(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような編組においては、多数の素線が2つの螺旋方向を描きつつ筒状をなすように組み合わされている。
【0005】
このため、電磁ノイズによって素線に生じた電流は、他の素線との交点で分岐しながら筒状の編組全体を流れている。
【0006】
しかしながら、編組が劣化していくと、各編組の表面に酸化膜等が生じる。このため、各素線の交点で電気抵抗が上昇してしまう。そうすると、各素線で生じた電流は、他に分岐することなく、螺旋状の経路に沿って流れてしまう。これにより、電磁ノイズを逃がす電流経路は、インダクタンスを持つことになってしまう。編組が電磁シールドとして用いられている場合には、シールド性能が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、編組がなるべくインダクタンスを持たないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る筒状導電性編組は、螺旋を描く第1導電線と、前記第1導電線の螺旋軸と同じ螺旋軸周りで前記第1導電線とは逆方向の螺旋を描く第2導電線とが筒形状をなすように組合わされ、前記螺旋軸に沿ったライン上における複数箇所で、前記第1導電線と前記第2導電線とが電気的及び機械的に接続されているものである。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る筒状導電性編組であって、前記第1導電線と前記第2導電線とは、それらの交点で電気的及び機械的に接続されているものである。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係る筒状導電性編組であって、前記ラインに沿って線状導体が配設されており、前記第1導電線と前記第2導電線との電気的及び機械的な接続部が前記線状導体に電気的及び機械的に接続されているものである。
【0011】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係る筒状導電性編組であって、前記第1導電線と前記第2導電線とが、はんだ付け又は溶接されて、電気的及び機械的に接続されているものである。
【0012】
第5の態様は、第2の態様に係る筒状導電性編組であって、前記第1導電線と前記第2導電線とは、前記ラインに沿って配設された線状導体を介して電気的及び機械的に接続されているものである。
【0013】
第6の態様は、第5の態様に係る筒状導電性編組であって、前記第1導電線と前記第2導電線とが、前記線状導体にはんだ付け又は溶接されて、前記線状導体を介して電気的及び機械的に接続されているものである。
【0014】
第7の態様は、第1〜第6のいずれか1つの態様に係る筒状導電性編組であって、前記螺旋軸に沿った方向において、直線状の経路に配設される部分で、前記第1導電線と前記第2導電線とが電気的及び機械的に接続されているものである。
【0015】
第8の態様は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係る筒状導電性編組であって、前記螺旋軸に沿った方向において、曲げて配設される部分を除いて、前記第1導電線と前記第2導電線とが電気的及び機械的に接続されているものである。
【0016】
また、第9の態様に係る電磁シールド付配線モジュールは、配線部材と、電磁シールドとして前記配線部材の周囲を覆う第1〜第8のいずれか1つの態様に係る筒状導電性編組とを備える。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様によると、第1導電線と第2導電線とが螺旋軸に沿ったライン上における複数箇所で電気的及び機械的に接続されているため、第1導電線を流れる電流は途中で第2導電線に分岐する。同様に、第2導電線を流れる電流も、途中で第1導電線に分岐する。特に、第1導電線と第2導電線とが機械的に接続されているため、第1導電線と第2導電線との電気的な接続状態も良好に維持される。このため、第1導電線及び第2導電線を流れる電流が、螺旋軸周りを多数回周回し難くなり、結果、なるべくインダクタンスを持たないようにすることができる。
【0018】
第2の態様によると、第1導電線と第2導電線とを、それらの交点で容易に電気的及び機械的に接続することができる。
【0019】
第3の態様によると、第1導電線及び第2導電線を流れる電流が、ラインに沿った線状導体にも流れる。このため、よりインダクタンスを低下させることができる。
【0020】
第4の態様によると、はんだ付け又は溶接によって、第1導電線と第2導電線とをより確実に電気的及び機械的に接続することができる。
【0021】
第5の態様によると、電流が線状導体を流れることによって、よりインダクタンスを低下させることができる。
【0022】
第6の態様によると、はんだ付け又は溶接によって、第1導電線と第2導電線とをより確実に電気的及び機械的に接続することができる。
【0023】
第7の態様によると、筒状導電性編組のうち直線状の経路に沿って配設される部分を直線状に保ち易い。
【0024】
第8の態様によると、筒状導電性編組のうち曲げて配設される部分を曲げ易い。
【0025】
第9の態様によると、電磁シールドとしての筒状導電性編組がインダクタンスを持ちにくい。このため、筒状導電性編組で発生した電流を逃しやすくでき、シールド性能を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る筒状導電性編組及び電磁シールド付配線モジュールについて説明する。
【0028】
図1は電磁シールド付配線モジュール10を示す概略斜視図であり、
図2は筒状導電性編組50を示す概略側面図である。
【0029】
電磁シールド付配線モジュール10は、配線部材としての少なくとも1つの被覆電線12を備えると共に、電磁シールドとしての筒状導電性編組50とを備える。また、ここでは、電磁シールド付配線モジュール10は、筒状部材20と、コネクタ30とを備えている。もっとも、電磁シールド付配線モジュール10として、筒状部材20及びコネクタ30を備えていることは必須ではない。
【0030】
ここでは、電磁シールド付配線モジュール10は、複数の被覆電線12を備えており、複数の被覆電線12は、1本に束ねられている。被覆電線12は、芯線と、芯線の周囲を覆う被覆とを備える。芯線は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の線状部材である。芯線は、複数の素線が撚り合わされた構成であってもよいし、単線により構成されていてもよい。被覆は、樹脂等によって形成された絶縁部材であり、押出被覆等によって芯線を覆うように形成されている。被覆は、芯線を挟むフィルムによって形成されていてもよいし、芯線を覆った状態で熱収縮した熱収縮チューブによって構成されていてもよい。被覆電線12は、電力を供給するための電力線又は電気信号を伝送するための信号線として用いられる。いずれにせよ、被覆電線12には、電流が流れる。ここでは、被覆電線12は、3相交流を流すための電力線であり、3つの被覆電線12が1つに束ねられていることを想定して説明する。なお、複数の被覆電線は束ねられていなくてもよく、また被覆電線は1、2本でもそれ以上であってもよい。
【0031】
コネクタ30は、ハウジング部32と、導電性シェル34とを備える。
【0032】
ハウジング部32は、樹脂等の絶縁性材料によって形成された部材である。このハウジング部32は、外周面が直方体の外周面形状を呈するハウジング本体部32aと、ハウジング本体部32aの一端部(被覆電線12が接続される側の端部)に連設された連結部32bとを備える。連結部32bは、ハウジング本体部32aよりも細い形状(ここでは直方体状)に形成されている。
【0033】
このハウジング部32には、各被覆電線12に対応する端子部が組込まれている。各端子部は、被覆電線12の芯線に接続されている。各端子部と芯線との接続は、超音波溶接、抵抗溶接、はんだ付、圧着等によってなされている。また、この端子部は、導体との接続部をハウジング部32内に埋設すると共に、その反対側の接続部を突出させた状態で、ハウジング部32にインサート成形等によって組込まれている。端子部の接続部は、ハウジング本体部32aのうち上記連結部32bとは反対側に露出している。この接続部は、外部の電気部品側との接続に供される部分であり、ネジ止用の孔が形成された丸形端子形状、筒状のメス端子形状、若しくは、ピン状又はタブ状のオス端子形状等に形成されている。端子部と接続された芯線を含む被覆電線12は、ハウジング部32の連結部32b側から外方に延出している。
【0034】
導電性シェル34は、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属板をプレス成形することによって、またはアルミのダイキャスト等で形成された部材であり、上記ハウジング部32のハウジング本体部32a及び連結部32bの周囲4方を覆う箱形状に形成されている。導電性シェル34は、連結部32bの外向き側及びその反対側で開口している。
【0035】
そして、電磁シールド付配線モジュール10が車両等に組込まれた状態で、本コネクタ30が車両に搭載された各種電気部品に接続され、被覆電線12が電気部品に電気的に接続される。この際、導電性シェル34は、電気部品の金属ケース等、車両の接地部位に電気的に接続される。
【0036】
筒状部材20は、内部に被覆電線12を配設可能な筒状に形成された部材である。筒状部材20は、ここでは、アルミニウム、ステンレス又は鉄等の金属、或いは導電性樹脂や金属と樹脂の組み合わせによって形成された導電性筒部材である。この筒状部材20は、被覆電線12のうちコネクタ30から離れた部分を覆って保護する役割及び電磁的なシールドを行う役割を有する。
【0037】
筒状部材20を、コネクタ30に対して間隔をあけた位置に設けているのは、筒状部材20とコネクタ30との間で、被覆電線12を曲げ可能にするためである。つまり、筒状部材20は比較的硬い部材であるため、被覆電線12を所定経路形状に維持する役割をも果す。しかしながら、被覆電線12の全体が曲げられない形態であると電磁シールド付配線モジュール10を車両等に組付けることが困難となる。そこで、筒状部材20を車両に固定すると共に、コネクタ30を車両の電気部品に接続した状態で、それらの間を曲げ容易にすることで、それらの組込作業性を良好にすることができる。このため、筒状部材20とコネクタ30との間には、それらの間で被覆電線12を曲げ容易にする程度の間隔が設けられている。
【0038】
筒状導電性編組50は、螺旋を描く第1導電線51と、第1導電線51の螺旋軸Xと同じ螺旋軸X周りで第1導電線51とは逆方向の螺旋を描く第2導電線52とが筒形状をなすように組合わされたものである。より具体的には、第1導電線51と第2導電線52とは、同じ螺旋軸X軸周りで互いに逆方向の螺旋を描き、各交点において、交互に表裏に位置するように織られている。第1導電線51と第2導電線52は、単線の状態で織られていてもよいし、複数本束ねられた状態で織られていてもよい。
【0039】
この筒状導電性編組50内に、被覆電線12のうち筒状部材20とコネクタ30との間の部分が挿通されている。この状態で、筒状導電性編組50の一端部は、上記導電性シェル34に接続されている。ここでは、筒状導電性編組50の一端部を、コネクタ30の連結部32bの外周で導電性シェル34の外周に被せ、そのさらに外周囲に金属環状のかしめ部材37を配設してかしめ部材37をかしめることによって、筒状導電性編組50の一端部が、上記導電性シェル34に接続されている。なお、溶接等を用いて接続してもよい。
【0040】
また、筒状導電性編組50の他端部は、筒状部材20に接続されている。ここでは、筒状導電性編組50の他端部を、筒状部材20のうちコネクタ30側の端部の外周部に被せ、そのさらに外周に金属環状のかしめ部材38を配設してかしめ部材38を縮径するように塑性変形させることによって、筒状導電性編組50の他端部が、上記筒状部材20に接続されている。なお、溶接等を用いて接続してもよい。
【0041】
これにより、被覆電線12が、筒状部材20及び筒状導電性編組50によって囲まれると共に、筒状部材20及び筒状導電性編組50が、導電性シェル34に電気的に接続され、当該導電性シェル34を通じて接地可能となる。これにより、被覆電線12を電磁的に遮蔽することができる。
【0042】
なお、筒状導電性編組50の外周にコルゲートチューブ等の曲げ容易でかつ絶縁性を有する部材が被せられてもよい。
【0043】
上記筒状導電性編組50の第1導電線51及び第2導電線52は、螺旋軸X周りで螺旋を描いている。このため、被覆電線12を流れる電流によって、第1導電線51、第2導電線52に誘導電流が生じると、当該電流は、螺旋を描く回路に沿って流れ得る。第1導電線51と第2導電線52との交点で、第1導電線51と第2導電線52とが低抵抗で接していると、第1導電線51或は第2導電線52を流れる電流は、それらの交点で部分的に分岐しつつ流れることが期待できる。しかしながら、筒状導電性編組50が劣化してくると、第1導電線51、第2導電線52の表面に酸化膜等が生じ、第1導電線51と第2導電線52との間の交点での抵抗値が増加する。すると、第1導電線51、第2導電線52で生じた電流の大部分が、螺旋を描く回路に沿って流れる状態となる。これにより、第1導電線51、第2導電線52は、インダクタンスを持つことになり、第1導電線51、第2導電線52で生じた電流が流れ難くなり、電磁シールド性能が悪化してしまう。
【0044】
そこで、上記筒状導電性編組50では、螺旋軸Xに沿ったラインA、B上における複数箇所で、第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接続されている。ここで、第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接続されるとは、それらの間で電流を流すことが可能な状態となるように、直接的な一体化状態又は他の部材を介した間接的な一体化状態が保たれていることをいう。
【0045】
ここでは、ラインA上における複数箇所において、第1導電線51と第2導電線52との交点が複数存在し、そのうちの複数箇所(
図1及び
図2では2箇所)で、第1導電線51と第2導電線52とが直接的に電気的及び機械的に接続され、接続部54が形成されている。また、ラインB上における複数箇所において、第1導電線51と第2導電線52との
交差箇所が複数存在し、そのうちの複数箇所(
図1及び
図2では2箇所)で、第1導電線51と第2導電線52とが直接的に電気的及び機械的に接続され、接続部54が形成されている。
【0046】
なお、ラインA又はラインBにおいてのみ、第1導電線51と第2導電線52とが直接的に電気的及び機械的に接続されていてもよいし、また、より多数のラインに沿って第1導電線51と第2導電線52とが直接的に電気的及び機械的に接続されていてもよい。
【0047】
図3〜
図5は、第1導電線51と第2導電線52との接続作業例を示す説明図である。
【0048】
まず、
図3に示すように、第1導電線51と第2導電線52とが接続されていない筒状導電性編組50Bを準備する。
【0049】
そして、
図4及び
図5に示すように、長尺状の溶接ヘッド60を筒状導電性編組50B内に挿入し、筒状導電性編組50BのラインA(又はラインB)の内周側に配設する。また、ピン状の溶接ヘッド62を、筒状導電性編組50BのラインA(又はラインB)の外周側であって第1導電線51と第2導電線52とのいずれかの交点に配設する。そして、溶接ヘッド60と溶接ヘッド62との間で、第1導電線51と第2導電線52とのいずれかの交点を、筒状導電性編組50Bの内外から挟むようにする。この状態で、溶接ヘッド60と溶接ヘッド62との間に電流を流すと、ジュール熱によって第1導電線51と第2導電線52とが溶融して前記交点において抵抗溶接されることになる。
【0050】
そして、上記ラインA(又はラインB)に沿って溶接ヘッド62を移動させ、第1導電線51と第2導電線52との他の交点で、上記と同様に抵抗溶接する。
【0051】
これにより、ラインA(又はラインB)に沿って複数箇所で、第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接合され、もって、直接的な一体化状態が保たれる。
【0052】
上記例では、第1導電線51と第2導電線52とが抵抗溶接される例で説明したが、第1導電線51と第2導電線52とは、超音波溶接、熱溶接等によって溶接されてもよいし、はんだ付け等によって接合されてもよい。
【0053】
以上のように構成された筒状導電性編組50によると、第1導電線51と第2導電線52とが螺旋軸Xに沿ったラインA、B上における複数箇所で電気的及び機械的に接続されているため、第1導電線51を流れる電流は途中で第2導電線52に分岐する。同様に、第2導電線52を流れる電流も、途中で第1導電線51に分岐する。特に、第1導電線51と第2導電線52とが機械的に接続されているため、第1導電線51と第2導電線52との電気的な接続状態も良好に維持される。このため、第1導電線51及び第2導電線52を流れる電流が、螺旋軸X周りを多数回周回し難くなり、結果、筒状導電性編組50がなるべくインダクタンスを持たないようにすることができる。これにより、第1導電線51及び第2導電線52を流れる電流は、筒状導電性編組50を容易に流れることができる。
【0054】
このため、例えば、筒状導電性編組50を、被覆電線12の電磁シールドとして用いた場合に、電磁誘導によって第1導電線51、第2導電線52に生じた電流を低抵抗で導電性シェル34等に逃すことができ、シールド性能を良好に保つことができる。また、シールド性能を良好なものにすることができるため、筒状導電性編組50の小型化が可能となり、軽量化にも貢献することができる。
【0055】
もっとも、筒状導電性編組50が電磁シールドとして用いられることは必須ではなく、電力線又は信号線として用いられてもよい。
【0056】
また、第1導電線51と第2導電線52とは、それらの交点で溶接等されることによって、電気的及び機械的に接続されているため、第1導電線51と第2導電線52との電気的及び機械的な接続を容易に実現できる。
【0057】
また、複数のラインA、B上のそれぞれで、第1導電線51と第2導電線52とが複数箇所で電気的及び機械的に接続されているため、第1導電線51及び第2導電線52を流れる電流が、螺旋軸X周りを多数回周回し難くなり、結果、筒状導電性編組50のインダクタンスをより低下させることができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、ラインAに沿った第1導電線51と第2導電線52との複数の交点のうちの一部において、第1導電線51と第2導電線52とを電気的及び機械的に接続した例で説明したが、
図6に示す第1変形例の筒状導電性編組50Cように、ラインAに沿った第1導電線51と第2導電線52との複数の交点において、第1導電線51と第2導電線52とが連続的に(つまり、途中の交点で第1導電線51と第2導電線52とが接続されていない状態が存在することなく)電気的及び機械的に接続されていてもよい。第1変形例では、ラインAに沿った第1導電線51と第2導電線52との複数の交点の全てにおいて、第1導電線51と第2導電線52とが連続的に電気的及び機械的に接続されている。
【0059】
なお、筒状導電性編組50Cの端部においては、第1導電線51と第2導電線52とが接続されず、筒状導電性編組50Cの中間部において、第1導電線51と第2導電線52とが連続的に電気的及び機械的に接続されていてもよい。
【0060】
なお、上記のような第1導電線51と第2導電線52との連続的な溶接は、上記溶接ヘッド62に変えて、例えば、
図7に示すように、円板状の溶接ヘッド62Bを用い、当該溶接ヘッド62Bを、溶接ヘッド60上の筒状導電性編組50B上を転がしていくことによって、容易に行うことができる。
【0061】
このように、ラインAに沿った第1導電線51と第2導電線52との複数の交点において、第1導電線51と第2導電線52とが連続的に電気的及び機械的に接続されれば、第1導電線51及び第2導電線52を流れる電流が、螺旋軸X周りをより多数回周回し難くなり、結果、筒状導電性編組50Cのインダクタンスをより低下させることができる。
【0062】
{第2実施形態}
第2実施形態に係る筒状導電性編組150について説明する。
図8は第2実施形態に係る筒状導電性編組150を示す概略側面図である。な
お、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0063】
上記筒状導電性編組150は、第1実施形態に係る筒状導電性編組50と同様に、第1導電線51と第2導電線52とが筒形状をなすように組合わされたものであり、電磁シールド付配線モジュール10における電磁シールド等として適用可能である。
【0064】
筒状導電性編組150が、上記筒状導電性編組50と異なる主な点は、別途線状導体156が設けられている点である。
【0065】
すなわち、この筒状導電性編組150では、ラインA上において、第1導電線51と第2導電線52との複数の交点で、連続的に第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接続され、接続部54が形成されている。
【0066】
また、ラインAに沿って線状導体156が配設されており、第1導電線51と第2導電線52との連続的な接続部54が線状導体156にも電気的及び機械的に接続されている。ここで、接続部54と線状導体156との電気的及び機械的な接続とは、それらの間に電流を流すことが可能な状態となるように、直接的な一体化状態又は他の部材を介した間接的な一体化状態が保たれることをいう。なお、複数のライン上に線状導体が配設され接続部と電気的及び機械的に接続されていてもよい。
【0067】
上記線状導体156としては、銅箔等の金属箔の帯状部材、又は、銅線等の金属線等を用いることができる。線状導体156は、ラインAに沿って筒状導電性編組150の内周又は外周に接するように配設されている。ここでは、線状導体156は、筒状導電性編組150の外周側に配設されている。そして、上記各接続部54が線状導体156の接触箇所で当該線状導体に電気的及び機械的に接続されている。
【0068】
上記接続作業は、例えば、
図9に示すようにして行うことができる。
【0069】
すなわち、長尺状の溶接ヘッド60を筒状導電性編組50B内に挿入し、筒状導電性編組50BのラインAの内周側に配設する。また、線状導体156をラインAに沿って筒状導電性編組50Bの外周側に配設する。線状導体156は、ラインA上における第1導電線51と第2導電線52との交点の外側に配設されることになる。
【0070】
この状態で、円板状の溶接ヘッド62Bを、線状導体156の外向き面上で転がしてく。すると、ラインA上における第1導電線51と第2導電線52との連続的な各交点において、溶接ヘッド60と溶接ヘッド62Bとの間で、第1導電線51と第2導電線52と線状導体156とが挟まれ、溶接ヘッド60と溶接ヘッド62Bとの間で、それらが抵抗溶接されることになる。
【0071】
これにより、ラインAに沿った第1導電線51と第2導電線52との各交点において、第1導電線51と第2導電線52と線状導体156とが電気的及び機械的に接合される。
【0072】
勿論、第1導電線51と第2導電線52と線状導体156との電気的及び機械的な接続は、超音波溶接、熱溶接等によって溶接されてもよいし、はんだ付け等によって接合されてもよい。
【0073】
この第2実施形態によると、第1実施形態による効果に加えて、第1導電線51と第2導電線52とを流れる電流は、ラインAに沿った線状導体156でも螺旋を描かずに流れる。このため、筒状導電性編組150のインダクタンスを低下させることができることになる。
【0074】
{第3実施形態}
第3実施形態に係る筒状導電性編組250について説明する。
図10は第3実施形態に係る筒状導電性編組250を示す概略部分側面図である。なお、なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
上記筒状導電性編組250は、第1実施形態に係る筒状導電性編組50と同様に、第1導電線51と第2導電線52とが筒形状をなすように組合わされたものであり、電磁シールド付配線モジュール10における電磁シールド等として適用可能である。
【0076】
筒状導電性編組250が、上記筒状導電性編組50と異なる主な点は、第1導電線51と第2導電線52との電気的及び機械的な接続構成である。
【0077】
すなわち、本実施形態では、第1導電線51と第2導電線52とは、ラインAに沿って配設された線状導体258を介して電気的及び機械的に接続されている。
【0078】
より具体的には、この筒状導電性編組250では、ラインAに沿って線状導体258が配設されている。ラインAは、第1導電線51と第2導電線52との交点を避けた位置を通過するように設定されており、従って、線状導体258は、第1導電線51と第2導電線52とに対して交差しているが、第1導電線51と第2導電線52との交点は通らない。
【0079】
上記線状導体258としては、銅箔等の金属箔の帯状部材、又は、銅線等の金属線等を用いることができる。線状導体258は、ラインAに沿って筒状導電性編組150の内周又は外周に接するように配設されている。ここでは、線状導体258は、筒状導電性編組150の外周側に配設されている。
【0080】
そして、上記第1導電線51と第2導電線52とが、線状導体258との交点で、当該線状導体258に対して溶接、はんだ付け等によって接合され、もって接合部59が形成されている。これにより、第1導電線51と第2導電線52とは、線状導体258を介して電気的に接続され、また、線状導体258を介して当該電気的な接続状態を保つように間接的な一体化状態が保たれる。
【0081】
上記接続作業は、例えば、
図9を参照して説明したのと同様にして行うことができる。
【0082】
この第3実施形態によると、第1導電線51と第2導電線52とを流れる電流は、ラインAに沿った線状導体258にも流れ、螺旋を描かずに流れる。このため、筒状導電性編組250のインダクタンスを低下させることができることになる。
【0083】
{変形例}
図11は、第1実施形態を前提として、筒状導電性編組50に対応する筒状導電性編組350を含む電磁シールド付配線モジュール310を所定の経路に沿って配設する場合において、接続部54の形成位置に関する第2変形例を示している。
【0084】
ここでは、筒状導電性編組350は、曲った経路Pbと直線的な経路Paとを含む経路に沿って配設される。この場合、螺旋軸Xに沿った方向において、筒状導電性編組350のうち直線的な経路Paに沿って配設される部分で、第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接続され、上記接続部54が形成されていることが好ましい。
【0085】
第1導電線51と第2導電線52とを電気的及び機械的に接続して接続部54を形成すると、その部分で筒状導電性編組350は曲り難くなるからである。これにより、経路Pbにおいて、筒状導電性編組350は直線状の状態を保ち易くなる。
【0086】
一方、筒状導電性編組350のうち接続部54が形成されていない部分は、比較的容易に曲り易い。このため、螺旋軸Xに沿った方向において、筒状導電性編組350のうち曲げて配設される部分を除いて、すなわち、上記経路Pbに沿って配設される部分を除いて、第1導電線51と第2導電線52とが電気的及び機械的に接続され、上記接続部54が形成されていることが好ましい。
【0087】
これにより、筒状導電性編組350を、経路Pbに沿って容易に曲げつつ配設することができる。
【0088】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。例えば、第2変形例で説明した接続部54の形成位置は、第2実施形態における接続部54及び第3実施形態における接合部59を含む接続箇所の位置に関しても適用することができる。
【0089】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。