(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、エンジン始動前の低温状態を昇温させる制御には適しているが、エンジン動作中になると、触媒の温度計測箇所によって、既に触媒の活性が得られているにも関わらず、通電を継続することがあり、無駄な電力消費となる場合がある。例えば、触媒の中央の温度を用いて電気ヒータの通電を制御する場合、触媒の入口や出口で十分な浄化率が得られているが、触媒中央の温度は低いままの状態であると、電気ヒータの通電が継続されることになる。
【0007】
また、熱源が電気ヒータのみであり、電気ヒータの電力源(例えば、車両の場合は車載バッテリ)の状態を常に監視する必要がある。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、内燃機関の排気系に取り付けられる触媒装置の活性を促す昇温のための消費電力、及び燃費を含む消費エネルギーを低減しつつ、早期に触媒活性を向上させることができる排気浄化装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内燃機関の排気系に取り付けられた触媒装置を昇温することで活性させて排気を浄化する排気浄化装置であって、前記排気系における触媒装置よりも上流側に取り付けられ、流動性媒体の脱着反応を行って蓄熱し、かつ、前記流動性媒体の吸着反応により放熱する化学蓄熱部、前記化学蓄熱部との間で流動性媒体が循環可能であり当該流動性媒体を貯留する貯留部、及び前記化学蓄熱部と前記貯留部との間の循環路を開閉制御する流量制御部を備え、前記化学蓄熱部を流通する流動性媒体の吸着熱で内燃機関から排出された排気を加熱する第1の加熱装置と、前記排気系における触媒装置よりも上流側に取り付けられ、前記第1の加熱装置とは異なる熱源を用いて内燃機関から排出された排気を加熱する第2の加熱装置と、前記触媒装置の浄化率を取得する浄化率取得手段と、前記浄化率取得手段から取得した前記触媒装置の浄化率が所定の値よりも低い場合に、前記第1の加熱装置又は前記第2の加熱装置の駆動を制御して前記触媒装置よりも上流側の排気を加熱する加熱制御手段と、を有している。
【0010】
本発明によれば、第1の加熱装置は、化学蓄熱部と貯留部とを備え、この化学蓄熱部と貯留部との間を流動性媒体が循環することで、化学蓄熱部が化学的に蓄熱される。
【0011】
加熱制御手段では、浄化率取得手段から取得した触媒装置の浄化率が所定の値よりも低い場合に、第1の加熱装置又は第2の加熱装置の駆動を制御して前記触媒装置よりも上流側の排気を加熱する。
【0012】
例えば、第1の加熱装置の流動制御部を制御して化学蓄熱部と貯留部との間の循環路を開放する。これにより、流動性媒体が循環し、当該循環の際に化学蓄熱部で排気との間で熱交換がなされ、排気が加熱される。
【0013】
この排気の加熱により、触媒装置が昇温されて活性化し、排気の浄化率を向上することができる。
【0014】
第2の加熱装置を適用した場合は、異なる熱源により排気系の流動する排気を加熱する。排気の加熱により、触媒装置が活性化し、排気の浄化率が向上する。
【0015】
内燃機関の排気系に2種の異なる熱源を用いた加熱機能を備えることで、何れかが使用不要となっても、触媒装置の活性化を維持することができる。この場合、第1の加熱装置と第2の加熱装置の併用、交互使用、一方を他方の予備機能とするといった、様々な適用例が考えられる。
【0016】
本発明において、前記第1の加熱装置の前記化学蓄熱部及び前記貯留部における前記流動性媒体の温度又は圧力の少なくとも1つを含む状態を検出する状態検出手段をさらに有し、前記加熱制御手段は、前記状態検出手段の検出結果に基づいて、前記化学蓄熱部又は前記貯留部の何れかにおける流動性媒体の保有量を演算し、前記貯留部における流動性媒体の保有量が所定以上ある場合に、第1の加熱装置の駆動を制御して前記触媒装置よりも上流側の排気を加熱する。
【0017】
状態検出手段は、第1の加熱装置のヒータ部及び貯留部における流動性媒体の温度又は圧力の少なくとも1つを含む状態を検出する。例えば、温度センサと圧力センサとでは温度センサの方が廉価である。
【0018】
例えば、圧力センサよりも廉価な温度センサを備えた場合、換算によって圧力を得ることができる。一方、圧力センサで直接圧力を検出した方が精度は高い。そこで、価格と精度との二律背反の関係を考慮して選択すればよく、当然、温度センサ及び圧力センサを併用してもよい。
【0019】
加熱制御手段では、状態検出手段の検出結果に基づいて、化学蓄熱部又は貯留部の何れかにおける流動性媒体の保有量を演算する。なお、基本的に総量は変化しないため、一方の保有量を演算すればよい。
【0020】
ここで、貯留部における流動性媒体の保有量が所定以上ある場合に、流動性媒体が正常に循環できるので、第1の加熱装置の駆動を制御して前記触媒装置よりも上流側の排気を加熱する。
【0021】
本発明において、前記第2の加熱装置が、通電により発熱する発熱体を用いた電気ヒータであり、前記加熱制御手段は、前記電気ヒータを、前記第1の加熱装置が使用不能な場合の排気加熱用として適用する。
【0022】
第2の加熱装置として、通電により加熱する加熱体を用いた電気ヒータを用いる。電気ヒータは通電又は遮断により比較的容易に加熱制御が可能である。
【0023】
そこで、電気ヒータを、第1の加熱装置が使用不能な場合の排気加熱用として適用する。この場合、例えば、第1の加熱装置の流量制御部を制御してヒータ部と貯留部との間の循環路を閉塞した状態とすることで、加熱された排気を効率良く触媒装置へ移動させることができる。
【0024】
本発明において、前記浄化率取得手段が、前記触媒装置の上流側及び下流側には、それぞれCOセンサ、THCセンサ及びNOxセンサの何れか1つ又は複数の浄化率判別センサと、前記触媒装置の浄化率が、上流側の浄化率判別センサの検出値に対する下流側の浄化率判別センサの比を演算する演算部と、を備える。
【0025】
浄化率は、触媒装置の上流側と下流側との排気の成分の遷移状態(下流側/上流側の演算値)が浄化率となる。そこで、COセンサ、THCセンサ及びNOxセンサの何れかを触媒装置の上流側及び下流側のそれぞれに配置し、排気に含まれる検出成分の量の比に基づいて浄化率を演算することができる。
【0026】
本発明において、前記触媒装置の床温度を検出する床温検出センサをさらに有し、
前記浄化率取得手段が、前記床温検出センサによる床温度に基づいて浄化率を推定する。
【0027】
床温検出センサによる床温度から浄化率を推定することができる。
【0028】
本発明において、前記触媒装置の床温度を検出する床温検出センサをさらに有し、当該床温検出センサによる床温度を、前記加熱制御手段による排気の加熱制御の要否判定に適用する。
【0029】
床温検出センサによる触媒装置の床温度の検出値を、排気の加熱の要否の判定要件に加えることで、より精度の高い判定が可能となる。
【0030】
本発明において、前記第2の加熱装置が、前記第1の加熱装置よりも上流側に配置されており、前記加熱制御手段は、前記第1の加熱装置の前記貯留部の前記流動性媒体の保有量が所定値以下の場合に、前記触媒装置を通過する排気を加熱する必要がないこと、及び、前記化学蓄熱部の圧力が前記貯留部の圧力よりも低いことを条件に、前記第1の加熱装置の前記流量制御部を制御して前記化学蓄熱部と前記貯留部との間の循環路を閉塞した状態で、前記第2の加熱装置を、前記化学蓄熱部での前記流動性媒体の脱着反応のための加熱用として適用し、前記化学蓄熱部の圧力が前記貯留部の圧力よりも所定以上高くなった時点で、前記第1の加熱装置の前記流量制御部を制御して前記化学蓄熱部と前記貯留部との間の循環路を開放する。
【0031】
第1の加熱装置の貯留部の流動性媒体の保有量が所定値以下の場合がある。
【0032】
この場合、加熱制御手段では、触媒装置を通過する排気を加熱する必要がないことを確認する。また、加熱制御手段では、化学蓄熱部の圧力が貯留部の圧力よりも低いことを確認する。
【0033】
その後、第1の加熱装置の流量制御部を制御して化学蓄熱部と貯留部との間の循環路を閉塞した状態とする。
【0034】
循環路を閉塞した状態で、第2の加熱装置によって排気を加熱する。この加熱された排気の熱により、化学蓄熱部での流動性媒体は加熱され、加圧される。
【0035】
また、加熱制御手段では、第2の加熱装置を、前記化学蓄熱部での前記流動性媒体の加圧のための加熱用として適用しているとき、前記化学蓄熱部の圧力が前記貯留部の圧力よりも所定以上高くなった時点で、前記電気ヒータをオフすると共に、前記第1の加熱装置の前記流量制御部を制御して前記化学蓄熱部と前記貯留部との間の循環路を開放する。
【0036】
これにより、化学蓄熱部の圧力が貯留部の圧力よりも高いため、流動性媒体は化学蓄熱部から貯留部へ流動し、貯留部に流動性媒体を貯留することができる。
【0037】
このため、第1の加熱装置は再生され、次の排気の加熱として適用することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明した如く本発明では、内燃機関の排気系に取り付けられる触媒装置の活性を促す昇温のための消費電力、及び燃費を含む消費エネルギーを低減しつつ、早期に触媒活性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本実施の形態に係る排気浄化装置10が示されている。
【0041】
内燃機関12は、車両に搭載されるエンジンを代表とし、燃料の燃焼が機関の内部で行われ、燃焼ガスの熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する原動機である。
【0042】
内燃機関12にはエンジン制御部14が接続されている。例えば、内燃機関12がディーゼルエンジンの場合、シリンダー内の高圧高温に圧縮された空気中に,燃料として重油または軽油を噴射して燃焼させる構造となっており、エンジン制御部14により、燃料噴射量、燃料噴射時期等が制御される。
【0043】
内燃機関12には、内部で燃料を燃焼させた後の燃焼ガス(以下、「排気」という)を排出するための排気管16が取り付けられている。
【0044】
排気は排気管16を通過して、内燃機関12の外へ排出される。
【0045】
排気管16には、本発明の排気浄化装置の主体を構成する触媒装置18が取り付けられている。触媒装置18は、燃焼ガスに含まれるNOxを還元して無害のN
2に分解する役目を有している。
【0046】
ここで、本実施の形態では、内燃機関12と触媒装置18との間の排気管16に、排気を加熱するための第1の加熱装置20及び第2の加熱装置22が設けられている。
【0047】
この第1の加熱装置20及び第2の加熱装置22は、触媒装置18による触媒活性を向上させる役目を有しており、触媒装置18と共に、排気浄化装置10の他一部を構成する。
【0048】
第1の加熱装置20及び第2の加熱装置22は、前記エンジン制御部14と接続された加熱制御装置24によって制御されるようになっている。
【0049】
(第1の加熱装置20)
図1に示される如く、第1の加熱装置20は、化学蓄熱ヒータであり、排気管16の周囲に取り付けられ、内方空間に化学蓄熱材が収容された輪状筐体構造の化学蓄熱部としての蓄熱ヒータ部26を備えている。なお、本実施の形態では、流動性媒体としてアンモニア(NH3)が適用されている。
【0050】
また、蓄熱ヒータ部26の外周の一部には、循環パイプ28の一端部が接続され、蓄熱ヒータ部26の内方空間と循環パイプ28の内方空間が連通されている。
【0051】
循環パイプ28の他端部は、流動性媒体を貯留する箱形構造の貯留部30(以下、蓄熱ストレージ30」という)に接続され、循環パイプ28の内方空間と蓄熱ストレージ30の内方空間が連通されている。
【0052】
このため、蓄熱ヒータ部26と蓄熱ストレージ30とは、循環パイプ28を介して連通されており、流動性媒体は、圧力差により相互に流動可能である。言い換えれば、流動性媒体は、蓄熱ヒータ部26と蓄熱ストレージ30との間で行き来(循環)することになる。
【0053】
前記循環パイプ28の中間部には、流量制御部としての開閉バルブ32が取り付けられ、この開閉バルブ32の開閉によって、流動性媒体の流動が制御可能となる。例えば、最も単純な制御形態として、開閉バルブ32の開閉であり、開放したときは蓄熱ヒータ部26と蓄熱ストレージ30との間の流動性媒体の行き来が可能となり、開閉バルブ32を閉塞したときは蓄熱ヒータ部26と蓄熱ストレージ30との間の流動性媒体の行き来が不可能となる。
【0054】
ここで、蓄熱ヒータ部26には、化学蓄熱材としての臭化マグネシウム(MgBr2)が充填されており、流動性媒体としてのアンモニアとの化学反応(吸着反応)によって発熱する。このため、蓄熱ストレージ30と蓄熱ヒータ部26との圧力差により、蓄熱ストレージ30から蓄熱ヒータ部26へ流動性媒体が流動することで、蓄熱ヒータ部26により排気管16を通過する排気を加熱することができる。
【0055】
この第1の加熱装置20により加熱された排気が触媒装置18へ到達すると、当該排気の熱量で触媒装置18(の床温度)が昇温され、触媒機能を活性化させることができる。特に、内燃機関12の始動から安定する過渡期においては、触媒装置18の床温度の昇温により、触媒機能を活性化することが好ましい。
【0056】
一方、内燃機関12が十分に暖機され、触媒装置18が十分に活性化しており、かつ排気が十分な熱量を持っている場合は、排気による床温度の昇温は不要となる。
【0057】
このとき、排気の熱量により蓄熱ヒータ部26に収容されている化学蓄熱材を加熱し、化学蓄熱材から流動性媒体が脱着する脱着反応を生じさせて蓄熱することができる。この結果、蓄熱ストレージ30の圧力よりも高くなると、蓄熱ヒータ部26から蓄熱ストレージ30へ流動性媒体が流動させ、当該蓄熱ストレージ30で、必要十分な保有量の流動性媒体を貯留することができる。すなわち、第1の加熱装置20は、排気の加熱処理のために、循環利用が可能となる。
【0058】
(第2の加熱装置22)
図1に示される如く、第2の加熱装置22は、電気ヒータであり、排気管の周囲に取り付けられ、内部に電流を熱に変換する発熱体22Aが配線された輪状筐体の電気ヒータ部22Bを備えている。電気ヒータ部22Bは熱伝導率の高い部材が好ましい。
【0059】
電気ヒータ部22Bでは、印加される電圧に基づいて発熱体が発熱し、輪状の筐体を介して、排気管16を通過する排気を加熱するようになっている。
【0060】
なお、
図1では、電気ヒータ部22Bを排気管16の周囲に設けた構造としているが、排気管16内部に発熱体を配置してもよい。
【0061】
(加熱制御部24)
加熱制御装置24は、第1の加熱装置20に設けられた開閉バルブ32を制御するバルブ制御部34と、第2の加熱装置22として適用される電気ヒータ22B(の発熱体22A)への印加電圧を制御する電圧制御部36と、触媒装置18の浄化率に基づいて、バルブ制御部34及び電圧制御部36を総合的に制御する主制御部38とを備えている。
【0062】
第1の加熱装置20における蓄熱ヒータ部26には、蓄熱ヒータ部温度センサ40が取り付けられている。蓄熱ヒータ部温度センサ40の検出信号線は主制御部38に接続されている。
【0063】
第1の加熱装置20における蓄熱ストレージ30には、蓄熱ストレージ温度センサ42が取り付けられている。蓄熱ストレージ温度センサ42の検出信号線は主制御部38に接続されている。
【0064】
主制御部38は、検出された温度に基づいて圧力を演算する機能を備えている。すなわち、温度と圧力の関係を使用領域において線形に近似した
図2(A)に示される如く、アンモニアを収容する容器における温度と圧力との関係はほぼ正比例である。
【0065】
従って、主制御部38では、蓄熱ヒータ部温度センサ40による温度検出で、蓄熱ヒータ部26に貯留されている流動性媒体の圧力を認識することができる。また、主制御部38では、蓄熱ストレージ温度センサ42による温度検出で、蓄熱ストレージ30に貯留されている流動性媒体の圧力を認識することができる。
【0066】
ここで、
図2(B)に示される如く、圧力と流動性媒体の量との関係も線形の相関関係を持っている。なお、温度によって特性曲線が異なる場合がある。
【0067】
このため、例えば、蓄熱ストレージ30に貯留されている流動性媒体の保有量を求める場合、蓄熱ストレージ30の温度を蓄熱ストレージ温度センサ42で検出し、当該検出した温度から圧力を換算し、さらに、換算した圧力から流動性媒体の保有量(残量)を得ることができる。
【0068】
なお、本実施の形態では、蓄熱ヒータ部温度センサ40と蓄熱ストレージ温度センサ42を適用したが、廉価である温度センサの代わりに、精度を重視するために蓄熱ヒータ部26及び蓄熱ストレージ30にそれぞれ圧力センサを取り付けてもよい。また、温度センサと圧力センサとを併用してもよい。
【0069】
触媒装置18には、当該触媒装置18の床温度を検出する床温検出センサ44が取り付けられている。床温検出センサ44の検出信号線は主制御部38に接続されている。
【0070】
また、排気管16における、触媒装置18の上流側(入口近傍)と下流側(出口近傍)には、それぞれNOxセンサ46in、46outが取り付けられている。
【0071】
NOxセンサ46in、46outの検出信号線は浄化率演算部48に接続されている。なお、
図1では、浄化率演算部48は、加熱制御部24から別構成とした状態となっているが、加熱制御部24の一部として機能させてもよい。
【0072】
浄化率演算部48では、NOxセンサ46in、46outのそれぞれから受け付けた検出値に基づいて、触媒装置18に入る排気の窒素酸化物の量Ninに対する、触媒装置から出る排気の窒素酸化物の量Noutの比(浄化率S)を演算する(S=Nin/Nout)。
【0073】
浄化率演算部48は、主制御部38に接続され、当該演算結果(浄化率S)を主制御部38へ送出する。
【0074】
加熱制御部24では、内燃機関12の状態(始動時、過渡期、定常運転時期等)を、エンジン制御部14から受け付けた内燃機関制御情報に基づいて解析し、それぞれの状態に適した排気の加熱制御を実行する。
【0075】
例えば、内燃機関12の始動時は、触媒装置18の浄化率が低く、床温度が低いため、所望の触媒活性を得ることができない場合がある。
【0076】
そこで、加熱制御装置24では、第1の加熱装置20を用いて、排気を加熱する。この排気の加熱によって、触媒装置18の床温度が昇温され、触媒装置18の活性を図ることができる。
【0077】
この排気の加熱制御は、触媒装置18の床温度及び浄化率を常に監視しながら実行しており、内燃機関12の状態の遷移、すなわち、過渡期、定常運転時期に遷移していくに従い、加熱制御を変更(加熱不要を含む)していくことで、内燃機関12の状態に応じた必要十分な加熱制御が可能となる。
【0078】
また、本実施の形態では、第1の加熱装置20に加え、第2の加熱装置22を排気管16に併設している。このため、加熱制御装置24では、第1の加熱装置20が使用不能な場合は、その代役として第2の加熱装置22である電気ヒータ部22Bの印加電圧を制御することで、触媒装置18の活性を維持することができるようになっている。
【0079】
以下に本実施の形態の作用を
図3及び
図4のフローチャートに従い説明する。
【0080】
なお、
図3及び
図4を含む本実施の形態の全てのフローチャートにおいて、連続するステップで実行される信号検出の順序、判定の順序は適宜入れ替え可能である。
【0081】
図3は、本実施の形態に係る、排気加熱制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0082】
ステップ100では、内燃機関12が運転中か否かが判断される。運転中か否かの判断は、燃料噴射が実行されているか否かを判断するものであり、燃焼制御が行われていない運転休止状態を指す。なお、運転休止状態とは別に、例えば、車両において長い下り坂を下っているときに実施される燃料カット制御中を、「運転中ではない」と判断してもよい。
【0083】
ステップ100で否定判定された場合は、内燃機関12が運転中ではないため、排気加熱する必要はないので、ステップ102へ移行する。
【0084】
ステップ100で肯定判定されると、内燃機関12が運転中であり、触媒装置18を活性する必要がある場合があるので、ステップ106へ移行して、触媒装置18の浄化率が基準値以上か否かが判断される。
【0085】
このステップ106で肯定判定、すなわち、浄化率が基準値以上と判断された場合は、排気加熱する必要はなく、ステップ102へ移行する。
【0086】
また、ステップ106で否定判定されると、浄化率が基準値未満であり、排気加熱する必要がある場合があるので、ステップ108へ移行して、触媒床温度が基準値以上か否かが判断される。
【0087】
このステップ108で肯定判定、すなわち、触媒装置18の床温度は安定しており、排気加熱する必要はないので、ステップ102へ移行する。
【0088】
また、ステップ108で否定判定されると、排気加熱を必要とする条件が全て揃っているため、ステップ110へ移行する。
【0089】
ここで、ステップ100、ステップ106、ステップ108から移行したステップ102では、第1の加熱装置20の開閉バルブ32を閉止し、次いで、ステップ104へ移行して第2の加熱装置22をオフ(発熱体22A非通電)して、このルーチンは終了する。
【0090】
一方、ステップ110では、蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の残量を検出する。このステップ110で流動性媒体(NH3)の残量が所定値未満と判定された場合は、第1の加熱装置20による排気加熱能力が不適正であると判断し、ステップ128へ移行し、開閉バルフ32を閉止し、ステップ130へ移行する。
【0091】
ステップ130では、第1の加熱装置20に代わり、第2の加熱装置22を起動するべく、電気ヒータ部22Bの発熱体22Aを通電する。すなわち、第2の加熱装置22により、触媒装置18の触媒床温度に基づく加熱制御を開始して、このルーチンは終了する。
【0092】
また、前記ステップ110において、流動性媒体(NH3)の残量が所定以上と判定された場合は、第1の加熱装置20による排気加熱機能が適正であると判断し、ステップ120へ移行する。
【0093】
ステップ120では、蓄熱ヒータ部26の温度及び蓄熱ストレージ30の温度を検出してステップ122へ移行する。ステップ122では、検出した温度に基づいて、蓄熱ヒータ部26の流動性媒体(NH3)の平衡圧Phを演算し、次いで、ステップ124で蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の平衡圧Psを演算し、ステップ126へ移行する。
【0094】
ステップ126では、蓄熱ヒータ部26の流動性媒体(NH3)の平衡圧Phと蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の平衡圧Psとを比較する(Ph:Ps)。
【0095】
このステップ126で、Ph≧Psと判定された場合は、流動性媒体(NH3)が適正に流動せず、排気加熱機能が不十分であると判断し、ステップ128へ移行し、開閉バルフ32を閉止し、ステップ130へ移行する。
【0096】
ステップ130では、第1の加熱装置20に代わり、第2の加熱装置22を起動するべく、電気ヒータ部22Bの発熱体22Aを通電する。すなわち、第2の加熱装置22により、触媒装置18の触媒床温度に基づく加熱制御を開始して、このルーチンは終了する。
【0097】
一方、ステップ126でPh<Psと判定された場合は、流動性媒体(NH3)が適正に流動し、排気加熱機能が十分であると判断し、ステップ132へ移行し、開閉バルブ32を開放して、蓄熱ヒータ部26に流動性媒体(NH3)を供給し、第1の加熱装置20による排気加熱制御を開始し、このルーチンは終了する。
【0098】
図4(A)は、第2の加熱装置22の発熱体22Aに印加する電圧を制御するためのルーチンを示すフローチャートである。
【0099】
ステップ150では、触媒装置18の床温度Tc(触媒床温)を検出し、次いでステップ152へ移行して、検出した触媒床温が所定温度以上か否かが判断される。
【0100】
このステップ152で否定判定された場合は、排気加熱機能を最大限とするべく、ステップ154へ移行して、第2の加熱装置22のオンのときの排気加熱機能を定常値制御に切り替える。すなわち、発熱体22Aに印加する電圧Vを一定値Vtに設定し(
図5の範囲F参照)、このルーチンを終了する。
【0101】
一方、ステップで肯定判定された場合は、排気加熱機能を最大限とすることなく触媒装置18の浄化率向上に貢献し得ると判断し、触媒床温に基づく電圧調整制御に変更するべく、ステップ156へ移行して、第2の加熱装置22を触媒床温に基づく制御に切り替え、ステップ158へ移行する。
【0102】
ステップ158では、検出した触媒温度Tcに応じて加熱機能を設定する。すなわち、発熱体22Aへ印加する電圧Vを触媒温度Tcの関数(V=−a×Tc+b)で求め(
図5の範囲S参照)、このルーチンは終了する。なお、aは比例定数(正の数)である。
【0103】
次に、
図4(B)は、第2の加熱装置22の動作(主としてオフ契機)を制御するためのルーチンを示すフローチャートである。
【0104】
ステップ160では、第2の加熱装置22がオン中か否かが判断され、否定判定された場合はこのルーチンは終了する。また、ステップ160で肯定判定されると、ステップ162へ移行する。
【0105】
ステップ162では、浄化率演算部48から信号を取り込み、次いでステップ164へ移行して浄化率が基準値以上か否かを判断する。
【0106】
このステップ164で否定判定された場合は、排気加熱を継続する必要があると判断し、このルーチンは終了する。
【0107】
また、ステップ164で肯定判定された場合は、ステップ165へ移行して触媒装置の床温度が所定以上か否かを判断する。
【0108】
このステップ165で否定判定された場合は、排気加熱を継続する必要があると判断し、このルーチンは終了する。
【0109】
また、ステップ165で肯定判定された場合は、排気加熱が不要であるため、ステップ166へ移行して、第2の加熱部22をオフ(発熱体22Aを非通電)して、このルーチンを終了する。
【0110】
すなわち、第2の加熱装置22は、浄化率に基づいて、
図3のステップ130によるオンと、
図4(B)のステップ166のオフとが選択されて切り替わるオンオフ制御が実行されると共に、触媒床温度に基づいて、発熱体22Aに印加する電圧を制御することで(
図5参照)、適正な排気加熱制御が実現される。
【0111】
本実施の形態によれば、触媒装置18を活性する必要があるとき、優先的に第1の加熱装置20による排気加熱を選択し、当該第1の加熱装置20の排気加熱機能が十分の場合は、当該第1の加熱装置20を用いて排気加熱を実行し、第1の加熱装置20の排気加熱機能が不十分の場合は、第2の加熱装置22を用いて排気加熱を実行することで、無駄な電力消費を抑制しつつ、触媒装置18の浄化率を向上することができる。
【0112】
また、
図6には本実施の形態を含む複数種類の制御形態における投入エネルギーを比較する特性図が示されている。
【0113】
この
図6に示される如く、比較例としての触媒床温に基づく制御と、浄化率に基づく制御に比べ、本実施の形態である触媒床温と浄化率を併用に基づく制御は、投入エネルギーが少なくて済むことがわかる。
【0114】
図7は、第1の加熱装置20の再生制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0115】
ステップ200では、触媒装置18の昇温制御中であるか否かが判断され、肯定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0116】
また、ステップ200で否定判定された場合は、ステップ202へ移行して、触媒装置18の床温度(触媒床温)を検出し、ステップ204へ移行する。
【0117】
ステップ204では、触媒床温が基準値以上か否かが判断され、否定判定された場合は、排気の熱量を触媒装置18の活性化に利用することが優先されるため、第2の加熱装置20の再生を断念し、このルーチンは終了する。
【0118】
また、ステップ204で肯定判定された場合は、排気の熱量を触媒装置18の活性化に利用する必要がなく、第1の加熱装置20の再生に利用可能であるため、ステップ206へ移行する。
【0119】
ステップ206では、蓄熱ヒータ部26の温度、及び蓄熱ストレージ30の温度を検出し、ステップ208へ移行する。
【0120】
ステップ208では、検出した温度に基づいて、蓄熱ヒータ部26の流動性媒体(NH3)の平衡圧Phを演算し、次いで、ステップ210へ移行して蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の平衡圧Psを演算し、ステップ212へ移行する。
【0121】
ステップ212では、蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の残量を検出する。このステップ212で蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の残量が所定値以上と判定された場合は、再生制御が不要であると判断し、ステップ214へ移行する。
【0122】
ステップ214では、開閉バルブ32が開放されているか否かが判断され、開放されている場合は(肯定判定)、ステップ216で開閉バルブ32を閉止し、蓄熱ヒータ部26への流動性媒体(NH3)の供給を断ち、ステップ218へ移行する。また、ステップ214で否定判定された場合は、ステップ218へ移行する。
【0123】
ステップ218では、第2の加熱装置22がオン(発熱体22A通電)されているか否かが判断され、オンされている場合は(肯定判定)、ステップ220で第2の加熱装置22をオフ(発熱体22A非通電)して、このルーチンは終了する。また、ステップ218で否定判定(第2の加熱装置22がオフ)された場合はこのルーチンは終了する。
【0124】
一方、ステップ212で蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の残量が所定値未満と判定された場合は、再生制御が必要と判断し、ステップ222へ移行する。
【0125】
ステップ222では、前記ステップ208及びステップ210で演算した蓄熱ヒータ部26の流動性媒体(NH3)の平衡圧Phと蓄熱ストレージ30の流動性媒体(NH3)の平衡圧Psとを比較する(Ph:Ps)。
【0126】
このステップ222で、Ph≧Psと判定された場合は、ステップ224へ移行して、開閉バルブ32を開放し、蓄熱ストレージ30に流動性媒体(NH3)を供給し(以下、「通常再生」という)、ステップ228へ移行する。ステップ228では、後述する強制再生制御に用いられるタイマカウンタCtをリセット(Ct←0)し、このルーチンは終了する。
【0127】
また、ステップ222で、Ph<Psと判定された場合は、通常再生が不可能であるため、ステップ226へ移行して、第1の加熱装置20の強制再生制御を実行し、このルーチンは終了する。ステップ226の強制再生制御では、第2の加熱装置20の熱量を排気を介して第1の加熱装置20の加熱による加圧を行い、Ph≧Psとする制御である。
【0128】
図8は、
図7のステップ226における、第1の加熱装置20の強制再生制御ルーチンの詳細を示すフローチャートである。
【0129】
ステップ250では、蓄熱ヒータ部26の温度を検出し、次いでステップ252へ移行して蓄熱ヒータ部26の温度が所定以上か否かが判断される。
【0130】
ステップ252で肯定判定、すなわち蓄熱ヒータ部26の温度が所定以上と判断された場合は、ステップ254へ移行して、再生用電池の情報を読み出す。例えば、第2の加熱装置22の電力源が車両に搭載されているバッテリの場合は、当該バッテリの電圧や蓄電量等の情報を読み出す。
【0131】
次のステップ256では、ステップ254で取得した再生用電池の情報に基づいて、再生用電池が適用可能か否かが判断される。このステップ256で肯定判定されると、ステップ258へ移行して、第1の加熱装置20の強制再生用として第2の加熱装置22をオン(発熱体22Aへ通電、
図5の定常出力)し、ステップ260へ移行する。
【0132】
ステップ260では、後述するタイマカウンタCtをリセット(Ct←0)し、このルーチンは終了する。
【0133】
また、ステップ252で否定判定、すなわち、蓄熱ヒータ部26の温度が所定未満の場合、再生するには相当の熱量が必要であり、再生制御を待機するべく、ステップ262へ移行してタイマカウンタCtをインクリメント(Ct←Ct+1)し、ステップ264へ移行する。このステップ262のタイマカウンタCtのインクリメントは、
図8のルーチンが繰り返し実行される毎にカウント値Ctを累積していくものであり、タイマの役割を担う。
【0134】
ステップ264では、カウントアップ値Csを読み出し、次いでステップ266では、現在のカウント値Ctがカウントアップ値Csを超えたか(Ct>Cs)否かが判断される。
【0135】
このステップ266で肯定判定(Ct>Cs)されると、ステップ268へ移行して、再生用電池情報を読み出し、次いでステップ270で再生用電池が適用可能と判定された場合(肯定判定)、ステップ272へ移行して、強制再生用として、第2の加熱装置22をオン(発熱体22Aへ通電、
図5の定常よりも増強出力)し、このルーチンは終了する。
【0136】
(変形例)
なお、本実施の形態では、排気浄化装置10として、排気を昇温することに特化した構成を説明したが、尿素を供給して窒素酸化物を浄化する選択還元触媒を含めた排気浄化装置50(
図9参照)について説明する。
【0137】
図9に示される如く、変形例に係る排気系構造は、本実施の形態に係る排気加熱機能に加え、窒素酸化物浄化機能が付加されて、総合的に排気浄化装置50を構成している。
【0138】
変形例に係る排気系構造は、本実施の形態と同様に、ディーゼルエンジンの内燃機関12を対象としている。
【0139】
本実施の形態で説明した排気加熱機能を有する排気浄化装置10は、排気管16における内燃機関12の下流側に配置されている。また、排気管16には、排気管16中に供給される尿素により窒素酸化物(NOx)を浄化する選択還元触媒54と、内燃機関12と選択還元触媒54との間に設けられた酸化触媒56とを備えている。
【0140】
窒素酸化物浄化機能は、酸化触媒56の下流側に配置されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下DPFという)58と、DPF58と選択還元触媒54との間の排気管16中に尿素水を噴射して添加するための尿素添加弁60を有する尿素噴射装置62と、尿素噴射装置62に供給される尿素水を蓄えておく尿素タンク64と、を備えている。
【0141】
また、選択還元触媒54よりも上流側の排気管16中には、NOxセンサ66と温度センサ70とが配置され、選択還元触媒54よりも下流側の排気管16中にはNOxセンサ68が配置される場合がある。
【0142】
選択還元触媒54は、NOx還元触媒であり、尿素添加弁60によって排気管16に供給された尿素水が転換されてアンモニアガスとして排気ガスと共に選択還元触媒54に流入される。選択還元触媒54では、アンモニアガスにより排気ガス中のNOxが選択的に還元又は分解され、これにより、排気ガス中のNOxガスが浄化されて大気中に放出される。
【0143】
尿素噴射装置62は、尿素タンク64に貯留された尿素水を、吸入管72を介して吸い出すための尿素ポンプ(図示省略)を備えており、尿素ポンプによって吸入管72を介して吸い出された尿素水が、供給管74及び尿素添加弁60を介して排気管16に供給される。なお、吸入管72の尿素タンク64側の端部にはフィルタ(図示省略)が設けられており、フィルタによって異物等が除去されて排気管16に尿素水が供給されるようになっている。
【0144】
なお、本実施の形態(変形例を含む)では、流動性媒体として、NH3(アンモニア)を適用したが、CO2(二酸化炭素)、H2O(水)等の他の流動性媒体でもよい。併せて、蓄熱ヒータ部26の化学蓄熱材として、臭化マグネシウム(MgBr2)に限定されず、塩化マグネシウム(MgCl2)又は酸化カルシウム(Ca0)等、他の化学蓄熱材であってもよい。例えば、化学蓄熱材が酸化カルシウム(Ca0)の場合、流動性媒体はH2O(水)を選択すればよい。
【0145】
また、本実施の形態(変形例を含む)では、流量制御部として開閉バルブ32を適用したが、開閉バルブ32は、電動バルブ、圧力バルブの何れであってもよく、また、開閉バルブ32に限らず、ポンプ(電動式、機械式、熱変位式等)を用いてもよい。さらに、複数本の循環パイプを配置して、開閉バルブ32又はポンプと逆止弁とを併用するようにしてもよい。
【0146】
さらに、本実施の形態では、第2の加熱装置22として適用した電気ヒータ部22Bの発熱体22Aに印加する電圧を調整して熱量を制御したが(
図5参照)、印加電圧は一定で、例えばデューティ制御(パルス幅制御)して熱量を制御するようにしてもよい。
【0147】
また、本実施の形態では、蓄熱ヒータ部26は、排気管16の周囲に取り付けられるとしたが、これに限られず、例えば、排気管16の内部に蓄熱ヒータ部26を配置してもよい。排気管16の内部に蓄熱ヒータ部26を配置する場合には、例えば複数の偏平形状のヒータ部と複数の波型フィン(熱交換部)とを交互に積み重ねた構成としてもよい。