【実施例】
【0059】
実施例1〜11、比較例1〜4について、表面粗さRa、前方透過率、直線透過率、透過率比(前方透過率/直線透過率)、ポアの最大長さ及びポア密度の評価を行った。実施例1〜11、比較例1〜4の内訳並びに評価結果は後述する表1〜表4に示す。特に、前方透過率及び直線透過率については、実施例5〜7並びに比較例3及び4の評価結果を
図6及び
図7に示す。なお、表1〜表4では、「μm」を「um」と表記した。
【0060】
<評価の方法>
(表面粗さRaの評価)
測定試料(実施例1〜11、比較例1〜4)の出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さをレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製:VK−9700)で倍率500倍にて測定した。
【0061】
(透過率の評価)
透過率の評価は、前方透過率と直線透過率を用いた。具体的には、測定波長210〜400nmでの透過率の平均値を評価値とした。
【0062】
(前方透過率)
前方透過率は、
図4に示すように、光源20と検出器22とを有する分光光度計28(U−4100:日立ハイテク社製)を用いて測定した。光源20と検出器22との間に1つの貫通孔24(直径3mm)を有するスリット板26を設置した。スリット板26のうち、検出器22に対向する面に貫通孔24を塞ぐように測定試料(実施例1〜11、比較例1〜4)を固定した。このとき、測定試料の入射側面をスリット板26に固定した。すなわち、入射側面16bを光源20側、出射側面16aを検出器22側に向けて固定した。
【0063】
光源20から波長200〜280nmの光12をスリット板26に固定した測定試料の入射側面16bに入射させ、測定試料を通過して出射側面16aから放射される光12を検出器22によって検出する。
【0064】
前方透過率は、測定試料を通過する光12の強度(I)と、測定試料を固定せずに測定したときの光12の強度(I
0)の比率(=I/I
0)より算出した。
【0065】
(直線透過率)
直線透過率は、
図5に示すように、入射口30を有する積分球32と検出器22とを有する分光光度計34(U−4100:日立ハイテク社製)を用いて測定した。そして、光源20と積分球32の入射口30とを対向させて光源20と積分球32を配置し、光源20と積分球32との間に1つの貫通孔24を有するスリット板26を設置した。スリット板26のうち、積分球32に対向する面に貫通孔24を塞ぐように測定試料を固定した。この場合も、光源20として波長210〜400nmの光を出射する光源を用いた。寸法関係は、積分球32の入射口30の直径が約9mm、スリット板26の貫通孔24の直径が2mm、測定試料から積分球32の入射口30までの距離Lが90mmである。
【0066】
直線透過率は、測定試料を通過する可視光を積分球32で集光したときの光強度(I)と、測定試料を固定せずに測定したときの光強度(I
0)の比率(=I/I
0)より算出した。
【0067】
<実施例1〜11の内訳及び評価結果>
(実施例1)
図2Bに示す第2製造方法に従って、セラミック粉末、分散媒及びゲル化剤を含むスラリーを型に注型し、このスラリーをゲル化させることによってアルミナ成形体を得、このアルミナ成形体を焼結させて研磨前基板を得た。
【0068】
具体的には、純度99.99%以上、BET表面積9〜15m
2/g、タップ密度0.9〜1.0g/cm
3の高純度アルミナ粉末に対して、500ppmの酸化マグネシウム粉末を添加した。この原料粉末をゲルキャスト法によって成形した。この粉末100重量部、分散媒(マロン酸ジメチル)40重量部、ゲル化剤(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート変成物)8重量部、反応触媒(トリエチルアミン)0.1〜0.3重量部、ノニオン系分散剤を混合した。
【0069】
20℃で、分散媒に前記原料粉末及び分散剤を添加して分散し、次いで、ゲル化剤を添加して分散し、最後に、反応触媒を添加することにより、スラリーを作製した。このスラリーを型内に注型し、2時間放置してゲル化させた。ゲル化したアルミナ成形体を型から取り出し、60〜100℃で乾燥した。次いで、成形体を1100℃で2時間焼成して研磨前基板を作製した。研磨前基板の表面の平均粒径は10μmであった。その後、研磨前基板を水素雰囲気中でアニール処理した。次いで、研磨前基板の出射側面16aのみに鏡面研磨を実施し、厚さ0.5mmの実施例1に係る支持体10を得た。
【0070】
この実施例1に係る支持体10の評価結果は、表1に示すように、出射側面16aの表面粗さRaは0.02μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.3μmであった。
【0071】
前方透過率及び直線透過率は、210〜400nmの波長領域で前方透過率の平均が66%、直線透過率の平均が3%であった。透過率比(前方透過率/直線透過率)は22.0であった。
【0072】
さらに、基板14の断面を見た場合に、単位面積当たりに存在するポアのうち、数が最も多いポア(以下、主たるポアと記す)の最大長さは約1μmであった。また、単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満であった。単位面積当たり、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は35,000個であった。
【0073】
(実施例2)
基板14の厚みを0.8mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る支持体10を作製した。
【0074】
この実施例2に係る支持体10の評価結果は、表1に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は10μmであった。出射側面16aの表面粗さRaは0.02μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.3μmであった。前方透過率の平均は61%、直線透過率の平均は2%、透過率比は30.5であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は30,000個であった。
【0075】
(実施例3)
図2Aに示す第1製造方法に従って実施例3に係る支持体10を得た。先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.3mmの基板14を作製した。基板に対する研磨は行わず、出射側面16a及び入射側面16bは共にAs−Fired面とした。
【0076】
この実施例3に係る支持体10の評価結果は、表1に示すように、基板14の表面の平均粒径は10μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.3μmであった。前方透過率の平均は72%、直線透過率の平均は4%、透過率比は14.5であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は40,000個であった。
【0077】
(実施例4)
基板14の厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例3と同様にして実施例4に係る支持体10を作製した。
【0078】
この実施例4に係る支持体10の評価結果は、表1に示すように、基板14の表面の平均粒径は10μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.3μmであった。前方透過率の平均は69%、直線透過率の平均は3%、透過率比は18.0であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は20,000個であった。
【0079】
(実施例5)
図3Bに示す第4製造方法に従って実施例5に係る支持体10を得た。先ず、上述した実施例1と同様の製法で、研磨前基板を作製した。次いで、研磨前基板の出射側面16a及び入射側面16bにそれぞれ鏡面研磨を実施し、厚さ0.3mmの実施例5に係る支持体10を得た。
【0080】
この実施例5に係る支持体10の評価結果は、表2に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は20μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.02μmであった。前方透過率の平均は82%、直線透過率の平均は50%、透過率比は1.6であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は500個であった。
【0081】
(実施例6)
基板14の厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例5と同様にして実施例6に係る支持体10を作製した。
【0082】
この実施例6に係る支持体10の評価結果は、表2に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は20μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.02μmであった。前方透過率の平均は80%、直線透過率の平均は45%、透過率比は1.8であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は500個であった。
【0083】
(実施例7)
基板14の厚みを0.8mmとしたこと以外は、実施例5と同様にして実施例7に係る支持体10を作製した。
【0084】
この実施例7に係る支持体10の評価結果は、表2に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は20μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.02μmであった。前方透過率の平均は76%、直線透過率の平均は30%、透過率比は2.5であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は500個であった。
【0085】
(実施例8)
実施例3と同様に、
図2Aに示す第1製造方法に従って実施例8に係る支持体10を得た。先ず、上述した実施例1と同様の製法で、厚さが0.3mmの基板14を作製した。基板14に対する研磨は行わず、出射側面16a及び入射側面16bは共にAs−Fired面とした。
【0086】
この実施例8に係る支持体10の評価結果は、表3に示すように、基板14の表面の平均粒径は20μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.3μmであった。前方透過率の平均は87%、直線透過率の平均は24%、透過率比は3.3であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は500個であった。
【0087】
(実施例9)
基板14の厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例8と同様にして実施例9に係る支持体10を作製した。
【0088】
この実施例9に係る支持体10の評価結果は、表3に示すように、基板14の表面の平均粒径は20μmであった。出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.3μmであった。前方透過率の平均は85%、直線透過率の平均は15%、透過率比は5.2であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は500個であった。
【0089】
(実施例10)
基板14の厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る支持体10を作製した。
【0090】
この実施例10に係る支持体10の評価結果は、表3に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は40μmであった。出射側面16aの表面粗さRaは0.01μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.4μmであった。前方透過率の平均は85%、直線透過率の平均は50%、透過率比は1.7であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は100個であった。
【0091】
(実施例11)
基板14の厚みを0.8mmとしたこと以外は、実施例10と同様にして実施例11に係る支持体10を作製した。
【0092】
この実施例11に係る支持体10の評価結果は、表3に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は40μmであった。出射側面16aの表面粗さRaは0.01μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.4μmであった。前方透過率の平均は80%、直線透過率の平均は50%、透過率比は1.6であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は100個であった。
【0093】
<比較例1〜4の内訳及び評価結果>
(比較例1)
研磨前基板の平均粒径が5μmであること以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る支持体を作製した。
【0094】
この比較例1に係る支持体の評価結果は、表4に示すように、出射側面16aの表面粗さRaは0.02μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.3μmであった。前方透過率の平均は53%、直線透過率の平均は1%、透過率比は53.0であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は70,000個であった。
【0095】
(比較例2)
基板14の厚みを0.8mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る支持体を作製した。
【0096】
この比較例2に係る支持体の評価結果は、表4に示すように、研磨前基板の表面の平均粒径は5μmであった。出射側面16aの表面粗さRaは0.02μm、入射側面16bの表面粗さRaは0.3μmであった。前方透過率の平均は47%、直線透過率の平均は1%、透過率比は47.0であった。また、主たるポアの最大長さは約1μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は1,000個未満、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は80,000個であった。
【0097】
(比較例3)
焼成後の水素アニール処理に代えてホットプレスを行い、研磨前基板の平均粒径が2μmであること以外は、実施例5と同様にして比較例3に係る支持体を作製した。
【0098】
この比較例3に係る支持体の評価結果は、表4に示すように、出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.01μmであった。前方透過率の平均は35%、直線透過率の平均は5%、透過率比は7.0であった。また、主たるポアの最大長さは約0.3μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は60,000個、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は100個未満であった。
【0099】
(比較例4)
基板14の厚みを0.8mmとしたこと以外は、比較例3と同様にして比較例4に係る支持体を作製した。
【0100】
この比較例4に係る支持体の評価結果は、表4に示すように、出射側面16a及び入射側面16bの表面粗さRaは共に0.01μmであった。前方透過率の平均は25%、直線透過率の平均は2%、透過率比は12.5であった。また、主たるポアの最大長さは約0.3μmであった。単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数は50,000個、最大長さが0.5μmを超えるポアの数は100個未満であった。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
このように、実施例1〜11は、単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数が10,000個以下であり、しかも、最大長さが0.5μmを超えるポアの数が50,000個以下であることから、波長210〜400nmの平均の前方透過率が60%以上を実現できていることがわかる。
【0106】
これに対して、比較例1及び2は、波長210〜400nmの平均の前方透過率が60%以上を実現できていない。これは、単位面積当たり、最大長さが0.5μmを超えるポアの数が50,000個を超えていることが原因と考えられ、これは、研磨前基板の表面の平均粒径が5μmと細かいことによるものと考えられる。
【0107】
比較例3及び4も、波長210〜400nmの平均の前方透過率が60%以上を実現できていない。これは、比較例1及び2と異なり、単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数が10,000個を超えていることが考えられ、これは、研磨前基板の表面の平均粒径が2μmとさらに細かいことと、焼成後にホットプレスを行ったことから、最大長さが0.1μm以下の微小ポアの除去がほとんどできなかったものと考えられる。
【0108】
このようなことから、少なくとも単位面積当たり、最大長さが0.5μm以下のポアの数が10,000個以下であることとは、必要な前方透過率を確保するために必須の要件であると考えられる。
【0109】
ここで、実施例1〜11並びに比較例1〜4のうち、出射側面16a及び入射側面16bを共に鏡面研磨した実施例5〜7並びに比較例3及び4について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0110】
先ず、
図6は、光12の波長に対する前方透過率の変化を示す。この
図6において、曲線La5、La6及びLa7が実施例5、6及び7の特性を示し、曲線Lb3及びLb4が比較例3及び4の特性を示す。
【0111】
図6から、実施例5〜7の前方透過率は、波長210〜800nmにわたって、比較例3及び4よりも高いことがわかる。実施例5〜7の結果から、基板14の厚みが薄いほど前方透過率が高い。比較例3及び4の結果も同様である。
【0112】
一方、
図7は、光12の波長に対する直線透過率の変化を示す。この
図7において、曲線La5、La6及びLa7が実施例5、6及び7の特性を示し、曲線Lb3及びLb4が比較例3及び4の特性を示す。
【0113】
図7から、実施例5〜7の直線透過率は、波長210〜700nmにわたって、比較例3及び4よりも高いことがわかる。実施例5〜7の結果から、基板14の厚みが薄いほど直線透過率が高い。比較例3及び4の結果も同様である。
【0114】
ただ、実施例5〜7は、透過率比が低い値となっている。基板14の厚みを変化させても、前方透過率と直線透過率が同じ傾向で変化することから、基板14の厚みだけでは、透過率比を上げることはできない。
【0115】
そこで、実施例1〜3等の結果を加味すると、透過率比を上げる、すなわち、前方透過率を上げて、直線透過率を下げるには、単位面積当たり、最大長さが0.5μmを超えるポアの数が500個を超えることが好ましいことがわかる。
【0116】
透過率比を上げることで、光源からの光12を拡散することができる。その結果、上述した使用形態において、樹脂全体を均一に硬化させることができ、それと共に、光12による樹脂硬化で発生する熱は、支持体10の良好な熱伝導により支持体10全体で均一に伝わる。そのため、被処理材や支持体10にクラックが発生し難いという効果を奏する。
【0117】
なお、本発明に係る透光性焼結セラミック支持体及びその製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。