(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定子が二つの前記コイル部材を軸方向に重ね合わせて構成されていると共に、前記可動子が前記永久磁石の両面にそれぞれ前記インナヨークを重ね合わせた構造とされており、それらインナヨークの両方に前記厚肉部と前記肉抜部が設けられている請求項1に記載の防振用電磁式アクチュエータ。
前記アウタヨークの前記内周筒部における前記磁気ギャップから軸方向外端までの軸方向寸法が、該磁気ギャップから軸方向内端までの軸方向寸法よりも大きくされている請求項2に記載の防振用電磁式アクチュエータ。
前記肉抜部が凹所状とされており、前記インナヨークにおける該肉抜部を設けられた部分が前記厚肉部よりも軸方向寸法の小さい薄肉部とされている請求項1〜3の何れか一項に記載の防振用電磁式アクチュエータ。
前記永久磁石と前記インナヨークの重ね合わせ面が軸直角方向に広がる平面とされている一方、該インナヨークの外周端部には周方向に延びる環状の前記厚肉部が形成されていると共に、該永久磁石と反対側の面に開口する凹所状の前記肉抜部が該インナヨークにおける該厚肉部よりも内周側の全体に亘って形成されている請求項4に記載の防振用電磁式アクチュエータ。
前記インナヨークの前記厚肉部の軸方向寸法が前記磁気ギャップの軸方向寸法よりも大きくされて、該インナヨークと前記アウタヨークの前記内周筒部とが軸直角方向の投影において重なっていると共に、該インナヨークの前記薄肉部の軸方向寸法が該磁気ギャップの軸方向寸法よりも小さくされている請求項4又は5に記載の防振用電磁式アクチュエータ。
第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された流体室が形成されており、該流体室には非圧縮性流体封入されていると共に、該流体室の壁部の他の一部が加振部材で構成されて、該加振部材には請求項1〜6の何れか一項に記載された防振用電磁式アクチュエータの前記可動子が取り付けられており、該防振用電磁式アクチュエータの発生加振力が該加振部材によって該流体室に及ぼされるようになっていることを特徴とする能動型流体封入式防振装置。
請求項1〜6の何れか一項に記載された防振用電磁式アクチュエータを備えており、前記固定子が制振対象部材に取り付けられるようになっていると共に、該固定子と前記可動子が支持ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていることを特徴とする能動型制振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、より高周波数域でも作動を制御できると共に、発生力を十分に大きく得ることができる、新規な構造の防振用電磁式アクチュエータを提供することにある。
【0007】
さらに、本発明は、上記の如き効果を奏する防振用電磁式アクチュエータを用いて構成される、新規な構造の能動型流体封入式防振装置および能動型制振装置を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、筒状の固定子に可動子が軸方向へ相対変位可能に挿し入れられており、該固定子がコイルにアウタヨークを取り付けたコイル部材を備えていると共に、該アウタヨークには該コイルの内周面に重ね合わされる内周筒部が設けられて、該内周筒部に磁気ギャップが形成されて
おり、該磁気ギャップを挟んで軸方向両側へそれぞれ一定の内径寸法で広がる円筒内周面が形成されている一方、該可動子が永久磁石とインナヨークを該固定子の軸方向で重ね合わせた構造を有しており、
該磁気ギャップを挟んだ軸方向両側に広がる該円筒内周面に対して径方向で略一定の隙間を隔てて対向位置する円筒外周面が該可動子に形成されて、該可動子の該円筒外周面に対して該永久磁石による磁極が設定されていることにより、該コイルへの通電によって該可動子が該固定子に対して軸方向に相対変位するようにされた防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記インナヨークの外周端部が軸方向寸法の大きな厚肉部とされていると共に、該インナヨークの内周部分には肉抜部が設けられて、該インナヨークの軸方向寸法が該肉抜部を設けられた部分で該厚肉部よりも小さくされていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた防振用電磁式アクチュエータによれば、インナヨークの外周端部が厚肉部とされて軸方向寸法を大きくされていることから、インナヨークとアウタヨークの内周筒部における磁気ギャップ側の端部との離隔距離を小さく設定することができる。それ故、コイルへの通電時に、インナヨークとアウタヨークの間に磁気的な力を強く作用させることができて、目的とする発生力を効率的に得ることができる。
【0011】
さらに、インナヨークの内周部分に肉抜部が設けられて、インナヨークの軸方向寸法が肉抜部の形成部分で厚肉部よりも小さくされていることから、インナヨークの軽量化が図られて、可動子の固定子に対する変位をより高周波まで制御することなども可能となる。しかも、インナヨークは、軸方向端面が永久磁石に重ね合わされると共に、外周面がアウタヨークの内周筒部側となるように配されることから、インナヨークの内周部分の磁束密度は外周端部よりも小さく、インナヨークの内周部分に肉抜部を形成しても磁束の飽和による発生力の低下が回避される。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記固定子が二つの前記コイル部材を軸方向に重ね合わせて構成されていると共に、前記可動子が前記永久磁石の両面にそれぞれ前記インナヨークを重ね合わせた構造とされており、それらインナヨークの両方に前記厚肉部と前記肉抜部が設けられているものである。
【0013】
第二の態様によれば、二つのコイル部材と二つのインナヨークとの間での磁気的な作用に基づいて、より大きな発生力を得ることができる。また、各インナヨークに厚肉部と肉抜部が設けられていることにより、目的とする発生力を有効に得ながら、可動子の軽量化による制御可能な周波数域の拡大も実現される。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記アウタヨークの前記内周筒部における前記磁気ギャップから軸方向外端まで軸方向寸法が、該磁気ギャップから軸方向内端までの軸方向寸法よりも大きくされているものである。
【0015】
第三の態様によれば、軸方向に二つのコイル部材を重ね合わせた構造において、各コイルの巻き数を多くすることにより、コイルへの通電時に形成される磁界が強められて、発生力を有利に得ることができる。しかも、磁気ギャップの位置を内周筒部において軸方向内寄りに設定することによって、コイルの軸方向寸法が大きくされても、可動子を軸方向に大型化することなく、各インナヨークを磁気ギャップに対して所定の軸方向位置に配することができる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記肉抜部が凹所状とされており、前記インナヨークにおける該肉抜部を設けられた部分が前記厚肉部よりも軸方向寸法の小さい薄肉部とされているものである。
【0017】
第四の態様によれば、肉抜部がインナヨークを貫通することなく凹所状とされて、インナヨークが永久磁石により広い面積で重ね合わされることにより、永久磁石によってインナヨークにより強い磁化が生じることから、発生力を大きく得ることができる。また、インナヨークにおいて磁路の断面積を大きく得易くなって、磁束の飽和による発生力の低下も防止できる。
【0018】
本発明の第五の態様は、第四の態様に記載された防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記永久磁石と前記インナヨークの重ね合わせ面が軸直角方向に広がる平面とされている一方、該インナヨークの外周端部には周方向に延びる環状の前記厚肉部が形成されていると共に、該永久磁石と反対側の面に開口する凹所状の前記肉抜部が該インナヨークにおける該厚肉部よりも内周側の全体に亘って形成されているものである。
【0019】
第五の態様によれば、インナヨークの内周部分の全体が薄肉部とされることで、インナヨークの軽量化がより効果的に図られると共に、外周端部が全周に亘って厚肉部とされることで、コイルへの通電時に発揮される発生力を有効に得ることができる。しかも、永久磁石とインナヨークの重ね合わせ面が大きく確保されることから、永久磁石の磁束がインナヨークに効率的に作用して、インナヨークに強い磁化が現れることから、発生力を効率的に得ることができる。
【0020】
本発明の第六の態様は、第四又は第五の態様に記載された防振用電磁式アクチュエータにおいて、前記インナヨークの前記厚肉部の軸方向寸法が前記磁気ギャップの軸方向寸法よりも大きくされて、該インナヨークと前記アウタヨークの前記内周筒部とが軸直角方向の投影において重なっていると共に、該インナヨークの前記薄肉部の軸方向寸法が該磁気ギャップの軸方向寸法よりも小さくされているものである。
【0021】
第六の態様によれば、インナヨークの薄肉部が十分に薄肉とされることによって、可動子の軽量化が有効に図られる。更に、インナヨークの薄肉部が磁気ギャップの軸方向寸法よりも薄肉とされていても、インナヨークの外周端部に厚肉部が設けられることによって、アウタヨークの内周筒部に対して十分に接近して配置されて、インナヨークとアウタヨークの間で作用する磁気的な力が効率的に発揮される。
【0022】
また、本発明において好適には、固定子に対する可動子の軸方向での安定位置において、可動子の前記薄肉部の軸方向外側面が固定子の磁気ギャップの軸方向外側端に対して軸方向内方に位置すると共に、可動子の前記厚肉部の軸方向外側面が軸方向外方に位置するようにされている。更にまた、かかる安定位置において、可動子の薄肉部の軸方向外側面が、固定子の磁気ギャップの軸方向内側端よりも軸方向外方に位置すると共に、可動子の厚肉部の軸方向外側面が、固定子の軸方向外側面よりも軸方向内方に位置するようにされることが、何れも好適である。
【0023】
本発明の第七の態様は、能動型流体封入式防振装置であって、第一の取付部材と第二の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された流体室が形成されており、該流体室には非圧縮性流体封入されていると共に、該流体室の壁部の他の一部が加振部材で構成されて、該加振部材には第一〜第六の何れか一つの態様に記載された防振用電磁式アクチュエータの前記可動子が取り付けられており、該防振用電磁式アクチュエータの発生加振力が該加振部材によって該流体室に及ぼされるようになっているものである。
【0024】
第七の態様に従う構造とされた能動型流体封入式防振装置によれば、防振用電磁式アクチュエータによって流体室に及ぼされる能動的な加振力が、インナヨークの厚肉部とアウタヨークとが接近して配置されることで、十分な大きさで発揮される。更に、肉抜部によってインナヨークの軽量化が図られることにより、より高い周波数域まで加振を制御可能となって、より高周波の防振対象振動に対しても有効な防振効果を得ることができる。
【0025】
本発明の第八の態様は、能動型制振装置であって、第一〜第六の何れか一つの態様に記載された防振用電磁式アクチュエータを備えており、前記固定子が制振対象部材に取り付けられるようになっていると共に、該固定子と前記可動子が支持ゴム弾性体によって相互に弾性連結されているものである。
【0026】
第八の態様に従う構造とされた能動型制振装置によれば、防振用電磁式アクチュエータによって制振対象部材に及ぼされる能動的な加振力が、インナヨークの厚肉部とアウタヨークとが接近して配置されることで、十分な大きさで発揮される。更に、肉抜部によってインナヨークの軽量化が図られることにより、より高い周波数域まで加振を制御可能となって、より高周波の制振対象振動に対しても有効な制振効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、可動子を構成するインナヨークの外周端部が、軸方向寸法の大きな厚肉部とされていることから、コイルへの通電時に、インナヨークとアウタヨークの間に磁気的な力を強く作用させて、目的とする発生力を効率的に得ることができる。更に、インナヨークの内周部分に肉抜部が設けられて、インナヨークの軸方向寸法が肉抜部の形成部分で厚肉部よりも小さくされていることから、インナヨークの軽量化が図られて、可動子の固定子に対する変位をより高周波まで制御することなども可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1には、本発明の第一の実施形態として、本発明に係る防振用電磁式アクチュエータ10を備えた能動型流体封入式防振装置としてのエンジンマウント11が示されている。エンジンマウント11は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結された構造を有している。以下の説明において、特に説明がない限り、上下方向とは、後述する可動子70の固定子68に対する変位方向となる
図1中の上下方向を言う。
【0031】
より詳細には、第一の取付部材12は、金属や合成樹脂などで形成された高剛性の部材であって、略円形断面で上下に延びるブロック形状を有していると共に、上方に突出する板状の取付片18が一体形成されて、取付片18にボルト孔20が貫通形成されている。
【0032】
第二の取付部材14は、第一の取付部材12と同様に高剛性の部材であって、全体として薄肉大径の略円筒形状を有していると共に、外周側に開口する溝状縦断面で周方向に延びている。更に、第二の取付部材14は、上端部分が上方に行くに従って拡開するテーパ部22とされていると共に、下端部分が円環板形状のかしめ板部24とされている。
【0033】
そして、第一の取付部材12が第二の取付部材14の上方に配置されて、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14の間に本体ゴム弾性体16が配されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円錐台形状を有しており、小径側の端部が第一の取付部材12に加硫接着されていると共に、大径側の端部が第二の取付部材14に加硫接着されている。本実施形態の本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備える一体加硫成形品として形成されている。
【0034】
また、本体ゴム弾性体16には、大径凹所26が形成されている。大径凹所26は、本体ゴム弾性体16の大径側の軸方向端面に開口する円形横断面の凹所であって、上底壁面が上方に向かって縮径するテーパ形状を有している。なお、大径凹所26の直径が第二の取付部材14の内径よりも小さくされており、第二の取付部材14の内周面が本体ゴム弾性体16と一体形成された略円筒形状のゴム層によって覆われている。更に、テーパ部22を含む第二の取付部材14の上端部分は、外周側まで本体ゴム弾性体16によって覆われて、本体ゴム弾性体16に埋設状態で固着されている。
【0035】
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、支持ゴム弾性体30が取り付けられている。支持ゴム弾性体30は、略円環板形状を有しており、外周端部に円環状の支持金具32が加硫接着されている。支持金具32は、内周部分が溝状とされて支持ゴム弾性体30の外周端部に固着されていると共に、外周部分が略円環板形状とされて第二の取付部材14のかしめ板部24に下方から重ね合わされている。また、支持ゴム弾性体30の内周端部には、加振部材としての出力部材34が加硫接着されており、支持ゴム弾性体30の中央穴が出力部材34で閉塞されている。更に、出力部材34は、略皿形状の上部からロッド状の下部が軸方向下方に延び出した構造を有しており、下端部には外周面にねじ山が形成された雄ねじ部35を備えている。
【0036】
そして、支持金具32と出力部材34を備える支持ゴム弾性体30が、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に取り付けられることによって、本体ゴム弾性体16の大径凹所26が支持ゴム弾性体30によって流体密に覆蓋されている。これにより、本体ゴム弾性体16と支持ゴム弾性体30および出力部材34との間には、流体室としての主液室36が大径凹所26を用いて形成されている。主液室36は、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されると共に、壁部の他の一部が支持ゴム弾性体30および出力部材34で構成されており、内部に非圧縮性流体が封入されている。主液室36に封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やエチレングリコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液などの液体が、好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用などに基づく防振効果を有利に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。なお、例えば、支持金具32を非圧縮性流体で満たされた水槽中で後述するアウタかしめ金具46のかしめ片50に圧入することにより、非圧縮性流体を主液室36へ簡単に封入することができる。尤も、例えば、第一の取付部材12などに注入孔を形成して、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品と、可撓性膜42(後述)の一体加硫成形品と、支持ゴム弾性体30の一体加硫成形品とを、アウタかしめ金具46に組み付けた後に、注入孔を通じて流体を注入し、その後で注入孔を封止することによっても、流体を封入することができる。
【0037】
本実施形態では、支持ゴム弾性体30と本体ゴム弾性体16の間に仕切金具38が配設されている。仕切金具38は、薄肉の略円板形状を有しており、外周部分が支持金具32の上面にゴム弾性体を介して重ね合わされていると共に、内周部分が外周部分よりも上方に位置して支持ゴム弾性体30および出力部材34から上方に離隔している。更に、仕切金具38の内周部分には、厚さ方向に貫通する小径の円形孔であるフィルタオリフィス40が複数形成されている。
【0038】
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品には、可撓性膜42が取り付けられている。可撓性膜42は、撓み変形を容易に許容される薄肉のゴム膜であって、全体として周方向に連続する略円環形状を呈していると共に、外周に凸の縦断面形状を有する。そして、可撓性膜42は、上端部(内周端部)がインナ嵌着金具44に加硫接着されていると共に、下端部(外周端部)がアウタかしめ金具46に加硫接着されている。
【0039】
インナ嵌着金具44は、外周に凹の溝断面形状で全周に亘って連続する環状の金具であって、外周面に可撓性膜42の上端部が加硫接着されている。そして、インナ嵌着金具44が第一の取付部材12に外嵌されて、可撓性膜42の上端部が第一の取付部材12に取り付けられている。
【0040】
アウタかしめ金具46は、全体として大径の略円筒形状を有しており、内周面に可撓性膜42が加硫接着されている一方、上端部には外周側に広がるフランジ部48が一体形成されていると共に、下端部が段差の外周端から下方に突出するかしめ片50とされている。そして、アウタかしめ金具46のかしめ片50が第二の取付部材14のかしめ板部24にかしめ固定されることにより、可撓性膜42の下端部が第二の取付部材14に取り付けられている。なお、第二の取付部材14の上端部がアウタかしめ金具46にゴム弾性体を介して軸直角方向に当接しており、第二の取付部材14の上端部とアウタかしめ金具46の間が流体密に封止されている。また、支持ゴム弾性体30に固着された支持金具32の外周部分は、アウタかしめ金具46のかしめ片50によって第二の取付部材14のかしめ板部24と共にかしめ固定されて、第二の取付部材14に固定されている。
【0041】
このように可撓性膜42の上端部が第一の取付部材12に取り付けられると共に、可撓性膜42の下端部が第二の取付部材14に取り付けられることにより、可撓性膜42が本体ゴム弾性体16の外周側に配されて、本体ゴム弾性体16と可撓性膜42の間には外部から流体密に隔てられた副液室52が形成されている。副液室52は、壁部の一部が可撓性膜42で構成されて容積変化が容易に許容されると共に、主液室36と同じ非圧縮性流体が封入されている。
【0042】
また、第二の取付部材14の軸方向中間部分とアウタかしめ金具46の軸方向中間部分との軸直対向面間には、周方向に連続して延びるトンネル状の流路が形成されている。そして、当該トンネル状流路が周上の一部に形成された第一の連通路54を通じて主液室36に連通されると共に、周上の他の一部に形成された第二の連通路56を通じて副液室52に連通されることにより、主液室36と副液室52を相互に連通するオリフィス通路58が、第二の取付部材14とアウタかしめ金具46の間に形成されている。オリフィス通路58は、主液室36および副液室52の壁ばね剛性を考慮しながら、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することにより、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が適宜に設定されており、本実施形態ではエンジンシェイクに相当する10Hz程度にチューニングされている。なお、第二の取付部材14の外周面に本体ゴム弾性体16と一体形成された図示しない隔壁部が固着されていることにより、トンネル状流路が周方向で一周に満たない長さとされて、トンネル状流路の周方向両端部に連通路54,56が形成されている。
【0043】
また、アウタかしめ金具46には、締結金具60が取り付けられている。締結金具60は、全体として大径の略円筒形状を有しており、上端部にフランジ状の連結板部62が設けられていると共に、下端部にはフランジ状の取付板部64が設けられている。そして、連結板部62がアウタかしめ金具46のかしめ片50によってかしめ固定されることにより、締結金具60がアウタかしめ金具46と連結されて、それらアウタかしめ金具46と締結金具60によってアウタブラケットが構成されている。なお、締結金具60の連結板部62は、第二の取付部材14のかしめ板部24および支持金具32の外周部分と共にかしめ片50でかしめ固定されており、締結金具60が第二の取付部材14および支持金具32に固定されている。
【0044】
また、締結金具60の内周側には、防振用電磁式アクチュエータ10が配設されている。防振用電磁式アクチュエータ10は、軸方向に相対変位可能とされた固定子68と可動子70が、相互に内外挿配置された構造を有している。
【0045】
固定子68は、上下二段に配されたコイル部材72,72を備えている。コイル部材72は、樹脂製のボビンに導電性の金属線材を巻回してなるコイル74に、アウタヨーク76が組み付けられた構造とされて、全体として大径の略円筒形状を呈している。
【0046】
アウタヨーク76は、鉄などの強磁性体で形成されており、コイル74の軸方向外面に重ね合わされる第一のヨーク78と、コイル74の軸方向内面に重ね合わされる第二のヨーク80とを備えている。より具体的には、第一のヨーク78がコイル74の軸方向外面と外周面と内周面の軸方向外端部とを覆うように取り付けられていると共に、第二のヨーク80がコイル74の軸方向内面と内周面の軸方向内端部とを覆うように取り付けられている。これにより、コイル74の周囲には、コイル74への通電によって生じる磁束を導く磁路が、アウタヨーク76によって形成されている。
【0047】
さらに、アウタヨーク76においてコイル74の内周面に重ね合わされる内周筒部81では、第一のヨーク78と第二のヨーク80が上下に離隔しており、内周筒部81における第一のヨーク78と第二のヨーク80の間には、磁気ギャップ82が形成されている。本実施形態の内周筒部81では、第一のヨーク78における磁気ギャップ82から軸方向外端までの軸方向寸法と、第二のヨーク80における磁気ギャップ82から軸方向外端までの軸方向寸法とが、相互に略同じとされている。
【0048】
そして、コイル74,74に給電されることにより、コイル74,74の周囲に磁束が発生すると共に、発生した磁束がアウタヨーク76,76で構成された磁路によって導かれて、磁気ギャップ82の軸方向両側でアウタヨーク76の内周筒部81に磁極が形成されるようになっている。なお、上側のコイル部材72のコイル74と、下側のコイル部材72のコイル74は、連続する線材で形成されていると共に、線材がボビンに対して互いに逆向きに巻回されており、通電によって逆向きの磁束を生じるようになっている。また、上下のコイル部材72,72は、略対称な構造とされているが、下側のコイル部材72には、コイル74と電気的に接続されたコイル端子金具84が下方に突出して設けられている。
【0049】
また、固定子68は、ハウジング86の内周側に収容配置されている。ハウジング86は、全体として有底の略カップ形状とされて、略円筒形状の周壁部88と略円板形状の底壁部90とを一体で備えていると共に、開口部にフランジ状の支持片92が一体形成されている。なお、本実施形態では、ハウジング86の底壁部90は、外周に行くに従って次第に上方に位置する段付き板形状とされており、外周端部が固定子68に当接する円環板状の固定子支持部94とされている。
【0050】
本実施形態において、固定子68は、支持金具32の内周部分とハウジング86の底壁部90の固定子支持部94との軸方向間に挟み込まれることにより、ハウジング86に対して相対変位不能に位置決め固定されている。なお、溝状とされた支持金具32の内周部分の下面が、支持ゴム弾性体30と一体形成された挟持ゴムで覆われており、上側のコイル部材72における第一のヨーク78が支持金具32に対して挟持ゴムを介して間接的に当接している。
【0051】
さらに、固定子68がハウジング86に取り付けられた状態で、コイル端子金具84がハウジング86に取り付けられたコネクタ98に接続されている。コネクタ98は、ハウジング86の底壁部90の外周部分に形成された接続穴に取り付けられて下方に延びていると共に、中間部分で屈曲して側方に突出している。更に、コネクタ98には、コネクタ端子金具100が設けられており、コネクタ端子金具100の一端がコイル端子金具84に接触して導通されていると共に、コネクタ端子金具100の他端が外部に露出している。
【0052】
また、固定子68の中央穴には、ガイドスリーブ101が差し入れられて配設されている。ガイドスリーブ101は、薄肉の略円筒形状を有する部材であって、非磁性のステンレス鋼などで形成されていると共に、好適には表面にフッ素樹脂コーティングなどの低摩擦表面処理が施されている。更に、ガイドスリーブ101の下端部に大径筒状の固着部が設けられており、当該固着部に固着されて外周へ突出する弾性支持体102が、コイル部材72とハウジング86の底壁部90との間で軸方向に挟持されることにより、ガイドスリーブ101が固定子68に弾性支持されている。
【0053】
また、ガイドスリーブ101には、可動子70が差し入れられている。可動子70は、永久磁石104の上下両側にインナヨークとしての上ヨーク106と下ヨーク108を重ね合わせた構造のアーマチャを備えている。永久磁石104は、上下両面が軸直角方向に広がる平面とされた略円環板形状を有しており、軸方向に着磁されることで上下両面に各一方の磁極が形成されている。なお、永久磁石104は、フェライト系磁石やアルニコ系磁石なども採用可能であるが、好適には、小型軽量で大きな保磁力を得ることができるサマリウム−コバルト磁石などの希土類コバルト系磁石が採用される。
【0054】
上ヨーク106は、フッ素樹脂コーティングなどの低摩擦表面処理を施された鉄などの強磁性体で形成されており、全体として略円環板形状とされている。また、上ヨーク106は、永久磁石104との重ね合わせ面である下面が軸直角方向に広がる平面とされていると共に、上面の内周部分には凹所状の肉抜部110が開口しており、上ヨーク106における肉抜部110の形成部分での軸方向寸法が、肉抜部110を外れた部分の軸方向寸法よりも小さくされている。これにより、上ヨーク106は、肉抜部110を外周側に外れた外周端部が、軸方向寸法の大きな厚肉部112とされていると共に、肉抜部110を形成された厚肉部112よりも内周側の全体が、厚肉部112よりも軸方向寸法の小さい薄肉部114とされている。なお、下ヨーク108は、上ヨーク106を上下反転した構造とされており、上ヨーク106と同様に肉抜部110と厚肉部112と薄肉部114とを備えている。また、下ヨーク108は、上ヨーク106を上下反転した構造であることから、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0055】
本実施形態の上ヨーク106は、厚肉部112が周方向の全周に亘って連続して環状に設けられていると共に、厚肉部112の内周側に略円環板形状の薄肉部114が一体形成された構造を有しており、全周に亘って略一定の断面形状を有している。更に、本実施形態では、薄肉部114の外周端部の上面115が外周側に行くに従って上傾する傾斜面とされて、薄肉部114の外周端部の軸方向寸法が外周側に行くに従って大きくなっている。特に、薄肉部114の外周端部の上面115の傾斜角度が外周側に行くに従って大きくなっており、薄肉部114の外周端部の上面115が縦断面で湾曲形状を呈する湾曲傾斜面とされている。なお、本実施形態では、厚肉部112の外周端部の軸方向両端角部が面取りされており、厚肉部112の外周端部の軸方向寸法が外周側に行くに従って小さくなっている。
【0056】
さらに、上ヨーク106は、厚肉部112の軸方向寸法(t
1 )が、上側コイル部材72の磁気ギャップ82の軸方向寸法(d)よりも大きくされていると共に、薄肉部114の軸方向寸法(t
2 )が、磁気ギャップ82の軸方向寸法(d)よりも小さくされている(t
2 <d<t
1 )。同様に、下ヨーク108は、厚肉部112の軸方向寸法が、下側コイル部材72の磁気ギャップ82の軸方向寸法よりも大きくされていると共に、薄肉部114の軸方向寸法が、磁気ギャップ82の軸方向寸法よりも小さくされている。本実施形態では、上ヨーク106と下ヨーク108が相互に上下反転した構造とされて、厚肉部112および薄肉部114の軸方向寸法が互いに略同じとされていると共に、上側コイル部材72の磁気ギャップ82と下側コイル部材72の磁気ギャップ82の軸方向寸法が、互いに略同じとされている。
【0057】
そして、上ヨーク106が永久磁石104の上面に重ね合わされると共に、下ヨーク108が永久磁石104の下面に対して全面に亘って重ね合わされて、それら永久磁石104と上下ヨーク106,108が中心穴に圧入される位置調整ナット116によって相互に連結されている。これにより、上下ヨーク106,108が永久磁石104の磁場によって磁化されることから、上ヨーク106の外周面と下ヨーク108の外周面には、互いに反対の磁極が形成される。なお、位置調整ナット116は、小径の略円筒形状で内周面にねじ山が形成されていると共に、外周面の軸方向下部が上部よりも大径とされており、大径の下部が下ヨーク108の内周面に形成された段差に軸方向で当接することによって、永久磁石104および上下ヨーク106,108に対して軸方向で位置決めされている。
【0058】
かかる可動子70には筒状の固定子68が外挿されており、可動子70が固定子68に対して軸方向へ相対変位可能とされている。可動子70は、上ヨーク106の厚肉部112の軸方向中央と上側コイル部材72の磁気ギャップ82の軸方向中央とが一致すると共に、下ヨーク108の厚肉部112の軸方向中央と下側コイル部材72の磁気ギャップ82の軸方向中央とが一致するように、固定子68に対して軸方向で位置決めされる。これにより、軸方向での安定位置において、上ヨーク106の厚肉部112の上下両端部が、何れも上側コイル部材72のアウタヨーク76における内周筒部81と軸直角方向の投影において重なり合っていると共に、下ヨーク108の厚肉部112の上下両端部が、何れも下側コイル部材72のアウタヨーク76における内周筒部81と軸直角方向の投影において重なり合っている。
【0059】
なお、本実施形態では、固定子68に対する可動子70の軸方向での安定位置において、可動子70の薄肉部114の軸方向外側面が、例えば上面115よりも内周側などの少なくとも一部において、固定子68の磁気ギャップ82の軸方向外側端に対して軸方向内方に位置していると共に、可動子70の厚肉部112の軸方向外側面が、磁気ギャップ82の軸方向外側端に対して軸方向外方に位置している。更に、かかる安定位置において、薄肉部114の軸方向外側面の全体が、磁気ギャップ82の軸方向内側端よりも軸方向外方に位置すると共に、厚肉部112の軸方向外側面が、コイル部材72の軸方向外側面よりも軸方向内方に位置するようにされている。
【0060】
そして、コネクタ98に接続される図示しない電源装置からコイル74,74への給電によって、コイル74,74がそれぞれ磁界を形成することにより、アウタヨーク76,76がそれぞれ磁化されて、可動子70の上下ヨーク106,108との間で磁気的な力が発生し、可動子70が固定子68に対して軸方向上下に相対変位せしめられるようになっている。なお、図示しない制御装置が電源装置からコイル74,74に供給される電流の向きを設定されたタイミングで切り替えることにより、可動子70の固定子68に対する相対変位方向、換言すれば加振の周波数が制御されるようになっている。
【0061】
かくの如き構造とされた防振用電磁式アクチュエータ10は、ハウジング86がアウタかしめ金具46に取り付けられていると共に、可動子70が出力部材34に取り付けられている。
【0062】
すなわち、ハウジング86は、上端開口部に設けられた支持片92が、締結金具60の連結板部62と支持金具32の外周部分との軸方向間に差し入れられている。そして、それら連結板部62と支持金具32の外周部分がアウタかしめ金具46のかしめ片50でかしめ固定されることにより、支持片92がアウタかしめ金具46に固定されている。これにより、支持片92を備えるハウジング86は、アウタかしめ金具46を介して第二の取付部材14に取り付けられており、後述するように締結金具60が図示しない車両ボデーに取り付けられることによって、車両ボデー側に支持されるようになっている。
【0063】
一方、可動子70は、出力部材34の下端部に設けられた雄ねじ部35が位置調整ナット116に螺着されると共に、位置調整ナット116に下方からロックボルトが螺入されることにより、出力部材34に対して所定の軸方向位置で固定されている。なお、位置調整ナット116の雄ねじ部35へのねじ込み量を適宜に調節することにより、出力部材34に対する可動子70の軸方向位置を調整可能とされており、出力部材34の軸方向位置にばらつきがあっても、可動子70を固定子68に対して軸方向で所定の位置に位置合わせすることができる。
【0064】
このような構造とされたエンジンマウント11は、第一の取付部材12が、取付片18にボルト固定される図示しないインナブラケットを介して、同じく図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が、締結金具60を介して図示しない車両ボデーに取り付けられる。これにより、エンジンマウント11がパワーユニットと車両ボデーの間に介装されて、パワーユニットが車両ボデーに防振支持されるようになっている。
【0065】
そして、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動の入力時には、主液室36に内圧変動が惹起されて、主液室36と副液室52の相対的な圧力差に基づいてそれら両室36,52間でオリフィス通路58を通じた流体流動が生ぜしめられる。これにより、流体の共振作用などの流動作用に基づいた防振効果が発揮される。
【0066】
また、例えばアイドリング振動(十数Hz程度)や走行こもり音(30Hz〜200Hz程度)などの中乃至高周波小振幅振動の入力時には、オリフィス通路58が反共振によって実質的に閉塞される。一方、主液室36の壁部の一部を構成する出力部材34が、防振用電磁式アクチュエータ10によって軸方向に加振されることにより、主液室36に加振力が及ぼされる。これにより、入力振動が能動的に及ぼされた加振力によって相殺されて、目的とする防振効果を得ることができる。本実施形態では、加振力がフィルタオリフィス40を通じて主液室36に及ぼされるようになっており、加振による能動的な防振効果がより効率的に発揮されるようになっている。
【0067】
本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント11によれば、防振用電磁式アクチュエータ10の可動子70において、上ヨーク106および下ヨーク108の外周端部が、軸方向寸法の大きな厚肉部112とされている。それ故、上下ヨーク106,108の外周端部と、各一方のコイル部材72の各内周筒部81における磁気ギャップ82側の端部とを、接近して配置することができる。従って、各コイル74への通電時に、上下ヨーク106,108と各コイル部材72の内周筒部81との間に磁気的な力を強く作用させることができて、目的とする発生力を効率的に得ることができることから、能動的な防振作用を有利に得ることができる。
【0068】
さらに、上下ヨーク106,108の内周部分にそれぞれ肉抜部110が設けられて、上下ヨーク106,108の軸方向寸法が、肉抜部110の形成部分で厚肉部112よりも小さくされていることから、上下ヨーク106,108の軽量化が図られて、可動子70の固定子68に対する変位をより高周波まで制御することなども可能となる。従って、主液室36に及ぼされる能動的な加振力による防振効果を、より広い周波数域の振動入力に対して有効に得ることができる。
【0069】
しかも、上下ヨーク106,108は、軸方向端面が永久磁石104に重ね合わされると共に、外周面がアウタヨーク76の内周筒部81側となるように配されることから、上下ヨーク106,108の内周部分の磁束密度は外周端部よりも小さい。従って、上下ヨーク106,108の内周部分に肉抜部110を形成しても、外周端部が軸方向寸法の大きな厚肉部112とされることにより、磁束の飽和による発生力の低下が回避される。
【0070】
また、本実施形態の防振用電磁式アクチュエータ10では、固定子68が二つのコイル部材72,72を上下に重ね合わせた構造を有していると共に、可動子70が上下二つのヨーク106,108を永久磁石104に重ね合わせた構造を有している。そして、二つのコイル部材72,72の各コイル74への通電時に、上ヨーク106と上側コイル部材72の内周筒部81との間で発生力が生じると共に、下ヨーク108と下側コイル部材72の内周筒部81との間でも発生力が生じることから、目的とする発生力をより有利に得ることができる。また、上下ヨーク106,108の両方に厚肉部112と肉抜部110(薄肉部)が設けられていることにより、永久磁石104の両面に上下ヨーク106,108を重ね合わせた構造でも可動子70の軽量化が図られて、慣性が小さく抑えられることで応答速度や精度が向上されると共に、制御可能な周波数域の拡大が有効に実現される。
【0071】
また、肉抜部110が上下ヨーク106,108を貫通しない凹所状とされており上下ヨーク106,108が永久磁石104に対してより広い面積で重ね合わされている。それ故、漏れ磁束も抑えられて、永久磁石104によって上下ヨーク106,108がより効率的に磁化されることから、発生力を大きく得ることができる。
【0072】
さらに、本実施形態の肉抜部110は、上下ヨーク106,108の内周部分の全体に形成されており、上下ヨーク106,108の内周部分の全体が薄肉部114とされることで、上下ヨーク106,108の軽量化がより効果的に図られている。しかも、肉抜部110の外周側には、軸方向寸法の大きな厚肉部112が全周に亘って連続して形成されていることから、コイル74への通電時に発揮される発生力を有利に得ることができる。更に、永久磁石104と上下ヨーク106,108の重ね合わせ面が大きく確保されることから、永久磁石104の磁束が上下ヨーク106,108に効率的に導かれて、上下ヨーク106,108に強い磁化が現れることから、発生力を効率的に得ることができる。
【0073】
また、上下ヨーク106,108における薄肉部114の軸方向寸法が十分に小さくされており、可動子70が有効に軽量化されている。更に、上下ヨーク106,108の薄肉部114が磁気ギャップ82の軸方向寸法よりも薄肉とされていても、上下ヨーク106,108の外周端部に設けられた厚肉部112の軸方向寸法が、磁気ギャップ82の軸方向寸法よりも大きくされていることから、上下ヨーク106,108が各一方のアウタヨーク76の内周筒部81に対して十分に接近して配置されて、発生力が効率的に発揮される。
【0074】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、上下のコイル部材72,72の各アウタヨーク76は、
図3に示すように、内周筒部81における第一のヨーク78の磁気ギャップ82から軸方向外端までの軸方向寸法(X
1 )が、第二のヨーク80の磁気ギャップ82から軸方向内端までの軸方向寸法(X
2 )よりも大きくされ得る(X
2 <X
1 )。これによれば、磁気ギャップ82の軸方向寸法(d)を大きくすることなく、コイル74の軸方向寸法を大きくできることから、コイル74の巻き数を多くして通電時の磁場を強めることにより、発生力を大きく得ることができると共に、可動子70の大型化とそれに伴う重量の増加が回避されることから、広い周波数域で加振を制御することができる。
【0075】
また、コイル部材72は、上下二段に重ね合わされて設けられた構造に限定されず、例えば、1つだけが設けられていても良い。この場合には、インナヨークは上下何れか一方で良い。
【0076】
また、インナヨークの肉抜部の具体的な態様は、前記実施形態のものには限定されない。即ち、
図4に示すインナヨークとしての上ヨーク120では、径方向の中間部分に円形断面で上下に延びる凹所状の肉抜部122が周上で複数(
図4では4つ)形成されており、肉抜部122よりも外周には全周に亘って連続する厚肉部が形成されていると共に、肉抜部122の形成部分には厚肉部124よりも軸方向寸法の小さい薄肉部126が形成されている。更に、上ヨーク120では、内周部分における薄肉部126を外れた部分が、厚肉部124と同じ軸方向寸法(厚さ)とされている。
【0077】
さらに、
図5に示すインナヨークとしての上ヨーク130では、径方向の中間部分を周方向に延びる凹溝状の肉抜部132が全周に亘って連続して形成されており、肉抜部132よりも外周には全周に亘って連続する厚肉部134が形成されていると共に、肉抜部132の形成部分には厚肉部134よりも軸方向寸法の小さい薄肉部136が形成されている。更に、上ヨーク130では、薄肉部136よりも内周側が、厚肉部134と同じ軸方向寸法(厚さ)とされている。
【0078】
以上のような
図4,5に示す上ヨーク120,130を用いた防振用電磁式アクチュエータにおいても、発生力を有効に得ながら、可動子の軽量化によって高周波域での作動の有効な制御が可能となる。なお、
図4,5からも明らかなように、肉抜部は、インナヨークの内周部分の全体に形成されている必要はない。
【0079】
また、肉抜部は、インナヨークを軸方向に貫通する孔状でも良い。なお、この場合、肉抜部の形成部分においてインナヨークの軸方向寸法が0となることから、インナヨークの軸方向寸法は肉抜部の形成部分で厚肉部よりも小さくされている。
【0080】
また、インナヨークを永久磁石104の上下に設ける場合には、前記実施形態のように両方のインナヨークに肉抜部110と厚肉部112が形成されていても良いが、何れか一方のインナヨークにのみ肉抜部110と厚肉部112が形成された構造も、本発明に含まれる。
【0081】
また、本発明に係る防振用電磁式アクチュエータ10は、前記実施形態で示すように能動型流体封入式防振装置に適用される他、例えば、特開2013−60963号公報などに示されているような能動型制振装置にも好適に適用される。即ち、本発明に係る防振用電磁式アクチュエータ10を能動型制振装置に適用する場合には、可動子70に取り付けられた出力部材34と、固定子68に取り付けられたハウジング86とが、支持ゴム弾性体30によって相互に弾性連結されることで、固定子68と可動子70が支持ゴム弾性体30で間接的に弾性連結された構造を備える。そして、固定子68がハウジング86を介して車両ボデー等の制振対象部材に取り付けられることにより、コイル74への通電によって発生する加振力がハウジング86を介して制振対象部材に及ぼされて、制振対象振動への入力振動が能動的な加振力によって相殺的に低減されるようになっている。