(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375145
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20180806BHJP
F21S 41/657 20180101ALI20180806BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20180806BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20180806BHJP
B60Q 1/068 20060101ALI20180806BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20180806BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180806BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20180806BHJP
【FI】
F21S2/00 375
F21S41/657
F21V29/76
F21V29/503 100
B60Q1/068 100
F21V29/83
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-106938(P2014-106938)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222671(P2015-222671A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚子
(72)【発明者】
【氏名】孫 准
【審査官】
當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−021135(JP,A)
【文献】
特開2009−212019(JP,A)
【文献】
特開2009−087733(JP,A)
【文献】
特開2014−041762(JP,A)
【文献】
特開2007−172932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21S 41/657
F21V 29/503
F21V 29/76
F21V 29/83
B60Q 1/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
発光素子と、
表面側に前記発光素子が設けられた熱源側熱拡散板と、
前記熱源側熱拡散板をブラケットを介して前記ハウジングに固定する上下調整用エイミングボルトと、
前記ハウジングの底部内面に設けられた筐体側熱拡散板と、
前記筐体側熱拡散板に滑動可能に接続された接続部材と
を具備し、
前記熱源側熱拡散板の下部の湾曲先端部は前記ハウジングの底部の凹部に収容され、前記上下調整用エイミングボルトによって前記熱源側熱拡散板を前記凹部における前記熱源側熱拡散板の前記湾曲先端部を略中心軸として回転させるようにし、
前記接続部材の湾曲先端部は前記ハウジングの前記凹部において前記熱源側熱拡散板の前記湾曲先端部に内接した車両用灯具。
【請求項2】
さらに、
前記熱源側熱拡散板を前記ブラケットを介して前記ハウジングに固定する左右調整用エイミングボルトを具備し、
前記左右調整用エイミングボルトによって前記熱源側熱拡散板を該左右調整用エイミングボルトと反対部分を略中心軸として回転させるようにした請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ハウジングの前記凹部に熱伝導性材料もしくは揺変性材料を充填した請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記筐体側熱拡散板の裏面に前記接続部材を収容し該接続部材の可動範囲を確保するための凹部を形成した請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記筐体側熱拡散板の前記凹部に熱伝導性材料もしくは揺変性材料を充填した請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記筐体側熱拡散板の前記凹部に熱伝導性材料もしくは揺変性材料を充填するためのスリットを設けた請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記熱源側熱拡散板に空気を自然対流させるためのスリットを設けた請求項1〜6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
さらに、
他の発光素子と、
表面側に前記他の発光素子が設けられた他の熱源側熱拡散板と、
前記筐体側熱拡散板に滑動可能に接続された他の接続部材と、
前記他の熱源側熱拡散板の下部を他のブラケットを介して前記ハウジングに固定する他の上下調整用エイミングボルトと、
前記他の熱源側熱拡散板の上部を前記他のブラケットを介して前記ハウジングに固定する他の左右調整用エイミングボルトと
を具備し、
前記他の接続部材の湾曲先端部は前記ハウジングの底部の段差の上部において前記他の熱源側熱拡散板の湾曲先端部と内接し、前記他の上下調整用エイミングボルトによって前記他の熱源側熱拡散板を前記他の熱源側熱拡散板の前記湾曲先端部を略中心軸として回転させるようにし、
前記他の左右調整用エイミングボルトによって前記他の熱源側熱拡散板を該他の左右調整用エイミングボルトと反対部分を中心軸として回転させるようにした請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項9】
ハウジングと、
発光素子と、
表面側に前記発光素子が設けられた熱源側熱拡散板と、
前記熱源側熱拡散板をブラケットを介して前記ハウジングに固定する上下光軸調整用部材及び左右光軸調整用部材と、
前記ハウジングの内面に設けられた筐体側熱拡散板と、
前記筐体側熱拡散板に滑動可能に接続された接続部材と
を具備し、
前記熱源側熱拡散板の端縁の湾曲先端部は前記ハウジングの凹部に収容され、前記上下光軸調整用部材によって前記熱源側熱拡散板を前記凹部における前記熱源側熱拡散板の前記湾曲先端部を略中心軸として回転させるようにし、
前記左右光軸調整用部材によって前記熱源側熱拡散板を該左右光軸調整用部材と反対部分を略中心軸として回転させるようにし、
前記接続部材の湾曲先端部は前記ハウジングの前記凹部において前記熱源側熱拡散板の前記湾曲先端部に内接した車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具、特に、その放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、車両用灯具の光源は光半導体素子たとえば発光ダイオード(LED)素子、レーザダイオード(LD)素子によって構成されている。
【0003】
特に、LED素子、LD素子等の発光素子は自身が発する熱により寿命及び性能が低下するという負の特性がある。また、発光素子との組合せにより発光色を変化させる目的で使用される蛍光体層も熱による負の特性を有する。そのため、発光素子、蛍光体層の温度上昇が問題となり、発光素子、蛍光体層の放熱効率を高めて発光素子、蛍光体層を適切な温度以下にする放熱構造が求められている。
【0004】
従来の車両用灯具においては、灯具内の発光素子の基台の曲面部とハウジングの曲面部とを熱伝導グリスによって面接触させている。これにより、発光素子に発生した熱は基台を経由して基台の曲面部とハウジングの曲面部との熱抵抗が小さい接触部を経由してハウジング外のヒートシンクへ放熱され、さらに、ヒートシンクを介して灯具外へ放熱される。また、エイミング機構によって基台を回動させて光軸調整を行っても、基台の曲面部とハウジングの曲面部との接触関係を維持するので、放熱性能の低下を抑制できる(参照:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−18520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来の車両用灯具においては、発光素子の基台の曲面部とハウジングの曲面部との面接触が熱伝導グリスのみによって行われているので、車両走行時の振動、衝撃等によって基台の曲面部とハウジングの曲面部とが離間して放熱構造を維持できなくなる可能性があるという課題がある。
【0007】
また、上述の従来の車両用灯具においては、基台の曲面部とハウジングの曲面部との接触部の熱抵抗は十分に小さくなく、従って、これを補うために熱を灯具外へ放熱するためのヒートシンクが大型化し、結局、光学ユニットが大型化つまり重量化するという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る車両用灯具は、ハウジングと、発光素子と、表面側に発光素子が設けられた熱源側熱拡散板と、熱源側熱拡散板の上部をブラケットを介してハウジングに固定する上下調整用エイミングボルトと
、ハウジングの底部内面に設けられた筐体側熱拡散板と、筐体側熱拡散板に滑動可能に接続された接続部材とを具備し、熱源側熱拡散板の下部の湾曲先端部はハウジングの底部の凹部に収容され、上下調整用エイミングボルトによって熱源側熱拡散板をハウジングの凹部における熱源側熱拡散板の湾曲先端部を略中心軸として回転させるようにし
、 接続部材の湾曲先端部はハウジングの凹部において熱源側熱拡散板の湾曲先端部に内接したものである。さらに、熱源側熱拡散板の下部をブラケットを介してハウジングに固定する左右調整用エイミングボルトを具備し、左右調整用エイミングボルトによって熱源側熱拡散板を左右調整用エイミングボルトと反対部分を略中心軸として回転させるようにした。
【0009】
さらに、ハウジングの底部内面に設けられた筐体側熱拡散板と、筐体側熱拡散板に滑動可能に接続された接続部材とを具備し、接続部材の湾曲先端部はハウジングの凹部において熱源側熱拡散板の湾曲先端部と内接したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光素子が設けられた熱源側熱拡散板は上下調整用エイミングボルトによってハウジングに固定されているので、車両
走行時の振動、衝撃等によっても放熱構造を維持できる。また、熱源側熱拡散板の下部の湾曲先端部はハウジングの凹部に収容されているので、接触の熱抵抗も小さくなり、従って、ヒートシンクを大型化する必要がないので、光学ユニットを小型化つまり軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用灯具の第1の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【
図2】
図1の車両用灯具の側断面図であって、(A)は全体側断面図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大側断面図である。
【
図4】
図3の筐体側熱拡散板の下から見た斜視図である。
【
図5】本発明に係る車両用灯具の第2の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【
図6】
図5の熱源側熱拡散板のスリットの変更例を示す斜視図である。
【
図7】本発明に係る車両用灯具の第3の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【
図8】本発明に係る車両用灯具の第4の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)のヒートシンクの部分拡大斜視図である。
【
図9】本発明に係る車両用灯具の第5の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【
図10】本発明に係る車両用灯具の光学ユニットの重量を示す表である。
【
図11】本発明に係る車両用灯具のエイミング動作による発光素子付近の温度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る車両用灯具の第1の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【0013】
図1の(A)においては、車両用灯具は車両の前照灯であって、アウタレンズ1及びハウジング2によって構成された筐体内に上下調整用エイミングボルト4及び左右調整用エイミングボルト5によって光学ユニット6を固定してある。
【0014】
光学ユニット6は、上下調整用エイミングボルト4、左右調整用エイミングボルト5によってハウジング2に固定される高熱伝導性の金属たとえばアルミニウム、銅よりなるブラケット61、固定ボルト61a、61b(
図3に図示)によってブラケット61に固定される熱源側熱拡散板62、熱源側熱拡散板62の表面上に設けられた支持基板65及び発光素子66、ハウジング2の底部内面に固定される筐体側熱拡散板63、及び熱源側熱拡散板62の裏面上に設けられたヒートシンク67よりなる。尚、必要に応じて、支持基板65上にはレンズ等が設けられ、発光素子66には蛍光体層等が設けられる。
【0015】
図1の(B)に示すように、熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62aは円弧状に湾曲している。他方、筐体側熱拡散板63には接続部材64が滑動可能に接続され、この接続部材64の湾曲先端部64aも円弧状に湾曲している。熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62a及び接続部材64の湾曲先端部64aはハウジング2の底部の凹部2a内に収容される。この場合、ハウジング2の凹部2aの断面形状は好ましくは円形であり、湾曲先端部62aの外形よりも大きく形成され遊びを有する形状となっている。従って、熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62aはハウジング2の凹部2aに内接し、接続部材64の湾曲先端部64aは熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62aに内接する。この結果、熱源側熱拡散板62の上部は固定ボルト61aによってブラケット61に固定され、ブラケット61はエイミングボルト4、5によってハウジング2に固定され、他方、熱源側熱拡散板62の下部はハウジング2の凹部2a内に収容されるので、車両走行時にあっても、振動、衝撃等によって熱源側熱拡散板62がハウジング2から離間することはない。この結果、熱源側熱拡散板62はその湾曲先端部62aを略中心軸に回転可能となると共に、接続部材64を介して筐体側熱拡散板63に対しても回転可能となり、エイミング機能を発揮できる。ここで、略中心軸としたのは、上述のごとく、左右調整用エイミングボルト5を有し、ハウジング2の凹部2aに遊びを持たせているので、厳密な中心軸とはならないためである。
【0016】
熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62aと接続部材64の湾曲先端部64aとの間には熱伝導性グリス等の熱伝導性材料(TIM)(図示せず)が充填されている。このようにして、発光素子66で発生した熱は熱源側熱拡散板62からハウジング2の凹部2aにおける湾曲先端部62a及び接続部材64の湾曲先端部64aを介して接続部材64及び筐体側熱拡散板63に熱伝導損失なく効率よく放熱されるので、放熱性能を向上できる。
【0017】
熱源側熱拡散板62、筐体側熱拡散板63及び接続部材64は良加工性かつ良熱伝導性の材料たとえば熱伝導率200W/mKのアルミニウム合金A6063よりなる。この場合、アルミニウム合金の表面は黒アルマイト(登録商標)処理されており、これにより放射率をたとえば0.9〜0.98と高くする。但し、部品間の接触熱抵抗を低減するために、熱源側熱拡散板62、筐体側熱拡散板63及び接続部材64の接触面及びこれらのハウジング2、ヒートシンク67との接触面は黒アルマイト(登録商標)を除去する鏡面加工が施されている。
【0018】
尚、熱源側熱拡散板62、筐体側熱拡散板63及び接続部材64は、上述のアルミニウム合金A6063の外に、銅等の金属、軽量化を目的として樹脂にセラミック粒子あるいは金属フィラを含有させた高熱伝導樹脂、軽量化及び高熱伝導性を兼ね備えた等方性カーボンや異方性結晶グラファイトシート、さらに、放熱性、信頼性を両立させたグラファイトシート、金属等の複合体でもよい。
【0019】
また、上述のごとく、熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62a、筐体側熱拡散板63及び接続部材64の間には熱伝導性材料(TIM)を充填しているが、この代りに、揺変性(チキソトロピー)材料を充填してもよい。たとえば、アルミナ等のセラミック粒子を含有したシリコーン樹脂、シリカ微粉末を含有したエポキシ樹脂あるいはアクリル樹脂、またはコロイド性含水ケイ酸アルミニウムあるいは有機複合体を充填してもよい。静止状態では、揺変性材料は流動性を有せず、従って、光学ユニット6は上下調整用エイミングボルト4及び左右調整用エイミングボルト5によってある設定角度で調整固定される。他方、上下調整用エイミングボルト4あるいは左右調整用エイミングボルト5で光学ユニット6の設定角度を調整した際には、揺変性材料が流動して熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62a及び接続部材64が可動できるようになる。つまり、通常、熱源側熱拡散板62の湾曲先端部62aと接続部材64の湾曲先端部64aとの間では接触熱抵抗による伝導の熱移動損失が生じるが、揺変性材料が介在すると、この接触熱抵抗を低減できる。
【0020】
図2は
図1の車両用灯具の側断面図であって、(A)は全体側断面図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大側断面図である。
【0021】
図2を参照して上下方向エイミング動作について説明する。上下調整用エイミングボルト4を締めることにより光学ユニット6の熱源側熱拡散板62がハウジング2の凹部2aにおける湾曲先端部62aを略中心軸に右回りに回転する。この結果、発光素子66の光軸は上方に調整される。他方、上下調整用エイミングボルト4を緩めることにより光学ユニット6の熱源側熱拡散板62がハウジング2の凹部2aにおける湾曲先端部62aを略中心軸に左回りに回転する。この結果、発光素子66の光軸は下方に調整される。尚、熱源側熱拡散板62、接続部材64及びハウジング2の凹部2aは発光素子66の光軸がその中心位置より上下±5°の範囲で可動できるように設計される。
【0022】
図3は
図1の車両用灯具の底面図を示し、
図4は
図3の筐体側熱拡散板63の下から見た斜視図である。
【0023】
図3を参照して左右方向エイミング動作について説明する。左右調整用エイミングボルト5を締めることにより光学ユニット6の熱源側熱拡散板62が左右調整用エイミングボルト5の反対側を略中心軸に上方から見て右回りに回転する。この結果、発光素子66の光軸は右方に調整される。他方、左右調整用エイミングボルト5を緩めることにより光学ユニット6の熱源側熱拡散板62が左右調整用エイミングボルト5の反対側を中心軸に上方から見て左回りに回転する。この結果、発光素子66の光軸は左方に調整される。尚、この場合も、熱源側熱拡散板62、接続部材64及びハウジング2の凹部2aは発光素子66の光軸がその中心位置より左右±5°の範囲で可動できるように設計される。この左右方向エイミングの際も、ハウジング2の凹部2aに遊びを持たせているので、左右調整用エイミングボルト5の反対側が略中心軸となる。
【0024】
図3に示すように、接続部材64は半円もしくは台形の板状をなしている。他方、
図4に示すように、接続部材64を収容できると共に接続部材64の可動範囲を確保するために、筐体側熱拡散板63の裏面の熱源側熱拡散板62側には、半円状、台形状もしくは長方形状の凹部63aが形成されている。但し、筐体側熱拡散板63の凹部63aの形状及び接続部材64の形状は、接続部材64が可動である限り、適宜変更できる。このとき、筐体側熱拡散板63と接続部材64とが潤滑に可動できるように、熱伝導グリス等の熱伝導材料(TIM)もしくは揺変性材料が筐体側熱拡散板63と接続部材64との間に充填される。この場合、筐体側熱拡散板63の凹部63aには、熱伝導材料(TIM)の充填のためのラインスリット63bを設けてある。但し、ラインスリット63bは同心状円弧スリット、ドット状凹凸構造またはこれらの組合せでもよい。
【0025】
図5は本発明に係る車両用灯具の第2の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【0026】
図5においては、
図1の熱源側熱拡散板62の下部にスリット62bを設けてある。これにより、熱源側熱拡散板62の前方の温度の低い空気をヒートシンク67側に自然対流させて冷却効果を高める。この場合、
図6に示すごとく、スリット62bを山折り及び谷折りとを交互に繰返すことによって立体的な折り目スリット62b’に加工することにより圧力損失が低減され、自然対流による冷却効果をさらに高めることができる。この場合、熱源側熱拡散板62の高さも小さくできるので、光学ユニット6を小型化できる。
【0027】
図7は本発明に係る車両用灯具の第3の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【0028】
図7においては、
図1の筐体側熱拡散板63の代りに、フレキシブルな筐体側熱拡散板63’を設けてある。筐体側熱拡散板63’はハウジング2の形状に合わせて折り曲げた状態となっている。これにより、筐体側熱拡散板63’とハウジング2との接触面積が増大し、放熱性能を向上できる。尚、この場合、複雑なハウジング2の形状に合わせるために、筐体側熱拡散板63’は金属板、グラファイトシート、あるいはこれらの複合材を用いて構成する。
【0029】
図8は本発明に係る車両用灯具の第4の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)のヒートシンクの部分拡大斜視図である。
【0030】
図8においては、
図7の筐体側熱拡散板63’に対向したハウジング2の外面にヒートシンク68を設ける。これにより、放熱性能を向上できる。尚、この場合、ハウジング2のヒートシンク68の接続箇所のみ金属のインサート成形で形成すれば、熱伝導の熱抵抗を小さくでき、さらに、放熱性能を向上できる。尚、このヒートシンク68の代りに、放熱性能は下がるものの熱拡散板(図示せず)としてもよい。
【0031】
尚、
図8のヒートシンク68または他の筐体側熱拡散板は、
図1、
図2、
図3、
図5のハウジング2にも設けることができる。
【0032】
図9は本発明に係る車両用灯具の第5の実施の形態を示す斜視図であって、(A)は一部切り欠いた全体斜視図、(B)は(A)の拡散板接続部の部分拡大斜視図である。
【0033】
図9においては、
図1の車両用灯具において、光学ユニット16を付加してある。たとえば、光学ユニット6はロービーム用、光学ユニット16はハイビーム用である。
【0034】
図9の(A)に示すように、光学ユニット16は、アウタレンズ1及びハウジング2によって構成された筐体内に支点用ピボット13、上下調整用エイミングボルト14及び左右調整用エイミングボルト15によって固定されている。
【0035】
光学ユニット16は光学ユニット6と類似しているが、光学ユニット6の筐体側熱拡散板63を共通部品として用いる点、熱源側熱拡散板の湾曲先端部及び接続部材の湾曲先端部はハウジング2の凹部でなくハウジング2の底部の段差の上部に位置している点、及び熱源側熱拡散板162をハウジン2へブラケットを介さず取り付けている点で異なる。
【0036】
光学ユニット16は、支点用ピボット13、上下調整用エイミングボルト14、左右調整用エイミングボルト15によってハウジング2に固定される熱源側熱拡散板162、熱源側熱拡散板162の表面上に設けられた支持基板165及び発光素子166、及び熱源側熱拡散板162の裏面上に設けられたヒートシンク167よりなる。尚、光学ユニット16も、光学ユニット6と同様に、ブラケットを介してハウジング2に取付けるようにしても当然良いものである。
【0037】
図9の(B)に示すように、熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162aは円弧状に湾曲している。他方、筐体側熱拡散板63にはもう1つの接続部材164が滑動可能に接続され、この接続部材164の湾曲先端部164aも円弧状に湾曲している。熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162a及び接続部材164の湾曲先端部164aはハウジング2の底部の段差の上部において接続される。この場合、熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162aは、接続部材164の湾曲先端部164aは熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162aに内接する。この結果、熱源側熱拡散板162の上部は支点用ピボット13、左右調整用エイミングボルト15及び接続部材164によりハウジング2に固定され、他方、下部は上下調整用エイミング14によりハウジング2に固定されるので、車両走行時にあっても、振動、衝撃等によって熱源側熱拡散板62がハウジング2から離間することはない。この結果、熱源側熱拡散板162はその湾曲先端部162aを中心軸に回転可能となると共に、接続部材164を介して筐体側熱拡散板63に対しても回転可能となり、エイミング機能を発揮できる。
【0038】
熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162aと接続部材164の湾曲先端部164aとの間には熱伝導性グリス等の熱伝導性材料(TIM)(図示せず)が充填されている。このようにして、発光素子166で発生した熱は熱源側熱拡散板162からハウジング2上における湾曲先端部162a及び接続部材164の湾曲先端部164aを介して接続部材164及び筐体側熱拡散板63に熱伝導損失なく効率よく放熱されるので、放熱性能を向上できる。
【0039】
熱源側熱拡散板162及び接続部材164も熱源側熱拡散板62及び接続部材64と同一材料よりなる。
【0040】
また、上述のごとく、熱源側熱拡散板162の湾曲先端部162a及び接続部材164の間には熱伝導性材料(TIM)を充填しているが、この代りに、揺変性(チキソトロピー)材料を充填してもよい。
【0041】
図9の熱源側熱拡散板162の上下方向エイミング動作について説明する。上下調整用エイミングボルト14を締めることにより光学ユニット16の熱源側熱拡散板162がハウジング2の段差上部における湾曲先端部162aを略中心軸に左回りに回転する。この結果、発光素子166の光軸は下方に調整される。他方、上下調整用エイミングボルト14を緩めることにより光学ユニット16の熱源側熱拡散板162がハウジング2の段差上部における湾曲先端部162aを略中心軸に右回りに回転する。この結果、発光素子166の光軸は上方に調整される。尚、熱源側熱拡散板162及び接続部材164は発光素子166の光軸がその中心位置より上下±5°の範囲で可動できるように設計される。
【0042】
図9の熱源側熱拡散板162の左右方向エイミング動作について説明する。左右調整用エイミングボルト15を緩めることにより光学ユニット16の熱源側熱拡散板162が支点用ピボット13を中心軸に上方から見て右回りに回転する。この結果、発光素子166の光軸は右方に調整される。他方、左右調整用エイミングボルト15を締めることにより光学ユニット16の熱源側熱拡散板162が支点用ピボット13を中心軸に上方から見て左回りに回転する。この結果、発光素子166の光軸は左方に調整される。尚、この場合も、熱源側熱拡散板162及び接続部材164は発光素子166の光軸がその中心位置より左右±5°の範囲で可動できるように設計される。
【0043】
また、接続部材164は、接続部材64と同様に、半円もしくは台形の板状をなしている。他方、接続部材164を収容できると共に接続部材164の可動範囲を確保するために、筐体側熱拡散板63の裏面の熱源側熱拡散板162側には、半円状、台形状もしくは長方形状の凹部が形成されている。但し、筐体側熱拡散板63の凹部の形状及び接続部材164の形状は、接続部材164が可動である限り、適宜変更できる。このとき、筐体側熱拡散板63と接続部材164とが潤滑に可動できるように、熱伝導グリス等の熱伝導材料(TIM)が筐体側熱拡散板63と接続部材164との間に充填される。この場合も、筐体側熱拡散板63の凹部には、熱伝導材料(TIM)の充填のためのラインスリット(図示せず)を設けてある。但し、ラインスリットは同心状円弧スリット、ドット状凹凸構造またはこれらの組合せでもよい。
【0044】
さらに、
図9の熱源側熱拡散板162の下部にスリットを設けることもできる。これにより、熱源側熱拡散板162の前方の温度の低い空気をヒートシンク167側に自然対流させて冷却効果を高める。この場合も、スリットを山折り及び谷折りとを交互に繰返すことによって立体的な折り目スリットに加工することにより圧力損失が低減され、自然対流による冷却効果をさらに高めることができる。この場合、熱源側熱拡散板162の高さも小さくできるので、光学ユニット16を小型化できる。
【0045】
上述の実施の形態においては、筐体側熱拡散板63はハウジング2と別部品として構成し、ハウジング2に取付けるようになっているが、筐体側熱拡散板63をハウジング2と一体成型してもよい。これにより、組立作業の効率を上げることができ、しかも、筐体側熱拡散板63とハウジング2との接触熱抵抗を低減でき、従って、放熱効果を高めることができる。
【0046】
また、上述の実施の形態においては、ハウジング2の外面上に筐体側熱拡散板63に対向してもう1つの筐体側熱拡散板を設けてもよい。つまり、ハウジング2を2つの筐体側熱拡散板で挟む。これにより、ハウジング2の内部から外部への熱通過量を増大させて放熱性能を向上できる。
【0047】
図10は本発明に係る車両用灯具の光学ユニットの重量を示す表である。
図10においては、次の条件で重量を計算した。
発光素子の発熱量:20W
筐体(アウタレンズ、ハウジング)サイズ:縦200mm×横200mm×高さ225mm
周囲温度:90℃
発光素子の温度が160℃となるように、発光素子の基台の曲面部とハウジングの曲面部を面接触させた従来の光学ユニットを構成すると、ヒートシンクが大きい分、光学ユニットの重量は255gであった。これに対し、発光素子の温度が160℃となるように、
図1〜
図5の光学ユニットを構成すると、光学ユニットの重量は190gと軽量となった。また、
図7の光学ユニットの重量は、筐体側熱拡散板63’が重くなった分だけ、198gと少し重くなった。さらに、
図8の光学ユニットの重量は、ヒートシンク68の分だけ、208gと重くなった。いずれの場合も、従来の光学ユニットより軽くなった。従って、同一包絡体積における放熱性能は、本発明に係る光学ユニットの方が従来の光学ユニットより向上していることが分かった。
【0048】
図11は本発明に係る車両用灯具のエイミング動作による発光素子付近の温度を示す表である。
図11に示すように、
図1〜
図5、
図7、
図8の車両用灯具の光学ユニットのエイミング動作によっても、発光素子66付近の温度はほとんど変化がなかった。つまり、エイミング動作による接触熱抵抗はほとんど変化がなく、発光素子66の光軸の温度依存性がなく放熱性能を向上できた。
【0049】
尚、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る車両用灯具は、前照灯以外に、フォグランプ、DRL(Daytime Running Lamps)にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1:アウタレンズ
2:ハウジング
2a:凹部
13:支点用ピボット
4、14:上下調整用エイミングボルト
5、15:左右調整用エイミングボルト
6、16:光学ユニット
61:ブラケット
61a、61b:固定ボルト
62、62’、162:熱源側熱拡散板
62a、162a:湾曲先端部
62b:スリット
62b’:折り目スリット
63:筐体側熱拡散板
63a:凹部
63b:ラインスリット
64、164:接続部材
64a、164a:湾曲先端部
65、165:支持基板
66、166:発光素子
67、68、167:ヒートシンク