(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375092
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】FMCWレーダーブロッキング検出
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20180806BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20180806BHJP
G01S 13/93 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
G01S7/40 139
G01S13/34
G01S13/93 220
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-515313(P2016-515313)
(86)(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公表番号】特表2016-524707(P2016-524707A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】SE2014050601
(87)【国際公開番号】WO2014189443
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】13168943.2
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス、アラン
【審査官】
三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−051888(JP,A)
【文献】
特開平06−034754(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0227037(US,A1)
【文献】
特開平10−282229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト検出信号を含む第1の信号を生成するステップ(S1)と;
前記第1の信号の少なくとも2つの周波数シフトされたバージョンから第2の信号を生成するステップ(S2)と;
前記第1の信号を送信するステップ(S3)と;
前記第2の信号を送信するステップ(S4)と;
前記第2の信号を含む受信信号(13、13’、13’’)を受信するステップ(S5)と;
受信した前記第2の信号中のブロッキングパターン(16)を識別することによってブロッキングを判定するステップ(S7)とを含むことを特徴とするFMCWレーダーデバイス(1)のブロッキングを検出する方法。
【請求項2】
前記第2の信号を生成するために位相シフトキーイングを利用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブロッキングを判定するのに先立って、前記受信信号をハイパスフィルタリング(14)するステップ(S6)をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。、
【請求項4】
前記ブロッキングを判定するステップが、
前記受信信号中のオフセット周波数成分を周波数処理するステップ(S7a)であって、前記オフセット周波数成分が、前記ブロッキングパターンを示し、周波数シフトされた零周波数ビンに関連付けられる、当該ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロッキングを判定するステップが、
単一のレンジゲート中で受信される判定信号として、前記オフセット周波数成分を判定するステップ(S7b)をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記判定信号が、少なくとも2つの隣接する周波数レンジビンおよび/またはドップラービンにおいて拡散された周波数成分を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記FMCWレーダーデバイスが視野を有し、前記検出されたブロッキングは、前記視野をカバーするように置かれている物理的オブジェクトによってブロックされている前記FMCWレーダーデバイスからの送信の指示を提供することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の信号がアップ・チャープ・ランプ信号またはダウン・チャープ・ランプ信号であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記受信信号がデバイス外反射から受信されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
さらなる第1の信号を送信するステップ(S8)であって、前記さらなる第1の信号が前記オブジェクト検出信号を含む、ステップをさらに含み、
前記周波数オフセット信号である前記第2の信号を送信する前記ステップは、少なくとも前記FMCWレーダーデバイスの始動中に、前記さらなる第1の信号のI回の送信ごとに1回実施され、I≧1であり、および/または前記FMCWレーダーデバイスの動作中にJミリ秒ごとに1回実施され、J≧1であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
オブジェクト検出信号を含む第1の信号と、前記第1の信号の少なくとも2つの周波数シフトされたバージョンから生成された第2の信号を送信するように構成された送信機(7)と、
前記第2の信号を含む受信信号(13、13’、13’’)を受信するように構成された受信機(6)と、
受信した前記第2の信号中のブロッキングパターン(16)を識別することによってブロッキングを判定するように構成されたコントローラ(2)とを備えたことを特徴とするFMCWレーダーデバイス(1)。
【請求項12】
前記第2の信号を生成するために位相シフトキーイングを利用することを特徴とする請求項11に記載のFMCWレーダーデバイス(1)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のFMCWレーダーデバイスを備える自動車両(9)。
【請求項14】
FMCWレーダーデバイスのブロッキングを検出するためのコンピュータプログラム(11)であって、前記コンピュータプログラムは、
オブジェクト検出信号を含む第1の信号を生成すること(S1)と;
前記第1の信号の少なくとも2つの周波数シフトされたバージョンから第2の信号を生成すること(S2)と;
前記第1の信号を送信すること(S3)と;
前記第2の信号を送信すること(S4)と;
前記第2の信号の受信バージョンを含む受信信号(13、13’、13’’)を受信すること(S5)と、
受信した前記第2の信号中のブロッキングパターン(16)を識別することによってブロッキングを判定すること(S7)とを実行するコンピュータ・プログラム・コードを備えたことを特徴とするコンピュータプログラム(11)。
【請求項15】
前記第2の信号を生成するために位相シフトキーイングを利用することを特徴とする請求項14に記載のコンピュータプログラム(11)。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のコンピュータプログラム(11)が読み出し可能な状態で記録されたコンピュータプログラム製品(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提示する実施形態は、レーダーデバイスのブロッキングを検出することに関し、詳細には、FMCW(Frequency-Modulated Continuous-Wave)レーダーデバイスのブロッキングを検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
可動車両の経路中のオブジェクトの存在について運転者に警告するために様々なオブジェクト検出システムが提案されている。典型的には、そのような警告システムは、センサが移動車両の経路中にオブジェクトの存在を検出すると、可聴のまたは視覚的なあるいはその両方の好適な警告信号を提供する。
【0003】
自動車レーダーセンサなどのレーダーデバイス上の異物またはオブジェクトの存在は、レーダーデバイスの精度および信頼性に影響を及ぼし得る。例えば、異物またはオブジェクトは、レーダーセンサ送信および/または受信アンテナの1つまたは複数の部分を望ましくなくブロックし得、特に、レーダーセンサの送信および受信アンテナにおよびそれらから伝搬する無線周波数(RF)エネルギーの一部分をブロックし得る。
【0004】
そのような妨害物は、例えば、アンテナアパーチャの領域中の異物またはオブジェクトの、ある期間にわたる堆積の結果であり得る。そのような異物は、例えば、温度、湿度、氷、雨などの環境条件によって生起され得る。そのような妨害物は、自動車レーダーセンサの適切な動作を劣化させるか、または極端な場合、それを妨げさえし得る。時間とともに異物が堆積する場合、時間とともにセンサシステム性能の対応する漸進的な減少がある。堆積は漸進的であるので、異物の漸進的な堆積とレーダーセンサ性能の対応する漸進的な減少とにより、アンテナ妨害物の存在を検出することは、比較的困難であることがある。
【0005】
したがって、妨害物を検出することが可能であるレーダーデバイスを提供することが望ましいであろう。また、レーダーレードーム上のまたはそれに近接した、泥、氷、雪などの異物の堆積による妨害物を検出することが可能であるレーダーデバイスを提供することが望ましいであろう。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0243912号明細書によれば、仮想検出ゾーン内のターゲットを検出することと、ターゲットが仮想検出ゾーン内にある間にターゲットに関係する情報を蓄積することと、その情報に基づいてブラインドスポット警報信号がミスされたかどうかを判定することとを伴う妨害物検出プロセスが提供されている。このプロセスは、そのブラインドスポット警報信号がミスされたという判定が行われたことに応答してミスの時間を記録することと、記録された各ミスについての情報に基づいて、妨害状態が存在するかどうかを判定することとをさらに含む。
【0007】
したがって、米国特許出願公開第2009/0243912号明細書において開示された妨害物検出は、正確な時間情報の記録を必要とする。さらに、この妨害物検出は、ブラインドスポット警報信号が実際にミスされたと判定することに基づくので、この妨害物検出プロセスはあいまいさをもたらす。
【0008】
したがって、レーダーデバイスの改善されたブロッキング検出が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0243912号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書の実施形態の目的は、レーダーデバイスの改善されたブロッキング検出を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、FMCWレーダーデバイスのブロッキングを検出するための方法が提示される。本方法は、第1の送信信号である第1の信号を送信するステップを含み、第1の信号はオブジェクト検出信号を含む。本方法は、第2の信号を送信するステップを含む。第2の信号は、第1の信号に対する周波数オフセット信号である。本方法は、受信信号を受信するステップを含む。受信信号は、少なくとも第2の信号の受信バージョンを含む。本方法は、第2の受信信号の受信バージョン中のブロッキングパターンを識別することによってブロッキングを判定するステップを含む。
【0012】
第2の態様によれば、FMCWレーダーデバイスのブロッキングを検出するためのFMCWレーダーデバイスが提示される。FMCWレーダーデバイスは、第1の送信信号である第1の信号を送信するように構成された送信機を備える。第1の信号はオブジェクト検出信号を含む。送信機は、第2の信号を送信するようにさらに構成される。第2の信号は、第1の信号に対する周波数オフセット信号である。FMCWレーダーデバイスは、受信信号を受信するように構成された受信機を備える。受信信号は、少なくとも第2の信号の受信バージョンを含む。FMCWレーダーデバイスは、第2の受信信号の受信バージョン中のブロッキングパターンを識別することによってブロッキングを判定するように構成されたコントローラを備える。
【0013】
有利には、これはブロッキングの正確な検出を可能にする。有利には、この処理は、極めて迅速におよび必要とされるときに実施され得る。
【0014】
一実施形態によれば、受信信号は、ブロッキングを判定することに先立ってハイパスフィルタリングにかけられる。有利には、開示されるブロッキング検出は、そのようなハイパスフィルタリングの存在下でさえブロッキングの正確な検出を可能にする。
【0015】
それにより、オフセット側波帯周波数を生成するためにFMCWランプを変調するシステムの信号生成部分から第2の信号を挿入することが可能になり得る。これらのオフセット側波帯周波数は、送信機チェーン中を伝搬し、送信機と受信機との間を伝搬し、受信機チェーン中を伝搬し、コントローラ中へと伝搬することができ、既存の信号処理経路の一部または全部によって処理され得る。第2の信号は既知のブロッキングパターンを生じ、それのパラメータは既知であり、ブロッキング検出について検査され得る。
【0016】
第3の態様によれば、第2の態様によるFMCWレーダーデバイスを備える自動車両が提供される。
【0017】
第4の態様によれば、FMCWレーダーデバイスのブロッキングを検出するためのコンピュータプログラムが提示され、このコンピュータプログラムは、FMCWレーダーデバイス上で実行されたとき、FMCWレーダーデバイスに、第1の態様による方法を実施させるコンピュータ・プログラム・コードを含む。
【0018】
第5の態様によれば、第3の態様によるコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムがその上に記憶されたコンピュータ可読手段とを備えるコンピュータプログラム製品が提示される。
【0019】
第1、第2、第3、第4および第5の態様のいかなる特徴も、適切な場合はいつでも、任意の他の態様に適用され得ることに留意されたい。同様に、第1の態様のいかなる利点も、それぞれ第2、第3、第4、および/または第5の態様に等しく適用され得、その逆も同様である。封入されている本実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な開示から、付属の従属請求項からならびに図面から明らかになろう。
【0020】
概して、特許請求の範囲において使用されるすべての用語は、本明細書において別段に明示的に定義されていない限り、当技術分野におけるそれらの通常の意味によって解釈されるべきである。「要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、別段に明記されていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つのインスタンスを指すものとしてオープンに解釈されるべきである。本明細書で開示されるいかなる方法のステップも、明記されていない限り、開示された厳密な順序で実施される必要はない。
【0021】
次に、本発明について、例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】FMCWレーダーデバイスの機能モジュールを示す概略図である。
【
図2】コントローラの機能モジュールを示す概略図である。
【
図4】コンピュータ可読手段を備えるコンピュータプログラム製品の一例を示す。
【
図5】2D FMCW波形の周波数/時間構造を概略的に示す。
【
図8】主ランプ周波数と、変調テストトーン周波数によるオフセット側波帯とを概略的に示す。
【
図9】距離または周波数の関数として受信信号の大きさを概略的に示す。
【
図10】実施形態による方法のフローチャートである。
【
図11】実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明のいくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照しながら本発明について以下でより十分に説明する。ただし、本発明は、多くの異なる形態で実施されることがあり、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、これらの実施形態は、本開示が周到で完全になり本発明の範囲を当業者に十分に伝達するように、例として提供される。同様の数は、説明全体にわたって同様の要素を指す。
【0024】
図1は、持続波被周波数変調(FMCW)レーダーデバイス1の機能モジュールを示す概略図である。大まかに言えば、FMCWレーダーは、距離を判定することが可能なショートレンジ測定レーダーである。FMCWレーダーデバイスは、速度測定とともに距離測定を提供することによって高い信頼性を提供する。この種類のレーダーデバイスは、早期警告レーダー、および/または近接センサとして使用され得る。FM変調が使用されるとき、検出のためにドップラーシフトが常に必要とされるとは限らない。
【0025】
FMCWレーダーデバイス1は、FMCWレーダーデバイス1の全般的動作を制御するように構成されたコントローラ2を備える。コントローラ2は、信号生成器5に動作可能に接続される。FMCWレーダーデバイス1はさらに送信機(Tx)7を備える。Tx7は少なくとも1つのアンテナ要素を備える。信号生成器5は、コントローラ2によって提供される命令に従って、Tx7によって送信されるべき信号を生成するように構成される。FMCWレーダーデバイス1はさらに受信機(Rx)6を備える。Rx6は少なくとも1つのアンテナ要素を備える。Rx6は、信号を受信し、受信された信号をコントローラ2に提供するように構成される。コントローラ2は、したがって、受信された信号を処理するように構成される。以下でさらに開示するように、機能モジュールのこの構成は、コントローラ2による、信号を反射しているオブジェクトのレンジの測定を可能にする。Tx7とRx6とのアンテナ要素はFMCWレーダーデバイス1のレードーム8中に設けられ得る。
【0026】
ここで、FMCWレーダーデバイス1の全般的動作について説明する。FMCWレーダーデバイス1において、所与の変調波形で周波数変調された無線周波数(RF)オブジェクト検出信号が、Tx7によってターゲットのほうへ送信され、Rx6による受信のためにそこからFMCWレーダーデバイス1に元に反射される。Rx6において受信される反射信号は、時間的に遅延され、したがって、ターゲットのレンジRに比例する量τだけ瞬時オブジェクト検出信号から周波数においてシフトされる。レンジRは、FMCWレーダーデバイス1からターゲットまでの長手方向の距離に対応する。
【0027】
信号生成器5は、変調信号によって固定の期間にわたって周波数において(上および/または下に)変動する既知の安定した周波数持続波の信号を生成するように構成される。Rx6における受信信号上の周波数偏移は距離とともに増加する。周波数偏移は、ドップラー信号を不鮮明にするか、またはぼかす。ターゲットからのエコーが、次いで、送信された信号と混合されてビート信号が生成され、このビート信号は、復調後にターゲットの距離を与えることになる。
【0028】
様々な変調が可能である。送信機周波数は、正弦波、鋸波、三角波、矩形波などに従って上および下に転回することができる。例えば、オブジェクト検出信号が、ΔFのピークツーピーク値と1/f
mの周期とを有する三角波形によって変調されるとき、一般にビート周波数としても知られる周波数シフトまたは差周波数f
Rは、反射信号とオブジェクト検出信号を示す信号とを受容可能な好適なフィルタリング済み混合器によって生成されると、オブジェクト検出信号の周波数の時間導関数×ラウンドトリップ時間遅延τに等しく、したがって、f
R=df/dt・τ=4R(ΔF・f
m)/cとして表され得、ここで、cは光速である。したがって、ターゲットとFMCWレーダーデバイス1との間のレンジRまたは距離、および、さらに、FMCWレーダーデバイス1に対するターゲットのレンジレートは、周波数シフトf
Rの測定によって決定される。レンジが決定されるプロセスは、そのようなものとして、当技術分野においてよく知られている。
【0029】
図5は、2D FMCW波形の周波数/時間構造を示している。周波数/時間構造はM×N周波数時間行列として表され得る。
図5に示されているのは、高速のサンプリングされたランプを使用するFMCWレーダーデバイス1の動作の基本原理である。(アップチャープとして示されている)送信ランプ中に、FMCWレーダーデバイス1は、局所的に生成されたランプと受信信号を混合する。時間遅延された信号およびドップラーは、それら自体を受信信号上の周波数シフトまたは成分として表す。
図6は、2D高速フーリエ変換(FFT)を使用して時間周波数表現(左上)からレンジおよびドップラー表現(右上)に変換するための行列処理を概略的に示している。また例として示されているのは、説明のために、得られたレンジドップラー行列上でしばしば行われるさらなる信号処理である。様々なサブアレイ要素からの要素の行列は、次いで、L×N×Mドップラーサブアレイ行列に合成され得(左下)。次いで、ドップラーサブアレイ行列上でFFTベースのビームフォーミングなどのさらなる信号処理が実施され得、L×M×Nレンジ、ドップラー、角度行列表現が得られる(右下)。1つのランプについて、ランプと受信されたエコーとの間の周波数オフセットは、第1のFFT処理ステップを適用した後にレンジ/ドップラー表現に変換される。概して、ドップラーおよびレンジは、その場合、複数のランプを取り、ドップラー次元にわたって(すなわち、それらのランプにわたって)第2のFFT処理ステップを適用することによって明確に解決され得る。
【0030】
本明細書で開示する実施形態は、FMCWレーダーデバイス1のブロッキングを検出することに関する。ブロッキングは、ブロックされているFMCWレーダーデバイス1のTx7とRx6とのアンテナ要素におよびそれらから伝搬する無線周波数(RF)エネルギーの一部分によって引き起こされ得る。すなわち、ブロッキングは、(Tx7の視野および/またはRx6の視野に関して)FMCWレーダーデバイス1の視野をカバーするように置かれている物理的オブジェクトによって定義され得る。そのような妨害物は、例えば、アンテナアパーチャの領域中の異物またはオブジェクトの、ある期間にわたる堆積の結果であり得る。そのような異物は、例えば、温度、湿度、氷、雨などの環境条件によって生起され得る。FMCWレーダーデバイス1のブロッキング検出を得るために、FMCWレーダーデバイス1と、FMCWレーダーデバイス1によって実施される方法と、FMCWレーダーデバイス1上で実行されたとき、FMCWレーダーデバイス1に、ブロッキングを検出する方法を実施させる、例えばコンピュータプログラム製品の形態の、コードを備えるコンピュータプログラムとが提供される。
【0031】
図2は、いくつかの機能モジュールに関して、
図1に示されたFMCWレーダーデバイス1のコントローラ機能ブロック2の構成要素を概略的に示している。処理ユニット4は、例えばメモリ3の形態の、(
図4の場合のような)コンピュータプログラム製品10に記憶されたソフトウェア命令を実行することが可能な、好適な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのうちの1つまたは複数の任意の組合せを使用して提供される。したがって、処理ユニット4は、それにより、本明細書で開示する方法を実行するように構成される。メモリ3はまた、例えば、磁気メモリ、光メモリ、固体メモリ、さらには遠隔で取り付けられたメモリのうちの任意の単体または組合せであり得る永続記憶装置を備え得る。コントローラ2は、例えば信号生成器5に制御信号を送りRx7から信号を受信することによって、FMCWレーダーデバイス1の全般的動作を制御する。本明細書で提示する概念を不明瞭にしないために、コントローラ2の他の構成要素、ならびに関係する機能は省略されている。
【0032】
図10および
図11は、FMCWレーダーデバイス1のブロッキングを検出するための方法の実施形態を示すフローチャートである。本方法はFMCWレーダーデバイス1によって実施される。本方法は、有利にはコンピュータプログラム11として提供される。
図4は、コンピュータ可読手段12を備えるコンピュータプログラム製品10の一例を示している。このコンピュータ可読手段12上に、コンピュータプログラム11が記憶され得、それにより、コンピュータプログラム11は、コントローラ2、ならびにそれに動作可能に結合されたエンティティおよびデバイスに、本明細書で説明する実施形態による方法を実行させることができる。
図4の例では、コンピュータプログラム製品10は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタル多用途ディスク)またはBlu−Rayディスクなどの光ディスクとして示されている。コンピュータプログラム製品10はまた、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、または電気消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)などのメモリとして、より詳細には、USB(ユニバーサルシリアルバス)メモリなどの外部メモリ中のデバイスの不揮発性記憶媒体として具現され得る。このように、コンピュータプログラム11は、ここでは図示した光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラム11は、コンピュータプログラム製品10に好適な任意の方法で記憶され得る。
【0033】
封入されている本実施形態の発明者は、オフセット側波帯周波数を生成するために、FMCWレーダーデバイス1の信号生成器5部分からテスト信号を挿入するか、またはFMCWランプを変調する中間周波数(IF)通過帯域内にある周波数においてTx7をオン/オフすることが可能であることを了解している。これらの側波帯周波数を表す信号は、通常の送信波形として送信チェーン中を伝搬し、車両9上のバンパーから伝搬し、Tx7とRx6とのアンテナ間を伝搬し、Rx6受信機チェーン中を伝搬し、コントローラ2中へと伝搬することができ、既存の信号処理経路の一部または全部によって処理され得る。このテスト信号は、Rx6においてオフセット周波数となり得、零レンジの(または、零周波数成分に極めて近接した)周波数を効果的にシフトアップし、それは、通常はバンパー復帰によるものと考えられ、通常のシステムではハイパスフィルタによって著しく減衰される。従って、開示された実施例は、オブジェクト検出信号を含む第1の送信信号である第1の信号に対する周波数オフセット信号である第2の信号が、FMCWレーダーデバイス1によって生成されるという理解に基づく。この第2の信号は、
図7に示されているように、第1の信号の主キャリアに対して、したがって、FMCWランプ信号上にオフセット周波数成分(側波帯など)を与え得る。
図7に概略的に示されているように、シングルキャリア周波数(左部分)は、共通の変調技法を使用して、第2の信号(中央部分および右部分)を表す2つ以上の側波帯(またはオフセット周波数)を有することができる。主キャリアは、次いで、
図5を参照しながら開示したようにランプされ得(周波数においてスイープされ得)、オフセット変調トーンは、主キャリアに対する固定オフセットにおいてもスイープすることになる。
【0034】
FMCWレーダーデバイス1のブロッキングを検出するための方法は、このようにして、ステップS3において、第1の送信信号である第1の信号を送信するステップを含む。第1の信号はオブジェクト検出信号を含む。送信信号はFMCWレーダーデバイス1のTx7によって送信される。Tx7はさらに、ステップS4において、第2の信号を送信するように構成される。第2の信号は、第1の信号に対する周波数オフセット信号である。上記に鑑みて、第2の信号はテスト信号を具備する。
【0035】
第1の信号と第2の信号とを生成する異なる方法がそれぞれあり得る。一実施形態によれば、これらの信号は以下のように生成される。ステップS1において、第1の信号を生成する。第1の信号は信号生成器5によって生成され得る。一実施形態によれば、第1の信号はアップ・チャープ・ランプ信号またはダウン・チャープ・ランプ信号である。ステップS2において、第1の信号の少なくとも2つの周波数シフトされたバージョンから第2の信号を生成する。第2の信号は信号生成器5によって生成され得る。より詳細には、
図8が、主ランプ周波数と、変調テストトーン周波数によるオフセット「側波帯」とを示している。ここに示されているのは(2つのオフセットランプを生成する)2トーン変調である。
【0036】
第2の信号を生成するために位相シフトキーイングが利用され得る。大まかに言えば、第2の信号は、Tx経路における位相シフトキーイング変調、スイッチ(またはTx側をオンおよびオフにすること)を使用する振幅変調、コード化パルスあるいは任意の他の変調方式に基づき得る。一実施形態によれば、ステップS1およびS2は、ステップS3およびS4より前に実施される。一実施形態によれば、ステップS1およびS2は、FMCWレーダーデバイス1の事前構成段階中に実施される。第1の信号および/または第2の信号は、次いで、コントローラ2のメモリ3に記憶され得る。完全な信号波形がメモリ3に記憶されるか、あるいは、信号波形を生成するために必要なパラメータのみがメモリ3に記憶される。
【0037】
少なくとも第2の信号は、FMCWレーダーデバイス1によって受信信号として受信される。大まかに言えば、受信信号は、ステップS3およびS4において送信された信号が反射されるオブジェクトに依存することになる。FMCWレーダーデバイス1のRx6は、したがって、ステップS5において、受信信号を受信するように構成され、ここで、受信信号は少なくとも第2の信号の受信バージョンを含む。受信信号は、例えば、近くオブジェクトによる近接した反射によって受信され得る。一実施形態によれば、受信信号は、このように、デバイス外反射から受信される。随意のステップS6において、受信信号はハイパスフィルタリングにかけられ得る。これは
図9に示されている。
図9(a)は、受信信号13を概略的に示す。
図9(b)では、ハイパスフィルタ14が受信信号13に適用される。ステップS6の場合のように受信信号13をハイパスフィルタリングにかけると、このように受信信号13の低周波(または距離)成分15が減衰させられる。対応するハイパスフィルタリングされた信号13’が
図9(c)に示されている。受信信号13の低周波(または距離)成分15は、第1の信号の帰還信号における寄与に対応し得る。このようにして、
図9(c)における受信信号13’の減衰により、第1の信号の帰還信号における寄与に対応する減衰された受信信号13’の成分15の分析に基づいてブロッキングを判定することが困難であり得る。一方、
図9(d)は、少なくとも第2の信号の受信バージョンを含む受信信号13’’を示している。近いレンジにより、第2の信号のTx送信の変調によって生じる周波数オフセットは、第2の信号の帰還がハイパス14特性によって減衰させられないように、第2の信号の帰還を周波数においてシフトアップする。
【0038】
コントローラ2は、このようにして、ステップS7において、第2の受信信号の受信バージョン中のブロッキングパターン16を識別することによってブロッキングを判定するように構成される。ブロッキングパターン16は、このようにして、(第1の信号に対して周波数シフトされた)第2の信号の帰還に対応する。大まかに言えば、FMCWレーダーデバイス1は視野を有する。検出されたブロッキングは、したがって、視野をカバーするように置かれている物理的オブジェクトによってブロックされているFMCWレーダーデバイス1からの送信の指示を提供し得る。受信信号中のブロッキングパターン16の不在(すなわち、ブロッキングパターン16が検出されない場合)は、ブロッキングがないことを示し得る。
【0039】
一実施形態によれば、コントローラ2は、受信信号中のオフセット周波数成分を周波数処理する随意のサブステップS7aを実施することによって、ステップS7に記載のブロッキングを判定するように構成される。オフセット周波数成分は、ブロッキングパターンを示し、周波数シフトされた零周波数ビンに関連付けられる。受信信号が、FFT1処理を実施しているコントローラ2によって通常の方法で(すなわち通常の受信信号として)処理されるとき、固定の周波数オフセットは、単一のレンジゲート中の単一の(確定的)信号として現れる。一実施形態によれば、コントローラ2は、したがって、単一のレンジゲート中で受信される確定的信号としてオフセット周波数成分を判定する随意のサブステップS7bを実施することによって、ステップS7に記載の(またはステップS7aと組み合わせてステップS7に記載の)ブロッキングを判定するように構成される。固定の周波数オフセットは、レードーム8および/または外部オブジェクトとの相互作用によりいくつかのFFTビンにわたって拡散された単一のレンジゲート中の単一の(確定的)信号として現れ得る。このように、FMCWレーダーデバイス1のニアフィールドのクラッターまたは妨害状態を判定するために検査され得るのは、この周波数または周波数のグループであり、なぜならそれらは、IFハードウェア中のAC結合によって通常は減衰されるはずである零レンジビン位置から効果的に移動されているからである。
【0040】
変調周波数および波形は、変調パラメータから直接決定され得る特定のレンジ/ドップラーパターンを生成し得る。特定のレンジおよび/またはドップラービンは、それらが第2の信号に対応する成分を含んでいるかどうかを確かめるために検査され得る。例えば、第2の信号は送信されたが第2の信号の正しいパターンが現れない場合、FMCWレーダーデバイス1のTx7、Rx6またはレードーム8のうちの少なくとも1つをブロックしているオブジェクトがある可能性がある。ステップS7bにおいて判定される確定的信号は、例えば、少なくとも2つの隣接する周波数レンジビンおよび/またはドップラービンにおいて拡散された周波数成分を含み得る。
【0041】
大まかに言えば、トーンの周波数間隔(したがってトーンがその中に現れるレンジビン)は、変調波形によって決定される。また、これらのトーンの間には振幅関係があり得る(例えば、これらのトーンはすべて互いに関連していなければならない)。これは、アナログおよびデジタル信号処理チェーンの忠実度に関するさらなる情報(例えば、それが周波数に応じてどのように挙動しているか)を提供し得る。実施形態によれば、第2の信号は、したがって、少なくとも2つの正の周波数成分を含み、その各々はトーンに対応する。トーン間の周波数間隔は第1の信号の変調波形によって決定され得る。
【0042】
大まかに言えば、第2の信号を送信するステップS3は、FMCWレーダーデバイス1の機能的安全および信頼度要件に従って実施される。Tx7は、したがって、ステップS8において、さらなる第1の送信信号であるさらなる第1の信号を送信するように構成され得、ここで、さらなる第1の信号はオブジェクト検出信号を含む。次いで、周波数オフセット信号である第2の信号が、各センササイクルの終了時におよび/またはFMCWレーダーデバイス1の電源投入時に送信され得る。さらに、例えば、FMCWレーダーデバイス1の電源投入中には、センササイクルの終了時の第2の信号の送信と比較して第2の信号のより大きい数の送信が送信され得る。それにより、電源投入中の第2の信号の送信は、より包括的なブロッキング検出を表し得る。一実施形態によれば、周波数オフセット信号である第2の信号を送信するステップS4は、少なくともFMCWレーダーデバイスの始動中に、さらなる第1の信号のI回の送信ごとに1回実施され、I≧1、であり、および/またはFMCWレーダーデバイスの動作中にJミリ秒ごとに1回実施され、J≧1である。一実施形態によれば、第2の信号を送信するステップは毎秒25回実施される。
【0043】
例えば、FMCWレーダーデバイス1は、気象指示システム(図示せず)に動作可能に結合され得る。気象指示システムは、したがって、FMCWレーダーデバイス1に気象指示信号を提供し得る。FMCWレーダーデバイス1のコントローラ2は、それにより、気象指示信号に基づいて第2の信号の送信をスケジュールするように構成され得る。例えば、雨および/または雪など、降水の指示は、降水の指示が受信されない場合におけるよりも頻繁に第2の信号が送信されることをもたらし得る。これは、Tx7の前での(氷もしくは雪などの)水または泥の拡張検出を可能にし得る。例えば、水の凝固点を下回る温度の温度指示の場合には、水の凝固点を上回る温度の温度指示の場合におけるよりも頻繁に第2の信号が送信され得る。これは、Tx7の前に氷または雪の拡張検出を可能にし得る。
【0044】
FMCWレーダーデバイス1は、77GHz FMCWレーダー構成など、自動車レーダーのためのレーダー構成の一部であり得る。特に、FMCWレーダーデバイス1は自動車両9中に設けられ得る。
図3は、FMCWレーダーデバイス1を備える自動車両9を示している。
【0045】
本発明について、主にいくつかの実施形態に関して上記で説明した。しかしながら、当業者によって容易に諒解されるように、上記で開示した実施形態以外の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内において同様に採用可能である。