(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375448
(24)【登録日】2018年7月27日
(45)【発行日】2018年8月15日
(54)【発明の名称】口腔内振動付与装置
(51)【国際特許分類】
A61C 7/36 20060101AFI20180806BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20180806BHJP
A61C 17/20 20060101ALI20180806BHJP
A61F 7/12 20060101ALI20180806BHJP
A61H 13/00 20060101ALI20180806BHJP
【FI】
A61C7/36
A61C7/08
A61C17/20
A61F7/12 A
A61H13/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-523735(P2017-523735)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2016067452
(87)【国際公開番号】WO2016199925
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-117784(P2015-117784)
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503056506
【氏名又は名称】西尾 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100142158
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 啓
(72)【発明者】
【氏名】西尾 秀俊
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−187377(JP,A)
【文献】
特開2002−200101(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0012608(US,A1)
【文献】
特開2007−105190(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3135389(JP,U)
【文献】
特開2008−131980(JP,A)
【文献】
特開2001−340412(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/155366(WO,A1)
【文献】
特表2008−521514(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0273490(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0023983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/36
A61C 7/08
A61C 17/20
A61F 7/12
A61H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歯列に直接接触させるための歯列接触部と、
前記歯列接触部を振動させる振動子と、
前記振動子に超音波振動を発生させるための電気信号を生成する振動発生部と、
前記歯列接触部に温熱を付与するための電熱線と、
前記電熱線を発熱させるための電流を生成する温熱制御部と、
前記振動発生部及び前記温熱制御部を制御するための制御手段と、
前記振動発生部及び前記温熱制御部及び前記制御手段を駆動するための電源を供給する電源供給部と、
使用者が操作する操作部と、を備え、
前記歯列接触部は、前記振動子と一体的に構成され馬蹄形の板状で硬質部材により形成される振動伝達板と、前記振動伝達板を内包し馬蹄形の板状で軟質部材により形成され使用者の上顎歯の下面と下顎歯の上面に対して当接する歯列当接部と、を有し、
前記歯列当接部の表面には、使用者の前記上顎歯及び前記下顎歯を矯正するための凹凸形状が形成されており、
前記電熱線の発熱で前記歯列接触部に温熱が付与されると共に、前記歯列接触部の超音波振動が前記歯列を介して口腔内に伝播するように構成したことを特徴とする口腔内振動付与装置。
【請求項2】
前記歯列接触部は、前記歯列当接部の上下に延設され使用者の前記上顎歯及び前記下顎歯の内外側面に当接する歯列当接壁を有することを特徴とする請求項1に記載の口腔内振動付与装置。
【請求項3】
前記歯列接触部は、交換可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の口腔内振動付与装置。
【請求項4】
前記歯列接触部と配線で接続されたコントローラ部を備え、
前記振動発生部と前記制御手段と前記電源供給部と前記操作部は、前記コントローラ部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の口腔内振動付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内に超音波振動を付与することにより口腔内の環境を改善する口腔内振動付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内環境を改善するために歯列に振動を付与する装置として、歯科矯正用装置たるブラケットやワイヤーに対して振動を付与する歯科用振動付与装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の歯科用振動付与装置は、歯列のうち特定の歯に振動を付与するために、ワイヤーに付帯されるブラケットの1つに、偏心モータを回転させることにより発生する振動を付与している。これにより、ブラケットとワイヤーにて固定された歯列の矯正を促している。
【0003】
しかしながら、偏心モータを利用した振動(いわゆる可聴域振動)の場合、ブラケット等で固定された歯列の矯正を促進する以外の効果がなく、効果が限定的だという問題があった。また、特許文献1のように、振動発生装置をブラケットの1つに固定して、振動を1つの歯に付与・伝達する構成であると、振動は固定された歯を媒介して伝達するため、歯列矯正の効果が固定された歯の周辺に限定されるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−12047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、口腔内環境の改善に係る広い用途に利用可能な口腔内振動付与装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の口腔内振動付与装置(1)は、使用者の歯列(T)に直接接触させるための歯列接触部(60)と、歯列接触部(60)を振動させる振動子(11)と、振動子(11)に超音波振動を発生させるための電気信号を生成する振動発生部(31)と、歯列接触部(60)に温熱を付与するための電熱線(67)と、電熱線(67)を発熱させるための電流を生成する温熱制御部(32)と、振動発生部(31)及び温熱制御部(32)を制御するための制御手段(33)と、振動発生部(31)及び温熱制御部(32)及び制御手段(33)を駆動するための電源を供給する電源供給部(35)と、使用者が操作する操作部(37)と、を備え、電熱線(67)の発熱で歯列接触部(60)に温熱が付与されると共に、歯列接触部(60)の超音波振動が歯列(T)を介して口腔内に伝播するように構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる口腔内振動付与装置(1)によれば、振動発生部(31)が振動子(11)を駆動することで歯列接触部(60)に超音波振動が発生する。使用者がこの歯列接触部(60)を上顎歯(TU)と下顎歯(TD)で挟むことにより歯列(T)に当接させた後、使用者が操作部(31)を操作して振動発生部(31)からの電気信号が振動子(11)に伝達することで、歯列(T)を介して口腔内の全体に超音波振動が伝播すると、歯列(T)の矯正を促進させることができる。また、歯列(T)を介して口腔内の隅々まで超音波振動が行き渡ることで、歯の表面に付着した汚れや歯垢のみならず、歯の溝や歯と歯茎の隙間などに堆積した汚れを効果的に除去することができ、かつ、口腔内に存在する細菌を効果的に分解することができる。特に、虫歯や歯周病の原因菌(ミュータンス菌)などの細菌は、口腔内の歯列を介して伝播する超音波振動によって菌の連鎖がバラバラに分解されるため、このような原因菌の除去(殺菌)には非常に効果的である。このように、歯列(T)に対して直接的に超音波振動を伝達することで、可聴域振動を歯に伝達し歯列矯正の促進作用のみを有する場合と比較して、口腔内の環境を改善するための作用をより多く付与することができる。これにより、口腔内環境の改善に係る広い用途に利用可能な振動を付与することができる。また、歯列当接部に設けた電熱線によって歯列接触部に温熱効果を付与するように構成している。これにより、口腔内振動付与装置の使用者が温感による心地良さを感じることで使用感が良好になるうえに、温熱効果により歯列矯正をより短時間で効果的に行うことができる、という効果も奏する。
【0008】
また、上記口腔内振動付与装置(1)において、歯列接触部(60)が、振動子(11)と一体的に構成され馬蹄形の板状で硬質部材により形成される振動伝達板(61)と、振動伝達板(61)を内包し馬蹄形の板状で軟質部材により形成され使用者の上顎歯(TU)の下面と下顎歯(TD)の上面に対して当接する歯列当接部(62)を有することとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、振動子(11)と一体の振動伝達板(61)が馬蹄形の硬質の板状であるため、振動子(11)の振動をより広範囲且つ効率的に伝達する。一方、歯列当接部(62)は軟質であり、歯列(T)の表面形状に倣って変形し易いため、使用者の上顎歯(TU)の下面と下顎歯(TD)の上面に対して確実に当接する。このように、振動子(11)の振動を伝達しやすい振動伝達板(61)と、歯列(T)の表面形状に確実に当接する歯列当接部(62)とを組み合わせることで、より振動子(11)の振動が歯列(T)に効果的に伝播することとなる。
【0010】
また、上記口腔内振動付与装置(1)において、歯列当接部(62)の表面に、使用者の上顎歯(TU)及び下顎歯(TD)を矯正するための凹凸形状(63)が形成されていることとしてもよい。上顎歯(TU)及び下顎歯(TD)を矯正するための凹凸形状(63)が歯列当接部(62)の表面に形成されていれば、上顎歯(TU)及び下顎歯(TD)が振動させられることにより歯列(T)が動き、且つ歯列当接部(62)の凹凸形状(63)に入り込むように促される。このため、効果的に歯列矯正を行うことができる。
【0011】
また、上記口腔内振動付与装置(1)において、歯列接触部(60)に、歯列当接部(62)の上下に延設され使用者の上顎歯(TU)及び下顎歯(TD)の内外側面に当接する歯列当接壁(65)を有する構成としてもよい。これによれば、歯列当接部(62)のみならず、歯列当接部(62)の上下に延設される歯列当接壁(65)が歯列(T)の内側面又は外側面に当接することにより、歯列接触部(60)が歯列(T)に対してより確実に固定されるため、振動子(11)の振動がより確実に歯列(T)に対して伝播することになる。
【0012】
また、上記口腔内振動付与装置(1)において、歯列接触部(60)を交換可能にすることとしてもよい。歯列接触部(60)を交換可能な構成とすれば、歯列(T)は使用者によって個人差があるため、使用者の歯列(T)の形状や用途に合わせて作った歯列接触部(60)に交換することもできるようになる。これにより、振動子(11)の振動が特定の使用者の歯列(T)に対してより効率的及び確実に伝播することになる。
【0013】
また、上記口腔内振動付与装置(1)において、歯列接触部(60)と配線で接続されたコントローラ部(30)を備え、振動発生部(31)と制御手段(33)と電源供給部(35)と操作部(37)は、コントローラ部(30)に設けられている構成としてもよい。このように、歯列接触部(60)とコントローラ部(30)が分かれていることで、歯列接触部(60)とコントローラ部(30)とが一体となっているものと比較して、歯列接触部(60)の小型化・軽量化を図ることができる。また、小型・軽量の歯列接触部(60)を歯列(T)で挟んだ状態で、口腔外のコントローラ部(30)で操作して使用することができ、使用者がコントローラ部(30)の操作部(37)を視認しながら操作することができるため、口腔内振動付与装置(1)の操作性が向上する。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる口腔内振動付与装置によれば、口腔内環境の改善に係る広い用途に利用可能な口腔内振動付与装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る口腔内振動付与装置を示す図で、(a)は全体構成を示す斜視図、(b)は歯列接触部の構成を示す部分拡大図である。
【
図2】第1実施形態に係る口腔内振動付与装置の使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。
【
図3】口腔内振動付与装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】第3実施形態に係る口腔内振動付与装置の構成及び使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。
【
図5】第3実施形態に係る口腔内振動付与装置の歯列接触部の構成を示す斜視図である。
【
図6】第3実施形態に係る口腔内振動付与装置の使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態を詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る口腔内振動付与装置1の全体構成を示す斜視図である。
図2は第1実施形態に係る口腔内振動付与装置1の使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。
【0017】
図1に示す口腔内振動付与装置1は、使用者の歯列Tに直接接触させるため馬蹄形(U字形)に形成される板状の歯列接触部60と、歯列接触部60と電気ケーブル14(配線)及び電気ケーブル(配線)15で接続されたコントローラ部30とを備えている。
【0018】
電気ケーブル14は歯列接触部60に対して一体的に構成され、電気ケーブル15はコントローラ部30に対して一体的に構成される。また、電気ケーブル14と電気ケーブル15とが接続される部分には、電気ケーブル14と電気ケーブル15とを互いに接続および分離を可能にするジャック部16が設けられる。ジャック部16において歯列接触部60に付帯する電気ケーブル14が電気ケーブル15から分離するので、異なる形状の複数のタイプの歯列接触部60を使用する場合、ジャック部16において分離・接続することで、歯列接触部60が交換可能となる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、歯列接触部60には、該歯列接触部60を振動させる振動子11(発振素子)が内蔵される。振動子11は、歯列接触部60内に配置される振動伝達板61と一体的に配置される。この振動子11は、振動発生部31から伝達された電気信号に基づいて超音波による振動を生起させて歯列接触部60を振動させる。
【0020】
歯列接触部60は、振動子11と一体的に構成される振動伝達板61と、振動伝達板61を内包して形成され使用者の上顎歯TUの下面と下顎歯TDの上面に対して当接する歯列当接部62と、歯列当接部62内に埋設された電熱線67とを有する。振動伝達板61と歯列当接部62は、いずれも歯列Tの全域に対応するように、略U字型の馬蹄形に形成される(
図1参照)。
【0021】
振動伝達板61は、その平面形状が上述のように馬蹄形で、振動子11の振動が直接伝播するように振動子11に対して一体的となるように接続される。また、振動伝達板61は、振動をムラなく確実に伝播するために、セラミックなどの陶器製、金属または硬質の樹脂などの硬質部材にて構成され、且つ薄い板状に構成される。また、歯列Tの全てに効率的に振動を伝播させるため、振動伝達板61は、歯列接触部60の内部の全域に配置される。
【0022】
歯列当接部62は、その平面形状が上述のように馬蹄形であり、振動伝達板61の外部を全て覆うように構成される。歯列当接部62は、使用者の歯列Tが接触した際(使用者が歯列当接部62を咥えた際)に違和感を少なく抑えることができるように、軟質の樹脂などの軟質部材によって構成される。
【0023】
歯列当接部62に埋設された電熱線67は、その両端が電気ケーブル14内の配線に接続されており、後述する電気回路基板40上の温熱制御部32と電気的に接続されている。したがって、この電熱線67は、電気ケーブル14内の配線を介して供給される電気が通電することで発熱する。当該発熱が歯列当接部62を介して歯列接触部60の全体に伝播することで、歯列接触部に温熱効果を持たせることができる。
【0024】
歯列接触部60は以上のような構成であるため、使用者が歯列接触部60を口腔内に挿入する際には、まず、歯列接触部60の上下幅が入る程度に口を開けた後、
図2(a)に示すように、歯列接触部60を口の中へ向けて矢印方向に挿入する。次に、歯列接触部60を使用者の上顎歯TUと下顎歯TDとによって挟持する。これによって歯列接触部60が、使用者の口腔内で固定される。
【0025】
図3は、口腔内振動付与装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、コントローラ部30には、振動子11に超音波による振動を発生させるための電気信号を生成する振動発生部(超音波発信器)31と、電熱線67を発熱させるための制御を行う温熱制御部32と、振動発生部31及び温熱制御部32を制御するための制御回路(制御手段)33と、振動発生部31及び温熱制御部32及び制御回路33を駆動するための電源を供給するバッテリ(電源供給部)35と、使用者が操作する操作スイッチ(操作部)37と、表示ランプ等を有する表示手段39とが設けられている。
【0026】
コントローラ部30の振動発生部31は、歯列接触部60の振動子11に超音波による振動(以下、「超音波振動」という。)を発生させるための電気信号を生成する。また、温熱制御部32は、電熱線67を発熱させるための電流を生成する。バッテリ35は、振動発生部31及び温熱制御部32を駆動するための電源を供給する。歯列接触部60の振動子11及び電熱線67は、電気ケーブル14及び電気ケーブル15を介してコントローラ部30の振動発生部31と電気的に接続されている。
【0027】
制御回路33は、振動発生部31による超音波振動の発生、及び温熱制御部32による電熱線67の発熱を制御するものである。超音波振動の制御は、振動発生部31からの超音波電圧信号を圧電素子である振動子11に入力することにより行われる。また、制御回路33は、振動発生部31及び温熱制御部32の制御のほか口腔内振動付与装置1の全体を制御する。なお、制御回路33には、振動発生部31による超音波発信時間や電熱線67の発熱時間を制御するタイマー回路などを設けてもよい。
【0028】
振動発生部31と温熱制御部32と制御回路33と操作スイッチ37は、電気回路基板40に搭載される。電気回路基板40は、バッテリ35と電気的に接続されていて、バッテリ35から供給される電力により駆動する。電源部としてのバッテリ35は、一例として乾電池や蓄電池などを使用することができるが、これに限らず、振動発生部31及び温熱制御部32や制御回路33用の電源を確保できるものであれば他の構成であってもよい。
【0029】
以上の構成により、本実施形態の口腔内振動付与装置1によれば、振動発生部37が振動子11を駆動することで歯列接触部60に超音波振動が発生する。使用者がこの歯列接触部60を上顎歯TUと下顎歯TDで挟むことにより歯列Tに当接させた後、使用者が操作部31を操作して振動発生部31からの電気信号が振動子11に伝達することで、歯列Tを介して口腔内の全体に超音波振動が伝播すると、歯列Tの矯正を促進させることができる。なお、歯列矯正のために使用する場合、歯列Tにブラケットやワイヤーなどの矯正具を装着した状態で本実施形態の口腔内振動付与装置1を使用すれば、より短時間で効果的に所望の歯列への矯正を実現できるようになる。
【0030】
また、歯列Tを介して口腔内の隅々まで超音波振動が行き渡ることで、歯の表面に付着した汚れや歯垢のみならず、歯の溝や歯と歯茎の隙間などに堆積した汚れを効果的に除去することができ、かつ、口腔内に存在する細菌を効果的に分解することができる。特に、虫歯や歯周病の原因菌(ミュータンス菌)などの細菌は、口腔内の歯列を介して伝播する超音波振動によって菌の連鎖がバラバラに分解されるため、このような原因菌の除去(殺菌)には非常に効果的である。
【0031】
このように、歯列Tに対して直接的に超音波振動を伝達することで、可聴域振動を歯に伝達し歯列矯正の促進作用のみを有する場合と比較して、口腔内の環境を改善するための作用をより多く付与することができる。これにより、口腔内環境の改善に係る広い用途に利用可能な振動を付与することができる。
【0032】
また、本実施形態の口腔内振動付与装置1は、歯列接触部60の歯列当接部62に埋設した電熱線67によって歯列接触部60に温熱効果を付与するように構成している。これにより、口腔内振動付与装置1の使用者が温感による心地良さを感じることで使用感が良好になるうえに、温熱効果により歯列矯正をより短時間で効果的に行うことができる、という効果も奏する。
【0033】
また、本実施形態の口腔内振動付与装置1の歯列接触部60は、振動伝達板61と、歯列当接部62を有する。この構成によれば、振動子11と一体の振動伝達板61が馬蹄形の硬質の板状であるため、振動子11の振動をより広範囲且つ効率的に伝達する。一方、歯列当接部62は軟質であり、歯列Tの表面形状に倣って変形し易いため、使用者の上顎歯TUの下面と下顎歯TDの上面に対して確実に当接する。このように、振動子11の振動を伝達しやすい振動伝達板61と、歯列Tの表面形状に確実に当接する歯列当接部62とを組み合わせることで、より振動子11の振動が歯列Tに効果的に伝播することとなる。
【0034】
また、本実施形態の口腔内振動付与装置1は、ジャック部16において、電気ケーブル14と電気ケーブル15とを分離し、再び接続することができ、歯列接触部60を交換可能に構成している。歯列接触部60を交換可能な構成とすれば、歯列Tは使用者によって個人差があるため、使用者の歯列Tの形状や用途に合わせて作った歯列接触部60に交換することもできるようになる。これにより、振動子11の振動が特定の使用者の歯列Tに対してより効率的及び確実に伝播することになる。
【0035】
また、本実施形態の口腔内振動付与装置1は、歯列接触部60とコントローラ部30が分かれている。これにより、歯列接触部60とコントローラ部30とが一体となっているものと比較して、歯列接触部60の小型化・軽量化を図ることができる。また、小型・軽量の歯列接触部60を歯列Tで挟んだ状態で、口腔外のコントローラ部30で操作して使用することができ、使用者がコントローラ部30の操作部37を視認しながら操作することができるため、口腔内振動付与装置1の操作性が向上する。
【0036】
〔第2実施形態〕
以下、添付図面を参照して本発明の第2実施形態を詳細に説明する。
図4は、第2実施形態に係る口腔内振動付与装置1−2の構成及び使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の口腔内振動付与装置1−2が備える歯列接触部60の歯列当接部62の表面には、使用者の上顎歯TU及び下顎歯TDの形状に対応する凹凸形状63が形成がされる。このように、軟質部材で且つ凹凸形状63があることにより、上顎歯TU及び下顎歯TDは、歯列当接部62に対して確実に当接する。
【0038】
なお、本実施形態の
図4では凹凸形状63を上顎歯TU及び下顎歯TDと対応する位置に形成しているが、これに限るものではない。例えば、上顎歯TU及び下顎歯TDを好ましい歯列位置に矯正するため、凹凸形状63の位置を、上顎歯TU及び下顎歯TDの実際の位置より少しずらして形成することもできる。この構成にて振動させることにより、歯列Tをより好ましい位置に案内することが可能となる。
【0039】
本実施形態においても、使用者が歯列接触部60を口腔内に挿入する際には、まず、歯列接触部60の上下幅が入る程度に口を開けた後、
図4(a)に示すように、歯列接触部60を口の中へ向けて矢印方向に挿入する。次に、
図4(b)に示すように、歯列接触部60を使用者の上顎歯TUと下顎歯TDとによって挟持する。これによって歯列接触部60が、使用者の口腔内で固定される。この際、歯列接触部60の歯列当接部62の上下に形成される凹凸形状63に合わさるように、使用者の上顎歯TUと下顎歯TDとによって挟持する。
【0040】
〔第3実施形態〕
以下、添付図面を参照して本発明の第3実施形態を詳細に説明する。
図5は、第3実施形態に係る口腔内振動付与装置1−3の歯列接触部60の構成を示す斜視図である。同図に示すように、本実施形態の口腔内振動付与装置1−3の歯列接触部60には、第1実施形態と同様、歯列接触部60を振動させる振動子11(発振素子)が内蔵され、この振動子11が、振動発生部31から伝達された電気信号に基づいて超音波による振動を生起させて歯列接触部60を振動させる。
【0041】
本実施形態の歯列接触部60は、更に、歯列当接部62の上下に延設され使用者の上顎歯TU及び下顎歯TDの内外側面に当接する歯列当接壁65を有する。歯列当接壁65は、歯列Tの外側面に当接する外側壁65aと、歯列Tの内側面に当接する内側壁65bとを含む。その一方で、本実施形態の口腔内振動付与装置1−3では、歯列接触部60の電熱線67を省略している。
【0042】
なお、本実施形態の歯列当接壁65は、外側壁65a及び内側壁65bの双方を有する構成としているが、これに限るものではなく、歯列当接壁65を外側壁65aまたは内側壁65bの一方のみでも構わない。また、歯列当接壁65の側面に、より歯列接触部60と歯列Tとが確実に当接するために、歯列Tの表面形状に対応した凹凸形状を形成することとしても構わない。
【0043】
図6は、第3実施形態に係る口腔内振動付与装置1−3の使用状態を示す図であり、(a)が装着前の側面図で、(b)が装着時の側面図である。本実施形態の歯列接触部60は以上のような構成であるため、使用者が歯列接触部60を口腔内に挿入する際には、まず、歯列接触部60の上下幅(歯列当接壁65の上端から下端までの幅を含む)が入る程度に口を開けた後、
図6(a)に示すように、歯列接触部60を口の中に向けて矢印方向に挿入する。次に、歯列Tの外側に歯列当接壁65の外側壁65aが当接し、歯列Tの内側に歯列当接壁65の内側壁65bが当接するように、使用者の上顎歯TUと下顎歯TDとによって歯列接触部60を挟持する。また、歯列当接部62の上下に凹凸形状63を形成している場合は、当該凹凸形状63が対応する歯列Tの位置に合うようにする。これらによって歯列接触部60が、使用者の口腔内で固定される。
【0044】
以上の構成により、本実施形態の口腔内振動付与装置1−3の歯列接触部60の構成によれば、歯列当接部62のみならず、歯列当接部62の上下に延設される歯列当接壁65が歯列Tの内側面又は外側面に当接することにより、歯列接触部60が歯列Tに対してより確実に固定されるため、振動子11の振動がより確実に歯列Tに対して伝播することになる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。