(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量平均分子量が15,000超であるゴム成分と、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含有する補強用充填剤と、変性ブタジエンポリマーとを含有し、
前記変性ブタジエンポリマーが、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上15,000以下であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマーである、ゴム組成物。
前記変性ブタジエンポリマーの粘度が、変性前のブタジエンポリマーの粘度に対して、150〜240%である、請求項1に記載のゴム組成物。ただし、前記粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の配合剤である変性ブタジエンポリマー、及び、上記変性ブタジエンポリマーを含有するゴム組成物について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[特定変性BR]
本発明の配合剤である変性ブタジエンポリマーは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(以下、「特定官能基」とも言う)を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上15,000以下であり、分子量分布が2.0以下である、ブタジエンポリマー(ブタジエン重合体)である。
以下、本発明の配合剤である変性ブタジエンポリマーを「特定変性BR」とも言う。
【0012】
特定変性BRはこのような構成をとることにより、補強用充填剤を含有するゴム組成物に用いたときに、ゴム組成物中の補強用充填剤が優れた分散性を示すものと考えられる。
その理由は詳細には明らかではないが、特定変性BRが有する特定官能基中の窒素原子及びケイ素原子が補強用充填剤と相互作用することで補強用充填剤の凝集を防ぐためと考えられる。ここで、上述のとおり、本発明者らの検討の結果、変性BRのサイズ(重量平均分子量、分子量分布)と補強用充填剤の分散性との間に臨界性が見られることが分かっている。これは、変性BRのサイズ(重量平均分子量、分子量分布)が上述した特定の範囲にある場合に、補強用充填剤同士の凝集体の隙間に極めて介入し易くなり、結果として、補強用充填剤の分散性が大幅に向上するためと推測される。
【0013】
以下、特定変性BRについて詳述する。
上述のとおり、特定変性BRは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上15,000以下であり、分子量分布が2.0以下である、ブタジエンポリマー(変性ブタジエンポリマー)である。
【0014】
〔特定官能基〕
上述のとおり、特定変性BRは、窒素原子及びケイ素原子を含む官能基(特定官能基)を末端に有する。なお、特定官能基は少なくとも1つの末端に有すればよい。
【0015】
<好適な態様>
特定官能基は窒素原子及びケイ素原子を含む官能基であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(−NR
2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0016】
特定官能基は、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(M)で表される基であることが好ましい。
【0018】
上記式(M)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
上記式(M)中、Lは、2価の有機基を表す。
【0019】
上記置換基は1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0020】
上記式(M)中、R
1は、本発明の効果がより優れる理由から、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1〜10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜18)であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
複数あるR
1は同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
R
2は、本発明の効果がより優れる理由から、ヒドロカルビルオキシ基(−OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10)であることがより好ましい。
【0022】
上述のとおり、上記式(M)中、Lは、単結合又は2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1〜10)、芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6〜18)、−O−、−S−、−SO
2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(−C
mH
2mO−:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1〜10)であることが好ましい。
【0023】
上記式(M)中、nは、0〜2の整数を表す。
nは、本発明の効果がより優れる理由から、2であることが好ましい。
【0024】
上記式(M)中、mは、1〜3の整数を表す。
mは、本発明の効果がより優れる理由から、1であることが好ましい。
【0025】
上記式(M)中、n及びmは、n+m=3の関係式を満たす。
【0026】
上記式(M)中、*は、結合位置を表す。
【0027】
〔重量平均分子量〕
上述のとおり、特定変性BRの重量平均分子量(Mw)は、1,000以上15,000以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、5,000以上10,000未満であることが好ましい。
【0028】
〔数平均分子量〕
特定変性BRの数平均分子量は特定変性BRの重量平均分子量及び分子量分布が特定の範囲にあれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000以上15,000以下であることが好ましく、5,000以上10,000未満であることがより好ましい。
【0029】
〔分子量分布〕
上述のとおり、特定変性BRの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以下である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、1.7以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
下限は特に制限されないが、通常、1.0以上である。
【0030】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0031】
〔ミクロ構造〕
<ビニル構造>
特定変性BRにおいて、ビニル構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜50モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることがより好ましい。
ここで、ビニル構造の割合とは、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0032】
<1,4−トランス構造>
特定変性BRにおいて、1,4−トランス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜70モル%であることが好ましく、30〜50モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4−トランス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0033】
<1,4−シス構造>
特定変性BRにおいて、1,4−シス構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、10〜50モル%であることが好ましく、20〜40モル%であることがより好ましい。
ここで、1,4−シス構造の割合とは、ブタジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0034】
なお、以下、「ビニル構造の割合(モル%)、1,4−トランス構造の割合(モル%)、1,4−シス構造の割合(モル%)」を「ビニル/トランス/シス」とも表す。
【0035】
〔ガラス転移温度〕
特定変性BRのガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、−100〜−60℃であることが好ましく、−90〜−70℃であることがより好ましく、−85〜−75℃であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0036】
〔粘度〕
特定変性BRの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、1,000〜10,000mPa・sであることが好ましく、3,000〜6,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性BRを変性する前のブタジエンポリマーの粘度は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、500〜5,000mPa・sであることが好ましく、1,500〜3,000mPa・sであることがより好ましい。
また、特定変性BRの粘度は、本発明の効果がより優れる理由から、変性前のブタジエンポリマーの粘度に対して、150〜240%であることが好ましい。以下、変性前の特定変性BRに対する変性後の特性変性BRの粘度を「粘度(変性後/変性前)」とも言う。
なお、本明細書において、粘度は、JIS K5600−2−3に準じて、コーンプレート型粘度計を用いて測定したものとする。
【0037】
〔特定変性BRの製造方法〕
特定変性BRを製造する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。分子量及び分子量分布を特定の範囲する方法は特に制限されないが、開始剤とモノマーと停止剤との量比、反応温度、及び、開始剤を添加する速度などを調整する方法などが挙げられる。
【0038】
<好適な態様>
特定変性BRを製造する方法の好適な態様としては、例えば、有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合し、その後、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤を用いて重合を停止する方法(以下、「本発明の方法」とも言う)が挙げられる。本発明の方法を用いた場合、得られる特定変性BRは、補強用充填剤を含有するゴム組成物に用いたときに、より優れた分散性、加工性、靭性、低発熱性及び耐摩耗性を示す。
【0039】
(有機リチウム化合物)
上記有機リチウム化合物は特に制限されないが、その具体例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0040】
有機リチウム化合物の使用量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、ブタジエンに対して、0.001〜10モル%であることが好ましい。
【0041】
(ブタジエンの共重合)
有機リチウム化合物を用いてブタジエンを重合する方法は特定に制限されないが、ブタジエンを含有する有機溶媒溶液に上述した有機リチウム化合物を加え、0〜120℃(好ましくは30〜100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0042】
(特定求電子剤)
本発明の方法では、窒素原子及びケイ素原子を含む求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)を用いてブタジエンの重合を停止する。特定求電子剤を用いて重合を停止することで、上述した特定官能基を末端に有する変性ブタジエンポリマーが得られる。
特定求電子剤は窒素原子及びケイ素原子を含む化合物であれば特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、窒素原子をアミノ基(−NR
2:Rは水素原子又は炭化水素基)として含むのが好ましく、ケイ素原子をヒドロカルビルオキシシリル基(≡SiOR:Rは炭化水素基)として含むのが好ましい。
【0043】
特定求電子剤は、本発明の効果がより優れる理由から、シラザンであることが好ましく、環状シラザンであることがより好ましい。ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si−N結合を有する化合物)を意図する。
【0044】
上記環状シラザンは、本発明の効果がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0046】
上記式(S)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例及び好適な態様は上述した式(M)中のR
1及びR
2と同じである。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。2価の有機基の具体例及び好適な態様は、上述した式(M)中のLと同じである。
【0047】
上記式(S)中、R
1は、本発明の効果がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1〜10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜18)であることが好ましく、アルキルシリル基であることがより好ましい。
【0048】
上記式(S)中、R
2及びR
3は、本発明の効果がより優れる理由から、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシ基(−OR基:Rは炭化水素基)であることが好ましく、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10)であることがより好ましい。
【0049】
上記式(S)中、Lは、本発明の効果がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜5)であることが好ましい。
【0050】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N−n−ブチル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−フェニル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジエトキシ−2−アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0051】
有機リチウム化合物に対する特定求電子剤の量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、モル比で、0.1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
【0052】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、重量平均分子量が15,000超であるゴム成分と、補強用充填剤と、上述した特定変性BRとを含有するゴム組成物である。
【0053】
〔ゴム成分〕
上記ゴム成分は重量平均分子量(Mw)が15,000超のゴム成分であれば特に制限されない。
上記ゴム成分は、本発明の効果がより優れる理由から、ジエン系ゴムであることが好ましい。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、SBR及びBRが好ましい。
【0054】
上記SBRのスチレン単位(スチレンに由来する繰り返し単位)の含有量(スチレン単位含有量)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、5〜50質量%であることが好ましい。
また、上記SBRのビニル構造の割合は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、5〜80%であることが好ましく、10〜75%であることがより好ましく、20〜70%であることがさらに好ましい。ここで、ビニル構造の割合とは、ブタジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0055】
<重量平均分子量>
上述のとおり、ゴム成分の重量平均分子量(Mw)は15,000超である。ゴム成分のMwは、本発明の効果がより優れる理由から、100,000〜10,000,000であることが好ましい。
重量平均分子量の測定方法は上述のとおりである。
【0056】
<ガラス転移温度>
ゴム成分のガラス転移温度(Tg)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、−60℃以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。Tgの測定方法は上述のとおりである。
なお、ゴム成分が油展品である場合、ゴム成分のガラス転移温度は、油展成分(オイル)を含まない状態におけるガラス転移温度とする。また、ゴム成分が2種以上のゴム成分を含む場合、ゴム成分のガラス転移温度は、平均ガラス転移温度とする。ここで、平均ガラス転移温度とは、各ゴム成分のガラス転移温度に各ゴム成分の質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の加重平均値)であり、すべてのゴム成分の質量分率の合計を1とする。
【0057】
〔補強用充填剤〕
本発明の組成物に含有される補強用充填剤は特に制限されないが、シリカ及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
本発明の組成物において、補強用充填剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、60〜100質量部であることがより好ましい。
なお、本発明の組成物が2種以上の補強用充填剤を含有する場合、補強用充填剤の含有量は合計の含有量を意味する。
【0058】
<シリカ>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、補強用充填剤としてシリカを含有するのが好ましい。
上記シリカは特に制限されず、従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0059】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積(以下、「CTAB吸着比表面積」を単に「CTAB」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100〜300m
2/gであることが好ましく、185m
2/g以上であることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0060】
上記シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100〜300m
2/gであることが好ましく、194m
2/g以上であることがより好ましい。
ここで、N
2SAは、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0061】
シリカのCTAB吸着比表面積に対するシリカ窒素吸着比表面積の比(N
2SA/CTAB)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.9〜1.4であることが好ましい。
【0062】
本発明の組成物において、シリカの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
【0063】
<カーボンブラック>
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、補強用充填剤としてカーボンブラックを含有するのが好ましい。上記カーボンブラックは、1種のカーボンブラックを単独で用いても、2種以上のカーボンブラックを併用してもよい。
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF−HS、SAF、ISAF−HS、ISAF、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF−HS、HAF、HAF−LS、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50〜200m
2/gであることが好ましく、70〜150m
2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N
2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0064】
本発明の組成物において、カーボンブラックの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。
【0065】
〔特定変性BR〕
上述のとおり、本発明の組成物は上述した特定変性BRを含有する。
本発明の組成物において、特定変性BRの含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した補強用充填剤の含有量に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2.0〜10.0質量%であることがより好ましい。
また、特定変性BRの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したゴム成分100質量部に対して、1質量部以上10質量部未満であることが好ましい。
【0066】
〔シランカップリング剤〕
本発明の組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。上記シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
上記加水分解性基は特に制限されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、1〜16であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0067】
上記有機官能基は特に制限されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基などが挙げられ、なかでも、スルフィド基、メルカプト基が好ましい。
【0068】
上記シランカップリング剤は硫黄含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0069】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本発明の組成物において、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述したシリカの含有量に対して1〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。
【0071】
〔その他の成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲で上述した成分以外の成分(その他の成分)を含有することができる。
そのような成分としては、例えば、テルペン樹脂(好ましくは、芳香族変性テルペン樹脂)、熱膨張性マイクロカプセル、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加工助剤、オイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0072】
〔用途〕
本発明の組成物は、タイヤ、コンベアベルト、ホース、防振材、ゴムロール、鉄道車両の外幌等に好適に用いられる。なかでも、タイヤに好適に用いられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
〔合成例〕
以下のとおり、比較変性BR1〜2及び特定変性BR1〜4を合成した。
ここで、特定変性BR1〜4は、いずれも、特定官能基に該当する後述する式(m1)で表される官能基を末端に有し、Mwが1000以上15,000以下であり、Mw/Mnが2.0以下である変性BRであるため、上述した「特定変性BR」に該当する。一方、比較変性BR1は、後述する式(m1)で表される官能基を末端に有し、Mw/Mnが2.0以下であるが、Mwが15,000を超える変性BRであるため、上述した「特定変性BR」に該当しない。また、比較変性BR2は、後述する式(m1)で表される官能基を末端に有し、Mwが1000以上15,000以下であるが、Mw/Mnが2.0を超える変性BRであるため、上述した「特定変性BR」に該当しない。
【0075】
<比較変性BR1>
n−BuLi(n−ブチルリチウム)(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),21mL,33.6mmol)を、1,3−ブタジエン(230g,4259mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(3.0kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(以下構造)(15g,68.5mmol)を投入し、重合を停止した。
【0076】
【化3】
【0077】
得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、下記式(m1)(ここで、*は結合位置を表す)で表される官能基を末端に有する変性BR(比較変性BR1)(212g,Mn=17,400,Mw=19,200,Mw/Mn=1.1)を92%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=21/33/46と見積もられた。また、Tgは−70℃であった。
【0078】
【化4】
【0079】
<比較変性BR2>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),23.2mL,37.2mmol)を、1,3−ブタジエン(461g,8518mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.2mL,1.09mmol)のシクロヘキサン(4.20kg)混合溶液に加えて、室温で攪拌した。1時間30分おきに、n−BuLiを23.2mLずつ、合計で92.8mL添加し、反応を開始してから6時間後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(60g,274mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(10L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR(比較変性BR2)(740g,Mn=4,000,Mw=8,800,Mw/Mn=2.2)を97%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=23/38/39と見積もられた。また、Tgは−77℃であった。
【0080】
<特定変性BR1>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),50mL,80mmol)を、1,3−ブタジエン(198g,3667mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(30g,137mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR(特定変性BR1)(182g,Mn=4,100,Mw=4,400,Mw/Mn=1.1)を92%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=31/45/24と見積もられた。また、Tgは−83℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は196%であった。
【0081】
<特定変性BR2>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),27mL,43.2mmol)を、1,3−ブタジエン(205g,3786mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(2.96kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(15g,137mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(10L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR(特定変性BR2)(199g,Mn=7,600,Mw=8,100,Mw/Mn=1.1)を97%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=24/40/36と見積もられた。また、Tgは−80℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は204%であった。
【0082】
<特定変性BR3>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),17mL,27.2mmol)を、1,3−ブタジエン(256g,4732mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.1mL,0.55mmol)のシクロヘキサン(3.5kg)混合溶液に加えて、室温で3時間攪拌した。その後、n−BuLiを17mL加えて3時間攪拌した。反応後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(25g,114mmol)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5.0L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR(特定変性BR3)(740g,Mn=6,300,Mw=9,400,Mw/Mn=1.5)を95%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=24/38/38と見積もられた。また、Tgは−76℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は181%であった。
【0083】
<特定変性BR4>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),92mL,147.2mmol)を、1,3−ブタジエン(762g,14078mmol)及び2,2−ジ(2−テトラヒドロフリル)プロパン(東京化成製,0.25mL,1.36mmol)のシクロヘキサン(4.15kg)混合溶液に加えて、室温で6時間攪拌した。反応後、1,1,1−トリメチル−N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N−(トリメチルシリル)シランアミン(以下構造)(59g,185mmol)を投入し、重合を停止した。
【0084】
【化5】
【0085】
得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(10L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR(特定変性BR4)(740g,Mn=8,000,Mw=9,500,Mw/Mn=1.2)を97%の収率で得た。なお、IR分析によって、シス/トランス/ビニル=26/45/29と見積もられた。また、Tgは−82℃であった。また、粘度(変性後/変性前)は163%であった。
【0086】
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示される成分を同表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
なお、表1中、SBRの量について、上段の値はSBR(油展品)の量(単位:質量部)であり、下段の値は、SBRに含まれるSBRの正味の量(単位:質量部)である。
【0087】
〔評価〕
得られた各ゴム組成物について下記のとおり評価を行った。
【0088】
<分散性>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
そして、作製した加硫ゴムシートについて、歪せん断応力測定機(RPA2000、α−テクノロジー社製)により、歪0.28%の歪せん断弾性率G′と歪30.0%の歪せん断弾性率G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)−G′30.0(MPa)をペイン効果として算出した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど補強用充填剤の分散性に優れることを意味する。
【0089】
<加工性>
得られた各ゴム組成物(未加硫)について、JIS K6300−1:2013に従い、100℃におけるムーニー粘度(ML
1+4)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど粘度が低く、加工性に優れることを意味する。
【0090】
<切断時伸び>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で切断時伸びを評価した。
結果を表1に示す。結果は比較例1の切断時伸びを100とする指数で表した。指数が大きいほど靭性に優れることを意味する。
【0091】
<低発熱性>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。
結果を表1に示す。結果は比較例1を100とする指数で表した。指数が小さいほど低発熱性に優れることを意味する。
【0092】
<耐摩耗性>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6264−1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗量を測定した。そして下記式から耐摩耗性指数を算出した。
結果を表1に示す。指数が大きいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性に優れることを意味する。
耐摩耗性指数=(比較例1の摩耗量/各加硫ゴムシートの摩耗量)×100
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:タフデンF3420(SBR、Mw=15,000超、スチレン単位含有量=36質量%、Tg=−27℃、ゴム成分100質量部に対しオイル分25質量部を含む油展品、旭化成ケミカルズ社製)
・BR:Nipol BR1220(BR、Mw=49万、Tg=−105℃、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:東海カーボン社製シーストKH
・シリカ:Zeosil Premium 200MP(シリカ、N
2SA=200m
2/g、CTAB=200m
2/g、N
2SA/CTAB=1.0、ローディア社製)
・シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
・未変性BR1:LBR−302(未変性BR、Mw=5,500、Mw/Mn=1.1、Tg=−85℃、粘度=1,199mPa・s、クラレ社製)
・未変性BR2:LBR−307(未変性BR、Mw=8,000、Mw/Mn=1.1、Tg=−95℃、粘度=2,350mPa・s、クラレ社製)
・比較変性BR1:上述のとおり合成した比較変性BR1(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=19,200、Mw/Mn=1.1、ビニル/トランス/シス=21/33/46、Tg=−70℃、粘度=7,584mPa・s)
・比較変性BR2:上述のとおり合成した比較変性BR2(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=8,800、Mw/Mn=2.2、ビニル/トランス/シス=23/38/39、Tg=−77℃、粘度=2,157mPa・s)
・特定変性BR1:上述のとおり合成した特定変性BR1(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=4,400、Mw/Mn=1.1、ビニル/トランス/シス=31/45/24、Tg=−83℃、粘度=2,350mPa・s)
・特定変性BR2:上述のとおり合成した特定変性BR2(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=8,100、Mw/Mn=1.1、ビニル/トランス/シス=24/40/36、Tg=−80℃、粘度=4,794mPa・s)
・特定変性BR3:上述のとおり合成した特定変性BR3(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=9,400、Mw/Mn=1.5、ビニル/トランス/シス=24/38/38、Tg=−76℃、粘度=4,251mPa・s)
・特定変性BR4:上述のとおり合成した特定変性BR4(上記式(m1)で表される官能基を末端に有する変性BR、Mw=9,500、Mw/Mn=1.2、ビニル/トランス/シス=26/45/29、Tg=−82℃、粘度=4,876mPa・s)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・加工助剤:アクチプラストST(Rhein Chemie社製)
・老化防止剤:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・亜鉛華:亜鉛華3号(正同化学社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤CZ:ノクセラー CZ−G(大内振興化学工業社製)
・加硫促進剤DPG:ソクシノール D−G:(住友化学社製)
【0095】
なお、表1中、「ゴム成分のTg」は、上述した「ゴム成分のTg」を表す。
【0096】
表1から分かるように、特定変性BRを含有しない比較例1と比較して、特定変性BRを配合した実施例1〜6は、優れた分散性、加工性、靭性、低発熱性及び耐摩耗性を示した。
一方、特定官能基を末端に有さないブタジエンポリマーを配合した比較例2及び3、特定官能基を末端に有するがMwが15,000を超える変性BRを配合した比較例4、並びに、特定官能基を末端に有するがMw/Mnが2.0を超える変性BRを配合した比較例5は、分散性が不十分であった。
ここで、実施例1〜4と比較例4と比較例5との対比から分かるように、変性BRのMwを1,000以上15,000以下且つMw/Mnを2.0以下にすることで分散性が大幅に向上した。すなわち、変性BRのサイズ(Mw、Mw/Mn)と補強用充填剤の分散性との間に顕著な臨界性が見られた。
【0097】
実施例1〜4の対比(特定変性BRの含有量が補強用充填剤の含有量に対して6.7質量%である態様同士の対比)から、特定変性BRが、末端が環状シラザンで変性された実施例1〜3は、より優れた分散性、加工性、靭性及び低発熱性を示した。末端が環状シラザンで変性された特定変性BRの方が、変性率が高いためと推測される。なかでも、特定変性BRのMw/Mnが1.3以下である実施例1及び2は、より優れた加工性、低発熱性及び耐摩耗性を示した。そのなかでも、特定変性BRのMwが5,000以上である実施例2は、より優れた分散性、加工性、低発熱性及び耐摩耗性を示した。
実施例2と5と6との対比(特定変性BRとして特定変性BR2を使用した態様同士の対比)から、特定変性BRの含有量が補強用充填剤の含有量に対して2.0〜10.0質量%である実施例2は、分散性、加工性、靭性、低発熱性及び耐摩耗性のバランスが極めて高い水準で優れていた。
【課題】補強用充填剤を含有するゴム組成物に用いたときに優れた分散性、加工性、靭性、低発熱性及び耐摩耗性を示す配合剤、及び、上記配合剤を含有するゴム組成物を提供する。
【解決手段】窒素原子及びケイ素原子を含む官能基を末端に有し、重量平均分子量が1,000以上15,000以下であり、分子量分布が2.0以下である、変性ブタジエンポリマー。