(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーの含有量が、0.018質量%超である請求項1から3のいずれかに記載の防曇防汚積層体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(防曇防汚積層体)
本発明の防曇防汚積層体は、基材と、防曇防汚層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0010】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂製基材、無機基材などが挙げられる。
【0011】
前記樹脂製基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、PC/PMMA積層体、ゴム添加PMMAなどが挙げられる。
【0012】
前記無機基材の材質としては、例えば、金属酸化物(例えば、石英、サファイア、ガラス等)、金属(例えば、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、ニオブ、銅、チタン、アルミニウム、亜鉛、シリコン、マグネシウム、マンガン等)、合金(例えば、前記金属の組合せ等)などが挙げられる。
【0013】
前記基材は、透明性を有することが好ましい。
【0014】
前記基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フィルム状であることが好ましい。
前記樹脂製基材がフィルム状の場合、前記樹脂製基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜1,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
前記無機基材がフィルム状の場合、前記無機基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜100mmが好ましい。
【0015】
前記基材の表面には、文字、模様、画像などが印刷されていてもよい。
【0016】
前記基材の表面には、前記防曇防汚積層体を成形加工時、前記基材と成形材料との密着性を高めるため、又は成形加工時の成形材料の流動圧から前記文字、前記模様、及び前記画像を保護するために、バインダー層を設けてもよい。前記バインダー層の材質としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレンブチルアルコール系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等の各種バインダーの他、各種接着剤を用いることができる。なお、前記バインダー層は2層以上設けてもよい。使用するバインダーは、成形材料に適した感熱性、感圧性を有するものを選択できる。
【0017】
<防曇防汚層>
前記防曇防汚層の表面の純水接触角は、90°以上である。
前記防曇防汚層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化した硬化物である。
前記防曇防汚層は、前記基材上に配されている。
前記防曇防汚層は、表面が平滑である。ここで、表面が平滑であるとは、意図的に形成された凸部又は凹部を表面に有さないことを意味する。例えば、前記防曇防汚積層体においては、前記防曇防汚層を形成する際(前記硬化物を形成する際)に、物理的な加工による微細な凸部又は凹部が表面に形成されていない。
前記防曇防汚層が表面に微細な凸部又は凹部を有さないことで、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着し難い。また、例えそれらの汚れが付着した場合でもティッシュなどで容易に除去でき、防曇特性の持続性に優れた物品を得ることができる。
【0018】
前記防曇防汚層自体の表面が撥水性を有することで、特開2001−233638号公報に記載の技術のように、吸水層、及び保護層の2層を積層する場合と比べ、耐摩耗性に優れる防曇防汚積層体が得られる。
【0019】
−純水接触角−
前記防曇防汚層の表面の純水接触角は、90°以上であり、100°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、115°以上が特に好ましい。前記純水接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、170°などが挙げられる。
前記純水接触角は、例えば、DM−701(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で楕円フィッティング法によって測定することができる。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
水を滴下して4秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とする。
【0020】
−ヘキサデカン接触角−
前記防曇防汚層の表面のヘキサデカン接触角は、30°以上が好ましく、60°以上がより好ましく、70°以上が更により好ましく、80°以上が特に好ましい。前記ヘキサデカン接触角の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、150°などが挙げられる。
前記ヘキサデカン接触角が、前記好ましい範囲内であると、表面に指紋、皮脂、汗、涙、化粧品などが付着した場合でも、簡単に払拭することができ、優れた防曇性が維持できる点で有利である。
前記ヘキサデカン接触角は、例えば、DM−701(協和界面化学株式会社製)を用い、下記条件で楕円フィッティング法によって測定することができる。
・ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下する。
・ヘキサデカンの滴下量:2μL
・測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して4秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とする。
【0021】
純水接触角が上記範囲内であり、且つヘキサデカン接触角が上記範囲内であると、マジックインキ、指紋、汗、化粧品(ファンデーション、UVプロテクターなど)等の水性汚れ及び/又は油性汚れが付着した場合でも、それらの汚れがバルクの下層に浸透することが防止される。そのため、ティッシュなどによる払拭により、汚れは容易に払拭できるとともに、防曇性が汚れ付着前の状態に戻る。
【0022】
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物−
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマー(以下、「親水性モノマー」と称することがある)と、光重合開始剤とを少なくとも含有し、好ましくはラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマー(以下、「撥水性モノマー」と称することがある)を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0023】
−−撥水性モノマー−−
前記ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーとしては、例えば、ラジカル重合性不飽和基とフッ素及びケイ素の少なくともいずれかとを有するモノマーが挙げられる。そのような撥水性モノマーとしては、例えば、フッ素及びケイ素の少なくともいずれかを有する(メタ)アクリレートが挙げられ、更には、例えば、フッ化(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられ、更に具体的には、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、フルオロアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート、ジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記撥水性モノマーは、前記親水性モノマーと相溶することが好ましい。
ここで、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
【0024】
前記撥水性モノマーは、市販品であってもよい。
前記フッ化(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製KY−1200シリーズ、DIC株式会社製メガファックRSシリーズ、ダイキン工業株式会社製オプツールDACなどが挙げられる。
前記シリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製X−22−164シリーズ、エボニック社製TEGO Radシリーズなどが挙げられる。
【0025】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記撥水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.018質量%超が好ましく、0.018質量%超5.0質量%未満が好ましく、0.075質量%〜3.0質量%がより好ましく、0.18質量%〜1.5質量%が特に好ましい。前記含有量が、5.0質量%以上であると、硬化物の撥水性は優れるものの、ガラス転移温度が低くなることで、柔らかくなりすぎ、耐磨耗性が低下することがある。また、前記防曇防汚層中に前記撥水性モノマーの反応物が多く存在する結果、呼気防曇性が低下することがある。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0026】
−−親水性モノマー−−
前記ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらは、単官能モノマーであってもよいし、多官能モノマーであってもよい。
前記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン鎖が、親水性に優れる点で好ましい。
【0027】
前記親水性モノマーとしては、例えば、多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物との反応によって得られるモノ若しくはポリアクリレート、又はモノ若しくはポリメタクリレートなどが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール、3価のアルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。前記2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300〜1,000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。前記4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0028】
前記ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリン(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、MEPM−1000(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
これらの中でも、エトキシ化グリセリン(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが、防曇防汚層の適度な硬度と親水性とを両立できる点から、好ましい。
【0029】
前記4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0030】
前記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、末端スルホン酸変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは、塩を形成していてもよい。前記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0032】
前記カルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0033】
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、リン酸エステルを有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
前記親水性モノマーは、多官能の親水性モノマーであることが好ましい。
【0035】
前記親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200以上が好ましい。
【0036】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記親水性モノマーの含有量は、60質量%以上であり、60質量%〜99.9質量%が好ましく、63質量%〜95質量%がより好ましく、65質量%〜90質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0037】
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、光酸発生剤、ビスアジド化合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシグリコユリルなどが挙げられる。
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エトキシフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−フェニル2−ヒドロキシ−2メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレートなどが挙げられる。
【0038】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記光重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0039】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸基含有(メタ)アクリレート、フィラーなどが挙げられる。
これらは、前記防曇防汚層の伸び率、硬度などを調整するために用いることがある。
【0040】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記ウレタン(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜45質量%が好ましく、15質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜35質量%が特に好ましい。なお、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が揮発分(例えば、有機溶剤)を含有する場合、前記含有量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成部物の不揮発分に対する含有量である。
【0042】
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化錫、酸化インジウム錫、アンチモンドープ酸化錫、五酸化アンチモンなどが挙げられる。前記シリカとしては、例えば、中実シリカ、中空シリカなどが挙げられる。
【0043】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、使用時には、有機溶剤を用いて希釈して用いることができる。前記有機溶剤としては、例えば、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエーテルエステル系溶媒、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0044】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線が照射されることにより硬化する。前記活性エネルギー線としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波などが挙げられる。
【0045】
前記防曇防汚層のマルテンス硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5N/mm
2〜300N/mm
2が好ましく、10N/mm
2〜290N/mm
2がより好ましく、15N/mm
2〜280N/mm
2が特に好ましい。前記防曇防汚積層体を成形加工する際、例えば、ポリカーボネートの射出成形時には、防曇防汚積層体は、290℃、200MPaで加熱加圧される。前記マルテンス硬度が、5N/mm
2未満であると、前記防曇防汚積層体を製造又は成形加工する際のハンドリング及び面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記防曇防汚層に傷が入り易いことがある。前記マルテンス硬度が、300N/mm
2を超えると、成形加工時、前記防曇防汚層にクラックが発生したり、前記防曇防汚層が剥離することがある。前記マルテンス硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記防曇防汚積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記防曇防汚積層体を成形加工後、前記防曇防汚層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記防曇防汚層のマルテンス硬度が高まることがある。
前記マルテンス硬度は、例えば、PICODENTOR HM500(商品名;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。荷重1mN/20sとし、針としてダイアモンド錐体を用い、面角136°で測定する。
【0046】
前記防曇防汚層の鉛筆硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、B〜4Hが好ましく、HB〜4Hがより好ましく、F〜4Hが特に好ましい。前記鉛筆硬度が、B未満である(Bより柔らかい)と、前記防曇防汚積層体を製造又は成形加工する際のハンドリングや面清掃等の、通常使用時の面清掃などで前記防曇防汚層に傷が入り易い。前記鉛筆硬度が、4Hを超える(4Hより硬い)と、成形加工時、前記防曇防汚層にクラックが発生したり、前記防曇防汚層が剥離することがある。前記鉛筆硬度が、前記特に好ましい範囲内であると、前記防曇防汚積層体を、防曇性能を劣化させることなく、且つ傷付き、クラック、剥離等の不良を発生させることなく、様々な三次元形状に容易に成形加工できる点で有利である。
なお、前記防曇防汚積層体を成形加工後、前記防曇防汚層には射出成形工程にて高温高圧が加わるため、成形加工前よりも前記防曇防汚層の鉛筆硬度が高まることがある。
前記鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に従って測定する。
【0047】
前記防曇防汚層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜100μmが好ましく、4μm〜50μmがより好ましく、10μm〜30μmが特に好ましい。前記平均厚みが、好ましい範囲内であると、防曇性が優れ、干渉ムラが低減し、また生産性に優れる点で有利である。前記平均厚みが、特に好ましい範囲内であると、干渉ムラをより低減させることができる。
【0048】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、アンカー層、保護層などが挙げられる。
【0049】
−アンカー層−
前記アンカー層は、前記基材と、前記防曇防汚層との間に配される層である。
前記アンカー層を配することにより、前記基材と前記防曇防汚層との接着性を向上できる。
前記アンカー層の屈折率は、干渉ムラを防止するために、前記防曇防汚層の屈折率と近いことが好ましい。そのため、前記アンカー層の屈折率は、前記防曇防汚層の屈折率の±0.10以内が好ましく、±0.05以内がより好ましい。または、前記アンカー層の屈折率は、前記防曇防汚層の屈折率と前記基材の屈折率との間であることが好ましい。
【0050】
前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成できる。即ち、前記アンカー層は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化した硬化物である。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤としては、例えば、前記防曇防汚層の説明において例示した前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記光重合開始剤がそれぞれ挙げられる。前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0051】
前記基材が無機基材の場合、前記アンカー層の材料としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などが挙げられる。これらは、ラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。
前記基材が無機基材の場合の前記アンカー層の形成方法としては、例えば、前記材料を溶かした溶液を前記無機基材上に塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱処理を所定時間行う方法などが挙げられる。
前記溶液に使用する溶媒としては、前記材料を溶解するものを選択する。例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等)、アノン(例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド:DMF)、スルフィド(例えば、ジメチルスルホキシド:DMSO)などから選択される少なくとも1種類以上が使用される。
塗布の方法としては、特に限定されるものではなく公知の塗布法を用いることができる。公知の塗布法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷、ゴム版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
加熱温度としては、例えば、80℃以上200℃以下である。加熱時間は、例えば、1分間以上12時間以内である。
【0052】
前記アンカー層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜100μmが好ましく、0.01μm〜10μmがより好ましく、0.1μm〜5μmが更により好ましく、0.3μm〜3μmが特に好ましい。
【0053】
なお、前記アンカー層には、反射率低減や帯電防止の機能を付与してもよい。
【0054】
−保護層−
前記保護層は、前記防曇防汚層の表面(純水接触角が90°以上である表面)を保護する層である。
前記保護層は、前記防曇防汚積層体を用いて後述する物品を製造する際に、前記表面を保護する。
前記保護層は、前記防曇防汚樹脂層の前記表面上に配される。
【0055】
前記保護層の材質としては、例えば、前記アンカー層と同様の材質が挙げられる。
【0056】
前記防曇防汚積層体の伸び率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%以上が好ましく、10%〜200%がより好ましく、40%〜150%が特に好ましい。前記伸び率が、10%未満であると、成形加工が困難になることがある。前記伸び率が、前記特に好ましい範囲内であると、成形加工性に優れる点で有利である。
前記伸び率は、例えば、以下の方法により求めることができる。
前記防曇防汚積層体を、長さ10.5cm×幅2.5cmの短冊状にして測定試料とする。得られた測定試料の引張り伸び率を引張り試験機(オートグラフAG−5kNXplus、株式会社島津製作所製)で測定(測定条件:引張り速度=100mm/min;チャック間距離=8cm)する。前記伸び率の測定においては、前記樹脂製基材の品種によって測定温度が異なり、前記伸び率は、前記樹脂製基材の軟化点近傍又は軟化点以上の温度で測定する。具体的には、10℃〜250℃の間である。例えば、前記樹脂製基材が、ポリカーボネートやPC/PMMA積層体の場合は、150℃で測定するのが好ましい。
【0057】
前記防曇防汚積層体は、前記防曇防汚積層体の面内におけるX方向とY方向の加熱収縮率差が小さい方が好ましい。前記防曇防汚積層体の前記X方向と前記Y方向とは、例えば、防曇防汚積層体がロール形状の場合、ロールの長手方向と幅方向とに相当する。成形時の加熱工程に使用する加熱温度にて、防曇防汚積層体におけるX方向の加熱収縮率とY方向の加熱収縮率との差は5%以内であることが好ましい。この範囲外であると、成形加工時に、前記防曇防汚層に剥離やクラックが発生したり、樹脂製基材の表面に印刷された前記文字、前記模様、前記画像などが変形や位置ズレを起こしてしまい、成形加工が困難になることがある。
【0058】
前記防曇防汚積層体は、熱曲げ用フィルム、インモールド成形用フィルム、インサート成形用フィルム、オーバーレイ成形用フィルムに特に適している。
【0059】
前記防曇防汚積層体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する防曇防汚積層体の製造方法が好ましい。
【0060】
<防曇防汚積層体の製造方法>
前記防曇防汚積層体の製造方法は、未硬化樹脂層形成工程と、防曇防汚層形成工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記防曇防汚積層体の製造方法は、本発明の前記防曇防汚積層体を製造する方法である。
【0061】
<<未硬化樹脂層形成工程>>
前記未硬化樹脂層形成工程としては、基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記基材などが挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の前記防曇防汚層の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物などが挙げられる。
【0063】
前記未硬化樹脂層は、前記基材上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して、必要に応じて乾燥を行うことにより形成される。前記未硬化樹脂層は、固体の膜であってもよいし、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される低分子量の硬化性成分によって流動性を有した膜であってもよい。
【0064】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、リバースロールコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、リップコーティング、エアーナイフコーティング、カーテンコーティング、コンマコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0065】
前記未硬化樹脂層は、活性エネルギー線が照射されていないため、硬化していない。
【0066】
前記未硬化樹脂層形成工程においては、アンカー層が形成された前記基材の前記アンカー層上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して前記未硬化樹脂層を形成してもよい。
前記アンカー層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記アンカー層などが挙げられる。
【0067】
<<防曇防汚層形成工程>>
前記防曇防汚層形成工程としては、前記未硬化樹脂層に活性エネルギー線を照射し前記未硬化樹脂層を硬化させて、防曇防汚層を形成する工程あれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚層を形成する際、微細な凸部又は凹部を表面に形成するための物理的な加工は行われない。
【0068】
前記活性エネルギー硬化性樹脂組成物が、前記撥水性モノマーと、前記親水性モノマーとを有することにより、得られる防曇防汚層においては、低表面エネルギー成分が表面に局在化する一方で、前記防曇防汚層中には、親水性成分(吸水性成分)が存在する。そうすることにより、水滴は、前記防曇防汚層の表面において撥水化され、水蒸気は、防曇防汚層中に捕捉されやすくなる。その結果、より優れた防曇性が得られる。
【0069】
−活性エネルギー線−
前記活性エネルギー線としては、前記未硬化樹脂層を硬化させる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線などが挙げられる。
【0070】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマーと、ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーと、光重合開始剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線により硬化した防曇防汚層の表面の純水接触角は、90°以上である。前記防曇防汚層の表面の純水接触角は、例えば、平均厚み4μmの前記防曇防汚層を作製し、前述の測定方法により、測定される。前記防曇防汚層の特性としては、例えば、前記防曇防汚積層体の説明において例示した特性が挙げられ、好ましい態様も前記防曇防汚積層体の説明において例示した態様が挙げられる。
【0071】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の成分としては、例えば、前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の各成分などが挙げられる。好ましい態様も、前記防曇防汚積層体の説明において例示した態様が挙げられる。
即ち、前記ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマーとしては、例えば、前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記ラジカル重合性不飽和基を有する親水性モノマーなどが挙げられる。含有量等の好ましい態様も、前記防曇防汚積層体の説明において例示した態様が挙げられる。
前記ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーとしては、例えば、前記防曇防汚積層体の説明において例示した前記ラジカル重合性不飽和基を有する撥水性モノマーなどが挙げられる。含有量等の好ましい態様も、前記防曇防汚積層体の説明において例示した態様が挙げられる。
【0072】
(物品)
本発明の物品は、本発明の前記防曇防汚積層体を表面に有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形、オーバーレイ成形により形成されることが好ましい。
【0073】
前記防曇防汚積層体は、前記物品の表面の一部に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
【0074】
前記物品の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の物品の製造方法が好ましい。
【0075】
(物品の製造方法)
本発明の物品の製造方法は、加熱工程と、防曇防汚積層体成形工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じて、射出成形工程やキャスト成形工程などのその他の工程を含む。
前記物品の製造方法は、本発明の前記物品の製造方法である。
【0076】
<加熱工程>
前記加熱工程としては、防曇防汚積層体を加熱する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記防曇防汚積層体は、本発明の前記防曇防汚積層体である。
【0077】
前記加熱としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外線加熱或いは高温雰囲気への暴露であることが好ましい。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂製基材のガラス転移温度近傍若しくはガラス転移温度以上であることが好ましい。
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0078】
<防曇防汚積層体成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程としては、加熱された前記防曇防汚積層体を所望の形状に成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させて、空気圧により、所望の形状に成形する工程などが挙げられる。
【0079】
<射出成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、射出成形工程を行ってもよい。
前記射出成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に成形材料を射出し、前記成形材料を成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
前記成形材料としては、例えば、樹脂などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリアリル系耐熱樹脂、各種複合樹脂、各種変性樹脂などが挙げられる。
【0081】
前記射出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定の金型に密着させた前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に、溶融した前記成形材料を流し込む方法などが挙げられる。
【0082】
<キャスト成形工程>
前記防曇防汚積層体成形工程の後、必要に応じて、キャスト成形工程を行ってもよい。
前記キャスト成形工程としては、所望の形状に成形された前記防曇防汚積層体の樹脂製基材側に、溶液に溶解させた樹脂材料を流し込み、前記樹脂材料を固化させて成形する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0083】
前記物品の製造方法は、インモールド成形装置、インサート成形装置、オーバーレイ成形装置を用いて行うことが好ましい。
【0084】
ここで、本発明の物品の製造方法の一例を、図を用いて説明する。この製造方法はインモールド成形装置を用いた製造方法である。
まず、防曇防汚積層体500を加熱する。加熱は、赤外線加熱、或いは高温雰囲気への暴露が好ましい。
続いて、
図1Aに示すように、加熱した防曇防汚積層体500を、第1金型501と第2金型502との間の所定の位置に配置する。このとき、防曇防汚積層体500の樹脂製基材が第1金型501を向き、防曇防汚層が第2金型502を向くように配置する。
図1Aにおいて、第1金型501は、固定型であり、第2金型502は、可動型である。
【0085】
第1金型501と第2金型502との間に防曇防汚積層体500を配置した後、第1金型501と第2金型502とを型締めする。続いて、第2金型502のキャビティ面に開口されている吸引穴504で防曇防汚積層体500を吸引して、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。そうすることにより、キャビティ面が防曇防汚積層体500で賦形される。また、このとき、図示されていないフィルム押さえ機構で防曇防汚積層体500の外周を固定し位置決めしてもよい。その後、防曇防汚積層体500の不要な部位をトリミングする(
図1B)。
なお、第2金型502が吸引穴504を有さず、第1金型501に圧空孔(図示せず)を有する場合には、第1金型501の圧空孔から防曇防汚積層体500に圧空を送ることにより、第2金型502のキャビティ面に防曇防汚積層体500を装着する。
【0086】
続いて、防曇防汚積層体500の樹脂製基材に向けて、第1金型501のゲート505から溶融した成形材料506を射出し、第1金型501と第2金型502を型締めして形成したキャビティ内に注入する(
図1C)。これにより、溶融した成形材料506がキャビティ内に充填される(
図1D)。更に、溶融した成形材料506の充填完了後、溶融した成形材料506を所定の温度まで冷却して固化する。
【0087】
その後、第2金型502を動かして、第1金型501と第2金型502とを型開きする(
図1E)。そうすることにより、成形材料506の表面に防曇防汚積層体500が形成され、かつ所望の形状にインモールド成形された物品507が得られる。
最後に、第1金型501から突き出しピン508を押し出して、得られた物品507を取り出す。
【0088】
前記オーバーレイ成形装置を用いる場合の製造方法は、下記の通りである。これは、防曇防汚積層体を成形材料の表面に直接加飾する工程であり、その一例としては、TOM(Three dimension Overlay Method)工法が挙げられる。前記TOM工法を用いた本発明の物品の製造方法の一例を下記に説明する。
まず、固定枠に固定された防曇防汚積層体によって分断された装置内の両空間について、真空ポンプ等で空気を吸引し、前記両空間内を真空引きする。
この時、片側の空間に事前に射出成形した成形材料を設置しておく。同時に、防曇防汚積層体が軟化する所定の温度になるまで赤外線ヒーターで加熱する。防曇防汚積層体が加熱され軟化したタイミングで、装置内空間の成形材料がない側に大気を送り込むことにより真空雰囲気下で、成形材料の立体形状に、防曇防汚積層体をしっかりと密着させる。必要に応じ、さらに大気を送り込んだ側からの圧空押付けを併用してもよい。防曇防汚積層体が成形体に密着した後、得られた加飾成形品を固定枠から外す。真空成形は、通常80℃〜200℃、好ましくは110℃〜160℃程度で行われる。
【0089】
オーバーレイ成形の際には、前記防曇防汚積層体と前記成形材料とを接着するために、前記防曇防汚積層体の防曇防汚層面とは反対側の面に粘着層を設けてもよい。前記粘着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。前記粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂製基材上に前記防曇防汚層を形成後に、前記樹脂製基材の前記防曇防汚層側とは逆側に、粘着層用塗工液を塗工して、前記粘着層を形成する方法などが挙げられる。また、剥離シート上に粘着層用塗工液を塗工して前記粘着層を形成した後に、前記樹脂製基材と前記剥離シート上の前記粘着層とをラミネートして、前記樹脂製基材上に前記粘着層を積層してもよい。
【0090】
ここで、本発明の物品の一例を図を用いて説明する。
図2〜
図5は、本発明の物品の一例の概略断面図である。
【0091】
図2の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とがこの順で積層されている。
この物品は、例えば、インサート成形により製造できる。
【0092】
図3の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、防曇防汚層212と、ハードコート層600とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とがこの順で積層されている。また、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、ハードコート層600が形成されている。
この物品は、例えば、
図2の物品を製造後、防曇防汚層212上に保護層を形成した後で、成形材料506の表面にハードコート層600を、成形材料506をハードコート液に浸漬、その後乾燥、硬化させること等により形成し、更に、保護層を剥離することで製造できる。なお、防曇防汚層が平滑面であり、純水接触角が前述の範囲内であり、且つヘキサデカン接触角が前述の範囲内である場合、防曇防汚層がハードコート液をはじくため、保護層を形成せずとも、防曇防汚層上にはハードコートが形成されず、成形材料506の樹脂製基材211側と反対側にのみハードコート層600が形成されるため、生産性に優れる。
【0093】
図4の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とを有し、成形材料506の両側に、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とがこの順に積層されている。
【0094】
図5の物品は、成形材料506と、樹脂製基材211と、防曇防汚層212と、光学フィルム601とを有し、成形材料506上に、樹脂製基材211と、防曇防汚層212とがこの順で積層されている。成形材料506の樹脂製基材211側と反対側には、光学フィルム601が形成されている。光学フィルム601としては、例えば、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、偏光フィルムなどが挙げられる。
図4又は
図5に示す物品は、例えば、ダブルインサート成形により製造できる。ダブルインサート成形は、両面積層フィルム一体品を成形する方法であって、例えば、特開平03−114718号公報に記載の方法などを用いて行うことができる。
【0095】
(防汚方法)
本発明の防汚方法は、本発明の前記防曇防汚積層体を物品の表面に積層することにより前記物品の汚れを防ぐ方法である。
【0096】
前記物品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス窓、冷蔵・冷凍ショーケース、自動車のウインドウ等の窓材、浴室内の鏡、自動車サイドミラー等の鏡、浴室の床及び壁、太陽電池パネル、防犯監視カメラなどが挙げられる。
また、前記物品は、眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、レンズ、マイクロレンズアレイ、自動車のヘッドライトカバー、フロントパネル、サイドパネル、リアパネルなどであってもよい。これらは、インモールド成形、インサート成形により形成されることが好ましい。
【0097】
前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を積層する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を貼り付ける方法などが挙げられる。また、本発明の前記物品の製造方法によっても、前記物品の表面に前記防曇防汚積層体を積層することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0099】
<純水接触角>
純水接触角は、接触角計であるDM−701(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で楕円フィッティング法によって測定した。
・蒸留水をプラスチックシリンジに入れて、その先端にステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・水の滴下量:2μL
・測定温度:25℃
水を滴下して4秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値を純水接触角とした。
【0100】
<ヘキサデカン接触角>
ヘキサデカン接触角は、接触角計であるDM−701(協和界面化学株式会社製)を用いて、下記条件で楕円フィッティング法によって測定した。
・ヘキサデカンをプラスチックシリンジに入れて、その先端にテフロンコートステンレス製の針を取り付けて評価面に滴下した。
・ヘキサデカンの滴下量:2μL
・測定温度:25℃
ヘキサデカンを滴下して4秒経過後の接触角を、防曇防汚層表面の任意の10か所で測定し、その平均値をヘキサデカン接触角とした。
【0101】
<呼気防曇性>
25℃37%RHの環境で、防曇防汚層の表面に対して、該表面から法線方向に5cm離れた距離から息を大きく1回吐きかけた後直ちに、目視で表面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○: 防曇防汚層表面に外観変化が全くなかった。
×: 防曇防汚層表面に、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
【0102】
<防汚試験>
防曇防汚層の表面に市販の油性ペン(油性ペン:マッキー、ZEBRA社製)を接触させた。そして、防曇防汚層の表面のインクの状態(弾き)を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○: インクが弾かれる。
×: インクが付着する。
【0103】
<払拭試験>
防曇防汚層の表面に市販の油性ペン(油性ペン:マッキー、ZEBRA社製)を接触させた。そして、防曇防汚層の表面のインクをティッシュ(大王製紙株式会社製、エリエール)で3回、円を描くように拭いた後の状態を目視で確認し、その後、呼気防曇性試験を行った。以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○: インクが拭き取れ、呼気試験後、防曇防汚性表面に外観変化が全くなかった。
×: インクが拭き取れない、及び/又は、防曇防汚層表面に、白い曇り、水膜形成などの、外観変化が確認された。
【0104】
(実施例1)
<防曇防汚積層体の作製>
樹脂製基材として、三菱ガス化学株式会社製のFE−2000(PC基材、平均厚み180μm)を用いた。
【0105】
次に、下記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、塗布厚みが4μmとなるように、前記樹脂製基材上に塗布した。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量1,800mJ/cm
2で紫外線を照射して、防曇防汚層を硬化させ、防曇防汚積層体を得た。
【0106】
−活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(合計100質量%)−
・NKエステル A−GLY−20E(新中村化学工業株式会社製)67.307質量%
・PETIA(ダイセルオルネクス株式会社製) 28.846質量%
・KY1203(信越化学工業株式会社製) 0.962質量%
・イルガキュア 184D(BASF社製) 2.885質量%
【0107】
得られた防曇防汚積層体について、上述の評価に供した。結果を表1−1に示した。
【0108】
(実施例2〜8、及び比較例1〜4)
実施例1において、塗布厚み、及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の配合を、表1−1、及び表1−2に記載の塗布厚み、及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、(防曇防汚)積層体を得た。
【0109】
得られた(防曇防汚)積層体について、上述の評価に供した。結果を、表1−1及び表1−2に示した。
【0110】
(比較例5)
樹脂製基材と、表1−2に記載の配合の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とを用い、特開2014−159154号公報の実施例1に記載されたガラスロール原盤を用いた微細凹凸構造の製造方法で、微細凹凸構造を有する積層体を得た。
なお、得られた積層体の微細凹凸構造は、特開2014−159154号公報の〔0177〕〔表2〕の実施例1に記載の樹脂層の凹凸構造と同じである。
【0111】
得られた積層体について、上述の評価に供した。結果を、表1−2に示した。
【0112】
【表1-1】
【0113】
【表1-2】
表1−1、及び表1−2中の配合量の単位は、質量%である。
【0114】
表1−1及び表1−2中の各種材料は以下のとおりである。
〔親水性モノマー〕
・NKエステル A−GLY−20E:新中村化学工業株式会社製
エトキシ化グリセリントリアクリレート
(構造中に含まれるポリエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位の合計数:20)
・NKエステル A−TM−35E:新中村化学工業株式会社製
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
(構造中に含まれるポリエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位の合計数:35)
・NKエステル A−600:新中村化学工業株式会社製
ポリエチレングリコールジアクリレート
(構造中に含まれるポリエチレンオキサイド鎖の繰り返し単位の合計数:14)
【0115】
〔その他のモノマー〕
・PETIA:ダイセルオルネクス株式会社製
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物
(構造中に含まれるポリエチレンオキサイド鎖:なし)
・EBECRYL 40:ダイセルオルネクス株式会社製
ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート
(構造中に含まれるポリエチレンオキサイド鎖:なし)
・アロニックスM313:東亜合成工業株式会社製
イソシアヌル酸基含有アクリレート
【0116】
〔撥水性モノマー〕
・KY−1203:信越化学工業株式会社製
末端(メタ)アクリル変性パーフルオロポリエーテル系添加剤
・オプツールDAC−HP:ダイキン工業株式会社製
末端(メタ)アクリル変性パーフルオロポリエーテル系添加剤
【0117】
〔開始剤〕
・イルガキュア184D:BASF社製
【0118】
実施例1〜8では、防曇防汚層が、親水性分子構造を含有し、前記防曇防汚層の表面の純水接触角が、90°以上であって、親水性分子構造を含有することにより、呼気防曇性、及び防汚性に優れる防曇防汚積層体が得られた。
【0119】
比較例1では、撥水性モノマーを含有しないため純水接触角が90°未満であり、防汚性、払拭性に劣る積層体となった。
比較例2〜3は、親水性モノマーの含有量が少ない為、呼気防曇性に劣る積層体となった。
比較例4は、表面の純水接触角が90°未満であるため、防汚性、払拭性に劣る積層体となった。
比較例5は、親水性モノマーを所定量含有し、かつ表面の純水接触角が90°以上であるが、凹凸構造を有する為、防汚性、払拭性に劣る積層体となった。
【0120】
(実施例9)
実施例5において、塗布厚みを10μmとした以外は、実施例5と同様にして、防曇防汚積層体を得た。
得られた防曇防汚積層体について、実施例5と同様の評価を行った。更に、干渉ムラの評価を行った。結果を表2に示す。実施例5は、干渉ムラ評価結果が△であるのに対して、実施例9では、○であった。
【0121】
<干渉ムラの評価方法>
防曇防汚積層体をその評価面(防曇防汚層表面)が上になるように黒色アクリル板(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリライト)に両面粘着シート(日東電工株式会社製、商品名:LUCIACS CS9621T)を用いて貼合した。次に、白色蛍光灯下にて評価面を観察し、下記評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:評価面は黒く、干渉ムラが確認できなかった。
△:評価面はわずかに色付き、干渉ムラがかすかに確認された。
×:評価面は緑色や赤色等に色付き、干渉ムラが確認された。
【0122】
【表2】
【0123】
(実施例10)
実施例9で作製した防曇防汚積層体を400℃の雰囲気に13秒間曝し、真空成型により、凹面が防曇防汚層となるように、φ80mmの8カーブレンズ状に成型した。防曇防汚層に傷付き、クラック、剥離などの外観不良はなかった。その後、トムソン刃でφ80mmの8カーブレンズ状防曇防汚積層体を打ち抜いた。これをインサート成型用金型にセットし、溶融したポリカーボネートを充填後、ポリカーボネートが固化するまで冷却した。その後、金型を開き、凹面が防曇防汚層の8カーブレンズを得た。得られた8カーブレンズをそのままハードコート層形成工程(レンズ洗浄→ハードコート液へ浸漬→乾燥→硬化)に適用した結果、防曇防汚層表面にはハードコート層が形成されず、凸面側にのみハードコート層を形成することができた。その後、防曇防汚層側の呼気防曇性評価、防汚試験、払拭試験を行った結果、全て○であった。
【0124】
(実施例11)
実施例9で作製した防曇防汚積層体を500℃の雰囲気に7秒間曝し、真空成型により、凹面が防曇防汚層となるように、φ80mmの8カーブレンズ状に成型した。防曇防汚層に傷付き、クラック、剥離などの外観不良はなかった。その後、トムソン刃でφ80mmの8カーブレンズ状防曇防汚積層体を打ち抜いた。
次に、同様にして、φ80mmの8カーブレンズ状防曇防汚積層体をもう一つ作製した。
これら2つの8カーブレンズ状防曇防汚積層体(φ80mm)をダブルインサート成型用金型にセットし、溶融したポリカーボネートを充填後、ポリカーボネートが固化するまで冷却した。その後、金型を開き、凹面及び凸面の両側が防曇防汚層の8カーブレンズを得た。その後、両側について呼気防曇性評価、防汚試験、払拭試験を行った結果、全て○であった。
【0125】
【表3】
【0126】
(実施例12)
<防曇防汚積層体の作製>
無機基材として松浪硝子工業株式会社製のS9213(ガラス基材、厚み1.2mm〜1.5mm)を用いた。
【0127】
下記組成の溶液を塗布厚みが100nmとなるように無機基材上に塗布した。110℃で30分加熱処理してアンカー層を形成した。
【0128】
−溶液(合計100質量%)−
・KBM−503(信越化学工業株式会社製) 1質量%
・i−プロパノール 49.5質量%
・純水 49.5質量%
【0129】
次に、実施例1で使用した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布厚みが30μmとなるようにアンカー層の上に塗布した。メタルハライドランプを用いて、窒素雰囲気下、照射量1,800mJ/cm
2で紫外線を照射して、防曇防汚層を硬化させ、防曇防汚積層体を得た。
【0130】
得られた防曇防汚積層体について、上述の評価に供した。結果を表4に示した。
【0131】
【表4】
【0132】
また、防曇防汚層の密着性をJIS K 5400に従い碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT24)剥離試験により評価した結果、密着性は良好で100/100(剥離が0箇所)であった。
なお、アンカー層を設けることにより、防曇防汚層の密着性が非常に向上した。