【文献】
化学大辞典編集委員会,化学大辞典6,共立出版株式会社,1979年11月10日,Pages695-696(「二酸化塩素」項)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一経路と前記第二経路は、前記残留ガスを取込む取込口側又は前記二酸化塩素ガスを前記室内に送り出す送風口側の一部が共有経路によって構成される、請求項4に記載の二酸化塩素ガス発生システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
二酸化塩素ガスは、反応性が高く不安定であり、周囲空間の種々の物品の表面に存在す
る汚れと反応してNaClのような塩類を生成して分解する。そのため、長期にわたって一定濃度で保管することが困難と言われている。一方で、二酸化塩素ガスは、分解に要する時間が長いことが報告されている。例えば、非特許文献1には、燻蒸消毒の必要な密閉された空間に発生したピーク濃度が100ppmを超える二酸化塩素ガスは、そのまま放置しておくと10時間から15時間を要して分解し、WHOが定める1日8時間作業者が許容される安全な最大濃度0.1ppm以下に達することが記載されている。そのため、製薬施設、食品製造施設、バイオ研究施設、医療手術室などの空間において、仮に二酸化塩素ガス消毒殺菌を実施した場合には、二酸化塩素ガスを発生させてから安全な濃度になって消毒殺菌された空間で製造、実験、手術を再開するまで半日以上を要することになる。その間、上記空間内での生産活動、研究活動、医療行為は中断せざるを得ない。そこで、従来、ガス発生後対象空間の消毒殺菌に必要な時間、例えば3時間を経過した後は、上記空間内で活性炭フィルタにより二酸化塩素ガスを吸着分解し、上記空間を室外の二酸化塩素ガスを含まない空気で置換希釈し、できるだけ短時間で空間内の残存二酸化塩素濃度を安全濃度0.1ppm以下にできるような工夫をして、対象空間の利用の再開を早めることがなされてきた。しかし、この場合でも、残存ガスの濃度低減に数時間を要していた。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑み、二酸化塩素ガスを発生でき、かつ、二酸化塩素ガスを従来よりも短時間で分解できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するため、二酸化塩素ガスを発生させるとともに、酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方を含有する濾材を用いて二酸化塩素ガスを分解することとした。
【0012】
詳細には、本発明は、二酸化塩素ガスを発生する二酸化塩素ガス発生装置と、前記二酸化塩素ガス発生装置から室内に放出された二酸化塩素ガスの残留ガスを取込み、分解する二酸化塩素ガス分解装置と、を備え、前記二酸化塩素ガス分解装置は、酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方を含有する濾材を含む。
【0013】
本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、二酸化塩素ガス発生装置を備えることで、他の塩素、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素と比較して、殺菌や滅菌をより安全に実施することができる。また、二酸化塩素ガスは、塩素のような強い臭いがしないことから、殺菌や滅菌を実施する際の臭いの不快感を低減することができる。更に、二酸化塩素ガスは、単位重量当たりの殺菌力が高く、胞子、かび、バクテリア、ウイルス等に優れた滅菌および殺菌効果を発揮し、発がん性物質を生成することもない。また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、二酸化塩素ガス分解装置を備えることで、二酸化塩素ガスを従来よりも短時間で分解することができる。酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方を濾材に含有させることで、従来の活性炭と比較して、二酸化塩素ガスの分解性能をより向上し、安全濃度になるまでの分解時間をより短くすることができる。安全濃度には、WHOが定める1日8時間作業者が許容される安全な最大濃度0.1ppmが例示される。酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方が二酸化塩素ガスの分解に対して有効であることは、本発明者によって見いだされたものである。酸化マンガンには、二酸化マンガン(MnO
2)、三酸化二マンガン(Mn
2O
3)、四酸化三マンガン(Mn
3O
4)などが例示される。過マンガン酸塩には、M
IMnO
4(M
Iはアルカリ金属を表す)、M
II(MnO
4)
2(M
IIはアルカリ土類金属を表す)などが例示される。なお、本発明は、胞子、カビ、バクテリアなどの殺菌や滅菌、ウイルスの不活化のみならず、チャタテムシなどのような微小昆虫を殺虫する技術として用いてもよい。
【0014】
室には、燻蒸消毒の必要な密閉された空間が例示される。具体的には、室には、製薬製造施設、食品製造施設、バイオ研究施設、医療施設における、燻蒸消毒の必要な密閉された空間が例示される。
【0015】
濾材は、例えば、酸化マンガン粉末をバインダで固めた粒状ペレットや、活性炭やゼオライトの多孔質体片に前述の過マンガン酸塩を含有させた粉末をバインダで固めたペレットを空気流入口と空気流出口の2か所の開口を有する密閉容器に充填した充填層とすることができる。また、濾材は、通気性のあるハニカム構造体の接ガス表面にバインダで酸化マンガン粉末や過マンガン酸塩を含有させた活性炭やゼオライトの多孔質の粉末を固着したハニカムフィルタとしてもよい。
【0016】
酸化マンガンによる二酸化塩素ガスの分解は、以下の反応式のような不均化反応によると推測される。下記反応式によれば、分解性能は、空気中の相対湿度が高い方が好ましいと推測される。
【0017】
(化2)
2ClO
2+H
2O → HClO
2+HClO
3
【0018】
そこで、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、前記室内を所定湿度に加湿する加湿装置を更に備える構成としてもよい。加湿装置を備えることで、室内を所定湿度に加湿することができる。その結果、二酸化塩素ガスの分解性能をより高めることができる。所定湿度は、50%〜70%、より好ましくは、55%〜65%とすることができる。上記のように、二酸化塩素ガスが放出される室内は、密閉空間とすることができるため、室内が一度加湿されると、室内の湿度は一定時間保持される。そこで、加湿装置は、二酸化塩素ガス発生装置の稼働前に、室内を所定湿度に加湿するようにしてもよい。また、加湿装置は、二酸化塩素ガス発生装置が稼働中、室内を所定湿度に加湿するようにしてもよい。加湿装置が二酸化塩素ガス発生装置の稼働前に室内を所定湿度に加湿する場合、加湿装置は室内から取込まれた空気を加湿することができる。また、加湿装置が二酸化塩素ガス発生装置の稼働中に室内を所定湿度に加湿する場合、加湿装置は室内から取込まれた空気を加湿してもよく、また、二酸化塩素ガスが分解された空気、換言すると二酸化塩素ガス分解装置を通過した空気を加湿してもよい。
【0019】
ここで、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、前記室内から取込まれた空気が通過し、前記二酸化塩素ガス発生装置が設けられた第一経路と、前記二酸化塩素ガス分解装置が設けられ、前記二酸化塩素ガス分解装置によって分解された空気が流れる第二経路と、前記加湿装置が設けられ、前記加湿装置によって加湿された空気が流れる第三経路と、を更に備える構成としてもよい。
【0020】
第一経路には、二酸化塩素ガス発生装置が設けられている。そのため、二酸化塩素ガス発生装置の稼働中、第一経路の二酸化塩素ガス発生装置よりも上流側には、屋外空気などの室外空気または室内から取込まれた空気が流れ、第一経路の二酸化塩素ガス発生装置よりも下流側には、二酸化塩素ガス発生装置から発生した二酸化塩素ガスが流れる。なお、二酸化塩素ガス発生装置の非稼働中においては、第一経路には、室内から取込まれた空気(還気)が単に流れるようにしてもよい。二酸化塩素ガス発生装置に空気に含まれる不純物を捕捉するフィルタを設けることで、第一経路を流れる空気に含まれる不純物を捕捉することが可能となる。第一経路に還気を循環させる場合は、一端が室内の空気を取込む取込口に設けられ、他端が二酸化塩素ガスを室内に送り出す送風口に設けることができる。
【0021】
第二経路には、二酸化塩素ガス分解装置が設けられており、二酸化塩素ガス分解装置の稼働中、第二経路の二酸化塩素ガス分解装置よりも上流側には、室内から取込まれた空気
が流れ、第二経路の二酸化塩素ガス分解装置よりも下流側には、二酸化塩素ガス分解装置によって二酸化塩素ガスが分解された空気が流れる。第二経路は分解後の空気を室内に戻す場合、一端を上記取込口に設け、他端を上記送風口に設けることができる。すなわち第一経路と第二経路は、取込口側又は送風口側の一部を共有経路によって構成してもよい。
【0022】
第三経路には、加湿装置が設けられており、第三経路の加湿装置よりも上流側には、室内から取込まれた空気が流れ、第三経路の加湿装置よりも下流側には、加湿された空気が流れる。第三経路は、室内空気に対して加湿する場合、一端を上記取込口に設け、他端を上記送風口に設けることができる。第三経路は、取込口側又は送風口側の一部を第一経路又は第二経路と共有経路によって構成してもよい。また、第三経路の一端は、第二経路の二酸化塩素ガス分解装置の下流側で合流させてもよい。これにより、加湿装置は、二酸化塩素ガス分解装置によって二酸化塩素ガスが分解された空気を加湿することができる。そのため、加湿装置よりも上流側の第三経路には、二酸化塩素ガスが分解された空気が流れ、第三経路の加湿装置よりも下流側には、二酸化塩素ガスが分解され、かつ加湿された空気が流れる。これにより、二酸化塩素ガスによって加湿装置が腐食されることを防止することができる。
【0023】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生装置は、前記二酸化塩素ガス発生システムの上部に設けられ、前記二酸化塩素ガスを前記室内に送り出す送風口と、前記送風口の下方の二酸化塩素ガス発生システムの下部に設けられ、前記残留ガスを取込む取込口、を更に備え、前記送風口から二酸化塩素ガスを水平から上方向に送風する構成としてもよい。これにより、室内の上部では二酸化塩素発生システムから外向きの水平から上方向、室内の下部では二酸化塩素発生システム側に向かう水平方向の空気の流れを形成することができる。その結果、効率よく室内の空気を循環させることができ、湿度調整、二酸化塩素ガスによる燻蒸消毒、又は二酸化塩素ガスの分解に要する時間を低減することができる。二酸化塩素ガス発生システムは、室外室内のいずれに設置するものであってもよく、二酸化塩素ガスを上方向に吹出してもよい。
【0024】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムにおいて、前記第一経路と前記第二経路は、前記残留ガスを取込む取込口側又は前記二酸化塩素ガスを前記室内に送り出す送風口側の一部が共有経路によって構成されていてもよい。また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムにおいて、前記第三経路は、前記残留ガスを取込む取込口側又は前記二酸化塩素ガスを前記室内に送り出す送風口側の一部が前記第一経路又は前記第二経路と共有経路によって構成されていてもよい。経路の一部を共有経路とすることで、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システム内の空間を広げ、若しくは本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムをコンパクト化することができる。また、経路の一部を共通経路とする二酸化塩素ガス発生システムは、使用材料を削減することができ、経済的にも優れている。
【0025】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、前記室内の取込口近傍に設けられ、前記二酸化塩素ガス発生装置稼働前、前記室内の空気の相対湿度を検知する湿度センサと、前記二酸化塩素ガス発生装置稼働後、前記二酸化塩素ガスを含む空気から前記湿度センサを隔離する隔離装置と、を更に備える構成としてもよい。
【0026】
湿度センサを備えることで、二酸化塩素ガス発生装置稼働前の室内の空気の相対湿度を検知することができる。また、隔離装置を備えることで、湿度センサの二酸化塩素ガスとの接触による劣化を抑制することができる。
【0027】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムにおいて、前記二酸化塩素ガス発生装置は、ペレット状亜塩素酸ナトリウムと酸性液との化学反応によって二酸化塩素ガスを発生させ、前記ペレット状亜塩素酸ナトリウムと前記酸性液とを収容する容器と、前記容器
を加熱する加熱装置と、前記加熱装置によって加熱された前記容器から発生する二酸化塩素ガスに含まれる不純物を捕捉するフィルタ装置と、を有し、前記二酸化塩素ガス発生システムは、前記フィルタ装置を通過した二酸化塩素ガスを前記室内に送るファンを更に備える構成としてもよい。
【0028】
二酸化塩素ガス発生装置は、上記構成に限定されるものではないが、上記構成とすることで、従来技術で懸念されていた二酸化塩素ガスの生成に伴って発生したミストや固形粒子による汚染を回避することができる。
【0029】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス発生システムは、前記室内を所定湿度に加湿する加湿装置と、前記二酸化塩素ガス発生システムを制御する制御装置と、を更に備え、前記制御装置は、前記加湿装置を稼働させ、前記室内が所定湿度に達すると前記二酸化塩素発生装置を稼働させ、前記室内が所定の二酸化塩素濃度に達して所定時間が経過すると前記二酸化塩素ガス分解装置を稼働させるようにしてもよい。
【0030】
上記制御は、制御装置による制御の一例である。制御装置が上記のような制御を行うことで、室内の殺菌や滅菌を安全かつ短時間で行うことができる。
【0031】
ここで、本発明は、上述した二酸化塩素ガス分解装置として特定してもよい。具体的には、本発明は、二酸化塩素ガスを発生する二酸化塩素ガス発生装置から室内に放出された二酸化塩素ガスの残留ガスを取込み、分解する二酸化塩素ガス分解装置であって、取込んだ前記残留ガスを分解する、酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方を含有する濾材を含む、二酸化塩素ガス分解装置である。
【0032】
本発明に係る二酸化塩素ガス分解装置によれば、二酸化塩素ガスを従来よりも短時間で分解することができる。酸化マンガンと過マンガン酸塩とのうち少なくとも何れか一方を濾材に含有させることで、従来の活性炭と比較して、二酸化塩素ガスの分解性能をより向上し、安全濃度になるまでの分解時間をより短くすることができる。
【0033】
また、本発明に係る二酸化塩素ガス分解装置は、取込まれた空気の流れにおいて、前記濾材の上流側に設けられたプレフィルタと、前記取込まれた空気の流れにおいて、前記濾材の下流側に設けられたアフターフィルタと、前記濾材に前記室内の空気を通過させる分解装置のファンと、前記濾材の入口側に設けられた整流板と、のうち少なくとも何れか一つを更に備える構成としてもよい。
【0034】
プレフィルタにより、取込まれた空気に含まれる埃やごみを捕捉することができる。また、アフターフィルタにより、濾材の粉じんの飛散を抑制することができる。また、分解装置のファンにより、取込んだ空気を濾材に確実に通過させることができる。また、整流板により、取込まれた空気の流れを均一化して、濾材の捕捉性能を向上することができる。
【0035】
また、本発明は、上述した二酸化塩素ガス発生システムによる室内の燻蒸方法として特定することもできる。例えば、本発明に係る燻蒸方法は、上述した加湿装置を稼働させるステップと、前記室内が所定湿度に達すると前記二酸化塩素発生装置を稼働させるステップと、前記室内が所定の二酸化塩素濃度に達して所定時間が経過すると前記二酸化塩素ガス分解装置を稼働させるステップとを備える。なお、燻蒸とは殺菌、滅菌、微小昆虫の殺虫などを目的としたものを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、二酸化塩素ガスを発生でき、かつ、二酸化塩素ガスを従来よりも短時
間で分解できる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。例えば第一実施形態では、滅菌室を例に説明するが、二酸化塩素ガス発生システムは、胞子、カビ、バクテリアなどの殺菌や滅菌、ウイルスの不活化のみならず、チャタテムシなどのような微小昆虫を殺虫する技術として用いてもよい。この場合、二酸化塩素ガス発生システムによれば、チャタテムシ自体のみならず、その食料源であるカビも殺菌することができるので、根本的にチャタテムシの再発生を防止できる。
【0039】
<第一実施形態>
<<二酸化塩素ガス発生システムの構成>>
図1は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生システム(以下、単にガス発生システムともいう。)100の概略構成の側面図を示す。
図2は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生システム100の概略構成の上面図を示す。
【0040】
第一実施形態に係るガス発生システム100は、箱型の筐体1内に、二酸化塩素ガス発生装置(以下、単にガス発生装置ともいう)2、加湿器3、ファン4、二酸化塩素ガス分解装置(以下、単にガス分解装置ともいう)5、制御装置6を備える。ガス発生システム100は、燻蒸消毒の必要な密閉された空間である滅菌室7の壁71の外側に設けられており、筐体1の下部に設けられた取込口11から滅菌室7内の空気を取込み、筐体1の上部に設けられた送風口12から二酸化塩素ガスを滅菌室7に送り出す。滅菌室7の壁71には、取込口11及び送風口12に対応する位置に開口が設けられている。これにより、滅菌室7とガス発生システム100は、取込口11及び送風口12によって連通している
。取込口11から取込まれる空気を性状別にみると、運転態様によりガス発生装置2稼働前の滅菌室7内の空気(二酸化塩素ガスを含まない空気)、ガス発生装置2の稼働中の二酸化塩素ガスを含む空気、ガス発生装置2の稼働後の空気(残存ガスを含む空気)、加湿器3によって加湿された空気が含まれる。送風口12から送り出される空気には、ガス発生装置2の稼働前、かつ、加湿器3の稼働中の加湿された空気(ここでは循環空気)、ガス発生装置2の稼働中の二酸化塩素ガスを含む空気が含まれる。なお、送風口12、取込口11は滅菌室7の壁71に設けた開口と、ダクトを用いて連通させてもよい。また、ガス発生システム100は、使用するときのみ設置する構成としてもよく、取り外す際には壁71の開口を閉塞できるようにしておけばよい。例えば壁71の開口にダンパなどの開閉可能な装置を設けておけば、ガス発生システム100を使用するときには送風口12、取込口11を壁71の開口に接続してダンパを開状態とし、使用しないときにはガス発生システム100を壁71から取り外しダンパを閉状態とすることもできる。また、二酸化塩素ガス発生システム100は室内に設置してもよい。この場合、送風口12を上記のようにガス発生システム100の上部の側面に設けてもよいし、ガス発生システム100の上面に設けて上方にガスを送風する構成としてもよい。
【0041】
<<ガス発生装置>>
次に、
図1、
図2に加え、
図3、
図4も参照しながら、第一実施形態に係るガス発生装置2について説明する。
図3は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生装置2の概略構成の斜視図を示す。
図4は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生装置2の概略構成の分解斜視図を示す。ガス発生装置2は、台座21、ヒータ22、容器23、タンク24、ファンフィルタユニット25、遮蔽体26、ヒータの制御装置27を備える。
【0042】
台座21は、ヒータ22や容器23を支持する。第一実施形態に係る台座21は、四角形であり、全体として直方体を形成するガス発生装置2の底面を形成する。なお、台座21の対向する二つの辺には、ガス発生装置2を把持するための把持部28が設けられている。
【0043】
ヒータ22は、台座21の中央部に設けられ、載置される4つの容器23を加熱する。ヒータ22は、ガス発生装置の制御装置27からの電力供給を受け、ガス発生装置の制御装置27の指示に従って稼働する。ガス発生装置の制御装置27は、電源、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行して、ヒータ22を制御する。ヒータ22は、外部からの電力供給を受けるようにし、ガス発生システム100を制御する制御装置6によって制御してもよい。
【0044】
容器23には、ペレット状亜塩素酸ナトリウムが投入され、後述するタンク24を介して酸性液が供給される。なお、ペレット状亜塩素酸ナトリウムは予め容器23に入れておいてもよいし、電子制御で容器23に投入される装置を用いてもよい。容器23が加熱され、容器23の内部でペレット状亜塩素酸ナトリウムと酸性液とが化学反応し、二酸化塩素ガスが発生する。ここで、
図5は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生装置の容器の一例を示す。
図5に示す容器23は、仕切り材231により、容器23の内部が複数の部屋232に仕切られている。
図5では、容器23は、中央に位置する上面視四角形の中央の部屋232aと、この中央の部屋232aの周囲に位置する4つの周囲の部屋232bとを備える。仕切り材231は、容器23から取り外し自在である。また、仕切り材231には、複数の円形の貫通孔233が設けられ、各部屋は連通している。円形の貫通孔233は、矩形状、スリットとすることができるが、ペレット状亜鉛酸ナトリウムが通過しない大きさとすることが好ましい。ペレット状亜鉛酸ナトリウムは、例えば円柱形状のペレットとすることができる。ペレット状亜鉛酸ナトリウムは、他の形状でもよい。ペレット状亜塩素酸ナトリウムは、亜塩素酸ナトリウム粉末にバインダを混合してペレット錠剤またはタブレット錠剤に加工することにより、任意の大きさ、形状とすることができる
。バインダとして、水溶性高分子化合物であるカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールなどが利用できる。ペレット状亜塩素酸ナトリウムは、固体であるため、保管や運搬等が容易であり、人体に付着しても肌を荒らす心配が少ない。なお、容器23内への酸性液の供給に先立って、ペレット状亜塩素酸ナトリウムを予め容器23内に配置しておいてもよい。
【0045】
タンク24は、酸性液を貯留する。貯留された酸性液は、ノズル29を介して、容器23に供給される。酸性液は、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酢酸などの食用有機酸を用いることができる。これにより、塩酸や硫酸などの酸を用いる場合と比較して、より安全かつ容易に二酸化塩素ガスを発生させることができる。酸性液には、食用の酸性水溶液、例えば、酒石酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、フィチン酸、アスコルビン酸、あるいはこれらの混合物を用いることができる。なお、塩酸や硫酸などの酸を用いる場合には、pHが3以下の酸性液を用いた方がよく、これにより確実かつ迅速に二酸化塩素を発生させることができる。
【0046】
ファンフィルタユニット25は、容器23の上方に設けられ、容器23から発生する二酸化塩素ガスを濾過して粒子状の物質を捕捉し、二酸化塩素ガスを送り出す。ファンフィルタユニット25は、側面から見ると上からHEPAフィルタ、内蔵ファンの順に配置され、内蔵ファンは上向き気流が形成されるような羽根形状で設置されている。
【0047】
遮蔽体26は、四角形の遮蔽体(例えばビニールカーテンなど)が4枚組み合わされることで容器23の周囲を囲み、台座21及びファンフィルタユニット25とともにガス発生装置2の内部空間を形成する。遮蔽体26の3方向の下部には、ガス発生装置2の内部に周囲の空気を取り込むための隙間30が設けられている。ファンフィルタユニット25の内蔵ファンが稼働すると、隙間30を介して、周囲の空気が取り込まれる。ガス発生装置2で発生した二酸化塩素ガスやミストが隙間30から漏えいするのを抑制する必要があることから、隙間30からの空気を取り込む速度を所定以上にする必要がある。例えば、吸引速度は、15cm/s以上とすることが好ましく、このような吸引速度を実現できるように、ファンフィルタユニット25の内蔵ファンの風量、隙間30の総面積を設定することが好ましい。滅菌室7から取込まれた空気が、取込口11、ガス発生装置2、ファンフィルタユニット25、送風口12を流れる経路は、本発明の第一経路に相当する。
【0048】
<<加湿器>>
加湿器3は、ガス発生装置2の背面に設けられ、滅菌室7から取込まれた空気を加湿する。ここでは、ガス発生装置2への導入空気と加湿器2への導入空気が仕切りで区画され
、両者が各々の流路を形成している。滅菌室7の相対湿度は、取込口11近傍に設置された湿度センサ9より取得することができる。加湿器3は、外部からの電力供給を受け、制御装置6の指示に従って稼働する。制御装置6は、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行し、湿度センサ9で検知された相対湿度に基づいて、加湿器3を制御する。なお、加湿器3を制御する加湿器の制御装置を別途設けてもよい。滅菌室7から取込まれた空気が、取込口11、加湿器3、送風口12を流れる経路は、本発明の第三経路に相当する。
【0049】
<<ファン>>
ファン4は、ファンフィルタユニット25と加湿器3の上方(下流)に設けられ、二酸化塩素ガス又は加湿された空気を滅菌室7に向けて水平方向に送り出す。ファン4は、外部からの電力供給を受け、制御装置6の指示に従って稼働する。制御装置6は、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行して、ファン4を制御する。
【0050】
<<ガス分解装置>>
次に、
図1、
図2に加え、
図6も参照しながら、第一実施形態に係るガス分解装置5について説明する。
図6は、第一実施形態に係る二酸化塩素ガス分解装置の概略構成の透視図を示す。ガス分解装置5は、箱型のガス分解装置の筐体51内に、入口52、パンチング板などで形成された整流板56、プレフィルタ53、メインフィルタ54、アフターフィルタ55、整流板56、ガス分解装置のファン58、出口57を空気の流れる順に配置して備え、ガス発生装置2から滅菌室7内に放出された二酸化塩素ガスの残留ガスを取込み、分解する。この入口52から出口57までが本願の第二経路を形成する。
【0051】
入口52は、ガス分解装置の筐体51の滅菌室7側の一方の角部近傍に設けられ、ここではガス発生装置2と上端を接してその下方に配置され、取込口11と連通しており、滅菌室7の空気を取り込む。
【0052】
プレフィルタ53は、取込まれた空気の流れにおいて、プレフィルタ53、メインフィルタ54、アフターフィルタ55の中で最上流側に設けられ、取込まれた空気に含まれる埃やごみを捕捉する。プレフィルタ53は、例えば所謂重量法において捕集率70%程度の性能を有するものによって構成することができる。
【0053】
メインフィルタ54は、プレフィルタ53とアフターフィルタ55との間、換言すると取込まれた空気の流れにおいて、プレフィルタ53よりも下流側、かつアフターフィルタ55よりも上流側に設けられ、取込まれた空気に含まれる二酸化塩素ガス(残存ガス)を分解する。
図6に示す例では、メインフィルタ54は、酸化マンガン粉末や過マンガン酸塩を含有させた活性炭やゼオライトの多孔質の粉末をバインダで粒状ペレットに固めたものが通気性のある板状の基材(ウレタンフォームなど)の表面に固着させたものが、角度を交互に変えて積層され、横断面視において、直線がくり返し屈曲するプリーツ構造を有している。なお、メインフィルタ54は、通気性のあるハニカム構造体の接ガス表面にバインダで酸化マンガン粉末や過マンガン酸塩を含有させた活性炭やゼオライトの多孔質の粉末を固着したハニカムフィルタとしてもよい。
【0054】
アフターフィルタ55は、取込まれた空気の流れにおいて、プレフィルタ53、メインフィルタ54、アフターフィルタ55の中で最下流側に設けられ、メインフィルタ54の粉じん等の飛散を抑制する。本発明の二酸化塩素ガス分解装置がクリーンルーム仕様の滅菌室に適用される場合には、アフターフィルタ55には、HEPA仕様または準HEPA仕様の高性能フィルタが使用することが望ましい。しかし、クリーンルーム以外の低い清浄度の滅菌室に適用する場合には、アフターフィルタ55は、例えば所謂比色法において捕集率65%程度の性能を有するものによって構成することができる。
【0055】
整流板56は、メインフィルタ54の入口側及びアフターフィルタ55の出口側に設けられ、取込まれた空気の流れを均一化する。これにより、メインフィルタ54による二酸化塩素ガスの分解性能がより向上する。なお、整流板56を入口52側のみに設置し、ガス分解装置5は、より簡易な構成としてもよい。
【0056】
出口57は、平面視において、上記入口52と対角の角部近傍で同一平面に設けられ、加湿器3が設けられた経路と連通している。入口52と出口が対角に位置することで、所謂ショートサーキットが抑制される。
【0057】
ガス分解装置のファン58は、滅菌室7の残存ガスをガス分解装置5に引き込み、プレフィルタ53、メインフィルタ54、アフターフィルタ55を通過させる。なお、滅菌室7から取込まれた空気が、入口52、ガス分解装置5、出口57を流れる経路は、本発明の第二経路に相当する。ファン58は、ガス分解装置5の下流側に設けることで、ファン
58には二酸化塩素ガスが分解された空気が流れるので、ファン58が二酸化塩素ガスにより腐食することを防止することができる。
【0058】
なお、ガス発生システム100は、上記に加えて、ガス発生システム100を移動させるキャスタ、各フィルタの点検、又は交換などのメンテナンスを行う点検扉を更に備える構成としてもよい。
【0059】
<<制御装置>>
制御装置6は、ガス発生システム100の外側に設けられ、操作パネル、ディスプレイ、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行して、ガス発生システム100を制御する。
【0060】
<<ガス発生システムの動作>>
次に、第一実施形態に係るガス発生システムの動作について説明する。
図7は、第一実施形態に係るガス発生システムの動作フローを示す。以下の説明では、動作に対応する制御プログラムを制御装置6のメモリに格納しておき、CPUが制御プログラムを実行し、ガス発生システムを制御する場合を例に説明する。但し、ガス発生システム100は、ガス発生システムの管理者からの指示をCPUが受け付け、指示に従って、ガス発生システム100を制御してもよい。
【0061】
ステップS01では、加湿器3、ファンフィルタユニット25、ファン4が稼働する。これら各装置の稼働は、CPUが、管理者からの指示を受け付けて実行してもよく、また、制御装置6にタイマを内蔵し、所定時間になると自動的に各装置を稼働してもよい。加湿器3などの各装置が稼働するとステップS02へ進む。
【0062】
ステップS02では、滅菌室7内が所定の相対湿度に達すると加湿器3が停止され、ガス発生装置2が稼働する。具体的には、CPUは、滅菌室7内の相対湿度に関する情報を取得し、既定の相対湿度に達したか否か判断する。例えば、滅菌室7内の相対湿度が55%〜65%に達すると、既定の相対湿度に達したと判断される。滅菌室7内の相対湿度が既定の相対湿度に達すると、CPUは加湿器3を停止させ、ガス発生装置2を稼働させる。具体的には、CPUは、タンク24に貯留された酸性液をノズル29を介して容器23に供給し、かつ、ヒータ22を稼働させ、容器23を加熱する。ガス発生装置2が稼働すると、ステップS03へ進む。
【0063】
ステップS03では、滅菌室7内が所定の二酸化塩素ガス濃度、例えば400ppmに達すると、ガス発生装置2が停止(すなわちガス発生装置2のヒータ22を停止)され、所定時間例えば3時間だけ放置される。室内が所定の二酸化塩素濃度に達したことを判定する方法としては、市販の二酸化塩素濃度計を用いることができる。また、室の容積別に予め試験的に求めたガス発生装置を稼働させてから所定の濃度に達するまでの時間に基づいて、ガス発生装置を稼働させてから当該時間が経過したら所定の二酸化塩素濃度に達したと判定してもよい。
【0064】
次に、ステップS04では、分解装置のファン58が稼働する。具体的には、CPUは、ガス分解装置のファン58を所定時間稼働させる。ガス分解装置のファン58を稼働させる所定時間は、ガス分解装置のファン58の稼働時間と、二酸化塩素ガスの濃度の減少速度との関係に基づいて、安全濃度になる時間を予め算出することで得ることができる。安全濃度には、WHOが定める1日8時間作業者が許容される安全な最大濃度0.1ppmが例示される。例えば、第一実施形態に係るガス発生システム100によれば、300ppm以上の濃度の二酸化塩素を30分程度で0.1ppm以下まで低減することができる。以上により、ガス発生システムの動作が終了する。なお、ファン4及びファンフィル
タユニット25は、滅菌室7の使用状況に応じて継続して稼働することができる。
【0065】
<<空気の流れ>>
次に、空気の流れについて説明する。
図8は、加湿空気の流れを説明する図を示す。
図8(A)は、ガス発生システム100の正面図、
図8(B)は、ガス発生システム100の側面図、
図8(C)は、ガス発生システム100の背面図を示す。
図8(a)は
図8(A)に対応する上面図、
図8(b)は
図8(B)に対応する上面図、
図8(c)は
図8(C)に対応する上面図である。
【0066】
図8は、上述したステップS01における状態を示し、加湿器3、ファンフィルタユニット25、ファン4が稼働している。そのため、滅菌室7内から取込まれた空気は、取込口11、非稼働のガス発生装置2、ファンフィルタユニット25、送風口12を流れる第一経路と、取込口11、加湿器3、送風口12を流れる第三経路を循環する。第一経路では、ファンフィルタユニット25の内蔵ファンが稼働すると、3方向に形成された隙間30を介して、周囲の空気が取り込まれ、滅菌室7からの空気が第一経路を通る。第一経路を通る空気は、ファンフィルタユニット25を通過することで不純物が捕捉される。また、第三経路を通る空気が、第一経路のうちガス発生装置2の外側と空気取り入れ流路を共有し、加湿器3によって加湿されることで、滅菌室7内の相対湿度が徐々に高まる。
【0067】
図9は、二酸化塩素ガスの流れを説明する図を示す。
図9(A)は、ガス発生システム100の正面図、
図9(B)は、ガス発生システム100の側面図、
図9(C)は、ガス発生システム100の背面図を示す。
図9(a)は
図9(A)に対応する上面図、
図9(b)は
図9(B)に対応する上面図、
図9(c)は
図9(C)に対応する上面図である。
【0068】
図9は、上述したステップS02における状態を示し、ファンフィルタユニット25、ファン4に加えて、ガス発生装置2が稼働している。
図8の例と同様に、滅菌室7内から取込まれた空気は、第一経路と、第三経路を循環する。但し、ガス発生装置2が稼働しているため、ガス発生装置2で発生した二酸化塩素ガスが第一経路を通る。また、ファンフィルタユニット25では、二酸化塩素ガスに含まれる不純物も捕捉される。また、加湿器3が停止しているため、第三経路を通る空気は、加湿されることなく、第三経路を単に通過する。
【0069】
図10は、残留ガスの処理の流れを説明する図を示す。
図10(A)は、ガス発生システム100の正面図、
図10(B)は、ガス発生システム100の側面図、
図10(C)は、ガス発生システム100の背面図を示す。
図10(a)は
図10(A)に対応する上面図、
図10(b)は
図10(B)に対応する上面図、
図10(c)は
図10(C)に対応する上面図である。
【0070】
図10は、上述したステップS04における状態を示し、ファンフィルタユニット25、ファン4に加えて、ガス分解装置のファン58が稼働している。そのため、滅菌室7内から取込まれた空気は、第一経路と、取込口11、第一経路の入口側と連通した入口52、ガス分解装置5、第三経路の入口近くと連通した出口57を流れる第二経路を循環する。但し、ガス発生装置2が非稼働であるため、第一経路を通る空気は、新たな化学物質を付与されずファンフィルタユニット25を通過することで不純物が捕捉される。また、第二経路を通る空気は、ガス分解装置5を通過することで、残存ガスが分解される。
【0071】
<<効果>>
以上、説明した第一実施形態に係る二酸化塩素ガス発生システム100は、ガス発生装置2を備えることで、他の塩素、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素と比較して、殺菌や滅菌をより安全に実施することができる。また、二酸化塩素ガスは、塩素のような強い臭いが
しないことから、殺菌や滅菌を実施する際の臭いの不快感を低減することができる。更に、二酸化塩素ガスは、単位重量当たりの殺菌力が高く、胞子、かび、バクテリア、ウイルス等に優れた滅菌および殺菌効果を発揮し、発がん性物質を生成することもない。また、第一実施形態に係るガス発生システム100は、ガス分解装置5を備えることで、二酸化塩素ガスを従来よりも短時間で分解することができる。メインフィルタ54に酸化マンガン粉末や過マンガン酸塩を含有させた活性炭やゼオライトの多孔質の粉末を含んだ濾材を用いることで、従来の活性炭と比較して、二酸化塩素ガスの分解性能をより向上し、安全濃度になるまでの分解時間をより短くすることができる。
【0072】
<第二実施形態>
図11は、第二実施形態に係る湿度センサ9の構成を説明する図を示す。第二実施形態では、湿度センサ9が、サンプリングチューブ91内に設けられ、サンプリングチューブ91に設けられた電磁バルブ92によってサンプリングチューブが開閉自在に構成されている。サンプリングチューブ91及び電磁バルブ92は、本発明の隔離装置に相当する。また、湿度センサ9は、ケーブルを介して制御装置6に接続されている。なお、湿度センサ9は、温度センサ表示ロガーに接続してもよい。また、サンプリングチューブ91の基端には、吸引ポンプ93が接続されており、滅菌室7内の空気をサンプリングチューブ91内に吸引することができるよう構成されている。吸引ポンプ93からの排気は、滅菌室7へ排出可能に構成されている。なお、電磁バルブ92や吸引ポンプ93を制御装置6と電気的に接続することで、これらを制御装置6によって制御することができる。
【0073】
次に、上記湿度センサ9の動作について説明する。まず、ガス発生装置2の稼働直前まで電磁バルブ92が開状態とされ、吸引ポンプ93が稼働される。これにより、滅菌室7内の空気がサンプリングチューブ91内に吸引される。吸引する際の空気の流量により湿度センサ9周囲の風速が決定される。湿度センサ9の精度を向上するためには、上記風速を湿度センサ9に適したものとすることが好ましい。例えば、風速は、10cm/s〜20cm/sの微風速であることが好ましい。
【0074】
次に、ガス発生装置2の稼働直前に、電磁バルブ92が閉状態とされる。これにより、その後ガス発生装置2によって二酸化塩素ガスが発生しても、二酸化塩素ガスと湿度センサ9とが直接接することがない。
【0075】
次に、電磁バルブ92が閉状態になる直前において、湿度センサ9で検知された相対湿度の情報が制御装置6に入力される。
【0076】
第二実施形態に係るガス発生システム100によれば、第一実施形態に係るガス発生システム100の効果に加えて、サンプリングチューブ91及び電磁バルブ92を備えることで、湿度センサ9と二酸化塩素ガスとの接触による湿度センサ9の劣化を抑制することができる。
【0077】
<第三実施形態>
ステップS03における動作は、以下のように行ってもよい。具体的には、CPUは、ノズル29を開いてタンク24に貯留されている酸性液を容器23に供給後、所定時間経過した後、ヒータ22を稼働してもよい。所定時間は、亜塩素酸ナトリウムの形状や大きさに応じて決定することができる。例えば、ペレット状亜塩素酸ナトリウムと酸性液とを反応させる場合には、所定時間は10分程度とすることができる。
【0078】
例えば、滅菌室7の室温が20℃〜30℃の範囲の場合、ペレットにしていない粉末状亜塩素酸ナトリウムと酸性液混合後の二酸化塩素ガス濃度が数分間も経過しないうちにピーク値の半分程度の200ppmに達する。一方、ペレット状亜塩素酸ナトリウムと酸性
液の反応では、室温状態では混合後10分程度までは管理者や作業員に安全な濃度(例えば、WHOの15分間の一時的短期曝露の安全指針300ppb=0.3ppm)以下であることが確認された。但し、加熱した場合は2分〜3分間経過すると安全な濃度を上回ることが確認された(
図12参照)。したがって、酸性液を投入後、例えば5分以上経過してから加熱することで、管理者や作業員の退避時間に余裕を持たせることができる。また、酸性液投入後10分以上経過してから加熱することで、
図12に示すように10分程度までは安全濃度な濃度以下となり、より十分に退避時間を確保することができる。
【0079】
以上のように、ヒータ22の稼働のタイミングを制御することで、安全性をより向上することができる。
【0080】
<変形例>
第一実施形態では、第一経路、第二経路、第三経路が何れもガス発生システム100内に収容されていたが、
図13に示すように、第二経路の一部をガス発生システム101の外側に設けられたダクト(ガス分解装置5の上流側のダクト81、ガス分解装置5の下流側のダクト82)によって構成してもよいし、さらに分解装置のファン58を当該ダクト内(例えば、ガス分解装置5の下流側のダクト82内)に設けてもよい。これにより、ガス分解装置5内の空間をより大きく確保することができるので、メインフィルタ54を大きくすることができ、ガス分解装置5による二酸化塩素ガスの分解性能を高めることができる。
【0081】
また、二酸化塩素発生システム100は室内空気を循環させる態様に限らず、全外気式例えば二酸化塩素ガス発生装置2には室内空気に限らず屋外空気などの室外空気が流入するようにしてもよいし、ガス分解装置5を例えば天井部に設置して室内の二酸化塩素ガスを取込んで分解したあと室外に排出する態様であってもよい。また、加湿装置に流入する空気も室外から流入する構成としてもよい。
【0082】
<第四実施形態>
第四実施形態では、ガス発生装置2、及びガス分解装置5を食品用粉体輸送系200の滅菌消毒に適用した場合について説明する。
図14は、二酸化塩素ガス発生装置2、及び二酸化塩素ガス分解装置5を備える食品用粉体輸送系200の概略構成を示す。なお、既に説明した実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明は割愛する。
【0083】
食品用粉体輸送系200は、3台の粉体輸送機201(3台の粉体輸送機201を纏めて、以下、吸引ローダ群ともいう)を備え、各粉体輸送機201は、輸送管202を介して直列に接続されている。第四実施形態における食品用粉体(以下、単に粉体ともいう)は、混合粉体であり、粒径や密度が異なる粉体が分離しないように3台の粉体輸送機201が直列に接続されている。また、各粉体輸送機201には、プロセス処理(例えば、食品の製造)の装置(図示せず)に粉体を導く供給配管217が接続されている。従って、粉体輸送機201内にある粉体は、一部が供給配管217を介してプロセス処理の装置(例えば、特定の食品の製造装置)に送られ、残部が輸送管202を介して下流側の粉体輸送機201に送られる。プロセス処理の装置には、特定の食品を製造する食品の製造装置や粉体を輸送する粉体輸送機201を構成する装置が含まれる。
【0084】
また、食品用粉体輸送系200は、輸送管202から分岐された分岐管203を含む。分岐管203は、後述する殺菌消毒の際に用いる配管系であり、プロセス処理の装置の一つである吸引ローダ群が設置された管路の入口と出口との途中に設けられている。より詳細には、分岐管203は、一端が食品用粉体輸送系200の粉体輸送入口204の近傍に接続され、他端が食品用粉体輸送系200の粉体輸送出口205の近傍に接続されている。分岐管203には、バルブ206,207が設けられている。粉体輸送入口204の近
傍のバルブ208、及び粉体輸送出口205の近傍のバルブ209が閉状態とされ、分岐管203に設けられたバルブ206,207が開状態とされた状態では、粉体輸送入口204の近傍のバルブ208よりも下流側から粉体輸送出口205の近傍のバルブ209まで、及び分岐管203で一つの閉鎖空間が形成される。この閉鎖空間は、本発明の「室」に相当し、第四実施形態では、この閉鎖空間内の殺菌消毒を実行するため、分岐管203にガス発生装置2、及びガス分解装置5が設置されている。
【0085】
図15は、粉体輸送機の一例を示す。粉体輸送機201は、ブロワ210、ローダ本体211、フィルタ212、ダンパ213、エアータンク214を備える。ブロワ210は、吸引管215を介してローダ本体211と接続され、ローダ本体211及びローダ本体211に接続された輸送管202の空気を吸引し、輸送管202を介して、粉体を吸引する。ローダ本体211は、吸引された粉体を貯蔵する。ダンパ213は、錘式排出ダンパであり、ローダ本体211に粉体が一定以上貯蔵されブロワ210の吸引が停止されると開状態となる。ダンパ213は、ローダ本体211に粉体が一定以上貯蔵されておらずブロワ210が吸引している際は閉状態となる。フィルタ212は、ローダ本体211内に設けられ、粉体を遮断して空気のみが通過する。エアータンク214内は、高圧なっており、図示しない弁を開放すると、フィルタ212直下において上向きに配置された配管216の開放端から空気を噴射する。エアータンク214には、配管216の一端が接続されている。配管216の他端(開放端)は、フィルタ212の内側を臨むように配置されている。
【0086】
粉体輸送機の制御装置215は、電源、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行して、粉体輸送機201を制御する。具体的には、粉体輸送機の制御装置215は、ブロワ210やエアータンク214の弁(図示せず)の制御を行う。粉体輸送機の制御装置215の機能は、ガス発生システムを制御する制御装置6が実行してもよい。
【0087】
ブロワ210が動作すると、フィルタ212の近傍に接続された輸送管202を介して粉体が吸引され、吸引された粉体はフィルタ212と接触してローダ本体211内に貯蔵される。ローダ本体211内の粉体が一定以上貯蔵され、ブロワ210が停止すると、粉体の重力によってダンパ213が開状態となり、粉体が落下する。各粉体輸送機201のそれぞれダンパ213の下方から落下した粉体は、一部が供給配管217を介して各プロセス処理の装置(例えば、特定の食品の製造装置)に送られ、残部がより下流側に設置された粉体輸送機201のブロワ210によって吸引され、輸送管202を介して下流側の粉体輸送機201に送られる。ブロワ210の停止時、エアータンク214から空気が噴射されると、配管216を介して噴射された空気がフィルタ212の内側から排出され、フィルタ212に付着した粉体が落下し、除去される。
【0088】
なお、上記の例では、ブロワ210を間歇運転することになるが、錘式排出ダンパ213に代えてローターリーバルブを用い、ブロワ210を連続運転してもよい。また、
図15に示す粉体輸送機201は、ブロワ210を用いて粉体を吸引輸送するが、粉体輸送機201は、コンプレッサを用いて粉体を圧送輸送するものでもよい。
【0089】
ガス発生装置2は、二酸化塩素ガスを発生する。ガス分解装置5は、ガス発生装置2から閉鎖空間内に放出された二酸化塩素ガスの残留ガスを取込み、分解する。制御装置6は、電源、CPU、メモリを含み、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行して、ガス発生装置2、及びガス分解装置5を制御する。なお、ガス発生装置2は、ガス発生装置を制御するガス発生装置の制御装置(
図4のガス発生装置の制御装置27相当)によって制御してもよい。
【0090】
ガス発生装置2、及びガス分解装置5は、食品用粉体輸送系200を殺菌消毒する際に作動する。換言すると、食品用粉体輸送系200が粉体輸送を行う際、粉体輸送入口204の近傍のバルブ208、及び粉体輸送出口205の近傍のバルブ209が開状態とされ、分岐管203に設けられたバルブ206,207は閉状態とされ、ガス発生装置2、及びガス分解装置5は停止状態となる。この状態で各ブロワ210が動作すると、粉体が粉体輸送入口204から粉体輸送出口205まで、食品用粉体輸送系200内を吸引輸送される。
【0091】
次に、第四実施形態における食品用粉体輸送系200の殺菌消毒処理について説明する。
図16は、第四実施形態における食品用粉体輸送系の殺菌消毒処理フローを示す。ステップS11では、粉体輸送入口204の近傍のバルブ208、及び粉体輸送出口205の近傍のバルブ209が閉状態とされ、分岐管203に設けられたバルブ206,207は開状態とされる。各バルブの開閉は、管理者が行ってもよく、また、各バルブを電磁バルブとし、制御装置6が制御するようにしてもよい。各バルブの開閉が完了するとステップS12へ進む。
【0092】
ステップS12では、殺菌消毒処理が実行される。粉体輸送入口204の近傍のバルブ208よりも下流側から粉体輸送出口205の近傍のバルブ209まで、及び分岐管203で一つの閉鎖空間が形成され、閉鎖空間内においてガス発生装置2が稼働する。次に、閉鎖空間内が所定の二酸化塩素ガス濃度(例えば、400ppm)に達すると、ガス発生装置2が停止され、所定時間例えば3時間だけ放置される。次に、分解装置のファン58が所定時間(例えば、30分)稼働し、粉体輸送入口204の近傍のバルブ208よりも下流側から粉体輸送出口205の近傍のバルブ209まで、及び分岐管203で一つの閉鎖空間内をガスが循環する。以上により、殺菌消毒処理が終了する。なお、上記所定の二酸化塩素ガス濃度、放置時間、及び分解装置のファン58の稼働時間は、殺菌消毒する設備によって変更することができる。例えば、閉鎖空間内の菌が多い場合には、所定の二酸化塩素ガス濃度をより濃くし、一方で放置時間は短くしてもよい。上記所定の二酸化塩素ガス濃度、放置時間、及び分解装置のファン58の稼働時間を決定する上では、閉鎖空間の一部(例えば輸送管202)にサンプリング管を設置し、菌の状態を予め確認しておくことが好ましい。殺菌消毒処理が終了すると、ステップS13へ進む。
【0093】
ステップS13では、粉体輸送入口204の近傍のバルブ208、及び粉体輸送出口205の近傍のバルブ209が開状態とされ、分岐管203に設けられたバルブ206,207は閉状態とされる。各バルブの開閉は、管理者が行ってもよく、また、各バルブを電磁バルブとし、制御装置6が制御するようにしてもよい。各バルブの開閉が完了すると、粉体輸送が再開される。
【0094】
以上説明した第四実施形態に係る食品用粉体輸送系200では、ガス発生装置2を備えることで、他の塩素、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素と比較して、殺菌や滅菌をより安全に実施することができる。また、ガス分解装置5を備えることで、二酸化塩素ガスを従来よりも短時間で分解することができる。ガス分解装置5のメインフィルタに酸化マンガン粉末や過マンガン酸塩を含有させた活性炭やゼオライトの多孔質の粉末を含んだ濾材を用いることで、従来の活性炭と比較して、二酸化塩素ガスの分解性能をより向上し、安全濃度になるまでの分解時間をより短くすることができる。更に、食品用粉体を輸送する食品用粉体輸送系200では、輸送管202内のカビの発生や、輸送管202への臭いの付着が懸念される。しかしながら、第四実施形態に係る食品用粉体輸送系200では、ガス発生装置2及びガス分解装置5を備えることで、カビの発生を抑制し、また、付着した臭いを除去することができる。
【0095】
なお、第四実施形態に係る食品用粉体輸送系200には、加湿器を更に設けるようにし
てもよい。また、第四実施形態に係る食品用粉体輸送系200には、第一実施形態に係るガス発生システム100を接続してもよい。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るガス発生システム、ガス発生装置、及びガス分解装置はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。また、本発明に係るガス発生システム、ガス発生装置、及びガス分解装置は、上述した実施形態以外にも種々な分野での使用が可能である。例えば、所謂ドラフトチャンバや安全キャビネットのような有害物質排気装置とガス発生装置及びガス分解装置を接続し、有害物質排気装置の殺菌や滅菌を行うようにしてもよい。例えば、有害物質排気装置の空気取り入れ扉を半閉鎖状態として二酸化塩素ガスを有害物質排気装置内に二酸化塩素ガスを発生させ、空気取り入れ扉を閉鎖後所定時間経過させる。次に所定時間経過後、空気取り入れ扉を半閉鎖状態としてガス分解装置5により、二酸化塩素ガスを取込み、分解する。
【0097】
また、ガス発生装置2、及びガス分解装置5は、配管やダクトの途中に設けることができる。配管の場合には、弁と弁とによって閉鎖された空間(配管の1区画)、ダクトの場合には、ダンパとダンパによって閉鎖された空間(ダクトの1区画)において、殺菌消毒処理や、脱臭処理を行うことができる。例えば、
図14に示す例では、バルブ206,207を閉状態として、ガス発生装置2、及びガス分解装置5を稼働させることで、バルブ206とバルブ207との間の分岐管206内の殺菌消毒処理や脱臭処理を行うことができる。配管やダクトには、通常、弁やダクトが設けられている。したがって、弁と弁との間の配管内や、ダンパとダンパとの間のダクト内の殺菌消毒処理や、脱臭処理を行うことができる。殺菌消毒処理は、配管やダクトの1区間に対して行ってもよく、また、配管やダクトの一端から他端までを順次行ってもよい。上記のように、配管やダクトには、通常、弁やダクトが設けられていることから、ガス発生装置2、及びガス分解装置5は、既設の配管やダクト、又はこれらを備える施設に容易に適用することができる。このように、本発明に係るガス発生システム、ガス発生装置、及びガス分解装置は、閉鎖空間を殺菌、滅菌する技術として広く用いることができる。