(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376210
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20180813BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B60C13/00 G
B60C5/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-226852(P2016-226852)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-83490(P2018-83490A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅章
【審査官】
増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−174594(JP,A)
【文献】
特開2014−031056(JP,A)
【文献】
特開2010−264792(JP,A)
【文献】
特開2009−279974(JP,A)
【文献】
特開平04−176705(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/007423(WO,A1)
【文献】
特開2014−061723(JP,A)
【文献】
特開平05−050807(JP,A)
【文献】
米国特許第05280817(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における該カーカス層の外周側に配置されたベルト層と、前記カーカス層に沿ってタイヤ内面に配置されたインナーライナー層と、前記カーカス層と前記インナーライナー層との層間であって、子午線断面においてタイヤ幅方向の一方側の前記ビード部と他方側の前記ビード部との間でタイヤ赤道を跨いで連続的に延在して前記ビード部の先端を除く領域の全体に亘って配置された部分タイゴム層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記部分タイゴム層を構成するゴムの硬度が55〜65であり、
前記ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部から前記インナーライナー層に向けて引いた垂線Pに対する前記部分タイゴム層の前記ビード部側への突出量L1が、前記垂線Pとタイヤ内表面との交点Aからビードトウの先端点Bまでのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さL2の0.25倍〜0.80倍であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記突出量L1が15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記部分タイゴム層の厚さが0.1mm〜1.0mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカス層とインナーライナー層との層間の一部に限定的に配置される部分タイゴム層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、空気透過防止性と操縦安定性とを維持しながら、更なるタイヤ重量の軽減を図り、これら性能をバランスよく両立することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、一般的に、タイヤ製造時に未加硫タイヤをインフレートする際に、カーカスコードがインナーライナー層に喰い込むことを防止するために、カーカス層とインナーライナー層との層間にタイゴム層が配置される。このようなタイゴム層に関して、近年、タイヤ重量や転がり抵抗の低減を図るために、カーカス層とインナーライナー層との層間の全域ではなく左右のショルダー領域に選択的に配置された部分タイゴム層を採用することが提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
確かに、このような部分タイゴム層であれば、カーカス層とインナーライナー層との層間の全域に配置される従来のタイゴム層(フルタイゴム層)と比較してタイゴム層の使用量を低減して、タイヤ重量や転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしながら、このような部分タイゴム層は、各ショルダー領域に設けられた各部分タイゴム層が一対の端部(タイヤ赤道側の端部とタイヤ幅方向外側の端部)を有するため、タイヤ構成部材間の剥がれの基点や製造時に未圧着部になる虞がある端部の数が多くなり、タイヤの製造性に影響が出る可能性があった。
【0004】
一方で、従来のフルタイゴム層の幅を狭めることでタイゴム層の使用量を低減しようとすると、充分なタイヤ重量の軽減効果を得ながら空気透過防止性や操縦安定性を高度に維持して、これら性能をバランスよく両立することが難しいため、部分タイゴム層の構造や配置について更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5239507号公報
【特許文献2】特許第5723086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カーカス層とインナーライナー層との層間の一部に限定的に配置される部分タイゴム層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、空気透過防止性と操縦安定性とを維持しながら、更なるタイヤ重量の軽減を図り、これら性能をバランスよく両立することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に装架されたカーカス層と、前記トレッド部における該カーカス層の外周側に配置されたベルト層と、前記カーカス層に沿ってタイヤ内面に配置されたインナーライナー層と、前記カーカス層と前記インナーライナー層との層間であって、
子午線断面においてタイヤ幅方向の一方側の前記ビード部と他方側の前記ビード部との間でタイヤ赤道を跨いで連続的に延在して前記ビード部の先端を除く領域
の全体に亘って配置された部分タイゴム層とを有する空気入りタイヤにおいて、
前記部分タイゴム層を構成するゴムの硬度が55〜65であり、前記ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部から前記インナーライナー層に向けて引いた垂線Pに対する前記部分タイゴム層の前記ビード部側への突出量L1が、前記垂線Pとタイヤ内表面との交点Aからビードトウの先端点Bまでのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さL2の0.25倍〜0.80倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、部分タイゴム層を採用してフルタイゴム層を有する従来の空気入りタイヤに比べてタイヤ重量を軽減するにあたって、垂線P(即ち、ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部の位置)に対する突出量L1を上記のように設定しているので、充分にタイヤ重量を低減しながら、従来と同等の空気透過防止性や操縦安定性を得るために最低限必要な領域を部分タイゴム層で覆って従来の優れた空気透過防止性および操縦安定性を維持することができる。これにより、空気透過防止性と操縦安定性とタイヤ重量の軽減とをバランスよく両立することができる。尚、本発明において「ペリフェリ長さ」とは、タイヤ子午線断面において、各タイヤ構成要素(部分タイゴム層)の延長方向に沿って測定される長さである。
【0009】
本発明においては、部分タイゴム層の突出量L1が15mm以上であることが好ましい。このように突出量L1を適切な範囲に設定し、最適化することで、空気透過防止性と操縦安定性とタイヤ重量の軽減とを更にバランスよく両立することができる。
【0010】
本発明においては、部分タイゴム層を構成するゴムの硬度が
55〜65であるので、部分タイゴム層の使用量の抑制に伴って低下する虞のあるサイドウォール部の剛性を補うことができるので、操縦安定性を維持するには有利になる。尚、本発明における「ゴムの硬度」とは、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定された硬さ(所謂、JIS‐A硬度)である。
【0011】
本発明においては、部分タイゴム層の厚さが0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。このように部分タイゴム層の厚さを適切な範囲に設定し、最適化することで、空気透過防止性と操縦安定性とタイヤ重量の軽減とを更にバランスよく両立することができる。尚、本発明において「部分タイゴム層の厚さ」とは、部分タイゴム層の主要部分(一定の厚さを維持しながら延在する部分)の厚さであって、部分タイゴム層が例えば端部に向かって厚さが減少する先細り形状を有している場合には、この端部を除いた部分における厚さである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。尚、
図1において、CLはタイヤ赤道を示す。
【0015】
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図示の例では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8(図示の例では、ベルト層7の端部を覆う一対のベルト補強層8)が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°〜5°に設定されている。タイヤ内面にはインナーライナー層9が設けられている。このインナーライナー層9は空気透過防止性能を有するブチルゴムを主体とするゴム組成物で構成され、タイヤ内に充填された空気がタイヤ外に透過することを防いでいる。
【0016】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層10が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層20が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層30が配されている。トレッドゴム層10は、物性の異なる2種類のゴム層(キャップトレッドゴム層、アンダートレッドゴム層)をタイヤ径方向に積層した構造であってもよい。
【0017】
インナーライナー層9とカーカス層4との間には部分タイゴム層40が配置されている。タイゴム層とは、タイヤ製造時に未加硫の空気入りタイヤをインフレートする際にカーカスコードがインナーライナー層9に喰い込むことを防止するための層であり、製造後のタイヤにおいては空気透過防止性やドライ路面における操縦安定性に寄与するものであり、従来はカーカス層4とインナーライナー層9との層間の全域を覆うように設けられるものであったが(フルタイゴム層)、本発明では、部分タイゴム層40として、ビード部3の先端を除く後述の領域に選択的に設けられる。即ち、本発明の部分タイゴム層40は、ベルト層7のタイヤ幅方向最外側端部からインナーライナー層9に向けて引いた垂線Pに対する部分タイゴム層40のビード部3側への突出量L1が、垂線Pとタイヤ内表面との交点Aからビードトウの先端点Bまでのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さL2の0.25倍〜0.80倍になるように配置されている。
【0018】
このように部分タイゴム層40を採用してフルタイゴム層を有する従来の空気入りタイヤに比べてタイヤ重量を軽減するにあたって、垂線P(即ち、ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部の位置)に対する突出量L1を上記のように設定しているので、従来と同等の空気透過防止性や操縦安定性を得るために最低限必要な領域を部分タイゴム層40で覆うことができ、従来の優れた空気透過防止性および操縦安定性を維持することができる。また、これら性能を得るために部分タイゴム層40が覆う領域を必要以上に大きくせずに、部分タイゴム層の使用量を極力抑えることができるので、タイヤ重量を充分に軽減することができる。これにより、空気透過防止性と操縦安定性とタイヤ重量の軽減とをバランスよく両立することができる。
【0019】
このとき、突出量L1がペリフェリ長さL2の0.25倍よりも小さいと、部分タイゴム層40によって充分な領域を覆うことができず、空気透過防止性および操縦安定性を良好に維持することができない。突出量L1がペリフェリ長さL2の0.80倍よりも大きいと、実質的にフルタイゴム層と同等になり、タイヤ重量を軽減する効果が充分に得られなくなる。
【0020】
部分タイゴム層40の突出量L1は、上記範囲を満たすだけでなく、15mm以上であることが好ましい。本発明者は、部分タイゴム層40を採用する場合における部分タイゴム層40の配置について鋭意研究した結果、従来のフルタイゴム層を有する空気入りタイヤと同等の空気透過防止性と操縦安定性とを得るには、部分タイゴム層40が少なくともベルト層7のタイヤ幅方向最外側端部の近傍の特定の領域(垂線Pの位置と垂線Pからビード部3側に部分タイゴム層40に沿って15mmの位置との間の領域)を覆っていることが好ましいことを知見しており、突出量L1を上記のように15mm以上とすることで、この領域を部分タイゴム層40によって確実に覆うことが可能になり、空気透過防止性と操縦安定性を高度に維持するには有利になる。このとき、突出量L1が15mm未満であると、前述の領域を覆うことができず、空気透過防止性および操縦安定性を良好に維持することが難しくなる。
【0021】
タイヤ重量の軽減と、空気透過防止性および操縦安定性の維持とを更にバランスよく高度に両立するには、突出量L1をペリフェリ長さL2の0.30倍〜0.70倍に設定するとよい。これにより、部分タイゴム層40が、前述の部分タイゴム層40が覆うことが好ましい領域を含む充分な領域を覆う一方で、部分タイゴム層40の使用量も適度に抑制できるので、空気透過防止性および操縦安定性を高度に維持しながら、タイヤ重量を軽減するには非常に有利になる。
【0022】
本発明では、部分タイゴム層40が上述の位置に配置されるだけでなく、その端部位置が以下のように設定されることが好ましい。即ち、部分タイゴム層40の端部がリムクッションゴム層30のタイヤ径方向外側端部よりもタイヤ径方向外側に位置し、且つ、部分タイゴム層40の端部とリムクッションゴム層30のタイヤ径方向外側端部との離間距離L3がタイヤ断面高さSHの0.50倍以上であることが好ましい。更に、部分タイゴム層40の端部がビードフィラー6のタイヤ径方向外側端部よりもタイヤ径方向外側に位置し、且つ、部分タイゴム層40の端部とビードフィラー6のタイヤ径方向外側端部との離間距離L4がタイヤ断面高さSHの0.40倍以上であることが好ましい。これにより、部分タイゴム層40と他のタイヤ構成部材(リムクッションゴム層30、ビードフィラー6)との位置関係が最適化され、剛性部材である他のタイヤ構成部材(リムクッションゴム層30、ビードフィラー6)と適度に離間させることができるため、特に操縦安定性を維持するには有利になる。
【0023】
更に、部分タイゴム層40の端部がタイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、且つ、部分タイゴム層40の端部とタイヤ最大幅位置との離間距離L5がタイヤ断面高さSHの0.05倍以上であることが好ましい。このように、部分タイゴム層40がタイヤ最大幅位置と重ならないようにすることで、タイヤ重量の軽減効果をより向上することができる。
【0024】
部分タイゴム層40を構成するゴム組成物としては、従来のタイゴム層(従来のフルタイゴム層や部分タイゴム層)に使用されるゴム組成物を用いることができるが、そのゴム硬度が好ましくは50〜70、より好ましくは55〜65であるゴム組成物を用いるとよい。このように部分タイゴム層40として適度な硬度を有するゴム組成物を用いることで、部分タイゴム層40の使用量の抑制に伴って低下する虞のあるサイドウォール部2の剛性を補うことができ、操縦安定性を維持するには有利になる。このとき、部分タイゴム層40の硬度が50よりも小さいと、前述のようにサイドウォール部2の剛性を補う効果が限定的になり、操縦安定性を高度に維持することが難しくなる。部分タイゴム層40の硬度が70よりも大きいと、サイドウォール部2の剛性が高くなり過ぎるため、空気入りタイヤの本来の性能に悪影響が出る虞がある。
【0025】
部分タイゴム層40は、タイゴム層としての機能(タイヤ製造時におけるインナーライナー層9へのカーカスコードの喰い込みを防止すること等)を充分に発揮するために充分な厚さを有することが求められるが、その一方で、タイヤ重量の軽減のために使用量を抑えることが好ましい。そのため、本発明では、部分タイゴム層40の厚さTを、好ましくは0.1mm〜1.0mm、より好ましくは0.3mm〜0.7mmに設定するとよい。これにより、タイゴム層としての機能を充分に発揮して、空気透過防止性および操縦安定性を好適に維持しながら、タイヤ重量の軽減効果も充分に発揮することができる。このとき、部分タイゴム層40の厚さTが0.1mmよりも小さいと、部分タイゴム層40が薄過ぎるため、部分タイゴム層40がタイゴム層として充分に機能しなくなり、タイヤ製造時におけるインナーライナー層9へのカーカスコードの喰い込みを防止する効果が限定的になる。その結果、充分な空気透過防止性および操縦安定性を維持することが難しくなる。部分タイゴム層40の厚さTが1.0mmよりも大きいと、部分タイゴム層40が厚くなり過ぎて使用量が増大するため、タイヤ重量の軽減効果が限定的になる。
【実施例】
【0026】
タイヤサイズが195/65R15であり、
図1に示す基本構造を有し、タイゴム層の構造、ベルト層のタイヤ幅方向最外側端部からインナーライナー層に向けて引いた垂線Pに対する部分タイゴム層のビード部側への突出量L1、垂線Pとタイヤ内表面との交点Aからビードトウの先端点Bまでのタイヤ内面に沿ったペリフェリ長さL2、部分タイゴム層の端部とリムクッションゴムのタイヤ径方向外側端部との離間距離L3のタイヤ断面高さSHに対する割合(L3/SH)、部分タイゴム層の端部とビードフィラーのタイヤ径方向外側端部との離間距離L4のタイヤ断面高さSHに対する割合(L4/SH)、部分タイゴム層の端部とタイヤ最大幅位置との離間距離L5のタイヤ断面高さSHに対する割合(L5/SH)、部分タイゴム層を構成するゴム組成物の硬度、部分タイゴム層のゴム厚さTをそれぞれ表1〜2のように設定した従来例1、比較例1〜4、実施例1〜
16、参考例1〜4の25種類の空気入りタイヤを作製した。
【0027】
尚、表1〜2の「タイゴム層の構造」の欄について、タイゴム層がフルタイゴム層である場合は「フル」、部分タイゴム層である場合は「部分」と記載した。
【0028】
これら25種類の空気入りタイヤについて、下記の評価方法により、タイゴム使用量、空気透過防止性、ドライ路面における操縦安定性(操縦安定性)を評価し、その結果を表1〜2に併せて示した。
【0029】
タイゴム使用量
各試験タイヤにおけるタイゴムの使用量を測定した。評価結果は、従来例1の測定値を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほどタイゴム使用量が少なく、タイヤ重量を軽減できることを意味する。尚、この指数値が「95」未満であると、タイゴム使用量が充分に少ないと言え、充分なタイヤ重量の軽減効果が得られたことを意味する。特に、この指数値が「85」以下であるとタイヤ重量の軽減効果が優れており、この指数値が「65」以下であるとタイヤ重量の軽減効果が非常に優れていることを意味する。逆に、この指数値が「95」以上であると、タイゴム使用量を充分に低減することができず、実質的に従来のフルタイゴム層と同程度のタイヤ重量になっており、タイヤ重量の軽減効果が充分に得られていないことを意味する。
【0030】
空気透過防止性
各試験タイヤを、リムサイズ15×6Jのホイールに組み付け、空気圧を230kPaとし、常温の部屋に720時間放置する。放置開始時の空気圧と720時間後(放置終了時)の空気圧とをもとに、室温の温度補正をしたうえで、空気漏れ率を算出した。評価結果は、従来例1の算出値の逆数を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど空気漏れ率が小さく、空気透過防止性に優れることを意味する。尚、この指数値が「90」以上であれば、従来レベルを維持して充分な空気透過防止性が得られたことを意味する。特に、この指数値が「94」以上であると、空気透過防止性が充分に高いと言え、効果的に空気透過防止性を維持できたことを意味する。
【0031】
操縦安定性能
各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、空気圧を210kPaとして排気量1.5Lの試験車両に装着し、乾燥路面からなるテストコースにて、テストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性に優れることを意味する。尚、この指数値が「90」以上であれば、従来レベルを維持して充分な操縦安定性が得られたことを意味する。特に、この指数値が「94」以上であると、操縦安定性が充分に高いと言え、効果的に操縦安定性を維持できたことを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1〜2から明らかなように、実施例1〜
16および参考例1〜4はいずれも、従来例1に対して、空気透過防止性および操縦安定性能を維持しながらタイヤ重量を軽減した。特に、突出量L1がより好ましい範囲を満たす実施例2〜4、部分タイゴム層の硬度が
参考例より好ましい範囲を満たす実施例
6〜7、部分タイゴム層のゴム厚さが
参考例より好ましい範囲を満たす実施例
9〜10は、タイゴム使用量が充分に抑制されてタイヤ重量が充分に軽減できている一方で、タイヤ重量の軽減率と対比して空気透過防止性および操縦安定性も良好に維持できているので、これら性能をバランスよく両立した。
【0035】
一方、比較例1〜2は、突出量L1が小さ過ぎるため、部分タイゴム層による適切な被覆が困難になり、空気透過防止性および操縦安定性を良好に維持することができなかった。比較例3〜4は、突出量L1が大き過ぎるため、部分タイゴム層の使用量が過剰になり、タイヤ重量を充分に軽減することができなかった。
【符号の説明】
【0036】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルト補強層
9 インナーライナー層
10 トレッドゴム層
20 サイドゴム層
30 リムクッションゴム層
40 部分タイゴム層
CL タイヤ赤道