特許第6376168号(P6376168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376168コネクタ端子用線材およびこれを用いたコネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376168
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】コネクタ端子用線材およびこれを用いたコネクタ
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/06 20060101AFI20180813BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20180813BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20180813BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20180813BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20180813BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20180813BHJP
【FI】
   C25D7/06 R
   C25D7/00 H
   C25D5/02 B
   H01B5/02 Z
   H01R13/03 D
   H01R12/71
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-80098(P2016-80098)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-190488(P2017-190488A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幹朗
(72)【発明者】
【氏名】泉田 寛
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/168764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/001737(WO,A1)
【文献】 特開2010−116603(JP,A)
【文献】 特開2015−137372(JP,A)
【文献】 特開2000−243495(JP,A)
【文献】 特開2015−094000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料である基材と、
前記基材の上に露出して形成され、Snを含む第1金属層と、
前記基材の上に露出して形成され、SnとPdとを含み、前記第1金属層と異なる組成を有する第2金属層と、
を含むコネクタ端子用線材であって、
前記コネクタ端子用線材の断面形状が四角形であり、
前記四角形の少なくとも1辺に前記第1金属層を有し、且つ少なくとも1つの別の辺に前記第2金属層を有するコネクタ端子用線材
【請求項2】
断面内において、前記四角形の対向する2辺のそれぞれが前記第2金属層を有する請求項に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項3】
前記第2金属層のPd含有量が1.0質量%以上、5.0質量%以下である請求項1または2に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項4】
前記基材と前記第2金属層との間にNi層を有する請求項1〜の何れか1項に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項5】
前記第1金属層の厚さが0.5μm以上、2.0μm以下である請求項1〜の何れか1項に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項6】
前記第2金属層の厚さが0.5μm以上、2.2μm以下である請求項1〜の何れか1項に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項7】
長手方向に略垂直な方向の長さが短い幅狭部を端部に有し、該幅狭部が前記第1金属層と前記第2金属層とを備える請求項1〜の何れか1項に記載のコネクタ端子用線材。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材を含むコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ端子用線材およびこれを用いたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板に用いられるコネクタ(PCB(Printed Circuit Board)コネクタ)をはじめとする各種のコネクタは、その端子を別のコネクタに配置された端子で嵌合するように別のコネクタに挿入することで、当該コネクタと別のコネクタ間の電気的接続を得るように構成されている。コネクタの端子(所謂、オス端子)とこの端子を嵌合する別のコネクタの端子(所謂、メス端子)との間の接触抵抗を低減する目的のために端子の表面にSn(錫)めっき層を設けることが知られている。
【0003】
コネクタに配置する端子数の増加に伴い、端子を挿入するのにより多くの力が必要となり、挿入がより困難となる。このため、Snめっきに代えて、特許文献1は端子表面にSn−Pdめっき層を形成することで、端子の低挿入力化を行うことができることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−94000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PCBコネクタを含む多くのコネクタでは、端子の一端は上述のように他のコネクタの端子により嵌合されている。一方、端子の他端は基板のスルーホールを貫通しており、はんだを介してスルーホールに配置された導電層と電気的に接続されている。Sn−Pd合金は、はんだ濡れ性が高くないことから、特許文献1に記載のSn−Pdめっき層を有する端子では、端子とスルーホールの導電層との間の電気的な接続が十分に得られない場合があった。
【0006】
そこで、本発明の1つの実施形態では、接触抵抗が低く、低挿入力化が可能で且つはんだ濡れ性に優れたコネクタ端子用線材および同線材を含むコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの実施形態に係るコネクタ端子用線材は、金属材料である基材と、該基材の上に露出して形成されたSnを含む第1金属層と、前記基材の上に露出して配置され、SnとPdとを含み、前記第1金属層と異なる組成を有する第2金属層と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、接触抵抗が低く、低挿入力化が可能でかつはんだ濡れ性に優れたコネクタ端子用線材および同コネクタ端子用線材を用いたコネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本発明の実施形態に係るコネクタ端子用線材の模式斜視図である。
図1B図1Bは、図1AのIb−Ib断面を示す模式断面図である。
図2A図2Aは、変形例に係るコネクタ端子用線材を示す模式斜視図である。
図2B図2Bは、変形例に係るコネクタ端子用線材を示す模式側面図である。
図3図3は、コネクタ端子用線材を用いたコネクタの斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るコネクタを基板に実装した状態を示す模式断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るコネクタを、メス端子を有する別のコネクタに接続した状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであり、本発明の技術的範囲を限定することを意図したものではないことに留意されたい。1つの実施形態において説明する構成は、特段の断りがない限り、他の実施形態にも適用可能である。以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがあることに留意されたい。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0011】
本発明は、以下の好適な実施態様を包含する。
態様1:
金属材料である基材と、
前記基材の上に露出して形成され、Snを含む第1金属層と、
前記基材の上に露出して形成され、SnとPdとを含み、前記第1金属層と異なる組成を有する第2金属層と、
を含むコネクタ端子用線材。
コネクタ端子用線材がこのような構成を有することで、接触抵抗が低く、低挿入力化が可能で、且つはんだ濡れ性に優れている。
【0012】
態様2:
断面形状が四角形である態様1に記載のコネクタ用線材。
これにより、メス端子の接点部と面で導電経路を確保することができる。
【0013】
態様3:
断面内において、前記四角形の少なくとも1辺に前記第1金属層を有し、且つ少なくとも1つの別の辺に前記第2金属層を有する態様2に記載のコネクタ端子用線材。
これにより、低挿入力化および低い接触抵抗の効果をより確実に得ることが可能となる。
【0014】
態様4:
断面内において、前記四角形の対向する2辺のそれぞれが前記第2金属層を有する態様2または3に記載のコネクタ端子用線材。
これにより、より確実に低挿入力化および低い接触抵抗を実現できる。
【0015】
態様5:
前記第2金属層のPd含有量が1.0質量%以上、5.0質量%以下である態様1〜4の何れかに記載のコネクタ端子用線材。
これにより、Sn母相中にSn−Pd合金相が存在する金属組織を有することができ、高い導電性を確保しながら、低い接触抵抗と低挿入力化を確実に実現できる。
【0016】
態様6:
前記基材と前記第2金属層との間にNi層を有する態様1〜5の何れかに記載のコネクタ端子用線材。
これにより、基材からの金属拡散を抑制し、所望の金属組織を確実に得ることができる。
【0017】
態様7:
前記第1金属層の厚さが0.5μm以上、2.0μm以下である態様1〜6の何れかに記載のコネクタ端子用線材。
これにより、不必要なコスト上昇をもたらすことなく、十分な導電性を確保できる。
【0018】
態様8:
前記第2金属層の厚さが0.5μm以上、2.2μm以下である態様1〜7の何れかに記載のコネクタ端子用線材。
これにより、不必要なコスト上昇をもたらすことなく、十分な低挿入力化を実現できる。
【0019】
態様9:
長手方向に略垂直な方向の長さが短い幅狭部を端部に有し、該幅狭部が前記第1金属層と前記第2金属層とを備える態様1〜8の何れかに記載のコネクタ端子用線材。
これにより、コネクタ端子として用いた際に、別のコネクタ端子(メス端子)またはスルーホールに容易に挿入できる。
【0020】
態様10:
態様1〜9の何れかに記載のコネクタ端子用線材を含むコネクタ。
これにより、接触抵抗が低く、低挿入力化が可能で、且つはんだ濡れ性に優れたコネクタを提供できる。
【0021】
1.コネクタ端子用線材
図1Aは、本発明の実施形態に係るコネクタ端子用線材100の模式斜視図であり、図1Bは、図1AのIb−Ib断面を示す模式断面図である。
コネクタ端子用線材100は、金属材料である基材3と、基材3の上に露出して形成された第1金属層1と、基材3の上に露出して形成された第2金属層2と含む。
なお、本明細書において「コネクタ端子用線材」とは、コネクタ内に配置する1つの端子の長さに切断する前の状態と切断後(切断および必要に応じて切断後さらに別の加工を行い、コネクタ内に配置された状態を含む)の状態の両方を含む。
また、「基材3の上に露出して形成された」の「基材3の上に」は、基材3と接触している場合だけでなく、別の層を介する等により基材3と接触していない場合を含み、「露出して」は、コネクタ用線材100の表面(または最も外側)に形成されていることを意味する。
【0022】
第1金属層1は、Sn(錫)を含む。後述するように第2金属層2はPdを含むのに対して、第1金属層1は、実質的にPdを含まない。「実質的に含まない」とは、不純物レベルを超える量を意図的に添加していないことを意味し、すなわち「不純物レベル以上のPdを含まない」と言い換えてもよい。従って、第2金属層2は、第1金属層1と異なる組成を有する。
Snを含み、Pdを実質的に含まない第1金属層1は、はんだ濡れ性に優れるという特徴を有する。
【0023】
第1金属層1は、好ましくは、0.5μm以上、2.0μm以下の厚さを有する。厚さを0.5μm以上とすることで十分な導電性を確保でき、また厚さが2.0μmを超えるとその効果が飽和し、不必要なコスト上昇をもたらす場合があるからである。
【0024】
好ましい形態では第1金属層1は、Sn、またはSnを主成分(質量比で50%以上)とするSn合金より成る。より優れたはんだ濡れ性を得ることができるからである。
【0025】
第2金属層2は、SnとPd(パラジウム)を含む。Snに加えてPdを含む、第2金属層2は、他のコネクタの端子により嵌合する際に低い挿入力での挿入を可能にする。また、低い接触抵抗が得られる。
第2金属層2は、好ましくは、0.5μm以上、2.2μm以下の厚さを有する。厚さを0.5μm以上とすることで十分な低挿入力化を実現でき、また厚さが2.2μmを超えるとその効果が飽和し、不必要なコスト上昇をもたらす場合があるからである。
【0026】
第2金属層2は、好ましくはSn−Pd合金より成る。第2金属層2をSn−Pd合金とすることで、低挿入力化をより確実に行うことができるからである。なお、Sn−Pd合金とは、Sn、Pdおよび不可避不純物からなる合金以外に、特性改善のために例えば10質量%以下の他の合金元素を添加した合金も含む概念である。
【0027】
第2金属層2として、Sn−Pd合金を用いる場合、Sn−Pd合金はPdを1.0質量%以上、5.0質量%以下含有することが好ましい。Pdの含有量が1.0質量%以上、5.0質量%以下の範囲内であれば、Sn−Pd合金は、Sn母相中にSn−Pd合金相が存在する金属組織を有することができ、これにより、高い導電性を確保しながら、低い接触抵抗と低挿入力化をより確実に実現できる。
より好ましくは、Sn−Pd合金はPdを3.5質量%以上、4.5質量%以下含有する。これにより、高い導電性を確保しながら、低い接触抵抗と低挿入力化をよりいっそう確実に実現できるからである。
【0028】
コネクタ端子用線材100は、第1金属層1と第2金属層2を有する。コネクタ端子用線材100をコネクタの端子として使用する場合、その一端側において、別のコネクタ(コネクタ端子用線材100を用いた端子が挿入されるコネクタ)の端子が、第2金属層2が形成された部分を嵌合することで、挿入力を低くするとともに、接触抵抗を低くできる。
一方、コネクタ端子用線材100を用いた端子の他端側を基板41のスルーホールに設けた導電層等にはんだ付けする際には、第1金属層1上にはんだを供給することで、優れたはんだ濡れ性を得ることができる。この結果、端子とスルーホールの導電層等との間の電気的な接続を十分なものとできる。
【0029】
以下に、第1金属層1と第2金属層2の配置について詳細を説明する。
上述のように、第1金属層1と第2金属層2は、それぞれ、基材3の上に露出して形成されている。
図1Bに示す実施形態では、基材3は4つの側面30A、30B、30Cおよび30Dを有し、その断面は四角形となっている。そして、基材3の表面に第1金属層1および第2金属層2を形成したコネクタ端子用線材100の断面も四角形となっている。
側面30A(断面上では辺30A)と側面30Aに対向している側面30C(断面上では辺30C)のそれぞれに全体を覆うように第1金属層1が形成されている。すなわち、断面において、基材3の4つの辺のうち、対向する2辺30A、30Cのそれぞれの全体に亘り、第1金属層1が形成されている。これにより第1金属層1が広い表面積を有することとなり、はんだ付による電気的接続がより容易となる。なお、本明細書において「辺の全体に亘り形成されている」とは、製造時のマスキング条件等により、辺の一部分に不可避的に所望の層が形成されていない、または不可避的に他の層が形成されている場合も含む概念である。
【0030】
しかし、第1金属層1の配置はこのような2辺への配置に限定されるものではなく、第1金属層1は、断面において基材3の4辺のうちの少なくとも1つの辺に形成されていればよく、例えば、少なくとも、1つの辺の一部に形成されていればよい。これによりコネクタ端子用線材100は高いはんだ濡れ性を確保できる。
【0031】
図1Bに示す実施形態では、側面30B(断面上では辺30B)と側面30Bに対向している側面30D(断面上では辺30D)のそれぞれに全体を覆うように第2金属層2が形成されている。すなわち、断面において、基材3の4つの辺のうち、対向する2辺30B、30Dのそれぞれの全体に亘り、第2金属層2が形成されている。このように、対向する辺のそれぞれに、第2金属層2を配置することで、コネクタ端子用線材100を用いた端子を別のコネクタの端子(メス端子)で嵌合する際に、この2辺30B、30Dを挟むように嵌合でき、より確実に低挿入力化および低い接触抵抗を実現できる。なお、2辺30B、30Dに第2金属層2を配置する場合、2辺30B、30Dのそれぞれの少なくとも一部に第2金属層2を配置してよい。
【0032】
第2金属層2の配置は、このような対向する2辺への配置は、好ましいが、これに限定されるものではない。第2金属層2は、断面において基材3の4辺のうちの少なくとも1つの辺に配置されていればよい。例えば、少なくとも、1つの辺の一部に配置されていればよい。これにより、低挿入力化および低い接触抵抗の効果を得ることが可能となる。なお、第2金属層2を設ける辺は、第1金属層1を設けた辺とは別の辺であることが好ましい。これにより、低挿入力化および低い接触抵抗の効果をより確実に得ることが可能となる。
【0033】
また、図1Bに示す実施形態では、基材3の側面の全てが、第1金属層1および第2金属層2のいずれか一方により覆われているが、これに限定されるものでなく、基材の1の側面が、第1金属層1および第2金属層2のどちらにも覆われていない部分を有してよい。
【0034】
コネクタ端子用線材100の断面形状が四角形であるとは、図1(b)に示す、正方形だけでなく、長方形等の他の四角形である場合を含む。コネクタ端子用線材100の断面形状を四角形とすることで、別のコネクタのメス端子の接点部と面で導電経路を確保することができる。
【0035】
コネクタ端子用線材100の断面形状はこれに限定されるものではなく、四角形以外の多角形であってよい。
【0036】
図1Bに示す実施形態では、第1金属層1は、基材3の表面上に直接形成されている。これに代えて、基材3と第1金属層1との間に中間層を形成してよい。このような中間層の好適な例として、Ni(ニッケル)層を挙げることができる。基材3の上にNi層を形成し、当該Ni層の上に第1金属層1を形成することで、基材からの金属拡散を抑制し、例えば、所望の金属組織を有する等、所望の特性を有する第1金属層1を確実に得ることができる。
【0037】
同様に、図1Bに示す実施形態では、第2金属層2は、基材3の表面上に直接形成されている。これに代えて、基材3と第2金属層2との間に中間層を形成してよい。このような中間層の好適な例として、Ni層を挙げることができる。基材3の上にNi層を形成し、当該Ni層の上に第2金属層2を形成することで、基材からの金属拡散を抑制し、例えば、所望の金属組織を有する等、所望の特性を有する第2金属層2を確実に得ることができる。
また、第2金属層2は、第1金属層1と略同じ組成を有する層(例えば、露出した第1金属層と繋がる層)の上に形成されてもよい。
【0038】
なお、本明細書において、Ni層とは、質量比でNiを50%以上含有する層のことをいう。好ましいNi層は、金属NiまたはNi合金からなる。好適なNi合金として、Ni−P合金を例示できる。Ni層は例えば、電解Niめっき等のめっきにより形成することが好ましい。低いコストで密着性に優れたNi層を形成できるからである。また、例えば蒸着法等のめっき以外の方法でNi層を形成してよい。
【0039】
基材3は、金属材料により形成されている。基材3に用いる金属材料は、電気伝導性の高い銅または銅合金であることが好ましい。端子として用いる際に必要な強度を確実に確保するためには銅合金を用いることがより好ましい。好ましい銅合金として、真鍮およびリン青銅を挙げることができる。
【0040】
2.コネクタ端子用線材の変形例
図2Aは、本実施形態の変形例に係るコネクタ端子用線材100Aを示す模式斜視図であり、図2Bはコネクタ端子用線材100Aを示す模式側面図である。
コネクタ端子用線材100Aは、端部に幅狭部10を有する。コネクタ端子用線材100Aは、幅狭部10を有すること以外の構成については、コネクタ端子用線材100と同じであってよい。
【0041】
コネクタ用線材100Aの端部に設けられた幅狭部10は、他の部分と比べて長手方向(図2のY方向)に略垂直な方向の長さ(幅)が短くなっている。なお、「略垂直」とは、測定の都合等により長さを評価する際に例えば10°程度のように多少垂直方向から外れていてもよいことを意味する。好ましくは、垂直な方向の長さにより評価する。図2に示す実施形態では、幅狭部10は、長手方向に略垂直な方向のうち、互いに垂直なX方向およびZ方向のどちらの方向においても他の部分(例えば、長手方向において、幅狭部から離れた部分)と比べて長さが短くなっている。
図2Aおよび図2Bに示す実施形態では、幅狭部10は、図2Bに示すように長手方向に長さLを有し、この長さLの間において、端部方向に向かって、長手方向に略垂直な方向の長さが減少している。
これに限定されるものでなく、例えば、図2のX方向の長さは他の部分と比べて短いが、Z方向の長さは他の部分と同じである等、長手方向に略垂直な方向で且つ互いに垂直な2方向のうちの1方向にだけ長さが短くなっていてもよい。
【0042】
幅狭部10においても、基材3の上に、第1金属層1と第2金属層2が配置されている。このような、第1金属層1と第2金属層2とを有する幅狭部10を有するコネクタ端子用線材100Aは、例えば、コネクタ端子用線材100を得た後、第1金属層1および第2金属層2を残したまま、端部を機械加工できる方法により得ることができる。このような機械加工の方法としてプレス加工を例示できる。
幅狭部10を有するコネクタ端子用線材100Aをコネクタの端子に用いることで、別のコネクタ端子に容易に挿入できる、またはスルーホールに容易に挿入できるという利点を有する。
上述のように、図2Aおよび図2Bに示す実施形態では、長手方向に略垂直な方向の長さは、長手方向に沿って、連続的に減少している。すなわち、幅狭部10の第1金属層1および第2金属層2の表面は、平面またはなだらかな曲面となっている。
これに代えて、幅狭部10の長手方向に略垂直な方向の長さは、長手方向に沿って不連続に減少してよい。幅狭部10の第1金属層1の表面および第2金属層2の表面の少なくとも一方は、階段状であってよい。
【0043】
3.コネクタ端子用線材の製造方法
次にコネクタ端子用線材100、100Aの製造方法を例示する。
四角形等の所定の断面形状を有する基材3を用意する。基材3は、例えば所定の組成を有する母材に伸線加工を行って得てよい。
【0044】
次に、基材3の表面のうち、第1金属層1を形成しようとする部分にSn層を形成する。Sn層の形成は、例えば、電解めっき等のSnめっきにより行ってよい。すなわち、第1金属層1はめっき層であってよい。また、後述するPd層をめっきにより形成する等、第2金属層2もめっき層であってよい。Snめっきにより、緻密なSn層を低コストで形成することができる。
しかし、Sn層の形成はめっきに限定されるものではなく、蒸着法等のSnを含有する層の形成に用いられている任意の方法を用いてよい。
【0045】
Sn層の形成は、所謂、リールツーリールのような連続処理で行ってもよく、また、基材3を所定の長さに切断後バッチ処理により行ってもよい。
【0046】
次に、第2金属層2を形成しようとする部分にPd層を形成し、形成したPd層の上にSn層を形成する。例えば、第1金属層1を形成しようとする部分に形成したSn層の上にPd層が形成されることがないように、樹脂テープ等を用いてマスキングをした後、必要に応じてめっき前処理を行ってから、電解めっき等のPdめっきを行ってよい。Pdめっきにより、緻密なPd層を低コストで形成することができる。そして、Pd層の上に、第1金属層1のSn層と同じ方法を用いてSn層を形成してよい。
Pd層の形成はめっきに限定されるものではなく、蒸着法等のPdを含有する層の形成に用いられている任意の方法を用いてよい。
なお、第1金属層1および第2金属層2のSn層と第2金属層2のPd層の形成については、上述の方法に代えて、まず第1金属層1を形成しようとする部分にPd層が形成されないように樹脂テープ等を用いてマスキングをし、第2金属層2を形成しようとする部分にPd層を形成し、次いで第1金属層1を形成しようとする部分および第2金属層2を形成しようとする部分にSn層を形成してよい。
また、第2金属層2を形成する際に、Pd層の上にSn層を形成することに代えて、Sn層の上にPd層を形成してもよい。
【0047】
Pd層の形成は、所謂、リールツーリールのような連続処理で行ってもよく、また、基材3を所定の長さに切断後バッチ処理により行ってもよい。
【0048】
次に熱処理を行って、PdをSn中に拡散させる。これによりSn−Pd合金より成る第2金属層2を得ることができる。
熱処理の温度として、250℃以上、400℃以下の間の温度に加熱することを例示できる。これにより、コネクタ端子用線材100を得ることができる。
【0049】
コネクタ端子用線材100を得た後、必要に応じて、コネクタ端子用線材100を切断して、端部等の所望の部分にプレス加工行うことで、幅狭部10を備えたコネクタ端子用線材100Aを得ることができる。
【0050】
4.コネクタ
以下に、コネクタ端子用線材100またはコネクタ端子用線材100Aを用いたコネクタの例を説明する。
図3は、コネクタ端子用線材100を用いたコネクタ200の斜視図である。図4は、コネクタ200を基板41に実装した状態を示す模式断面図である。図5は、基板41に実装したコネクタ200を、メス端子32を有するコネクタ300に嵌合した状態を示す模式断面図である。
【0051】
コネクタ200は、ハウジング21と、コネクタ端子用線材100またはコネクタ端子用線材100Aを所定の長さに加工する等により得た端子101とを含む。ハウジング21は例えば合成樹脂により作られ、図4に示すように内部に単一または複数の端子挿通孔を有しており、端子挿通孔の一端側は開口となっている。
【0052】
端子101は、略90度に曲げられた屈曲部を有し、この屈曲部を境界として、水平方向に延在する水平部と垂直方向に延在する垂直部に分けることができる。端子101の屈曲部はハウジングの外側に位置し、端子101の水平部は、屈曲部からハウジング21の側壁を貫通して、ハウジング21の空洞部に端部が位置するように延在している。
【0053】
図4に示すように、コネクタ200は、基板41に実装することができる。基板41の上には、その配線層と電気的に接続された素子42が配置されている。また、基板41は、スルーホール44を有しており、スルーホール44はその内壁表面に配線層と電気的に接続されている導電層を有している。
【0054】
基板41の表面には、コネクタ200のハウジング21が載置されている。コネクタ200の端子101の垂直部はスルーホール44の内部を貫通し、この結果、端子101の垂直部の端部は、基板41の下面よりも下方に位置している。そして、端子101は、スルーホール44の内部ではんだ43を介して、スルーホール44の導電層と電気的に接続されている。端子101に用いられているコネクタ用線材100またはコネクタ用線材100Aの第1金属層は、優れたはんだ濡れ性を有することから、端子101とスルーホール44の導電層との間において十分な電気的接続を得ることができる。
【0055】
図5に示すように、端子101の水平部は、ハウジング21の空洞部に進入してきたコネクタ300のメス端子32と嵌合する。相手側コネクタ300は、ハウジング31と、導電材料より形成されたメス端子32とを含む。ハウジング31は例えば樹脂により作られ、メス端子32を支持している。そして、相手側コネクタ300のハウジング31をコネクタ200のハウジング21の空洞部に挿入すると、メス端子32が、端子101の水平部の端部と嵌合する。これにより、コネクタ200とコネクタ300とが電気的に接続される。
メス端子32が、端子101の第2金属層を嵌合することで、低い挿入力でメス端子32が端子101を嵌合することができ、且つメス端子32と端子101との間の接触抵抗を低くできる。
【符号の説明】
【0056】
1 第1金属層
2 第2金属層
3 基材
21、31 ハウジング
32 メス端子
41 基板
42 素子
43 はんだ
44 スルーホール
30A、30B、30C、30D 基材の側面(基材断面の辺)
100、100A コネクタ端子用線材
101 端子
200 コネクタ
300 別のコネクタ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5