(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375170
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20180806BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20180806BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20180806BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20180806BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20180806BHJP
H05K 9/00 20060101ALN20180806BHJP
【FI】
B62D5/04
H01B7/00 304Z
B60R16/02 623D
F16F1/38 S
F16F15/08 G
!H05K9/00 K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-157744(P2014-157744)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-34778(P2016-34778A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100185487
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】林 大記
【審査官】
神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−242283(JP,A)
【文献】
実開昭60−114049(JP,U)
【文献】
特開平09−148146(JP,A)
【文献】
特開平11−082625(JP,A)
【文献】
実開平02−085042(JP,U)
【文献】
特開2004−203377(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/132584(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0140105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00 − 5/06
B62D 5/07 − 5/32
H01K 27/24 − 27/26
F16F 15/00 − 15/36
F16F 1/00 − 6/00
B60R 16/02
H01B 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転力をラック軸に伝達して操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置であって、
前記電動モータに接続されるワイヤハーネスに取り付けられるフェライトコアと、
前記フェライトコアを車両に固定するブラケットと、
を備え、
前記フェライトコアにおける前記ワイヤハーネスとの当接部は円筒形状であり、
前記フェライトコアと前記ブラケットとの間には、円筒状の防振ゴムが設けられる、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記ブラケットは、前記ラック軸を収容するラックハウジングに固定される、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
電動モータの回転力をラック軸に伝達して操舵力をアシストする電動パワーステアリン
グ装置であって、
前記電動モータに接続されるワイヤハーネスに取り付けられるフェライトコアと、
前記フェライトコアを車両に固定するブラケットと、
を備え、
前記フェライトコアと前記ブラケットとの間には、防振ゴムが設けられ、
前記防振ゴムは、
円筒状であって、
両端部の外周側にそれぞれ形成され、前記ブラケットを挟み込む2つの外周側鍔部を有する、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
電動モータの回転力をラック軸に伝達して操舵力をアシストする電動パワーステアリン
グ装置であって、
前記電動モータに接続されるワイヤハーネスに取り付けられるフェライトコアと、
前記フェライトコアを車両に固定するブラケットと、
を備え、
前記フェライトコアと前記ブラケットとの間には、防振ゴムが設けられ、
前記防振ゴムは、
円筒状であって、
両端部の内周側にそれぞれ形成され、前記フェライトコアを挟み込む2つの内周側鍔部を有する、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動パワーステアリング装置であって、
前記内周側鍔部の内径は、前記フェライトコアの内径よりも小さい、
ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動モータの回転力をラック軸に伝達して操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−150429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動パワーステアリング装置においては、ラジオに雑音が入ることを防止するために、電動モータに接続されたワイヤハーネスから発生するノイズを抑制することが求められる。
【0005】
また、ワイヤハーネスが振動することで、ワイヤハーネスと電動モータとを接続する端子に微摺動摩耗が発生しやすくなるので、ワイヤハーネスの振動を抑制することが求められる。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスから発生するノイズを抑制するとともに、微摺動摩耗の発生要因となるワイヤハーネスの振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動モータの回転力をラック軸に伝達して操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置であって、前記電動モータに接続されるワイヤハーネスに取り付けられるフェライトコアと、前記フェライトコアを車両に固定するブラケットと、を備え
、前記フェライトコアにおける前記ワイヤハーネスとの当接部は円筒形状であり、前記フェライトコアと前記ブラケットとの間には、円筒状の防振ゴムが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイヤハーネスにフェライトコアが取り付けられるので、ワイヤハーネスから発生するノイズを抑制できる。また、フェライトコアをブラケットにより車両に固定するので、ワイヤハーネスにおけるフェライトコアを挟んだ電動モータとは反対側の部分の振動を、フェライトコアを取り付けた部分で遮断できるとともに、ワイヤハーネスにおけるフェライトコアと電動モータとの間の部分の撓み剛性を高くできる。したがって、ワイヤハーネスにおけるフェライトコアと電動モータとの間の部分の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置を示す概略構成図である。
【
図2】ワイヤハーネスを配索した状態を示す図である。
【
図3】
図2のIII−III断面におけるフェライトコアおよびブラケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0011】
電動パワーステアリング装置100は、車両(図示せず)に搭載され、運転者がハンドル1を操作するときの操舵力をアシストする装置である。
【0012】
電動パワーステアリング装置100は、
図1に示すように、ハンドル1と連結されて運転者がハンドル1を操作するときの操舵力が入力される操舵入力軸2と、トーションバー3を介して操舵入力軸2と同軸に連結される操舵出力軸4と、トーションバー3に作用するトルクを検出するトルクセンサ5と、トルクセンサ5の出力に応じたアシスト力を操舵出力軸4に付与する電動モータ6と、電動モータ6の作動を制御するモータコントローラ7と、ラックハウジング8内に収容されたラック軸9と、を備える。
【0013】
トーションバー3は、一端が操舵入力軸2に固定され、他端が操舵出力軸4に固定される。これにより、操舵出力軸4は、トーションバー3を介して操舵入力軸2と連結され、操舵入力軸2と操舵出力軸4とは、トーションバー3がねじれた分だけ相対回転する。
【0014】
運転者がハンドル1を操作するときの操舵力は、操舵入力軸2に入力されると、トーションバー3を介して操舵出力軸4に伝達される。このとき、トルクセンサ5は、トーションバー3のねじれ量によって、トーションバー3に作用しているトルクを検出し、トルク信号をモータコントローラ7に出力する。
【0015】
操舵出力軸4の一端には、ピニオンギヤ4aが形成される。ピニオンギヤ4aは、ラックハウジング8内に軸方向へ移動自在に収容されたラック軸9と噛合うようになっている。これにより、操舵出力軸4が回転すると、ラック軸9が軸方向に移動し、ラック軸9にタイロッド10、11を介して連結された車輪12、13が操舵される。
【0016】
操舵出力軸4の他端には、減速ギヤ14が固定されており、操舵出力軸4は、減速ギヤ14と一体に回転する。
【0017】
電動モータ6は、モータコントローラ7が出力する制御信号に基づいて作動するモータである。
【0018】
電動モータ6およびモータコントローラ7には、ワイヤハーネス15が接続されており、車両の電源装置(図示せず)から電力が供給される。また、モータコントローラ7には、車両の統合コントローラ(図示せず)から各種信号が入力される。
【0019】
モータコントローラ7は、統合コントローラから入力される各種信号とトルクセンサ5から入力されるトルク信号とに基づいて、電動モータ6の作動を制御するとともに、各種信号を統合コントローラに出力する。本実施形態では、電動パワーステアリング装置100がモータコントローラ7を備えているが、モータコントローラ7を備えずに、例えば、統合コントローラにより電動モータ6の作動を制御してもよい。
【0020】
電動モータ6の回転力は、減速ギヤ14を介して減速されるとともにトルクが増幅され、操舵出力軸4からラック軸9に伝達される。これにより、運転者がハンドル1を操作するときの操舵力がアシストされる。
【0021】
ところで、電動パワーステアリング装置100においては、ラジオに雑音が入ることを防止するために、ワイヤハーネス15から発生するノイズを抑制することが求められる。
【0022】
また、ワイヤハーネス15が振動することで、電動モータ6とワイヤハーネス15とを接続する端子およびモータコントローラ7とワイヤハーネス15とを接続する端子に微摺動摩耗が発生しやすくなるので、ワイヤハーネス15の振動を抑制することが求められる。
【0023】
そこで、本実施形態では、ワイヤハーネス15にフェライトコア16を取り付けることで、ワイヤハーネス15から発生するノイズを抑制するとともに、フェライトコア16をブラケット17によりラックハウジング8に固定することで、微摺動摩耗の発生要因となるワイヤハーネス15の振動を抑制している。
【0024】
以下、
図2〜
図4を参照しながら詳しく説明する。
【0025】
図2は、ワイヤハーネス15を配索した状態を示す図である。
図3は、
図2のIII−III断面におけるフェライトコア16およびブラケット17を示す図である。
図4は、
図3のIV−IV断面図である。
【0026】
ワイヤハーネス15は、
図2に示すように、電動モータ6およびモータコントローラ7と接続され、外周にフェライトコア16が取り付けられる。フェライトコア16は、ラックハウジング8に固定されたブラケット17を介して、ワイヤハーネス15とともにラックハウジング8に固定される。
【0027】
このように、ワイヤハーネス15に取り付けたフェライトコア16をラックハウジング8に固定することで、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16を挟んだ電動モータ6とは反対側の部分の振動を、フェライトコア16を取り付けた部分で遮断でき、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16と電動モータ6との間の部分に振動が伝わることを防止できる。
【0028】
また、ラックハウジング8は、電動モータ6等と一体となって振動するので、フェライトコア16をラックハウジング8に固定することで、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16よりも電動モータ6側の部分も、電動モータ6等と一体となって振動することになる。これにより、フェライトコア16を、車両におけるラックハウジング8以外の部分、例えば、サブフレーム(図示せず)等に固定する場合よりも、電動モータ6等に対する相対的な変位を伴うワイヤハーネス15の振動、すなわち、微摺動摩耗の発生要因となるワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0029】
フェライトコア16は、
図3、
図4に示すように、円筒状の部材であって、内周の円筒形状部がワイヤハーネス15と当接する。すなわち、ワイヤハーネス15の外周が、長手方向の一定の範囲においてフェライトコア16と当接する。これにより、ワイヤハーネス15が、フェライトコア16に揺動不能に保持されるので、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16と電動モータ6との間の部分の撓み剛性が高くなる。したがって、ワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0030】
ブラケット17は、
図4に示すように、第1プレート18と第2プレート19とを有して構成され、第1プレート18と第2プレート19とをボルト20とナット21とで締結することで、第1プレート18と第2プレート19との間にフェライトコア16を保持できるようになっている。本実施形態では、フェライトコア16とブラケット17との間に円筒状の防振ゴム22が設けられ、車両の振動がフェライトコア16およびワイヤハーネス15に伝わりにくくなっている。
【0031】
第1プレート18には、
図3に示すように、ブラケット17をラックハウジング8に固定するための取付穴18aが設けられる。これにより、ブラケット17は、
図2に示すように、ラックハウジング8に設けられた取付部8aに、ボルト23で固定される。
【0032】
このように、電動パワーステアリング装置100では、ワイヤハーネス15のノイズを抑制するためのフェライトコア16を利用して、部品数やコストの増加を抑制しつつ、微摺動摩耗の発生要因となるワイヤハーネス15の振動を抑制している。
【0033】
また、防振ゴム22は、
図3に示すように、両端部の外周側にそれぞれ形成された外周側鍔部22aと、両端部の内周側にそれぞれ形成された内周側鍔部22bと、を有する。
【0034】
2つの外周側鍔部22aは、その間にブラケット17を挟み込むようになっており、防振ゴム22がブラケット17から抜けることを防止する抜け止めとして機能する。同様に、2つの内周側鍔部22bは、その間にフェライトコア16を挟み込むようになっており、フェライトコア16が防振ゴム22から抜けることを防止する抜け止めとして機能する。
【0035】
また、内周側鍔部22bの内径は、フェライトコア16の内径よりも小さくなっている。このため、ワイヤハーネス15を防振ゴム22で保持でき、ワイヤハーネス15に過大な力がかかることを防止できる。
【0036】
また、フェライトコア16は、
図4に示すように、外周面に形成された平坦部16aを有する。
【0037】
平坦部16aは、防振ゴム22に対してフェライトコア16が軸線回りに回転することを防止する回り止めとして機能する。なお、フェライトコア16の外周面が円形でなければよいので、フェライトコア16の外周面に平坦部16a以外の形状を形成してもよい。
【0038】
以上述べたように、本実施形態によれば、ワイヤハーネス15にフェライトコア16が取り付けられるので、ワイヤハーネス15から発生するノイズを抑制できる。
【0039】
また、ワイヤハーネス15に取り付けたフェライトコア16を、ラックハウジング8に固定するので、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16を挟んだ電動モータ6とは反対側の部分の振動を、フェライトコア16を取り付けた部分で遮断できる。したがって、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16と電動モータ6との間の部分に振動が伝わることを防止でき、ワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0040】
また、フェライトコア16の内周が円筒形状であることから、ワイヤハーネス15の外周が、長手方向の一定の範囲においてフェライトコア16と当接する。これにより、ワイヤハーネス15が、フェライトコア16に揺動不能に保持されるので、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16と電動モータ6との間の部分の撓み剛性が高くなる。したがって、ワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0041】
また、ラックハウジング8は、電動モータ6等と一体となって振動するので、フェライトコア16をラックハウジング8に固定することで、ワイヤハーネス15におけるフェライトコア16よりも電動モータ6側の部分も、電動モータ6等と一体となって振動することになる。これにより、フェライトコア16を、ラックハウジング8以外の車両の部分に固定する場合よりも、電動モータ6等に対する相対的な変位を伴うワイヤハーネス15の振動、すなわち、微摺動摩耗の発生要因となるワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0042】
また、フェライトコア16とブラケット17との間には、防振ゴム22が設けられるので、車両の振動がフェライトコア16およびワイヤハーネス15に伝わりにくくなっている。したがって、ワイヤハーネス15の振動を抑制できる。
【0043】
また、防振ゴム22が、両端部の外周側にそれぞれ形成され、ブラケット17を挟み込む2つの外周側鍔部22aと、両端部の内周側にそれぞれ形成され、フェライトコア16を挟み込む2つの内周側鍔部22bと、を有するので、防振ゴム22がブラケット17から抜けることを防止でき、また、フェライトコア16が防振ゴム22から抜けることを防止できる。
【0044】
また、防振ゴム22の内周側鍔部22bの内径が、フェライトコア16の内径よりも小さくなっているので、ワイヤハーネス15を防振ゴム22で保持でき、ワイヤハーネス15に過大な力がかかることを防止できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、いわゆるシングルピニオンの電動パワーステアリング装置100に本発明を適用しているが、例えば、デュアルピニオンの電動パワーステアリング装置等に適用することもできる。
【0047】
また、ワイヤハーネス15の配索経路や、ブラケット17によりフェライトコア16を車両に固定する位置は、車両のレイアウトに応じて適宜変更することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、フェライトコア16が円筒状の部材であるが、例えば、半円筒状のフェライトを2つ組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 電動パワーステアリング装置
6 電動モータ
8 ラックハウジング
9 ラック軸
15 ワイヤハーネス
16 フェライトコア
17 ブラケット
22 防振ゴム
22a 外周側鍔部
22b 内周側鍔部