特許第6376234号(P6376234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水ハウス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000002
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000003
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000004
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000005
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000006
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000007
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000008
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000009
  • 特許6376234-木造柱脚金物 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6376234
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】木造柱脚金物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20180813BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   E04B1/26 E
   E04B1/58 511L
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-49351(P2017-49351)
(22)【出願日】2017年3月15日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−155781(JP,A)
【文献】 特開2002−115339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 − 1/36
E04B 1/38 − 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、当該台座部に上方から着脱自在に被せられる柱受部と、を備えており、
上記台座部は、
ボルト孔を有するベース部材と、上記ベース部材より上方に延びる柱挿入部材と、を備えており、
上記柱受部は、当該柱受部が上記台座部に被せられた組付状態において、
上記ベース部材よりも上方に位置し、上記柱挿入部材を挟んで互いに反対側に位置する第1部分及び第2部分を有する柱受部材と、
上記柱受部材より下方に延びて、上記柱受部材と上記ベース部材とを上下に離間させて上記ベース部材に当接する支持部材と、を備え
上記柱受部材は、上記第1部分及び上記第2部分が連続しており、上記柱挿入部材が上下方向に挿通可能な挿通孔を有しており、
上記柱受部材及び上記ベース部材の形状は、共に、上下方向から視てほぼ同一の四角形であり、
上記柱受部材の上記外縁に沿って配置された上記支持部材は、複数の分割片からなっており、
上記各分割片は、上下方向から視て、上記柱受部材の上記四角形の頂点に対応する位置で屈曲され、上記四角形の辺に対応する位置で隣り合う他の上記分割片に固定されている木造柱脚金物。
【請求項2】
上記支持部材、上記柱受部材の上記外縁の内側に配置されている請求項1に記載の木造柱脚金物。
【請求項3】
上記ベース部材は、上記組付状態において、
上記支持部材の側面に当接して、上記台座部を水平方向のうちの少なくとも一方向に対して位置決めする位置決め面を有する請求項1又は2に記載の木造柱脚金物。
【請求項4】
上記挿通孔は、上記柱受部材の上記四角形の中心位置を含み且つ当該四角形の一辺と平行に延びている請求項1から3のいずれかに記載の木造柱脚金物。
【請求項5】
上記柱受部材は、上記挿通孔の短手方向の幅を狭める方向へ突出する突片を更に有する請求項1から4のいずれかに記載の木造柱脚金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造柱を基礎に結合させる柱脚金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造柱を基礎に接合する木造柱脚金物が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の木造柱脚金物は、ベースプレート、受けプレート、スチフナ、及び縦プレートを有する。ベースプレートは、水平方向に延びる板材であって、基礎のアンカーボルトが挿通される挿通孔を有する。受けプレートは、水平方向に延びる板材であって、木造柱の下面を受ける。受けプレートには、ベースプレートの挿通孔の直上位置に、当該挿通孔よりも大きな貫通孔が形成されている。スチフナは、上下方向に延びる板材であって、受けプレート及びベースプレートを連結する。縦プレートは、受けプレートから上方に延びる板材であって、木造柱に形成されたスリット内に挿入される。ベースプレート、受けプレート、スチフナ、及び縦プレートは、溶接により一体化されている。ベースプレートがアンカーボルトにナットにより緊結されることにより、木造柱脚金物が基礎に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−125043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の木造柱脚金物では、スチフナは、挿通孔を避けるように、上方から見て、ベースプレート及び受けプレートの中心位置を通る十字形状に配置されている。この配置によれば、ベースプレートと受けプレートとの上下方向の間となる側方から挿通孔にアクセス可能なので、作業者は挿通孔に挿通されたアンカーボルトにナットを螺合させて、そのナットに側方からアクセスして回すことができる。また、受けプレートに、ナットを締結するための工具のアクセス部分の外形より大きな貫通孔が形成されているので、電動工具(インパクトレンチ)などのアクセス部分を貫通孔を通じてナットにアクセスさせて、ナットを締結することができる。
【0005】
作業者は、ナットをアンカーボルトに螺合させるときに、ベースプレートと受けプレートとの間からナットにアクセスすることとなるが、受けプレートとベースプレートとが上下方向に離間する距離が短ければ、受けプレートとベースプレートとの間に作業者が指などを入れ難くなり、作業性が悪い。他方、受けプレートとベースプレートとの上下方向の距離は、木造柱脚金物に支持された柱と連結される他の部材との関係から設定されるので、直ちに拡げることができない。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工性のよい木造柱脚金物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る木造柱脚金物は、台座部と、当該台座部に上方から着脱自在に被せられる柱受部と、を備えており、上記台座部は、ボルト孔を有するベース部材と、上記ベース部材より上方に延びる柱挿入部材と、を備えており、上記柱受部は、当該柱受部が上記台座部に被せられた組付状態において、上記ベース部材よりも上方に位置し、上記柱挿入部材を挟んで互いに反対側に位置する第1部分及び第2部分を有する柱受部材と、上記柱受部材より下方に延びて、上記柱受部材と上記ベース部材とを上下に離間させて上記ベース部材に当接する支持部材と、を備えている。
【0008】
上記構成によれば、柱受部が台座部に上方から着脱自在に被せられるので、柱受部が台座部から外れた状態で、ベース部材のボルト孔に挿通された基礎のアンカーボルトに、ベース部材の上方からナットを締結して、ベース部材が基礎に固定される。ベース部材が基礎に固定された後に、柱受部が台座部に被せられて組付状態にされる。ベース部材が基礎に固定される際に、ベース部材の上方が開放されているので、空間的な制限無く、ナットがアンカーボルトに締結できる。したがって、木造柱脚金物の施工性の低下が防止できる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記支持部材の少なくとも一部は、上記柱受部材の外縁に沿って配置されている。
【0010】
上記構成によれば、木造柱脚金物の構造耐力がよい。
【0011】
(3) 好ましくは、上記支持部材の一部は、上記柱受部材の上記外縁の内側に配置されている。
【0012】
上記構成によれば、支持部材がさらに柱受部材の外縁の内側に配置されているので、木造柱脚金物の構造耐力がより増加する。
【0013】
(4) 好ましくは、上記ベース部材は、上記組付状態において、上記支持部材の側面に当接して、上記台座部を水平方向のうちの少なくとも一方向に対して位置決めする位置決め面を有する。
【0014】
上記構成によれば、ベース部材によって支持部材を位置決めできる。
【0015】
(5) 好ましくは、上記柱受部材は、上記第1部分及び上記第2部分が連続しており、上記柱挿入部材が上下方向に挿通可能な挿通孔を有する。
【0016】
上記構成によれば、柱受部材の第1部分と第2部分とが一体に構成される。
【0017】
(6) 好ましくは、上記柱受部材及び上記ベース部材の形状は、共に、上下方向から視てほぼ同一の四角形である。
【0018】
(7) 好ましくは、上記柱受部材の上記外縁に沿って配置された上記支持部材は、複数の分割片からなっており、上記各分割片は、上下方向から視て、上記柱受部材の上記四角形の頂点に対応する位置で屈曲され、上記四角形の辺に対応する位置で隣り合う他の上記分割片に固定されている。
【0019】
上記構成によれば、支持部材が一体物である場合と比べて、支持部材の製造が容易である。また、各分割片が四角形の頂点に対応する位置で屈曲されているので、木造柱脚金物の構造耐力がよい。
【0020】
(8) 好ましくは、上記挿通孔は、上記柱受部材の上記四角形の中心位置を含み且つ当該四角形の一辺と平行に延びている。
【0021】
(9) 好ましくは、上記柱受部材は、上記挿通孔の短手方向の幅を狭める方向へ突出する突片を更に有する。
【0022】
上記構成によれば、挿通孔に挿通された柱挿入部材の位置精度がよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、施工性のよい木造柱脚金物が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態にかかる柱脚金物10により接合された基礎11及び柱材12の接合部を示す斜視図である。
図2図2は、基礎11に固定された柱脚金物10と、接合前の柱材12と、を示す斜視図である。
図3図3は、基礎11と、台座部22及び柱受部23に分解された柱脚金物10と、を示す斜視図である。
図4図4は、基礎11と、ベース部材24及び柱挿入部材25に分解された台座部22と、を示す斜視図である。
図5図5(A)は、柱受部材40及び支持部材50に分解された柱受部23を示す斜視図であり、図5(B)は、図3のVB−VB矢視断面図である。
図6図6(A)は、第2実施形態に係る柱受部223の斜視図であり、図6(B)は、柱受部材40及び支持部材250に分解された柱受部223を示す斜視図である。
図7図7は、第3実施形態に係る台座部322の斜視図である。
図8図8は、第4実施形態に係る柱受部423の平面図である。
図9図9は、第5実施形態に係る柱脚金物510の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、木造柱脚金物(以下、柱脚金物)10が基礎11に設置された姿勢(図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、基礎11の延びている方向として前後方向8が定義され、上下方向7及び前後方向8に直交する方向として左右方向9が定義されている。
【0026】
[第1実施形態に係る柱脚金物10]
以下、第1実施形態に係る柱脚金物10が説明される。
【0027】
図1図2に示されるように、柱脚金物10は、基礎11に木製の柱材12を接合する金物である。
【0028】
図1から図3に示されるように、基礎11は、水平方向(図1から図4においては前後方向8)に延びるコンクリート製の布基礎である。なお、基礎11は、公知の構成が採用され得るので、布基礎であってもベタ基礎などであってもよい。図3図4に示されるように、基礎11の上面からは、複数のアンカーボルト13が突出している。複数のアンカーボルト13は、1つの柱脚金物10に対して一対が配置されている。一対のアンカーボルト13にそれぞれ一対のナット14が締結されて、1つの柱脚金物10が基礎11の上面に固定される。
【0029】
図1図2に示されるように、木製の柱材12は、断面外形が四角形の四角柱である。柱材12の下面15から上方に向けてスリット16が形成されている。スリット16は、柱材12の下面15に対して前後方向8の中央部に位置し、上下方向7及び左右方向9に延びている。スリット16は、下面15、及び柱材12の左右両側の側面17にそれぞれ開口している。
【0030】
柱材12は、3つのピン孔18を有している。ピン孔18は、ドリフトピン19を挿入するための孔である。ピン孔18は、前後方向8に延びて、スリット16を横断している。ピン孔18は、柱材12の前面20及び後面21にそれぞれ開口している。
【0031】
図2図3に示されるように、柱脚金物10は、台座部22と、台座部22に上方から着脱自在に被せられる柱受部23と、を備えている。
【0032】
図3図4に示されるように、台座部22は、台座部22が基礎11上に置かれた状態において、ベース部材24と、ベース部材24から上方に延びる柱挿入部材25と、を備えている。
【0033】
ベース部材24は、上下方向7から視て外形が四角形の板材である。ベース部材24は、2つのボルト孔27を有している。2つのボルト孔27は、ベース部材24を上下方向7に貫通する孔である。2つのボルト孔27は、ベース部材24の外形である四角形において、対角線上であって、対角線の中央に対して対称な位置にそれぞれ位置している。ベース部材24が基礎11の上面に置かれた状態において、ボルト孔27にアンカーボルト13が挿通する。
【0034】
柱挿入部材25は、前後方向8から視て外形が四角形の板材である。本実施形態では、柱挿入部材25は、上下方向7を長手方向とする外形が長方形の板材である。柱挿入部材25の下面28は、例えば溶接によりベース部材24の上面26に固定されている。柱挿入部材25は、ベース部材24に対して前後方向8の中央に位置し、上下方向7及び左右方向9に沿って延びている。柱挿入部材25は、柱材12が柱脚金物10に取り付けられた状態において、柱材12のスリット16に挿入される。柱挿入部材25の左右方向9における幅は、ベース部材24の左右方向9における幅よりも小さい。左右方向9において、柱挿入部材25の側面32と、ベース部材24の側面33とは離れている。すなわち、柱挿入部材25の各側面32は、ベース部材24の各側面33より内側に位置する。したがって、柱挿入部材25の各側面32の外側には、ベース部材24の上面26が露出している。つまり、ベース部材24の上面26の外縁の全体は、柱挿入部材25によって覆われておらず上方へ露出している。
【0035】
柱挿入部材25は、3つのピン孔29を有している。ピン孔29は、ドリフトピン19を挿入するための孔である。ピン孔29は、柱挿入部材25を厚み方向、すなわち前後方向8に貫通している。ピン孔29は、柱挿入部材25の前面30及び後面31にそれぞれ開口している。
【0036】
図3図5に示されるように、柱受部23は、柱受部23が台座部22に被せられた組付状態において、柱受部材40と、柱受部材40から下方に延びる支持部材50と、を備えている。
【0037】
柱受部材40は、上下方向7から視て外形が四角形の板材である、柱受部材40は、柱脚金物10の組付状態において柱材12の下面15を支持する。柱受部材40の上面41及び下面42の外形は、柱材12の下面15の外形と略一致する。柱受部材40の上面41及び下面42の外形は、ベース部材24の上面26の外形と略一致する。
【0038】
柱受部材40は、挿通孔43を有している。挿通孔43は、柱受部材40を上下方向7に貫通する孔である。挿通孔43は、柱受部材40において前後方向8の中央部に位置し、左右方向9に細長に延びている。左右方向9は、四角形である柱受部材40の一辺と平行な方向の一例である。挿通孔43の形状は、上下方向7から視て長方形である。挿通孔43には、台座部22の柱挿入部材25が挿通可能である。柱挿入部材25が挿通孔43を容易に通過できるように、挿通孔43の前後方向8及び左右方向9における幅は、柱挿入部材25の前後方向8及び左右方向9における幅よりも若干大きい。なお、挿通孔43の幅が、柱挿入部材25の幅と略同一であってもよい。
【0039】
柱受部材40は、柱脚金物10の組付状態において柱挿入部材25を挟んで互いに反対側に位置する前側部分44及び後側部分45(第1部分及び第2部分の一例)を備えている。前側部分44及び後側部分45は、前後方向8に並んでいる。本実施形態では、前側部分44及び後側部分45は、左右方向9の両端側において接続されて連続している。挿通孔43は、前側部分44と後側部分45との間に形成された空間であるともいえる。
【0040】
図5に示されるように、支持部材50は、6つの分割片を有する。6つの分割片は、前板51、後板52、右板53、左板54、前補助板55、及び後補助板56である。前板51、後板52、右板53、左板54、前補助板55、及び後補助板56は、いずれも、外形が長方形の板材である。6つの板51−56は、柱受部材40の下面42に、例えば溶接により固定されている。
【0041】
4つの板51−54は、柱受部材40の下面42の外縁に位置している。前板51及び後板52は、長手方向が左右方向9となる姿勢で、柱受部材40の下面42の前端部及び後端部にそれぞれ固定されている。右板53及び左板54は、長手方向が前後方向8となる姿勢で、柱受部材40の下面42の右端部及び左端部にそれぞれ固定されている。4つの板51−54についても、隣り合って接触する2つの支持部材同士が、例えば溶接により固定されている。
【0042】
前板51の後面(短手方向の端面)に右板53の前面(長手方向の端面)が接しており、前板51の左面(長手方向の端面)に左板54の右面(短手方向の端面)が接している。残り3つの板52−54も、前板51と同様である。つまり、4つの板51−54のそれぞれについて、一の板の長手方向の端面が、他の板の短手方向の端面に接している。そのため、支持部材50は、水平面内のどの方向から力を受けても、一の板の端面が他の板の端面に当接できる。したがって、柱受部23の剛性が高められている。
【0043】
前補助板55及び後補助板56は、柱受部材40の外縁より内側に位置しており、それぞれが、前板51又は後板52に接触する位置にある。前補助板55の前面(長手方向の端面)は、前板51の後面(短手方向の端面)に左右方向9の中央部において接している。後補助板56は、前板51から後方に延びている。後板52の後面(長手方向の端面)は、後板52の前面(短手方向の端面)に左右方向9の中央部において接している。後補助板56は、後板52から前方に延びている。なお、前補助板55及び後補助板56は、上下方向7から視て挿通孔43と重複しない位置にある。
【0044】
図1から図3を参照して、柱脚金物10を用いた柱材12の基礎11への接合が説明される。
【0045】
図3に示されるように、台座部22の基礎11への取り付けに際して、基礎11の上面にベース部材24が置かれる。ベース部材24の2つのボルト孔27に、基礎11の上面から突出する2つのアンカーボルト13がそれぞれ挿通される。ベース部材24の上方から各アンカーボルト13に各ナット14が螺合されることにより、ベース部材24が基礎11に締結される。つまり、柱脚金物10の台座部22が基礎11に固定される。
【0046】
図2に示されるように、柱脚金物10の組付に際して、柱受部23が台座部22に上方から被せられる。台座部22の柱挿入部材25が、柱受部材40の挿通孔43に挿通された状態で、柱受部23が台座部22に向けて下げられる。柱受部23の支持部材50が台座部22のベース部材24の上面26に当接すると、柱脚金物10の組付が完了する。この組付状態では、支持部材50によって、柱受部材40とベース部材24とが上下方向7に離間される。組付状態では、柱挿入部材25は、挿通孔43を通じて柱受部材40よりも上方に突出しており、柱挿入部材25の3つのピン孔29は、柱受部23よりも上方に位置する。
【0047】
図1に示されるように、柱材12の下面15が柱受部材40の上面41に当接され、柱材12のスリット16に柱挿入部材25が挿入される。柱材12の荷重は、柱受部材40、支持部材50、及びベース部材24を介して、基礎11にかかる。3つのドリフトピン19が柱材12の3つのピン孔18及び柱挿入部材25の3つのピン孔29のそれぞれに挿入されると、3つのドリフトピン19により柱材12及び柱脚金物10が連結されて、柱材12が柱脚金物10に接合される。
【0048】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る柱脚金物10によれば、柱受部23が台座部22に上方から着脱自在に被せられるので、柱受部23が台座部22から外れた状態で、ベース部材24のボルト孔27に挿通された基礎11のアンカーボルト13に、ベース部材24の上方からナット14を締結して、ベース部材24が基礎11に固定される。ベース部材24が基礎11に固定された後に、柱受部23が台座部22に被せられて組付状態にされる。ベース部材24が基礎11に固定される際に、ベース部材24の上方が開放されているので、空間的な制限無く、ナット14がアンカーボルト13に締結できる。したがって、柱脚金物10の施工性の低下が防止できる。
【0049】
また、柱受部材40の前側部分44と後側部分45とが一体に構成される。
【0050】
また、柱脚金物10の構造耐力がよい。
【0051】
また、支持部材50がさらに柱受部材40の外縁の内側に配置されているので、柱脚金物10の構造耐力がより増加する。
【0052】
[第2実施形態に係る柱脚金物]
図6を参照して、第2実施形態に係る柱脚金物が説明される。第2実施形態に係る柱受部223は、第1実施形態に係る支持部材50の代わりに、支持部材250を備えている。第2実施形態におけるその他の構成は第1実施形態の構成と同様なので、詳細な説明が省略される。
【0053】
図6(A)に示されるように、柱受部223は、この柱受部223が台座部22に被せられた組付状態において、柱受部材40と、柱受部材40から下方に延びる支持部材250と、を備えている。
【0054】
図6(A)、図6(B)に示されるように、支持部材250は、4つの分割片を有する。4つの分割片は、右前板251、右後板252、左後板253、及び左前板254である。右前板251、右後板252、左後板253、及び左前板254は、いずれも、長手方向の中央部において屈曲された長方形の板材である。4つの板251−254は、柱受部材40の下面42に、例えば溶接により固定されている。
【0055】
4つの板251−254は、柱受部材40の下面42の外縁に位置している。右前板251は、左右方向9に延びる前部251aと、前後方向8に延びる右部251bと、前部251a及び右部251bを屈曲して接続する屈曲部251cと、を有する。右後板252は、前後方向8に延びる右部252aと、左右方向9に延びる後部252bと、右部252a及び後部252bを屈曲して接続する屈曲部252cと、を有する。左後板253は、左右方向9に延びる後部253aと、前後方向8に延びる左部253bと、後部253a及び左部253bを屈曲して接続する屈曲部253cと、を有する。左前板254は、前後方向8に延びる右部254aと、左右方向9に延びる前部254bと、右部254a及び前部254bを屈曲して接続する屈曲部254cと、を有する。
【0056】
4つの板251−254は、それぞれ、柱受部材40の外形である四角形の頂点に対応する位置に、屈曲部251c、252c、253c、254cが位置するように屈曲されている。4つの板251−254のうちの隣り合って接する2つの板の接続位置は、柱受部材40の外形である四角形の辺の略中央に対応する位置である。右前板251の前部251aと左前板254の前部254bとは、柱受部材40の前端部の略中央に対応する位置で接している。他の隣り合って接する2つの板についても同様である。
【0057】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態に係る柱脚金物によれば、支持部材250が一体物である場合と比べて、支持部材250の製造が容易である。また、支持部材250を構成する板251−254が四角形の頂点に対応する位置で屈曲されているので、柱脚金物10の構造耐力がよい。
【0058】
[第3実施形態に係る柱脚金物]
図7を参照して、第3実施形態に係る柱脚金物が説明される。第3実施形態に係る台座部322は、第1実施形態に係るベース部材24の代わりに、ベース部材324を備えている。第3実施形態におけるその他の構成は第1実施形態の構成と同様なので、詳細な説明が省略される。
【0059】
図7に示されるように、第3実施形態に係るベース部材324は、上下方向7から視て外形が四角形の板材である。ベース部材324は、上面26の4つの対角位置にそれぞれ位置する4つの突出部301を備えている。各突出部301は、外形が四角柱であり、上面26から上方に突出している。各突出部301は、上面26の外縁部分、すなわち、柱脚金物10の組付状態において支持部材50の下面が当接する部分よりも内側に位置する。
【0060】
突出部301の側面302は、支持部材50の内面に当接可能な面である。ここで、支持部材50の内面は、前板51の後面、後板52の前面、右板53の左面、及び左板54の右面を指している。柱脚金物10の組付状態において、4つの突出部301が、支持部材50の内面に、前後方向8の両向きに且つ左右方向9の両向きに当接するので、柱受部23が台座部322に水平方向において位置決めされる。
【0061】
[第3実施形態の作用効果]
第3実施形態に係る柱脚金物によれば、ベース部材324によって支持部材50を位置決めできる。
【0062】
[第4実施形態に係る柱脚金物]
図8を参照して、第4実施形態に係る柱脚金物が説明される。第4実施形態に係る柱受部423は、第1実施形態に係る柱受部材40の代わりに、柱受部材440を備えている。第4実施形態におけるその他の構成は第1実施形態の構成と同様なので、詳細な説明が省略される。
【0063】
図8(A)に示されるように、柱受部材440は、挿通孔443を有している。挿通孔443は、柱受部材440を上下方向7に貫通する孔である。挿通孔443は、柱受部材440において前後方向8の中央部に位置し、左右方向9に延びている。挿通孔43の形状は、上下方向7から視て概ね長方形である。ここで、柱受部材440は、挿通孔443の前後方向8(短手方向の一例)の幅を狭める方向に突出する2つの突片401を有している。2つの突片401は、挿通孔443の後面から前方に突出している。
【0064】
図8(B)に示されるように、柱脚金物10の組付状態において、2つの突片401が柱挿入部材25の後面に当接する。ここで、柱挿入部材25が挿通孔443を容易に通過できるように、挿通孔443の前後方向8の最大幅は、柱挿入部材25の前後方向8の幅よりも若干大きく形成されている。一方、挿通孔443の前後方向8の最小幅、すなわち突片401が位置する場所における挿通孔443の前後方向8の幅は、柱挿入部材25の前後方向8の幅と略同等に形成されている。そのため、挿通孔443内に挿入された柱挿入部材25は、挿通孔443に当接する。
【0065】
[第4実施形態の作用効果]
第4実施形態に係る柱脚金物によれば、挿通孔443に挿通された柱挿入部材25の位置精度がよい。
【0066】
[第5実施形態に係る柱脚金物510]
図9を参照して、第5実施形態に係る柱脚金物510が説明される。第5実施形態に係る柱脚金物510は、第1実施形態に係る柱受部23の代わりに、柱受部523を備えている。第5実施形態におけるその他の構成は第1実施形態の構成と同様なので、詳細な説明が省略される。
【0067】
図9に示されるように、柱受部523は、上部に位置する柱受部分540と、下部に位置して柱受部分540から下方に延びる支持部分550と、を備えている。柱受部523は、同一材料、例えば木材により形成された一体物であり、外形が四角柱である。したがって、柱受部分540及び支持部分550は一体である。柱受部分540は、第1実施形態に係る柱受部材40に相当し、支持部分550は、第1実施形態に係る支持部材50に相当する。
【0068】
柱受部523は、柱受部分540及び支持部分550を上下方向7に貫通する挿通孔543を有している。挿通孔543には、台座部22の柱挿入部材25が挿通可能である。柱受部523は、柱脚金物510の組付状態において柱挿入部材25を挟んで互いに反対側に位置する前側部分544及び後側部分545(第1部分及び第2部分の一例)を備えている。
【0069】
柱受部分540の上面541は、柱材12の下面15が当接する面である。
【0070】
支持部分550は、下方に開口する2つの逃し孔501を有している。2つの逃し孔501は、柱脚金物10の組付状態において、台座部22の2つのボルト孔27にそれぞれ対応する位置にある。各ボルト孔27内には、台座部22のボルト孔27から突出するアンカーボルト13及びアンカーボルト13に螺合されたナット14が収納される。
【0071】
[変形例]
第1から第4実施形態に係る柱受部材40、440では、前側部分44及び後側部分45が連続し、前側部分44及び後側部分45の間に挿通孔43が形成されているが、前側部分44及び後側部分45は、分離独立した2つの部材として構成されてもよい。
【0072】
前側部分44及び後側部分45が2つの部材として構成された場合、台座部22の柱挿入部材25は、前側部分44及び後側部分45の間を通過して、柱受部材40、440よりも上方に突出する。また、支持部材50は、前側部分44及び後側部分45のそれぞれに設けられる。支持部材50は、前側部分44の外縁に沿って配置されると共に、後側部分45の外縁に沿って配置されてもよい。支持部材50は、前側部分44の内側に配置されてもよく、後側部分45の内側に配置されてもよい。また、ベース部材24は、前側部分44に配置された支持部材50の位置決め面と、後側部分45に配置された支持部材50の位置決め面とを、有してもよい。
【0073】
第1から第4実施形態に係る柱受部23、223では、支持部材50、250の少なくとも一部は、柱受部材40、440の外縁に沿って位置しているが、支持部材50、250は、柱受部材40、440の外縁に配置されず、外縁の内側にのみ位置していてもよい。
【0074】
第1実施形態に係る柱受部23では、支持部材50は、6つの板51−56からなっており、第2実施形態に係る柱受部223では、支持部材250は、4つの板251−254からなっているが、支持部材50、250は、一体物であってもよい。
【0075】
第5実施形態に係る柱受部523は、木材で形成された一体物であるが、柱受部523は、他の材料、例えば、硬質ゴム、モルタル、及びコンクリートのいずれかで形成された一体物であってもよい。
【0076】
第1から第5実施形態に係る柱脚金物10、510では、台座部22、322は、1つの柱挿入部材25を有し、柱受部23、223、423、523は、1つの挿通孔43、443、534を有しているが、この構成に限定されない。台座部22、322は、複数の柱挿入部材25を有し、柱受部23、223、423、523は、複数の柱挿入部材25と同数の挿通孔43、443、534を有してもよい。複数の板状の柱挿入部材25は、平行に(本実施形態では、前後方向8に沿って並んで)配置されてもよく、直列に(本実施形態では、左右方向9に沿って並んで)配置されてもよい。
【0077】
台座部22が、平行に配置された2つの板状の柱挿入部材25を有する場合、柱受部23は、2つの柱挿入部材25にそれぞれ対応する2つの挿通孔43を備えてもよい。この場合、柱受部23は、柱材12を支持する3つの部分を有しており、3つの部分のうちの隣り合う2つの部分は、2つの挿通孔43のいずれかを挟んで互いに反対側に位置する。各挿通孔43を挟む2つの部分が、第1部分44及び第2部分45である。また、柱受部23は、2つの柱挿入部材25の双方に対応した1つの挿通孔43を備えてもよい。この場合、柱受部23は、柱材12を支持する2つの部分として、第1部分44及び第2部分45を有しており、第1部分44及び第2部分45は、挿通孔43を挟んで互いに反対側に位置する。
【0078】
台座部22は、上下方向7から視てT字状又は十字状の柱挿入部材25を有してもよい。この場合、柱受部23は、T字状又は十字状の柱挿入部材25に対応するT字状又は十字状の挿通孔43を有する。柱受部23がT字状の挿通孔43を有する場合、柱受部23は、柱材12を支持する3つの部分を有する。3つの部分のうちの隣り合う2つの部分は、T字状の挿通孔の縦軸部分又は横軸部分のいずれかを挟んで互いに反対側に位置する。縦軸部分又は横軸部分を挟む2つの部分が、第1部分44及び第2部分45である。柱受部23が十字状の挿通孔43を有する場合も、T字状の挿通孔43の場合と同様である。
【0079】
第1から第5実施形態に係る柱脚金物10、510を用いて基礎11に接合される木製の柱材12は、無垢材であっても、合板又は集積材であってもよい。柱材12は、ラーメン構造又はCLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)構造に用いられる柱であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10、510・・・木造柱脚金物
11・・・基礎
12・・・柱材
22、322・・・台座部
23、223、423、523・・・柱受部
24、324・・・ベース部材
25・・・柱挿入部材
27・・・ボルト孔
40、440・・・柱受部材
43、443、543・・・挿通孔
44、544・・・前側部分(第1部分の一例)
45、545・・・後側部分(第2部分の一例)
50、250・・・支持部材
51・・・前板
52・・・後板
53・・・右板
54・・・左板
55・・・前補助板
56・・・後補助板
251・・・右前板(分割片の一例)
252・・・右後板(分割片の一例)
253・・・左後板(分割片の一例)
254・・・左前板(分割片の一例)
301・・・突出部
302・・・側面(位置決め面の一例)
401・・・突片


【要約】
【課題】施工性の低下を防止できる木造柱脚金物を提供すること。
【解決手段】柱脚金物10は、台座部22と、当該台座部22に上方から着脱自在に被せられる柱受部23と、を備えている。上記台座部22は、ボルト孔27を有するベース部材24と、上記ベース部材24より上方に延びる柱挿入部材25と、を備えている。上記柱受部23は、当該柱受部23が上記台座部22に被せられた組付状態において、上記ベース部材24よりも上方に位置し、上記柱挿入部材25を挟む前側部分44及び後側部分45を有する柱受部材40と、上記柱受部材40より下方に延びて、上記柱受部材40と上記ベース部材24とを上下に離間させて上記ベース部材24に当接する支持部材50と、を備えている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9