特許第6376050号(P6376050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376050
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/24 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   H01R13/24
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-122669(P2015-122669)
(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公開番号】特開2017-10673(P2017-10673A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢一
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−019242(JP,A)
【文献】 特開2003−031194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24、13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
導電性を有し、前記本体部に保持された保持部と、該保持部から相手側端子に向けて伸びるとともに可撓性を有する可撓部と、該可撓部の先端部に設けられ、該相手側端子に押圧接触して該相手側端子と接続される接続部と、を有する導電部材と、
ばね性を有し、前記本体部に保持されるとともに、該本体部から前記接続部に向けて伸びるばね部材と、を備え、
前記接続部における前記相手側端子に押圧接触する側に金属板が固着されており、
前記ばね部材は、前記接続部における前記金属板が固着された側とは反対側の面に接触することで該接続部にばね性を付与する接触部を有するコネクタ。
【請求項2】
本体部と、
導電性を有し、前記本体部に保持された保持部と、該保持部から相手側端子に向けて伸びるとともに可撓性を有する可撓部と、該可撓部の先端部に設けられ、該相手側端子に押圧接触して該相手側端子と接続される接続部と、を有する導電部材と、
ばね性を有し、前記本体部に保持されるとともに、該本体部から前記接続部に向けて伸びるばね部材と、を備え、
前記ばね部材は、前記接続部に接触することで該接続部にばね性を付与する接触部を有しており、
前記導電部材は、芯線が被覆で覆われた電線であり、
前記可撓部及び前記接続部は、前記電線の前記被覆から露出する前記芯線とされ、
前記接続部における前記芯線のうち前記相手側端子に押圧接触する側に金属板が固着されているコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ばね性を有する片持ち状のばね端子と、ばね端子を保持する本体部と、を備え、このばね端子が相手側端子に押圧接触することで両端子間が電気的に接続されるコネクタが知られている。例えば下記特許文献1には、弾性変形することで電子部品に接触し、当該電子部品と接続されるばね端子としてのコンタクトと、このコンタクトが装着された本体部としてのインシュレータと、を備えるコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−307209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなばね端子を備えるコネクタでは、ばね端子と相手側端子との間の接続信頼性を確保するために十分な接圧を確保すべく、ばね端子にばね性を持たせるため、ばね端子において本体部に保持された部位から相手側端子に接続される部位までの長さを十分に確保する必要がある。このため、ばね端子が相手側端子に接続された際、即ち導通時にばね端子における導通部分の長さが長く、導通部分の抵抗が高くなり、導通部分の温度上昇が大きかった。
【0005】
本明細書で開示される技術は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、通電時における導電部材の温度上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される技術は、本体部と、導電性を有し、前記本体部に保持された保持部と、該保持部から相手側端子に向けて伸びるとともに可撓性を有する可撓部と、該可撓部の先端部に設けられ、該相手側端子に押圧接触して該相手側端子と接続される接続部と、を有する導電部材と、ばね性を有し、前記本体部に保持されるとともに、該本体部から前記接続部に向けて伸びるばね部材と、を備え、前記ばね部材は、前記接続部に接触することで該接続部にばね性を付与する接触部を有するコネクタに関する。
【0007】
上記のコネクタでは、ばね部材の接触部が導電部材の接続部に接触することで、接続部を相手側端子に押圧接触するためのばね性がばね部材によって当該接続部に付与される。このため、導電部材と相手側端子との間の接続信頼性を確保するために十分な接圧を確保しながら、可撓部にばね性を持たせる必要がなく、可撓部の長さを短くすることができる。その結果、通電時における可撓部の低抵抗化を図ることができ、通電時における導電部材の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
上記のコネクタにおいて、前記導電部材は、芯線が被覆で覆われた電線であり、前記可撓部及び前記接続部は、前記電線の前記被覆から露出する前記芯線とされ、前記接続部における前記芯線のうち前記相手側端子に押圧接触する側に金属板が固着されていてもよい。
【0009】
これによると、導電部材について具体的な構成を提供することができる。また、導電部材の接続部における芯線のうち相手側端子に押圧接触する側に金属板が固着されることで、接続部を相手側端子に対して接触し易い構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示される技術によれば、通電時における導電部材の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るモータ側コネクタを含む接続装置の斜視図
図2】モータ側コネクタを含む接続装置を上方から視た平面図
図3図2におけるIII−III断面の断面構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施形態を説明する。本実施形態では、例えばハイブリッド自動車や電気自動車において、図示しないインバータと図示しないモータとの間を電気的に接続する接続装置1を構成するモータ側コネクタ(コネクタの一例)10について例示する。
【0013】
なお、各図面の一部には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で示した方向となるように描かれている。このうちX軸方向は、図2における紙面右側を右方向としてモータ側コネクタ10の左右方向と一致しており、Y軸方向は、図3における紙面右側を前方としてモータ側コネクタ10の前後方向と一致しており、Z軸方向は、図1及び図3における紙面上側を上方としてモータ側コネクタ10の上下方向と一致している。
【0014】
先に本実施形態のモータ側コネクタ10を含む接続装置1について説明する。接続装置1は、図1に示すように、モータ側コネクタ10と、モータ側コネクタ10に保持され、その一端部がモータと電気的に接続される電線(導電部材の一例)20と、モータ側コネクタ10に組み付けられるインバータ側コネクタ30と、インバータと電気的に接続されるインバータ側端子(相手側端子の一例)40と、を備える。なお、各図面では、上側をモータ側とし、下側をインバータ側として図示している。
【0015】
モータ側コネクタ10は、モータを収容する図示しないモータケースの外面に取り付けられており、インバータ側コネクタ30は、モータ側コネクタ10と対向する形で、インバータを収容する図示しないインバータケースの外面に取り付けられている。インバータ側端子40は、インバータから伸びてインバータ側コネクタ30の下方に配されており、インバータ側コネクタ30の後述するインバータ側開口部30A(図3参照)から上方に露出している。そして接続装置1は、モータ側コネクタ10とインバータ側コネクタ30が組み付けられることで、電線20とインバータ側端子40との間を電気的に接続する部材とされる。
【0016】
インバータ側コネクタ30は、合成樹脂製とされ、図1及び図2に示すように、略平板状をなしている。インバータ側コネクタ30には、上下方向に開口するインバータ側開口部30A(図3参照)が設けられている。インバータ側開口部30Aは、インバータ側コネクタ30がインバータケースに取り付けられた状態でインバータ側端子40が上方に露出するような配置及び大きさで開口している。
【0017】
インバータ側端子40は、剛性を有する板状のバスバーであり、その板面がX−Y平面と略平行となって前後方向に伸びている。インバータ側端子40は、上述したようにその一端部がインバータと接続されており、その他端部がインバータ側開口部30Aから上方に露出している。なお、インバータ側端子40は、剛性を有することから、後述する電線20の接続部20Cが押圧接触した状態でも撓み難くなっている。
【0018】
次に、モータ側コネクタ10の構成について詳しく説明する。モータ側コネクタ10は、各図面に示すように、合成樹脂製とされた本体部14と、薄い枠板状の鉄板からなる鉄板部材16と、本体部14に取り付けられ、電線20のうち本体部14内の空間S1に位置する部位を覆うカバー部材18と、から構成される。本体部14は、短い略筒状をなしており、上下方向に開口している。鉄板部材16は、インサート成形によって本体部14に保持されて本体部14と一体化されている。そして電線20は、前後に伸びる形で本体部14に支持されている。
【0019】
鉄板部材16の左右両側の部分には、それぞれ上下方向に貫通するダルマ孔16Aが設けられている。このダルマ孔16Aには、インバータ側コネクタ30に取り付けられた位置決めピン32が挿通され、鉄板部材16は、ダルマ孔16Aに位置決めピン32が挿通された状態からダルマ孔16Aに沿ってインバータ側コネクタ30に対して相対的に前後方向にスライドされることで、インバータ側コネクタ30との間でスライドロックされる。
【0020】
カバー部材18の内面(下方に向けられた面)には、本体部14に装着される装着部18Aが設けられている。カバー部材18は、その左右両側の部分が本体部14に対してボルト締結により取り付けられるとともに、装着部18Aが本体部14の上方の開口に装着される。なお、装着部18Aは、本体部14の開口の内周面に対してシールリングを介して密着されるようになっている。
【0021】
本体部14に支持される電線20は、図3に示すように、芯線21Aと、その芯線21Aを被覆する絶縁被覆21Bと、により構成されている。電線20は、本体部14の前側部分に埋め込まれており、本体部14内の空間S1まで伸びている。電線20のうち本体部14内の空間S1に伸びる部分は、絶縁被覆21Bから芯線21Aが露出している。各電線20は、図3に示すように、本体部14に埋め込まれることで本体部14に保持された部位が保持部20Aとされる。
【0022】
また、電線20は、保持部20Aからインバータ側端子40に向けて下方に伸びるとともに可撓性を有する可撓部20Bと、可撓部20Bの先端部において後述する金属板50を介してインバータ側端子40に押圧接触することで当該インバータ側端子40と接続される接続部20Cと、を有している。
【0023】
電線20の可撓部20Bは、図3に示す断面視において略S字状に撓んでおり、その先端部がインバータ側開口部30Aの下方に至るまで伸びている。電線20は、可撓部20Bが可撓性を有することで、インバータ側端子40に接触された際にその反力によって撓んで当該インバータ側端子40に押圧接触可能となっている。
【0024】
電線20の接続部20Cでは、図3に示すように、芯線21Aがめっき処理によって上下両側が略平坦となるように固められており、固められた部位の下側がインバータ側端子40に押圧接触する接点P1となっている。接続部20Cの接点P1には、導電性に優れた金属板50が抵抗溶接によって固着されている。接続部20Cに固着された金属板50の板面は、インバータ側端子40の板面と略平行とされている。これにより、接続部20Cがインバータ側端子40に対して接触し易くなっている。
【0025】
ここで本実施形態では、図3に示すように、電線20と対応する形で、本体部14の後側部分に、ステンレス鋼により形成されてばね性を有するばね部材60が埋め込まれている。ばね部材60は、ステンレス鋼により形成された板ばねを曲げ加工することでなっている。
【0026】
ばね部材60は、本体部14から本体部14内の空間S1を電線20の接続部20Cに至るまで伸びており、本体部14に埋め込まれた埋め込み部60Aと、本体部14内の空間S1を蛇行状に曲がりながら電線20の接続部20Cまで伸びる蛇行部60Bと、蛇行部60Bの先端部において電線20の接続部20Cに接触する接触部60Cと、を有している。
【0027】
ばね部材60の接触部60Cは、電線20の接続部20Cをその上方から付勢する形で当該接続部20Cの上面(金属板50が固着された側とは反対側の面)に接触している。これにより、電線20の接続部20Cに対してばね部材60からばね性が付与され、電線20の接続部20Cがインバータ側端子40に押圧接触した際、接続部20Cからインバータ側端子40に、両者の間の接続信頼性を確保するために十分な接圧が加わるようになっている。
【0028】
さて、以上のような構成とされた本実施形態のモータ側コネクタ10では、上述したように、ばね部材60の接触部60Cが電線20の接続部20Cのうちインバータ側端子40に押圧接触する側とは反対側に接触することで、ばね部材60から接続部20Cに、当該接続部20Cをインバータ側端子40に対して接続信頼性を確保するために十分な接圧で押圧接触するためのばね性が付与される。
【0029】
このため、電線20の可撓部20Bにばね性を持たせる必要がなく、当該可撓部20Bの長さを従来のものと比べて短くすることができる。その結果、通電時における可撓部20Bの低抵抗化を図ることができ、通電時における電線20の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
上記の実施形態の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施形態では、ばね部材の接触部が電線の接続部の上面に接触する構成を例示したが、ばね部材の接触部が電線の接続部をその下方から付勢する形で当該接続部の下面、即ち、接続部のうちインバータ側端子に押圧接触する側に直接接触する構成、又は上記金属板を介して接触する構成であってもよい。この場合、電線の可撓部を十分に撓ませた状態でばね部材の接触部を電線の接続部に接触させることで、接続部が接触部によってその下方から付勢されると、可撓部に生じる反力によって、ばね部材から接続部に、当該接続部をインバータ側端子に対して接続信頼性を確保するために十分な接圧で押圧接触するためのばね性が付与される。
【0031】
(2)上記の実施形態では、導電部材の一例として、芯線が被覆で覆われた電線を例示したが、導電部材については限定されない。例えば、導電部材が編組線であってもよい。
【0032】
)上記の実施形態では、電線の可撓部が断面視略S字状に撓んだ構成を例示したが、例えば可撓部が十分な柔軟性を有している場合、可撓部が保持部から接続部に向けて直線状に伸びる構成であってもよい。
【0033】
)上記の実施形態では、ばね部材が板ばねを曲げ加工することでなる構成を例示したが、ばね部材の構成については限定されない。例えば、ばね部材がコイルばねであってもよい。この場合、ばね部材がカバー部材の裏側(本体部内の空間に向けられた側)に保持され、電線の接続部に向けて下方に伸びる構成であってもよい。
【0034】
)上記の実施形態では、ばね部材がステンレス鋼により形成された構成を例示したが、ばね部材を構成する材料については限定されない。
【0035】
)上記の実施形態では、コネクタの一例としてモータ側コネクタを例示したが、本明細書で開示される技術は、モータ側コネクタ以外のコネクタにおいても適用可能である。

【0036】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…接続装置
10…モータ側コネクタ
14…本体部
16…鉄板部材
18…カバー部材
20…電線
20A…保持部
20B…可撓部
20C…接続部
30…インバータ側コネクタ
32…位置決めピン
40…インバータ側端子
50…金属板
60…ばね部材
60A…埋め込み部
60B…蛇行部
60C…接触部
P1…接点
S1…空間
図1
図2
図3