(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記充電率が前記規定値以上であり前記規定値よりも大きい閾値未満であるとき、前記二次電池に対する回生電流の分配比率を前記コイルに対する回生電流の分配比率よりも大きくし、前記充電率が前記閾値以上であるとき、前記コイルに対する回生電流の分配比率を前記二次電池に対する回生電流の分配比率よりも大きくする、
請求項23に記載の車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、タイヤ内のホイール外周に発熱手段を設け、タイヤ内部の空気の温度を上昇させることによって、タイヤの温度を上昇させる。タイヤの温度を効率良く上昇させるためには、改善の余地がある。
【0005】
本発明の態様は、タイヤを短時間で効率良く加温して、転がり抵抗を低減し燃費の改善に寄与できるタイヤ加温システム及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、車両の走行装置に装着され、ゴム及び前記ゴムに埋設された金属を含むタイヤを加温するタイヤ加温システムであって、前記タイヤの周囲の少なくとも一部に設けられるコイルと、前記走行装置が停止状態において前記コイルに電流を供給して前記タイヤを誘導加熱する電力供給装置と、を備えるタイヤ加温システムが提供される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、タイヤを含む走行装置の停止状態において、電力供給装置からコイルに電流が供給されることにより、金属を含むタイヤは誘導加熱(IH:induction heating)され、短時間で効率良く加温される。タイヤの走行開始前にタイヤが温められるので、タイヤの走行開始直後から転がり抵抗は低減される。したがって、タイヤが装着された車両の燃費は改善される。
【0008】
本発明の第1の態様において、前記タイヤのトレッド部と接触した状態で前記タイヤを支持する支持部材を備え、前記コイルは、前記支持部材に設けられる第1コイルを含んでもよい。
【0009】
タイヤのトレッド部と接触する支持部材の第1コイルに電流が供給されることにより、タイヤは短時間で効率良く誘導加熱される。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記コイルは、前記車両のホイールハウスに設けられる第2コイルを含んでもよい。
【0011】
車両にコイルを設ける場合、非回転体であるホイールハウスに第2コイルを設けることにより、回転体に第2コイルを設ける場合に比べて、スリップリングのようなロータリーコネクタは不要となる。そのため、加温システムの配線の簡素化が図られ、低コスト化及び長寿命化に寄与することができる。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記電力供給装置は、前記車両の外部に設けられ、前記車両に設けられた二次電池を充電可能であり、前記車両は、前記電力供給装置から前記二次電池に供給される電流が流れる第1導電路と、前記電力供給装置から前記第2コイルに供給される電流が流れる第2導電路とを有し、前記電力供給装置からの電流は、前記二次電池を介さずに、前記第2コイルに供給されてもよい。
【0013】
一般に、車両に二次電池が設けられる。車両に設けられている二次電池を使用することなくタイヤが加温されるので、二次電池の充電率の低下が抑制される。例えば、車両が電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車である場合、その車両には走行装置の動力源である電動機に電力を供給するための二次電池(EV駆動バッテリー)が設けられる。EV駆動バッテリーの充電率の低下が抑制されることにより、車両の航続距離の低下が抑制される。なお、二次電池は、回生ブレーキが発生する回生電力を蓄える回生専用バッテリーでもよいし、ランプ類、空調装置、及びカーナビゲーションシステムのような電子機器を駆動するための低電圧バッテリー(50V以下のバッテリー等)でもよい。
【0014】
本発明の第1の態様において、前記二次電池の充電率を示す充電率データを取得する充電率データ取得部と、前記充電率データに基づいて、前記第2コイルに対する電流の供給を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0015】
充電率データに基づいて第2コイルに対する電流の供給が制御されることにより、二次電池の充電率不足が抑制されつつ、タイヤが加温される。二次電池の充電率が低い場合、制御部は、電力供給装置から第2コイルに対する電流の供給を停止する。これにより、電力供給装置から二次電池に電流が十分に供給され、二次電池の充電率不足が抑制される。二次電池の充電率が高い場合、制御部は、電力供給装置から第2コイルに対して電流を供給する。これにより、タイヤは加温される。
【0016】
本発明の第1の態様において、ユーザにより操作される操作装置から出力された指令データを受信する受信部と、前記受信部で受信された前記指令データに基づいて前記コイルに対する電流の供給を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0017】
これにより、ユーザが意図する制御条件でタイヤを加温することができる。
【0018】
本発明の第1の態様において、前記指令データは、前記誘導加熱の開始を示す開始指令データを含んでもよい。
【0019】
指令データが誘導加熱の開始を示す開始指令データを含むことにより、ユーザが意図するタイミングでタイヤの加温が開始される。
【0020】
本発明の第1の態様において、前記指令データは、停止状態の前記走行装置の走行を開始させる出発予定時刻を示す出発予定時刻データを含み、前記制御部は、前記出発予定時刻データに基づいて、前記出発予定時刻に前記タイヤが規定温度になるように、前記コイルに対する電流の供給を制御してもよい。
【0021】
指令データが出発予定時刻データを含むことにより、電力供給装置が置かれている場所(例えば自宅)から車両が出発する前にタイヤが加温される。そのため、車両が出発した直後からタイヤの転がり抵抗が低減される。
【0022】
本発明の第1の態様において、停止状態の前記走行装置の走行を開始させる出発予定時刻を示す出発予定時刻データを取得する出発予定時刻データ取得部と、前記出発予定時刻データに基づいて、前記出発予定時刻に前記タイヤが規定温度になるように、前記コイルに対する電流の供給を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0023】
出発予定時刻データが出発予定時刻データ取得部に取得され、取得された出発予定時刻に基づいてコイルに対する電流の供給が制御されることにより、電力供給装置が置かれている場所(例えば自宅)から車両が出発する前にタイヤが加温される。そのため、車両が出発した直後からタイヤの転がり抵抗が低減される。
【0024】
本発明の第1の態様において、前記タイヤ又は外気の温度を示す温度データを取得する温度データ取得部と、前記温度データに基づいて、前記コイルに対する前記電流の供給を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0025】
温度データが温度データ取得部に取得され、取得された温度データに基づいてコイルに対する電流の供給が制御されることにより、タイヤは転がり抵抗が低減される規定温度に調整される。
【0026】
本発明の第1の態様において、前記温度データ取得部で取得された前記温度が規定温度以上か否かを判定する判定部を備え、前記制御部は、前記規定温度以上であると判定されたとき、前記コイルに対する前記電流の供給を停止してもよい。
【0027】
タイヤの温度又は外気の温度が低い場合にはタイヤを誘導加熱し、タイヤの温度又は外気の温度が高い場合にはタイヤを誘導加熱しない制御が行われる。これにより、タイヤは効率良く加温されるとともに、タイヤが無駄に加温されることが抑制される。
【0028】
本発明の第2の態様に従えば、ゴム及び前記ゴムに埋設された金属を含むタイヤが装着される走行装置と、前記タイヤの周囲の少なくとも一部に設けられるコイルと、前記コイルに電流を供給して前記タイヤを誘導加熱する電力供給装置と、前記電力供給装置を制御する制御部と、を備える車両が提供される。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、電力供給装置からコイルに電流が供給されることにより、金属を含むタイヤは誘導加熱(IH:induction heating)され、短時間で効率良く加温される。したがって、タイヤが装着された車両の燃費は改善される。
【0030】
本発明の第2の態様において、前記タイヤが収納されるホイールハウスを備え、前記コイルは、前記ホイールハウスに設けられてもよい。
【0031】
非回転体であるホイールハウスにコイルが設けられることにより、回転体にコイルを設ける場合に比べて、スリップリングのようなロータリーコネクタは不要となる。そのため、配線の簡素化が図られ、低コスト化及び長寿命化に寄与することができる。
【0032】
本発明の第2の態様において、前記タイヤ又は外気の温度を示す温度データを取得する温度データ取得部を備え、前記制御部は、前記温度データに基づいて、前記コイルに対する前記電流の供給を制御してもよい。
【0033】
温度データが温度データ取得部に取得され、取得された温度データに基づいてコイルに対する電流の供給が制御されることにより、タイヤは転がり抵抗が低減される規定温度に調整される。
【0034】
本発明の第2の態様において、前記電力供給装置は、回生電流を発生する回生モータ又は発電機を有し、前記コイルに供給される電流は、前記回生電流を含んでもよい。
【0035】
回生モータ又は発電機が発生する回生電流によりタイヤが加温されるので、タイヤの走行開始後、回生モータ又は発電機の作動によりタイヤが加温され、タイヤの走行開始直後から転がり抵抗が低減される。したがって、車両の燃費が改善される。
【0036】
本発明の第2の態様において、前記回生電流により充電される二次電池を備え、前記制御部は、前記コイル及び前記二次電池に対する前記回生電流の供給を制御してもよい。
【0037】
二次電池の充電が必要な状況又はタイヤの加温が不要な状況においては回生電流を二次電池に優先的に供給し、タイヤの加温が必要な状況又は二次電池の充電が不要な状況においては回生電流をコイルに優先的に供給することによって、回生電流を有効活用することができる。なお、二次電池は、電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車のような二次電池式自動車に設けられ、走行装置の動力源である電動機に電力を供給するための二次電池(EV駆動バッテリー)でもよいし、回生モータ又は発電機が発生する回生電力を蓄える回生専用バッテリーでもよいし、ランプ類、空調装置、及びカーナビゲーションシステムのような電子機器を駆動するための低電圧バッテリー(50V以下のバッテリー等)でもよい。
【0038】
本発明の第2の態様において、前記タイヤ又は外気の温度を示す温度データを取得する温度データ取得部を備え、前記制御部は、前記温度データに基づいて、前記コイル及び前記二次電池に対する前記回生電流の供給を制御してもよい。
【0039】
温度データに基づいてコイル及び二次電池に対する回生電流の供給が制御されることにより、タイヤの加温が必要なときだけタイヤが加温され、タイヤの加温が不要なときにはタイヤを加温せずに二次電池を充電することができる。
【0040】
本発明の第2の態様において、前記温度データ取得部で取得された前記温度が規定温度以上か否かを判定する判定部を備え、前記制御部は、前記規定温度以上であると判定されたとき、前記コイルに対する回生電流の供給を停止してもよい。
【0041】
タイヤ又は外気の温度が規定温度以上である場合、コイルに対する回生電流の供給が停止されることにより、タイヤの加温が不要であるにもかかわらずタイヤが無駄に加温されることが抑制される。
【0042】
本発明の第2の態様において、前記二次電池の充電率を示す充電率データを取得する充電率データ取得部を備え、前記制御部は、前記充電率データに基づいて、前記コイル及び前記二次電池に対する前記回生電流の供給を制御してもよい。
【0043】
充電率データに基づいてコイル及び二次電池に対する回生電流の供給が制御されることにより、二次電池の充電率不足が抑制されつつ、タイヤが加温される。
【0044】
本発明の第2の態様において、前記充電率データ取得部で取得された前記充電率が規定値以上か否かを判定する判定部を備え、前記制御部は、前記規定値以上でないと判定されたとき、前記コイルに対する回生電流の供給を停止してもよい。
【0045】
二次電池の充電率が規定値以上でない場合、回生モータ又は発電機からコイルに対する回生電流の供給が停止されることにより、回生電流は二次電池に優先的に供給され、二次電池は短時間で充電される。
【0046】
本発明の第2の態様において、前記制御部は、前記回生モータ又は発電機で発生した回生電流を、前記コイルと前記二次電池とに分配してもよい。
【0047】
回生電流がコイルと二次電池とに分配されることにより、タイヤの加温と並行して二次電池を充電することができる。
【0048】
本発明の第2の態様において、前記二次電池の充電率を示す充電率データを取得する充電率データ取得部を備え、前記制御部は、前記充電率データに基づいて、前記コイル及び前記二次電池に対する前記回生電流の分配比率を決定してもよい。
【0049】
これにより、充電率が低く二次電池の充電率低下抑制の優先度が高い状況においては二次電池に対する回生電流の分配比率を高め、充電率が高く二次電池の充電率低下抑制の優先度が低い状況においてはコイルに対する回生電流の分配比率を高めることができ、状況に応じて回生電流を適切に使用することができる。
【0050】
本発明の第2の態様において、前記充電率データ取得部で取得された前記充電率が規定値以上か否かを判定する判定部を備え、前記制御部は、前記規定値以上であると判定されたとき、前記回生電流を前記コイルと前記二次電池とに分配してもよい。
【0051】
二次電池の充電率が規定値以上であるときに、回生電流がコイルと二次電池とに分配されることにより、二次電池が十分に充電された状態でタイヤを加温することができる。
【0052】
本発明の第2の態様において、前記制御部は、前記充電率が前記規定値以上であり前記規定値よりも大きい閾値未満であるとき、前記二次電池に対する回生電流の分配比率を前記コイルに対する回生電流の分配比率よりも大きくし、前記充電率が前記閾値以上であるとき、前記コイルに対する回生電流の分配比率を前記二次電池に対する回生電流の分配比率よりも大きくしてもよい。
【0053】
例えば、二次電池の充電率が規定値以上であるものの閾値未満であって不足している場合、二次電池に対する回生電流の分配比率をコイルに対する回生電流の分配比率よりも大きくすることにより、二次電池を短時間で十分に充電することができる。また、二次電池の充電率が閾値以上であって十分である場合、コイルに対する回生電流の分配比率を二次電池に対する回生電流の分配比率よりも大きくすることによって、タイヤを短時間で十分に加温することができる。
【0054】
本発明の第2の態様において、前記回生モータ又は発電機から前記二次電池に供給される回生電流が流れる第1導電路と、前記回生モータ又は発電機から前記コイルに供給される回生電流が流れる第2導電路と、を備え、前記回生モータ又は発電機からの回生電流は、前記二次電池を介さずに、前記コイルに供給されてもよい。
【0055】
二次電池を使用することなくタイヤが加温されるので、二次電池の充電率の低下が抑制される。例えば、二次電池がEV駆動バッテリーである場合、EV駆動バッテリーの充電率の低下が抑制されることにより、車両の航続距離の低下が抑制される。二次電池が低電圧バッテリーである場合、低電圧バッテリーの充電率の低下が抑制されることにより、所謂バッテリー上がりが抑制される。
【発明の効果】
【0056】
本発明の態様によれば、タイヤを短時間で効率良く加温して、転がり抵抗を低減し燃費の改善に寄与できるタイヤ加温システム及び車両が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0059】
<第1実施形態>
[タイヤ]
図1は、タイヤ1の一部を拡大した断面図である。タイヤ1は、空気入りタイヤである。タイヤ1は、タイヤホイール100に装着された状態で、中心軸AXを中心に回転可能である。
図1は、タイヤ1の中心軸AXを通る子午断面を示す。
【0060】
以下の説明においては、タイヤ周方向、タイヤ径方向、及びタイヤ幅方向という用語を用いて、各部の位置関係について説明する。タイヤ1は、中心軸AXを中心に回転し、中心軸AXの周囲に配置される。タイヤ周方向とは、タイヤ1の中心軸AXを中心とする回転方向である。タイヤ径方向とは、タイヤ1の中心軸AXに対する放射方向である。タイヤ幅方向とは、タイヤ1の中心軸AXと平行な方向である。
【0061】
タイヤ1の中心軸AXは、タイヤ1の赤道面CLと直交する。赤道面CLとは、タイヤ幅方向のタイヤ1の中心を通る面である。
【0062】
タイヤ径方向の内側とは、中心軸AXに近い側である。タイヤ径方向の外側とは、中心軸AXから遠い側である。タイヤ幅方向の内側とは、赤道面CLに近い側である。タイヤ幅方向の外側とは、赤道面CLから遠い側である。
【0063】
タイヤ1は、カーカス2と、ベルト3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッドゴム6と、サイドゴム7と、インナーライナー8とを備える。
【0064】
カーカス2、ベルト3、及びベルトカバー4のそれぞれは、コードを含むコード層である。コード層は、トレッドゴム6に埋設される。コードは、有機繊維、合成樹脂繊維、及び金属繊維の少なくとも一つを含む。本実施形態においては、少なくともベルト3が金属製(スチール製)である。
【0065】
タイヤ1は、路面に接触する接地面14を有するトレッド部10と、トレッド部10のタイヤ幅方向の両側に配置されるサイド部9とを有する。トレッド部10は、トレッドゴム6及びトレッドゴム6に埋設されたコード層を含む。サイド部9は、サイドゴム8及びカーカス2を含む。
【0066】
カーカス2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材であり、タイヤ1の内部空間15に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、カーカス部2のタイヤ幅方向の両側に配置される。カーカス2は、ビード部5において折り返される。カーカス2は、有機繊維、合成樹脂繊維、又は金属繊維のカーカスコードと、カーカスコードを覆うゴムとを含む。カーカスコードは、ポリエステル製、ナイロン製、アラミド製、及びレーヨン製のいずれでもよい。
【0067】
ベルト3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材であり、カーカス2よりもタイヤ径方向の外側に設けられる。ベルト3は、スチール製のベルトコードと、ベルトコードを覆うゴムとを含む。ベルト3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのベルトコードと第2ベルトプライ3Bのベルトコードとが交差するように積層される。
【0068】
ベルトカバー4は、ベルト3を保護し補強する強度部材であり、ベルト3よりもタイヤ径方向の外側に設けられる。ベルトカバー4は、有機繊維、合成樹脂繊維、又は金属繊維のカバーコードと、カバーコードを覆うゴムとを含む。カバーコードは、スチール製でもよい。
【0069】
ビード部5は、カーカス2の両端部を固定する強度部材であり、タイヤ1をタイヤホイール100のリム101に固定させる。ビード部5は、スチールワイヤ又は炭素鋼ワイヤの束である。
【0070】
トレッドゴム6は、カーカス2を保護する。トレッドゴム6は、複数の溝20と、溝20の間に設けられる接地面14とを有する。接地面14は、溝20の間の陸部の表面を含み、路面に接触する。
【0071】
サイドゴム7は、カーカス2を保護する。サイドゴム7は、トレッドゴム6のタイヤ幅方向の両側に設けられる。
【0072】
インナーライナー8は、トレッドゴム6の内面及びサイドゴム7の内面に貼付されるゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなる層シートである。タイヤ内面13は、インナーライナー8の内面である。
【0073】
内部空間15は、タイヤホイール100と、タイヤホイール100に装着されたタイヤ1との間に形成される。タイヤ内面13とタイヤホイール100の外周面とにより、内部空間15が規定される。タイヤ内面13は、内部空間15に面するように設けられる。内部空間15は、正規内圧の空気で満たされる。
【0074】
また、タイヤ1は、タイヤ内面13に設けられた温度センサ70を有する。温度センサ70は、タイヤ1の温度を検出する。
【0075】
[車両及びタイヤ加温システム]
図2は、車両300及びタイヤ加温システム200を模式的に示す斜視図である。
図3は、車両300及びタイヤ加温システム200を模式的に示す側面図である。
【0076】
車両300は、電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車のような二次電池400が搭載された二次電池式自動車である。車両300は、二次電池400から供給される電力で走行する。車両300は、4輪車両である。タイヤ1は、左前輪タイヤ、右前輪タイヤ、左後輪タイヤ、及び右後輪タイヤを含む。タイヤ1は、ゴムとゴムに埋設された金属とを有する。ゴムに埋設された金属は、トレッドゴム6に埋設されたスチール製のベルト3(スチールベルト)を含む。
【0077】
車両300は、タイヤ1を含む走行装置301と、走行装置301に支持される車体302と、走行装置301を駆動するための動力源303と、タイヤ1が収納されるホイールハウス310と、二次電池400と、制御装置600とを備える。動力源303は、二次電池400から供給される電力で作動する電動機を含む。車両300がハイブリッド自動車である場合、動力源303は、電動機及び内燃機関を含む。制御装置600は、車両300に設けられたエンジンコントロールユニット(ECU: Engine Control Unit)を含む。
【0078】
タイヤ1には、タイヤ1の温度を検出する温度センサ70が設けられる。二次電池400には、二次電池400の充電率(SOC:State Of Charge)を測定する測定装置407が設けられる。
【0079】
走行装置301は、タイヤ1が装着されるタイヤホイール100と、タイヤホイール100を支持する車軸105と、走行装置301の進行方向を変えるための操舵装置304と、走行装置301を減速又は停止させるためのブレーキ装置305とを有する。
【0080】
車体302は、運転者が搭乗する運転室を有する。運転室に、動力源303の出力を調整するためのアクセルペダルと、ブレーキ装置305を作動するためのブレーキペダルと、操舵装置304を操作するためのステアリングホイールとが配置される。運転者は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイールを操作する。運転者の操作により車両300は走行する。
【0081】
また、車両300は、車体302の運転室に設けられ、運転者により操作される操作装置306を有する。
【0082】
タイヤ加温システム200は、車両300の走行装置301に装着されたタイヤ1を加温する。本実施形態においては、タイヤ加温システム200は、走行装置301が停止状態において、タイヤ1を加温する。
【0083】
タイヤ加温システム200は、タイヤ1の周囲の少なくとも一部に設けられるコイル50と、走行装置301が停止状態においてコイル50に電流を供給してタイヤ1を誘導加熱する電力供給装置201とを備える。
【0084】
電力供給装置201は、車両300に設けられた二次電池400を充電可能な充電設備を含み、車両300の外部に設けられる。電力供給装置201が置かれている場所に車両300が停車した状態で、二次電池400が充電され、コイル50に電流が供給される。電力供給装置201が置かれている場所として、例えば自宅のガレージ、駐車施設、及びガソリンスタンドなどが例示される。以下の説明においては、電力供給装置201が自宅のガレージに置かれていることとする。
【0085】
図2及び
図3に示すように、タイヤ加温システム200は、タイヤ1のトレッド部10と接触した状態でタイヤ1を支持する支持部材203を有する。支持部材203は、ガレージの地面(床面)に設置されるプレート状の部材である。支持部材203は、車両300の4つのタイヤ1に対応するように、4つ設けられる。車両300の4つのタイヤ1は、4つの支持部材203に同時に載ることができる。
【0086】
コイル50は、支持部材203に設けられる第1コイル51を含む。第1コイル51は、支持部材203に埋設されている。電力供給装置201は、電気ケーブル405を介して、第1コイル51に電流を供給する。電気ケーブル405は、地面に埋設されてもよい。
【0087】
また、コイル50は、車両300のホイールハウス310に設けられる第2コイル52を含む。車体302には、電力供給装置201の電気プラグ202が接続されるコネクタ部401が設けられる。電力供給装置201からの電流は、電気プラグ202及びコネクタ部401を介して、第2コイル52に供給される。
【0088】
電力供給装置201は、車両300に設けられている第2コイル52及び二次電池400の両方に電流を供給可能である。電力供給装置201は、車両300に設けられた二次電池400に電流を供給して、二次電池400を充電可能である。
【0089】
車両300は、電力供給装置201充から二次電池400に供給される電流が流れる第1導電路403と、電力供給装置201から第2コイル52に供給される電流が流れる第2導電路404とを有する。導電路は、例えば電気ケーブルを含む。
【0090】
電力供給装置201からの電流は、二次電池400を介さずに、第2コイル52に供給される。二次電池400は、第2コイル52に電力を供給しない。第1導電路403と第2導電路403とは別々の導電路である。第1導電路403を流れる電流は、第2コイル52に供給されない。第2導電路404を流れる電流は、二次電池400に供給されない。電力供給装置201からの電流は、第1導電路403及び第2導電路404を介して、二次電池400及び第2コイル52のそれぞれに並列に供給される。
【0091】
車両300は、電力供給装置201から供給される電力の電圧値を下げる変圧器402を有する。変圧器402は、DC/DCコンバータである。電力供給装置201から供給された電力は、変圧器402を介して第2コイル52に供給される。第2コイル52に印加される電圧は、12[V]以上48[V]以下が好ましい。なお、変圧器402として、二次電池400から動力源303に供給される電力の電圧値を変換する変圧器が使用されてもよいし、その変圧器とは別の変圧器が使用されてもよい。
【0092】
なお、
図3は、4つのタイヤ1のそれぞれの周囲に設けられる第2コイル52のうち、左前輪タイヤの周囲に設けられる第2コイル52と第2導電路404とが接続されている状態を示す。右前輪タイヤの周囲に設けられる第2コイル52、左後輪タイヤの周囲に設けられる第2コイル52、及び右後輪タイヤの周囲に設けられる第2コイル52のそれぞれが第2導電路404と接続される。
【0093】
[コイルによる加温方法]
図4は、ガレージに設けられた第1コイル51及び車両300に設けられた第2コイル52の動作を説明するための模式図である。コイル50(第1コイル51及び第2コイル52の少なくとも一方)に交流電流が流れると、コイル50の周囲には、向き及び強度が変化する磁力線が発生する。コイル50の近くには、金属製(スチール製)のベルト3を有するタイヤ1が配置されている。変化する磁力線の影響により、金属製のベルト3内部に渦電流が流れる。ベルト3内部に電流が流れることにより、ジュール熱が発生し、ベルト3は自己発熱する。この現象は誘導加熱(IH:induction heating)と呼ばれる。
【0094】
このように、コイル50に電流が供給されることにより、タイヤ1の金属部であるベルト3が誘導加熱され、タイヤ1が加温される。コイル50は、4つのタイヤ1それぞれの周囲に設けられているため、4つのタイヤ1のそれぞれが誘導加熱される。
【0095】
本実施形態においては、タイヤ1の周囲に、第1コイル51及び第2コイル52の両方が配置される。電力供給装置201からの電流は、第1コイル51及び第2コイル52の両方に供給されてもよいし、第1コイル51及び第2コイル52のいずれか一方のみに供給されてもよい。
図4に示すように、第1コイル51は、タイヤ1を下側から加温する。第2コイル52は、タイヤ1を上側から加温する。第1コイル51及び第2コイル52の両方に電流が供給されることにより、タイヤ1は上側及び下側の両方から、短時間で均一に加温される。第1コイル51及び第2コイル52のいずれか一方のみに電流が供給されることにより、使用電力を抑制しつつ、タイヤ1を加温することができる。
【0096】
[制御装置]
次に、制御装置600について説明する。
図5は、制御装置600を含むタイヤ加温システム200の機能ブロック図である。
【0097】
図5に示すように、制御装置600は、コイル50に対する電流の供給を制御する制御部601と、二次電池400の充電率を示す充電率データを取得する充電率データ取得部602と、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する温度データ取得部603と、停止状態の走行装置301の走行を開始させる出発予定時刻を示す出発予定時刻データを取得する出発予定時刻データ取得部604と、充電率データ取得部602で取得された充電率が規定値以上か否か又は温度データ取得部603で取得された温度が規定温度以上か否かを判定する判定部605と、運転者(ユーザ)により操作される操作装置306又は携帯端末308から出力された指令データを受信する受信部606と、データを記憶する記憶部607と、を有する。
【0098】
制御部601は、第1コイル51に対する電流の供給及び第2コイル52に対する電流の供給を制御する。第1コイル51に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から第1コイル51に対する電流の供給及び供給停止を含む。また、第1コイル51に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から第1コイル51に対する電流値の調整を含む。第2コイル52に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から第2コイル52に対する電流の供給及び供給停止を含む。また、第2コイル52に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から第2コイル52に対する電流値の調整を含む。
【0099】
また、制御部601は、二次電池400に対する電流の供給を制御する。二次電池400に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から二次電池400に対する電流の供給及び供給停止を含む。また、二次電池400に対する電流の供給の制御は、電力供給装置201から二次電池400に対する電流値の調整を含む。
【0100】
充電率データ取得部602は、二次電池400の充電率(SOC:State Of Charge)を示す充電率データを取得する。充電率を測定する測定装置407が二次電池400に設けられる。測定装置407は、二次電池400の充電率を示す充電率データを制御装置600に出力する。充電率データ取得部602は、測定装置407から出力された充電率データを取得する。制御部601は、充電率データに基づいて、第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。
【0101】
判定部605は、充電率データ取得部602で取得された充電率データに基づいて、二次電池400の充電率が規定値以上か否かを判定する。規定値を示す規定値データは、記憶部607に記憶されている。制御部601は、判定部605の判定結果に基づいて、第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。制御部601は、判定部605の判定結果に基づいて、電力供給装置201から第2コイル52に対する電流の供給又は供給停止を制御する。制御部601は、二次電池400の充電率が規定値以上であると判定されたとき、第2コイル52に対する電流の供給を行い、二次電池400の充電率が規定値よりも低いと判定されたとき、第2コイル52に対する電流の供給を行わない。
【0102】
温度データ取得部603は、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する。タイヤ1の温度を検出する温度センサ70がタイヤ1に設けられる。温度センサ70は、タイヤ1の温度を示す温度データを制御装置600に出力する。温度データ取得部603は、温度センサ70から出力された温度データを取得する。制御部601は、温度データに基づいて、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。
【0103】
判定部605は、温度データ取得部603で取得された温度データに基づいて、タイヤ1の温度が規定温度以上か否かを判定する。規定温度を示す規定温度データは、記憶部607に記憶されている。制御部601は、判定部605の判定結果に基づいて、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。制御部601は、判定部605の判定結果に基づいて、電力供給装置201から第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給又は供給停止を制御する。制御部601は、タイヤ1の温度が規定温度よりも低いと判定されたとき、第1コイル51及び第2コイル52の少なくとも一方に対する電流の供給を行う。これにより、タイヤ1がコイル50により誘導加熱される。一方、制御部601は、タイヤ1の温度が規定温度以上であると判定されたとき、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を行わない。これにより、タイヤ1はコイル50によって加温されない。
【0104】
出発予定時刻データ取得部604は、車両300の出発予定時刻を示す出発予定時刻データを取得する。車両300の出発予定時刻は、運転者に指定される。運転者は、運転室に設けられている操作装置306を操作して、車両300の出発予定時刻を指定することができる。また、運転者は、携帯端末308を操作して、運転室外又は運転室内から、車両300の出発予定時刻を指定することができる。携帯端末308は、スマートフォン又はタブレット型パーソナルコンピュータであり、運転者によって操作される操作入力部を有する。
【0105】
受信部606は、操作装置306又は携帯端末308から出力された指令データを受信する。指令データは、出発予定時刻データを含む。操作装置306又は携帯端末308が操作されることにより生成された車両300の出発予定時刻を示す出発予定時刻データは、受信部606に受信される。受信部606は、携帯端末308から出力された指令データを無線受信することができる。
【0106】
受信部606に受信された出発予定時刻データは、出発予定時刻データ取得部604に出力される。出発予定時刻データ取得部604は、受信部606から出力された出発予定時刻データを取得する。制御部601は、出発予定時刻データに基づいて、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。
【0107】
制御部601は、出発予定時刻データに基づいて、出発予定時刻にタイヤ1が規定温度になるように、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。規定温度を示す規定温度データは、記憶部607に記憶されている。
【0108】
また、制御部601は、温度データ取得部603で取得されたタイヤ1の温度データに基づいて、タイヤ1が目標温度になるように、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。例えば、制御部601は、タイヤ1の目標温度と温度センサ70の検出値との差が小さくなるように、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流値を制御することができる。
【0109】
また、操作装置306又は携帯端末308の操作により出力される指令データは、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱の開始を示す開始指令データを含む。受信部606は、操作装置306又は携帯端末308から出力された開始指令データを受信する。制御部601は、受信部606で受信された開始指令データに基づいて、第1コイル51及び第2コイル52に対する電流の供給を制御することができる。
【0110】
なお、サマータイヤと冬用タイヤ(スタッドレス等)とではゴムの特性が異なるため、適切な規定温度が異なる場合がある。そこで、ユーザがタイヤ種類を設定できるようにしてもよい。その場合、車両300に情報を入力(選択)できる装置が設けられていてもよい。
【0111】
[タイヤ加温方法1]
次に、タイヤ加温システム200を用いるタイヤ加温方法について説明する。
図6は、タイヤ加温方法の一例を示すフローチャートである。タイヤ1の加温は、車両300が停車状態(走行装置301が停止状態)で行われる。
【0112】
車両300は、電力供給装置201が置かれているガレージに停車している。ガレージにおいて、車両300は、タイヤ1が支持部材203に載った状態で停車している。また、車両300は、電力供給装置201により充電可能な状態で停車している。充電可能な状態とは、電力供給装置201の電気プラグ202と車両300のコネクタ部401とが接続された状態である。例えば夜間において、車両300は、充電可能な状態でガレージに停車している。夜間において、電力供給装置201により二次電池400が充電される。
【0113】
例えば寒冷地の夜間において車両300がガレージに長時間停車していると、タイヤ1の温度は−10[℃]から−20[℃]程度まで低下する可能性がある。
【0114】
朝になり車両300を使用する場合、運転者は、車両300を走行させる前に、操作装置306又は携帯端末308を操作して、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱の開始を示す開始指令データを生成する(ステップSA1)。生成された開始指令データは、受信部606に受信される。
【0115】
開始指令データが受信部606に受信されたことをトリガとして、温度センサ70の検出値が制御装置600に出力される。温度データ取得部603は、温度センサ70から出力された、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する(ステップSA2)。
【0116】
判定部605は、温度センサ70で検出されたタイヤ1の温度が規定温度以上か否かを判定する(ステップSA3)。規定温度は、例えば5[℃]である。なお、規定温度は、10[℃]から−5[℃]の間に設定されてもよい。
【0117】
ステップSA3において、タイヤ1の温度が規定温度以上であると判定されたとき(ステップSA3:Yes)、制御部601は、コイル50に対する電流の供給を行うことなく、すなわち、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を行うことなく、処理を終了する。
【0118】
ステップSA3において、タイヤ1の温度が規定温度以上でないと判定されたとき(ステップSA3:No)、制御部601は、受信部606で受信された開始指令データに基づいて、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱(加温)を開始する(ステップSA4)。
【0119】
コイル50によるタイヤ1の誘導加熱の開始後においても、温度センサ70は、タイヤ1の温度を示す温度データを出力し続け、温度データ取得部603は、温度データを取得し続ける。
【0120】
判定部605は、温度データ取得部603が取得した温度データに基づいて、タイヤ1の温度が規定温度に到達したか否かを判定する(ステップSA5)。
【0121】
ステップSA5において、タイヤ1の温度が規定温度に到達したと判定されたとき(ステップSA5:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を終了する。
【0122】
ステップSA5において、タイヤ1の温度が規定温度に到達していないと判定されたとき(ステップSA5:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を継続する。
【0123】
タイヤ1が規定温度以上になった後、運転者は車両300の運転を開始する。タイヤ1を含む走行装置301の走行が開始される前の走行装置301の停止状態において、電力供給装置201から供給される電流によりコイル50がタイヤ1を誘導加熱し、タイヤ1が規定温度以上に加温された後、タイヤ1の走行が開始されるので、タイヤ1の走行の開始直後から転がり抵抗が低減される。したがって、タイヤ1が装着された車両300の燃費が改善される。
【0124】
また、電力供給装置201からの電流は、二次電池400を介さずに、第1導電路403とは別の第2導電路404を介して第2コイル52に供給される。これにより、二次電池400の電力がタイヤ1の加温に使用されることが抑制され、充電率の低下が抑制される。そのため、車両300の航続距離の低下が抑制される。
【0125】
また、操作装置306又は携帯端末308の操作により生成された開始指令データに基づいてコイル50に対する電流の供給が制御されるので、運転者が意図するタイミングでタイヤ1の誘導加熱を開始することができる。
【0126】
また、制御部601は、温度センサ70から出力され温度データ取得部603で取得された温度データに基づいてコイル50に対する電流の供給を制御する。温度センサ70及び温度データ取得部603が設けられることにより、タイヤ1は転がり抵抗が低減される規定温度に調整される。
【0127】
また、温度データ取得部603で取得された温度が規定温度以上か否かが判定部605で判定される。規定温度以上でないと判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われ、規定温度以上であると判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われない。転がり抵抗が高い可能性がある規定温度未満のときだけタイヤ1が加温され、転がり抵抗が低い規定温度以上のときにはタイヤ1が加温されないので、タイヤ1を無駄に加温してしまうことが抑制され、タイヤ1の加温が必要なときだけ効率良く加温することができる。
【0128】
[タイヤ加温方法2]
次に、
図7のフローチャートを参照して、走行装置301が走行する前のタイヤ加温方法の別の例について説明する。
【0129】
ガレージにおいて、車両300は、タイヤ1が支持部材203に載った状態で停車している。また、車両300は電力供給装置201により充電可能な状態で停車している。車両300を使用する場合、運転者は、車両300を走行させる前に、操作装置306又は携帯端末308を操作して、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱の開始を示す開始指令データを生成する(ステップSB1)。生成された開始指令データは受信部606に受信される。
【0130】
開始指令データが受信部606に受信されたことをトリガとして、温度センサ70の検出値が制御装置600に出力される。温度データ取得部603は、温度センサ70から出力された、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する(ステップSB2)。
【0131】
判定部605は、温度データ取得部603が取得した温度データに基づいて、タイヤ1の温度が規定温度以上か否かを判定する(ステップSB3)。
【0132】
ステップSB3において、タイヤ1の温度が規定温度以上であると判定されたとき(ステップSB3:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を行うことなく、処理を終了する。
【0133】
ステップSB3において、タイヤ1の温度が規定温度以上でないと判定されたとき(ステップSB3:No)、判定部605は、充電率データ取得部602で取得された二次電池400の充電率データに基づいて、二次電池400の充電率が規定値以上か否かを判定する(ステップSB4)。規定値を示す規定値データは記憶部607に記憶されている。
【0134】
ステップSB4において、二次電池400の充電率が規定値以上であると判定されたとき(ステップSB4:Yes)、制御部601は、受信部606で受信された開始指令データに基づいて、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱(加温)を開始する(ステップSB5)。
【0135】
判定部605は、温度データ取得部603が取得した温度データに基づいて、タイヤ1の温度が規定温度に到達したか否かを判定する(ステップSB6)。
【0136】
ステップSB6において、タイヤ1の温度が規定温度に到達していないと判定されたとき(ステップSB6:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を継続する。
【0137】
ステップSB6において、タイヤ1の温度が規定温度に到達したと判定されたとき(ステップSB6:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を終了する。
【0138】
ステップSB4において、二次電池400の充電率が規定値以上でないと判定されたとき(ステップSB4:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を行わず、二次電池400の充電を優先させる(ステップSB7)。
【0139】
判定部605は、二次電池400の測定装置407から出力された充電率データに基づいて、二次電池400の充電率が規定値に到達したか否かを判定する(ステップSB8)。
【0140】
ステップSB8において、二次電池400の充電率が規定値に到達していないと判定されたとき(ステップSB8:No)、制御部601は、二次電池400の優先的な充電を継続する。
【0141】
ステップSB8において、二次電池400の充電率が規定値に到達したと判定されたとき(ステップSB8:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を開始する(ステップSB5)。
【0142】
このように、充電率データに基づいてコイル50に対する電流の供給が制御されることにより、二次電池400の充電率不足が抑制されつつ、タイヤ1が加温される。二次電池400の充電率が規定値よりも低い場合、制御部601は、電力供給装置201からコイル50に対する電流の供給を停止するので、電力供給装置201から二次電池400に電流が十分に供給され、二次電池400の充電率不足が抑制される。二次電池400の充電率が規定値以上の場合、制御部401は、電力供給装置201からコイル50に対して電流を供給するので、二次電池400の充電率不足が解消された状態で、タイヤ1を加温することができる。
【0143】
[タイヤ加温方法3]
次に、
図8のフローチャートを参照して、走行装置301が走行する前のタイヤ加温方法の別の例について説明する。
【0144】
運転者により出発予定時刻が指定される。例えば、出発予定時刻の日の前日に、運転者は、操作装置306又は携帯端末308を操作して、出発予定時刻データを生成する(ステップSC1)。出発予定時刻データは、受信部606に受信され、記憶部607に記憶される。記憶部607は、不揮発性メモリを含み、二次電池400からの電力供給が停止されても、出発予定時刻データを保持し続ける。
【0145】
ガレージにおいて、車両300は、タイヤ1が支持部材203に載った状態で停車している。また、車両300は電力供給装置201により充電可能な状態で停車する。夜間において、車両300が停車している状態で、電力供給装置201により二次電池400が充電される。
【0146】
制御部601は、出発予定時刻の所定時間前の時点にトリガ信号を生成する(ステップSC2)。例えば、出発予定時刻が午前7時に指定された場合、制御部601は、午前6時45分にトリガ信号を生成する。
【0147】
トリガ信号に基づいて、温度センサ70の検出値が制御装置600に出力される。温度データ取得部603は、温度センサ70から出力された、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する(ステップSC3)。
【0148】
判定部605は、温度データ取得部603で取得された温度データに基づいて、温度センサ70で検出されたタイヤ1の温度が規定温度以上か否かを判定する(ステップSC4)。
【0149】
ステップSC4において、タイヤ1の温度が規定温度以上であると判定されたとき(ステップSC4:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を行うことなく、処理を終了する。
【0150】
ステップSC4において、タイヤ1の温度が規定温度以上でないと判定されたとき(ステップSC4:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱(加温)を開始する(ステップSC5)。
【0151】
判定部605は、温度データ取得部603が取得した温度データに基づいて、タイヤ1の温度が規定温度に到達したか否かを判定する(ステップSC6)。
【0152】
ステップSC6において、タイヤ1の温度が規定温度に到達していないと判定されたとき(ステップSC6:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を継続する。
【0153】
ステップSC6において、タイヤ1の温度が規定温度に到達したと判定されたとき(ステップSC6:Yes)、制御部601は、タイヤ1が規定温度を維持するように、コイル50によるタイヤ1の保温を開始する(ステップSC7)。
【0154】
判定部605は、車両300の走行装置301の走行が開始されたか否かを判定する(ステップSC8)。判定部605は、走行装置301の走行速度を検出する速度センサの検出値に基づいて、走行装置301の走行が開始されたか否かを判定することができる。
【0155】
ステップSC8において、車両300の走行装置301の走行が開始されたと判定されたとき(ステップSC8:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の加温(保温)を終了する。
【0156】
ステップSC8において、車両300の走行装置301の走行が開始されていないと判定されたとき(ステップSC8:No)、判定部605は、出発予定時刻(午前7時)を経過したかを判定する(ステップSC9)。
【0157】
ステップSC9において、出発予定時刻を経過していないと判定されたとき(ステップSC9:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の保温を継続する(ステップSC7)。
【0158】
ステップSC9において、出発予定時刻を経過したと判定されたとき(ステップSC9:Yes)、判定部605は、予め決められている待機時間を超えたか否かを判定する(ステップSC10)。待機時間は、例えば1時間である。判定部605は、出発予定時間(午前7時)から待機時間(1時間)を超えたか否か(午前8時を経過したか否か)を判定する。
【0159】
ステップSC10において、待機時間を超えてないと判定されたとき(ステップSC10:No)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の保温を継続する。
【0160】
ステップSC10において、待機時間を超えたと判定されたとき(ステップSC10:Yes)、制御部601は、コイル50によるタイヤ1の加温(保温)を終了する。
【0161】
このように、出発予定時刻が指定されることにより、出発予定時刻に到達する前に、タイヤ1を規定温度に加温することができる。すなわち、タイヤ加温システム200が出発予定時刻よりも所定時間前の時点でコイル50による誘導加熱を開始させるタイマー機能を有することにより、出発予定時刻が経過する前にタイヤ1を十分に温めておくことができる。出発予定時刻が経過する前にタイヤ1の温度が規定温度に到達しているので、車両300がガレージから出発した直後からタイヤ1の転がり抵抗が低減される。
【0162】
また、待機時間が設定されることにより、例えば運転者のスケジュールが変更され、出発予定時刻に車両300が出発しない状況になっても、コイル50でタイヤ1が無駄に加温され続けてしまうことが抑制される。
【0163】
なお、上述の[タイヤ加温方法1]から[タイヤ加温方法3]において、温度センサ70によりタイヤ1の温度が検出され、温度センサ70で検出されたタイヤ1の温度が規定温度以上か否かが判定部605により判定され、規定温度以上であると判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われず、規定温度未満であると判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われることとした。ガレージの外気の温度を示す外気温データを取得可能な温度センサが設けられ、その温度センサにより外気の温度が検出され、外気の温度を示す温度データが温度データ取得部603に取得され、温度データ取得部603で取得された温度データに基づいて外気の温度が規定温度以上か否かが判定部605により判定され、規定温度以上であると判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われず、規定温度未満であると判定されたとき、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱が行われてもよい。また、外気の温度に基づいてコイル50に供給される電流量が調整されることによって、タイヤ1の温度が調整されてもよい。
【0164】
なお、外気の温度を検出する温度センサの検出結果によらずに、気象予報データが示す外気の温度に基づいて、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱を実施するか否かが判定されてもよい。
【0165】
なお、上述の実施形態において、コイル50によるタイヤ1の誘導加熱(コイル50に対する電力供給装置201からの電流の供給)は、二次電池400の充電(二次電池400に対する電力供給装置201からの電流の供給)と同時に行われてもよいし、交互に行われてもよい。
【0166】
なお、上述の実施形態においては、タイヤ1が規定温度に到達したと判定されたとき、コイル50による誘導加熱を終了することとした。タイヤ1の空気圧の上昇率に基づいて、コイル50による誘導加熱が終了してもよい。タイヤ1の温度が規定温度に到達しなくても、タイヤ1の空気圧が規定値を超えたとき、コイル50による誘導加熱を終了してもよい。これにより、空気圧の過度な上昇による車両300の運動性能の低下が抑制される。
【0167】
なお、上述の実施形態においては、タイヤ1の温度が規定温度未満である場合、車両300の4つのタイヤ1の全てが加温されることとした。4つのタイヤ1のうち選択されたタイヤ1が加温され、他のタイヤ1が加温されなくてもよい。例えば、駆動輪タイヤが優先的に加温されてもよいし、従動輪タイヤが優先的に加温されてもよい。従動輪タイヤは駆動輪タイヤに比べて走行中に温まり難いので、走行前に従動輪タイヤが十分に加温されることにより、走行後短時間で、4つのタイヤ1の温度が均一化され、車両300の燃費が改善される。
【0168】
なお、上述の実施形態においては、電力供給装置201の電気プラグ202と車両300のコネクタ部202とが接続された状態で電力供給装置201から車両300に電力が供給されることとした。ワイヤレス充電方式で二次電池400及び第2コイル52の少なくとも一方に電力が供給されてもよい。
【0169】
なお、上述の実施形態においては、制御装置600が車両300に設けられることとした。制御装置600が電力供給装置201に設けられてもよい。
【0170】
なお、上述の実施形態においては、制御装置600が車両300に設けられることとした。制御装置600は、コネクタ部401を介して電力供給装置201に制御信号を出力してもよいし、ワイヤレスで電力供給装置201に制御信号を出力してもよい。また、タイヤ加温システム200の制御装置600が電力供給装置201に設けられてもよい。
【0171】
なお、上述の実施形態においては、車両300が電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車のような二次電池式自動車であり、二次電池400が走行装置301を駆動するための動力源303の電動機に電力を供給するEV駆動バッテリーであることとした。自動車300はガソリン車又はディーゼル車でもよい。また、二次電池400は、回生ブレーキが発生する回生電力を蓄える回生専用バッテリーでもよいし、ランプ類、空調装置、及びカーナビゲーションシステムのような電子機器を駆動するための低電圧バッテリー(50V以下のバッテリー等)でもよい。
【0172】
なお、本実施形態においては、ガレージのような停車場所において、第1コイル51及び第2コイル52の両方を使ってタイヤ1を誘導加熱することとした。第1コイル51が省略され、第2コイル52を使ってタイヤ1が誘導加熱されてもよい。第2コイル52が省略され、第1コイル51を使ってタイヤ1が誘導加熱されてもよい。
【0173】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0174】
上述の第1実施形態においては、車両300が停車状態においてタイヤ1が誘導加熱される例について説明した。本実施形態においては、車両300が走行状態においてタイヤ1が誘導加熱される例について説明する。
【0175】
図9は、車両300の一例を示す図である。車両300は、ゴム及びゴムに埋設された金属を含むタイヤ1が装着される走行装置301と、タイヤ1の周囲の少なくとも一部に設けられるコイル50と、コイル50に電流を供給してタイヤ1を誘導加熱する電力供給装置700と、電力供給装置700を制御する制御装置600とを備える。制御装置600は、車両300に設けられたECUを含む。
【0176】
車両300の車体302は、タイヤ1が収納されるホイールハウス310を有する。本実施形態において、コイル50は、ホイールハウス310に設けられる第2コイル52である。以下の説明においては、第2コイル52と単に、コイル52と称する。
【0177】
また、車両300は、回生電流を発生する回生モータ又は発電機701と、二次電池400とを備える。電力供給装置700は、回生モータ又は発電機701を含む。回生モータ又は発電機701は、コイル52及び二次電池400の両方に回生電流を供給可能である。回生モータ又は発電機701は、車両300に設けられた二次電池400に回生電流を供給して、二次電池400を充電可能である。回生モータ又は発電機701は、タイヤ1の周囲に設けられたコイル52に回生電流を供給して、タイヤ1を加温可能である。
【0178】
また、車両300は、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給を制御する給電制御器710を備える。給電制御器710は、制御装置600に制御される。
【0179】
回生モータ又は発電機701は、回生電力を発生する。回生モータ又は発電機701は、タイヤ1の回転エネルギー(運動エネルギー)を電気エネルギー(回生エネルギー)に変換して発電する。回転エネルギーが電気エネルギーに変換されることにより、走行装置301の走行速度は低減され、走行装置301は制動する。
【0180】
回生モータ又は発電機701は、動力源303の電動機とは別の電動機である。なお、回生モータ又は発電機701が走行装置301を駆動するための動力源303として使用されてもよいし、動力源303の電動機がコイル52及び二次電池400の両方に回生電流を供給可能な回生モータ又は発電機701として機能してもよい。
【0181】
車両300は、回生モータ又は発電機701から二次電池400に供給される回生電流が流れる第1導電路703と、回生モータ又は発電機701からコイル52に供給される回生電流が流れる第2導電路704とを有する。導電路は、例えば電気ケーブルを含む。
【0182】
回生モータ又は発電機701からの回生電流は、二次電池400を介さずに、コイル52に供給される。二次電池400は、コイル52に電力を供給しない。第1導電路703と第2導電路703とは別々の導電路である。第1導電路703を流れる電流は、コイル52に供給されない。第2導電路704を流れる電流は、二次電池400に供給されない。回生モータ又は発電機701からの電流は、第1導電路703及び第2導電路704を介して、二次電池400及びコイル52のそれぞれに並列に供給される。
【0183】
車両300は、回生モータ又は発電機701から供給される回生電力を蓄えるキャパシタ702を有する。回生モータ又は発電機701が発生した回生電力は、キャパシタ702に蓄えられた後、コイル52に供給される。
【0184】
なお、
図1は、4つのタイヤ1の周囲のそれぞれに設けられるコイル52のうち、左前輪タイヤのコイル52と第2導電路704及びキャパシタ702とが接続されている状態を示す。右前輪タイヤの周囲に設けられるコイル52、左後輪タイヤの周囲に設けられるコイル52、及び右後輪タイヤの周囲に設けられるコイル52のそれぞれが第2導電路704及びキャパシタ702と接続される。4つのタイヤ1のそれぞれが、回生モータ又は発電機701から供給される回生電力により加温される。
【0185】
[制御装置]
次に、制御装置600について説明する。
図10は、制御装置600を含む車両300の機能ブロック図である。
【0186】
図10に示すように、制御装置600は、給電制御器710を制御する制御信号を出力する制御部601と、二次電池400の充電率を示す充電率データを取得する充電率データ取得部602と、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する温度データ取得部603と、充電率データ取得部602で取得された充電率が規定値以上か否か又は温度データ取得部603で取得された温度が規定温度以上か否かを判定する判定部605と、データを記憶する記憶部607と、を有する。
【0187】
給電制御器710は、モータ52及び二次電池400に対する、回生モータ又は発電機701が発生した回生電流の供給を制御する。モータ52に対する回生電流の供給の制御は、回生モータ又は発電機701からモータ52に対する回生電流の供給及び供給停止を含む。また、モータ52に対する回生電流の供給の制御は、回生モータ又は発電機701からモータ52に対する回生電流値の調整を含む。二次電池400に対する回生電流の供給の制御は、回生モータ又は発電機701から二次電池400に対する回生電流の供給及び供給停止を含む。また、二次電池400に対する回生電流の供給の制御は、回生モータ又は発電機701から二次電池400に対する回生電流値の調整を含む。コイル52は、回生モータ又は発電機701から供給される回生電流によりタイヤ1を誘導加熱する。二次電池400は、回生モータ又は発電機701供給される回生電流により充電される。
【0188】
また、給電制御器710は、回生モータ又は発電機701が発生した回生電流を、コイル52と二次電池400とに分配することができる。コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給の制御は、回生モータ又は発電機701が発生した回生電流のコイル52及び二次電池400に対する分配比率の調整を含む。
【0189】
制御部601は、給電制御器710を制御する制御信号を出力して、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給を制御する。コイル52に対する回生電流が制御されることにより、タイヤ1の加温の有無及びタイヤ1の温度が制御される。二次電池400に対する回生電流が制御されることにより、二次電池400の充電の有無及び二次電池400の充電率が制御される。
【0190】
充電率データ取得部602は、二次電池400の充電率(SOC:State Of Charge)を示す充電率データを取得する。充電率を測定する測定装置407が二次電池400に設けられる。測定装置407は、二次電池400の充電率を示す充電率データを制御装置600に出力する。充電率データ取得部602は、測定装置407から出力された充電率データを取得する。制御部601は、充電率データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給を制御することができる。
【0191】
判定部605は、充電率データ取得部602で取得された充電率が規定値以上か否かを判定する。規定値を示す規定値データは、記憶部607に記憶されている。制御部601は、二次電池400の充電率が規定値以上でないと判定されたとき、コイル52に対する回生電流の供給を停止する。制御部601は、充電率が規定値以上であると判定されたとき、コイル52に対して回生電流を供給することができる。
【0192】
また、制御部601は、充電率が規定値以上であると判定されたとき、回生モータ又は発電機701で発生した回生電流を、コイル52と二次電池400とに分配することができる。制御部601は、充電率データ取得部602で取得された充電率データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の分配比率を決定し、決定した分配比率に基づいて、コイル52及び二次電池400に回生電流を分配することができる。制御部601は、判定部605により、二次電池400の充電率が規定値以上であると判定されたとき、回生モータ又は発電機701で発生した回生電流を、コイル52と二次電池400とに分配する。
【0193】
また、制御部601は、判定部605により、二次電池400の充電率が規定値以上であり規定値よりも大きい閾値未満であると判定されたとき、二次電池400に対する回生電流の分配比率をコイル52に対する回生電流の分配比率よりも大きくし、二次電池400の充電率が閾値以上であると判定されたとき、コイル52に対する回生電流の分配比率を二次電池400に対する回生電流の分配比率よりも大きくすることができる。
【0194】
温度データ取得部603は、タイヤ1の温度を示す温度データを取得する。タイヤ1の温度を検出する温度センサ70がタイヤ1に設けられる。温度センサ70は、タイヤ1の温度を示す温度データを制御装置600に出力する。温度データ取得部603は、温度センサ70から出力された温度データを取得する。制御部601は、温度データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給を制御することができる。
【0195】
判定部605は、温度データ取得部603で取得された温度が規定温度以上か否かを判定する。規定温度を示す規定温度データは、記憶部607に記憶されている。制御部601は、温度が規定温度以上であると判定されたとき、コイル52に対する回生電流の供給を停止する。制御部601は、温度が規定温度以上であると判定されたとき、二次電池400に対して回生電流を供給することができる。制御部601は、温度が規定温度未満であると判定されたとき、コイル52に対して回生電流を供給する。制御部601は、温度が規定温度未満であると判定されたとき、二次電池400に対して回生電流を供給することができる。
【0196】
また、制御部601は、温度センサ70の検出値に基づいて、タイヤ1が目標温度になるように、給電制御器710を制御することができる。例えば、制御部601は、タイヤ1の目標温度と温度センサ70の検出値との差が小さくなるように、給電制御器710を制御して、ヒータ50に供給される回生電流値を制御することができる。
【0197】
[タイヤ加温方法]
次に、タイヤ加温方法について説明する。
図11は、タイヤ加温方法の一例を示すフローチャートである。
【0198】
車両300は、例えば自宅のガレージのような停車場所に停車している。例えば寒冷地の夜間において車両300がガレージに長時間停車していると、タイヤ1の温度は−10[℃]から−20[℃]程度まで低下する可能性がある。
【0199】
朝になり車両300を使用する場合、運転者は、運転室に乗り込んで、スタータボタンを含む操作装置306を操作し、駆動源303を起動する。運転者は、車両300を操作し、走行を開始する。
【0200】
二次電池400の充電率が測定装置407で測定される。充電率データ取得部602は、二次電池400の充電率を示す充電率データを測定装置407から取得する(ステップSD1)。
【0201】
また、タイヤ1の温度が温度センサ70で検出される。温度データ取得部603は、タイヤ1の温度を示す温度データを温度センサ70から取得する(ステップSD2)。
【0202】
給電制御器710により、回生モータ又は発電機701から回生電流が発生しているか否かが判定される(ステップSD3)。
【0203】
ステップSD3において、回生電流が発生していないと判定された場合(ステップSD3:No)、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給は行われず、充電率データの取得及び温度データの取得が継続される。
【0204】
ステップSD3において、回生電流が発生していると判定された場合(ステップSD3:Yes)、判定部605は、充電率データ取得部602で取得された二次電池400の充電率が規定値以上か否かを判定する(ステップSD4)。規定値は、例えば60[%]である。
【0205】
ステップSD4において、二次電池400の充電率が規定値以上でないと判定されたとき(ステップSD4:No)、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の供給を行い、コイル52に対する回生電流の供給を停止するように、給電制御器710を制御する(ステップSD5)。
【0206】
本実施形態においては、二次電池400の充電率が規定値以上になるまで、二次電池400に対する回生電流の供給が行われ、コイル52に対する回生電流の供給は停止される。
【0207】
ステップSD4において、二次電池400の充電率が規定値以上であると判定されたとき(ステップSD4:Yes)、判定部605は、温度データ取得部603で取得されたタイヤ1の温度が規定温度以上か否かを判定する(ステップSD6)。規定温度は、例えば5[℃]である。なお、規定温度は、10[℃]から−5[℃]の間に設定されてもよい。
【0208】
ステップSD6において、タイヤ1の温度が規定温度以上であると判定されたとき(ステップSD6:Yes)、制御部601は、コイル52に回生電流が供給されないように、給電制御器710を制御する。
【0209】
ステップSD6において、タイヤ1の温度が規定温度以上でないと判定されたとき(ステップSD6:No)、制御部601は、充電率データ取得部602で取得された充電率データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する、回生モータ又は発電機701が派生した回生電流の分配比率を決定する(ステップSD7)。
【0210】
制御部601は、二次電池400の充電率が規定値以上であり規定値よりも大きい閾値未満であるとき、二次電池400に対する回生電流の分配比率をコイル52に対する回生電流の分配比率よりも大きくし、二次電池400の充電率が閾値以上であるとき、コイル52に対する回生電流の分配比率を二次電池400に対する回生電流の分配比率よりも大きくする。規定値を示す規定データ及び閾値を示す閾値データは、記憶部607に記憶されている。
【0211】
一例として、規定値が60[%]、閾値が規定値よりも大きい80[%]に設定されている場合において、二次電池400の充電率が80[%]よりも大きい100[%]である場合、二次電池400は更なる充電を受け付けない。その場合、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の分配比率を0[%]とし、コイル52に対する回生電流の比率を100[%]とする。これにより、コイル52に対して回生電流が十分に供給される。また、二次電池400の充電率が80[%]よりも大きい90[%]である場合、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の分配比率を例えば25[%]とし、コイル52に対する回生電流の比率を例えば75[%]とする。これにより、コイル52によるタイヤ1の加温と並行して二次電池400が加温される。また、二次電池400の充電率が80[%]である場合、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の分配比率を例えば50[%]とし、コイル52に対する回生電流の比率を例えば50[%]とする。この場合も、コイル52によるタイヤ1の加温と並行して二次電池400が加温される。
【0212】
また、二次電池400の充電率が60[%]以上であり80[%]未満の70[%]である場合、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の分配比率を例えば75[%]とし、コイル52に対する回生電流の比率を例えば25[%]とする。これにより、コイル52によりタイヤ1を加温しつつ、二次電池400の充電率の低下を抑制することができる。二次電池400の充電率が60[%]である場合、制御部601は、二次電池400に対する回生電流の分配比率を100[%]とし、コイル52に対する回生電流の比率を0[%]とする。これにより、二次電池400に優先的に回生電流が供給され、二次電池400は充電率の低下が抑制される。
【0213】
制御部601は、決定された回生電流の分配比率に基づいて、コイル52に対して回生電流が供給されるように、給電制御器710を制御する(ステップSD8)。コイル52に回生電流が供給されることにより、タイヤ1か加温される。
【0214】
[効果]
以上説明したように、回生モータ又は発電機701が発生する回生電流によりコイル52でタイヤ1が規定温度以上に加温される。これにより、タイヤ1の走行開始後、回生モータ又は発電機701が作動してタイヤ1が温められ、タイヤ1の走行開始直後から転がり抵抗が低減される。したがって、タイヤ1が装着された車両300の燃費が改善される。
【0215】
また、制御部601及び給電制御器710により、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給が制御される。二次電池400の充電が必要な状況又はタイヤ1の加温が不要な状況においては回生電流を二次電池400に優先的に供給し、タイヤ1の加温が必要な状況又は二次電池400の充電が不要な状況においては回生電流をコイル52に優先的に供給することによって、回生電流を有効活用することができる。
【0216】
二次電池400の充電容量(充電速度の最大値)は決められている。回生モータ又は発電機400が発生する回生電力が二次電池400の充電容量を上回る場合、従来においては、回生電力の一部は、例えば熱に変換されて捨てられていた。本実施形態においては、従来では捨てられていた熱を、タイヤ1の加温に利用する。これにより、回生エネルギーの使用効率を大幅に高めることができる。
【0217】
また、回生モータ又は発電機701から二次電池400に供給される回生電流が流れる第1導電路403と、回生モータ又は発電機701からコイル52に供給される回生電流が流れる第2導電路404とが設けられ、回生モータ又は発電機701からの回生電流は、二次電池400を介さずに、コイル52に供給される。二次電池400を使用することなくタイヤ1が加温されるので、二次電池400の充電率の低下が抑制される。例えば、二次電池400がEV駆動バッテリーである場合、EV駆動バッテリーの充電率の低下が抑制されることにより、車両300の航続距離の低下が抑制される。
【0218】
また、充電率データに基づいてコイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給が制御されることにより、二次電池400の充電率不足が抑制されつつ、タイヤ1が加温される。
【0219】
また、充電率データ取得部602で取得された充電率が規定値以上か否かが判定され、制御部601は、二次電池400の充電率が規定値以上でないと判定されたとき、コイル52に対する回生電流の供給を停止する。二次電池400の充電率が規定値未満である場合、回生モータ又は発電機701からコイル52に対する回生電流の供給が停止されることにより、回生電流は二次電池400に優先的に供給される。したがって、二次電池400は充電率の低下が抑制される。
【0220】
また、制御部601は、二次電池400の充電率が規定値以上でると判定されたとき、回生モータ又は発電機701で発生した回生電流を、コイル52と二次電池400とに分配する。回生電流がコイル52と二次電池400とに分配されることにより、タイヤ1の加温と並行して二次電池400を充電することができる。また、二次電池400の充電率が規定値以上であるときに回生電流がコイル52と二次電池400とに分配されることにより、二次電池400が十分に充電された状態でタイヤ1を加温することができる。
【0221】
また、制御部601は、充電率データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の分配比率を決定する。例えば、充電率が低く二次電池400の充電率低下抑制の優先度が高い状況においては二次電池400に対する回生電流の分配比率を高め、充電率が高く二次電池400の充電率低下抑制の優先度が低い状況においてはコイル52に対する回生電流の分配比率を高めることができ、状況に応じて回生電流を適切に使用することができる。
【0222】
また、制御部601は、二次電池400の充電率が規定値(例えば60[%])以上であり規定値よりも大きい閾値(例えば80[%])未満であるとき、二次電池400に対する回生電流の分配比率をコイル52に対する回生電流の分配比率よりも大きくし、二次電池400の充電率が閾値以上であるとき、コイル52に対する回生電流の分配比率を二次電池400に対する回生電流の分配比率よりも大きくする。これにより、例えば、二次電池400の充電率が規定値以上であるものの未だ不足している場合、二次電池400に対する回生電流の分配比率をコイル52に対する回生電流の分配比率よりも大きくすることにより、二次電池400を短時間で十分に充電することができる。また、二次電池400の充電率が十分である場合、コイル52に対する回生電流の分配比率を二次電池400に対する回生電流の分配比率よりも大きくすることによって、タイヤ1を短時間で十分に加温することができる。
【0223】
また、温度データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給が制御されることにより、タイヤ1の加温が必要なときだけタイヤ1が加温され、タイヤ1の加温が不要なときにはタイヤ1を加温しない制御が可能となり、過度な加温によるタイヤ1の劣化を抑制しつつ、車両300の燃費を改善することができる。
【0224】
また、温度データ取得部603で取得された温度が規定温度以上か否かが判定され、制御部601は、規定温度以上であると判定されたとき、コイル52に対する回生電流の供給を停止する。タイヤ1の温度が規定温度以上である場合、回生モータ又は発電機701からコイル52に対する回生電流の供給が停止されることにより、タイヤ1の加温が不要であるにもかかわらずタイヤ1が無駄に加温されることが抑制される。
【0225】
また、タイヤ1の温度が規定温度未満である場合、回生モータ又は発電機701からコイル52に対して回生電流が供給されることにより、タイヤ1を加温して車両300の燃費を改善することができる。
【0226】
なお、本実施形態において、ガレージの外気の温度を示す外気温データを検出可能な温度センサが設けられ、その温度センサにより外気の温度が検出され、温度センサで検出された外気の温度を示す温度データが温度データ取得部603に取得されてもよい。制御部601は、外気の温度を示す温度データに基づいて、コイル52及び二次電池400に対する回生電流の供給を制御してもよい。判定部605は、温度データ取得部603で取得された外気の温度が規定温度以上か否かを判定し、制御部601は、外気の温度が規定温度以上であると判定されたとき、コイル52に対する回生電流の供給を停止してもよい。また、制御部601は、外気の温度が規定温度以上でないと判定されたとき、コイル52に対して回生電流を供給してもよい。
【0227】
なお、外気の温度を検出する温度センサの検出結果によらずに、気象予報データが示す外気の温度に基づいて、コイル52によるタイヤ1の誘導加熱を実施するか否かが判定されてもよい。
【0228】
なお、本実施形態において、車両300に瞬間燃費計が設けられている場合、瞬間燃費計の計測結果に基づいて、コイル52に対する回生電流の供給が制御されてもよい。例えば、瞬間燃費計の計測結果に基づいて、車両300の燃費が悪化していると判定された場合、制御部601は、コイル52に回生電流を供給して、タイヤ1を加温する。これにより、タイヤ1の転がり抵抗が低減され、車両300の燃費は改善される。