(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6375897
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20180813BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20180813BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20180813BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
F28F1/32 Y
F28F1/32 L
F28F1/32 P
F28D1/053 A
F25B39/02 Y
F28F17/00 501A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-239660(P2014-239660)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-102593(P2016-102593A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌春
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−154492(JP,A)
【文献】
特開平08−189790(JP,A)
【文献】
特開2012−154493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/30 〜 1/32
F25B 39/02
F28D 1/053
F28F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の間隔をあけて上下に配列される複数の扁平管と、
第2の間隔をあけると共に前記複数の扁平管と交差させて前記複数の扁平管のうち隣り合う扁平管の間を区画し空気を通風するための通風路を複数形成する板状の複数のフィンとを有する熱交換器であって、
前記フィンは、前記通風路を区画する伝熱部を有し、
前記伝熱部はルーバーを有し、
前記伝熱部のうち、前記ルーバーの下方かつ前記扁平管の上側平坦面の近傍に、前記フィンの一面側に突出するように形成されたビード状の導水部が空気の通風方向に延びていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記導水部が、前記扁平管の通風方向の一端側から他端側に渡って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記導水部が、空気の通風方向の上流側より下流側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記導水部が、上下方向に複数本形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平管とフィンとを備え、扁平管内を流れる流体を空気と熱交換させる熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扁平管とフィンとを備えた熱交換器が知られている。この熱交換器では、板状のフィンが互いに所定の間隔をおいて平行に積層されている。この積層されたフィン夫々には、フィンの短手方向の一端から他端に向かって横長の切り欠き部が多数形成されている。この多数の切り欠き部は、フィンの長手方向に一定の間隔で形成されている。扁平管は断面形状が長円形あるいは角の丸い矩形となった伝熱管である。この扁平管は前述の切欠き部に夫々挿入されることで、互いに一定の間隔をおいて上下に並んで配置されている。また、フィンの他端側には、上端から下端まで連続する流水部が形成される。そのため、フィン上に発生した凝縮水がこの流水部を伝って、フィンの下端にまで流れ落ちることが出来るため、熱交換器の排水性を高めることが出来る。
【0003】
このような熱交換器において、熱交換効率を上げる方法の一つに特許文献1に開示されている方法がある。
図5に示すように、フィン320上で扁平管330に上下方向から挟まれた領域の一部に、上下方向に渡ってフィン320を切起して形成したルーバー350を白抜き矢印に示す空気の通風方向に対し複数形成している。このルーバー350がフィン320に沿って流れる空気を乱流とし、温度差のある空気がフィン320に当たることで、熱交換効率が良くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−234833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱交換器を蒸発器として機能させた場合、扁平管330の上部にある上部平坦面330aが水平になっているため、凝縮水が扁平管330の上部平坦面330aに溜まり易い。特に、ルーバー350の下端350aが扁平管330の上部平坦面330aと近接している箇所では、凝縮水が流れにくい。そのため、扁平管330の上部平坦面330aに凝縮水が溜まるおそれがあり、空気と熱交換器が接触できる面積が減少するため、熱交換器が蒸発器の時は熱交換効率が悪くなる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、扁平管の平坦面に溜まった凝縮水を効率よく排水できるようにして、熱交換器の熱交換効率を改善することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するために、本発明は、第1の間隔をあけて上下に配列される複数の扁平管と、第2の間隔をあけると共に複数の扁平管と交差させて複数の扁平管のうち隣り合う扁平管の間を区画し空気を通風するための通風路を複数形成する板状の複数のフィンとを有する熱交換器であって、フィンは、通風路を区画する伝熱部を有し、伝熱部のうち、扁平管の上側平坦面の近傍に、フィンの一面側に突出するように形成されたビード状の導水部が空気の通風方向に延びていることを特徴とする。
【0008】
また、導水部が、前記扁平管の通風方向の一端側から他端側に渡って形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、導水部が、空気の通風方向の上流側より下流側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
また、導水部が、上下方向に複数本形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換器によれば、扁平管の平坦面に溜まった凝縮水を効率よく排水でき、熱交換器の熱交換効率を改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかる熱交換器の全体を示した斜視図である。
【
図2】本発明にかかる熱交換器の全体を示した正面図である。
【
図3】本発明にかかる熱交換器を側面方向からの断面を示した(
図2のA−Aに沿った)断面図である。
【
図4】(A)は本発明にかかるルーバーを側面方向から示した側面図と、(B)は導水部の断面を示した(
図3のB−Bに沿った)断面図である。
【
図5】従来にかかる熱交換器を
図3と同様に側面方向からの断面を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する熱交換器100は、
図1と
図2に示すように、フィン120と扁平管130を備えた熱交換器である。
【0014】
本発明の熱交換器100は、第1ヘッダ110aと、第2ヘッダ110bと、複数の扁平管130と、複数のフィン120とを備えている。第1ヘッダ110a、第2ヘッダ110b、扁平管130、フィン120はいずれもアルミニウム合金製の部材であり、蝋付けによって互いに接合されている。
【0015】
第1ヘッダ110aと第2ヘッダ110bは、両方とも両端が閉鎖された細長い円筒状に形成されている。熱交換器100の一端側に第1ヘッダ110aが配置され、熱交換器100の他端側に第2ヘッダ110bが配置される。なお、第1ヘッダ110aと第2ヘッダ110bのそれぞれの軸方向を熱交換器100の上下方向とする。
【0016】
扁平管130は、断面形状が長円形あるいは角の丸い矩形となった伝熱管であり、フィン120と直交する方向に延びており、上部が上側平坦面131、下部が下側平坦面132となっている。また、扁平管130には、冷媒が流れる冷媒流路が複数本配置され、この冷媒流路は扁平管130の長手方向に延びて形成され、扁平管130の幅方向に等間隔で配置されている。熱交換器100において、各扁平管130は、各々の上側平坦面131と下側平坦面132が対向するように、熱交換器100の熱交換効率と通風抵抗などを考慮して設計した間隔である第1の間隔をおいて上下に並んで配置されている。各扁平管130は、一端を第1ヘッダ110aに挿入し、他端を第2ヘッダ110bに挿入している。
【0017】
フィン120は、金属板をプレス加工することによって、縦長の板形状に形成されている。フィン120には、
図3に示すように、フィン120の短手方向の一端からフィン120の他端に向かって延びる横長の切り欠き部140が、フィン120の長手方向(上下方向)に所定の間隔をおいて多数形成されている。この切り欠き部140に扁平管130が差し込まれることで、扁平管130は上下方向に第1の間隔をおいて配置される。また、フィン120は、
図1に示すように、扁平管130の長手方向に熱交換器100の熱交換効率と通風抵抗などを考慮して設計した間隔である第2の間隔をおいて複数枚配置され、上下方向に隣り合う扁平管130の間を空気が流れる複数の通風路に区画している。フィン120と扁平管130はそれぞれで直交しており、
図3に示すように、フィン120の表面のうち、上下に隣り合う扁平管130の間に位置する面が、通過する空気と熱交換する伝熱部121となる。また、切欠き部140より他端側にある面が、フィン120の上端から下端まで連続して接続された流水部(連通部)122となる。
【0018】
フィン120の伝熱部121には、伝熱部121の一部を通風方向に切り起したルーバー150が形成されている。このルーバー150は、
図4(A)に示すように矩形状に切り込まれ、それにより形成された矩形の板部124の中心線123に対して線対称となるように曲げられ、白抜き矢印に示す空気の通風方向に複数片並んで形成されている。また、このルーバー150の下方には、空気の通風方向に延びている導水部160が複数本形成されている。この導水部160は、伝熱部121のうち、ルーバー150の下端と扁平管130の上側平坦面131の間に、
図4(B)に示すようにプレス加工によりフィン120の一面側に突出するように、フィン120の他面側は凹むようにビード状に形成されている。なお、導水部160はフィン120の一面側を凹ませ、フィン120の他面側を突出するように形成しても良い。導水部160は細長く形成され、風上側より風下側に向かって下方に傾斜している。また、導水部160は上下方向に一定間隔で複数本形成されている。この複数本形成されている導水部160のうち最下方にある導水部が下方導水部160aであり、扁平管130の幅方向のうち風下側の一端から風上側の他端まで延びている。この下方導水部160aが伝熱部121で生じた凝縮水を捕集することで、流水部122まで凝縮水を導くことが出来る。また、下方導水部160a以外の導水部(160b、160c)は、下方導水部160aよりも短く、伝熱部121の風下側に配置される。これにより、伝熱部121の風上側で生じた凝縮水が下方導水部160aにまで流下することが出来る。
【0019】
以下、ビード状に形成された導水部160について詳述する。伝熱部121の一面側に凸部165を形成し、凸部165の上側を壁部164とする。伝熱部121の他面側であって、凸部165の裏側には、凹部163が形成される。伝熱部121の一面側で生じた凝縮水は導水部160にまで流下すると、導水部160の上側にある壁部164で受け止められ、空気の力等で風下側にまで流されて流水部122まで導かれる。また、扁平管130の上側平坦面131に溜まった凝縮水が導水部160の一面側にある凸部165同士の間162、または導水部160の他面側に形成される凹部163に流れ込み、毛細管現象により流水部122まで導かれる。
【0020】
なお、本実施例では、導水部160全てがフィン120の一面側に突出するように形成されているが、本発明はこれに限定したものではなく、複数の導水部160の一部を他面側に突出するように形成しても良い。また、本実施例では、伝熱部121の風下側に配置される2本の導水部(160b、160c)が同じ長さとなっているが、本発明はこれに限定したものではなく、この2本の導水部(160b、160c)のうち下方にある導水部160bの長さを上方にある導水部160cよりも長くしても良い。これにより、伝熱部121で生じた凝縮水が導水部160同士の間に引き込み易くなる。
【0021】
本発明の熱交換器によれば、熱交換器のフィンにルーバーを備えたとしても、扁平管の平坦面に溜まった凝縮水を効率よく導水部まで流すため、熱交換器の熱交換効率を改善することが出来る。
【符号の説明】
【0022】
100 熱交換器
120 フィン
130 扁平管
150 ルーバー
160 導水部