(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、サーキットのような非公道領域を車両で走行する場合、運転者が、アンチロックブレーキシステムのような運転支援装置による運転支援を望まないことがある。しかしながら、公道領域を走行するための車両と非公道領域を走行するための車両を用意するのはコストがかかり過ぎ、非公道領域を走行する際に車両を非公道走行用に改造するのは利便性が悪い。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、特別な改造を行うことなく公道領域および非公道領域を走行できる利便性のよい車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車両は、車両が非公道領域に存在することを判定する判定手段と、運転者の運転操作を支援する運転支援装置と、前記判定手段によって車両が非公道領域に存在すると判定されると、前記運転支援装置による運転支援を公道モードから非公道モードに選択可能とする選択手段とを備えている。前記運転支援装置は、運転者により直接運転操作されるものではなく、運転者による運転操作に対して支援制御を行って、運転フィーリングを改善する装置であり、例えば、アンチロックブレーキシステムである。非公道モードは、例えば、アンチロックブレーキシステムの利きを弱くする、アンチロック判断を遅らせる等を含み、アンチロックブレーキシステムを不動作とすることも含む。
【0007】
この構成によれば、選択手段を設けたことにより、非公道領域において非公道モードを選択することで、運転支援を不要または軽減することができ、運転者の操作により近い運転フィーリングを実現して、運転者の望む操作を行うことができ、車両の利便性が向上する。また、非公道領域以外では、非公道モードの選択は不可能であり、不所望に運転支援が解除されるのを防ぐことができる。
【0008】
本発明において、前記選択手段は、車両走行可能状態で運転者によって選択可能に構成されていることが好ましい。この構成によれば、車体を分解することなく、容易に非公道モードを選択可能とできるので、利便性が向上する。選択手段は、例えば、ハンドルに設けられたモード切替スイッチである。
【0009】
本発明において、前記選択手段は、車両操作が開始される操作開始段階では、前記運転支援装置を公道モードに選択することが好ましい。車両操作の開始は、例えば、車両を始動するメインスイッチが操作されることで検出できる。この構成によれば、前回に非公道領域を運転した際に、非公道モードの状態で運転操作を終了しても、つぎの運転操作再開時に公道モードから始まるから、運転支援を受けることができる。
【0010】
本発明において、さらに、前記判定手段によって車両が非公道領域に存在すると判定されると公道モードおよび非公道モードの選択が可能であることを表示するとともに、非公道モードに選択された場合に非公道モードが選択中であることを表示する表示部を備えることが好ましい。この構成によれば、非公道モードが選択可能となったことを目視で確認できるので、利便性が一層向上する。また、非公道モードが選択されていることを表示することで、運転者に非公道モードであることを喚起することができる。
【0011】
表示部を備える場合、さらに、公道走行時に走行態様を選択するモード切替スイッチを備え、前記選択手段は、前記モード切替スイッチが操作されることにより非公道モードの選択を判断することが好ましい。この構成によれば、選択手段として別途スイッチを設けるのが不要となる。表示部に選択可能の表示を出すことで、1つのスイッチで公道走行時に走行態様の切替えと、非公道走行時の非公道モードの選択を実現できる。
【0012】
本発明において、前記判定手段は、車両の保安部品が取り外されたことで非公道領域を判断することが好ましい。保安部品とは、公道を走行する車両を対象として、安全を確保するために、法令で装備が義務づけられている部品のことであり、例えば、速度計を含む計器類、警音器、バックミラー、ヘッドランプ、方向指示器、ブレーキランプ、テールランプ等である。この構成によれば、公道領域を走行する際には必要で、非公道領域を走行する際には不要な保安部品を取り外すことで、非公道領域に存在することが判断できるから、利便性がさらに向上する。
【0013】
本発明の運転支援方法は、運転者の運転操作を支援する運転支援装置を備える車両における運転支援方法であって、判定装置により車両が、予め定める支援選択可能領域に存在することを判定する判定工程と、前記判定工程で車両が前記支援選択可能領域に存在すると判定された場合にのみ、前記運転支援装置による運転支援モードを選択可能とする選択工程と、前記選択工程で選択された運転支援モードに切替えて、運転支援を行う切替工程とを備えている。
【0014】
この構成によれば、選択工程において運転支援モードを選択することで、予め定める支援選択可能領域に適した運転支援モードとすることができ、車両の利便性が向上する。また、判定工程において車両が支援選択可能領域に存在すると判定され、且つ、選択工程において運転支援モードを選択した場合にのみ、支援選択可能領域に適した運転支援モードとなり、それ以外は通常の運転支援モードが選択されるので、不所望に運転支援が解除されるのを防ぐことができる。
【0015】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、「左側」および「右側」は、車両に乗車した運転者から見た左右側をいう。
【0018】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両の一種である自動二輪車の側面図である。同図に示す自動二輪車に車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、メインフレーム1の後部に連結されて後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1の前端にフロントフォーク4が支持され、このフロントフォーク4の下端に前輪6が、フロントフォーク4の上端にハンドル8およびメータユニット9がそれぞれ取り付けられている。
【0019】
メインフレーム1の後端下部には、スイングアームブラケット10が設けられている。スイングアームブラケット10に、スイングアーム12が前端のピポット軸14を介して上下揺動自在に軸支されている。このスイングアーム12の後端に後輪16が取り付けられている。メインフレーム1の下部にはエンジンEが取り付けられている。このエンジンEによりチェーン18を介して後輪16が駆動されている。また、車体の左側でメインフレーム1の下端部に、サイドスタンド19が支持されている。
【0020】
前記リヤフレーム2にはライダー用シート20と同乗者用シート22とが支持されている。メインフレーム1の上部、つまり、ハンドル8とライダー用シート20との間には、燃料タンク24が取り付けられている。
【0021】
メインフレーム1にカウリング26が支持され、ハンドル8の前方からエンジンEの側方にかけての部分を覆っている。カウリング26の前端部にはヘッドライト28が装着され、カウリング26の上部には左右一対のバックミラー30が取り付けられている。また、カウリング26におけるヘッドライト28の下方に、左右一対のフロント方向指示器32が取り付けられている。
【0022】
リヤフレーム2の後端にはテールランプ34が取り付けられている。リヤフレーム2における同乗者用シート22の下方の部分は、左右一対のリヤカウル36により外側方から覆われている。リヤカウル36の後部に左右一対のリヤ方向指示器38が装着され、リヤフレーム2に支持されている。リヤフレーム2の後方下部にリヤフラップ40が支持されている。リヤフラップ40にナンバープレート42が取り付けられ、リヤフラップ40の上部に、ナンバープレート42を照射するライセンスランプ44が取り付けられている。
【0023】
図2に示すように、ハンドル8における左側のハンドルバー8aに、自動二輪車の走行態様(走行モード)を切り替えるモード切替スイッチ46が取り付けられている。モード切替スイッチ46は、例えば、出力に関する態様、発進・加速時のタイヤの空転を防止するトラクションコントロール性能に関する態様のような走行フィーリングに影響を与える走行態様を選択する。出力に関する態様には、例えば、フルパワーモード、ローパワーモードがある。右側のハンドルバー8bにブレーキレバー48が取り付けられ、ライダー用シート20の下方で車体の右側にブレーキペダル50が配置されている。ハンドル8の前方に、自動二輪車の操作を開始するメインスイッチ52が配置されている。
【0024】
本実施形態の自動二輪車は、車体の前部の全体がカウリング26で覆われている、いわゆるフルカウルタイプであり、公道を走行するほかに、サーキットのような非公道領域を走行するのにも適している。本実施形態の自動二輪車は、運転者の運転操作を支援する運転支援装置の一種であるアンチロックブレーキシステムABSを搭載している。
【0025】
図3に示すように、アンチロックブレーキシステムABSは、ABS用コントロールユニット54を有し、このABS用コントロールユニット54に前輪車速センサ56および後輪車速センサ58からの信号が入力されている。ブレーキレバー48およびブレーキペダル50からのブレーキ操作は、ABS用コントロールユニット54を介して前輪ブレーキ60および後輪ブレーキ62に伝達される。ABS用コントロールユニット54は、各車速センサ58,60からの信号に基づいて、ブレーキ操作時に車輪がロックして路面上を滑るのを防止するように各ブレーキ60,62を作動する。
【0026】
運転支援装置は、車両状態または運転者の操作を検知し、検知結果に基づいて、運転支援制御が必要な状態であると判断すると、運転支援指令を制御対象に指令する。制御対象としては、走行フィーリングに影響する電子制御可能な装置が含まれる。制御対象として、例えば、エンジンまたは電動モータなどの駆動装置、ブレーキのような制動装置、サスペンションなどの緩衝装置、操舵装置、動力伝達装置等が含まれる。
【0027】
具体的には、運転支援装置は、アンチロックブレーキシステムABSのほか、トラクションコントロール(発進支援装置、低μ路走行支援装置)、電子制御サスペンションの他、CBS(前後輪ブレーキ協調装置)、自動変速装置、電子制御ステアリングダンパ、アイドリングストップ、出力規制、車速規制、衝突被害軽減ブレーキまたは自動運転などが挙げられる。
【0028】
また、運転支援装置は、運転支援を行うために新たに電子制御されるアクチュエータまたはセンサを搭載するものであることが好ましい。このようなアクチュエータとしては、例えば、アンチロックブレーキシステム、前後輪ブレーキ協調装置などに用いられる電子制御される油圧ユニット、電子制御サスペンション、電子制御ステアリングダンパなどである。
【0029】
本実施形態の自動二輪車は、車両が非公道領域に存在することを判定する判定手段64を備えている。本実施形態では、判定手段64は、エンジンコントロールユニットECUに含まれたプログラムである。判定手段64は、自動二輪車の保安部品が取り外されたことで非公道領域を判断する。保安部品とは、公道を走行する際に要求される装備品のうち、安全を確保するために、法令で装備が義務づけられている装備品のことであり、例えば、警音器(図示せず)、バックミラー30、ヘッドランプ28、方向指示器32,38、テールランプ34等である。公道走行時に要求される装備品には、前記保安部品のほか、ナンバープレート42、ライセンスランプ44、サイドスタンド19等が含まれる。
【0030】
判定手段64によって、車両が非公道領域に存在することを判定する判定条件65は、前記保安部品のうちの少なくとも1つが取り外されたことを含む。前記保安部品に代えて、保安部品を含む前記装備品が取り外されたことを判定手段65としてもよい。その場合、2つ以上の前記装備品が取り外されたことを含むようにしてもよい。これにより、誤操作で車両が非公道領域に存在すると判定されるのを防ぐことができる。保安部品を含む装備品の取り外しは、取外し検知手段66により検出される。
【0031】
装備品が電装品の場合、取外し検知手段66は、電装品の動作を検知するために車体に搭載された動作検知手段68からの検知信号により装備品の取り外しを検知する。動作検知手段68は、例えば、電球の消費電力変化/電圧変化、給電ラインの断線、サイドスタンドセンサ等を検知する。
【0032】
図4に動作検知手段68の一例を示す。左右一対のフロント方向指示器32に、発光体32aの給電ラインL1とは別に、取り外し検知用の検知ラインL2を設け、動作検知手段68がこの検知ラインL2に接続されている。給電ラインL1および検知ラインL2にコネクタ67を介挿する。コネクタ67を分離してフロント方向指示器32を車体から取り外したとき、動作検知手段68が給電ラインL1および検知ラインL2の切断を検知して検知信号を出力する。このように、給電ラインL1とは別に検知ラインL2を設けることで、玉切れをフロント方向指示器32の取外しと誤検知するのを防止できる。
【0033】
図3の装備品が、バックミラー30、ナンバープレート42等のように電装品でない場合、装備品の取り外しを検知するセンサ70を設けて、このセンサ70からの信号により装備品の取り外しを検知する。センサ70としては、例えば、機械的な接触スイッチ、反射型の光センサなどを用いることができる。判定手段64は、取外し検知手段66からの検知信号を含む判定条件65を満足することで自動二輪車が非公道領域に存在することを判定する。
【0034】
判定条件65として、取外し検知手段66からの検知信号に加えて、所定速度未満または走行停止状態であることを含めてもよい。また、判定条件65に、前後輪いずれかの空転率を意味するスリップ率、車速、加速度、減速度等を含めてもよい。つまり、これらの車両走行状態に基づいて、車両が非公道領域を走行しているとみなして、非公道領域に存在する条件の一つとして設定してもよい。さらに、支援制御実行中はモード切替を無効とするように判定条件65を設定してもよい。このように判定条件65を設定することで、走行フィーリングが低下するのを防ぐことができる。
【0035】
本実施形態の自動二輪車は、判定手段64によって自動二輪車が非公道領域に存在すると判定されると、アンチロックブレーキシステムABSを公道モードM1および非公道モードM2に選択可能とする選択手段55を備えている。非公道領域に存在すると判定されない限り、アンチロックブレーキシステムABSを非公道モードM2に選択することはできない。換言すると、自動二輪車が非公道領域に存在していると判断したときのみ、アンチロックブレーキシステムABSを非公道モードM2に選択できる。選択手段55は、車両走行可能状態で運転者によって選択可能に構成されており、本実施形態では、モード切替スイッチ46とエンジンコントロールユニットECUに含まれたプログラムである走行制御手段57とからなる。
【0036】
車両走行可能状態とは、停車中の状態も含む。車両走行可能状態は、操作の前後で、車載部品の取り外しなど車両走行不可能な状態を経る必要がないように形成され、例えば、メインスイッチ52(イグニッションスイッチ)が操作されて、電装部品への電力供給が許可された状態(メインスイッチオン状態)が維持された状態である。また、選択手段55は、乗車状態の運転者によって選択可能に構成されることが好ましい。モード選択以外の用途で用いられるスイッチが選択手段55を兼用してもよい。
【0037】
モード切替スイッチ46は複数の選択スイッチを有し、走行制御手段57はモード切替スイッチ46の複数のスイッチ操作が行われることで非公道モードM2の選択を判断する。モード切替スイッチ46が1つ選択スイッチである場合、スイッチの所定時間以上の操作が行われることで非公道モードM2の選択を判断するようにしてもよい。
【0038】
具体的には、例えば、左右に設けられる2つのスイッチを同時に所定時間以上操作することによって、モード切替操作を行う。あるいは、メータユニット9またはハンドルスイッチに設けられるモード切替ボタンを操作して、モード切替が可能な状態としたうえで、選択ボタンを用いてモード切替を行うようにしてもよい。このように1つの操作ではなく、複数ステップを経たり、待機時間を設けたりするようにモード切替操作を設定することで、誤操作を防ぐことができる。
【0039】
モード切替スイッチ46は、運転者が車体に乗車した状態で操作可能な位置に配置されるスイッチであればよく、例えば、走行態様の切替スイッチの他、メータ表示態様モードの切替スイッチ、運転操作用のスイッチ(ウインカ、ホーン、ランプのハイロー切替スイッチ等)であってもよい。このように乗車時に操作可能な既存スイッチを兼用することで、別途スイッチを設ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0040】
非公道モードM2が選択されると、アンチロックブレーキシステムABSを不動作とする。これに代えて、非公道モードM2を、例えば、アンチロックブレーキシステムABSの利きを弱くする、またはアンチロック判断を遅らせるように変更するようにしてもよい。あるいは、非公道モードM2が選択されると、前後輪のうちのいずれかの油圧ユニットによるブレーキ操作支援を不動作としてもよい。このように、非公道モードM2では、公道モードM1に比べて制御装置による運転支援量を抑制または不動作とさせる。これによって、運転者の操作に従った車両挙動に近づけることができる。非公道モードM2では、後輪のみアンチロックブレーキシステムABSを不要にするようにしてもよい。
【0041】
また、非公道モードM2が選択されると、メータユニット9の表示を非公道用に変えたり、メータユニット9に非公道走行時専用のスイッチが表示されるようにしたりしてもよい。非公道モードM2が選択された場合のメータユニット9の表示として、非公道領域で重視される表示を優先して表示させるようにしてもよい。具体的には、エンジン回転数を車速よりも優先して表示したり、変速段、ラップタイムを強調して表示したりしてもよい。また、非公道モードM2を選択するための選択画面を表示してもよい。詳細には、操作によって選択可能な非公道モードM2の選択スイッチを示す画面を表示するとともに、選択されたモードを表示する。
【0042】
これら取外し検知手段66、判定手段64、選択手段65および走行制御手段57を含んで自動二輪車の制御装置69が構成されている。
【0043】
メータユニット9は、判定手段64によって自動二輪車が非公道領域に存在すると判定されると、公道モードM1および非公道モードM2の選択が可能であることを表示するとともに、選択手段55によって非公道モードM2が選択されると、非公道モードM2が選択中であることを表示する。
【0044】
つまり、本実施形態では、非公道領域に存在すると判定され、かつ運転者による選択操作がされたと判定すると、運転支援装置を公道モードM1から非公道モードM2に切替える。このように運転者による積極的なモード選択操作によって運転支援装置を非公道モードM2に切換えることで、モードの変更を運転者が認識しやすい。
【0045】
車両は、運転支援装置による支援が非公道モードに切り替わったとしても、運転者の操作によって走行が可能な状態が維持される。車両が非公道領域に存在する場合に非公道モードが選択可能となる運転支援装置は、車両が公道領域に存在する場合に、非公道モードが変更不可能に予め設定されていることが好ましい。
【0046】
運転支援装置は、例えば現在または今後において、公道領域走行において運転支援が義務または要求されている装置であることが好ましい。これによって非公道領域を走行するために、運転支援装置が装備されていない非公道領域走行専用車両を購入する必要がない。また公道領域を自走して非公道領域に移動することができるので、専用車両を非公道領域まで搬送する必要がなく、利便性を向上させることができる。本実施形態のアンチロックブレーキシステムABSは、公道走行において法規により要求される場合がある。
【0047】
図5を用いて、制御装置69による車両の制御方法、すなわち自動二輪車の運転支援方法について説明する。本実施形態の運転支援方法は、取外し検知工程S1と、判定工程とS2、第1選択工程S3と、第1切替工程S4とを備えている。
【0048】
メインスイッチ52をオンにした操作開始段階S0では、公道モードM1が選択され、取外し検知工程S1に進む。公道モードM1から非公道モードM2に切り替えられるまでは、公道モードM1が継続する。
【0049】
取外し検知工程S1では、前記保安部品または前記装備品が車体から取り外されたことを検知すると判定工程S2に進む。取外し検知工程S1は、保安部品または装備品の取外しを検知するまで継続される。判定工程S2では、取外し検知工程S1での検知信号を含む判定条件65を満足することで自動二輪車が非公道領域に存在することを判定し、非公道モード選択可能状態となる。判定工程S2で、判定条件65を満足しないと、取外し検知工程S1に戻る。
【0050】
非公道モード選択可能状態は、公道モードM1から非公道モードM2への選択が可能な状態であり、第1選択工程S3に進む。非公道モード選択可能状態では、例えば、メータユニット9に非公道モードM2への選択画面を表示するとともに、非公道モードM2への切替操作を有効とする。換言すれば、非公道モード選択可能状態を経ない場合には、前記切替操作を行っても無効であり、モード切替は実行されない。非公道モード選択可能状態へ移行した直後には、公道モードM1が選択されていることをメータユニット9に表示する。
【0051】
第1選択工程S3では、運転者によって非公道モードM2への切替操作が行われると、第1切替工程S4に進み、切替操作が行われるまで第1選択工程S3が継続する。
【0052】
第1切替工程S4では、第1選択工程S3で非公道モードM2が選択されたことを受けて、アンチロックブレーキシステムABSを不動作に切り替える。第1選択工程S3で非公道モードM2が選択された場合以外は、アンチロックブレーキシステムABSは公道モードM1のままである。第1切替工程S4では、アンチロックブレーキシステムABSを非公道モードM2に切替えるとともに、選択されたモードをメータユニット9に表示して、第2選択工程S5に進む。
【0053】
第2選択工程S5では、運転者によって公道モードM1への復帰操作が行われると、第2切替工程S6に進む。第2切替工程S6では、アンチロックブレーキシステムABSを公道モードM1に切替えて、選択されたモードをメータユニット9に表示して、第1選択工程S3に戻る。
【0054】
各工程においてメインスイッチ52がオフ操作されると、終了動作を実行し、再度メインスイッチ52がオン操作されると、再び公道モードM1が選択されて、取外し検知工程S1に進む。つまり、車両を始動開始すると必ず公道モードM1から始まる。したがって、非公道モードM2に切り替える場合、車両を始動開始するごとに、運転者の積極的な非公道モードM2への選択意思が必要である。これにより、前回走行時に、非公道モードM2のままメインスイッチ52をオフ操作した場合でも、不所望に非公道モードM2で運転支援装置が再開されることを防ぐことができる。
【0055】
上記構成において、
図3の選択手段55を設けたことにより、非公道領域において非公道モードM2を運転者が選択することで、アンチロックブレーキシステムABSを不動作とすることができ、自動二輪車の利便性が向上する。また、車両が非公道領域として判定される領域に存在する以外では、非公道モードM2の選択は不可能であり、不所望にアンチロックブレーキシステムABSが解除されるのを防ぐことができる。
【0056】
選択手段55は、車両走行可能状態で運転者によって選択可能なモード切替スイッチ46で構成されている。これにより、車両を分解することなく、容易に非公道モードM2を選択できるので、利便性が向上する。
【0057】
さらに、選択手段55は、車両を始動するメインスイッチ52が操作されると、アンチロックブレーキシステムABSを公道モードM1に選択するので、前回に非公道モードM2の状態で運転操作を終了しても、つぎの運転操作再開時には公道モードM1から始まる。そのため、公道を走行する場合にアンチロックブレーキシステムABSが不動作となるのを防ぐことができる。
【0058】
判定手段64によって車両が非公道領域に存在すると判定されると、メータユニット9は、公道モードM1および非公道モードM2の選択が可能であることを表示するとともに、非公道モードM2に選択された場合に非公道モードM2が選択中であることを表示する。これにより、非公道モードM2が選択可能となったことを目視で確認できるので、利便性が一層向上するうえに、運転者に非公道モードM2であることを喚起することができる。
【0059】
公道走行時に走行態様(走行モード)を選択するモード切替スイッチ46の操作により、走行制御手段57は、非公道モードM2の選択を判断するので、選択手段55として別途スイッチを設ける必要がない。
【0060】
走行制御手段57は、複数のスイッチ操作が行われることで非公道モードM2の選択を判断するので、運転者の誤操作により非公道モードM2が選択されるのを防止できる。
【0061】
判定手段64は、自動二輪車の保安部品またはこれを含む装備品が取り外されたことで非公道領域を判断する。このように、公道領域を走行する際には必要で、非公道領域を走行する際には不要な保安部品またはこれを含む装備品を取り外すことで、非公道領域に存在することが判断できるから、特別な操作を行うことなく、車両を非公道走行用に変更できる。具体的には、非公道走行においてアンチロックブレーキシステムを不動作とできる。これにより、利便性がさらに向上する。
【0062】
保安部品(装備品)が電装品の場合、取外し検知手段66は、電装品の動作を検知するために車体に搭載された動作検知手段68からの検知信号により装備品の取り外しを検知する。これにより、取外し検知手段66として、別途センサを設けるのが不要となり、部品点数が増加するのを抑制できる。装備品が電装品でない場合、装備品の取り外しを検知するセンサ70からの信号により装備品の取り外しを検知できる。
【0063】
第1変形例の制御装置69Aとして、さらに、部品の取り外し以外で、車両が非公道領域に存在することを検知する第2非公道領域検知手段72を備え、判定条件65Aは、この第2非公道領域検知手段72からの検知信号を含む。第2非公道領域検知手段72は、例えば、GPSのような車両の現在位置を検出する手段と、予め記憶された地図情報を用いて車両が非公道領域に存在することを判定できる装置である。非公道領域検知手段72からの信号の伝達は、有線であっても無線であってもよい。
【0064】
この第1変形例によれば、取外し検知手段66からの信号と非公道領域検知手段72からの信号の2つを判定条件65Aとすることで、誤検出を防ぐことができる。
【0065】
第2変形例の制御装置69Bとして、第2非公道領域検知手段72に代えて、または第2非公道領域検知手段72に加えて、自動二輪車に非公道領域でのみ用いられる部品が取り付けられたことを検知する取付検知手段74を有し、判定条件65Bは、この取付検知手段74からの検知信号を含む。非公道領域でのみ用いられる部品は、例えば、サーキット用コントロールユニット、サーキット認証キー、ゼッケンプレート等である。取付検知手段74は、例えば、エンジンコントロールユニットECUがサーキット用コントロールユニットに交換されたとき、あるいは、キースイッチユニットに識別キーが挿入されたときに、非公道領域を示す信号を出力する。
【0066】
この第2変形例によれば、取外し検知手段66からの信号と取付検知手段74からの信号の2つを判定条件65Bとすることで、誤検出で自動二輪車が非公道走行用に変更されるのを防ぐことができる。
【0067】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、運転支援装置としてアンチロックブレーキシステムABSを用いていたが、これに限定されず、運転者の操作に対して何らかの運転介入制御が生じる制御全般に適用できる。具体的には、運転支援装置は、発進・加速時のタイヤの空転を防止するトラクションコントロール、電子制御サスペンション、出力規制等であってもよい。運転支援装置は、非公道モードでは、公道モードに比べて運転介入の程度が抑えられるように構成される。
【0068】
非公道モードでは、各方向指示器32,38、ブレーキランプ34、ポジションランプ等の発光部品が点灯しないようにしてもよい。これにより、非公道モードで誤って公道を走行しようとしたとき、この誤りを運転者に気づかせる。
【0069】
また、上記実施形態では、
図4に示す給電ラインL1とは別に検知ラインL2を設けて、これらラインL1,L2が動作検知手段68に接続されていたが、検知ラインL2を設けずに、動作検知手段68に給電ラインL1のみを接続してもよい。上記実施形態では、判定手段64および選択手段55はエンジンコントロールユニットECUに含まれていたが、これに限定されず、例えば、メータユニット9に含まれてもよい。
【0070】
上記実施形態では、メインスイッチ52をオン操作した時に公道モードM1に選択されるようにしたが、エンジンEを停止状態から駆動させた操作開始時に公道モードM1に選択されていればよく、例えば、メインスイッチ52のオフ操作時など、走行終了を判断した場合に、次回の操作開始時のモードとして公道モードM1を選択するように記憶してもよい。また、エンジンEが回転している間は、選択されたモードを継続するように設定してもよい。さらに、選択手段55で非公道モードM1が選択されて走行を開始してから、走行停止状態が所定時間経過すると、公道モードM1に復帰するようにしてもよい。
【0071】
非公道モードM1は運転支援を不要とする1つの段階だけではなく、複数の選択肢の中から1つを選択できるように構成されてもよい。具体的には、例えば、運転支援の程度が異なるモードが複数用意されており、非公道領域において、運転者の選択によって複数のうちから1つを選択できるようにしてもよい。これにより、非公道領域に限って、運転者の好みに応じた運転支援を選択できる。
【0072】
上記実施形態では、非公道領域に車両が存在することを判定するようにしたが、予め定めるモード選択可能な領域に車両が存在することを判定した場合にのみ、運転支援装置のモードを運転者が選択できるようにしてもよい。その場合、例えば公道であっても例外的に非公道として取り扱われる領域においても上記実施形態の効果を達成することができる。また、高速道路と非高速道路とのいずれかでモード選択を無効とさせる場合にも適用可能である。さらに、公道のうちでも、運転支援装置の設置が義務づけられている領域(国、エリア)が存在する場合には、そのような領域を除く領域で運転支援装置のモードを選択可能としてもよい。
【0073】
上記実施形態では、非公道領域に車両が存在することを判定した場合のみ、運転支援装置のモードを選択可能としたが、逆の動作を行ってもよい。すなわち、運転支援装置の設置が義務づけられた領域に車両が存在することを判定した場合に、運転支援装置のモードの選択を無効または不可能とし、予め定める運転支援装置のモード(公道モード)を実行するようにしてもよい。
【0074】
上記実施形態では、乗車状態の運転者が運転支援装置のモードを選択可能としたが、降車状態の運転者によっても選択できるように構成してもよい。具体的には、例えば、モードの切替スイッチが、小物入れの中に設けられたり、シート下方に設けられていたりしてもよい。これにより、モードを切替えるにあたって、運転者が不所望にモード切替操作を行うことを防ぐことができる。
【0075】
GPSなどの車両の位置を検出可能な装置が搭載されている場合、このような装置を用いて車両が非公道領域に存在することを判定してもよい。また、予め非公道領域であることを示す非公道コードを記憶しておき、車両外から送信されたコードと、記憶する非公道コードとを照合して、非公道領域であることを判定してもよい。このような非公道コードは、暗証化されていてもよく、有線、無線のいずれで受信されてもよい。
【0076】
選択手段55のスイッチ部はモード切替スイッチ46に限定されず、例えば、メータユニット9に設けたスイッチであってもよい。上記実施形態では、自動二輪車について説明したが、本発明は自動二輪車以外の車両にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。