(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許第4710204号に記載の電子部品では、素体に電気めっきにより外部電極を形成するために、素体に導電化材料を付着させる必要があり、部材数が増え、製造工数が増える。
【0007】
また、特開2002−367833号公報に記載の電子部品では、素体に電気めっきにより外部電極を形成するために、素体に外部電極用パターンを設ける必要があり、部材数が増え、製造工数が増える。
【0008】
そこで、本発明の課題は、部材数および製造工数を減らすことができる電子部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の電子部品は、
セラミックから構成され、第1部分と前記第1部分の表面の比抵抗よりも小さな表面の比抵抗を有する第2部分とを含む素体と、
前記第2部分の表面に形成された外部電極と
を備える。
【0010】
本発明の電子部品によれば、外部電極は、素体における小さな表面の比抵抗を有する第2部分の表面に、形成されているので、外部電極を電気めっきにより第2部分の表面に形成することができる。したがって、素体に電気めっきにより外部電極を形成するために、素体に導電化材料を付着させたり、素体に外部電極用パターンを設ける必要がなく、部材数および製造工数を減らすことができる。
【0011】
また、一実施形態の電子部品では、前記第1部分の表面の比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きく、前記第2部分の表面の比抵抗は、10
3Ω・cmよりも小さい。
【0012】
前記実施形態の電子部品によれば、第1部分の表面の比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きく、第2部分の表面の比抵抗は、10
3Ω・cmよりも小さい。これにより、外部電極は、電気めっきにより、第1部分に形成されずに第2部分に形成される。
【0013】
また、一実施形態の電子部品では、前記第2部分の表面の比抵抗は、前記第1部分の表面の比抵抗の10
−2倍よりも小さい。
【0014】
前記実施形態の電子部品によれば、第2部分の表面の比抵抗は、第1部分の表面の比抵抗の10
−2倍よりも小さい。これにより、外部電極は、電気めっきにより、第1部分に形成されずに第2部分に形成される。
【0015】
また、一実施形態の電子部品では、前記素体の前記第1部分に螺旋状のコイル導体を設けている。
【0016】
前記実施形態の電子部品によれば、コイル導体は、素体の第1部分に設けられている。これにより、コイル導体の通電により高周波の磁界を発生させても、コイル導体は、大きな表面の比抵抗を有する第1部分に、設けられているので、素体での渦電流の発生を抑制できる。
【0017】
また、一実施形態の電子部品では、前記素体は、磁性体からなる。
【0018】
前記実施形態の電子部品によれば、素体は、磁性体からなるので、電子部品は、インダクタとしての機能を有することができる。
【0019】
また、一実施形態の電子部品では、前記第1部分は、Ni−Zn系フェライトからなり、前記第2部分は、Mn−Zn系フェライトからなる。
【0020】
前記実施形態の電子部品によれば、Mn−Zn系フェライトの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低いので、第2部分に選択的に外部電極を形成できる。
【0021】
また、一実施形態の電子部品では、前記第1部分は、Ni−Zn系フェライトからなり、前記第2部分は、Bi−Ni−Zn系フェライトからなる。
【0022】
前記実施形態の電子部品によれば、Bi−Ni−Zn系フェライトの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低いので、第2部分に選択的に外部電極を形成できる。
【0023】
また、一実施形態の電子部品では、前記第1部分は、Ni−Zn系フェライトからなり、前記第2部分は、金属磁性粉を含むガラスからなる。
【0024】
前記実施形態の電子部品によれば、金属磁性粉の一部が、ガラスの表面に露出するので、金属磁性粉を含むガラスの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低くなり、第2部分に選択的に外部電極を形成できる。
【0025】
また、一実施形態の電子部品では、前記素体は、シート積層工法により形成されている。
【0026】
ここで、シート積層工法とは、第1部分の材料から構成される第1シートと第2部分の材料から構成される第2シートとを積層し焼成して、素体を作製する工法をいう。
【0027】
前記実施形態の電子部品によれば、素体は、シート積層工法により形成されているので、第1部分と第2部分とをシートの積層方向に形成することができ、第1部分と第2部分との間の境界を直線状に形成できる。したがって、第2部分に形成される外部電極のエッジが直線状に形成される。これにより、電子部品を回路基板に実装する場合に、意図しない接続部分が外部電極に接続されることがない。
【0028】
また、一実施形態の電子部品では、前記素体は、印刷積層工法により形成されている。
【0029】
ここで、印刷積層工法とは、第1部分の材料から構成される第1ペーストと第2部分の材料から構成される第2ペーストとを印刷により積層し焼成して、素体を作製する工法をいう。
【0030】
前記実施形態の電子部品によれば、素体は、印刷積層工法により形成されているので、第2部分を設ける位置の自由度が向上する。したがって、第2部分に形成される外部電極の構造の自由度が上がる。
【0031】
また、本発明の電子部品の製造方法は、
セラミックから構成され、第1部分と前記第1部分の表面の比抵抗よりも小さな表面の比抵抗を有する第2部分とを含む素体を形成する工程と、
前記第2部分の表面に電気めっきにより外部電極を形成する工程と
を備える。
【0032】
本発明の電子部品の製造方法によれば、外部電極は、素体における小さな表面の比抵抗を有する第2部分の表面に、電気めっきにより形成されている。したがって、素体に電気めっきにより外部電極を形成するために、素体に導電化材料を付着させたり、素体に外部電極用パターンを設ける必要がなく、部材数および製造工数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の電子部品およびその製造方法によれば、外部電極は、素体における小さな表面の比抵抗を有する第2部分の表面に、形成されているので、部材数および製造工数を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電子部品を示す斜視図である。
図2は、電子部品の断面図である。
図1と
図2に示すように、第1実施形態の電子部品1は、セラミックから構成された素体10と、素体10に設けられた外部電極31,32とを有する。素体10は、第1部分11と第1部分11の表面の比抵抗よりも小さな表面の比抵抗を有する第2部分12とを含む。外部電極31,32は、素体10の第2部分12の表面に形成されている。
【0037】
以上のように構成された実施形態の電子部品1は、主として以下の点で従来の電子部品とは異なっている。
【0038】
外部電極31,32は、素体10における小さな表面の比抵抗を有する第2部分12の表面に、形成されているので、外部電極31,32を電気めっきにより第2部分12の表面に形成することができる。したがって、素体10に電気めっきにより外部電極31,32を形成するために、素体10に導電化材料を付着させたり、素体10に外部電極用パターンを設ける必要がなく、部材数および製造工数を減らすことができる。
【0039】
また、素体10に外部電極用パターンを設ける必要がないので、素体10の内部の回路素子(コイルパターン等)の設計に自由度が生まれる。
【0040】
以下、本発明の実施形態に係る電子部品の具体例を説明する。
【0041】
図1と
図2に示すように、第1実施形態の電子部品は、積層インダクタ1である。積層インダクタ1は、素体10と、素体10の内部に設けられた螺旋状のコイル導体20と、素体10の表面に設けられコイル導体20に電気的に接続された外部電極31,32とを有する。
図1では、コイル導体20を判別しやすくするために、コイル導体20を実線にて示す。
【0042】
積層インダクタ1は、外部電極31,32を介して、図示しない回路基板の配線に電気的に接続される。積層インダクタ1は、例えば、ノイズ除去フィルタとして用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に用いられる。
【0043】
素体10は、セラミックから構成される。素体10は、第1部分の一例としての第1層11と、第2部分の一例としての第2層12とを含む。素体10は、第1層11と第2層12とを積層して構成される。第2層12は、積層方向の両端に配置され、複数の第1層11は、両端の第1層11に挟まれる。
【0044】
つまり、素体10は、シート積層工法により形成されている。詳細については後述するが、シート積層工法とは、
図3に示すように、第1層11の材料から構成される第1シート51と第2層12の材料から構成される第2シート52とを積層し焼成して、素体10を作製する工法をいう。
【0045】
第2層12の表面の比抵抗は、第1層11の表面の比抵抗よりも小さい。第2層12の表面の比抵抗は、第2層12の表面に電気めっきにより外部電極31,32としてのめっき膜が形成されうる程度の表面の比抵抗である。第1層11の表面の比抵抗は、第1層11の表面に電気めっきによりめっき膜が形成されないような表面の比抵抗である。具体的に述べると、第1層11の表面の比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きく、第2層12の表面の比抵抗は、10
3Ω・cmよりも小さい。または、第2層12の表面の比抵抗は、第1層11の表面の比抵抗の10
−2倍よりも小さい。これにより、外部電極31,32は、電気めっきにより、第1層11に形成されずに第2層12に形成される。
【0046】
素体10は、磁性体からなる。これにより、積層インダクタ1は、インダクタとしての機能を有する。第1層11は、例えば、Ni−Zn系フェライトからなり、第2層12は、例えば、Mn−Zn系フェライトからなる。したがって、Mn−Zn系フェライトの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低いので、第2層12に選択的にめっき膜を形成できる。具体的に述べると、Mn−Zn系フェライトの比抵抗は、10Ω・cm〜1000Ω・cmであり、比抵抗が低いため、めっきが成長しやすい。Ni−Zn系フェライトの比抵抗は、100MΩ・cm以上であり、比抵抗が高いため、めっきが成長しない。
【0047】
素体10は、略直方体状に形成されている。素体10の表面は、第1端面15と、第1端面15の反対側に位置する第2端面16と、第1端面15と第2端面16の間に位置する側面17とを有する。第1端面15は、積層方向の一端に配置され、第2端面16は、積層方向の他端に配置される。
【0048】
外部電極31,32は、素体10の第2層12の外表面に電気めっきにより形成される。めっきは、例えば、Niめっき、または、Snめっきである。なお、めっきは、Niめっき後にSnめっきを行った2層構造としてもよく、または、Niめっきを下地としてAgやCuのめっき膜を形成してもよい。
【0049】
第1外部電極31は、素体10の第1端面15の全面と、素体10の側面17の第1端面15側の端部とを覆う。第2外部電極32は、素体10の第2端面16の全面と、素体10の側面17の第2端面16側の端部とを覆う。つまり、第1、第2外部電極31,32は、それぞれ、素体10の5面に設けられる。
【0050】
コイル導体20は、例えば、AgまたはCuなどの導電性材料から構成される。コイル導体20は、積層方向に沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル導体20の両端には、第1引出導体21と第2引出導体22が設けられる。
【0051】
第1引出導体21は、素体10の第1端面15から露出して第1外部電極31に接触し、第1外部電極31は、第1引出導体21を介して、コイル導体20に電気的に接続される。第2引出導体22は、素体10の第2端面16から露出して第2外部電極32に接触し、第2外部電極32は、第2引出導体22を介して、コイル導体20に電気的に接続される。
【0052】
コイル導体20は、素体10の第1層11に設けられている。コイル導体20は、第1層11の上面に形成されるコイルパターン部23と、第1層11の厚み方向に貫通して配置されるパターン連結部(ビア導体)24とを有する。各コイルパターン部23の端部は、パターン連結部24により接続されて、螺旋状のコイル導体20が、形成される。このように、コイル導体20は、大きな表面の比抵抗を有する第1層11に設けられているので、コイル導体20の通電により高周波の磁界を発生させても、素体10での渦電流の発生を抑制できる。
【0053】
次に、積層インダクタ1の製造方法について説明する。
【0054】
図3に示すように、第1層11の材料から構成される複数枚の第1シート51と、第2層12の材料から構成される2枚の第2シート52とを作製する。一方の第2シート52には、印刷により、第1引出導体21を設け、他方の第2シート52には、印刷により、第2引出導体22を設ける。複数枚の第1シート51には、第1、第2引出導体21,22やコイルパターン部23やパターン連結部24を設ける。そして、2枚の第2シート52で複数枚の第1シート51を挟むように積層して積層体を形成し、積層体を焼成して、素体10を作製する。このように、素体10は、シート積層工法により形成されている。第1シート51が第1層11を構成し、第2シート52が第2層12を構成する。
【0055】
その後、
図2に示すように、素体10をめっき液に浸漬し、電気めっきを行う。すると、素体10の第2層12の表面の比抵抗は、小さいので、第1端面15側の第2層12の表面に、第1外部電極31が形成され、第2端面16側の第2層12の表面に、第2外部電極32が形成される。
【0056】
したがって、前記積層インダクタ1およびその製造方法によれば、第1、第2外部電極31,32は、素体10における小さな表面の比抵抗を有する第2層12に、電気めっきにより形成されている。したがって、素体10に電気めっきにより第1、第2外部電極31,32を形成するために、素体10に導電化材料を付着させたり、素体10に外部電極用パターンを設ける必要がなく、部材数および製造工数を減らすことができる。
【0057】
また、素体10の第1層11と第2層12とで表面の比抵抗に差を設けて電気めっきを行うので、素体10の必要な部分にのみ、第1、第2外部電極31,32を形成できる。また、第1、第2外部電極31,32を電気めっきにより形成しているので、第1、第2外部電極31,32の厚みを薄くすることができる。これに対して、外部電極を形成する方法として、素体に導体ペーストを塗布して焼き付けるディップ法を用いる場合、外部電極の厚みが比較的厚くなるため、所望の製品サイズに対して、素体のサイズそのものを小さく設計する必要がある。
【0058】
また、素体10に外部電極用パターンを設ける必要がないので、素体10の内部の回路素子(コイルパターン等)の設計に自由度が生まれる。
【0059】
また、素体10は、シート積層工法により形成されているので、第1層11と第2層12とをシートの積層方向に形成することができ、第1層11と第2層12との間の境界を直線状に形成できる。したがって、第2層12に形成される第1、第2外部電極31,32のエッジが直線状に形成される。例えば、第1、第2外部電極31,32のエッジが濡れ上がって凸形状とならない。これにより、積層インダクタ1を回路基板に実装する場合に、意図しない接続部分が第1、第2外部電極31,32に接続されることがない。
【0060】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の電子部品としての積層インダクタは、第1実施形態とは、素体の第1層および第2層の材料が相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。
【0061】
第2実施形態では、第1層は、Ni−Zn系フェライトからなり、第2層は、Bi−Ni−Zn系フェライトからなる。したがって、Bi−Ni−Zn系フェライトの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低いので、第2層に選択的に第1、第2外部電極を形成できる。
【0062】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の電子部品としての積層インダクタは、第1実施形態とは、素体の第1層および第2層の材料が相違する。この相違する構成のみを以下に説明する。
【0063】
第3実施形態では、第1層は、Ni−Zn系フェライトからなり、第2層は、金属磁性粉を含むガラスからなる。したがって、金属磁性粉の一部が、ガラスの表面に露出するので、金属磁性粉を含むガラスの比抵抗は、Ni−Zn系フェライトの比抵抗よりも低くなり、第2層に選択的に第1、第2外部電極を形成できる。
【0064】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の電子部品としての積層インダクタを示す断面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、素体の製法が相違する。この相違する構成を以下に説明する。
【0065】
図4に示すように、第4実施形態では、素体10Aは、印刷積層工法により形成されている。印刷積層工法とは、第1層11A(第1部分)の材料から構成される第1ペーストと第2層12A(第2部分)の材料から構成される第2ペーストとを印刷により積層し焼成して、素体10Aを作製する工法をいう。第1層11Aの材料は、第1実施形態の第1層11の材料と同じであり、第2層12Aの材料は、第1実施形態の第2層12の材料と同じである。
【0067】
図5Aに示すように、第2層12Aの材料から構成される第2ペースト52Aを、基板50上の互いに離隔した2箇所に印刷し、第2ペースト52Aを乾燥させる。その後、
図5Bに示すように、2箇所の第2ペースト52Aの間を埋めるように、第1層11Aの材料から構成される第1ペースト51Aを印刷し、第1ペースト51Aを乾燥させる。
【0068】
その後、
図5Cに示すように、第1ペースト51A上に、コイルパターン部23を印刷して乾燥させる。その後、
図5Dに示すように、1層目の第1ペースト51A上に、2層目の第1ペースト51Aを印刷して乾燥させる。
【0069】
その後、
図5Eに示すように、1層目の第2ペースト52A上に、2層目の第2ペースト52Aを印刷して乾燥させる。以上の工程を繰り返し、第1ペースト51Aと第2ペースト52Aとを印刷により積層して積層体を形成し、積層体を焼成して、
図4に示す素体10Aを作製する。このように作製された素体10Aでは、第1層11Aおよび第2層12Aの積層方向と直交する方向の両端に、第2層12Aを配置することができる。
【0070】
したがって、素体10Aは、印刷積層工法により形成されているので、第2層12Aを設ける位置の自由度が向上する。したがって、第2層12Aに形成される第1、第2外部電極の構造の自由度が上がる。例えば、第1、第2外部電極を素体10Aの何れの面に設けることができ、L字電極や底面電極の形成が可能となる。
【0071】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態の電子部品としての巻線インダクタを示す斜視図である。第5実施形態は、第1実施形態とは、電子部品の用途が相違する。この相違する構成を以下に説明する。
【0072】
図6に示すように、第5実施形態の電子部品は、巻線インダクタ1Aである。巻線インダクタ1Aは、コア100と、コア100に巻回されたワイヤ120と、コア100に設けられた外部電極131,132とを有する。コア100は、素体の一例である。ワイヤ120は、コイル導体の一例である。
【0073】
コア100は、巻芯部103と、巻芯部103の軸方向の一端に設けられた第1鍔部101と、巻芯部103の軸方向の他端に設けられた第2鍔部102とを有する。コア100は、第1部分111と第2部分112とを含む。第1部分111の材料は、第1実施形態の第1層11の材料と同じであり、第2部分112の材料は、第1実施形態の第2層12の材料と同じである。
【0074】
コア100の回路基板に実装される側を底面側としたとき、第1鍔部101の底面部および第2鍔部102の底面部は、第2部分112から構成され、第1鍔部101の底面部を除く部分と、第2鍔部102の底面部を除く部分と、巻芯部103とは、第1部分111から構成される。
【0075】
外部電極131,132は、コア100の第2部分112の外表面に電気めっきにより形成される。外部電極131,132の材料は、第1実施形態の外部電極31,32の材料と同じである。第1外部電極131は、第1鍔部101の底面部の第2部分112を覆う。第2外部電極132は、第2鍔部102の底面部の第2部分112を覆う。
【0076】
ワイヤ120は、巻芯部103に螺旋状に巻回されている。ワイヤ120の第1端部121は、第1鍔部101の第1外部電極131に電気的に接続され、ワイヤ120の第2端部122は、第2鍔部102の第2外部電極132に電気的に接続される。ワイヤ120は、例えば、Cu、Ag、Au等の導体と導体を被覆する被膜とを有する。
【0077】
次に、巻線インダクタ1Aの製造方法について説明する。
【0078】
図7Aに示すように、プレス成型金型160内に第1押圧部161が挿入された状態で、第2部分112の材料から構成される第2粉末材152を、金型160内で第1押圧部161上に投入する。その後、
図7Bに示すように、第1部分111の材料から構成される第1粉末材151を、金型160内で第2粉末材152上に充填する。
【0079】
その後、
図7Cに示すように、第2押圧部162を、第1押圧部161と反対側から金型160内に挿入する。そして、
図7Dに示すように、第2押圧部162を第1押圧部161に近づけることで、第1押圧部161と第2押圧部162とで、第1粉末材151および第2粉末材152を加圧して、成型体150を形成する。
【0080】
その後、
図7Eに示すように、第2押圧部162を金型160から抜き取り、第1押圧部161にて成型体150を金型160から押し出す。成型体150の形状は、第1鍔部101と第2鍔部102と巻芯部103とを有するコア100の形状に一致する。したがって、成型体150の第1鍔部101の底面に相当する部分と、成型体150の第2鍔部102の底面に相当する部分とが、第2粉末材152から構成される。その後、成型体150を焼成して、コア100を作製する。
【0081】
その後、
図6に示すように、コア100をめっき液に浸漬し、電気めっきを行う。すると、コア100の第2部分112の表面の比抵抗は、小さいので、第1鍔部101側の第2部分112の表面に、第1外部電極31が形成され、第2鍔部102側の第2部分112の表面に、第2外部電極32が形成される。
【0082】
したがって、前記巻線インダクタ1Aによれば、第1、第2外部電極131,132は、コア100における小さな表面の比抵抗を有する第2部分112に、電気めっきにより形成されている。したがって、コア100に電気めっきにより第1、第2外部電極131,132を形成するために、コア100に導電化材料を付着させたり、コア100に外部電極用パターンを設ける必要がなく、部材数および製造工数を減らすことができる。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第5実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0084】
前記実施形態では、電子部品の一例として、積層インダクタや巻線インダクタとしているが、内部電極を有する積層コンデンサや、内部電極を有さない積層コンデンサとしてもよく、また、PTCサーミスタやNTCサーミスタとしてもよく、その他、セラミックから構成される素体と素体に設けられた外部電極とを有する電子部品であれば如何なる電子部品としてもよい。
【0085】
前記実施形態では、素体の材料の一例として、上述のように列挙しているが、表面の比抵抗の異なる第1部分と第2部分とを有していれば、いかなる材料であってもよい。また、素体の材料は、磁性体であっても、非磁性体であってもよい。
【0086】
前記実施形態では、コイル導体を、素体の第1部分に設けているが、コイル導体の少なくとも一部を、素体の第2部分に設けるようにしてもよい。
【0087】
前記実施形態では、素体の第1部分および第2部分を、層で構成しているが、第1部分をブロックで構成し、第2部分を塗料などで塗布するようにしてもよい。
【0088】
前記実施形態では、素体をシート積層工法や印刷積層工法により形成しているが、3Dプリンタなどにより形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
次に、本発明の第1実施形態の実施例を説明する。
【0090】
Ni−Zn系のフェライト原料と水系のバインダーを含むスラリーをシート状に成形して、第1のグリーンシートを成形した。また、Mn−Zn系のフェライト原料と水系のバインダーを含むスラリーをシート状に成形して、第2のグリーンシートを成形した。
【0091】
作製した各グリーンシートの所定の位置にビアホールを形成した後、グリーンシートの上面に導電性ペーストを印刷してコイルパターンを形成した。
【0092】
次に、外部電極を形成したい部分(第2部分)に第2グリーンシートを使い、外部電極を形成したくない部分(第1部分)に第1グリーンシートを使用し、複数のグリーンシートを積層圧着することにより、未焼成の積層体を作製した。
【0093】
未焼成の積層体を必要に応じてカットした後、900℃で焼成することにより、焼結された素体を得た。その後、バレル研処理により素体の面取りを行った後、外部電極を形成するために素体に電気めっきを施す。
【0094】
この時、Mn−Zn系のフェライトからなる素体の表面のみに、めっきが成長し、Ni−Zn系のフェライトからなる素体の表面には、めっきは成長しない。めっきは、Niめっき、あるいは、Snめっきである。Niめっき後にSnめっきを行い、2層構造としても良く、Niめっきの下地としてAgやCuのめっき膜を形成しても良い。以上より、螺旋状コイル導体を有する積層インダクタを得た。
【0095】
Mn−Zn系フェライトの組成の一例を説明する。50〜65mol%のFe
2O
3と、23〜40mol%のMnOと、5〜27mol%のZnOとを基本組成とする。この比抵抗は、10〜600Ω・cmとなる。
【0096】
Ni−Zn系フェライトの組成の一例を説明する。40〜50mol%のFe
2O
3と、5〜45mol%のNiOと、1〜32mol%のZnOと、5〜15mol%のCuOとを基本組成とする。この比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きくなる。
【0097】
(実施例2)
次に、本発明の第2実施形態の実施例を説明する。
【0098】
実施例2は、実施例1のMn−Zn系フェライトに代えて、Bi入りのNi−Zn系のフェライトを用いている。それ以外は、実施例1と同じであるので、説明を省略する。
【0099】
未焼成の積層体を900℃で焼成する際、第2のグリーンシート部分では添加されたBiによりフェライトの異常粒成長が発生して、Bi入りのフェライト部分の比抵抗が低下する。
【0100】
Bi−Ni−Zn系フェライトの組成の一例を説明する。40〜50mol%のFe
2O
3と、5〜45mol%のNiOと、1〜32mol%のZnOと、5〜15mol%のCuOとを基本組成とする。この主成分100重量%に対して、少量添加物としてBi
2O
3を0.05〜1.0wt%の範囲で含有させる。この比抵抗は、10
3Ω・cmよりも小さくなる。
【0101】
Ni−Zn系フェライトの組成の一例を説明する。40〜50mol%のFe
2O
3と、5〜45mol%のNiOと、1〜32mol%のZnOと、5〜15mol%のCuOとを基本組成とする。この比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きくなる。
【0102】
(実施例3)
次に、本発明の第3実施形態の実施例を説明する。
【0103】
実施例3は、実施例1のMn−Zn系フェライトに代えて、金属磁性粉を含むガラスを用いている。それ以外は、実施例1と同じであるので、説明を省略する。
【0104】
金属磁性粉は、導電性を有する。焼成後の素体の面取り時のバレル処理の際、外部電極を形成する部分(第2部分)の表面の金属磁性粉が研磨され、第2部分の表面に、金属磁性粉の内部が露出される。このため、第2部分の表面の比抵抗が低下する。その結果、第2部分に外部電極をめっきで形成することができる。
【0105】
金属磁性を含むガラスの組成の一例を説明する。磁性金属材料として、Feが92.0重量%であり、Siが3.5重量%であり、Crが4.5重量%であって、平均粒径が6μmのFe−Si−Cr系磁性金属粉末を用意した。また、ガラス材料として、SiO
2が79重量%であり、B
2O
3が19重量%であり、K
2Oが2重量%であり、軟化点が760℃であり、平均粒径が1μmのホウケイ酸アルカリガラスのガラス粉末を用意した。次いで、磁性金属粉末が88重量%となり、ガラス粉末が12重量%となるように、前記磁性金属材料及び前記ガラス材料を混合し、メカノフュージョン法を使用して、磁性金属材料の表面をガラス材料で被覆させ、磁性体原料を作製した。この比抵抗は、0.1〜10Ω・cmとなる。
【0106】
Ni−Zn系フェライトの組成の一例を説明する。40〜50mol%のFe
2O
3と、5〜45mol%のNiOと、1〜32mol%のZnOと、5〜15mol%のCuOとを基本組成とする。この比抵抗は、10
5Ω・cmよりも大きくなる。
【0107】
(実施例4)
次に、本発明の第4実施形態の実施例を説明する。
【0108】
焼成後に高い比抵抗を有する磁性体(例えばNi−Zn系フェライト)ペーストと、焼成後に低い比抵抗を有する磁性体(例えばMn−Zn系フェライト)ペーストと、コイル導体用の導電(例えば銀)ペーストを用意する。
【0109】
それらを所定のパターンで印刷しながら積層する際に、外部電極を形成する部分(第2部分)を低い比抵抗となるペーストにて形成し、それ以外(第1部分)を高い比抵抗となるペーストで形成して、未焼成の積層体を作成する。なお、コイル導体は、導電ペーストを使用し、コイルパターンを作製した。
【0110】
この未焼成の積層体を必要に応じてカットした後、焼成することにより、焼結された素体を得た。外部電極をめっきで形成する部分は実施例1と同じである。