(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6376244
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ダイナモメータ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 3/16 20060101AFI20180813BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
G01L3/16 Z
G01M15/02
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-86745(P2017-86745)
(22)【出願日】2017年4月26日
【審査請求日】2018年4月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利道
(72)【発明者】
【氏名】藤本 善則
(72)【発明者】
【氏名】宇賀持 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 伸夫
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0107372(US,A1)
【文献】
特開2012−88209(JP,A)
【文献】
特開2011−112372(JP,A)
【文献】
特開2010−2296(JP,A)
【文献】
特開平6−109597(JP,A)
【文献】
特開昭55−58429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/16− 3/24
G01M15/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体接続部を有する回転軸の先端部分がハウジングから突出したダイナモメータと、
上記回転軸の外周面の一部が、接線方向に沿った平面に形成された被ロック面と、
支持台に固定的に設けられ、上記回転軸の接線方向に延びたガイドレール部と、
上記ガイドレール部に沿って挿入され、かつ該ガイドレール部と上記被ロック面との間に介在することで上記回転軸の回転を規制するロックプレートと、
を備えてなるダイナモメータ装置。
【請求項2】
上記回転軸の先端部分の周囲を囲むカバーと、
上記ガイドレール部の延長線上において上記カバーに設けられた開口部と、
をさらに備え、
上記ロックプレートは上記開口部を通して挿入される、
ことを特徴とする請求項1に記載のダイナモメータ装置。
【請求項3】
上記回転軸は、ダイナモメータ側の主軸と供試体接続部となる回転部材との間にトルクメータが介在しており、
上記カバーは、上記トルクメータの周囲を覆う保護カバーである、
ことを特徴とする請求項2に記載のダイナモメータ装置。
【請求項4】
上記回転軸は、ダイナモメータ側の主軸と供試体接続部となる回転部材との間にトルクメータが介在しており、
上記被ロック面は、上記トルクメータよりもダイナモメータ側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイナモメータ装置。
【請求項5】
上記カバーは、上記開口部を開閉可能に覆う扉を備えている、ことを特徴とする請求項2または3に記載のダイナモメータ装置。
【請求項6】
上記ロックプレートは、
当該ロックプレートを起立状態に保持し得る幅を有し、上記ガイドレール部に沿って摺動するベース部と、
このベース部から上記回転軸の軸線と直交する平面に沿って立ち上がり、かつ上縁に上記被ロック面に接するロック面を備えたプレート部と、
を備えている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイナモメータ装置。
【請求項7】
上記プレート部は、
上記ベース部に固定されるとともにハンドル部を備えた本体部と、
この本体部の上面にネジ部材を介して着脱可能に取り付けられ、かつ上記ロック面を有するチップ部と、
を備え、
上記本体部と上記チップ部との境界面に隙間調整用シムが挟み込まれる、
ことを特徴とする請求項6に記載のダイナモメータ装置。
【請求項8】
上記ガイドレール部は、挿入方向の先端部に、上記ロックプレートを上記被ロック面との係合位置に位置決めするストッパを備えている、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のダイナモメータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のパワートレインやエンジンなどの性能評価や試験を行うダイナモメータ装置に関し、特に、供試体の着脱時にダイナモメータの回転軸を回転方向にロックするロック機構を備えたダイナモメータ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のパワートレインやエンジン単体あるいはトランスミッションなどを供試体として、性能評価や試験を行うダイナモメータ装置が知られている。このダイナモメータ装置は、ダイナモメータの回転軸の先端に、例えばトランスミッションのドライブシャフトやエンジンのクランクシャフトなどの供試体側の回転軸が接続されるように構成されている。
【0003】
このようなダイナモメータ装置においては、供試体の接続時あるいは取り外し時に、ダイナモメータの回転軸が自由に回転してしまうことから、作業性が悪い。ダイナモメータ装置がディスクブレーキ等のブレーキ機構を具備する場合には、このブレーキ機構を作動させて、回転軸を固定することが可能であるが、ブレーキ機構を具備しない場合には、例えばスパナ等の工具を用いてダイナモメータの回転軸の回転を規制しながら、供試体の接続作業を行う必要があった。
【0004】
特許文献1には、トルクメータの校正時のロック機構ではあるが、回転軸のフランジとボルト結合してロックを行うロック部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−109309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるロック機構は、回転軸の固定が必要な際にロック部材をボルトで取り付け、また回転軸を固定せずに試験・測定を行う際にはボルトを外してロック部材を取り外す、という面倒な作業が必要な構成であり、作業性が悪い。しかも、例えば回転軸の先端部分がカバーで覆われている場合には、カバーの脱着も必要となってしまい、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るダイナモメータ装置は、
供試体接続部を有する回転軸の先端部分がハウジングから突出したダイナモメータと、
上記回転軸の外周面の一部が、接線方向に沿った平面に形成された被ロック面と、
支持台に固定的に設けられ、上記回転軸の接線方向に延びたガイドレール部と、
上記ガイドレール部に沿って挿入され、かつ該ガイドレール部と上記被ロック面との間に介在することで上記回転軸の回転を規制するロックプレートと、
を備えて構成されている。
【0008】
このような構成では、回転軸の被ロック面がガイドレール部と平行となった回転位置においてロックプレートをガイドレール部に沿って挿入すれば、支持台に支持されているガイドレール部と直線状の被ロック面との間にロックプレートが入り込むため、回転軸が回転方向にロックされる。従って、このロック状態において、供試体の接続や取り外しを容易に行うことができる。また、ロックプレートを引き抜けば、簡単にロック解除状態となる。
【0009】
本発明の好ましい一つの態様においては、
上記回転軸の先端部分の周囲を囲むカバーと、
上記ガイドレール部の延長線上において上記カバーに設けられた開口部と、
をさらに備え、
上記ロックプレートは上記開口部を通して挿入される。
【0010】
例えば、上記回転軸は、ダイナモメータ側の主軸と供試体接続部となる回転部材との間にトルクメータが介在しており、
上記カバーは、上記トルクメータの周囲を覆う保護カバーである。
【0011】
ダイナモメータ装置に用いられる高性能のトルクメータは、外部からの衝撃等に弱いので、一般に保護カバーによって覆われて保護されている。上記の態様では、この保護カバーとなるカバーを取り外したりすることなくロックプレートの挿入および引き抜きつまり回転軸のロックおよびロック解除を簡単に行うことができる。
【0012】
また本発明の一つの態様においては、
上記回転軸は、ダイナモメータ側の主軸と供試体接続部となる回転部材との間にトルクメータが介在しており、
上記被ロック面は、上記トルクメータよりもダイナモメータ側に設けられている。
【0013】
つまり、トルクメータを介さずにダイナモメータの主軸側が回転方向に固定される。
【0014】
本発明の好ましい一つの態様では、上記カバーは、上記開口部を開閉可能に覆う扉を備えている。従って、試験・測定等の運転時には、開口部を通した異物の侵入等が回避される。
【0015】
上記ロックプレートは、好ましい一つの実施例では、
当該ロックプレートを起立状態に保持し得る幅を有し、上記ガイドレール部に沿って摺動するベース部と、
このベース部から上記回転軸の軸線と直交する平面に沿って立ち上がり、かつ上縁に上記被ロック面に接するロック面を備えたプレート部と、
を備えている。
【0016】
この構成では、ロックプレートは自身で起立状態を保持するので、作業者は、ロックプレートの挿入および引き抜きを容易に行うことができる。
【0017】
より好ましい一つの態様では、
上記プレート部は、
上記ベース部に固定されるとともにハンドル部を備えた本体部と、
この本体部の上面にネジ部材を介して着脱可能に取り付けられ、かつ上記ロック面を有するチップ部と、
を備え、
上記本体部と上記チップ部との境界面に隙間調整用シムが挟み込まれるように構成されている。
【0018】
従って、上記のシムの交換あるいは枚数の変更等によって、被ロック面とロック面との間に生じる隙間の調整が可能となる。
【0019】
さらに望ましくは、上記ガイドレール部は、挿入方向の先端部に、上記ロックプレートを上記被ロック面との係合位置に位置決めするストッパを備えている。従って、挿入時には、単に押し込むだけで所定の位置に位置決めされる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、非常に簡単な操作で、ダイナモメータの回転軸を回転方向にロックしかつロック解除することができる。従って、供試体の接続や取り外しを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例のダイナモメータ装置の前端部の側面図。
【
図2】本発明の一実施例のダイナモメータ装置の正面図。
【
図3】本発明の一実施例のダイナモメータ装置の前端部の斜視図。
【
図4】カバーを取り除いて示すダイナモメータ装置前端部の側面図。
【
図5】カバーを取り除いて示すダイナモメータ装置前端部の平面図。
【
図6】ロック機構を他の部品を取り除いて示した正面図。
【
図7】ロック機構を他の部品を取り除いて示した平面図。
【
図9】カバーを取り除いて示すロック機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1〜
図3は、この発明に係るダイナモメータ装置1の一実施例を示している。ダイナモメータ装置1は、基台2の上に、回転軸線を水平とした姿勢でもって搭載されたダイナモメータ3を備えている。このダイナモメータ3の回転軸の先端部は、ダイナモメータ3のハウジング4の前端面から突出しており、この突出部分を覆うように、保護カバーとなるカバー5が設けられている。カバー5は、支持台6の上面に支持されている。そして、回転軸の先端面は、図外の供試体を直接にあるいは適宜な治具を介して取り付けるための供試体接続部7となっており、
図2に示すようにカバー5の前面に設けられた円形の開口部8を通して外部へ向けて露出している。なお、
図1および
図3は、カバー5を備えたダイナモメータ装置1の前端部のみを示している。
【0024】
図4および
図5は、カバー5を取り除いて回転軸先端部分の構成を示したものである。図示するように、回転軸先端部分は、複数の回転部材をフランジ継ぎ手の形で軸方向に連結した構成となっている。具体的には、ハウジング4から突出した回転軸先端部分は、電動機の回転軸の先端に取り付けられる主軸となるカップリング11と、このカップリング11に取り付けられる円盤状のアダプタフランジ12と、供試体接続部を構成する円盤状のカップリングフランジ13と、アダプタフランジ12とカップリングフランジ13との間に配置されたトルクメータ14と、を備えている。
【0025】
トルクメータ14の下方位置には、トルクメータ14から無線で送信された検出信号を受信して外部の操作測定ユニット(コンピュータ)に出力するステータ部17が配置されている。このステータ部17は、トルクメータ14の周面の一部を囲むように構成されており、支持台6の上に支持されている。
【0026】
カップリング11は、内周面が電動機の回転軸に嵌合してキー結合される円筒部21と、この円筒部21のハウジング4寄りの一端に形成された円盤状の第1フランジ部22と、他端に形成された円盤状の第2フランジ部23と、を備えている。
【0027】
アダプタフランジ12は、中心に円形の開口部を備えた円環状をなしている。このアダプタフランジ12は、カップリング11の第2フランジ部23に隣接しており、外周部に周方向に沿って複数個等間隔に配置された図示せぬ軸方向のボルトによって、両者が互いに結合されている。
【0028】
トルクメータ14は、いわゆる非接触フランジ型トルクメータであり、アダプタフランジ12に複数の軸方向のボルト(図示せず)によって固定される円盤状の第1フランジ25と、カップリングフランジ13に複数の軸方向のボルト(図示せず)によって固定される円盤状の第2フランジ26と、両者間のセンサ部27と、を備えている。センサ部27は、第1フランジ25と第2フランジ26との間に作用しているトルクを検出し、上述したように、非接触の形でステータ部17に検出信号を出力する。
【0029】
カップリングフランジ13は、中心に円形の開口部を備えた円環状をなしており、トルクメータ14とは反対側の面が、供試体接続部7となっている。この供試体接続部7となる面には、図外の供試体を直接にあるいは適宜な治具を介して固定するための複数のネジ孔29(
図2参照)が設けられている。
【0030】
カバー5は、
図1〜
図5に示すように、支持台6の上においてカップリング11の第2フランジ部23付近からカップリングフランジ13の先端面(供試体接続部7)付近までの長さ範囲の周囲を囲む箱状部31と、この箱状部31の背面からハウジング4の前端面へ向けて円筒状に延びた円筒部32と、を備えており、カップリング11の第1フランジ部22付近の部分は円筒部32によって覆われている。これらの箱状部31および円筒部32は、適宜な材料の金属板から構成されている。
【0031】
箱状部31は、直方体の2箇所の角部を45°程度の傾斜面としたような異形の箱型をなしている。具体的には、箱状部31は、前述の円形の開口部8が設けられた前面壁34と、一対の側壁35と、上面の水平面に沿った上部壁36と、この上部壁36の左右両端と上記側壁35の上端とを接続する一対の傾斜壁37と、上記円筒部32が取り付けられた背面壁38と、から構成されている。トルクメータ14は、ステータ部17とともに箱状部31の中に収容されており、従って、該カバー5は、トルクメータ14を他部品との不用意な接触などから保護する保護カバーとして機能している。
【0032】
なお、図示例では、カバー5は、箱状部31および円筒部32を含む全体が、中心を通る分割面39において左右の構成要素5A,5Bに2分割されて構成されている。一対の傾斜壁37の各々には、支持台6から取り外して2分割した各構成要素5A,5Bを持つための略U字形のハンドル40が設けられている。
【0033】
ここで、一方の側壁35の下部の後方寄り部分には、後述するロック機構に対応して、上下に細長い長方形の開口部41が形成されている(
図8参照)。この開口部41は、該開口部41を外側から開閉可能に覆う板状の扉42を備えている。扉42は、開口部41の前側の側縁に沿った回転軸を有するヒンジ43(
図3参照)によって回動可能に支持されている。扉42は、少なくとも、開口部41を覆う閉位置においては、例えば永久磁石等を利用したラッチ機構により、その位置が保持されるように構成することが望ましい。
【0034】
次に、本発明の要部であるロック機構について、
図6〜
図9を参照して説明する。ロック機構は、カップリング11の第2フランジ部23に形成された一対の被ロック面51と、カバー5の開口部41を通して挿入されるロックプレート52と、このロックプレート52を支持台6上で案内するガイドレール部53と、から主に構成されている。
図6および
図9は、ロック機構以外の部品を取り除いてロック機構の構成要素を図示したものであり、
図7はさらにカップリング11をも取り除いて図示してある。
【0035】
カップリング11の第2フランジ部23には、
図6および
図9に示すように、外周面の一部を接線方向に沿った平面に形成してなる被ロック面51が設けられている。図示例では、高速回転時のアンバランスを抑制するために、互いに180°離れた位置に、一対の被ロック面51が形成されている。なお、被ロック面51は少なくとも1つあればよく、さらには、3つあるいは4つとさらに多数の被ロック面51を等角度間隔で設けることも可能である。
【0036】
ガイドレール部53は、ダイナモメータ3の軸方向の位置として、被ロック面51つまりカップリング11の第2フランジ部23の位置に対応する位置に設けられている。換言すれば、第2フランジ部23の直下に位置している。図示例では、
図7に示すように、支持台6の上面に互いに平行に取り付けた断面矩形の棒状をなす一対のレール部材55と、この一対のレール部材55の間に構成されるガイド溝部56の先端を塞ぐように支持台6に取り付けられたストッパ部材57と、からガイドレール部53が構成されている。つまり、平坦面をなす支持台6の上面を利用してガイド溝部56が形成されている。このガイド溝部56は、ダイナモメータ3の回転軸線に対し直交する平面に沿った直線状をなしている。また、ダイナモメータ3の回転軸の接線方向に沿って延びている。そして、ガイド溝部56の延長線上(詳しくはストッパ部材57を具備せずに開放されている側の延長線上)に、上述したカバー5の開口部41が位置している。ガイド溝部56は、少なくともダイナモメータ3の回転軸線の直下を僅かに越える位置まで延びている。換言すれば、ストッパ部材57は、開口部41側から延びるガイド溝部56がダイナモメータ3の回転軸線の直下を越えた位置に配置されている。ガイド溝部56の開口端を構成する各レール部材55の先端部は、ロックプレート52をスムースに挿入可能なように、角部がC面取り加工されている。
【0037】
なお、ガイドレール部は、ロックプレート52を直線的に移動可能にガイドし得る構成であればよく、上記実施例の構成に限定されるものではない。
【0038】
ロックプレート52は、
図6および
図9に示すように、上記ガイド溝部56に摺動可能に嵌合する幅を有する断面矩形の棒状をなすベース部60と、このベース部60からダイナモメータ3の回転軸線と直交する平面に沿って立ち上がったプレート部61と、このプレート部61の一方の端縁とベース部60の端部上面とに跨って略L字形に形成されたハンドル部62と、を備えている。
【0039】
上記ベース部60は、ガイド溝部56に対応した幅の細長い帯状の底面を有しているが、この底面は、ロックプレート52を起立状態に保持し得るだけの幅を有している。つまり、ロックプレート52は、支持台6の上面に置いたときに、自立し得るものとなっている。従って、起立状態のまま押し込んで行くことで、一対のレール部材55の間のガイド溝部56に容易に係合する。ガイド溝部56に係合した状態では、ベース部60の両側面がレール部材55の内側面に接した状態となるので、ロックプレート52の起立状態がより確実に保持される。
【0040】
プレート部61は、ハンドル部62とは反対側となる先端部の上縁に、上記被ロック面51に接するロック面64を備えている。図示例では、被ロック面51の長さ(弦に沿った長さ)にほぼ一致する長さのロック面64が一段高くなった形に形成されている。このロック面64は、被ロック面51と面接触し得るように、被ロック面51に対応した平面をなしている。また、ロック面64の両端の角部は、斜めに面取りされた傾斜面64a,64bとなっている。ガイド溝部56に沿って挿入されたロックプレート52がストッパ部材57に当接して位置決めされたときに、ロック面64は、回転軸線の直下に位置している。なお、上記ベース部60の底面と上記ロック面64とは、互いに平行である。
【0041】
詳しくは、上記プレート部61は、ベース部60に固定されるとともにハンドル部62に連結された長方形の本体部61Aと、この本体部61Aの平坦な上面の上に一対のボルト66によって着脱可能に固定されたチップ部61Bと、の2部材から構成されている。ロック面64は、チップ部61Bの上縁に形成されている。チップ部61Bは、被ロック面51を有するカップリング11を構成する鋼材よりも柔らかい金属材料、例えば真鍮によって構成されている。これにより、ロック操作時にカップリング11の周面に衝突したような場合に、チップ部61B側が変形し、カップリング11側の損傷や変形が回避される。
【0042】
また、着脱可能に取り付けられるチップ部61Bと本体部61Aとの境界面67には、図示しない隙間調整用のシム(薄い金属板)が挟み込まれている。従って、厚さの異なるシムへの交換あるいは挟み込むシムの枚数の変更によって、ベース部60の底面からロック面64までの距離の調整が可能である。つまり、ロック状態において被ロック面51とロック面64との間に残存する隙間を、最適量に調整することができる。
【0043】
プレート部61(本体部61A)は、軽量化のための窓状の開口部65を備えている。この開口部65は、荷重伝達経路となるロック面64の直下を避けた位置に設けられている。
【0044】
ハンドル部62は、作業者がロックプレート52を持ち上げたり、カバー5の開口部41を通して出し入れするときに、手で持つことができるように、丸棒を略L字形に曲げた形に構成されている。図示例では、ロックプレート52をガイドレール部53に挿入した状態(ストッパ部材57に当接した位置)においてハンドル部62を含めたロックプレート52全体がカバー5の中に位置する(換言すれば扉42を閉めることができる)構成となっているが、ロックプレート52を挿入した状態においてハンドル部62部分が開口部41から突出しているように構成してもよい。
【0045】
上記のように構成されたロック機構を備えた実施例のダイナモメータ装置1においては、例えば供試体側の回転軸の接続あるいは取り外しに際して、ロック機構を利用してダイナモメータ3の回転軸を回転方向に容易にロックすることができる。具体的には、カバー5の開口部41を覆う扉42を開き、ここから
図9に示すように、ロックプレート52を挿入する。なお、
図9は、挿入前の位置と挿入後の位置との2箇所においてロックプレート52を示してある。
【0046】
ロックプレート52の挿入は、開口部41を通して差し入れたベース部60の先端部を支持台6の上面に乗せ、そのままガイドレール部53へ向けて押し込んで行けばよい。回転軸側の被ロック面51が下方へ向いた姿勢で回転軸が停止していれば、ロックプレート52のロック面64が自然に被ロック面51に係合する。仮に、回転軸の回転位置が所定の位置にない場合は、例えば回転軸先端の供試体接続部7を手指で回転させて被ロック面51をロック面64に合わせることで、両者が係合可能となる。ロック面64は端部に傾斜面64aを有するので、滑らかな係合が可能である。ロックプレート52をストッパ部材57で規制される位置まで押し込めば、ロックプレート52が被ロック面51とガイド溝部56(支持台6の上面)との間に介在する状態となることから、回転軸の回転が不可能となり、回転軸が回転方向にロックされる。
【0047】
また、このロック状態において、ロックプレート52は、ベース部60の幅が比較的広いことおよびベース部60が一対のレール部材55で挟まれることによって、起立状態に保持され、回転軸の軸方向に倒れることがない。従って、ボルトによる固定等は不要であり、ロックプレート52の挿入作業のみで簡単にロックすることができる。
【0048】
上記実施例では、この回転軸のロックがトルクメータ14よりも電動機側であるカップリング11に対してなされる。つまり、電動機の回転軸がトルクメータ14を介さずに直接に固定される形となり、堅固な固定が可能である。また、ロックプレート52が係合することにより生じる回転軸半径方向に沿った荷重がトルクメータ14へは作用せず、高精度なトルクメータ14を傷める虞がない。
【0049】
次に、供試体の接続等が完了してロック解除する際には、カバー5の開口部41を通して、ロックプレート52を引き抜けばよい。ロックプレート52の引き抜き後、開口部41の扉42を閉めることによって、カバー5は再びトルクメータ14周囲を確実に保護した状態となる。
【0050】
このように、上記実施例では、カバー5を取り外すことなくロックプレート52による回転軸のロックおよびロック解除が可能である。なお、カバー5は、例えばトルクメータ14の保守などの際に、前述したように、2分割して取り外すことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…ダイナモメータ装置
3…ダイナモメータ
5…カバー
7…供試体接続部
11…カップリング
12…アダプタフランジ
13…カップリングフランジ
14…トルクメータ
23…第2フランジ部
41…開口部
42…扉
51…被ロック面
52…ロックプレート
53…ガイドレール部
55…レール部材
56…ガイド溝部
57…ストッパ部材
60…ベース部
61…プレート部
62…ハンドル部
64…ロック面
【要約】
【課題】ダイナモメータの回転軸の回転方向へのロックおよびロック解除を、簡単に行えるようにする。
【解決手段】ダイナモメータ装置1は、ダイナモメータ3の先端部に、トルクメータの周囲を覆うカバー5を備える。カバー5は、側面に、扉42を備えた開口部41を有し、この開口部41を通してロックプレート52を挿入することで、回転軸がロックされる。ロックプレート52は、ガイドレール部に摺動可能にガイドされる。回転軸の外周面の一部に、接線方向に沿った被ロック面が設けられており、ロックプレート52のロック面64が係合することで、回転軸がロックされる。
【選択図】
図8