特許第6376030号(P6376030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376030
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】端子および端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-84268(P2015-84268)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-207305(P2016-207305A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 高信
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓次
(72)【発明者】
【氏名】横山 佳久
(72)【発明者】
【氏名】濱口 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 丈博
(72)【発明者】
【氏名】森川 悟史
(72)【発明者】
【氏名】浜田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 純一
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−171753(JP,A)
【文献】 実開平05−072053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を絶縁被覆で覆ったアルミ電線の端末に接続される端子であって、
前記アルミ電線の長手方向と交差する方向に延出して形成され、前記絶縁被覆の外周面に圧着される一対の圧着片を備えており、
前記一対の圧着片は前記絶縁被覆に圧着された状態において互いの先端部分のうち平坦面が対向して突き当てられるとともに、
前記先端部分で前記絶縁被覆側に配される内側縁部は、前記圧着片の先端に向かって斜めに切り欠かれた傾斜部とされている端子。
【請求項2】
芯線を絶縁被覆で覆ったアルミ電線と、前記アルミ電線に接続される請求項1に記載の端子とを備えた端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、端子および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等のワイヤハーネス等の分野において、軽量化等を目的としてアルミ電線が使用されている。アルミ電線は、例えば複数本のアルミ素線を撚り合わせた撚り線からなる芯線を絶縁被覆で覆った構造であって、ハーネス化される場合は、一般的に、電線の端末に端子が接続される。具体的には、アルミ電線の絶縁被覆の端末が皮剥ぎされて芯線の端末が露出され、この露出された芯線の端末に対して、端子に設けられたワイヤバレル(電線接続部)が圧着されて接続され、残った絶縁被覆の端末に、ワイヤバレルの後方に設けられたインシュレーションバレルが圧着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−192530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで最近では、さらなる軽量化を目的として、従来より径が細いアルミ電線が製造されている。しかしこのような細径のアルミ電線は耐衝撃強度が低く、端子に接続された状態において電線に大きな衝撃が加わった場合に、ワイヤバレルに圧着された部分が比較的断線し易いという事情がある。
【0005】
アルミ電線の断線を防ぐためには、インシュレーションバレルの保持力を高めることにより、ワイヤバレル圧着部にかかる衝撃強度を弱める方法が考えられる。しかし、保持力を高めるべくインシュレーションバレルを絶縁被覆に対して高圧縮で圧着する際には、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、一対のインシュレーションバレル片のうち一方側の上面に他方側を重ね合わせて加締めるいわゆるオーバーラップ形態では、絶縁被覆を強い力で圧縮すると、内側のインシュレーションバレル片の先端面の縁部のエッジが絶縁被覆に対して食い込んで局所的に大きな力を加えることとなり、電線が後方に向けて急激に引っ張られた際に、絶縁被覆が損傷して破断する虞がある。このため、オーバーラップ形態ではインシュレーションバレルの圧着強度を上げることが困難である。
【0007】
また、一対のインシュレーションバレル片を電線の延び方向にずらして配し、前後の異なる位置で加締める形態では、インシュレーションバレル片を絶縁被覆の周方向全体において均等な力で加締めることが困難であるため、充分な保持力が得られないという問題がある。
【0008】
このように、いずれの形態においても、インシュレーションバレルの保持力を高めることは困難であった。
【0009】
本明細書で開示される技術は上記の課題に鑑みて考えられたものであって、絶縁被覆の外周面に圧着される圧着片の保持力が高い端子および端子付き電線を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書により開示される技術は、芯線を絶縁被覆で覆ったアルミ電線の端末に接続される端子であって、前記アルミ電線の長手方向と交差する方向に延出して形成され、前記絶縁被覆の外周面に圧着される一対の圧着片を備えており、前記一対の圧着片は前記絶縁被覆に圧着された状態において互いの先端部分のうち平坦面が対向して突き当てられるとともに、前記先端部分で前記絶縁被覆側に配される内側縁部は、前記圧着片の先端に向かって斜めに切り欠かれた傾斜部とされていることを特徴とする。
【0011】
また、本明細書で開示される技術は端子付き電線であって、芯線を絶縁被覆で覆ったアルミ電線と、アルミ電線に接続される前記端子とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、一対の圧着片の先端部分が互いに対向するとともに突き当てられることにより、先端部分の縁部同士が突き合わされ、圧着片のうち絶縁被覆側となる内周面がほぼ連続した状態とされる。よって、先端部分の縁部のエッジが絶縁被覆に食い込み難く、高圧縮で圧着片を圧着した場合でも、絶縁被覆に傷がつくことが回避される。また、絶縁被覆に対する圧縮率を所望の圧縮率となるように圧着片の長さ寸法を予め設定しておくことにより、圧着状態において所望の圧縮率が得られる。
【0014】
圧着片を絶縁被覆に対して強い力で圧着する場合、圧着の過程で、一対の圧着片の先端部分間に絶縁被覆が押し寄せられつつ噛み込まれる場合があるが、このような傾斜部を設けることにより、噛み込まれそうになった部分が一対の傾斜部により囲まれる山形の領域内に逃がされ易くなり、噛み込みを回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示した技術によれば、圧着片の保持力が高い端子および端子付き電線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の端子付き電線の側面図
図2】雌端子の要部拡大斜視図
図3】インシュレーションバレルの断面図
図4】インシュレーションバレルにアルミ電線を配した状態の断面図
図5】インシュレーションバレルをアルミ電線に圧着した状態の断面図
図6】他の実施形態の端子の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態について図1から図5を参照して説明する。
【0018】
本実施形態は、例えば車両に配策される端子付き電線30を例示しており、この端子付き電線30は、雌端子10と、雌端子10に接続されて雌端子10から後方に引き出されるアルミ電線20とを備えて構成されている(図1参照)。なお、以下の説明では、図1における左側を前方、右側を後方、上側を上方と、下側を下方とする。また、図2における右下を左、左上を右とする。
【0019】
アルミ電線20は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線によって芯線21を形成し、この芯線21が合成樹脂製の絶縁被覆22により覆われた構造となっている。アルミ電線20は、端末の絶縁被覆22が皮剥ぎされて、芯線21が絶縁被覆22から前方に露出しており、この端末に雌端子10が接続されている。
【0020】
雌端子10は、銅合金からなる基材を打ち抜いて曲げ加工等を施すことにより形成されており、図1に示すように、端子接続部11と、アルミ電線20の芯線21に接続されるワイヤバレル12と、アルミ電線20の絶縁被覆22に圧着されるインシュレーションバレル14と、ワイヤバレル12とインシュレーションバレル14との間を繋ぐ繋ぎ部13と、を有している。端子接続部11は、角筒状をなす箱状に成形されており、その内部に図示しない雄端子のタブが挿入され、電気的に接続されるようになっている。
【0021】
ワイヤバレル12はオープンバレル形式であって、図2に示すように、左右に伸びる一対のワイヤバレル片12Bが底板部12Aの左右の側縁から互いに対向するようにして立ち上がっている。これらワイヤバレル片12Bは、アルミ電線20の前端部において絶縁被覆22から露出する芯線21に対して内向きに巻き込まれる形で加締められることで、当該芯線21に圧着され、電気的に接続される。なお、ワイヤバレル12のうちアルミ電線20の芯線21に圧着される面(内面)には、芯線21との良好な導通を図るとともに芯線21の保持力を高めるための凹状の複数のセレーション12Cが設けられている。
【0022】
一方、インシュレーションバレル14は同じくオープンバレル形式であって、繋ぎ部13を挟んでワイヤバレル12の後方に設けられており、左右対称な同形同大の略矩形状の一対のインシュレーションバレル片14B(圧着片の一例)が、底板部14Aの左右の側縁から左右対称となる位置において延出されて互いに対向するように立ち上がっている。言い換えると、一対のインシュレーションバレル片14Bは、アルミ電線20の長手方向(前後方向)と交差する左右方向に延出した形態とされている。
【0023】
これら一対のインシュレーションバレル片14Bは、底板部14Aに載置されたアルミ電線20の絶縁被覆22の外周に巻き付けられ、絶縁被覆22の外周面に対して径方向に圧着されるようになっている。一対のインシュレーションバレル片14Bは、絶縁被覆22に圧着される際には、平坦面状とされた互いの先端部分14Cが対向するとともに突き合わされる形態とされる。なお、一対のインシュレーションバレル片14Bは、絶縁被覆22に圧着された状態において、絶縁被覆22が所望の圧縮率で圧縮される長さ寸法に、予め設定されている。
【0024】
さらに、インシュレーションバレル片14Bの先端部分14Cのうち、絶縁被覆22に圧着された状態において絶縁被覆22側に配される内側の縁部の角部は、図2および図3に示すように、アルミ電線20の長手方向(前後方向)に沿って延びるように先端側に向けて斜めに切り欠かれており、この切り欠かれた部分が傾斜部14Dとされている。
【0025】
続いて、雌端子10およびアルミ電線20を組み付ける手順について説明する。まず、ワイヤバレル12およびインシュレーションバレル14の底板部12A、14A、および、繋ぎ部13の上面に、端末において絶縁被覆22が皮剥ぎされて芯線21が露出したアルミ電線20を載置する(図4参照)。ここで、アルミ電線20は、繋ぎ部13上に芯線21と絶縁被覆22との境界部分が配されるように載置され、雌端子10に対するアルミ電線20の前後の位置が決定される(図1参照)。
【0026】
次に、ワイヤバレル12における一対のワイヤバレル片12Bをアルミ電線20の芯線21に対して内側に巻き込むようにして圧着すると共に、インシュレーションバレル14における一対のインシュレーションバレル片14Bをアルミ電線20の絶縁被覆22に巻き付けるようにして圧着する。
【0027】
この圧着の過程において、芯線21に対してワイヤバレル12を圧着する際には、セレーション12Cの凹部の孔縁が芯線21に食い込むことで、芯線21に形成された酸化皮膜が破壊されるとともに、ワイヤバレル12が芯線21に対して強固に圧着固定される。
【0028】
一方、絶縁被覆22に対してインシュレーションバレル14を圧着する際には、一対のインシュレーションバレル片14Bを、それらの先端部分14Cが互いに対向するとともに突き合わされてぴったり重なるように、絶縁被覆22の外周に巻きつけつつ加締める(図5参照)。このように一対のインシュレーションバレル片14Bが絶縁被覆22に圧着された状態において、これらの突き合わせ部分の内周面側には、一対の傾斜部14Dにより、径方向の外側に向けて断面がなだらかな山状に窪んだ凹状部15が形成される。
【0029】
またこのような圧着状態において、インシュレーションバレル14の内周面(絶縁被覆22側の面)は、ほぼなだらかに連続した状態とされている。詳細には、上述した凹状部15が形成されているものの、この凹状部15(傾斜部14D)は直角状の段差や鋭角なエッジとは異なり、なだらかな状態でインシュレーションバレル片14Bの傾斜部14Dを除く内周面と連続している。
【0030】
また、一対のインシュレーションバレル片14Bの長さ寸法は、インシュレーションバレル14が絶縁被覆22に圧着された状態において絶縁被覆22が所望の圧縮率となるように予め設定されているから、絶縁被覆22は過不足ない所望の圧縮率で圧縮される。
【0031】
以上のように、芯線21に対してワイヤバレル12が圧着固定され、絶縁被覆22に対してインシュレーションバレル14が圧着固定されることで、アルミ電線20の端末に雌端子10が取り付けられた端子付き電線30が得られる。
【0032】
次に、本実施形態の雌端子10および端子付き電線30の作用効果について説明する。本実施形態の端子付き電線30によれば、インシュレーションバレル14が絶縁被覆22に圧着された状態において、一対のインシュレーションバレル片14Bの先端部分14Cは互いにぴったり重なるように突き合わされているから、インシュレーションバレル片14Bのうち絶縁被覆22に接触する内周面側に絶縁被覆22に対して局所的に強く押し当てられる部分がなく、高圧縮な状態としても絶縁被覆22にエッジ等が食い込んで傷がつくことが抑制される。
【0033】
また、インシュレーションバレル14を強い力で圧着する際には、一対のインシュレーションバレル片14Bを加締める過程において、絶縁被覆22の一部が下方から上方に向けて押し寄せられ、一対の先端部分14C間に噛み込まれそうになる場合があるが、そのような場合でも、噛み込まれそうになった部分は上記凹状部15内に逃がされるため、噛み込を回避することができる。
【0034】
もって、インシュレーションバレル14を従来と比較して絶縁被覆22に対して高圧縮で圧着することができ、インシュレーションバレル14の保持力が高い雌端子10および端子付き電線30を得ることができる。
【0035】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0036】
(1)上記実施形態では、インシュレーションバレル14の先端部分14Cの内周側の縁部に傾斜部14Dを設けたが、参考例として、傾斜部14Dは必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
(2)上記実施形態では、インシュレーションバレル片14Bの先端部分14Cを平坦面状としたが、参考例として、セレーション等の若干の凹凸を設ける等、平坦面状に限らず他の形態としてもよい。

【0038】
(3)端子の種類や形態は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、図6に示すように、上記実施形態と同様の形態のインシュレーションバレル44の後方側に、ゴム栓を保持するための一対のゴム栓用バレル46を一体に設けた端子40に適用することもできる。また、雌端子10に限らず、絶縁被覆22に圧着するインシュレーションバレルが設けられた雄端子など、インシュレーションバレルが設けられた端子全般に本明細書で開示した技術を広く適用できる。
【符号の説明】
【0039】
10…雌端子(端子)
12…ワイヤバレル
13…繋ぎ部
14…インシュレーションバレル
14B…インシュレーションバレル片(圧着片)
14C…先端部分
14D…傾斜部
15…凹状部
20…アルミ電線
21…芯線
22…絶縁被覆
30…端子付き電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6