特許第6376011号(P6376011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376011エレベータシステム及びその運行モード切替制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376011
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】エレベータシステム及びその運行モード切替制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   B66B1/14 G
   B66B1/14 F
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-56456(P2015-56456)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175730(P2016-175730A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕通
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−051710(JP,A)
【文献】 特開2009−190891(JP,A)
【文献】 特開2004−250150(JP,A)
【文献】 特開2012−106824(JP,A)
【文献】 特開2014−069954(JP,A)
【文献】 特開2006−312526(JP,A)
【文献】 特開平07−041269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00─ 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごを運行して複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶエレベータシステムであって、
軽便車両の利用者向けの車両用乗場呼びを受け付ける車両用乗場呼び登録受付手段と、
前記軽便車両を使用しない一般者向けの一般用乗場呼びを受け付ける一般用乗場呼び登録受付手段と、
前記かごの運行モードを、前記かごの運行状況に基づいて車両用運行モード又は一般用運行モードに交互に切り替えるモード制御手段と、
前記かごの運行方向を、前記運行モード及び前記かごの運行状況に基づいて上昇方向及び下降方向に交互に切り替える運行方向制御手段と、
前記車両用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記車両用乗場呼びをかごに応答させ、前記一般用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記一般用乗場呼びをかごに応答させる応答制御手段と、
前記運行方向及び応答することが選択された乗場呼びに基づいてかごの運行を制御する運行制御手段と、
を具えたことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記運行方向制御手段は、一の運行方向において、車両用運行モードと一般用運行モードでの運行が一回ずつ実行された後、他の運行方向に切り替える、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記モード制御手段は、一の運行モード実行中、応答することが選択された全ての乗場呼び及びかご呼びに対する応答が終了した後、他の運行モードに切り替える、
請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記応答制御手段は、前記車両用乗場呼び登録受付手段において受け付けられた順を前記車両用乗場呼びの優先順位とし、前記車両用運行モードにおいて、前記運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち少なくとも最優先の車両用乗場呼びをかごに応答させ、
前記運行制御手段は、前記車両用運行モード開始時、最初に、最優先の前記車両用乗場呼びの階床に前記かごを移動させる、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記応答制御手段は、前記運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち、前記最優先の車両用乗場呼びのかごの応答に加え、前記最優先の車両用乗場呼びの階床から運行方向上の階床にある車両用乗場呼びも優先順位に基づいてかごに応答させる、
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記応答制御手段は、前記車両用運行モード一回あたりに応答させる前記車両用乗場呼びの最大数を、前記乗場の数よりも少ない所定数とする、
請求項4又は5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記モード制御手段は、一の運行モードから他の運行モードに切り替える際、前記他の運行モードでの乗場呼びが登録されておらず、且つ、前記一の運行モードでの乗場呼びが登録されている場合、前記一の運行モードを継続して実行する、
請求項1乃至請求項6の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記乗場及び前記かご内の少なくとも一方に、現在の運行モードが前記車両用運行モードであることを案内するモード案内手段を具える、
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記かご内に、前記車両用運行モード開始時に一般者へのかごからの退出案内を行なう退出案内手段を具える、
請求項1乃至請求項の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項10】
かごを昇降させて複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶエレベータシステムの運行モード切替制御方法であって、
軽便車両の利用者向けの車両用乗場呼びを受け付ける車両用乗場呼び登録ステップ、
前記軽便車両を使用しない一般者向けの一般用乗場呼びを受け付ける一般用乗場呼び登録ステップ、
前記かごの運行モードを、前記かごの運行状況に基づいて車両用運行モード又は一般用運行モードに交互に切り替えるモード制御ステップ、
前記かごの運行方向を、前記運行モード及び前記かごの運行状況に基づいて上昇方向及び下降方向に交互に切り替える運行方向制御ステップ、
前記車両用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記車両用乗場呼びをかごに応答させ、前記一般用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記一般用乗場呼びをかごに応答させる応答呼び選択ステップ、
前記運行方向及び応答することが選択された乗場呼びに基づいてかごの運行を制御する運行制御ステップと、
を含むことを特徴とする運行モード切替制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かごを運行して複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶエレベータシステム及びその運行モード切替制御方法に関するものであり、より具体的には、車椅子等の軽便車両の利用者が確実に乗車できる車両用運行モードを具備するエレベータシステム及びその運行モード切替制御方法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムにおけるかごの運行方法として、セレクティブコレクティブ(セレコレ)運行方法(乗合自動方式)が一般的に採用されている。この運行方法では、上昇又は下降の一方向の運行中に応答を端階から行なっていく。例えば、上昇方向の運行では、かごが最下階から最上階に移動しつつ乗場呼び及びかご呼びのあった階床に順次停止していく。
【0003】
本発明の図4に示すように、かごの移動方向が運行方向(行先方向)と同じ向きのかご呼び又は乗場呼びであって、かごの位置が出発階と同じ又は運行方向側にある呼びを第1象限、かごの移動方向が運行方向とは逆向きのかご呼び又は乗場呼びであって、応答のためにかごを現在階よりも以遠に移動し、反転させる必要のある呼びを第2象限、かごの移動方向が運行方向とは逆向きのかご呼び又は乗場呼びであって、かごの位置が出発階と同じ又は運行方向逆側にある呼びを第3象限、かごの移動方向が運行方向と同じ向きのかご呼びであって、かごの位置が出発階よりも運行方向逆側にあるかご呼び又は乗場呼びを第4象限と称する。そして、セレコレ運行では、第1象限、第2象限、第3象限、第4象限のかご呼び又は乗場呼びに順次応答すべく運行が行なわれている。すなわち、フローチャート図5に示すように、第1象限のかご呼び又は乗場呼びがあれば(ステップS1のYES)、これらに最初に応答する(ステップS2)。第1象限のかご呼びも乗場呼びもなく(ステップS1のNO)、第2象限の乗場呼びがあれば(ステップS3のYES)、現在位置から出発階が最も遠い乗場呼びに応答する(ステップS4)。第1象限と第2象限のかご呼びも乗場呼びもなく(ステップS3のNO)、第3象限の乗場呼びがあれば(ステップS5のYES)、現在位置から出発階が最も近い乗場呼びに応答し(ステップS6)、第1象限乃至第3象限のかご呼びも乗場呼びもなく(ステップS5のNO)、第4象限の乗場呼びがあれば(ステップS7のYES)、現在位置から最も遠い乗場呼びから順次応答する(ステップS8)。
【0004】
また、エレベータシステムには、通常の乗場呼びボタンに加えて、車椅子、ベビーカ、ショッピングカート等の利用者向けの軽便車両用の乗場呼びボタンが設けられた構成のものもある(例えば、特許文献1参照)。この軽便車両用の乗場呼びボタンが操作されると、補助敷居が動作するため軽便車両のかごへの乗降がしやすくなる。商業施設などでは、ベビーカやショッピングカート等の軽便車両の利用頻度が高いので、軽便車両と一緒にエレベータが利用される頻度も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−250197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したセレコレ運行方法では、混雑時は中間階には満員状態のかごしか到着せず、かごに乗車できない状況が発生し易い。また、一旦このような満員状態に陥ると、次に到着するかごも満員に近い状態が続く。満員に近い状態であっても利用者はかごに乗り込むことは可能であるが、ある程度の乗車面積が必要な軽便車両と共に乗り込むことは難しい。すなわち、一旦かごが満員状態になると、軽便車両の利用者は、長時間乗車できない状態が続く虞がある。
【0007】
また、かごが満員に近い状態では、軽便車両の利用者の乗場呼びによってかごが到着したものの、待機している軽便車両の利用者はかごに乗り込めないため、かごが到着しても誰も乗降しない状態となることがあり、実質的に無駄な停止となって運行効率も低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、軽便車両の利用者が確実に乗車できると共に、運行効率の向上を図ることのできるエレベータシステム及びその運行モード切替制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータシステムは、
かごを運行して複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶエレベータシステムであって、
軽便車両の利用者向けの車両用乗場呼びを受け付ける車両用乗場呼び登録受付手段と、
前記軽便車両を使用しない一般者向けの一般用乗場呼びを受け付ける一般用乗場呼び登録受付手段と、
前記かごの運行モードを、前記かごの運行状況に基づいて車両用運行モード及び一般用運行モードに交互に切り替えるモード制御手段と、
前記かごの運行方向を、前記運行モード及び前記かごの運行状況に基づいて上昇方向及び下降方向に交互に切り替える運行方向制御手段と、
前記車両用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記車両用乗場呼びをかごに応答させ、前記一般用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記一般用乗場呼びをかごに応答させる応答制御手段と、
前記運行方向及び応答することが選択された乗場呼びに基づいてかごの運行を制御する運行制御手段と、を具える。
【0010】
前記運行方向制御手段は、一の運行方向において、車両用運行モード及び一般用運行モードでの運行が一回ずつ実行された後、他の運行方向に切り替えるようにしてもよい。
【0011】
前記モード制御手段は、一の運行モード実行中、応答することが選択された全ての乗場呼び及びかご呼びに対する応答が終了した後、他の運行モードに切り替えるようにしてもよい。
【0012】
前記応答制御手段は、前記車両用乗場呼び登録受付手段において受け付けられた順を前記車両用乗場呼びの優先順位とし、前記車両用運行モードにおいて、前記運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち少なくとも最優先の車両用乗場呼びをかごに応答させ、
前記運行制御手段は、前記車両用運行モード開始時、最初に、最優先の前記車両用乗場呼びの階床に前記かごを移動させるようにしてもよい。
【0013】
前記応答制御手段は、前記運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち、前記最優先の車両用乗場呼びのかごの応答に加え、前記最優先の車両用乗場呼びの階床から運行方向上の階床にある車両用乗場呼びも優先順位に基づいてかごに応答させるようにしてもよい。
【0014】
前記応答制御手段は、前記車両用運行モード一回あたりに応答する前記車両用乗場呼びの最大数を、前記乗場の数よりも少ない所定数とするようにしてもよい。
【0015】
前記モード制御手段は、一の運行モードから他の運行モードに切り替える際、前記他の運行モードでの乗場呼びが登録されておらず、且つ、前記一の運行モードでの乗場呼びが登録されている場合、前記一の運行モードを継続して実行するようにしてもよい。
【0016】
前記乗場及び前記かご内の少なくとも一方に、現在の運行モードが前記車両用運行モードであることを案内するモード案内手段を具えるようにしてもよい。
【0017】
前記かご内に、前記車両用運行モード開始時に一般者へのかごからの退出案内を行なう退出案内手段を具えるようにしてもよい。
【0018】
本発明に係るエレベータシステムの表示モード切替制御方法は、
かごを昇降させて複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶエレベータシステムの運行モード切替制御方法であって、
軽便車両の利用者向けの車両用乗場呼びを受け付ける車両用乗場呼び登録ステップ、
前記軽便車両を使用しない一般者向けの一般用乗場呼びを受け付ける一般用乗場呼び登録ステップ、
前記かごの運行モードを、前記かごの運行状況に基づいて車両用運行モード又は一般用運行モードに交互に切り替えるモード制御ステップ、
前記かごの運行方向を、前記運行モード及び前記かごの運行状況に基づいて上昇方向及び下降方向に交互に切り替える運行方向制御ステップ、
前記車両用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記車両用乗場呼びをかごに応答させ、前記一般用運行モード時には前記運行方向と同一方向の未応答の前記一般用乗場呼びをかごに応答させる応答呼び選択ステップ、
前記運行方向及び応答することが選択された乗場呼びに基づいてかごの運行を制御する運行制御ステップ、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軽便車両の利用者向けの車両用乗場呼びを受け付ける車両用乗場呼び登録受付手段と、軽便車両を使用しない一般者向けの一般用乗場呼びを受け付ける一般用乗場呼び登録受付手段とが設けられ、軽便車両の利用者及び一般者の乗場呼びが区別される。また、かごの運行モードが車両用運行モードと一般用運行モードに交互に切り替えられ、車両用運行モード時には運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びをかごに応答させ、一般用運行モード時には運行方向と同一方向の未応答の一般用乗場呼びをかごに応答させる。
【0020】
これにより、軽便車両の利用者と一般者のかごの運行が交互に切り替えられて提供される。したがって、車両用運行モード時の一般者のかごへの乗り込みを抑制することができ、軽便車両の利用者が確実にかごに乗車できる。これにより、軽便車両の利用者の最大待ち時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータの乗場の外観図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るエレベータのかご内の外観図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの機能ブロック図である。
図4図4は、呼びの階床と行先方向との関係を示す4象限マトリクスの一例を示す図である。
図5図5は、セレコレ運行における各象限のかご呼び又は乗場呼びに対する応答順序を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るかごの運行線図を示す図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るかごの運行処理を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのかごの応答処理を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の一実施形態に係るかご呼びのかごの応答処理を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る乗場車両用運行モード灯の点灯処理のフローチャートである。
図11図11は、本発明の一実施形態に係る退出案内用スピーカの出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して本発明の一実施形態に係るエレベータシステム1及びエレベータシステム1の運行モード切替制御方法について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータの乗場の外観図である。本実施形態のエレベータシステム1には、少なくとも一台のかご7(図2参照)を含んでいる。エレベータシステム1は、かごを運行して複数の階床に設けられた乗場に乗客を運ぶ。各階床の乗場には、乗場側のドア71の周囲にインジケータランプ110、乗場車両用運行モード灯20、一般用乗場呼びボタン30、車両用乗場呼びボタン40等が設けられている。
【0024】
インジケータランプ110、かご7の現在位置(階床番号)及び移動方向(昇降方向)などのかご7の運行状況が表示される。乗場車両用運行モード灯20は、エレベータシステム1で行なわれている現在の運行モードが車両用運行モードである場合に点灯する。本エレベータシステム1では、一般用運行モードと車両用運行モードが交互に実行される。乗場車両用運行モード灯20は、表面の樹脂パネルの裏面側にランプが設けられ、車両用運行モードの実行中にのみランプが点灯し、それ以外は消灯する。
【0025】
「一般用運行モード」は、車椅子、ベビーカ、ショッピングカート等の軽便車両を使用しない一般者向けの乗場呼び(一般用乗場呼び)に対するかご7の運行を行なうモードである。「車両用運行モード」は、軽便車両の利用者向けの乗場呼び(車両用乗場呼び)に対するかご7の運行を行なうモードである。したがって、一般用運行モードの実行中は、車両用乗場呼びのあった階床にかご7は停止しない。すなわち、車両用乗場呼びに対する応答は行なわれない。一方、車両用運行モードの実行中は、一般用乗場呼びのあった階床にかご7は停止しない。すなわち、一般用乗場呼びに対する応答は行なわれない。詳細は後述する。
【0026】
一般用乗場呼びボタン30は、上述した一般用乗場呼びの入力を受け付ける。具体的には、行先方向が上か下かの入力を受け付けるボタンである。車両用乗場呼びボタン40は、上述した車両用乗場呼びの入力を受け付ける。具体的には、行先方向が上か下かの入力を受け付けるボタンである。なお、一般用乗場呼びボタン30と車両用乗場呼びボタン40を見分けやすくするために、車両用乗場呼びボタン40に軽便車両用であることを示すマークを付しておくことが望ましい。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係るエレベータのかご7内の外観図である。かご7内のドア71近傍の壁面には、退出案内用スピーカ80、かご内車両用運行モード灯90、かご呼びボタン100等が設けられている。退出案内用スピーカ80は、かご7内の乗客に対し、車両用運行モード開始時に軽便車両を利用していない一般者のかご7からの退出を案内する(促す)音声を出力する。かご内車両用運行モード灯90は、上述した乗場車両用運行モード灯20と同様の構成であり、車両用運行モード実行中に点灯する。
【0028】
かご呼びボタン100は、階床番号が付されたボタンであって複数配置されている。かご呼びボタン100は、かご呼び(かご7の乗客の行先階)の入力を受け付ける。すなわち、エレベータの利用者は、乗場において一般用乗場呼びボタン30又は車両用乗場ボタン40を操作して乗場呼びを行ない、この乗場呼びに対して到着したかご7に乗車してかご呼びボタン100を操作して行先階を入力することで行先階に移動することができる。その他、図示していないが、かご7内には、乗場のインジケータランプ110と同様なインジケータランプ等も設けられている。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの機能ブロック図である。これらは、CPU、メモリやバッファ、これらに記録された各種プログラム等によって実現されるが、図3では、これらの連繋によって実現される代表的な機能に関する機能ブロックのうち、本発明に関連する機能ブロックのみを描いている。これら機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウエアのみ又はこれらの組合せによって実現可能であることは当然理解されるべきである。
【0030】
エレベータシステム1は、車両用運行モード案内手段2、一般用乗場呼び登録受付手段3、車両用乗場呼び登録受付手段4、運行制御装置5、かご制御装置6、かご7等を具えている。なお、車両用運行モード案内手段2、一般用乗場呼び登録受付手段3、車両用乗場呼び登録受付手段4については、1の乗場についてのみ図示する。
【0031】
車両用運行モード案内手段2は、各階床の乗場に設けられ、乗場車両用運行モード灯20、点灯回路(図示せず)等から構成されている。点灯回路は、内蔵されたランプを点灯及び消灯する。車両用運行モード案内手段2は、有線又は無線接続されたモード制御手段51の指示に基づいて、車両用運行モードが実行中であることを点灯により案内(報知)する。一般用乗場呼び登録受付手段3は、各階床の乗場に設けられ、一般用乗場呼びボタン30等を具えている。一般用乗場呼び登録受付手段3は、上述したように一般用乗場呼びの入力を受け付ける。車両用乗場呼び登録受付手段4は、各階床の乗場に設けられ、車両用乗場呼びボタン40等を具えている。車両用乗場呼び登録受付手段4は、上述したように車両用乗場呼びの入力を受け付ける。各登録受付手段3,4は、有線又は無線接続された応答制御手段53に乗場呼び情報を送信する。
【0032】
運行制御装置5は、エレベータのシャフトや機械室などの制御盤内に設けられ、かご7の運行を統括的に管理する。運行制御装置5は、運行制御手段50、モード制御手段51、運行方向制御手段52、応答制御手段53等を具えている。
【0033】
モード制御手段51は、モード切替条件に基づいて、運行モードを一般用運行モードと車両用運行モードに交互に切り替える。モード制御手段51は、かご7の運行状況に基づいてモード切替条件の成立の判定を行なう。モード切替条件は、一の運行方向(上昇方向又は下降方向)における運行が終了したことである。
【0034】
具体的には、一般用運行モードから車両用運行モードへのモード切替条件は、一の運行方向において、応答することが選択された全ての一般用乗場呼びとかご呼びに応答したこと、且つ、最終の一般乗場呼び又はかご呼びの応答で戸開してから所定時間(例えば5秒)が経過したことである。また、車両用運行モードから一般用運行モードへのモード切替条件は、応答することが選択された全ての車両用乗場呼びとかご呼びに応答したこと、且つ、最終の車両用乗場呼び又はかご呼びの応答で戸開が完了してから所定時間(例えば20秒)が経過したことである。
【0035】
また、モード制御手段51は、現在の運行モードの設定内容を記憶管理し、現在の運行モードの情報を有線又は無線接続された運行方向制御手段52、応答制御手段53等に送信する。
【0036】
運行方向制御手段52は、運行方向切替条件に基づいて、かご7の運行方向を上昇方向と下降方向に交互に切り替える。運行方向制御手段52は、有線又は無線接続されたモード制御手段51から受信した運行モードに基づいて運行方向切替条件の成立の判定を行なう。運行方向切替条件は、一の運行方向において、一般用運行モードと車両用運行モードが一回ずつ実行されたことである。すなわち、エレベータシステム1では、運行している限り基本的に下記1.乃至4.のように運行が順に繰り返し行なわれていく。なお、応答するべき呼びがない場合には、その運行モードは実行せずに次の運行モードに切り替えられる。
【0037】
1.運行方向:上、運行モード:一般用運行モード
2.運行方向:上、運行モード:車両用運行モード
3.運行方向:下、運行モード:一般用運行モード
4.運行方向:下、運行モード:車両用運行モード
5.運行方向:無、運行モード:遊休
【0038】
また、運行方向制御手段52は、現在の運行方向の設定内容を記憶管理し、現在の運行方向情報を有線又は無線接続された運行制御手段50及び応答制御手段53に送信する。
【0039】
応答制御手段53は、運行モードに基づいて、乗場呼び及びかご呼びをかご7に応答させる。応答制御手段53は、一般用乗場呼び管理手段54、車両用乗場呼び管理手段55、かご呼び管理手段56等を具えている。
【0040】
一般用乗場呼び管理手段54は、各乗場の一般用乗場呼び登録受付手段3から受信した一般用乗場呼びのうち、未だ応答が完了していない未応答の一般用乗場呼びを記憶管理する。一般用乗場呼びの情報としては、例えば乗場呼びのあった階床番号及び行先方向が含まれる。
【0041】
車両用乗場呼び管理手段55は、各乗場の車両用乗場呼び登録受付手段4から受信した車両用乗場呼びのうち、未だ応答が完了していない未応答の車両用乗場呼びを記憶管理する。車両用乗場呼びの情報としては、例えば乗場呼びのあった階床番号及び行先方向が含まれる。また、未応答の車両用乗場呼びに優先順位の情報を付加して記憶管理する。優先順位は、車両用乗場呼びを車両用乗場呼び登録受付手段4から受信した順となるが、実質的に車両用登録受付手段4で入力が受け付けられた順である。
【0042】
かご呼び管理手段56は、かご7のかご呼び登録受付手段10から受信したかご呼びのうち、未だ応答が完了していない未応答のかご呼びを記憶管理する。かご呼びの情報としては、例えば行先階の階床番号が含まれる。
【0043】
応答制御手段53は、かご7の現在位置、現在の運行方向及び運行モードなどに基づいて、未応答の乗場呼び及びかご呼びのかご7への応答を行なう。すなわち、乗場呼び及びかご呼びに対するかご7の停止階の応答を行なう。
【0044】
応答制御手段53は、一般用運行モード実行中、第1象限と第4象限(図4図5及び段落[0003]参照)の未応答の一般用乗場呼び及びかご呼びをかご7に応答させる。なお、第1象限と第4象限に乗場呼びがある場合には、第4象限の乗場呼びに先に応答させる。具体的には、かご7の停止階に応答する。一般用乗場呼びの場合は、呼びのあった階床番号を停止階としてかご7が応答する。また、かご呼びの場合は、行先階を停止階としてかご7が応答する。なお、本発明の一実施形態に係る一般用運行モードでは、セレクティブコレクティブ(セレコレ)運行方法が採用されている。したがって、応答制御手段53は、この運行方法に基づくかご7の応答を行なう。すなわち、未応答の複数の呼びの中から象限の低い順で応答できる呼びを探して応答する。なお、セレコレ運行方法でのかご7の応答は、一般的な構成であるので詳細な説明は省略する。
【0045】
図4は、呼びの階床と行先方向との関係を示す4象限マトリクスの一例を示す図である。図4は、かご7の運行方向が上昇方向に設定されている状態である。横軸をかご呼び及び乗場呼びの行先方向とし、原点より右側が上昇方向となって左側が下降方向となる。縦軸を乗場呼びのあった階床又はかご呼びの行先階とし、原点が現在かご7のいる階床となる。
【0046】
例えば、かご7よりも上の階床の乗場にいる利用者Pの行先方向が上昇方向の乗場呼びは、第1象限に属する。また、かご7に乗車している利用者Qのかご呼びは、行先階がかご7よりも上の階床であって行先方向が上昇方向であるので、第1象限に属する。また、かご7よりも下の階床の乗場にいる利用者Rの乗場呼びは、行先方向は下降方向であるので第3象限となる。なお、運行方向が逆(下降方向)の場合には、各軸の上下が反転することとなる。すなわち、横軸の行先方向の場合、右側が下降方向となり、左側が上昇方向となる。
【0047】
また、応答制御手段53は、車両用運行モード実行中、第1象限及び第4象限の未応答の車両用乗場呼び及びかご呼びをかご7に応答させ、上述したように停止階に応答させる。また、本実施形態では、車両用運行モードの一回の実行あたりに応答する車両用乗場呼びの最大数が所定個数(例えば2)に設定されている。応答制御手段53は、最初に運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち、少なくとも最優先の車両用乗場呼びをかご7に応答させる。次に、運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうち、所定の優先順位が高く、且つ、応答可能な車両用乗場呼びをかご7に応答させる。
【0048】
また、応答制御手段53は、上述のかご7に応答させた応答情報(停止階)を運行制御手段50に送信する。運行制御手段50は、応答制御手段53から受信した応答情報、運行方向制御手段52から受信した運行方向情報などに基づいてモータ等の駆動手段を駆動してかご7を昇降させ、ドア71の開閉を行なう。
【0049】
また、エレベータシステム1におけるかご7の制御は、かご7に配置されたかご制御装置6によって実行される。詳細な説明は省略するが、かご制御装置6は、運行制御装置5との連繋により、照明、エアコン等の制御を行なう。また、図3に示すように、かご制御装置6は、かご7内に配置された退出案内手段8、車両用運行モード案内手段9、かご呼び登録受付手段10をさらに具えている。退出案内手段8は、退出案内用スピーカ80及びオーディオ回路(図示せず)等から構成される。退出案内手段8は、かご7や乗場で階床名案内、方向案内、戸開閉案内に使用される放送手段を用いてもよい。オーディオ回路は、例えば、退出案内の音声データをスピーカ80から出力する。退出案内手段8は、接続されたモード制御手段51からの指示に基づいて、上述したように軽便車両を利用していない一般者に対し、かご7からの退出を案内する(促す)音声を出力する。
【0050】
車両用運行モード案内手段9は、かご内車両用運行モード灯90、点灯回路(図示せず)等から構成されている。点灯回路は、かご内車両用運行モード灯90に内蔵されたランプを点灯及び消灯する。車両用運行モード案内手段9は、有線又は無線接続されたモード制御手段53の指示に基づいて、車両用運行モードが実行中であることを点灯により案内(報知)する。かご呼び登録受付手段10は、かご呼びボタン100等から構成される。かご呼び登録受付手段10は、上述したようにかご呼び(かご7の乗客の行先階)の入力を受け付ける。また、かご呼び登録受付手段10は、有線又は無線接続された応答制御手段53に受け付けたかご呼び情報を送信する。
【0051】
次に、上述した運行モードに基づくかご7の運行例を、図6を用いて説明する。図6は、かご7の運行線図である。横軸が経過時刻(秒)を示し、縦軸が階床を示す。この運行例では、最上階を10階、最下階を1階とし、かご7が10階で休止中である遊休状態にある状態から開始される。
【0052】
なお、便宜上、階床間移動の走行時間は一律5秒とし、この走行時間に戸開に要する時間を含めるものとする。すなわち、以下の説明で、かご7の「到着」とは、かご7が階床まで走行して着床し、戸開が完了するまでの動作を意味する。
【0053】
また、利用者がかご7に乗降するために要する乗降時間は、利用者の状況によって変化するが、この運行例では、かご7の到着後、一般用運行モードでは5秒、車両用運行モードでは20秒とし、また、戸閉に要する時間を一律5秒とする。すなわち、かご7の到着後、かご7が階床で乗降及び戸閉のために停止している停止時間は、一般用運行モードでは乗降時間5秒に戸閉時間5秒を含めた10秒、車両用運行モードでは乗降時間20秒に戸閉時間5秒を含めた25秒となる。そして、以下の説明では、かご7の「停止」とは、戸開完了後、利用者の乗降及び戸閉のためにかご7が階床に留まっている動作とする。
【0054】
さらに、車両用運行モードから一般用運行モードに移行する際の所定時間は戸開完了後20秒(すなわちかご7の到着後20秒)、一般用運行モードから車両用運行モードに移行する際の所定時間は戸開完了後5秒(すなわちかご7の到着後5秒)とする。そして、乗場呼びによって乗車した利用者は、かご呼び(行先階の登録)を行なうものとして説明する。
【0055】
図6の運行線図及び以下の説明において、一般用乗場呼びを「G」、車両用乗場呼びを「C」で表わし、行先方向上の乗場呼びを「U」、行先方向下の乗場呼びを「D」で表わす。たとえば、一般用乗場呼びの行先方向上の乗場呼びは「GU」で表わす。これらに続く「@XX」は各乗場呼びの発生時刻を表わす。また、図6中の四角は、運行モードが「一般用運行モード」から「車両用運行モード」又はその逆に切り替わるタイミングを示す。
【0056】
経過時刻0秒において一般用乗場呼びGU@0(階床:1、行先方向:上)が発生し、かご7の「一般用運行モード」(運行方向:上)が開始される。かご7は、1階に向かって移動を開始するが、途中で発生した一般用乗場呼びGD@25(階床:3、行先方向:下)にも応答して3階に到着する(経過時刻:35秒)。
【0057】
そして、3階で10秒(一般用運行モードの乗降時間5秒+戸閉時間5秒)停止した後、かご7は下降して1階に到着し、一般用乗場呼びGD@25の利用者をその行先階である1階で降車させる(経過時刻:55秒〜65秒)。
【0058】
次に、かご7は、一般用乗場呼びGU@0の利用者を乗せて1階から上昇する(経過時刻:65秒)。なお、この時点で第1象限の車両用乗場呼びCU@25(階床:2、行先方向:上、優先順位:1)、第1象限の車両用乗場呼びCU@50(階床:6、行先方向:上、優先順位:2)も発生しているが、一般用運行モード中であるので、これら乗場呼びはかご7に応答させず、2階、6階にかご7は停止しない。
【0059】
その後、かご7は、一般用乗場呼びGU@0の利用者の行先階である4階に到着して10秒間停止し(経過時刻:80秒〜90秒)、続いて一般用乗場呼びGU@50の待つ5階に10秒間停止し、一般乗場呼びGU@50の利用者を乗車させる(経過時刻:95秒〜105秒)。そして、かご7は、一般用乗場呼びGU@75の利用者に応答して7階で10秒間停止し、一般乗場呼びGU@75の利用者を乗車させる(経過時刻:115秒〜125秒)。その後、かご7は、一般用乗場呼びGU@50、GU@75の利用者の行先階である8階に上昇する。
【0060】
かご7が8階に停止(経過時刻130秒〜140秒)し、一般乗場呼び@GU50とGU@75の利用者が降車すると共にかご7の到着後5秒が経過(経過時刻:135秒)することで「運行モードの切替条件」が成立し、「車両用運行モード」が開始される。ただし、運行方向は上昇方向が維持される。
【0061】
車両用運行モード(運行方向:上)の開始時点(経過時刻:135秒)で、既に発生しており未応答の車両用乗場呼びは、CU@25(階床:2、行先方向上、優先順位:1)、CU@50(階床:6、行先方向:上、優先順位:2)、CU@125(階床:4、行先方向:上、優先順位:3)である。したがって、今回実行される車両用運行モードでは、車両用乗場呼びCU@25とCU@50をかご7に応答させ、車両用乗場呼びCU@125は未応答のまま保持される。これは、多くの車両用乗場呼びに応答(停止)してしまうと、先に発生した優先順位の高い車両用乗場呼びCU@50の利用者が乗車できなくなる虞があるためである。
【0062】
続いてかご7は、戸閉後(経過時間140秒)、車両用乗場呼びCU@25の待つ2階まで下降して停止する(経過時刻:170秒)。2階での呼びは車両用乗場呼びであるため、かご7の停止時間は、車両用運行モードの乗降時間20秒と戸閉時間5秒を加えた25秒間となる。そして、車両用乗場呼びCU@25の利用者が乗車した後(経過時刻:195秒)、この利用者の行先階の5階に上昇して停止し、車両用乗場呼びCU@25の利用者を降車させる(経過時刻:210秒〜235秒)。その後、かご7は、車両用乗場呼びCU@50の待つ6階に上昇して停止し、車両用乗場呼びCU@50の利用者を乗車させる(経過時刻:240秒〜255秒)。次に、かご7は、車両用乗場呼びCU@50の利用者の行先階の9階に上昇して停止する(経過時刻:280秒)。
【0063】
そして、CU@50の利用者が降車すると共にかご7の到着後20秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し、「一般用運行モード」が開始される(経過時刻:300秒)。さらに、運行方向も上昇方向から下降方向に切り替えられる。
【0064】
その後、一般用運行モード(運行方向:下)の開始時点(経過時刻:300秒)で、未応答の一般用乗場呼びGD@200(階床:8、行先方向:下)をかご7に応答させるためにかご7は戸閉の後(経過時刻:305秒)、9階から8階に下降して停止し、一般用乗場呼びGD@200の利用者を乗車させる(経過時刻:310秒〜320秒)。次に、かご7は、一般用乗場呼びGD@200の利用者の行先階である6階に下降する。そして、かご7が6階に停止した後(経過時刻:330秒)、GD@200の利用者が降車すると共にかご7の到着後5秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し、「車両用運行モード」が開始される(経過時刻:335秒)。運行方向は下降方向が維持される。
【0065】
車両用運行モード(運行方向:下)の開始時点(経過時刻:335秒)で、未応答の車両用乗場呼びは、CU@125(階床:4、行先方向:上、優先順位:1)とCD@300(階床:5、行先方向:下、優先順位:3)である。車両用乗場呼びCU@125は、優先順位は高いが、行先方向が運行方向(下降方向)とは逆であるのでかご7には応答しない。したがって、行先方向が運転方向と同一方向の車両用乗場呼びCD@300だけをかご7に応答させる。
【0066】
かご7は、戸閉の後(経過時刻:340秒)、現在位置の6階から車両用乗場呼びCD@300の5階に応答するために下降して停止し、CD@300の利用者を乗車させる(経過時刻:345秒〜370秒)。その後、車両用乗場呼びCD@300の利用者の行先階である3階に停止(経過時刻:380秒)する。
【0067】
かご7が3階に到着して停止した後、CD@300の利用者が降車すると共にかご7の到着後20秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し、「一般用運行モード」が開始される(経過時刻:400秒)。また、運行方向も、下降方向から上昇方向に切り替えられる。なお、かご7が3階に停止し、運行モードの切替待ちの状態で運行方向と同一方向の一般用乗場呼びGD@375が発生している。一般的なセレコレ運行方法ではかご7はこの乗場呼びに応答するが、本発明では、車両用運行モード中であるため、一般乗場呼びGD@375には応答しない。
【0068】
一般用運行モード(運行方向上)の開始時点(経過時刻:400秒)で、未応答の一般用乗場呼びは、GU@300(階床:7、行先方向:上)とGD@375(階床:2、行先方向:下)である。そこで、行先方向が運転方向(上)と同一方向となる一般用乗場呼びGU@300(階床:7、行先方向:上)だけをかご7に応答させる。
【0069】
すなわち、かご7は、戸閉の後(経過時刻:405秒)、現在位置の3階から一般用乗場呼びGU@300の7階に上昇して停止し、GU@300の利用者を降車させる(経過時刻:425秒〜435秒)。その後、一般用乗場呼びGU@300の利用者の行先階である10階に停止する(経過時刻:450秒)。
【0070】
かご7が10階に停止した後、GU@300の利用者が降車すると共にかご7の到着後5秒経過することで再び「運行モードの切替条件」が成立し(経過時刻:455秒)、「車両用運行モード」が開始される。運行方向は上昇方向が維持される。
【0071】
車両用運行モード(運行方向:上)の開始時点(経過時刻:455秒)で、未応答の車両用乗場呼びは、CU@125(階床:4、行先方向:上、優先順位:1)、CD@350(階床:7、行先方向:下、優先順位:2)、CD@425(階床:3、行先方向:下、優先順位:3)である。したがって、行先方向が運行方向(上)と同一方向の未応答の車両用乗場呼びCU@125をかご7に応答させる。
【0072】
すなわち、かご7は、戸閉の後(経過時刻460秒)、現在位置の10階から車両用乗場呼びCU@125の4階に下降して停止し、CU@125の利用者を乗車させる(経過時刻:490秒〜515秒)。その後、車両用乗場呼びCU@125の利用者の行先階となる9階に上昇する。
【0073】
かご7が9階に停止した後(経過時刻:540秒)、CU@125の利用者が降車すると共にかご7の到着後20秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し(経過時刻:560秒)、「一般用運行モード」が開始される。また、運行方向は、上昇方向から下降方向に切り替えられる。
【0074】
一般用運行モード(運行方向:下)の開始時点(経過時刻:560秒)で、未応答の一般用乗場呼びはGD@375(階床:2、行先方向:下)である。一般用乗場呼びGD@375は、行先方向が運転方向(下)と同一方向であるのでかご7に応答させられる。
【0075】
すなわち、かご7は、戸閉の後(経過時刻:565秒)、現在位置の7階から一般用乗場呼びGD@375の2階に下降して停止し、GD@375の利用者を乗車させる(経過時刻:600秒〜610秒)。その後、一般用乗場呼びGD@375の利用者の行先階である1階に停止する(経過時刻:615秒)。
【0076】
そして、かご7が1階に停止した後(経過時刻:615秒)後、GD@375の利用者が降車すると共にかご7の到着後5秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し(経過時刻:620秒)、「車両用運行モード」が開始される。運行方向は下降方向が維持される。
【0077】
車両用運行モード(運行方向:下)の開始時点(経過時刻:620秒)で、未応答の車両用乗場呼びは、CD@350(階床:7、行先方向:下、優先順位:1)、CD@425(階床:3、行先方向:下、優先順位:2)、CD@500(階床:8、行先方向:下、優先順位:3)である。これら3つの乗場呼びは、行先方向が運行方向(下)と同一方向であるが、優先順位に従って車両用乗場呼びCD@350とCD@425をかご7に応答させる。
【0078】
かご7は、現在位置の1階から車両用乗場呼びCD@350の7階に上昇し、CD@350の利用者を乗車させる(経過時刻655秒〜680秒)。その後、車両用乗場呼びCD@425の3階に下降してCD@425の利用者を乗車させ(経過時刻700秒〜725秒)、車両用乗場呼びCD@350,CD@425の利用者の行先階となる2階に下降する。そして、かご7が2階に停止した後、(経過時刻730秒)、CD@350,CD@425の利用者が降車すると共にかご7の到着後20秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立し(経過時刻:750秒)、「一般用運行モード」が開始される。
【0079】
しかし、現時点では、未応答の一般用乗場呼びはなく、未応答の車両用乗場呼びCD@500(階床:8、行先方向:下、優先順位:1)があるのみである。したがって、順に実行される一般用運行モード(運行方向:上)、車両用運行モード(運行方向:上)の実行は行なわれず、「車両用運行モード」(運行方向:下)の実行が開始される。そして、車両用乗場呼びCD@500をかご7に応答させる。
【0080】
すなわち、かご7は、戸閉の後(経過時刻:755秒)、現在位置の2階から車両用乗場呼びCD@500の待つ8階に上昇し、CD@500の利用者を乗車させる(経過時刻:785秒〜810秒)。その後、車両用乗場呼びCD@500の利用者の行先階となる7階に下降する。
【0081】
そして、かご7が7階に停止した後(経過時刻:815秒)、CD@500の利用者が降車すると共にかご7の到着後20秒経過することで「運行モードの切替条件」が成立するが(経過時刻:835秒)、すべての乗場呼びに応答し、未応答の乗場呼びは存在しないため遊休状態となる。
【0082】
以上が、図6のかご7の運行線図を用いた運行例の説明となる。
【0083】
次に、上述したかご7の運行モードの切替制御処理及び応答処理について図7を参照しつつ詳述する。図7は、かご7の切替制御処理及び応答処理を示すフローチャートである。この処理は、一般用乗場呼び又は車両用乗場呼びの入力が受け付けられたことを契機として、運行制御装置50によって実行される。
【0084】
最初に、運行制御手段50は、運行方向の初期設定として上昇方向を設定し(ステップS10)、さらに運行モードの初期設定として一般用運行モードを設定する(ステップS11)。次に、運行制御手段50は、運行方向と同一方向の未応答の一般用乗場呼びの有無を判断する(ステップS12)。未応答の一般用乗場呼びがないと判断した場合(ステップS12のNO)、運行制御手段50は、ステップS20の処理に移行する。
【0085】
一方、運行方向と同一方向の未応答の一般用乗場呼びがあると判断した場合(ステップS12のYES)、運行制御手段50は、一般用乗場呼びのかご7の応答処理を実行する(ステップS13)。この処理において、応答した一般用乗場呼びの応答情報が運行制御50に送信される。なお、一般用乗場呼びのかご7の応答処理は、上述したように一般的なセレコレ運行方法の応答処理となるため詳細な説明は省略する。
【0086】
次に、運行制御手段50は、未応答のかご呼びの有無を判断する(ステップS14)。かご呼びがあると判断した場合(ステップS14のYES)、運行制御手段50は、かご呼びのかご7の応答処理を行ない(ステップS15)、ステップS16の処理に移行する。この応答処理において、応答したかご呼びの応答情報が運行制御手段50に送信される。なお、かご呼びのかご7の応答処理も、上述したように一般的なセレコレ運行方法の応答処理となるため詳細な説明は省略する。
【0087】
また、ステップS14の処理において、かご呼びがないと判断した場合、運行制御手段50は、現在の運行方向における一般用運行モードの応答が終了したか否かを判断する(ステップS16)。具体的には、上述した一般用運行モードから車両用運行モードへの切替条件が成立したか否かを判断する。応答はまだ終了していないと判断した場合(ステップS16のNO)、運行制御手段50は、ステップS12の処理に移行する。そして、応答の終了まで、その後に発生する呼びの応答処理を行なう。
【0088】
また、ステップS16の処理において、ステップS12〜ステップS15の処理によって、応答することが選択された全ての乗場呼び及びかご呼びに応答が終了したと判断した場合(ステップS16のYES)、運行制御手段50は、運行モードを一般用運行モードから車両用運行モードに切り替える(ステップS20)。なお、運行方向は現在の設定内容が維持される。次に、運行制御手段50は、運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びの有無を判断する(ステップS21)。未応答の車両用乗場呼びがないと判断した場合(ステップS21のNO)、運行制御手段50は、ステップS26の処理に移行する。
【0089】
一方、運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びがあると判断した場合(ステップS21のYES)、運行制御手段50は、上記未応答の車両用乗場呼びのかご7の応答処理を実行する(ステップS22)。車両用乗場呼びのかご7の応答処理については後述する。
【0090】
次に、運行制御手段50は、未応答のかご呼びの有無を判断する(ステップS23)。かご呼びがあると判断した場合(ステップS23のYES)、運行制御手段50は、かご呼びのかご7の応答処理を行なう(ステップS24)。なお、かご呼びのかご7の応答処理についても後述する。その後、ステップS26の処理に移行する。
【0091】
一方、かご呼びがないと判断した場合(ステップS23のNO)、運行制御手段50は、現在の運行方向における車両用運行モードの応答が終了したか否かを判断する(ステップS25)。具体的には、上述した車両用運行モードから一般用運行モードへの切替条件が成立したか否かを判断する。応答はまだ終了していないと判断した場合(ステップS25のNO)、運行制御手段50は、ステップS23の処理に移行する。そして、応答の終了まで、その後に発生するかご呼びの応答処理を行なう。なお、本実施形態では、その後に発生する車両用乗場呼びについては応答処理を行なわないが、実行するようにしてもよい。
【0092】
一方、ステップS21〜ステップS24の処理によって、応答することが選択された全ての乗場呼び及びかご呼びに応答が終了したと判断した場合(ステップS25のYES)、運行制御手段50は、未応答の他の乗場呼びがあるか否かを判断する(ステップS26)。すなわち、未応答の一般用乗場呼び又は運行方向とは異なる車両用乗場呼びの有無が判定される。未応答の他の乗場呼びがないと判断した場合(ステップS26のNO)、運行制御手段50は、遊休状態であるとしてかご7の運行処理を終了する。
【0093】
一方、未応答の他の乗場呼びがあると判断した場合(ステップS26のYES)、運行制御手段50は、運行方向を他方向に切り替える(ステップS27)。例えば、現在、運行方向が上昇方向であれば、下降方向に切り替える。その後、ステップS11の処理に戻る。このように、遊休状態となるまで運行モードが一般用運行モードと車両用運行モードに交互に切り替えられていく。
【0094】
次に、上述のステップS22の車両用乗場呼びの応答処理について図8を参照しつつ説明する。図8は、運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのかご7の応答処理を示すフローチャートである。
【0095】
運行制御手段50は、ステップS21の処理で運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びがあると判断した場合、運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びのうちから、1つ目の車両用乗場呼びをかご7に応答させる(ステップS40)。具体的には、この車両用乗場呼びの階床番号を応答情報に登録する。1つ目の車両用乗場呼びは、上記未応答の車両用乗場呼びのうちで優先順位の最も高い(最優先)の車両用乗場呼びである。
【0096】
次に、運行制御手段50は、次に応答すべき運行方向と同一方向の未応答の車両用乗場呼びの有無を判断する(ステップS41)。具体的には、ステップS40の処理で応答した第1象限と第4象限の車両用乗場呼びの有無を判断する。例えば、ステップS40の処理で、図6に示す車両用乗場呼びCD@350に応答させた場合、車両用乗場呼びCD@425が該当する。
【0097】
上記未応答の車両用乗場呼びがないと判断した場合(ステップS41のNO)、運行制御手段50は、ステップS43の処理に移行する。一方、上記未応答の車両用乗場呼びがあると判断した場合(ステップS41のYES)、運行制御手段50は、該当する上記未応答の車両用乗場呼びの中で優先順位の最も高いものを、上述のステップS40の処理と同様にかご7に応答させる(ステップS42)。
【0098】
次に、応答情報は運行制御手段50に送信され(ステップS43)、未応答の車両用乗場呼びの更新処理を行なう(ステップS44)。例えば、かご7に応答させた車両用乗場呼びの削除、残りの未応答の車両用乗場呼びの優先順位の更新を行なう。そして、運行制御手段50は、この応答処理を終了して上述したステップS23処理に移行する。
【0099】
次に、上述のステップS24のかご呼びのかご7の応答処理について図9を参照しつつ説明する。図9は、かご呼びのかご7の応答処理を示すフローチャートである。
【0100】
運行制御手段50は、ステップS23の処理で未応答のかご呼びがあると判断した場合、未応答のかご呼びの中から、1のかご呼びを選択する(ステップS50)。次に、運行制御手段50は、選択したかご呼びの行先階が、かご7の現在位置よりも運行方向上にあるか否かを判断する(ステップS51)。かご7の現在位置は、例えば、運行制御手段50から取得すればよい。
【0101】
かご7の現在位置よりも運行方向上にないと判断した場合(ステップS51のNO)、運行制御手段50は、ステップS55の処理に移行する。すなわち、このかご呼びのかご7の応答は行なわれない。したがって、例えば、車両用運行モード(運行方向:上)が開始され、かご7が10階から車両用乗場呼び(階床:1、行先方向:上)に応答して1階に下降している間、この時点でかご7に未だ残っている一般客がかご呼び(行先階:2)を行なっても、車両運行用モード中であるため、一般用かご呼びである2階には停止しない。
【0102】
一方、かご7の現在位置よりも運行方向上にあると判断した場合(ステップS51のYES)、運行制御手段50は、このかご呼びをかご7に応答させる(ステップS52)。具体的には、応答情報にこのかご呼びの行先階を登録する。その後、この応答情報を運行制御手段50に送信し(ステップS53)、未応答のかご呼びの更新処理を行なう(ステップS54)。更新処理では、例えば、応答させたかご呼びを削除する。
【0103】
次に、運行制御手段50は、未応答のかご呼び全てについてステップS51〜S54の処理が終了したか否かを判断する(ステップS55)。終了していないと判断した場合(ステップS55のNO)、運行制御手段50は、次の未応答のかご呼びを選択し(ステップS56)、ステップS51の処理に移行する。また、終了したと判断した場合(ステップS55のYES)、運行制御手段50は、この応答処理を終了して上述したステップS25の処理に移行する。
【0104】
次に、乗場車両用運行モード灯20の点灯処理について図10を参照しつつ詳述する。図10は、乗場車両用運行モード灯20の点灯処理のフローチャートである。この処理は、運行モードが車両用運行モードに切り替えられたことを契機として、主として運行制御手段50によって実行される。
【0105】
最初に、運行制御手段50は、点等回路を駆動してランプを点灯させる(ステップS60)。その後、車両用運行モードが終了する(ステップS61のYES)までランプの点灯を継続する。そして、車両用運行モードが終了したと判断した場合(ステップS61のYES)、運行制御手段50は、点灯回路の駆動を停止してランプを消灯する(ステップS62)。そして、この点灯処理を終了する。なお、図示は省略するが、かご内車両用運行モード灯90についても同様の点灯処理が行なわれる。
【0106】
なお、本実施形態では、現在の運行モードが車両用運行モードであることの案内をランプによって視覚的に行なっているが、LEDや液晶表示等であってもよく、また、特にこれらに限定されるものではない。例えば、音声出力による聴覚的な案内を行なう構成としてもよい。また、一般用運行モードの実行中であることを案内する表示も行なうようにしてもよい。この場合、一般用運行モードと車両用運行モードで点灯時の色彩を区別すればよい。
【0107】
次に、退出案内用スピーカ80の出力処理について図11を参照しつつ詳述する。図11は、退出案内用スピーカ80の出力処理のフローチャートである。この処理は、運行モードが車両用運行モードに切り替えられたことを契機として、主として運行制御手段50によって実行される。
【0108】
最初に、運行制御手段50は、上述したように予め記憶されている退出案内の音声データ(ディジタル信号)をアナログ信号に変替してスピーカ80から出力する(ステップS70)。その後、かご7が最初の階床に停止する(ステップS71のYES)まで上記音声出力を繰り返し行なう。そして、かご7が最初の階床に停止したと判断した場合(ステップS71のYES)、運行制御手段50は、音声出力を停止し(ステップS72)、この出力処理を終了する。
【0109】
なお、本実施形態では、退出案内を音声出力によって聴覚的に行っているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、液晶ディスプレイなどへのメッセージ表示(出力)による視覚的な案内を行なう構成としてもよい。また、本実施形態では、かご7が最初の階床に停止するまで音声出力が行なわれるが、特にこれに限定されるものではない。少なくとも車両用運行モードが実行されている間であればいつでもよい。
【0110】
以上のように、軽便車両の利用者の乗場呼び(車両用乗場呼び)と一般者の乗場呼び(一般用乗場呼び)が区別され、かごの運行モードが車両用運行モードと一般用運行モードに交互に切り替えられる。そして、車両用運行モード時には車両用乗場呼びに対する応答が行なわれ、一般用運行モード時には一般用乗場呼びに対する応答が行なわれる。すなわち、軽便車両の利用者及び一般者のかごの応答が交互に切り替えられて提供される。したがって、車両用運行モード時の一般者のかごへの乗り込みを抑制することができ、軽便車両の利用者が確実にかごに乗車できる運行を提供できる。これにより、軽便車両の利用者の最大待ち時間を短縮することができる。
【0111】
また、交互に運行モードが切り替わっても、例えば、車両用乗場呼びが発生しなければ一般用運行モードが実質的に継続して実行されるので、車両用乗場呼びが発生していないにも関わらず車両用運行モードが切り替わるのを待たなくてもよい。同様に、一般用乗場呼びが発生しなければ車両用運行モードが実質的に継続して実行されるので、一般用乗場呼びが発生していないにも拘わらず一般用運行モードが切り替わるのを待たなくてもよい。
【0112】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0113】
なお、上述実施形態では、乗場呼びは行先方向を入力する構成であるが、タッチパネル等を用いて行先階を入力する構成としてもよい。また、上述の実施形態では、車両用運行モード時に応答させる一般用乗場呼びの最大数が2であったが、特にこれに限定されるものではない。乗場の数よりも少なければよい。あるいは、最大数を設定しなくてもよい。
【0114】
さらに、上述の実施形態では、乗場呼びが発生している状態では常に交互に運行モードが切り替えられるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、混雑する時間帯だけ運行モードを交互に切り替えるようにしてもよい。そして、混雑する時間帯以外は、一般用運行モードを継続して実行する。混雑時を除けば軽便車両の利用者が乗車できない場合は比較的少ないからである。交互に切り替える時間帯は、予め設定しておいてもよく、またエレベータシステムが混雑の判断をした場合に設定してもよい。混雑の判断は、例えば、階床に停止する頻度が高い場合、かご内の荷重が所定重量以上になった場合に混雑と判断すればよい。
【0115】
また、上述の実施形態では、運行されるかごは一台であったが、複数台のかごを一群として運行管理する群管理装置を有するエレベータシステムに本発明を適用してもよい。この場合、複数台のかごのそれぞれについて運行モードを設定し、各かごの運行モードを切り替えつつ、車両用運行モード実行中のかごに車両用乗場呼びを応答させ、一般用運行モード実行中のかごに一般用乗場呼びを応答させるようにすればよい。
【0116】
なお、群管理装置を有するエレベータシステムでは、割当変更が行なわれることがあり、また、複数台のかごの内、何れのかごが応答したかを利用者に知らせる必要がある。このため、必要に応じて、これらを利用者に報知する液晶ディスプレイ等の案内手段を配置することが望ましい。
【0117】
さらに、割当変更を行なう場合、特に車両呼びに対しては、利用者の移動の負担を小さくするために、車両用乗場呼びボタン40に隣接するかごへの割当変更とすることが好適である。この場合、運行制御手段50は、乗場における車両用乗場呼びボタン40の位置、隣接するかごの配置等のレイアウト情報を記憶しておき、割当変更の際にこの情報を参照することが望ましい。
【0118】
加えて、複数台のかごについて、特定のかごは車両用乗場呼び専用、特定のかごは一般用乗場呼び専用とすることもできる。この場合であっても、遊休状態のかごについては、エレベータシステムの運行効率を向上させるために、運行モードを車両用から一般用、または、一般用から車両用に切り替えることができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 エレベータシステム
2 車両用運行モード案内手段
3 一般用乗場呼び登録受付手段
4 車両用乗場呼び登録受付手段
5 運行制御装置
50 運行制御手段
6 かご制御装置
7 かご
8 退出案内手段
9 車両用運行モード案内手段
10 かご呼び登録受付手段
20 乗場車両用運行モード灯
30 一般用乗場呼びボタン
40 車両用乗場呼びボタン
51 モード制御手段
52 運行方向制御手段
53 応答制御手段
80 スピーカ
90 かご内車両用運行モード灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11