特許第6376131号(P6376131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376131
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】リアクタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20180813BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20180813BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20180813BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20180813BHJP
   C07C 9/00 20060101ALI20180813BHJP
   C01B 3/38 20060101ALN20180813BHJP
   C01B 3/16 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   B01J19/24 A
   C07B61/00 C
   C07C1/04
   C07C9/00
   !C01B3/38
   !C01B3/16
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-536590(P2015-536590)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2014073868
(87)【国際公開番号】WO2015037597
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-190813(P2013-190813)
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】濱田 行貴
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 博之
(72)【発明者】
【氏名】吉野谷 拓哉
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−534457(JP,A)
【文献】 特表2011−508043(JP,A)
【文献】 特開2009−078227(JP,A)
【文献】 特開2007−244944(JP,A)
【文献】 特開2007−275823(JP,A)
【文献】 特開2013−027867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01J 19/24
B01J 35/02
B81B 1/00
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応体を有する反応流体に、前記反応体の反応を促進する触媒を作用させるリアクタであって、
前記反応流体が流通する複数の反応用流路を並列状に区画するパーティションと、
前記複数の反応用流路の各々に交換可能に装填され、前記触媒を各々有する複数の触媒構造体と
を有し、前記複数の触媒構造体の各々は、1つ以上の平行な溝及び隆起を形成するように屈曲して前記反応用流路を複数の部分流路に区画する薄板材で構成されて前記触媒が担持される本体部を有し、前記本体部は、少なくとも2つの部分によって構成され、前記パーティションは、前記複数の反応用流路を相互に連通させる連通部を有し、前記本体部を構成する前記少なくとも2つの部分は、前記パーティションの連通部に対応して間隙を有するように離間させて配置され、前記連通部は、反応流体が分岐して流通する範囲において、前記反応用流路の出口側分岐点より入口側分岐点の方が近い位置に配置されるリアクタ。
【請求項2】
前記パーティションの連通部は、前記複数の反応用流路が反応流体の流通方向と垂直な方向に相互に連通するように配置され、前記複数の反応用流路を流通する反応流体が途中で前記連通部において再分配される請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記パーティションは、前記反応流体の流通方向に沿って延伸する1又は複数の隔壁を有し、前記隔壁は、間隙を有するように離間させて配置される少なくとも2つの部分隔壁によって構成され、前記パーティションの連通部は、前記隔壁の間隙を有する請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項4】
前記パーティションは、前記反応流体の流通方向に沿って延伸する1又は複数の隔壁を有し、前記パーティションの連通部は、前記隔壁に設けられる切り欠きを有する請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項5】
前記パーティションは、前記反応流体の流通方向に沿って延伸する1又は複数の隔壁を有し、前記パーティションの連通部は、前記隔壁に設けられる貫通孔を有する請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項6】
前記本体部は、前記反応用流路を前記反応流体の流通方向に沿って区分して、複数の並列する部分流路に区画し、前記本体部の間隙は、前記パーティションの連通部に対応して、前記複数の部分流路を相互に連通させる請求項1〜5の何れか1項に記載のリアクタ。
【請求項7】
前記本体部を構成する前記薄板材は、前記複数の部分流路の各々を、前記反応流体の流通方向に垂直な断面が矩形になるように区画する請求項6に記載のリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応体を含んだ流体である反応流体を用いて化学反応を遂行すると共に、反応流体に触媒構造体を作用させて反応を促進させるリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクタは、反応体を含んだガス状又は液状の流体を加熱又は冷却して反応体の反応を進行させる化学反応装置として知られている。流体の流路断面の1辺が数mm程度であるリアクタや、1辺が1mm未満のマイクロリアクタ等の微少な空間を反応場とするリアクタ(コンパクトリアクタ)は、単位体積あたりの比表面積が大きいため、伝熱効率が高く、反応速度や収率を向上させることができる。また、対流や拡散態様を任意に構成することで迅速混合や能動的に濃度分布をつける制御が可能であることから、反応を精密に制御することが可能となる。
【0003】
このようなリアクタでは、1つの入口流路が複数の反応用流路(反応場)に分岐され、分岐された複数の反応流路が1つの出口流路に集合されるように構成されている。また、複数の反応用流路は並行して設けられており、各反応流路内には触媒が配されている。従って、入口流路に導入された流体(反応流体)に含まれる反応体は、複数の反応用流路において反応が進行して反応生成物となり、出口流路を通じて外部に排出されることとなる。
【0004】
反応用流路内に触媒を配する技術として、平板形状の金属板に触媒を担持させて、この触媒を担持した金属板を反応用流路の全長に亘って設置することで、反応用流路全域に亘って触媒が均一に配されるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−244944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような複数の反応用流路が並行して設置されるリアクタでは、入口流路から分配される流量分布(又は濃度分布)が反応用流路の各々において維持されて出口流路まで導かれることとなる。この場合、入口流路から分配される流量分布に偏りがあると、相対的に流量の大きい反応用流路における反応効率と、相対的に流量の小さい反応用流路における反応効率とに差が生じ、リアクタ全体の反応効率が低下してしまう。
【0007】
また、相対的に流量の大きい反応用流路において、触媒表面に炭素が析出(コーキングが発生)して、触媒活性が低下したり触媒が劣化するおそれがある。触媒の活性が低下した反応用流路では、反応効率が著しく低下して、この反応用流路の使用が困難となるため、リアクタ全体としての反応効率は低下してしまう。
【0008】
さらに、入口流路に導入された反応流体にダストが混入していると、ダストによって一部の反応用流路が閉塞されてしまう場合がある。この場合、閉塞された反応用流路には反応流体が流通されなくなるので、この反応用流路は使用不可能となり、リアクタ全体の反応効率が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このような課題を解決し、リアクタ全体としての反応流体の反応効率が低下することを抑制可能なリアクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、リアクタは、反応体を有する反応流体に、前記反応体の反応を促進する触媒を作用させるリアクタであって、前記反応流体が流通する複数の反応用流路を並列状に区画するパーティションと、前記複数の反応用流路の各々に交換可能に装填され、前記触媒を各々有する複数の触媒構造体とを有し、前記複数の触媒構造体の各々は、1つ以上の平行な溝及び隆起を形成するように屈曲して前記反応用流路を複数の部分流路に区画する薄板材で構成されて前記触媒が担持される本体部を有し、前記本体部は、少なくとも2つの部分によって構成され、前記パーティションは、前記複数の反応用流路を相互に連通させる連通部を有し、前記本体部を構成する前記少なくとも2つの部分は、前記パーティションの連通部に対応して間隙を有するように離間させて配置され、前記連通部は、反応流体が分岐して流通する範囲において、前記反応用流路の出口側分岐点より入口側分岐点の方が近い位置に配置される。
【0011】
上記パーティションの連通部は、前記複数の反応用流路が反応流体の流通方向と垂直な方向に相互に連通するように配置され、前記複数の反応用流路を流通する反応流体が途中で前記連通部において再分配されるとよい。
【0012】
上記パーティションは、前記反応流体の流通方向に沿って延伸する1又は複数の隔壁を有し、前記隔壁は、間隙を有するように離間させて配置される少なくとも2つの部分隔壁によって構成され、前記パーティションの連通部は、前記隔壁の間隙を有するように構成してもよい。
【0013】
或いは、前記パーティションの連通部は、前記隔壁に設けられる切り欠きを有するように構成してもよい。
【0014】
或いは、前記パーティションの連通部は、前記隔壁に設けられる貫通孔を有するように構成してもよい。
【0015】
上記本体部は、前記反応用流路を前記反応流体の流通方向に沿って区分して、複数の並列する部分流路に区画し、前記本体部の間隙は、前記パーティションの連通部に対応して、前記複数の部分流路を相互に連通させる連通部を有するように構成するとよい
【0018】
又、前記本体部を構成する前記薄板材は、前記複数の部分流路の各々を、前記反応流体の流通方向に垂直な断面が矩形になるように区画するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、触媒の局所的な活性低下や劣化に起因する反応流体の反応効率の低下を抑制し、触媒の使用率を可能な限り高く維持して触媒交換の頻度を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】リアクタの基本的な構成を説明するための図である。
図2】本発明に係るリアクタの一実施形態における反応用流路群および熱媒体流路群を説明するための図である。
図3図2の実施形態における連通部の機能を説明するための図である。
図4】本発明に係るリアクタの第1変形例における構成を説明する図である。
図5】本発明に係るリアクタの第2変形例における構成を説明する図である。
図6】本発明に係るリアクタの第3変形例における構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。尚、本願明細書及び図面において、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
(リアクタ100)
図1は、リアクタの基本的な構成を説明するための図であり、本発明のリアクタの一実施形態は、図1のリアクタ100の構成に基づいて、図2に示すような改良を加えた構成を有する。図1において、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸は、図示の通り、各々、反応流体の流通方向及びそれに垂直な水平方向、並びに、鉛直方向として規定している。
【0023】
図1に示すように、リアクタ100は、複数の長方形の伝熱壁110(図2及び4〜6では、110a,110bで示す)を水平に配置して、予め定められた間隔離隔して鉛直方向に積層した構造となっている。リアクタ100は、天面102、側壁板114、反応流体導入部120及び反応流体排出部122を有し、これらの部材は、積層された伝熱壁110間の空間を内部に包み込むように、上面及び側面を囲む筺体様の構造を形成する。更に、リアクタ100の側壁板114側の一側面には、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132が付設される。天面102、側壁板114、反応流体導入部120、反応流体排出部122、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132は、すべて金属材料(例えば、ステンレス綱(SUS310、Haynes(登録商標)230)等の耐熱金属)で構成されている。
【0024】
リアクタ100は、複数の反応用流路群210と複数の熱媒体流路群220とが交互に配置された積層構造を有する。具体的には、離間して積み重ねられた伝熱壁110の間に区画される複数の並行した層状空間が形成され、これらに反応用流路群210と熱媒体流路群220とが交互に設けられる。図1(a)に示すように、1つの熱媒体流路群220は、複数の熱媒体流路222で構成される。又、図1(b)に示すように、1つの反応用流路群210は、複数の反応用流路212で構成され、各々の反応用流路212には、後述する触媒構造体(図1においては図示を省略)が設けられている。尚、図1(b)は、区分された反応用流路212が途中で連通することなく独立しているように記載されるが、本発明においては、この点について改良を加え、その具体的な構成については、図2図6を参照して後述する。
反応流体導入部120及び反応流体排出部122は、各々、円柱周面状に湾曲した側壁を有する部分円筒形状を有し、これらと積層された伝熱壁110との間に、反応流体の導入及び排出用の空間が各々形成される。積層された伝熱壁110の反応流体導入部120側末端及び反応流体排出部122側末端において、熱媒体流路群220が配される層状空間は、閉鎖板116によって閉止されるが、反応用流路群210が配される層状空間は解放されるように孔210aが形成される。従って、反応用流路群210は、孔210aを介して、反応流体導入部120及び反応流体排出部122の内側の空間と連通する。
また、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132は、側部に鉛直方向の開口を有する中空構造を有し、リアクタ100への熱媒体の供給及び回収が、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132の中空部を介して行われる。このために、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132が設けられる側の側壁板114は、一層おきに両端において欠損するように短く設定されて、熱媒体流路群220の空間が解放される孔220aが両端に形成される。従って、熱媒体流路群220は、孔220aを介して熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132の中空部と連通する。
【0025】
上述のようなリアクタ100を製造するには、反応用流路群210及び熱媒体流路群220の一方を形成した伝熱壁110を交互に積層すると共に、各々を側壁板114及び閉鎖板116を介して接合し、天面102を積層した伝熱壁110の上部に接合する。そして、反応流体導入部120、反応流体排出部122、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132を、積層された伝熱壁110にそれぞれ接合することによってリアクタ100が組み立てられる。リアクタ100を製造する際に用いる接合方法に限定はないが、例えば、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接や拡散接合が利用できる。
【0026】
上述のリアクタ100の構成において、熱媒体導入部130から熱媒体が導入されると、図1(a)中に実線の矢印で示すように、熱媒体は、熱媒体流路群220を流通した後に、熱媒体排出部132から排出される。また、反応流体導入部120から反応流体(反応体を有する流体)が導入されると、図1(b)に破線の矢印で示すように、反応流体は、反応用流路群210を流通し、反応流体排出部122から排出される。尚、図1に示すように、本実施形態において、反応用流路群210を流通する反応流体と熱媒体流路群220を流通する熱媒体とは、対向流の関係となっている。
【0027】
このように、反応用流路群210と熱媒体流路群220とは、伝熱壁110によって区画されるので、熱媒体流路群220を流通する熱媒体は、伝熱壁110を介して、反応用流路群210を流通する反応流体と熱交換する。反応用流路群210において吸熱反応を行う場合は、熱媒体流路群220の熱媒体は、反応用流路群210を流通する反応流体に熱を供給(加熱)し、反応用流路群210において発熱反応を行う場合は、熱媒体流路群220の熱媒体は、反応用流路群210を流通する反応流体を除熱(冷却)するように、熱媒体の温度が調整される。
【0028】
吸熱反応としては、例えば、下記化学式(1)に示すメタンの水蒸気改質反応や、化学式(2)に示すメタンのドライリフォーミング反応などが挙げられる。
CH4 + H2O → 3H2 + CO ----化学式(1)
CH4 + CO2 → 2H2 + 2CO ----化学式(2)
【0029】
また、発熱反応としては、例えば、下記化学式(3)に示すシフト反応や、化学式(4)に示すメタネーション反応、化学式(5)に示すFT(Fischer tropsch)合成反応などが挙げられる。
CO + H2O → CO2 + H2 ----化学式(3)
CO + 3H2 → CH4 + H2O ----化学式(4)
(2n+1)H2 + nCO → Cn2n+2 + nH2O ----化学式(5)
【0030】
リアクタの反応用流路群210へ供給される反応流体として、上記化学式で例示するようなリアクタで遂行する化学反応に参加する物質(つまり、反応体)によって組成される流体、又は、反応体と反応に関与しない気体キャリアとで組成される流体が好適に使用される。気体キャリアは、遂行する化学反応を考慮して、不活性ガスや低反応性の気体状物質(リアクタ内の温度において)から適正な物質を選択できる。
本発明においては、熱媒体流路群220に供給される熱媒体として、リアクタの構成素材を腐食させない気体物質が好適に使用できる。熱媒体として気体物質を使用する構成は、液体媒体を使用する場合と比較して、取り扱いが容易である。
【0031】
このように、リアクタ100は、反応場となる反応用流路群210(反応用流路212)と、熱媒体が流通する熱媒体流路群220(熱媒体流路222)とが、伝熱壁110を介して並行するように設けられ、反応用流路群210を流通する反応流体と熱媒体流路群220を流通する熱媒体とが熱交換を行うように構成される。これにより、反応用流路群210において反応流体の反応(吸熱反応、発熱反応)を効率良く行うことができる。
【0032】
(反応用流路群210、熱媒体流路群220)
次に、本発明のリアクタにおける反応用流路群210及び熱媒体流路群220の具体的な構成について、図2を参照して説明する。図2(a)は、1つの熱媒体流路群220を示し、図2(b)は、1つの反応用流路群210を示し、図2(c)は触媒構造体300が装填された反応用流路群210を示す。図2においては、熱媒体流路群220と反応用流路群210との区別を理解し易くするために、図1の伝熱壁110を伝熱壁110a及び伝熱壁110bに区別して記載する。又、図2(b)においては、反応用流路群210への触媒構造体300の装填を説明するために、1つの触媒構造体300を記載する。図2におけるX軸、Y軸、Z軸の規定は、図1と同様であり、この規定は、以下に説明する図4図6においても同様である。
【0033】
図2(a)に示すように、熱媒体流路群220は、各々、底面が伝熱壁110aで区画され、熱媒体流路群220の上面は天面102もしくは伝熱壁110bで区画される。伝熱壁110aの四方の端部には、リアクタ100の側壁を構成する二つの側壁板114と、熱媒体流路群220の反応流体導入部120側及び反応流体排出部122側を遮断するための1対の閉鎖板116とが立設されている。従って、反応流体導入部120から導入される反応流体は、閉鎖板116によって、熱媒体流路群220への混入が防止される。リアクタ100内において、伝熱壁110a,110b間の層状空間を複数の並行する空間に区分して熱媒体流路222を区画するためのパーティションが伝熱壁110a上に設けられる。具体的には、この実施形態では、パーティションは、層状空間の各々に設けられる6つの平行な隔壁112で構成され、6つの隔壁112は、伝熱壁110a上に立設されて、側壁板114間に7つの熱媒体流路222を区画すると共に、上面の伝熱壁110bを支持して伝熱壁110a,110b間の間隔を保持している。
【0034】
また、2つの側壁板114のうち、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132が接合される側の側壁板114は、両端に欠損114aが生じるように伝熱壁110aより短く設定され、伝熱壁110a,110bが積層されたときに、欠損114aが孔220aを形成する。従って、熱媒体導入部130から導入される熱媒体は、孔220aを介して熱媒体流路群220内へ流入し、熱媒体流路群220内から孔220aを介して熱媒体排出部132へ流出する。熱媒体流路群220へ流入する熱媒体は、各熱媒体流路222を流通する。つまり、隔壁112の一端で分岐して、隔壁112及び側壁板114の間を熱媒体導入部130側から熱媒体排出部132側へ平行に流通して、隔壁112の他端を経て合流し、この後、熱媒体流路群220から流出する。隔壁112(パーティション)は、側壁板114より短く、熱媒体流路群220を構成する熱媒体流路222は、両端のみにおいて統合される個々に独立した平行な流路となる。
上述の熱媒体流路群220の構成は、図1(a)に記載される構成と同様である。
【0035】
他方、反応用流路群210は、図2(b)に示すように、底面が伝熱壁110bで区画され、反応用流路群210の上面は、伝熱壁110aで区画される。リアクタ100内において、伝熱壁110a,110b間の層状空間を複数の並行な空間に区分して反応用流路212を並列状に区画するためのパーティションが伝熱壁110b上に設けられる。反応用流路群210のパーティションは、伝熱壁110b上に立設される6つの平行な隔壁112で構成され、側壁板114間を区分して7つの反応用流路212を区画すると共に、伝熱壁110a,110b間の間隙を保持するように伝熱壁110aを支持する。パーティションを構成する隔壁112の数は、(反応用流路212の数−1)であり、複数の反応用流路212を区画する隔壁112の数は、1又は複数となる(この点は、熱媒体流路群220のパーティションでも同様である)。図2の実施形態において、反応用流路群210のパーティションを構成する各々の隔壁112は、途中に少なくとも1つの間隙を有するように、分割して離隔配置された少なくとも2つの部分隔壁によって構成される。これに関しては後に詳細に説明する。
【0036】
熱媒体流路群220が設けられる伝熱壁110aと異なり、反応用流路群210が設けられる伝熱壁110b上には閉鎖板116が設けられないので、伝熱壁110a,110bが積層された状態において、伝熱壁110a,110b間の間隙114bは、孔210aを形成する。つまり、側壁板114間の空間の両端は解放され、反応用流路群210は、反応流体導入部120の内側の空間及び反応流体排出部122の内側の空間と連通する。故に、反応流体導入部120から供給される反応流体は、孔210a(入口214)を介して反応用流路群210内へ導入されて反応が進行し、反応生成物が生成した反応流体は、反応用流路群210から孔210a(出口216)を介して反応流体排出部122の外へ排出される。反応用流路群210に流入する反応流体は、各反応用流路212を流通する。つまり、隔壁112の一端で分岐して、隔壁112及び側壁板114の間を反応流体導入部120側から反応流体排出部122側へ平行に流通して、隔壁112の他端を経て合流し、この後、反応用流路群210から流出する。隔壁112(パーティション)は、側壁板114より短く、反応用流路群210を構成する反応用流路212は、隔壁112によって個々に独立すると共に両端において統合される平行な流路となる。但し、これらの反応用流路212を途中で局所的に相互に連通させる連通部350がパーティションに設けられる。これについて、以下に説明する。
【0037】
図2(b)の実施形態においては、反応用流路212を区画する各々の隔壁112は、複数(ここでは、2つ)に分割された部分隔壁によって構成され、これらは、反応流体の流通方向(図2(b)、(c)中のX軸方向)に沿って連設されると共に、これらの間に間隙230が形成されるように離隔して配置される。従って、隣接する反応用流路212同士が、隔壁112の間隙230において連通する。6つの隔壁112における間隙230の位置は、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に一列に連なる。これらの間隙230によってパーティションの連通部350が構成され、連通部350において、反応用流路212は互いに連通する。このように反応用流路群210に連通部350を設けることによって、反応用流路212間の相互の流通が局所的に生じるが、連通部350以外の部分において、隔壁112による各反応用流路212の分離独立は維持される。連通部350の位置は、反応用流路212の入口214から出口216までの範囲における入口214側において反応用流路212が相互に連通するように設定される。より具体的には、反応流体が分岐して流通する範囲において、反応用流路212の出口側分岐点より入口側分岐点の方が近くなる位置に間隙230が設けられる。連通部350の機能については後述する。
【0038】
図2(b)、(c)に示すように、反応用流路212内には、各々、反応流体の反応を促進させるための触媒を有する触媒構造体300が配設されている。触媒構造体300において、触媒は、本体部310の表面に担持され、反応流体が触媒構造体300と接触することにより、本体部310表面の触媒によって反応体の化学反応が促進される。本体部310は、1つ以上の平行な溝及び隆起を形成するようにコルゲート形状に屈曲した金属製の薄板材で構成され、触媒構造体300を反応用流路212へ装填した状態において、本体部310は、反応用流路212を反応流体の流通方向に沿って区分して、並列する複数の部分流路を区画する。具体的には、本体部310は、伝熱壁110aに沿った頂部322(隆起した上面部)と、伝熱壁110bに沿った底部324(陥没した底面部)と、隔壁112に沿った側壁部326と、頂部322及び底部324を交互に接続する、隔壁112に平行な区画壁部328とを有し、それらの両端に側壁部326が位置する。これらの各部は、反応流体の流通方向に沿って延伸し、隔壁112と同じ長さに設けられる。反応用流路212へ触媒構造体300を装填した状態において、本体部310の区画壁部328は、反応用流路212を、反応流体の流通方向に垂直な断面が矩形(この実施形態では長方形)の複数の並列する部分流路に区分し、部分流路の幅(Y軸方向)は、頂部322及び底部324の幅に相当する。
このような本体部310は、隔壁112と同じ長さの薄板材に対して、垂直に屈曲する曲げ加工を行うことによって得られ、例えば、薄板材の一側から曲げ加工を繰り返して上記各部を順次形成することによって、図2(b)のように折り畳まれたコルゲート形状に成形される。この際、頂部322及び底部324の幅の合計が反応用流路212の幅に実質的に等しくなるように、頂部322及び底部324の数及び幅(Y軸方向)を設定し、側壁部326及び区画壁部328の幅が反応用流路212の高さ(Z軸方向)に実質的に等しくなるように構成することによって、装填された触媒構造体300が反応用流路212内に密接固定される。
【0039】
本体部310を構成する薄板材は、入手可能な耐熱金属製のものから本発明に適したものを適宜選択して利用することができ、上述のような成形加工が可能で、触媒の担持が可能なものが選択される。耐熱金属としては、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の金属の1種又は複数種を主成分とする耐熱合金があり、例えば、Fecralloy(登録商標)等の耐熱合金製の薄板材で本体部310を構成すると好ましい。
【0040】
触媒は、主成分として活性金属を有し、本体部310の表面に担持される。触媒を構成する活性金属は、リアクタ100で遂行する反応に基づいて、反応促進に適したものが適宜選択される。活性金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)等が挙げられ、このような金属から1種、又は、反応促進に有効である限り、複数種を組み合わせて使用してもよい。触媒を本体部310に良好に担持するために、必要に応じて、本体部310の表面に担体を層状に設ける処理を施すことができる。触媒の担持方法については、既存の技術を利用して行うことができ、使用する触媒に応じて適切な方法を周知の手法から適宜選択すればよい。担体は、リアクタ100で遂行する反応を考慮して、反応の遂行を阻害せず耐久性を有するものが適宜選択される。担体としては、例えば、Al23(アルミナ)、TiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)、CeO2(セリア)、SiO2(シリカ)等の金属酸化物が挙げられ、1種又は複数種を選択して使用することができる。
【0041】
図2(b)、(c)に示す実施形態において、各々の触媒構造体300の本体部310は、反応流体の流通方向(図2(b)、(c)中のX軸方向)に沿って連設される複数(ここでは、2つ)に分割された部分体によって構成されている。これらの部分体は、間に間隙330が形成されるように離隔して配置され、本体部310の区画壁部328、側壁部326によって区画される反応用流路212の部分流路が、部分体間の間隙330において互いに連通するように構成される。7つの触媒構造体300に設けられる7つの間隙330は、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に一列に連なり、これらの間隙330によって本体部310の連通部が構成される。
このように触媒構造体300の本体部310に連通部を設けることによって、各反応用流路212における部分流路間の相互流通及び反応用流路212と外部との流通が局所的に生じるが、連通部以外の部分においては、部分流路は各々独立する。本体部310の間隙330の位置及び流通方向(X軸方向)の長さは、隔壁112の間隙230と実質的に一致するように設けられる。つまり、本体部310の連通部は、パーティションの連通部350に対応して、部分流路及び間隙230(パーティションの連通部)を相互に連通させるように配置されるので、本体部310の連通部とパーティションの連通部350とが反応用流路群210を真っ直ぐに貫くように配される。
【0042】
このように、隔壁112における間隙230及び本体部310における間隙330の位置を、間隙230と間隙330とが連なるように設定することによって、触媒構造体300の本体部310の連通部は、パーティションの連通部350に統合され、パーティションの連通部350における反応用流路212間の連通は、触媒構造体300によって阻害されず、本体部310の連通部を通じて十分な相互連通が達成される。従って、複数の反応用流路212及び各反応用流路212の部分流路が、相互に良好に連通する。
【0043】
図3は、連通部350の機能を説明するための、反応用流路群210の上面図であり、図3(a)は、連通部350を有する反応用流路群210を示し、図3(b)は、比較のために、連通部350がない反応用流路群10を示す。尚、理解を容易にするために、図3においては触媒構造体300の記載を省略する。
【0044】
上述したように、隔壁112は、伝熱壁110b上に立設されて伝熱壁110aを支持し、伝熱壁110a,110b間を遮断するように形成される(図1図2参照)。このため、連通部350がない図3(b)の反応用流路群10においては、反応用流路12a〜12gの1つに導入された反応流体は、導入された反応用流路のみを流通し、他の反応用流路を流通する反応流体とは混合されない。例えば、反応用流路12aに導入された反応流体は、反応用流路12aのみを流通し、他の反応用流路12b、12c、12d、12e、12f、12gの反応流体との混合は生じない。
【0045】
このため、例えば、図3(b)における反応用流路群10に導入される反応流体が反応用流路12a〜12gの各々に分岐される際に、流路毎の流量分布(又は濃度分布)に偏りがある場合、反応体と触媒との接触効率等の差に起因して、相対的に流量(濃度)の大きい反応用流路12の反応効率と、相対的に流量(濃度)が小さい反応用流路12の反応効率とに差が生じ、リアクタ全体の反応効率は低下し易くなる。
【0046】
また、反応用流路群10に導入される反応流体の流路毎の流量分布(又は濃度分布)に偏りがある場合、例えば図3(b)に示すように、反応用流路12dに他の反応用流路12と比べて相対的に多くの量の反応体が導入されることにより、反応用流路12dの触媒構造体300の表面に炭素が析出(コーキングが発生)し易くなる可能性がある。触媒構造体300に炭素が析出すると、触媒は、活性低下や劣化を引き起こし易いので、反応用流路12dにおいて、反応の進行具合が著しく低下したり、実質的に使用不可能となり、結果としてリアクタ全体の反応効率が低下する可能性がある。
【0047】
或いは、図3(b)の構成において反応流体にダストが混入した場合、例えば、反応用流路12dがダストによって閉塞されると、反応用流路12dには反応流体が流通されず、使用不可能となるため、リアクタ全体の反応効率が低下する。
【0048】
これに対し、図3(a)に示すような本発明に係る反応用流路群210は、連通部350を有するので、反応用流路群210に導入される反応流体において、流路毎の流量分布(濃度分布)に偏りがあっても、連通部350を通じて、相対的に流量の大きい反応用流路212から相対的に流量の小さい反応用流路212へ反応流体が移行することによって流量が均等化したり、隣接する反応用流路間で反応流体が混合されることで反応体が拡散して濃度が均一化することが可能である。つまり、連通部350より下流側においては、複数の反応用流路212の流量(濃度)を均等(均一)にすることが可能である。従って、反応用流路群210内での反応体と触媒との接触効率等のバラツキや、それに伴うコーキングの発生し易さに起因する反応効率の低下が抑制され、ダスト等による閉塞に起因して生じる触媒構造体300の不使用領域を最小限に抑えられるので、リアクタ100全体の反応効率の低下を抑制することができる。
【0049】
更に、連通部350を通じて、反応用流路212間で反応流体が混合されることによって、反応用流路212を流通する反応流体の流れに乱流を生じることができる。
【0050】
これにより、反応用流路212を流通する反応流体のバルク(反応流体のうち、界面から離れて、触媒構造体300と触れていない部分)から触媒表面への物質移動係数を大きくすることができ、触媒表面での拡散抵抗を小さくすることが可能となる。従って、反応流体と触媒との接触効率を向上させることができ、反応効率を向上させることが可能となる。
【0051】
複数の反応用流路212において、流量が均等化される、すなわち、流量の偏りがなくなると、触媒構造体300への炭素の析出し易さを低く抑えることが可能である。これにより、触媒の活性低下及び触媒構造体300の劣化を抑制することが可能である。
【0052】
反応流体にダストが混入した場合、複数の反応用流路の何れか(詳細には、触媒構造体300の本体部310によって区画される複数の部分流路の何れか)がダストによって閉塞されると、図3(a)の構成においては、閉塞した反応用流路の下流側において反応場として利用不能になる領域は最小限に抑えられる。例えば、反応用流路212Dがダストによって閉塞されても、反応用流路212D以外の反応用流路212(例えば、反応用流路212C、212E)を流通する反応流体は、連通部350を通じて、反応用流路212Dの下流側を流通することが可能である。つまり、連通部350より上流側において、反応用流路212A〜212Gの何れが閉塞しても、連通部350の下流側においては反応用流路212A〜212Gを全て反応場として利用することが可能であり、図3(b)の構成のように閉塞された反応用流路12が全長に亘って使用不可能となってしまう事態を回避することができる。
【0053】
反応流体に混入したダストが反応用流路212に流入する場合、ダストによる閉塞は、反応用流路212の上流側(図3(a)中、左側)、特に入口側分岐点付近において生じ易いと考えられる。従って、上述のような本発明の利点を活用する上で、連通部350を、反応用流路212の入口214から出口216までの間における入口214側(上流側)に配することが有効である。
【0054】
連通部350において、反応流体が再分配されて下流側における流量の均等化を図ることができ、又、反応体の拡散を促進することができるので、連通部350を入口214側に配して反応用流路212の上流側で反応流体を再分配する構成においては、均等に反応を遂行可能な領域が多くなる(つまり、閉塞が生じた反応用流路212において、再分配によって反応を遂行可能な距離が長くなる)。閉塞によって使用不可能となる領域を可能な限り減少させるには、予め、閉塞が生じる頻度の高い範囲を調査し、この範囲の直ぐ下流側に連通部350を設けて、連通部350が閉塞箇所に近くなるようにすると良い。
【0055】
また、上述の実施形態では、反応用流路212に装填される触媒構造体300は、2つの部分体に分割された本体部310を用いて構成されているため、触媒構造体300の一部がダストで閉塞されたり、触媒構造体300の一部がコーキングによって劣化したりした場合に、閉塞された部分のみ、又は、劣化した部分のみを交換することで、触媒構造体300全体の交換を回避できる。従って、触媒構造体300を交換する量を最小限に抑えることができ、リアクタの性能調整やメンテナンスに要するコストを低減することが可能となる。
【0056】
上記の実施形態では、隔壁112を複数の部分隔壁に分割して、これらを離隔して配置することによって形成される間隙230によって連通部350が構成され、触媒構造体300の本体部310についても同様に間隙330を形成することによって、反応用流路212の部分流路間を連通させる連通部が構成されている。このような構成によって、連通部350において、全ての反応用流路212の部分流路が、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に真っ直ぐに連通される。つまり、連通部350は、反応用流路群210を貫通するように直線的に連通させる連通路として構成されて、反応用流路212間の完全な相互流通が達成される。しかし、このように作用するパーティションの連通部350及び本体部310の連通部は、上記の構成には限定されず、様々な変形が可能である。つまり、隔壁112及び触媒構造体300は、複数の部分に分割される必要はない。以下に、図4〜6を参照して、そのような変形例について説明する。
【0057】
(第1変形例)
図4は、本発明に係るリアクタの連通部に関する第1変形例を説明するための図である。図4(a)は、1つの反応用流路群210を示し、図4(b)は、触媒構造体400が装填された反応用流路群210を示す。図4(a)においては、反応用流路群210へ装填される触媒構造体400を説明するために、1つの触媒構造体400を記載する。
図4に示すように、第1変形例において、パーティションを構成する隔壁112は、各々、図2の実施形態と同様に、複数(ここでは、2つ)に分割された部分隔壁で構成され、隔壁112によって、図2と同様に、反応用流路群210を構成する反応用流路212が区画される。従って、図2と同様に、隔壁112の間隙230によって、パーティションの連通部450が構成される。しかし、触媒構造体400は分割されず、図2の間隙330に代えて、本体部410に形成される切り欠き430を有する。具体的には、本体部410は、図2の本体部310と同様に、コルゲート形状に屈曲した薄板材で構成されるが、本体部410の上側及び下側に、一定の深さ(Z軸方向)の切り欠き430が形成されて、頂部422(隆起した上面部)及び底部424(陥没した底面部)が局所的に欠損する。これらの切り欠き430によって、断面形状が長方形の連通路が、本体部310の上側及び下側に、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に真っ直ぐ貫くように構成されて、本体部310によって区画された反応用流路212の部分流路及び外部が局所的に相互に連通される。触媒構造体400を反応用流路212に装填した状態における切り欠き430の位置は、隔壁112の間隙230と一致し、切り欠き430の流通方向(X軸方向)の長さは、隔壁112の間隙230と実質的に同じである。従って、切り欠き430によって形成される連通路を通じて、反応用流路212の部分流路と隔壁112の間隙230とが相互に連通し、連通部450において、全ての反応用流路212の部分流路が、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に真っ直ぐに連通される。
【0058】
(第2変形例)
図5は、本発明に係るリアクタの連通部に関する第2変形例を説明するための図である。図5(a)は、1つの反応用流路群210を示し、図5(b)は、触媒構造体520が装填された反応用流路群210を示す。図5(a)においては、反応用流路群210へ装填される触媒構造体520を説明するために、1つの触媒構造体520を記載する。
図5に示すように、第2変形例においては、図4の切り欠き430と同様の切り欠き540が、触媒構造体520を構成する本体部530の上側のみに形成されると共に、反応用流路212を区画する各々の隔壁512は分割されずに、切り欠き514が各隔壁512に形成されている。つまり、パーティションの連通部550は、間隙230に代えて、隔壁512に形成される切り欠き514によって構成され、本体部530の連通部は、本体部530に設けられる切り欠き540によって構成される。具体的には、隔壁512の上側に、長方形の切り欠き514が形成され、触媒構造体520の本体部530は、図2と同様にコルゲート形状に屈曲した薄板材で構成されるが、頂部532(隆起した上面部)が部分的に欠損するように、本体部530の上側に一定の深さの切り欠き540が設けられる。本体部530の切り欠き540によって、断面形状が長方形の連通路が、本体部530の上側に、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に真っ直ぐ貫くように構成されて、本体部530によって区画される反応用流路212の部分流路及び外部が局所的に相互に連通される。触媒構造体520を反応用流路212へ装填した状態において、切り欠き540の位置は、隔壁512の切り欠き514と一致し、切り欠き540の流通方向(X軸方向)の長さ及び深さ(Z軸方向)も、隔壁512の切り欠き514と実質的に同じである。従って、本体部530の切り欠き540によって形成される連通路を通じて、反応用流路212の部分流路及び切り欠き514が相互に連通する。
このように、パーティションの連通部550及び本体部310の連通部を、切り欠き514,540で構成することもできる。
【0059】
(第3変形例)
図6は、本発明に係るリアクタの連通部に関する第3変形例を説明するための図である。図6(a)は、1つの反応用流路群210を示し、図6(b)は、触媒構造体620が装填された反応用流路群210を示す。図6(a)においては、反応用流路群210へ装填される触媒構造体620を説明するために、1つの触媒構造体620を記載する。
図6に示すように、第3変形例においては、反応用流路群210において、反応用流路212を区画する隔壁612には貫通孔614が設けられ、パーティションの連通部650は、隔壁612の貫通孔614によって構成される。又、触媒構造体620の本体部630にも、隔壁612の貫通孔614に対応した貫通孔640が設けられ、本体部630の連通部は貫通孔640によって構成される。具体的には、各々の隔壁612の上流側(入口214側)において、中心軸に沿った長方形の貫通孔640が形成され、触媒構造体620の本体部630は、図2と同様にコルゲート形状に屈曲した薄板材で構成されるが、反応用流路212を部分流路に区分する隔壁部に長方形の貫通孔640が形成される。本体部630の貫通孔640によって、断面が長方形の連通路が、反応流体の流通方向と垂直な方向(Y軸方向)に真っ直ぐ貫くように構成されて、反応用流路212の部分流路及び外部が局所的に相互に連通される。触媒構造体620を反応用流路212へ装填した状態において、貫通孔640の位置は、隔壁612の貫通孔614と一致し、貫通孔640の流通方向(X軸方向)の長さ及び高さ(Z軸方向)も、隔壁612の貫通孔614と実質的に同じである。従って、本体部630の貫通孔640によって形成される連通路を通じて、反応用流路212の部分流路及び貫通孔614が相互に連通する。
このように、パーティションの連通部650及び本体部630の連通部を、貫通孔614,640で構成することもできる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことはいうまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、上記実施形態及び変形例では、パーティションの連通部350,450,550,650が、1箇所に形成される構成について説明したが、連通部350、450、550、650を設ける箇所の数に限定はなく、2箇所以上であってもよい。換言すれば、1つの隔壁112,512,612に複数の間隙230、切り欠き514,540、貫通孔614があってもよい。
【0062】
また、図2の実施形態において、連通部350を構成する隔壁112の間隙230と、本体部310の間隙330とは、大きさ及び流通方向(X軸方向)の位置が実質的に等しくなるように形成しているが、反応用流路212の部分流路と間隙230とが互いに連通すれば、間隙230,330の大きさや位置が異なってもよい。換言すれば、隔壁112の間隙230と本体部310の間隙330とが、少なくとも部分的に重なるように形成されればよい。この点は、図4図6の変形例においても同様であり、隔壁112,512,612の間隙230、切り欠き514又は貫通孔640と、本体部410,530,630の切り欠き430,540又は貫通孔640とが、大きさ又は流通方向の位置が異なるように形成することも可能である。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例において、パーティションの連通部350,450,550,650、及び、触媒構造体300,400,520又は620の本体部310,410,530又は630における連通部は、間隙、切り欠き及び貫通孔の何れかの形態によって構成されているが、連通部を構成する形態の組み合わせは、図2図4図6に記載される組み合わせに限定されず、適宜組み合わせを変更することができる。例えば、図4において、触媒構造体400の本体部410に、切り欠き430の代わりに図6の貫通孔640を形成したり、図5又は図6の触媒構造体520,620を図2の触媒構造体300に変更して、少なくとも一方の連通部を間隙で構成するようにしてもよい。あるいは、隔壁及び触媒構造体の本体部の何れか一方に切り欠きを形成して、他方に貫通孔を形成することによって連通部を構成しても良い。
【0064】
また、上記実施形態及び変形例においては、反応用流路群210のパーティションに連通部350、450、550、650を設けるように構成しているが、このような連通部を熱媒体流路群220のパーティションにも設けるように変更してもよい。この変更は、例えば、反応用流路212における閉塞やコーキングの発生等に起因して熱媒体流路222間での温度差が生じるような場合に、温度差の緩和に有効に作用する。
【0065】
また、上記実施形態は、反応用流路212を流通する反応流体と熱媒体流路222を流通する熱媒体とが対向流の関係にある例として説明したが、反応流体と熱媒体とが平行流の関係にあってもよい。
【0066】
また、上記実施形態は、熱媒体流路群220を流通する熱媒体が気体であるリアクタとして説明したが、本発明は、熱媒体が液体であるリアクタにも適用可能である。
【0067】
また、上記実施形態は、熱媒体流路群220を備えるリアクタ100として説明したが、本発明は、反応用流路群210に設けられる連通部の構成に関するので、熱媒体流路群220が構成されないリアクタに本発明を適用可能である。従って、本発明に係るリアクタは、熱媒体流路群220の構成がなくてもよい。つまり、熱媒体流路群220の構成の代わりに、反応流体を加熱するためのヒータや冷却するためのクーラを伝熱板上に設けて、これらを用いて反応用流路212外から反応流体を加熱又は冷却するように変更してもよい。
【0068】
また、上記実施形態は、反応用流路群210と熱媒体流路群220とが交互に積層された積層構造のリアクタとして説明したが、反応用流路群210を構成する一層のみを有する単層構造のリアクタであってもよく、積層構造である必要はない。
【産業状の利用可能性】
【0069】
本発明は、反応体を有する反応流体に触媒を作用させて反応を促進するリアクタに適用して、触媒の交換頻度やメンテナンスの費用が削減可能なリアクタを提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6