにより、当該左戸当り部11aに凹溝12が形成されている。上記凹溝12には、戸当り時の衝撃を緩衝するためのクッション材19が嵌装されている。
【0025】
また、中間パネルW2の左側端部において、左袖パネルW3の段差部の奥行長となるように、略Z字状(上面視)に屈曲させることにより(以下、「Z字部15」という。)、戸先側縦框7が形成されている。
【0026】
戸先側縦框7を構成する上記Z字部15は、それぞれ、左戸当り部11aと対向する室内側の水平部が戸当たり部15aに、室外側の水平部が目隠し部15bに、斜線部が木口部15c(戸先側木口部)になっている。
【0027】
木口部15cは、その表面が室外側(図2における上側)に臨むように、開き扉Dの室外側に向かって左袖パネルW3と離間する向きに傾斜している。木口部15cの所定高さ位置には、下記錠装置Aにおけるシリンダ錠70の鍵穴71a(図10)が室外側に位置するように設置されており、開き扉Dを所定の角度回転した状態で、鍵Kを用いて、開き扉Dを施錠及び解錠することができるようになっている。
【0028】
[開閉ガイド装置G]
図3及び図4に示すように、開閉ガイド装置Gは、スライド装置S(スライド手段)とプッシュラッチP(ロック手段)とを主要部としている。スライド装置Sとプッシュラッチは、開閉ガイド装置Gの構成要素の一部である幅狭のコ字形状(上面視)に形成されている取付フレーム20に設けられている。
【0029】
取付フレーム20は、対向するように設けられた、幅寸法が異なる半トラック状の2枚の支持板21,22と、当該各支持板21,22の曲線部と反対側の端部に横設されている端板23とから形成されている(以下、幅寸法が短い支持板を「小支持板21」、幅寸法が長い支持板を「大支持板22」と称して、区別する場合がある。)そして、各支持板21,22の先端において、当該各支持板21,22の曲線部の間に形成される開口部の幅方向に、ストッパ軸24が横架されている。
【0030】
大支持板22の中央部には、長手方向に凸条22b(第2の制動部材)が設けられている。また、大支持板22には、取付フレーム20を左袖パネルW3に取り付けるための長孔22aが、上下に並設されている。
【0031】
(1)スライド装置S
スライド装置Sは、スライダ30と、下記錠装置Aにおける施錠レバー80のフック部83aを係止する受具40と、制動装置50とを備え、各要素が一体的に形成されている。
【0032】
スライダ30は、上下に対向する細長矩形形状であるガイドプレート31,32と、当該両ガイドプレート31,32の長辺側の片側を連結する側方プレート33と、当該両ガイドプレート31,32の短辺側の片側を連結する取付基板34と、当該取付基板34の対向側に設けられる凹板35とを備えており、一面が開口している箱状に形成されている。なお、側方プレート33の中央部には、長方形状の窓部33aが設けられている。
【0033】
また、スライダ30は、プッシュラッチPの取付フレーム20における大支持板22の、側方プレート33側の面に取り付けられており、取付基板34が、プッシュラッチPと離間する向きに配置されている。
上記取付基板34のプッシュラッチP側の面には、軸部の先端に球形状の係合突起36が突設されている取付プレート37がネジ39により取り付けられている。
【0034】
受具40は、ライフル形状(略ヘ字形状)に形成されている2枚の側板41と、両側板41の先端を下にして直立させた状態における鉛直部に横設されている、前板42とから形成されている。両側板41の上面には、施錠レバー80の受け口43が形成されており、受具40における上方の幅広部の中央近傍には、係止軸44が横架されている。前板42の2箇所には、取付位置の調整が容易となるように、2つの長孔42aが形成されている。長孔42aは、長軸が鉛直方向となるように、所定間隔で上下に設けられており、当該長孔42aに挿通されたネジ49により、スライダ30の取付基板34に取り付けられている。
【0035】
制動装置50は、上下に対向する細長矩形形状である上下板51,52と、当該上下板51,52を連結する側板53と、当該上下板51,52及び側板53を内側から補強する2本のリブ材54と備えており、コ字形状(側面視)に形成されている。側板53の中央部には、スライダ30の摺動運動に抗するように、その移動方向と逆方向に摩擦力を生じさせ、所定の抵抗を与えるための摺接突起55(制動部材)が設けられている。
【0036】
制動装置50は、スライダ30における側方プレート33の小支持板21側の面に、側板53と側方プレート33の外面が当接した状態であり、かつ、摺接突起55がスライダ30の側方プレート33の窓部33aから突出し、取付フレーム20の大支持板22の凸条22bと摺接するように取り付けられている。
なお、摺接突起55と凸条22bとの間における摩擦力は、各部材の材質、形状及び当接程度等によって異なるため、適切な値に設定されている。
【0037】
(2)プッシュラッチP
プッシュラッチPは、公知の装置を用いることができる。
上記プッシュラッチPは、取付側板62を有する略直方体の筐体61として形成されており、取付フレーム20の端板23側の端部において、小支持板21の端板23側の端部と取付側板62とが当接するように、下記係合凹部63をストッパ軸24の方向に突出する向きに、ネジ69により取り付けられている。
【0038】
取付側板62は、左袖パネルW3における取付部11bの所定位置において、大支持板22の長孔22aにネジ69が挿通されることにより取り付けられている。
【0039】
筐体61の内部には、常時、当該筐体61から突出する向きに付勢力が作用するように、付勢手段としてのコイルバネ(図示せず)が配設されている。また、スライダ30の係合突起36との係合部である係合凹部63が筐体61の先端から突出しており、当該係合凹部63の他端側には、ラッチピン(図示せず)が設けられている。
【0040】
また、筐体61の内部には、所定のガイド溝(図示せず)が形成されており、当該ガイド溝に沿ってラッチピンを移動させて、当該ラッチピンを所定の閉扉位置(ロック位置)及びロック解除位置に誘導させ、それぞれ固定することができるようになっている。また、係合凹部63は、その先端が拡開及び狭閉して、係合突起36との係合と、当該係合状態の解除ができるようになっている。
【0041】
上記プッシュラッチPは、スライダ30における上下のガイドプレート31,32の間に挿設されており、ストッパ軸24との間を直線往復運動が可能となっている。また、下記の動作が可能となっている。
【0042】
(1)通常時(閉扉時)には、ラッチピンの先端が係止部(図示せず)に係止し、閉扉位置にロックされる(以下、この状態を「初期状態」という)。
【0043】
(2)初期状態において、スライダ30をコイルバネに抗して押し込むと、ラッチピンの先端がロック解除位置に移動し、係合凹部63の先端が拡開する。上記係合突起36との係合が解除されることに伴いロックが解除され、コイルばねの復元力(付勢力)により、スライダ30がわずかに移動し、当該スライダ30はストッパ軸24に当接する位置にまで押圧可能となる。
【0044】
(3)再び、スライダ30をプッシュラッチPの向きに押し込み、係合突起36を係合凹部63に当接させて押圧すると、ラッチピンの先端が係止部に係止し、係合凹部63の先端が狭閉することで、閉扉位置にロックされた初期状態に戻ることができる。
【0045】
なお、スライダ30が摺動運動する所定のストロークは、解錠又は施錠に際して開き扉Dが回転する角度に応じて、適切に定められる必要がある。
【0046】
[錠装置A]
図5に示すように、錠装置Aは、施解除機構を備えるシリンダ錠70と、当該シリンダ錠70の鍵穴71aに挿入して回動操作する鍵Kと、開き扉Dの開閉を行うための施錠レバー80とを備えている。
【0047】
シリンダ錠70は、鍵Kを用い、シリンダ71(外筒)内の複数本のピンタンブラーを動かすことによってプラグ(内筒)を回し、当該プラグと同軸に回転自在に内挿したジョイントを回動する公知の施解錠機構を備えている(符号を付さない要素は、図示せず)。また、シリンダ71における底面中央の先端部には、矩形形状である連結凸部71bが突設されているととともに、周縁にガイド突起71cが設けられている。
【0048】
施錠レバー80は、長手の金属板材を鉤形に曲げ成形したクランク81と、当該クランク81の先端部81aに連結される鎌形状のリンク83との2体に分割して形成されている。また、上記施錠レバー80は、開き扉Dの施錠状態と、解錠位状態を切り換えるための往復回動を制御するとともに、位置決め保持するための位置決め手段85を備えている。
【0049】
クランク81の基端部81cには、シリンダ71の連結凸部71bと嵌合する矩形形状である回転規制孔82aと、当該回転規制孔82aの周縁に沿って、シリンダ71と連動する回動範囲を規定する、略4分の1の円弧であるガイド孔82bが設けられている。また、クランク81の中間部81bには、付勢バネ86(付勢部材)の一端部を挿通するためのバネ掛け孔82cが設けられており、先端部81aには、後記枢軸88を挿通するための軸孔82dが設けられている。
【0050】
また、クランク81の基端部81cは、シリンダ71の連結凸部71bが挿通され、止め輪74が介装された状態で、鍵Kの回動と連動して、約90度の角度範囲で回動可能となるように、ネジ79により軸支されている。
【0051】
リンク83は、鎌状(三日月形状)である先端のフック部83aと、板カム状の廻り止め部83bとから形成されており、フック部83aと廻り止め部83bとの境界に、切欠係止部83cが形成されている。そして、上記リンク83の廻り止め部83bの周縁には、円弧カム面y(廻り留め部83bの上端縁部)及び廻り止め面z(廻り留め部83bの後面縁部)が連続して形成されている。
また、上記リンク83の廻り留止め部83bの略中央部には、枢軸を挿通するための挿通孔83dが設けられている。
【0052】
位置決め手段85は、付勢バネ86と、戻り止め部材87とを主要部として構成されている。上記付勢バネ86は、コイル部86aと、先端に形成されているL字状の係止部86bとを有している。また、戻り止め部材87は、板状部87aと、当該板状部87aの下部における係止リブ87bとを有している。板状部の中央には、中心孔87cが形成されており、当該中心孔87cの上部には、付勢バネ86のコイル部86aを装着するための段部87dが形成されている。
【0053】
付勢ばね86の後端は、クランク81の中間部81bにおけるバネ掛け孔82cに係止され、その係止部86bは、リンク83のフック部83aの上面縁部に係止されている。戻り止め部材87の係止リブ87bは、リンク83の切欠係止部83c側の端面に掛止され、枢軸88が付勢バネ86のコイル部86aの中空部、戻り止め部材87の中心孔87c、リンク83の挿通孔83d及びクランク81の軸孔82dにそれぞれ挿通されている。
【0054】
図6に示すように、上記施錠レバー80は、枢軸88を中心として、リンク83が、クランク81の先端部81aに回動可能に枢着されることになり、切欠係止部83cが、スライダ30の受具40の係止軸44に係止する方向(図6における反時計回り方向)に、回動付勢することができるようになっている。
【0055】
また、廻り止め面zが、クランク81の中間部81b上の平面に突き当たり、フック部83aの切欠係止部83cが、受具40の係止軸44に係止する施錠姿勢位置に位置決め保持することができるようになっている。そのため、施錠レバー80は、リンク83を、クランク81の先端部81aと重なるように、自動施錠可能な姿勢で施錠位置に保持することができることになる。
なお、自動施錠されたシリンダ錠70は、鍵Kにより解錠することができるようになっている。
【0056】
錠装置Aのシリンダ錠71は、開き扉Dの戸先側縦框7の木口部15cの取付孔(図示せず)に、鍵穴71aの反対の後部側から嵌挿されている。そして、シリンダ71の前部外周に環状ワッシャー72が設けられ、木口部15cを外側の錠キャップ73により締着し、鍵穴71aを外側に臨ませて、当該木口部15cの内側に組み付けられている。
【0057】
また、開ガイド装置Gのスライダ30は、ストッパ軸24の位置にまで突出した状態において、施錠レバー80のリンク83の切欠係止部83cと受具40の係止軸44が係合可能である位置関係になっている。
【0058】
[本施解錠機構Mの作用]
続いて、開き扉Dが閉まっている状態から、当該開き扉Dを解錠する場合に関する本施解錠機構Mの作用について説明する。
【0059】
(1)開き扉Dが閉まっている状態
開き扉Dが閉まっている状態では、プッシュラッチPにおけるラッチピンの先端が係止部に係止し、閉扉位置にロックされている(図7(a)及び図9(a))。
【0060】
(2)開き扉Dを半開させる操作
上記状態において、スライダ30をプッシュラッチPの方向に押し込むと(図7(b),図9(b))、ラッチピンの先端がロック解除位置に移動し、当該プッシュラッチPの係合凹部63の先端が拡開する。それに伴い、係合突起36と係合凹部63の係合が解除され(ロックが解除され)、コイルばねの復元力により、スライダ30がわずかに押し出される(図8(a))。そして、開き扉Dにおける目隠し部15bと木口部15cとの間に、手を差し入れる程度の間隙が生じ、当該開き扉Dが半開した状態となる(図10(a))。
【0061】
このスライダ30の移動時において、取付フレーム20の大支持板22の凸条22bと、制動装置50の摺接突起55が当接し、当該スライダ30の移動動方向と逆方向に摩擦力(抵抗力)が生じることになる。そのため、開き扉Dの移動状態を適切に抑制させることができることから、勢いよく、所定間隔以上に開扉されることを防止することができる。
【0062】
(3)開き扉Dを全開させる操作
その後、操作者は、上記開き扉Dの端部を把持し、所定の間隔となるまで手前側に回転させ、装置Aにおけるシリンダ錠70の鍵穴71aを外側に露出させる(図9(b)及び図10(b))。そして、上記鍵穴71aに鍵Kを挿し込み解錠する。
【0063】
このとき、解錠中において、開き扉Dにおける室内側に押圧力が作用した場合であっても、制動装置50における摺接突起55と、取付フレーム20の大支持板22の凸条22bの存在により、当該押圧力に抗する抵抗力が発生することになる。そのため、開き扉Dが容易に閉まることを防止することができる。
【0064】
なお、開放した開き扉Dを閉める場合には、施錠後に、当該開き扉Dを室内側に押圧することにより、装置Aの施錠レバー80の動作により、シリンダ錠70が自動的に施錠され、スライド装置S及びプッシュラッチPの動作により、閉扉の位置にロックされることになる。
【0065】
[本施解錠機構Mの効果]
本施解錠機構Mによれば、開ガイド装置Gに制動部材を構成する摺接突起55と、第2の制動部材である凸条22bを備える構成としているため、両部材が協働して、作用した力に抗する抵抗力を発生させることにより、開き扉Dの移動を適切に抑制させることができる。したがって、開き扉Dの開扉時において、所定間隔以上に開扉されることや、突発的に開扉することを防止することができるため、安全性を向上させることができる。
【0066】
また、開扉時等において、万一、装置Aのシリンダ錠70に鍵Kを挿入した状態で、閉扉する向きに意図しない力が作用した場合であっても、容易に開き扉Dが閉まることを防止することができるため、鍵Kの頭部が誤って目地部の両縁に衝突し、当該目地部に傷がつく等の不都合を効果的に防止することができる。
【0067】
また、本施解錠機構Mによれば、開ガイド装置GにプッシュラッチPを採用することで、簡易な構造を実現することができる。
また、制動装置50において、スライダ30の移動方向と反対方向に摩擦力を発生させる摺接突起55が、スライダ30に一体となるように設けられているため、部品数を減らして簡易な構造を実現することができる。
【0068】
さらに、開ガイド装置Gは、受具40をスライダ30に取り付けるために前板42に設けられている取付穴を、長孔42aで形成しているため、現場の状況に応じて、取り付け位置を容易に調整することができる。
【0069】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
【0070】
例えば、本施解錠機構を適用する壁体、開き扉には制限はなく、本施解錠機構を構成する開ガイド装置(ロック手段[プッシュラッチ構造]及びスライド手段)、装置(施解錠装置)の各仕様等は、開き扉等の状況に応じて、適宜定めることができる。また、本発明を構成する各要素の仕様、材質、寸法、形状、取付位置等に関しても、基本的な構成を備えていれば、種々の構造を用いることができる。
【0071】
また、制動部材(第2の制動部材を含む)は、開き扉の移動を抑制するための制動作用を奏することができれば、摩擦力を生じさせる摺動片以外であってもよく、ラック、ピニオン機構を利用した部材等を適用して、制動力を発生させることとすることもできる。また、制動部材は、スライド装置が一方向の移動時にのみに制動力を生じさせる態様とすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
M 開き扉の施解錠機構
W 壁体
W1 右袖パネル
W2 中間パネル
W3 左袖パネル
D 開き扉
G 開閉ガイド装置
S スライド装置(スライト゛手段)
P プッシュラッチ(ロック手段)
A 錠装置
K 鍵
11a 左戸当たり部
11b 取付部
15c 木口部(戸先側木口部)
20 取付フレーム
22b 凸条(第2の制動部材)
24 ストッパ軸
30 スライダ
36 係合突起
40 受具
44 係止軸
50 制動装置
55 摺接突起(制動部材)
61 筐体
70 シリンダ錠
71 シリンダ
80 施錠レバー
81 クランク
83 リンク
83a フック部
83c 切欠係止部
85 位置決め手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10