特許第6375574号(P6375574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375574
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】軽失禁パッド
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20180813BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20180813BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20180813BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61F13/47 100
   A61F13/532 100
   A61F13/532 200
   A61F13/533 100
   A61F13/475 111
   A61F13/475 100
   A61F13/475 200
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-175170(P2014-175170)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49197(P2016-49197A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 浩二
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−021626(JP,U)
【文献】 特開2010−233839(JP,A)
【文献】 特表2003−523780(JP,A)
【文献】 特開2014−226457(JP,A)
【文献】 特開2001−190595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側の液透過性のトップシートと、
裏面側の液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備え、
前記吸収体は、前方域と排尿域と後方域とを有し、
前記吸収体の排尿域に設けられ、幅方向左右一対の嵩上げされた第1の畝部と、前記吸収体の前方域及び後方域の幅方向に、直線状または製品長手方向内側に凸または外側に凸の形状である長手方向前後一対の第2の畝部と、を有し、前記第1の畝部と前記第2の畝部はそれぞれ離間しており、
前記トップシート及び前記吸収体の排尿域に、
長手方向排尿域前方部に設けられた幅方向内側に湾曲する一対の第1チャネルエンボスと、
長手方向排尿域後方部に設けられた幅方向外側に湾曲する一対の第2チャネルエンボスと、
前記第2チャネルエンボスの内側に設けられた長手方向後方部に突出する略U字形状の第3チャネルエンボスと、
長手方向両端部に設けられた長手方向外側に湾曲する一対の第4チャネルエンボスと、が、前記第1の畝部よりも幅方向内側に、かつ、前記第2の畝部よりも長手方向内側に、それぞれ離間して設けられており、
前記第1の畝部が、周辺領域よりも密度が高く形成され、平面視で、直線状または製品幅方向内側に凸状または凹状の形状を有し、
前記第1の畝部が頂上部と基底部を有し、
前記頂上部の頂面幅が3mm以上8.6mm以下であり、高さが基底面に対して3mm以上5mm以下であり、
前記第1の畝部が側壁部を有し、前記側壁部の傾斜角度が15度以上26度以下であることを特徴とする軽失禁パッド。
【請求項2】
前記トップシートと前記吸収体の排尿域が、チャネルエンボスまたは接着剤により部分的に一体化されている請求項1に記載の軽失禁パッド。
【請求項3】
前記左右一対の第1の畝部より幅方向外側に少なくとも一部が起立する、少なくとも一対の立体ギャザーをさらに有し、
前記吸収体と前記バックシートとの間にパルプ含有シートを備える、請求項1又は2に記載の軽失禁パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽失禁パッドなどの吸収性物品は、一度にある程度の量が排出される尿などの液体をもれずに素早く吸収させるために、股部の吸収体部分のみを2層構造とし、股部へ押し当てることで隙間を無くしたり、液体の吸収・拡散をよくする方法/効果が知られている。
また、さらにフィット性や漏れ防止(拡散)の観点から、形状変形しやすいようにかつ前後への液体の拡散誘導手段として、トップシートから吸収体にかけて左右一対のチャネルエンボスが施されている。
【0003】
特許文献1と特許文献2の吸収性物品では、2層の吸収体において、密度を下層>上層とすることなどにより、吸収性能を向上させる。特許文献3の吸収性物品では、2層の吸収体において、下層の吸収体を小さくし、上層吸収体を押し上げて上方に凸となる構造とすることにより漏れを防止する。特許文献4の吸収性物品では、トップシートと吸収体とがエンボス加工する、いわゆるチャネルエンボスにより、表面の液体の滞留を少なくする。特許文献5の吸収性物品では、吸水、膨潤により吸水後の凹凸の段差が大きくなる、自発的立体化機能を有する、防漏壁を具備するシート状吸収体を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−27945号公報
【特許文献2】特開平2004−121382号公報
【特許文献3】特開2002−238948号公報
【特許文献4】特開1996−71105号公報
【特許文献5】特開2003−33381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献の吸収性物品では、一度に大量に漏れる液体に対しては、横漏れの効果が小さく、吸収性能とフィット感を両立した吸収性物品が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決するために、一度に大量に液体が漏れる場合でも、横漏れの効果が大きく、吸収性能とフィット感を両立した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、(1)本発明の吸収性物品は、表面側の液透過性のトップシートと、裏面側の液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備え、前記吸収体は、前方域と排尿域と後方域とを有し、前記吸収体の排尿域に設けられ、幅方向左右一対の嵩上げされた畝部を有し、前記畝部が、周辺領域よりも密度が高く形成され、平面視で、直線状または製品幅方向内側に凸状または凹状の形状を有する。
【0008】
(2)上記(1)において、前記畝部が頂上部と基底部を有し、前記頂上部の頂面幅が3〜10mmであり、高さが基底面に対して2〜10mmである。
(3)上記(1)又は(2)において、前記畝部が側壁部を有し、前記側壁部の傾斜角度が15度以上である。
(4)上記(1)ないし(3)において、前記トップシートと前記吸収体の排尿域が、チャネルエンボスまたは接着剤により部分的に一体化されている。
【0009】
(5)上記(1)ないし(4)において、前記吸収体の前方域又は/及び後方域に幅方向に、直線状または製品長手方向内側に凸または外側に凸の形状の畝をさらに有する。
(6)上記(1)ないし(5)において、前記左右一対の畝部より幅方向外側に少なくとも一部が起立する、少なくとも一対の立体ギャザーをさらに有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一度に大量に液体が漏れる場合でも、横漏れの効果が大きく、吸収性能とフィット感を両立した吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る吸収性物品の断面図であって、図1のA−A’線における断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る吸収性物品の吸収体の平面図である。
図4図4図3のB−B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、実施形態において、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、吸収性物品を装着する使用者側から見た方向を示す。
【0013】
本発明の実施形態に係る吸収性物品としては、例えば、軽失禁パッド、パンティーライナー、紙おむつ、紙おむつライナー、生理用ナプキンが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品の平面図であり、図2は、本発明の実施形態に係る吸収性物品の断面図であって、図1のA−A’線における断面図である。図1及び図2に示すように、吸収性物品1は、肌当接面側に配され表面側の液透過性のトップシート200と、トップシート200に対向して裏面側に配置された液不透過性のバックシート300と、トップシート200とバックシート300との間に配置された吸収体100と、を備える。これにより、吸収体100は、トップシート200とバックシート300の間に挟まれた構造となっている。
【0015】
本実施形態のトップシート200の基材は、血液、体液等の液体が吸収体100へと移動するような液透過性を備えていればよく、例えば、エアースルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。なかでも、尿等の逆戻り防止の観点から、エアースルー不織布が好ましい。また、液透過性を向上させるために、トップシート200にエンボス加工や穿孔加工を施すことが好ましい。その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。また、肌への刺激を低減させるために、トップシート200に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、トップシート200の坪量は、10g/m以上50g/m以下、さらに好ましくは18g/m以上であることが好ましい。
【0016】
トップシート200の肌当接面側に、立体ギャザー210を長手方向両側縁部に、長手方向前方部(紙面上)から長手方向後方部(紙面下)にかけて長手方向に沿って設けることが好ましい。立体ギャザー210は立体ギャザーシート211内に長手方向に沿って糸ゴム等の立体ギャザー用弾性部材212を備えることで、起立性を有し、使用者の体型に合わせて伸縮自在に変形可能となる。
【0017】
また、トップシート200の肌当接面側には、吸収性物品1の横漏れをより確実に防ぐために、吸収性物品1の幅方向両側縁部から幅方向内側にかけて、バリアシート(図示せず)を設けることも好ましい。バリアシートの基材は、液不透過性であることが好ましく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。さらに、吸収性物品1の幅方向両側縁から幅方向外側に突出するウイング状フラップ(図示せず)を設けることも好ましい。ウイング状フラップは、例えば、バックシート300と、不織布との積層により形成することができる。
【0018】
吸収体100は、フラップパルプと高吸収性樹脂(高吸収性ポリマー)を含有する。吸収体100の基材は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。この中で、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。かかるフラッフパルプとしては、木材パルプ及び合成繊維、ポリマー繊維等の非木材パルプを綿状に解繊したものをあげることができる。また、吸収性能および肌触りを損なわないよう、吸収体100の基材の坪量を300g/m以上600g/m以下とすることが好ましい。
【0019】
吸収体100の高吸収性ポリマー(SAP)は、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、 (イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、といった材料から形成される。この中で、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。また、吸収性能および肌触りを損なわないよう、吸収体100の高吸収ポリマーの坪量は、100g/m以上500g/m以下とすることが好ましい。
【0020】
吸収体100の基材と高吸収性ポリマーは、基材中に高吸収性ポリマー粒子を混合して形成したものが好ましい。また、高吸収性ポリマー粒子の漏洩防止や吸収体100の形状を安定させるために、吸収体100をキャリアシート(図示せず)に包むことが好ましい。キャリアシートは、吸収体100のトップシート200側(上部)の上キャリアシート710を含む。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布をあげることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0021】
吸収体100の形状としては、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状等をあげることができる。さらに、吸収体100の表面にエンボス加工を施すと、体液の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収体100が容易に変形するので好ましい。
【0022】
本実施形態のバックシート300の基材は、吸収体100が保持している体液が下着に漏れないような液不透過性を備えたものであればよく、不織布、樹脂フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。
かかる不織布は、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料があげられる。また、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等があげられる。バックシート300には、下着等に粘着させる粘着剤610を設け、その外側に剥離紙600を設けることが好ましい。
【0023】
強度および加工性の点から、バックシート300の坪量は、15g/m以上40g/m以下程度であることが好ましく、18g/m以上のポリエチレンフィルムがさらに好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート300は通気性を持たせることが好ましい。通気性を備えさせるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合することや、バックシート300にエンボス加工を施すことがあげられる。フィラーとしては、炭酸カルシウムをあげることができ、その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0024】
図3は本発明の実施形態に係る吸収性物品の吸収体の平面図、図4図3のB−B’断面図である。図1図4に示すように、吸収体100は、前方域と排尿域と後方域とを有する。吸収体100の股部排尿域には、幅方向左右一対の嵩上げされた畝部120が長手方向に延びて形成されている。
図4に示すように、畝部120は、平面視で、製品幅方向内側に凸状の形状を有し、幅方向振幅より長手方向長さの方が長い。畝部120を製品幅内側に凹状(外側に凸状)としてもよいし、直線状であってもよい。この畝部120は、頂上部121、側壁部122、基底部123を有し、畝部120以外の基底部(周辺領域)よりもプレス等で密度が高められている。
【0025】
頂上部121の頂面幅Aは座屈し難いように3〜10mmであるのが好ましい。プレス等により加密された畝部の高さBは、基底面に対して2−10mmが好ましい。2mm以下だと畝部120としての効果が薄く、10mm以上だと拡散効果よりもフィット性が悪くなる。
畝部120の側壁部122は座屈しにくいように傾斜しており、傾斜角θは15度以上が好ましい。15度以下だと畝部が型崩れしやすくなってしまう。
さらに、前後漏れ防止するために吸収体の前方域と後方域の幅方向に、畝部130、140を設ける。畝部130、140は、直線状または製品長手方向内側に凸または外側に凸の形状を有する。
【0026】
畝部120と立体ギャザー210の関係について説明すると、立体ギャザー210は、左右一対の畝部120より幅方向外側に少なくとも一部が起立するように設けられている。畝部120と立体ギャザー210により、さらに横漏れを防止することができる。
【0027】
トップシート200と吸収体100の排尿域が、チャネルエンボスまたは接着剤により部分的に一体化されている。図2では、後述するチャネルエンボス50e、50fによりトップシート200と吸収体100の排尿域が一体化されている。畝部分によりトップシート200と吸収体100の排尿域に隙間ができてしまうため、排尿域においてエンボス等によりトップシート200と吸収体を接触させるために部分的に一体化させることで、隙間を少なくすることができる。
【0028】
図1から図3に示すように、チャネルエンボスを、長手方向排尿域前方部(紙面上側)に設けられた幅方向内側に湾曲する一対の第1チャネルエンボス50e、50fと、長手方向排尿域後方部(紙面下側)に設けられた幅方向外側に湾曲する一対の第2チャネルエンボス50a、50bと、第2チャネルエンボス50a、50bの内側に設けられた長手方向後方部に突出する略U字形状の第3チャネルエンボス50dと、長手方向両端部に設けられた長手方向外側に湾曲する一対の第4チャネルエンボス50c、50gを、それぞれ離間して形成することにより、体液が吸収体100全体に拡散誘導されて、高吸収性ポリマーが体液を保持するので、多量の体液であっても、吸収速度の低下及び液戻り量を抑制することができる。
【0029】
チャネルエンボスは、例えば、熱エンボス法、超音波エンボス法、高周波エンボス法により形成することができる。熱エンボス法の場合、チャネルエンボス50a〜50gに対応する凸部形状を有するエンボスロールと、エンボスロールの周面に配置された受けロールあるいはベルトの間に、トップシート200と吸収体100を挟み込む形で積層したものを通過させて、これらを一体的に加熱及び加圧処理を行うことで、チャネルエンボス50a〜50gが形成される。
【0030】
本実施形態の吸収性物品1は、上記に示すチャネルエンボス50a〜50gを形成したトップシート200及び吸収体100に、バックシート300を積層したものを、その周囲を一部あるいは全周に渡ってホットメルト系接着剤を用いて固定することにより製造する。ホットメルト系接着剤の種類及び塗布方法は特に限定されないが、ノズルから溶融状態の接着剤を非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、また、接触式では、スロット法等の公知の方法が適用できる。
【0031】
また、吸収体100とバックシート300との間にパルプ含有シート500を備える。パルプ含有シート500の素材は、木材パルプ主体のエアーレイ不織布、ハイドロニット不織布、クレープ紙で坪量は、20g/m以上60g/m以下のものが使用できるが、好ましくは、30g/m以上50g/m以下の坪量である。立体ギャザー210、液拡散性シート400、パルプ含有シート500により、吸収速度に優れ、初期漏れを防止することができる。
なお、上記ハイドロニット不織布とは、米国キンバリークラーク社の商品名で、米国特許第5284703号明細書に開示されているように、ポリプロピレン不織布にパルプを、バインダー(接着剤)を使わずに、高水圧(ウォータージェット)で強固に絡めてシート化したもので、強度、吸収性に優れた素材である。
【実施例】
【0032】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0033】
本実施例及び参考例は、トップシート200として、20g/mのエアースルー不織布とバックシート300として、20g/mのPEフィルムの間にそれぞれの吸収体100を挟み一体化させたものを官能評価に供した。実施例1では、畝部120が製品幅方向内側に凸状、プレスが「有り」、頂面幅が8mm、畝部120の長さが103mm、頂面積が1665mm、畝部120の高さが3mm、側壁角26°とした。参考例2では、畝部120が製品幅方向内側に凹状、参考例3では、畝部120が直線形状を有する。その他の実施例、参考例及び比較例においては、表1に示す通りである。
【0034】
(測定法)
畝部120の頂面幅A、長さ、間隔、頂面積、高さB、側壁角は、三谷商事(株)製画像解析・画像処理ソフト『WinROOF』を用いて各所計測を行った。
(拡張長)
0.9%生理食塩水50mlを10ml/秒で吸収体中央に投入した後、5分後の液拡散長さを畝側からMD(長手方向)、CD(幅方向)それぞれで計測する。
【0035】
(官能評価)
20名のパネラーに対して、吸収性物品1である実施例、参考例及び比較例の触感(肌触り)とフィット性(モレなどの使用時における不快感)の評価を実施した。「(a)不快感がない」、「(b)どちらでもない」、「(c)不快感あり」のいずれかの評価を選択させた。(a)の評価が16〜20人のときを「◎」、(a)の評価が11〜15人のときを「○」、(a)の評価が6〜10人のときを「△」、(a)の評価が0〜5人のときを「×」で表示した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、畝部120の形状によって拡散具合に変化が見られるが、プレスが無いものはプレスが有るものに比べMD方向の拡散が悪くCD方向は畝部120による拡散抑止が緩慢で導液効果も低い。また、畝部120の高さが高いと肌当たりの点で評価が低い。プレス具合によっては固さを気にするモニターも見られた。
【0038】
また、実施例1は頂上部121の頂面幅Aが広く、さらに側壁部122の傾斜角度がかなり大きいため、座屈しにくく、畝部120の高さBが低いため、フィット性も良好であった。参考例2は頂上部121の頂面幅Aが広く、さらに側壁部122の傾斜角度が大きいため、座屈しにくく、畝部120の高さBが比較的低いため、フィット性も良好であった。参考例3は頂上部121の頂面幅Aが広く、さらに側壁部122の傾斜角度がかなり大きいため、座屈しにくく、畝部120の高さBが比較的低いため、フィット性も良好であった。
【0039】
また、比較例1〜4では、頂上部121の頂面幅Aが全体的に狭く、さらに畝部120の高さBが高く、側壁部の傾斜角度も比較的小さいため、座屈しやすく、フィット性も悪かった。
【0040】
本発明の実施形態に係る吸収性物品1によれば、排尿域は畝部120の間で広く開いているため、一度に大量に漏れが生じた場合も前後に拡散しやすく、漏れが防止できる。また、畝部120の加密された部分が壁となって長手方向への拡散誘導となり、横漏れが防止できる。さらに、加密された畝部分が鼠蹊部に当たり、漏れ防止効果と屈曲線となり股部にフィットする。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 吸収性物品
100 吸収体
120 畝部
121 頂上部
122 側壁部
123 基底部
200 トップシート
300 バックシート
図1
図2
図3
図4