(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
[実施形態]
<立体画像形成システムの構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る立体画像形成システム1の構成につき説明する。
図1は、立体画像形成システム1の構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態で用いる上ガイド56の構成を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る立体画像形成システム1は、タッチパネルディスプレイ2、コンピュータ3、光照射ユニット4を備えている。
【0020】
コンピュータ3は、不図示のCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)や記憶手段を備え、光照射ユニット4を制御する。
タッチパネルディスプレイ2は、液晶表示パネルにタッチパネルが張り合わされて構成され、コンピュータ3の操作に用いられる。
【0021】
光照射ユニット4は、熱膨張性シート7を搬送しながら、熱膨張性シート7に可視光及び近赤外光を照射するユニットである。熱膨張性シート7は、吸収した熱量に応じて膨張する膨張層を内部に有する媒体である。熱膨張性シート7の裏面には、カーボンブラックによる濃淡画像(電磁波熱変換層)が形成されている。可視光及び近赤外光が熱膨張性シート7の濃淡画像が形成された部分に照射されると、その部分で近赤外光が熱に変換されて、熱が発生する。これに応じて、その部分の膨張層が膨張して盛り上がり、その結果、立体画像が形成される。
【0022】
光照射ユニット4は、光照射制御回路41、冷却ファン42、温度センサ43、ランプヒータ44、反射板441、バーコードリーダ45、鏡451、モータ48、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54の各部を備える。
【0023】
光照射制御回路41は、冷却ファン42、ランプヒータ44、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54の動作を制御する制御手段である。光照射制御回路41は、例えば不図示のCPUとメモリとを備え、コンピュータ3の指示に基づき、光照射ユニット4を統括制御する。光照射制御回路41は、バーコードリーダ45と入口センサ46と出口センサ47とからの入力信号に基づき、冷却ファン42を制御する。また、光照射制御回路41は、温度センサ43からの入力信号に基づき、ランプヒータ44の点灯及び消灯を制御する。また、光照射制御回路41は、バーコードリーダ45と入口センサ46と出口センサ47とからの入力信号に基づき、挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54を駆動するモータ48の回転を制御する。なお、光照射制御回路41は、任意のタイミングに応じて熱膨張性シート7の搬送速度を変更する機能を有している。
【0024】
冷却ファン42は、反射板441を空気冷却する冷却手段である。温度センサ43は、反射板441の温度を計測する計測手段である。ランプヒータ44は、可視光及び近赤外光を発生する部材である。本実施形態では、ランプヒータ44がハロゲンランプによって構成されているものとして説明する。反射板441は、ランプヒータ44で発生した可視光及び近赤外光を反射する部材である。ランプヒータ44と反射板441とは、可視光及び近赤外光を熱膨張性シート7に照射して、熱膨張性シート7の濃淡画像(電磁波熱変換層)が形成されている部分を近赤外光で加熱する光加熱手段として機能する。本実施形態では、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)が搬送路6の上方に配置されているものとして説明する。ただし、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)は、搬送路6の下方に配置することもできる。
【0025】
バーコードリーダ45は、熱膨張性シート7の裏面の端部に印刷されたバーコードを読み取る装置である。鏡451は、熱膨張性シート7の裏面側が上方向を向くように給紙部50内にセットされているときに、熱膨張性シート7のバーコードを反射して、バーコードリーダ45から読み取れるようにする。立体画像形成システム1は、バーコードリーダ45がバーコードを読み取ることにより、熱膨張性シート7の表面と裏面の向きを判別することができる。
【0026】
モータ48は、挿入ローラ51,52、排出ローラ53,54の駆動源である。挿入ローラ51,52は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)よりも上流側に配置された搬送手段である。排出ローラ53,54は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)よりも下流側に配置された搬送手段である。
【0027】
光照射ユニット4の内部には、一点鎖線で示す搬送路6が形成されている。搬送路6は、熱膨張性シート7が挿入される挿入部5から熱膨張性シート7が排出される排出部(不図示)に亘って形成されている。挿入部5の内側には、給紙部50が配置されている。光照射ユニット4は、搬送路6に沿って、給紙部50、入口センサ46、挿入ローラ51,52、下ガイド55、上ガイド56、排出ローラ53,54、出口センサ47を備える。
【0028】
給紙部50は、熱膨張性シート7を光加熱手段に供給する部位である。光照射ユニット4は、熱膨張性シート7が挿入部5から内部に挿入されて給紙部50にセットされ、タッチパネルディスプレイ2から光照射が指示されると、熱膨張性シート7の搬送と光照射とを開始する。この搬送は、給紙部50が備える不図示の搬送機構によって開始される。
【0029】
入口センサ46は、熱膨張性シート7を検出する検出センサである。入口センサ46は、熱膨張性シート7の前端が挿入ローラ51,52の直前の位置に到達したことや、熱膨張性シート7の後端が挿入ローラ51,52の直前の位置を通過したことを検知する。
【0030】
挿入ローラ51,52は、それぞれ搬送路6の左右に分かれて設けられ、熱膨張性シート7の端部を上下から挟み込んで搬送する。これら挿入ローラ51,52は、図示せぬ動力伝達機構を介してモータ48と接続されており、モータ48によって駆動される。
【0031】
下ガイド55と上ガイド56とは、熱膨張性シート7の搬送をガイドするガイド部材である。本実施形態では、下ガイド55と上ガイド56とは、長尺な平板状の形状を呈しており、搬送路6の下と上とから熱膨張性シート7をガイドする。下ガイド55は、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が下方向に屈曲された形状になっている。下ガイド55は、好ましくは、頑丈な金属材で構成するとよい。また、上ガイド56は、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が上方向に屈曲された形状になっている。上ガイド56は、好ましくは、透明なガラスやプラスチック材等で構成するとよい。
【0032】
なお、本実施形態では、下ガイド55と上ガイド56の「前端」及び「後端」は、搬送媒体である熱膨張性シート7を基準にしている。図示例では、排出ローラ53,54に近い側(つまり、搬送方向における下流側)が下ガイド55と上ガイド56の前端側となり、挿入ローラ51,52に近い側(つまり、搬送方向における上流側)が下ガイド55と上ガイド56の後端側となっている。
【0033】
排出ローラ53,54は、熱膨張性シート7を上下から挟み込んで搬送する。これら排出ローラ53,54も、図示せぬ動力伝達機構を介してモータ48と接続されており、モータ48によって駆動される。
【0034】
出口センサ47は、入口センサ46と同様に、熱膨張性シート7を検出する検出センサである。出口センサ47は、熱膨張性シート7の前端が排出ローラ53,54の直後の位置に到達したことや、熱膨張性シート7の後端が排出ローラ53,54の直後の位置を通過したことを検知する。
【0035】
光照射ユニット4の内部の機構は、光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)の直下の熱膨張性シート7を加熱する加熱領域部HSと、加熱領域部HSよりも上流側の上流側機構部USと、加熱領域部HSよりも下流側の下流側機構部LSとに大別される。
【0036】
図2(a)に示すように、本実施形態では、上ガイド56は、4本の長尺な板状の部材によって構成されており、支持部材57によって固定支持されている。なお、本実施形態では、支持部材57は、搬送路6の幅方向に沿って平行に配置された2本のロッド57a,57bを備えており、2本のロッド57a,57bで4本の上ガイド56を支持する構造になっている。そして、それぞれの上ガイド56は、上面視で斜め方向に傾斜して設けられている。具体的には、上ガイド56は、前端側が搬送路6の外側を向き、後端側が搬送路6の中心側を向くように、傾斜して配置されている。その理由は、挿入ローラ51,52の間を通過して跳ね上がった熱膨張性シート7の前端部を搬送路6の外側方向に展開させる(つまり、熱膨張性シート7の前端部の両角部分を離間させる方向に誘導する)とともに、以下の原理によって、熱膨張性シート7の加熱ムラを解消するためである。
【0037】
すなわち、仮にそれぞれの上ガイド56が上面視で搬送方向に沿って平行に配置された構造になっている場合に、搬送方向に沿って平行な線状の上ガイド56の影が熱膨張性シート7の裏面に落ちる。その影は、搬送方向に沿って延びるように形成されるため、たとえ熱膨張性シート7を搬送したとしても、移動する熱膨張性シート7の裏面の同じ位置に落ち続ける。したがって、この構造の場合に、熱膨張性シートに加熱ムラが発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、上ガイド56を上面視で斜め方向に傾斜して設けることによって、熱膨張性シート7を搬送したときに、上ガイド56の影が移動する熱膨張性シート7の裏面の同じ位置に落ち続けないように(つまり、異なる位置に落ちるように)している。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の加熱ムラを解消することができる。
【0038】
また、
図2(b)に示すように、それぞれの上ガイド56は、側面視で斜め方向に傾斜して設けられている。具体的には、上ガイド56は、搬送路6と光加熱手段(ランプヒータ44と反射板441)との間で、後端側が搬送路6から離間するように傾斜して配置されている。その理由は、挿入ローラ51,52の間を通過して跳ね上がった熱膨張性シート7の前端部を排出ローラ53,54との間のニップ部に向かって良好に誘導するとともに、以下の原理によって、熱膨張性シート7の加熱ムラを解消するためである。
【0039】
すなわち、仮にそれぞれの上ガイド56が側面視で同じ高さで水平方向に配置された構造(つまり、搬送路6と同じ高さで平行に配置された構造)になっている場合に、ランプヒータ44の直下での上ガイド56と熱膨張性シート7の裏面との距離が近いため、上ガイド56の濃い影が熱膨張性シート7の裏面に落ちる。したがって、この構造の場合に、熱膨張性シートに加熱ムラが発生する可能性がある。そこで、本実施形態では、上ガイド56を側面視で同じ高さ及び同じ傾斜角度で斜め方向に傾斜して設けることによって、ランプヒータ44の直下での上ガイド56と熱膨張性シート7の裏面との距離を離間させ、熱膨張性シート7の裏面に落ちる上ガイド56の影を和らげるように(つまり、上ガイド56の影の濃さを薄くさせるように)している。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7のほぼ全面で近赤外光への変換効率を均等にすることができる。その結果、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の加熱ムラを解消することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、熱膨張性シート7の後端が挿入ローラ51,52の間を通過すると、上ガイド56が側面視で斜め方向に傾斜して設けられているため、熱膨張性シート7の後端部分が上に跳ね上がる(
図4(c)参照)。その結果、熱膨張性シート7の後端部分が光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)に接近する。このとき、熱膨張性シート7の後端部分に照射される単位面積当たりの近赤外光の光量が他の部位に照射される近赤外光の光量よりも増大する。そのため、熱膨張性シート7の後端部分だけが強く加熱され、熱膨張性シート7の後端部分に加熱ムラが発生し易くなる。また、熱膨張性シート7に対する挿入ローラ51,52の押圧力がなくなるため、熱膨張性シート7の後端部分にカールが発生し易くなる。そこで、立体画像形成システム1は、これらの現象の発生を抑制するために、以下の「立体画像形成システムでの媒体搬送方法」の章で説明する方法で媒体搬送を行う。
【0041】
<立体画像形成システムでの媒体搬送方法>
以下、
図3及び
図4を参照して、立体画像形成システム1での媒体搬送方法につき説明する。
図3は、立体画像形成システム1の動作を示すフローチャートである。
図4は、立体画像形成システム1での媒体搬送方法を示す説明図である。
【0042】
本実施形態では、光照射制御回路41は、光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)の動作を制御する光加熱制御手段として、また、搬送手段(挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54)の動作を制御する搬送制御手段として機能する。また、入口センサ46は、熱膨張性シート7の後端が光加熱手段に接近したことを検出する後端検出センサとして機能する。
【0043】
なお、立体画像形成システム1は、図示せぬタイマによって計測された時間に基づいて動作する。また、立体画像形成システム1の動作は、光照射制御回路41の図示せぬ記憶部に読み出し自在に予め格納されたプログラムによって規定されており、光照射制御回路41によって実行される。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
【0044】
立体画像形成システム1は、オペレータが熱膨張性シート7(用紙)を挿入部5から内部に挿入して給紙部50にセットし、タッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)することによって、動作を開始する。
【0045】
図3に示すように、立体画像形成システム1の光照射制御回路41は、バーコードリーダ45により熱膨張性シート7の挿入を検知する(ステップS110)。このとき、光照射制御回路41は、バーコードリーダ45の出力信号に基づいて熱膨張性シート7の表裏の向きを判別する。そして、熱膨張性シート7の裏面が上を向くようにセットされていれば、光照射制御回路41は、モータ48を駆動させて、挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54に熱膨張性シート7の搬送を開始させる(ステップS120)。
【0046】
これにより、熱膨張性シート7の先端部分は、入口センサ46上を通過し、上流側機構部USから加熱領域部HSに進入する。
図4(a)は、このときの状態を示している。このとき、加熱領域部HSでは、熱膨張性シート7の裏面に可視光及び近赤外光が照射され、その結果、熱膨張性シート7に立体画像が形成される。
【0047】
この後、さらに熱膨張性シート7が搬送されると、熱膨張性シート7の後端が入口センサ46上を通過する。
図4(b)は、このときの状態を示している。光照射制御回路41は、入口センサ46の出力信号に基づいて熱膨張性シート7の後端の入口センサ46上の通過を検知する(ステップS130)。
【0048】
この後、熱膨張性シート7の後端が挿入ローラ51,52の間を通過すると、前記したように、上ガイド56が側面視で斜め方向に傾斜して設けられているため、熱膨張性シート7の後端部分が上に跳ね上がる。
図4(c)は、このときの状態を示している。その結果、熱膨張性シート7の後端部分が光加熱手段(ランプヒータ44及び反射板441)に接近する。このとき、熱膨張性シート7の後端部分に照射される単位面積当たりの近赤外光の光量が他の部位に照射される近赤外光の光量よりも増大する。そのため、熱膨張性シート7の後端部分だけが強く加熱され、熱膨張性シート7の後端部分に加熱ムラが発生し易くなる。また、熱膨張性シート7に対する挿入ローラ51,52の押圧力がなくなるため、熱膨張性シート7の後端部分にカールが発生し易くなる。
【0049】
そこで、光照射制御回路41は、熱膨張性シート7の後端部分に照射される単位面積当たりの近赤外光の光量が他の部位に照射される近赤外光の光量に近似するように、挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54の搬送速度の連続上昇制御を行う(ステップS140)。このとき、光照射制御回路41は、例えば、搬送速度が数秒毎に数%ずつ上昇するように、搬送速度を加速度的に連続して上昇させる。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の後端部分と他の部位とでほぼ同等の単位面積当たりの光量の近赤外光の照射を行うことができる。このような立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の後端部分だけが強く加熱されることを抑制するとともに、熱膨張性シート7の後端部分にカールが発生することを抑制することができる。その結果、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の後端部分と他の部位とでほぼ均等な立体画像を形成することができる。
【0050】
この後、さらに熱膨張性シート7が搬送されると、熱膨張性シート7の後端が出口センサ47上を通過する。
図4(d)は、このときの状態を示している。光照射制御回路41は、出口センサ47の出力信号に基づいて熱膨張性シート7の後端の出口センサ47上の通過を検知する(ステップS150)。これに応答して、光照射制御回路41は、挿入ローラ51,52及び排出ローラ53,54を停止させて、熱膨張性シート7の搬送を停止させる(ステップS160)。
これにより、一連のルーチンの動作が終了する。
【0051】
ただし、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の両面に近赤外光を照射して、熱膨張性シート7の両面に立体画像を形成することも可能である。この場合に、立体画像形成システム1は、裏面側の膨張と表面側の膨張とで、熱膨張性シート7の後端部分の挙動が異なる。このような立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7に発生するカールの方向によっては、熱膨張性シート7の後端部分が下ガイド55に沿って搬送されるときがある。そのため、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の両面に立体画像を形成する場合に、搬送速度を上昇させないように搬送制御することもありえる。
【0052】
<立体画像形成システムの主な特徴>
かかる構成において、本実施形態に係る立体画像形成システム1は、以下のような特徴を有している。
【0053】
(1)立体画像形成システム1は、側面視で上ガイド56を斜め方向に傾斜して設けている(
図2(b)参照)。このような立体画像形成システム1は、ランプヒータ44の直下での上ガイド56と熱膨張性シート7の裏面との距離を離間させ、熱膨張性シート7の裏面に落ちる上ガイド56の影を和らげるように(つまり、上ガイド56の影の濃さを薄くさせるように)している。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7のほぼ全面で近赤外光への変換効率を均等にすることができる。その結果、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の加熱ムラを解消することができる。
【0054】
(2)立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の後端部分が挿入センサ46上を通過したタイミング(つまり、熱膨張性シート7の後端部分が挿入ローラ51,52を外れて加熱領域部HSに進入するタイミング)で、熱膨張性シート7の搬送速度を加速度的に連続して上昇させる。これにより、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の挙動に起因して、熱膨張性シート7の後端部分だけが強く加熱されることを抑制するとともに、熱膨張性シート7の後端部分にカールが発生することを抑制する。その結果、立体画像形成システム1は、熱膨張性シート7の後端部分と他の部位とでほぼ均等な立体画像を形成することができる。
【0055】
(3)立体画像形成システム1は、光加熱手段が固定配置された簡素な構造であるため、システムのサイズを小型化することができる。また、立体画像形成システム1の操作は、オペレータが熱膨張性シート7を挿入部5から挿入してタッチパネルディスプレイ2に表示されているスタートボタン(不図示)を押下(タップ)するだけである。このような立体画像形成システム1は広く普及させることが可能である。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る立体画像形成システム1によれば、熱膨張性シートの加熱ムラを解消することができる。
【0057】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、ある構成要素に他の構成要素を追加したり、一部の構成要素を他の構成要素に変更したりすることができる。また、本発明は、一部の構成要素を削除することもできる。
【0058】
また、例えば、実施形態では、上ガイド56が長尺な平板状の形状の部材である場合を例にして説明した。しかしながら、上ガイド56は、例えば、
図5に示す変形例のように、変形することができる。
図5は、上ガイド56の変形例としての上ガイド561,562,563a,563bを示す図である。
図5(a)に示す例では、上ガイド561は、挿入ローラ51,52の間を通過して跳ね上がった熱膨張性シート7の前端部を排出ローラ53,54との間のニップ部に向かって良好に誘導することができるように、長尺な平板の中央部が上方向に円弧状に湾曲されているとともに、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が上方向に屈曲された形状になっている。
図5(b)に示す例では、上ガイド562は、挿入ローラ51,52の間を通過して跳ね上がった熱膨張性シート7の前端部を排出ローラ53,54との間のニップ部に向かって良好に誘導することができるように、長尺な平板の中央部が上方向に凸状に湾曲されているとともに、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、前端部及び後端部が上方向に屈曲された形状になっている。
図5(c)に示す例では、上ガイドが上流側の上ガイド563aと下流側の上ガイド563bとに分割された構造になっている。上ガイド563aは、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、長尺な平板の前端部が上方向に屈曲された形状になっており、平板の前端部以外の部位が下流側に進むにつれて下がり、平板の前端部が下流側に進むにつれて上がるように配置されている。一方、上ガイド563bは、熱膨張性シート7の搬送の支障にならないように、長尺な平板の後端部がカールした形状になっており、平板の後端部以外の部位が下流側に進むにつれて上がるように配置されている。
【0059】
また、例えば、「立体画像形成システムでの媒体搬送方法」の章で説明した媒体搬送方法は、立体画像形成システム1に限らず、様々なシステム又は装置に適用することができる。この場合に、光加熱手段は、媒体に対して任意の処理を行う処理実行手段に変更することが可能である。具体的には、装置は、媒体を搬送する搬送手段と、媒体に対して任意の処理を行う処理実行手段と、搬送手段の動作を制御する制御手段と、を有するとともに、搬送手段が処理実行手段よりも上流側に配置された上流側機構部と処理実行手段よりも下流側に配置された下流側機構部とを備える構造になっているものとする。本発明に係る媒体搬送方法では、その装置において、制御手段は、媒体の後端が上流側機構部から外れたときに、搬送手段の搬送速度を上昇させるにようにしてもよい。
【0060】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
[付記]
<請求項1>
搬送路に沿って熱膨張性シートを搬送する搬送手段と、
前記熱膨張性シートに光を照射して加熱する光加熱手段と、
前記熱膨張性シートの後端が前記光加熱手段に接近したことを検出する後端検出センサと、
前記搬送手段の動作を制御する搬送制御手段と、を有し、
前記搬送制御手段は、前記後端検出センサによって前記熱膨張性シートの後端が前記光加熱手段に接近したことを検出されたときに、前記搬送手段の搬送速度を上昇させることを特徴とする立体画像形成システム。
<請求項2>
前記熱膨張性シートの搬送をガイドするガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記搬送路と前記光加熱手段との間で、後端側が前記搬送路から離間するように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像形成システム。
<請求項3>
前記搬送制御手段は、前記搬送手段の搬送速度を上昇させる際に、加速度的に上昇させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の立体画像形成システム。
<請求項4>
搬送路に沿って熱膨張性シートを搬送する搬送手段と、
前記熱膨張性シートの搬送をガイドするガイド部材と、
前記熱膨張性シートに光を照射して加熱する光加熱手段と、を有し、
前記ガイド部材は、前記搬送路と前記光加熱手段との間で、後端側が前記搬送路から離間するように傾斜して配置されていることを特徴とする立体画像形成システム。
<請求項5>
媒体を搬送する搬送手段と、媒体に対して任意の処理を行う処理実行手段と、前記搬送手段の動作を制御する搬送制御手段と、を有するとともに、前記搬送手段が前記処理実行手段よりも上流側に配置された上流側機構部と前記処理実行手段よりも下流側に配置された下流側機構部とを備える構造になっている装置での媒体搬送方法であって、
前記搬送制御手段は、前記媒体の後端が前記上流側機構部から外れたときに、前記搬送手段の搬送速度を上昇させることを特徴とする媒体搬送方法。