(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。まず、
図1を用いて本実施形態にかかるダイジェスト映像生成装置100を含むシステムの構成について述べる。ダイジェスト映像生成装置100は、
図1に示すように車両内ネットワーク10を介して、車載カメラ20、車載センサ30、ナビECU40、ディスプレイ50、スピーカ60、バイブレータ70などと通信可能に接続されている。
【0022】
車載カメラ20は、例えば車両の前方を撮影するように、フロントバンパや車室内のルームミラー付近やフロントガラスの上端などに設けられたカメラである。車載カメラ20が撮影した映像信号は、ダイジェスト映像生成装置100に逐次出力される。この車載カメラ20が請求項に記載の映像撮影装置の一例に相当する。車載センサ30は、車両に搭載され、運転者による運転操作に関する情報、その運転操作の結果として表れる車両の挙動に関する情報を検出するセンサである。
【0023】
図1では、車載センサ30として、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ31、ブレーキペダルの踏み込み量もしくはマスタシリンダが発生するブレーキ圧を検出するブレーキセンサ32、ステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角センサ33を例示している。もちろん、車載センサ30に該当するセンサは、上述したセンサに限らない。例えば、トランスミッションのシフト位置を検出するポジションセンサや、車両に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ、水平面に対する車体の傾斜角度を検出する傾斜センサ、方向指示器(ウインカー)を作動させるためのウインカースイッチなども車載センサ30に該当する。
【0024】
ナビECU40は、周知のナビゲーション装置と同様の機能(ナビゲーション機能とする)を備える電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。ナビECU40は、現在位置を示す情報や、ユーザによって設定された目的地、走行経路の情報、車両周辺に存在する施設の情報(周囲環境情報とする)などをダイジェスト映像生成装置100に提供する。
【0025】
ディスプレイ50は、ダイジェスト映像再生装置200からの指示に基づいた画像(テキストを含む)を表示する。ディスプレイ50は、車両に搭載されたディスプレイでも良いし、携帯端末のディスプレイでもよい。なお、ディスプレイ50はヘッドアップディスプレイでもよい。
【0026】
スピーカ60は、ダイジェスト映像再生装置200からの指示に基づいて、音声(単なる音や、音楽を含む)を出力する。バイブレータ70は、ダイジェスト映像再生装置200からの指示に基づいて、内蔵されたモータを動作させることで、振動を発生させる装置である。バイブレータ70は、例えば、ステアリングやシートなど、ユーザの体に接する部分に設けられていればよい。
【0027】
ダイジェスト映像生成装置100は、車載カメラ20が撮影した映像(ドライブ映像とする)を、所定の規則に則って要約した映像(ダイジェスト映像とする)を生成する。また、ダイジェスト映像生成装置100は、ダイジェスト映像に対して、ダイジェスト映像の各場面が表す車両の運転状況に応じたBGM(background music)などを付加した再生用データを生成する。BGMのデータは、ダイジェスト映像の各画面における車両の運転状況を補足説明する役割を担う。このダイジェスト映像生成装置100の詳細については後述する。
【0028】
ダイジェスト映像再生装置200は、ダイジェスト映像生成装置100が生成した再生用データ(後述)に基づいて、ダイジェスト映像をディスプレイに表示するとともに、ダイジェスト映像と同期したBGMをスピーカ60から出力する。また、変形例で述べるように、再生用データに、所定のタイミングでバイブレータ70を振動させるように指示する振動指示データが含まれている場合には、その指示されたタイミングでバイブレータ70を振動させる。なお、振動指示データには、バイブレータ70を振動させるタイミングを示したスケジュール情報のほか、各タイミングで振動させる際の振動のパターンが定義されていてもよい。
【0029】
[ダイジェスト映像生成装置の構成]
以下、ダイジェスト映像生成装置100の構成について述べる。ダイジェスト映像生成装置100は、
図2に示すように、ドライブ映像取得部101、ドライブ映像データベース(以降、ドライブ映像DB)102、車両情報収集部103、走行環境情報収集部104、運転シーンデータベース(以降、運転シーンDB)105、運転シーン離散化部106、イベント抽出部107、速度テンポ設定部108、BGM生成部109、テキスト生成部110、ドライブ映像要約部111、及び、再生用データ生成部112を備えている。
【0030】
このダイジェスト映像生成装置100は、マイクロコンピュータ(以降、マイコン)によって実現され、ドライブ映像DB102及び運転シーンDB105を除く各部は、マイコンが備える図示しないCPUが所定のプログラムを実行することによって実現されるものである。つまり、CPUによって実現される各種機能を機能ブロック毎に分けて図示したものが
図2である。但し、これら各部は必ずしもソフトウェアにて実現されている必要はなく、その全部または一部をロジック回路等のハードウェアにて実現してもよい。
【0031】
なお、ドライブ映像DB102は書き換え可能な周知の記憶媒体によって実現され、また、運転シーンDB105は、不揮発性の記憶媒体によって実現されるものである。以下、各部の機能に付いて述べる。
【0032】
[ドライブ映像取得部]
ドライブ映像取得部101は、車載カメラ20が撮影した映像信号を逐次取得し、所定のエンコード処理を施して、ドライブ映像DB102に逐次格納する。このドライブ映像取得部101が請求項に記載の映像取得部に相当し、ドライブ映像DB102が請求項に記載の映像記憶部に相当する。
【0033】
なお、逐次格納されるドライブ映像は、ドライブ映像取得部101がその映像信号を取得した時刻を示す時間情報、言い換えれば撮影時刻を示す時間情報と対応付けられて保存される。以降では、車載カメラ20による撮影が開始してから撮影が終了するまでの車両の一連の走行(停車中も含む)を1つのトリップと称する。
【0034】
[車両情報収集部]
車両情報収集部103は、運転者による運転操作を表す運転データや、その運転操作の結果として表れる車両の挙動を表す挙動データを、車載センサ30から逐次取得する。また、車両情報収集部103は、運転データや挙動データをそれぞれ微分した微分データを生成する。
【0035】
車両情報収集部103は、或る時点における運転データ、挙動データ、及び微分データを含む多次元データを、その時点における運転挙動データとしてまとめて取り扱う。また、車両情報収集部103は、運転挙動データに、その運転挙動データを取得した時点を示す時間情報を付与して、運転シーン離散化部106、イベント抽出部107、速度テンポ設定部108等の各部に提供する。運転挙動データが請求項に記載の車両情報に相当し、車両情報収集部103が請求項に記載の車両情報取得部に相当する。
【0036】
なお、運転データとしては、例えば、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操作量(操舵角)、方向指示器の操作状態、トランスミッションのシフト位置、ワイパーの動作状態などを用いることができる。また、挙動データとしては、例えば、車両の走行速度、ヨーレート、加速度、水平面に対する車体の傾斜角などを用いることができる。
【0037】
以降では、運転挙動データに含まれる種別毎の情報を、運転挙動データの要素とも称する。例えば運転挙動データがアクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、走行速度を含む場合には、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、走行速度のそれぞれが、運転挙動データの要素に該当する。
【0038】
[走行環境情報収集部]
走行環境情報収集部104は、ナビECU40や車載カメラ20から、車両の走行に関連する環境の情報(走行環境情報とする)を逐次取得する。走行環境情報とは、例えば、車両の現在位置を示す現在位置情報や、現在位置情報から定まる走行軌跡情報、車両周囲の環境についての情報を表す周囲環境情報などが該当する。
【0039】
周囲環境情報には、車両の現在位置付近に存在する施設や、車両が走行している道路の名称、道路種別(例えば一般道路や高速道路など)などといった、周囲の地理的な情報を示す地理的環境情報が含まれる。
【0040】
また、トリップの目的地や経由地がナビECU40に設定されている場合には、目的地や経由地を示す情報や、案内経路情報なども走行環境情報に該当する。種々の走行環境情報は、例えばナビECU40から取得すれば良い。
【0041】
また、周囲環境情報としては、ナビECU40から提供される情報だけでなく、車載カメラ20が撮影した映像に対して周知の画像認識処理を実施することによって、抽出された情報も採用することができる。車載カメラ20の撮影した映像から抽出される情報とは、例えば信号のある交差点の通過等の地理的な情報のほか、特定のオブジェクト(車両や歩行者など)を認識することで得られる、先行車両や歩行者といった車両周辺に存在する移動体(又は固定物)と車両との位置関係についての情報である。つまり、周囲環境情報として、車両の周辺に存在する他の物体(車両や歩行者)との位置関係を示す動的環境情報を採用してもよい。
【0042】
走行環境情報収集部104は、取得した走行環境情報に、その取得時刻を示す時間情報を付加してイベント抽出部107に提供する。
【0043】
なお、走行環境情報には、その地域における天候や気温などの情報を含ませても良い。また種々の情報の取得元は、ナビECU40や車載カメラ20に限らない。種々の走行環境情報の一部又は全部は、例えば、ダイジェスト映像生成装置100と通信可能に接続されたスマートフォン等の携帯端末から取得してもよいし、ユーザによって入力されても良い。
【0044】
以上で述べたドライブ映像取得部101、車両情報収集部103、及び走行環境情報収集部104は、共通の(つまり、同期した)時間情報を用いており、各部は取得したデータにその取得時刻を示す時間情報を付与して、保存または他の機能部へ出力する。これによって、或る時点においてドライブ映像取得部101が取得したドライブ映像と、車両情報収集部103が取得した運転挙動データと、走行環境情報収集部104が取得した走行環境情報は、互いに対応付けられている。
【0045】
[運転シーンDB]
運転シーンDB105は、次に説明する運転シーン離散化部106が、車両情報収集部103から取得する運転挙動データに基づいて、一連のトリップを、運転状況の変化に対応する複数の区間(運転シーンとする)に分割(離散化)するために必要なデータを記憶している。一連のトリップを複数の運転シーンに離散化するために必要なデータとは、各運転状況の発生する確率を定義したデータや、或る運転状況から別の運転状況へと遷移する確率を定義したデータや、離散化された運転シーンがどのような運転状況を示しているかを特定するための複数の運転トピックを示すデータ等である。
【0046】
各運転トピックは、典型的な所定の運転状況における運転挙動データの各要素の分布パターン(基底特徴分布とする)を表したデータである。例えば、運転シーンDB105には、発進、停止、定速走行、カーブにおける旋回、交差点の右折及び左折、右側車線及び左側車線への車線変更などに対応する運転トピックのデータが格納されている、
各運転トピックのデータは、種々の試験によって予め定義された基底特徴分布、及び、その運転シーンを説明するために予め用意された複数のタグの分布を表す基底タグ分布から構成されている。基底特徴分布及び基底タグ分布についての詳細は、非特許文献1、及び、参考文献としての特開2014−235605号公報に開示されているため、ここでの説明は省略する。
【0047】
なお、特許文献1や、非特許文献1、及び参考文献はいずれも、本ダイジェスト映像生成装置100に関連する技術を開示した文献である。特許文献1、非特許文献1、及び参考文献をまとめて以降では関連文献と称する。
【0048】
[運転シーン離散化部]
運転シーン離散化部106は、車両情報収集部103から取得する運転挙動データと、運転シーンDB105に格納されているデータを用いて、トリップを複数の運転シーンに離散化する。そして、各運転シーンがどういった状況を表しているのかを解析し、類似した状況を示す複数の連続した運転シーンを、1つのグループ(シーングループとする)に統合する。運転シーン離散化部106が請求項に記載のシーン分割部に相当する。
【0049】
この運転シーン離散化部106が実施する具体的な処理の内容、つまり、運転挙動データに基づいてトリップを複数の運転シーンに離散化し、さらに、複数の運転シーンをシーングループに統合する方法については、既に上述の関連文献に開示されている。そのため、ここではその詳細な説明については省略する。なお、概略的には次の通りである。
【0050】
まず、運転シーン離散化部106は、周知の二重分節解析器(DAA:Double Articulation Analyzer)を利用して、
図3に示すように、トリップ中に収集された運転挙動データを時系列に並べたデータ(時系列データ)を、複数の部分系列に分節化する。1つの部分系列が、1つの運転シーンに相当する。
【0051】
図3の運転挙動の欄は、運転挙動データに含まれる種々の要素の時間変化を示しており、
図3の運転シーンの欄に示す矢印ブロック1つが、1つの運転シーンを表している。具体的には、9つの運転シーンSn1〜Sn9を図示している。
【0052】
なお、
図3では図の簡略化のため、運転挙動データの要素のうち、所定の4つの要素の時間変化を図示しているが、運転シーンを設定する上で用いられる運転挙動データの要素の数は4つに限らない。また、運転シーンを設定する上で、運転挙動データに含まれる全ての要素を用いる必要はない。ここでは一例として、運転挙動データに含まる要素のうち、アクセルペダル操作量、ブレーキペダル操作量、ステアリング操作量、走行速度、及び、これらの各々の微分データからなる8次元データに基づいて運転シーンを設定することとする。
【0053】
次に、運転シーン離散化部106は、運転シーン毎に、運転シーン中に現れる特徴量の分布を表す特徴量分布を生成し、その特徴量分布に、予め設定されている種々の運転トピックがどのような割合で含まれているかを表すトピック割合を算出する。トピック割合とは、運転シーンから生成された特徴量分布に対する、各運転トピックに対応する基底特徴分布の含有割合を表すものである。
【0054】
図3のトピック割合の欄は、運転シーン毎のトピック割合を表している。便宜上、ここでは1つの運転シーンを、4種類の運転トピック(運転トピックA、B、C、D)の混合によって表している。もちろん、1つの運転シーンを表すために用いられる運転トピックの種類は4つに限らない。例えば10や100等、5つ以上の運転トピックの混合によって表されてもよい。
【0055】
そして、運転シーン離散化部106は、複数の連続する運転シーンにおいて、トピック割合が類似しているかを判定し、トピック割合が類似している運転シーンを1つの運転グループにまとめる。
【0056】
或る運転シーンのトピック割合と、その次の運転シーンのトピック割合が類似しているか否かは、非特許文献1に開示の方法によって行えばよい。また、他の態様として、比較の対象とする複数の運転シーン毎のトピック割合において、運転トピック毎の比率の差の二乗の合計が所定の閾値以内となっている場合に、それらの運転シーンのトピック割合が類似していると判定してもよい。
【0057】
図3のシーングループの欄は、運転シーンSn1〜Sn9を、それぞれのトピック割合に基づいて、シーングループにまとめた結果を表している。具体的には、トピック割合が類似していると判定した運転シーンSn1〜Sn3をシーングループGr1として統合している。また、運転シーンSn4は前後の運転シーンSn3、Sn5とは類似していないため、そのまま1つのシーングループGr2となる。運転シーンSn5〜Sn9は、トピック割合の類似性からシーングループGr3としてまとめられる。
【0058】
なお、ここでは関連文献に開示に技術を援用することで、運転シーン離散化部106を実現する態様を例示したが、これに限らない。運転シーン離散化部106は、他の方法によって実現されても良い。例えば、特開2011−129010号公報に開示されているように、運転挙動データと運転シーンとの対応関係を予め定義しておき、逐次取得する運転挙動データから運転シーンを特定するとともに、トリップを複数の運転シーンに離散化する態様としてもよい。ただし、その場合、運転シーンと運転挙動データとの対応関係を示すデータを定義しておく必要があるとともに、さらに、運転シーンの類似性からシーングループにまとめるアルゴリズムも別途設計する必要がある。
【0059】
一方、本実施形態のように非特許文献1を援用すれば、運転シーンの定義を予め与えることなく、運転挙動データからトリップを複数の運転シーンに分割でき、さらには、類似性の高い運転シーンを1つのシーングループに統合することができる。
【0060】
以上のようにして設定された運転シーン、及びシーングループについての情報は、イベント抽出部107や、速度テンポ設定部108等の各部に提供される。なお、或る運転シーンについての情報(シーン情報)とは、その運転シーンの開始時点及び終了時点を示す時間情報、その運転シーンのトピック割合、その運転シーンが属するシーングループを表す情報などが該当する。
【0061】
シーングループについての情報(シーングループ情報)とは、運転シーン毎のシーン情報をシーングループ単位で管理する情報であって、各シーングループに属する運転シーンのシーン情報にアクセスするための情報(例えばポインタ)や、シーングループの開始時点及び終了時点を示す時間情報などを含む。
【0062】
もちろん、シーン情報やシーングループ情報が、上述した全ての情報を備えている必要はない。シーン情報やシーングループ情報が備えるべき情報の種類は適宜設計されればよい。なお、ここでは一例としてシーングループ情報を導入し、各運転シーンのシーン情報をシーングループ単位で管理可能な構成を例示しているが、これに限らない。シーングループ情報は無くても良い。
【0063】
[イベント抽出部]
イベント抽出部107は、車両情報収集部103が収集及び算出した運転挙動データの時系列データ、走行環境情報収集部104が収集した走行環境情報、及び、運転シーン離散化部106から提供されるシーン情報の少なくとも1つに基づいて、走行に関する種々のイベントを抽出する。
【0064】
走行に関するイベントとは例えば、高速走行、急加速操作、急ブレーキ操作、車線変更、観光名所などの所定のPOI(Point of Interest)付近の通過や、目的地への到着、高速道路への進入、高速道路から一般道路への復帰などである。イベント抽出部107が請求項に記載のイベント検出部に相当する。
【0065】
本実施形態では一例としてイベント抽出部107は、関連文献の技術を援用し、シーン情報に含まれる運転シーンのトピック割合を解析することで、走行に関する種々のイベントを抽出する。
【0066】
具体的には、運転シーンのトピック割合と、各運転トピックの基底タグ分布に基づいて、その運転シーンがどのような運転状況を示しているかを表す情報(シーンラベルとする)を、その運転シーンと対応付ける。例えば、シーンラベルとしては、走行中であるか否か、アクセルペダルを踏み混んでいるか否か、旋回しているか否かといった運転状況を表すものがある。また、1つの運転シーンに複数のシーンラベルが付与される場合もある。
【0067】
このように関連文献に開示の技術を援用することによって、抽出すべき種々のイベントのそれぞれに対して予め定義を与えることなく、自動的にイベントを抽出することができる。例えば高速走行、急ブレーキ操作、車線変更などのイベントの発生(及び継続)を検出する。
【0068】
もちろん、イベント抽出部107は、車両情報収集部103が収集及び算出した運転挙動データや走行環境情報収集部104が収集した走行環境情報から、走行に関する種々のイベントを抽出してもよい。運転挙動データから抽出されるイベントとは、例えば、急ブレーキや、急加速、急ハンドルといった操作などである。走行環境情報から抽出されるイベントとは、例えば所定のPOIの通過や、目的地への到着、高速道路への進入、高速道路から一般道路への復帰、先行車両の接近などが該当する。
【0069】
もちろん、イベント抽出部107は、他の方法によってイベントを抽出してもよい。例えば、車載カメラ20が撮影した画像に対して周知の画像認識処理を実施して、所定の検出対象とするオブジェクトを検出した場合に、そのオブジェクトに対応するイベントが発生したと判定してもよい。
【0070】
ところで、イベント抽出部107が抽出するイベントの種類は大きくは、運転シーンの分割に寄与するイベントと、運転挙動データに含まれる要素のうち、運転シーンの設定には寄与しない要素に起因するイベントと、運転挙動データには表れない情報に由来するイベントの3つに分類される。
【0071】
運転挙動データに含まれる要素のうち、運転シーンの設定には寄与しない要素に起因するイベントとは、例えば、仮にウインカースイッチの操作情報が運転シーンの分割に用いられない場合には、ウインカースイッチの操作が該当する。運転挙動データに含まれない情報に由来するイベントとは、例えば、走行環境情報に由来するイベントであって、例えば前述の高速道路への進入/退出などが該当する。
【0072】
図4は、イベント抽出部107が抽出するイベントと、シーングループとの関係を示している。時刻T10は、車両が高速道路の入口の通過というイベントを検出した時刻を表しており、T11から時刻T12までは、車両が高速走行状態となっているというイベントを検出している時間帯を表している。また、時刻T13から時刻T14までは、車線変更中であるといったイベントを検出している時間帯を表している。
【0073】
高速道路への進入といった走行環境情報に起因するイベントは、運転シーン離散化部106による運転シーンの設定には、直接的には影響しない。したがって、シーングループの途中において生じたイベントとして処理される。
【0074】
車両が高速走行している状態は、走行速度などの、運転シーンの設定に寄与する運転挙動データに表れるとともに、高速走行の前後には加速や減速といった、類似性の薄いトピック割合を発現させる運転操作が存在するため、1つのシーングループが1つのイベントとして抽出される。なお、高速走行中に生じた別のイベントによって、1つの高速走行状態が複数のシーングループに分割されることもある。高速走行しているといったイベントは、運転シーンのトピック割合を解析することで検出されても良いし、走行速度などに対して所定の条件を設定することで抽出されても良い。
【0075】
また、本実施形態においては一例としてウインカースイッチの操作といった情報は、運転シーンの設定には用いない態様としている。運転挙動データに含まれる要素であっても、運転シーンの離散化に直接的には影響しない要素に起因するイベントは、POIの通過などと同様に、シーングループの途中において生じたイベントとして処理される。
【0076】
以上のようにしてイベント抽出部107が抽出した種々のイベントについての情報(イベント情報)は、イベント情報として、BGM生成部109、テキスト生成部110等に提供される。イベント情報は、イベントの内容(種類)や、そのイベントが発生(及び終了)した時刻を示す時間情報、そのイベントが含まれる運転シーンを表す情報などが該当する。もちろん、イベント情報がこれらのすべての情報を備えている必要はない。イベント情報が備える情報は適宜設計されればよい。
【0077】
[速度テンポ設定部]
速度テンポ設定部108は、
図5に示す3つのステップS1〜S3を実施することで、トリップ中に撮影された一連のドライブ映像のうち、各運転シーンに対応する区間の再生速度を設定するとともに、その運転シーンに対応する区間を再生している間において再生するBGMのテンポを決定する。
【0078】
図5に示すフローは、所定のタイミングで実施されればよく、例えばユーザから再生用データの作成を指示する操作を受け付けた時や、トリップの終了時、シーングループの切れ目を検出した時等に実施されればよい。なお、以降において、トリップ中に撮影された一連のドライブ映像のうち、或る運転シーンに対応する区間のことを、運転シーンに対応する映像区間とも称する。この速度テンポ設定部108が請求項に記載の再生速度設定部に相当する。
【0079】
以下、各ステップの内容を説明する。まず、ステップS1において速度テンポ設定部108は、運転シーンが継続した時間の長さに応じて、その運転シーンに対応する映像区間の再生速度を仮設定する。
【0080】
継続時間が長い運転シーンに対応する映像区間は、略同一な運転状況が継続している状況において撮影されているため、運転状況についての単位時間当りの情報量が相対的に少ない。言い換えれば、継続時間が短い運転シーンに対応する映像区間は、継続時間が長い運転シーンに対応する映像区間よりも、運転状況に関する単位時間当りの情報量が多いといえる。
【0081】
そこで、速度テンポ設定部108は、継続時間が長い運転シーンに対応する映像区間の再生速度を、継続時間が短い運転シーンに対応する区間の再生速度よりも速くなるように、それぞれの区間の再生速度を算出する。継続時間が長い運転シーンに対応する映像区間ほど速い再生速度とすることで、運転シーン1つ当りの再生時間を均一化する。
【0082】
例えば、速度テンポ設定部108は、運転シーンの長さに所定の比例定数を乗じることにより得た乗算結果を、その運転シーンに対応する映像区間の再生速度として定める。ただし、算出された再生速度が、所定の最大速度(例えば10倍速)を超えた場合には、その運転シーンの再生速度を最大速度に制限する。再生速度を過度に速めてしまうと、それを視聴した場合に、内容の理解が困難になる可能性が生じるためである。
【0083】
図6は、運転シーンの継続時間と、運転シーンに対応する映像区間の再生時間と、運転シーン毎に設定した再生速度との関係を示す概念図である。
図6に示すように、速度テンポ設定部108は、継続時間が長い運転シーンに対応する映像区間ほど速い再生速度とすることによって、その区間の再生時間を短縮する。
【0084】
また、速度テンポ設定部108は、運転シーンの切り替わり部分については、再生速度を予め規定した速度(例えば2倍速)まで落とす。これによりシーンの遷移を強調する。運転シーンの切り替わり部分とは、運転シーンの切れ目の前後所定時間(例えば0.5秒)を指す。
【0085】
さらに、再生速度が瞬間的に変化させると、視聴者は非常に見難く感じたり、違和感を覚えたりする。そのため、速度テンポ設定部108は、急激な再生速度の変化を抑制すべく、再生速度を変更する場合には、徐々に変化するように再生速度を算出する。
【0086】
なお、本実施形態では、各運転シーンに対応するドライブ映像の再生速度の倍率は、基本的には所定の規定値(例えば2倍)以上とする一方、運転シーンの継続時間が所定の閾値以下となっている場合には、その運転シーンの再生速度の倍率は規定値以下の値(例えば1倍)とする。
【0087】
これは、非常に短い運転シーンのドライブ映像を、さらに短い時間で再生してしまうと、ユーザによる内容の理解が困難になってしまうためである。また、運転シーンの継続時間が短いということは、運転状況が細かく変化していることを示唆しており、重要な情報を含んでいる可能性が高い。そのような観点からも、運転シーンの継続時間が所定の閾値以下となっている場合には、その運転シーンの再生速度の倍率を規定値以下の値(ここでは1倍速)とすることが好ましい。
【0088】
なお、他の態様として、種々の運転シーンのうち、特に強調するべき運転シーンに対しては、再生速度の倍率を規定値以下の値(例えば1倍や、0.5倍)に落とすことで、強調してもよい。特に強調するべき運転シーンとする条件は適宜設計されればよく、例えば、イベント抽出部107で急ブレーキなどの危険な運転操作に対応するイベントが抽出された運転シーンとすればよい。これにより、トリップ中に撮影されたドライブ映像のうち、特にユーザが確認すべき部分をダイジェスト映像において強調して提示することができる。
【0089】
以上の処理が完了すると速度テンポ設定部108は、ダイジェスト映像において各運転シーンに対応する映像区間が開始される位置(時刻情報)を算出する。ダイジェスト映像における各運転シーンに対応する区間の再生時間は、その運転シーンに対してステップS1で仮設定した再生速度と、その運転シーンの継続時間とから算出すればよい。そして、各運転シーンに対応する区間ごとの再生時間を積み重ねることで、ダイジェスト映像における各運転シーンに対応する映像区間が開始される位置(時刻情報)を算出する。算出した運転シーン毎のダイジェスト映像における開始位置は、シーン情報に追加されればよい。
【0090】
このようにしてダイジェスト映像における運転シーン毎の開始位置が特定されることによって、ダイジェスト映像におけるシーングループが切り替わる時点を特定できるようになる。
【0091】
次のステップS2では、速度テンポ設定部108は、運転シーン離散化部106が生成したシーン情報と、車両情報収集部103が収集した運転挙動データに基づいて、ダイジェスト映像に付与するBGMのテンポを変化させる時点(以降、テンポ変化点)を設定する。また、設定したテンポ変化点の間におけるBGMのテンポとして採用しうる値の範囲(以降、テンポ範囲)を決定する。
【0092】
まず、速度テンポ設定部108は、運転シーン離散化部106が生成したシーン情報に基づいて、ダイジェスト映像においてシーングループが切り替わる時点を特定し、シーングループの切り替わり点をテンポ変化点に設定する。これにより、1つのシーングループが継続している間のBGMのテンポは一定となる。
【0093】
次に、速度テンポ設定部108は、運転挙動データに基づいて、あるテンポ変化点から次のテンポ変化点までの間におけるテンポ範囲を決定する。ここでは、テンポ変化点間における車両の走行速度の平均値(つまり平均車速)に応じて、あるテンポ変化点から次のテンポ変化点までの間におけるテンポ範囲を決定することとする。なお、テンポ変化点とは、シーングループの切り替わり点であるため、あるテンポ変化点から次のテンポ変化点までの時間帯とは、或る1つのシーングループが継続している時間帯を意味している。
【0094】
具体的に、速度テンポ設定部108は、シーン情報と、走行速度の時系列データに基づいてシーングループ毎の平均車速を算出する。
図7の走行速度の欄に示すグラフにおいて、実線はシーングループ毎の走行速度の時間変化を表しており、一点破線は、そのシーングループにおける平均車速を表している。平均車速の算出方法は周知の方法を援用すれば良い。
【0095】
そして、速度テンポ設定部108は、以上で求めたシーングループ毎の平均車速に基づいて、そのシーングループが継続している時間帯におけるテンポ範囲を決定する。例えば速度テンポ設定部108は、
図8に示すような、平均車速とテンポ範囲との対応関係を定義したデータを参照し、シーングループの平均車速に対応するテンポ範囲を、そのシーングループに対応するテンポ範囲として採用する。
【0096】
なお、平均車速とテンポ範囲との対応関係を定義したデータは、平均車速が速いほど、速いテンポからなる範囲となるように設定されているものとする。これによって、速度テンポ設定部108は、シーングループの平均車速が速いほど、相対的に速いテンポからなる範囲を採用することとなる。例えば、平均車速が20km/hのシーングループには、そのテンポ範囲を60〜90BPMに設定し、平均車速が80km/hのシーングループには、そのテンポ範囲を150〜180BPMに設定する。
【0097】
なお、
図8では平均車速とテンポ範囲との対応関係を示すデータをテーブル形式で表しているが、平均車速とテンポ範囲との対応関係は、その他、マップや関数によって表されていてもよい。
【0098】
そして、ステップS3では、ステップS1で仮設定した運転シーン毎の再生速度と、ステップS2で設定したシーングループ毎のテンポ範囲に基づいて、シーングループ毎のBGMのテンポの値を決定するとともに、運転シーン毎の再生速度を必要に応じて調整する。
【0099】
具体的には、速度テンポ設定部108は、
図9に示すように、テンポの変化点(シーングループの切り替わり点)が楽曲の切れ目となるように、テンポの値を、シーングループ毎に設定されたテンポ範囲内において調整する。ここでは、楽曲における4小節を1つのまとまり(1つのフレーズ)として扱い、ちょうど1つのフレーズが終わる瞬間を楽曲の切れ目とする。つまり、或るシーングループから別のシーングループに移った時には新しいフレーズが始まるとともに、各シーングループ内には、4小節からなる1つのフレーズが整数個含まれるようにテンポの値を設定する。
【0100】
一例として、速度テンポ設定部108は、次のように各シーングループにおけるテンポの値を決定すればよい。速度テンポ設定部108は、或るシーングループに対するテンポの値を決定する場合、例えばテンポ範囲の中央値を初期値として、そのシーングループの再生時間に対して適切なフレーズ数を算出する。
【0101】
そして、シーングループの再生時間に対して、算出されたフレーズ数に応じたBGMの演奏時間が不足する場合には、テンポ値を中央値よりも遅くすることで、シーングループの切り替わり点が楽曲の切れ目となるように調整する。また、シーングループの再生時間に対して、算出されたフレーズ数に応じたBGMの演奏時間が冗長となる場合には、テンポの値を中央値よりも速くすることで、シーングループの切り替わり点が楽曲の切れ目となるように調整する。なお、テンポを速くすれば、1フレーズを再生するために要する時間は短くなり、テンポを遅くすれば、1フレーズを再生するために要する時間は長くなる。
【0102】
また、速度テンポ設定部108は、上述した処理の結果、シーングループの切り替わり点と楽曲の切れ目とを一致させるためのテンポ値が、ステップS2で設定されたテンポ範囲を超えてしまう場合には、そのシーングループに対応するテンポ値を、ステップS2で設定されたテンポ範囲の限界値に設定する。そして、そのシーングループに属する運転シーン毎の再生速度を調整することで、シーングループの切り替わり点と、楽曲の切れ目とを一致させる。
【0103】
速度テンポ設定部108によって運転シーン毎の再生速度の調整が行われた場合には、その調整された再生速度を、その運転シーンの再生速度として決定する。また、再生速度の調整が行われなかった運転シーンについては、ステップS1で仮設定された再生速度を、その運転シーンの再生速度として採用する。なお、速度テンポ設定部108によって運転シーン毎の再生速度の調整が行われた場合には、各運転シーンのシーン情報に含まれているダイジェスト映像における開始位置を更新する。
【0104】
運転シーン毎に決定された再生速度の情報は、BGM生成部109、及びドライブ映像要約部111に出力される。また、速度テンポ設定部108によって決定されたテンポ変化点、及びテンポ変化点後において設定されるべきテンポ値は、テンポ情報としてBGM生成部109に出力される。
【0105】
なお、ここでは運転シーン毎の再生速度を設定する処理と、シーングループ毎のBGMのテンポを設定する処理を、1つの機能ブロック(つまり速度テンポ設定部108)が実施する態様とするがこれに限らない。例えば、速度テンポ設定部108は、運転シーン毎の再生速度を設定する処理を担当する再生速度設定部と、BGMのテンポの変化点や変化点後のテンポを決定する処理を担当するテンポ決定部といった、より細かい機能ブロックに分離していてもよい。
【0106】
[BGM生成部]
BGM生成部109は、速度テンポ設定部で設定したテンポ情報と、イベント抽出部107が抽出したイベント情報から、ダイジェスト映像に付与するBGMのデータを生成する。具体的には、BGMとして予め準備している楽曲のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データに、テンポ変化点のタイミングでテンポチェンジを入れる。テンポチェンジの結果、設定されるテンポの値は、速度テンポ設定部108が設定した値である。
【0107】
また、BGM生成部109は、イベント抽出部107が抽出したイベント情報に基づき、イベントが発生したタイミングで効果音をBGMに付与したり、イベントが発生している時間帯に対応する小節にアレンジを入れる。
【0108】
例えば、
図10に示すように、急ブレーキや所定のPOI通過、高速道路のゲートの通過などの、発生時間が相対的に短いイベントに対しては、BGMに効果音を付与することで、イベントの発生を表現する。BGMに付与する効果音として複数種類用意されている場合には、イベントの種類に応じて異なる種類の効果音を付与してもよい。
【0109】
また、高速走行や車線変更など、イベントの継続時間が相対的に長いと想定されるものは、BGMにアレンジを加える。アレンジの種類としては、ドラムのパターンの変更や、演奏に用いる楽器の種類の変更、曲調の変更などが該当する。
【0110】
なお、BGM生成部109が、イベントに対応する効果音を付与したり、アレンジを施すタイミングは、ダイジェスト映像においてそのイベントが表示されている時間帯とする。ダイジェスト映像における各イベントの発生及び終了のタイミングは、各運転シーンの継続時間、各運転シーンの再生速度、イベント情報とから特定されればよい。以上のようにして生成されたBGMデータは、再生用データ生成部112に出力される。このBGM生成部109が請求項に記載の伝達用データ生成部の一例に相当する。また、BGMのデータが伝達用データの一例に相当する。
【0111】
[テキスト生成部]
テキスト生成部110は、イベント抽出部107から提供されるイベント情報に基づいて、イベントの内容を示すテキストを生成する。例えば、イベント抽出部107によって、高速道路の料金所を通過するためにアクセルペダルの踏込を緩めたといったイベントが抽出されている場合には、その旨を示すテキストデータを生成する。なお、テキスト生成部110は、全てのイベントに対してテキストデータを生成してもよいし、予め定められた種別のイベントに対してのみ、テキストデータを生成してもよい。
【0112】
テキスト生成部110によって生成されたテキストデータは、そのテキストを表示すべきタイミングを示す情報が付加されて、再生用データ生成部112に出力される。テキストを表示すべきタイミングとは、そのテキストに対応するイベントがダイジェスト映像において表示されている時間帯である。ダイジェスト映像における各イベントの発生及び終了のタイミングは、各運転シーンの継続時間、各運転シーンの再生速度、イベント情報とから特定されればよい。
【0113】
[ドライブ映像要約部]
ドライブ映像要約部111は、各運転シーンに対応するドライブ映像のデータを、速度テンポ設定部108によって設定された運転シーン毎の再生速度に基づいて間引くことにより、ドライブ映像を要約した動画(ダイジェスト映像とする)を作成する。元の映像を所定の再生速度で再生した映像とする動画編集技術は周知であるため、ここではその詳細な説明は省略する。作成したダイジェスト映像は、再生用データ生成部112に出力する。
【0114】
なお、ドライブ映像DB102に経時的に連続して記憶されるドライブ映像と、車両情報収集部103が取得した運転挙動データとは、同じ(同期した)時間情報を用いて、それらが得られた時刻が記録されている。従って、ドライブ映像要約部111は、トリップ中に撮影された一連のドライブ映像のうち、各運転シーンに対応する映像区間を特定することができる。それにより、各運転シーンに対応する映像区間をその運転シーンに設定された再生速度で再生した映像に編集することができる。
【0115】
[再生用データ生成部]
再生用データ生成部112は、ドライブ映像要約部111が生成したダイジェスト映像に、BGM生成部109が生成したBGMデータと、テキスト生成部110が生成したテキストデータを合成することで、再生用データを生成する。
【0116】
ダイジェスト映像へのテキストデータの合成とは、種々のイベントに対応するテキストを、そのイベントが表示されている時間帯に、キャプションとして表示されるように映像データ内に埋め込む処理を指す。映像にキャプションを追加する技術もまた、周知の方法を援用すれば良い。
【0117】
なお、一定時間当りに表示させるテキストの数の上限や、1つのテキストの表示を継続する時間の下限を設定しておき、再生用データ生成部112は、相対的に重要なイベントに対応するテキストが優先して表示するように、ダイジェスト映像に付加するテキストを取捨選択する態様としてもよい。イベントの重要度は、予めイベントの内容と重要度の対応関係を示すデータを用意しておき、そのデータに基づいて決定されれば良い。
【0118】
また、上述したようにして生成された再生用データにおいて、速度テンポ設定部108での再生速度及びテンポの調整により、ダイジェスト映像におけるシーングループの移り変わりとBGMにおけるテンポチェンジは同期している。BGM中に埋め込まれた効果音や、アレンジ処理が施された区間の時間帯も、ダイジェスト映像においてイベントが発生している場面と同期している。
【0119】
[本実施形態による効果]
以上の処理によって、ダイジェスト映像生成装置100が生成した再生用データは、例えば、ダイジェスト映像再生装置200に提供されて再生される。つまり、ダイジェスト映像再生装置200は、再生用データに基づいて、ダイジェスト映像をディスプレイ50に表示するとともに、ダイジェスト映像と同期したBGMをスピーカ60から出力する。
【0120】
ダイジェスト映像とともに出力されるBGMのテンポは、ダイジェスト映像におけるその場面の平均車速を表している。具体的には、平均車速を高い場面ほどBGMのテンポは速く、平均車速が遅い場面ほど、BGMのテンポは遅くなる。
【0121】
一般的に、ドライブ映像の各場面の再生速度を変えることでダイジェスト映像を作成した場合、ダイジェスト映像自体からは、その場面の走行速度を把握することが困難になってしまう。これは、ダイジェスト映像からユーザが感じる車両の速度感が、実際の走行速度によるものなのか、再生速度によるものなのかを、ユーザが識別することが困難となるからである。
【0122】
そのような課題に対し、比較構成として、ダイジェスト映像に、車両の走行速度をテキストやメータを模した画像(メータ画像とする)などで逐次表示することで、その場面における車両の走行速度をユーザに伝える構成も考えられる。
【0123】
しかしながら、走行速度を表すテキストやメータ画像をダイジェスト映像に重畳表示すると、ユーザの注視点が増え、ディスプレイ50に表示される情報が過多となってしまう恐れがある。特に、走行速度は連続的に変化する情報なので、走行速度を表すテキストやメータ画像は常時表示されることになる。また、走行速度は連続的に変化する情報であるとともに、視聴者は動的に変化する部分を注視してしまう傾向があるため、走行速度を表すテキストやメータ画像を表示することで、ダイジェスト映像そのものが注視されにくくなる恐れがある。
【0124】
一方、本実施形態の構成によれば、車両の走行速度はBGMのテンポとして表現されている。したがって、画面内への注視点を増やすことなく、ユーザに車両の走行速度といった、ダイジェスト映像だけでは伝えることが困難な情報を伝えることができる。車両の走行速度が請求項に記載の走行関連情報の一例に相当する。
【0125】
また、車両の加速度や減速度も、ダイジェスト映像においては、再生速度の変化に起因するものと混ざってしまい、分かりにくくなってしまう。本実施形態では、平均車速によってBGMのテンポを決定しているため、車両の走行速度の変化は、テンポの変化となって表現される。
【0126】
したがって、ユーザはBGMのテンポが変化したことから車両が加速したり減速したことをユーザに伝えることができる。具体的には、テンポが遅くなったことからユーザは、車両の走行速度が遅くなったことを直感的に認識でき、テンポが速くなったことからユーザは、車両の走行速度が速くなったことを直感的に認識できる。したがって、加速度や減速度もまた、請求項に記載の走行関連情報の一例に相当する。
【0127】
また、急な加速や減速といった瞬間的な(比較的短時間で終了する)イベントが生じた場合には、効果音が出力されるため、ユーザは効果音を聴くことで、何かイベントが発生したことを認識することができる。特に、効果音のパターン(メロディや音量等)を、イベントの内容に応じて使い分けることでユーザは、出力された効果音の種類から、その場面において発生したイベントの内容を認識することができる。
【0128】
さらに、高速走行や車線変更といった継続的なイベントが発生している間は、アレンジしたBGMが音声出力される。したがって、ユーザは、BGMにアレンジが加わったことから、継続的なイベントが発生していることを認識することができる。また、アレンジが解除されたことから、そのイベントが終了したことも認識することができる。
【0129】
なお、効果音やアレンジの付与は、MIDIデータにおける小節単位で実施するため、ユーザに違和感を与える恐れを低減することができる。特に、急な加減速といった瞬間的なイベントに対して、仮にイベント発生中のみに効果音を付与すると、発音時間が短いため、ユーザがその効果音を聞き逃す恐れがある。一方、本実施形態では小節単位で効果音を付与するため、ユーザによってイベントの発生を通知する効果音が聞き逃される恐れを低減することができる。
【0130】
また、以上の構成によれば、BGMのテンポが切り替わるタイミングと、運転シーン(及びシーングループ)が切り替わるタイミングとを同期させているため、ユーザがBGMのテンポが切り替わったことから、運転シーン及びシーングループが切り替わったことを認識できる。運転シーン及びシーングループの切り替わりとは、運転状況の変化に相当する。つまり、上述した構成によれば、ユーザは、BGMのテンポの変化から運転状況の変化を認識することができる。
【0131】
また、以上の構成によれば、走行速度や加減速といった車両の挙動を音声情報によってユーザに伝えることができるため、ディスプレイ50に表示する情報量を抑制することができる。それによって、画面内の空いたスペースに別の情報を表示できるようになる。
【0132】
例えば、上述したようにダイジェスト映像に、その再生されている場面を説明するテキストをキャプションとして表示しても、ユーザはその内容を認識しやすい。
【0133】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0134】
<変形例1>
以上では、種々のイベントを効果音や、BGMのアレンジによってユーザに伝える態様を例示したが、これに限らない。種々のイベントを、バイブレータ70を振動させることでユーザに伝えても良い。また、イベントの種類に応じて、バイブレータ70の振動パターン(振動の強さや、振動の間隔など)を変更してもよい。
【0135】
バイブレータ70を振動させることで、所定の情報をユーザに伝える態様とする場合、ダイジェスト映像生成装置100は、所定のタイミング、及び所定の振動パターンでバイブレータ70を振動させるように指示する振動指示データを生成する機能(振動指示情報生成部とする)を備える。
【0136】
振動指示データによってバイブレータ70を振動させるタイミングとは、BGM生成部109がBGMに効果音やアレンジを加えるタイミングと同様に、ダイジェスト映像において所定のイベントに対応する場面が表示されるタイミングである。
【0137】
そして、再生用データ生成部112は、ダイジェスト映像等のデータと、振動指示生成部が生成した振動指示情報とをパッケージ化したデータを、再生用データとして生成すればよい。
【0138】
このような態様によれば、ユーザは、バイブレータ70の振動を感じることで、イベントの発生を認識することができるとともに、その振動パターンからイベントの内容を認識できるようになる。つまり、この変形例1で示した態様によっても、ダイジェスト映像の各場面における車両の走行に関連する情報をユーザに伝えることができる。なお、振動指示データが請求項に記載の伝達用データに相当し、種々のイベント情報が、請求項に記載の走行関連情報の一例に相当する。
【0139】
なお、上述した実施形態とこの変形例1とを組み合わせても良い。つまり、バイブレータ70の振動によるイベントの通知と、効果音や、BGMのアレンジによるイベントの通知とを併用したり、イベントの種類に応じて使い分けたりしてもよい。そのような態様によれば、ユーザの触覚と聴覚の両方を用いて、ダイジェスト映像の各場面における、車両の走行に関連する種々の情報をユーザに伝えることができる。
【0140】
例えば、車両挙動に関する瞬間的なイベントについては、効果音の付与及びバイブレータ70の振動の両方を用いて表現し、高速走行といった継続的なイベントについては、音声情報(例えばBGMのアレンジ)のみによって表現してもよい。
【0141】
<変形例2>
なお、ダイジェスト映像再生装置200が車両に搭載されている態様とする場合には、車両に搭載されている車速メータやエンジン回転速度メータなどの指示値を、再生中のダイジェスト映像の場面と連動した値となるように制御してもよい。
【0142】
そのような場合、ダイジェスト映像生成装置100は、種々のメータの指針をダイジェスト映像の場面と同期して動かすための制御データを生成する機能(制御データ生成部とする)を備える態様とすればよい。そして、再生用データ生成部112は、ダイジェスト映像等のデータと、制御データ生成部が生成した制御データとをパッケージ化したデータを、再生用データとして生成すればよい。
【0143】
また、BGM生成部109は、ダイジェスト映像に対応する車両の挙動を表現する情報として、ダイジェスト映像に応じたエンジン音をスピーカ60から出力するための音声データを生成してもよい。その場合、再生用データ生成部112は、ダイジェスト映像にエンジン音の音声データを合成した再生用データを生成すればよい。
【0144】
<変形例3>
ダイジェスト映像の各場面における走行関連情報を、BGM等の音声情報や、振動などの触覚情報で表現するとともに、さらに、走行関連情報を示すテキストや画像をダイジェスト映像に重畳表示させる態様としてもよい。例えば、走行速度や加速度などのパラメータの時間変化を、メータ画像やグラフ、バーの伸縮等で表示してもよい。
【0145】
そのような場合であっても、ユーザは走行関連情報を聴覚や触覚を介して認識できるので、ディスプレイ50に表示される走行関連情報を注視する恐れを低減でき、ダイジェスト映像に集中することができる。
【0146】
また、ユーザは必要に応じて、画面内において走行関連情報を表すテキストや画像が表示されている領域に視線を向けることで、その場面におけるより具体的な走行関連情報を、確認することができる。つまり、ユーザが種々の走行関連情報を認識するプロセスの多様性を向上させることができる。
【0147】
<変形例4>
以上では、ダイジェスト映像再生装置200が車両に搭載されている態様としたが、これに限らない。スマートフォンなどの携帯端末などを、ダイジェスト映像再生装置200として採用してもよい。その場合、ダイジェスト映像生成装置100は、生成した再生用データを、所定の記憶媒体に保存する保存機能や、外部出力したりするための外部出力機能を備えていれば良い。
【0148】
<変形例5>
以上では、車両情報収集部103が運転挙動データを車両内ネットワーク10を通じて車載センサ30から取得する態様としたが、これに限らない。スマートフォンなどの携帯端末などを車両情報収集部103として採用しても良い。その場合、スマートフォンなどの携帯端末に搭載された加速度センサ等を車載センサ30に相当する信号源として用い、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量といった操作量を直接取得するのではなく、携帯端末に搭載された加速度センサの値から車両挙動データを取得すればよい。
【0149】
また、走行環境情報収集部104も、ナビECU40か種々の情報を取得するのではなく、携帯端末に搭載されているGPS受信機等の出力に基づいて携帯端末自身が収集しても良い。これによって、車両内ネットワークに接続することなく、携帯端末のみを用いてダイジェスト映像を生成することができる。
【0150】
<変形例6>
BGMを生成するための元となるデータは、MIDIデータに限らず、編曲可能な電子データであればよい。また、BGMとして、ユーザによって設定された音楽を採用してもよい。さらには、複数種類の楽曲の電子データを用意しておき、BGM生成部109が運転状況に応じた楽曲の電子データを、BGMの元となるデータとして自動的に採用する態様としてもよい。
【0151】
ダイジェスト映像に付与するBGMは、1種類の楽曲データに基づいて生成されるのではなく、複数種類の楽曲を併用して生成されてもよい。例えば、ダイジェスト映像における車両の走行速度に応じて、BGMとしての楽曲の種類を変更してもよい。そのような態様によれば、楽曲の種類によって走行速度の大きさが表現されるとともに、また、楽曲の種類の変更によって走行速度の変化が表現される。
【0152】
<変形例7>
また、BGM生成部109は、BGMに効果音を付与するのではなく、音量の大小を変更したり、ノイズを付与することで、瞬間的なイベントを表現したりしてもよい。さらに、BGM生成部109は、BGMの音域(周波数)を上げ下げすることで、車両の走行速度を表現してもよい。
【0153】
<変形例8>
また、以上では、請求項に記載の映像撮影装置として、光学式のカメラである車載カメラ20を採用した態様を例示したがこれに限らない。映像撮影装置は、例えばレーザレーダを用いて物体までの距離を映像として撮影する装置(レーザレーダ撮像装置とする)を用いても良い。このような態様においても、車載カメラを用いる場合と同様に、レーザレーダ撮像装置によって得られたドライブ映像から車両情報を用いてダイジェスト映像を生成し、車両情報や走行環境情報を反映したBGMやテキストを付与することができる。