(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6376222
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】貨物船用ラッシングブリッジ
(51)【国際特許分類】
B63B 25/24 20060101AFI20180813BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20180813BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B63B25/24 Z
B63B25/00 101K
F16F15/02 C
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-557234(P2016-557234)
(86)(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公表番号】特表2017-510494(P2017-510494A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】FI2014050232
(87)【国際公開番号】WO2015140389
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】20145260
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】515130979
【氏名又は名称】マクレガー フィンランド オサケイティエ
【氏名又は名称原語表記】MACGREGOR FINLAND OY
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】ウンクリ,ヘイッキ
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0134587(KR,A)
【文献】
特開平6−2736(JP,A)
【文献】
特開平6−193678(JP,A)
【文献】
特開2005−240839(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0113365(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0115633(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2014−0026831(KR,A)
【文献】
中村朋宏,安部浩二,坂本宗彦,太田進,コンテナ固縛評価手法の研究―II.,日本航海学会論文集,日本,日本航海学会,2000年 9月,103号,pp.151-156,ISSN:0388-7405
【文献】
深沢塔一,大月信哉,植西清人,多段積みコンテナの挙動解析とコンテナ拘束方法に関する研究,日本船舶海洋工学会論文集,日本,日本船舶海洋工学会,2006年12月,第4号,pp.213-220,ISSN:1880-3717
【文献】
Strength Analysis of Hull Structures in Container Carriers,Classification Note No. 31.7,ノルウェー,Det Norske Veritas AS,2013年 7月,pp.60-61
【文献】
MacGregor news,フィンランド,Cargotec,2011年,Issue 163,pp.14-15
【文献】
Eric Murdoch, David Tozer,A Master's Guide to: CONTAINER SECURING,英国,Lloyd's Register and The Standard Club,2012年 2月,2nd edition,pp.2-46
【文献】
Container Securing,Classification Note No. 32.2,ノルウェー,Det Norske Veritas AS,2013年 7月,pp.6-53
【文献】
Part 5 Chapter 2 PASSENGER AND DRY CARGO SHIPS,Rules for Classification of Ships,ノルウェー,Det Norske Veritas,2011年 1月,pp.71-91
【文献】
Bill Shi, Donald Liu, Peter Tang-Jensen, K.M. Wong,Overview of the Development of Ultra Large Container Carriers: Where Next?,ABS Technical Papers 2006,米国,American Bureau of Shipping,2006年,pp.317-326
【文献】
森雄矢,船舶用コンテナによる積層構造建物の解析的耐震性能評価,平成25年度修士論文,日本,首都大学東京大学院,2014年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/24,25/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船の船体構造体に直接的又は間接的に固定される貨物船用ラッシングブリッジ(1)であって、少なくとも1つの振動減衰器(2)を固定された又は取り外し可能な様態で該ラッシングブリッジ(1)に取り付け、該振動減衰器が、可撓要素(5)及び減衰要素(4)のうちの少なくとも一つの要素と質量要素(3)とを有し、該質量要素(3)が前記少なくとも一つの要素を介して前記ラッシングブリッジ(1)のみに接続されることを特徴とするラッシングブリッジ。
【請求項2】
前記質量要素(3)の質量が、前記ラッシングブリッジの振動の効果として該質量要素が振動するように定められていることを特徴とする、請求項1に記載のラッシングブリッジ。
【請求項3】
前記質量要素(3)の前記質量が、前記ラッシングブリッジの振動に応じて該質量要素が様々な相で振動して、前記ラッシングブリッジの振動を制限するように定められていることを特徴とする、請求項2に記載のラッシングブリッジ。
【請求項4】
前記振動減衰器(2)が、線形又は非線形減衰器であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項5】
前記可撓要素(5)が線形可撓要素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項6】
前記可撓要素(5)が非線形なばねの力を有する非線形ばね要素であり、前記ばねの力の大きさが前記非線形ばね要素の変形速度に相関することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項7】
一台の振動減衰器(2)が複数の質量要素(3)及び複数の前記少なくとも一つの要素を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項8】
前記振動減衰器の特性及び位置が、各ラッシングブリッジ構造体及び貨物船の振動解析に基づいて最適化されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項9】
前記振動減衰器(2)の特性が、前記可撓要素及び減衰要素の硬さ、減衰機能及び/又は前記質量要素(3)の重量を調節することによって変えることができることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項10】
前記質量要素(3)の質量が100〜1000kgの間であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項11】
前記減衰要素(4)が液体を充填した又は気体を充填した緩衝器であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの振動減衰器(2)が前記ラッシングブリッジの上部に固定されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のラッシングブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、貨物船の船体構造体に直接的又は間接的に固定される貨物船用ラッシングブリッジである。
【0002】
ラッシングブリッジとはコンテナ輸送用の貨物船の甲板に取り付けられる支持枠体のことであり、該支持枠体にはコンテナを支持するのに使用されるラッシングバーが固定される。
【背景技術】
【0003】
一隻の貨物船には、通常、複数のコンテナが甲板の下及び甲板の上に多数の行列を成し、また、コンテナの上にコンテナを何層にも積み重ねて搭載されて、輸送される。甲板には取り外し可能なハッチカバーがあり、これで下側の船倉が閉鎖される。甲板上に搭載されるコンテナはハッチカバーの上に積載されて輸送される。コンテナ用の甲板上の支持構造体、所謂ラッシングブリッジは、船への貨物の積み込み及び船からの貨物の積み下ろしに関連して、ハッチカバーを取り除いてクレーンで下げて収納位置に戻すことのできる距離を相互に置いて取り付けられる。
【0004】
コンテナが船に積載された後に、甲板上にあるコンテナの少なくとも一部は、その端部がラッシングバーとターンバックルとによってラッシングブリッジに固定される。
【0005】
ラッシングブリッジは、通常、船の一方の側から他方の側へと船体を横断する方向に配置される。ラッシングブリッジはその構造において狭くて高いので、船のエンジンの運転とプロペラの回転とによって生じる船体の振動が、ラッシングブリッジの構造における強度の問題と振動の問題とを起こす。振動減衰器を設けた結果、ラッシングブリッジへの有害な振動は減衰させることができ、ラッシングブリッジの構造をより軽量化することができる。
【0006】
この技術分野で知られている振動減衰器は別体として設置可能な支持構造体又は減衰構造体であり、これはラッシングブリッジと例えばハッチカバーとに接続される。同時に、このような構造体はコンテナの輸送を妨げて遅らせる。この技術分野では、また、ラッシングブリッジの、例えば、高さ方向の様々な位置に別体の作動装置を設けて大きな質量を移動させることができ、同時に、ラッシングブリッジの振動特性を変えることができる。ラッシングブリッジ用の従来技術による振動減衰構造体が、例えば、KR20130134587A、KR20130115633A、KR20120113365Aに示されている。
【0007】
振動減衰器がラッシングブリッジと、例えば、ハッチカバーとにも接続されるという課題解決方法は、コンテナを所定の位置に積載するのを妨げる。同時に、このような課題解決方法は、使用と使用との間の期間に保管する必要があることに加えて、使用の前後に設置作業と解体作業とが別に必要となる。高荷重に耐えられる減衰器を用いる課題解決方法が関係すると、そのような減衰器の取り扱いは人手で行うことができず、クレーン又は他の補助的な装置が必要になる。このようなことによってシステムを使用するのが遅れ、追加的なコストが生じることになる。シリンダ又はモータなどの別体の作動装置を備えたシステムは、それ自体、複雑であり、高価であり、誤動作し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR20130134587A
【特許文献2】KR20130115633A
【特許文献3】KR20120113365A
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、先に記載した問題が付随しないラッシングブリッジを提供することである。本発明によるラッシングブリッジは、固定された又は取り外し可能な様態で少なくとも1つの振動減衰器を該ラッシングブリッジに取り付け、該振動減衰器が、可撓要素及び/又は減衰要素を介して前記ラッシングブリッジに接続される質量要素を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明による振動減衰器の好ましい一態様は、前記質量要素の質量が、ラッシングブリッジの振動の効果として該質量要素が振動するように定められていることによって特徴付けられる。
【0011】
本発明による振動減衰器の第二の好ましい態様は、前記質量要素の質量が、ラッシングブリッジの振動に応じて該質量要素が様々な相で振動して、ラッシングブリッジの振動を制限するように定められていることによって特徴付けられる。
【0012】
本発明による振動減衰器の更に他の好ましい態様は、振動減衰器の動作が、質量要素、可撓要素、及び減衰要素の特性に応じて、線形又は非線形であること、即ち、減衰機能が狭い振動周波数範囲又は広い振動周波数範囲に及ぶことによって特徴付けられる。
【0013】
本発明による振動減衰器を用いると、ラッシングブリッジの振動傾向を低減させることができ、同時に、ラッシングブリッジを従来技術の物よりも軽量化することができる。振動減衰器の構造は単純であり、手入れを必要とせず、その製造は低コストで行うことができる。
【0014】
以下において、添付の図面を参照しながら、いくつかの好ましい態様の助けを借りて、本発明をより詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ラッシングブリッジと、2本のラッシングバーで接続されたコンテナを積み重ねたものとを示している。
【
図2】側方から見た、振動減衰器が接続された状態にあるラッシングブリッジとコンテナを積み重ねたものとを示している。
【
図3】3台の振動減衰器が設置されたラッシングブリッジを示している。
【
図4】振動減衰器の機能部品の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ラッシングブリッジ1は貨物船の甲板に、通常は船を横断する方向に配置され、複数のコンテナ又はコンテナを積み重ねたもの7が、コンテナのラッシングバー8を複数のコンテナとラッシングブリッジとの間に固定することができるように、ラッシングバーとラッシングバーとの間に配置される。
【0017】
貨物船が海を航行するときに、船のエンジンとプロペラとが船体に振動を発生させる。この振動は励振として作用し、ラッシングブリッジ1に振動を起こす。
図2及び3は、ラッシングブリッジに取り付けられた振動減衰器2を示している。振動減衰器2は、通常、ラッシングブリッジの最上部に取り付けられるが、他の位置への取り付けも可能である。船の構造体から来る励起振動の効果としてラッシングブリッジ1がその固有周波数で振動するときに、振動減衰器2の質量要素が別の相での振動を開始し、この場合、ラッシングブリッジ1の振動がその速度及び振幅において有害なほど大きくなることができない。
【0018】
図4は、本発明による振動減衰器を実施する一方法をより詳細に示している。振動減衰器2は、可撓要素5及び/又は減衰要素4を介して振動減衰器2の枠体部分6に接続されている質量要素3を有している。枠体部分6は、固定された様態で(例えば、溶接によって)、又は取り外し可能な様態で(例えば、ボルトによる接続で)ラッシングブリッジ1に取り付けられている。或いは、可撓要素5若しくは減衰要素4又はその両方を、直接ラッシングブリッジ1に取り付けることができる。
【0019】
2台以上の振動減衰器2を1つのラッシングブリッジに取り付けることができる。さらに、1台の振動減衰器2が多数の質量要素3と可撓要素5及び/又は減衰要素4とを有することも可能である。
【0020】
振動減衰器2の質量要素3の振動は、それ自体、可撓要素5及び減衰要素4によって制御される。振動減衰器2を取り付けることによって、ラッシングブリッジの構造体はストレスが小さくなり、より軽量化することができる。
【0021】
ラッシングブリッジ1の通常の臨界振動周波数は1〜10 Hz の範囲である。振動減衰器2の動作は、様々な部品の特性(例えば、質量要素3の大きさ、可撓要素5及び減衰要素4の硬さ)を調節することによって、一定の臨界周波数又はより広い周波数帯に合わせることができる。
【0022】
振動減衰器2における質量要素3は、特に、ラッシングブリッジ1の振動特性に応じて、例えば、100〜1000 kg の大きさとすることができる。
【0023】
可撓要素5は、その動作において線形であることができ、この場合は、ばねの力がばね(例えば、コイルばね)の圧縮(変形)の関数として決定される。或いは、可撓要素はその機能において非線形であってもよく、その場合、ばねの圧縮(変形)の速度等がばねの力の大きさに影響を与える。
【0024】
減衰要素4は、例えば、液体を充填した、又は気体を充填した緩衝器であってもよい。また、振動する(動く)構造物と静止している構造物との間の摩擦も減衰要素として機能することができる。
【0025】
振動減衰器2は、減衰要素4がなくても使用することができ、可撓要素5と減衰要素4とを1つの機能性部品に統合することができる。
【0026】
振動減衰器2の可撓要素5としては、コイルばねの代わりに、弾力性のあるゴム部品、可撓性のある棒、又は振動及び変形をすることのできる他の部材であってもよい。該構造体においては、例えば、内部摩擦によって同時に減衰性を有する可撓要素5を用いることも可能である。
【0027】
本発明は先に記載した態様のみに限定されず、以下に示される請求の範囲内で変更することができるのは、当業者には明らかである。例えば、振動減衰器2の特性及び位置は、各ラッシングブリッジ及び貨物船の振動解析に基づいて最適化することができる。さらに、振動減衰器2の特性は、可撓要素5及び減衰要素4の硬さ、減衰機能並びに/又は質量要素3の重量を調節することによって変えることができる。質量要素3、可撓要素4、及び減衰要素5の特性に応じて、振動減衰器2の動作は線形又は非線形である。即ち、減衰機能は、狭い振動周波数範囲又は広い振動周波数範囲に及ぶ。
【0028】
本願明細書において、他の特徴的な要素と共に記載されている可能性のある特徴的な要素は、必要であれば、相互に別々に用いることができる。