特許第6376266号(P6376266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6376266核材料およびはんだ継手およびバンプ電極の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6376266
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】核材料およびはんだ継手およびバンプ電極の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20180813BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20180813BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20180813BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180813BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20180813BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B23K35/14 Z
   B23K35/26 310A
   C22C13/02
   B22F1/00 L
   B22F1/02 A
   H01L21/92 604H
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-205457(P2017-205457)
(22)【出願日】2017年10月24日
【審査請求日】2017年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】▲土▼屋 政人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 皓紀
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 浩由
(72)【発明者】
【氏名】六本木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6217836(JP,B1)
【文献】 特開平10−168503(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/068685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
B22F 1/00− 1/02
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核表面に電気はんだめっきされたSnと0.1〜30.0質量%のSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、
前記核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
前記はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
前記濃度比率は、79.1〜118.8%の範囲内となされた
ことを特徴とする核材料。
【請求項2】
核表面に電気はんだめっきされたSnと5質量%のSbからなる(Sn−5Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、
前記核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
前記はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
前記濃度比率は、71.8〜118.8%の範囲内となされた
ことを特徴とする核材料。
【請求項3】
核表面に電気はんだめっきされたSnと10質量%のSbからなる(Sn−10Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、
前記核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
前記はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
前記濃度比率は、79.1〜120.1%の範囲内となされた
ことを特徴とする核材料。
【請求項4】
Ni及びCoから選択される1元素以上からなる下地めっき層で被覆された前記核が、前記はんだめっき層で被覆される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の核材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の核材料であって、前記核としてCuボールが使用されている
ことを特徴とする核材料。
【請求項6】
請求項5に記載の核材料であって、真球度が0.98以上である
ことを特徴とする核材料。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の核材料であって、核としてCuカラムが使用されていることを特徴とする核材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の核材料がはんだバンプとして使用された
ことを特徴とするはんだ継手。
【請求項9】
核表面に電気はんだめっきされたSnと0.1〜30.0質量%のSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料であって、前記核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
前記はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
前記濃度比率は、79.1〜118.8%の範囲内となされた核材料を電極上に搭載する工程と、
搭載した前記核材料を加熱することによりバンプ電極を形成する工程を含む
ことを特徴とするバンプ電極の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核材料、この核材料を使用したはんだバンプを有するはんだ継手およびバンプ電極の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型情報機器の発達により、搭載される電子部品では急速な小型化が進行している。電子部品は、小型化の要求により接続端子の狭小化や実装面積の縮小化に対応するため、裏面に電極が配置されたボールグリッドアレイ(BGA)が適用されている。
【0003】
BGAを適用した電子部品には、例えば半導体パッケージがある。半導体パッケージは、電極を有する半導体チップが樹脂により封止されて構成されている。半導体チップの電極には、はんだバンプが形成されている。はんだバンプは、はんだボールを半導体チップの電極に接合することによって形成されている。BGAを適用した半導体パッケージは、加熱により溶融したはんだバンプとプリント基板の導電性ランドが接合することによりプリント基板に搭載される。近年では、更なる高密度実装の要求に対応するため、半導体パッケージが高さ方向に積み重ねられた3次元高密度実装も開発されている。
【0004】
3次元高密度実装がなされた半導体パッケージがBGAであって、半導体チップの電極上にはんだボールを載置してリフロー処理した場合、半導体パッケージの自重によりはんだボールが潰れてしまうことがある。もしそのようなことが起きると、はんだが電極からはみ出し電極間同士が接触して電極間の短絡が発生するおそれがある。
【0005】
このような短絡事故を防止するため、はんだボールとして自重により潰れたり、はんだ溶融時に変形したりしないはんだバンプが提案されている。具体的には、金属や樹脂で成型されたボールを核として使用し、この核をはんだで被覆した核材料をはんだバンプとして使用することが提案されている。
【0006】
核を被覆するはんだめっき層としては、Snを主成分とする鉛フリーはんだが用いられることが多い(特許文献1および特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1に開示された核材料は、金属としてCuボールを使用し、これを核としてその表面にSnとBiからなるSn系はんだ合金をはんだめっき層として形成したものである。Biを含有したSn系はんだ合金は、その溶融温度が130〜140℃と比較的低温であり、低温はんだと称される。
【0008】
特許文献1では、はんだめっき層中に含まれるBiの含有量は、内側(内周側)が薄く、外側(外周側)に向かって濃くなるような濃度勾配でめっき処理されている。
【0009】
特許文献2も、特許文献1と同様な理由からCuボールを核として使用し、これにSnとBiからなるSn系はんだ合金をめっき被膜したはんだバンプが開示されている。特許文献2におけるはんだめっき層中に含まれるBiの含有量は、内側(内周側)が濃く、外側(外周側)に向かって薄くなるような濃度勾配でめっき処理されている。
【0010】
特許文献2の技術は、特許文献1とは全く逆の濃度勾配となっている。これは、特許文献2による濃度制御の方が、特許文献1による場合よりも簡単であり、造り易いためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−44718号公報
【特許文献2】特許第5367924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、Snに他の元素を添加した二元以上のSn系はんだ合金をCuボールの表面にめっき被膜した核材料を半導体チップの電極上に載置してリフロー処理した場合、添加した元素がはんだめっき層中で濃度勾配を持つ特許文献1および2では、以下のような問題を惹起する。
【0013】
特許文献1に開示された技術は、このようにBi濃度が内周側で薄く、外周側で濃くなるような濃度勾配を有したはんだめっき層であるが、このような濃度勾配(内側が薄く、外側が濃い)である場合には、Bi溶融のタイミングが内周側と外周側とで僅かにずれるおそれがある。
【0014】
溶融タイミングにずれが起こると、核材料の外表面が溶融し始めていても、内周面側の領域ではまだ溶融が起きていないような、部分溶解が混在することになり、その結果核材料は溶融している側に僅かに位置ずれを起こす。挟ピッチの高密度実装では、この位置ずれによるはんだ処理は致命的な欠陥となるおそれがある。
【0015】
特許文献2は、Biの濃度勾配が特許文献1とは逆である。この場合でも、半導体パッケージを接続するためにはリフローによる加熱処理を行う。特許文献2のように、はんだめっき層中のBi濃度が内周側が濃く、外周側が薄い状態で加熱溶融すると、内周側のBi密度が高いため、内周側のBi領域からはんだが溶融し始める。内周側のBi領域が溶融しても外周側のBi領域はまだ溶融し始めていないので、内周側のBi領域側での体積膨張が早く起こる。
【0016】
この体積膨張の内外周側での遅速により、Biの内周側と外周側(外気)とで圧力差が生じ、Biの外周側が溶融し始めると、内周側の体積膨張による圧力差で核となっているCuボールがはじけ飛ぶような事態が発生する。このような事態の発生は避けなければならない。
【0017】
このようにSnとBiからなるSn系はんだ合金からなるはんだめっき層を有するCu核ボールは、はんだめっき層中のBiに濃度勾配がある場合、不良が発生していた。
【0018】
近年、高温はんだの要求が高まり、SnにSbを添加したはんだ合金が提案されている。SnにSbを添加した二元以上のはんだ合金で核を被覆した核材料でも、Sbがはんだめっき層中で所定の濃度勾配を持つと、上述したBiと同様の問題が生じると考えられる。
【0019】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、核表面にSnとSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金をめっきして形成したはんだめっき層を有する核材料において、はんだめっき層中に含まれるSbは、はんだめっき層の径方向及び周方向において、70.0〜125.0%の所定範囲の濃度比ではんだめっき層中に分布している核材料を提供することである。言い換えると、はんだめっき層中のSbは均質(均等)であるので、はんだめっき層中の内層、中間層及び外層を含めてその全領域に亘りSb濃度比が所定範囲内となされた核材料およびその核材料を使用したはんだ継手を提供するものである。
【0020】
但し、核と(Sn−Sb)系はんだ合金のはんだめっき層との間にNiめっき等の下地めっき層が施される場合には、下地めっき層を除いたはんだめっき層中においてSbが均質に分布している核材料を提供するものである。
【0021】
また、このような核材料を使用したバンプを有するはんだ継手を提供するものである。
【0022】
なお、本願で用いるSb濃度比率(%)とは、はんだめっき層の所定領域における、目標とするSb含有量(質量%)に対するSb計測値(質量%)の比(%)、あるいは目標とするSb含有量(質量%)に対するSb計測値の平均の値(質量%)の比率(%)をいう。
【0023】
また、所定領域におけるSb含有量は、その所定領域におけるSb濃度と言い換えることもできるので、本願で用いるSb濃度比率(%)とは、はんだめっき層の所定領域における、目標とするSb濃度に対する計測されたSb濃度の比率(%)、あるいは目標とするSb濃度に対する計測されたSb濃度の平均の比率(%)をいう。
【0024】
なお、はんだめっき層のSb含有量の計測は、核材料をオキソ酸等を用いてはんだめっき層を溶解し、ICP-AES, ICP−MS等の公知の分析手法を用いることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決するため、請求項1に記載のこの発明にかかる核材料は、核表面に電気はんだめっきされたSnと0.1〜30.0質量%のSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
濃度比率は、79.1〜118.8%の範囲内となされたことを特徴とするものである。
【0026】
請求項2に記載のこの発明に係る核材料は、核表面に電気はんだめっきされたSnと5質量%のSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
濃度比率は、71.8〜118.8%の範囲内となされたことを特徴とするものである。(Sn−5質量%Sb)は、以下(Sn−5Sb)と表記する。
【0027】
請求項3に記載のこの発明に係る核材料は、核表面に電気はんだめっきされたSnと10質量%のSbからなる(Sn−10Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料において、核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
濃度比率は、79.1〜120.1%の範囲内となされたことを特徴とするものである。(Sn−10質量%Sb)は、以下(Sn−10Sb)と表記する。
【0030】
請求項に記載のこの発明に係る核材料は、請求項1〜のいずれかに記載の核材料であって、Ni及びCoから選択される1元素以上からなる下地めっき層で被覆された前記核が、前記はんだめっき層で被覆されることを特徴とするものである。
【0031】
請求項に記載のこの発明に係る核材料は、請求項1〜のいずれかに記載の核材料であって、核としてCuボールが使用されていることを特徴とするものである。
【0032】
請求項に記載のこの発明に係る核材料は、請求項に記載の核材料であって、真球度が0.98以上であることを特徴とするものである。
【0033】
請求項に記載のこの発明に係る核材料は、請求項1〜のいずれかに記載の核材料であって、核としてCuカラムが使用されていることを特徴とする核材料。
【0034】
請求項に記載のこの発明に係るはんだ継手は、請求項1〜のいずれかに記載の核材料を使用したはんだ継手であることを特徴とするものである。
【0035】
請求項9に記載のこの発明にかかるバンプ電極の形成方法は核表面に電気はんだめっきされたSnと0.1〜30.0質量%のSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金の電気はんだめっき層を有する核材料であって、核は、Cu、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体かこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物からなり、
はんだめっき層中に含まれるSbの濃度比率(%)を、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100、
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100として表したとき、
濃度比率は、79.1〜118.8%の範囲内となされた核材料を電極上に搭載する工程と、搭載した核材料を加熱することによりバンプ電極を形成する工程を含むことを特徴とするものである。



【0036】
はんだめっき層中のSbは、めっき厚に対し、その内周側から外周側に向かって、及び内周側、外周側を含めてその全領域に亘り、その濃度分布が均質となるように処理されている(但し、核にNiめっき等の下地めっき層が施される場合には、下地めっき層は除く)。
【0037】
Sn系はんだ合金は、(Sn−Sb)系のはんだ合金の他、他の添加元素を含ませることが可能である。(Sn−Sb)系はんだ合金に、添加できる元素としてはAg,Cu、Ni、Ge、Ga、In、Zn、Fe、Pb、Bi、Au、Pd、Coなどの内から一種若しくは二種以上の元素がある。例えば、(Sn−Ag−Cu−Sb)系はんだ合金などが考えられる。
【0038】
この核材料は、SnとSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金を核の表面にめっき被膜した核材料において、はんだめっき層中のSbは、所定範囲の濃度比率ではんだめっき層中に分布している核材料であり、Sbの濃度比率は70.0〜125.0%の所定範囲内ではんだめっき層中に分布している核材料である。濃度比率(%)については後述する。
【発明の効果】
【0039】
この発明に係る核材料によれば、はんだめっき層中のSbは均質であるので、はんだめっき層の膜厚に対しSbの内周側、外周側を含めてその全領域に亘りSb濃度比率が所定範囲内にある。このため、内周側が外周側より早めに溶融して、内周側と外周側とで体積膨張差が生じて核材料がはじき飛ばされるような事態は発生しない。
【0040】
また、はんだめっき層中のSbが均質であるので、核材料の全面に亘りほぼ均一に溶融するから、はんだめっき層内での溶融タイミングに時間差が殆ど生じない。その結果溶融タイミングのずれによって発生する核材料の位置ずれは生じないので、位置ずれなどに伴う電極間の短絡などのおそれはない。したがってこの核材料を使用することによって高品質なはんだ継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態に係るCu核ボールの構成例を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係るCu核ボールの構成例を示す断面図である。
図3】はんだめっき層中でのSb分布状態を示すCu核ボールの構成例を示す拡大断面図である。
図4図3のさらに拡大した断面図である。
図5】Cu核ボールの表面の拡大図である。
図6】実施例1におけるはんだめっき層の厚さと、はんだめっき層中に含有しているSb濃度との関係を、Cu核ボール径を基準にしたときの特性曲線図である。
図7】核材料のSbの濃度分布を測定する方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。この発明では、SnとSbからなるSn系はんだ合金を核表面にめっき被膜した核材料において、はんだめっき層中のSbの分布が均質となされた核材料およびこれを使用したはんだ継手を提供するものである。
【0043】
本発明のはんだめっき層の組成は、SnとSbを含有する(Sn−Sb)系合金からなる。Sbの含有量については、合金全体に対してのSb量が0.1〜30.0質量%の範囲であれば、Sbの濃度比率を70.0〜125.0%の所定範囲内で制御することができ、はんだめっき層中のSb分布を均質にできる。
【0044】
例えば、(Sn−5Sb)系はんだ合金である場合、目標値となるSbの分布は5質量%が目標値となるが、許容範囲としては3.59質量%(濃度比率71.8%)〜5.94質量%(濃度比率118.8%)である。
【0045】
なお、許容範囲とは、この範囲内にあれば、問題なくバンプ形成等のはんだ付けを行い得る範囲をいう。また、濃度比率(%)とは目標とする含有量(質量%)に対する計測値(質量%)、あるいは目標とする含有量(質量%)に計測値の平均の値(質量%)の比率(%)をいう。すなわち、濃度比率(%)は、
濃度比率(%)=(計測値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100
あるいは、
濃度比率(%)=(計測値の平均の値(質量%)/目標とする含有量(質量%))×100
として表することができる。
【0046】
また、Sn,Sbからなる二元のはんだめっき層中にはそれ以外の添加元素を添加しても、Sbの濃度比率を70.0〜125.0%の所定範囲内で制御することができる。
【0047】
添加元素としては、Ag、Cu、Ni、Ge、Ga、In、Zn、Fe、Pb、Bi、Au、Pd、Coなどのうち一種または二種以上使用することが考えられる。
【0048】
核(コア)としては金属材料が使用される。核の形状は球体その他の形状(柱状のカラムやシート状など)が考えられる。本例では、球体であって、核として特にCuからなるボール(以下Cuボールという)を使用したCu核ボールの場合について説明する。
【0049】
Cuボールの粒径(球径)は、BGAのサイズなどによっても相違するが、以下の例では200μmφ程度の球状であり、はんだめっき層の径方向の片側の厚みは20〜100μmである。Cu核ボールの粒径は使用する電子部品の密度やサイズによって適宜選定されるもので、1〜1000μmの範囲内のCuボールを使用することができ、使用するCuボールの粒径に応じてめっき厚が適宜選定されるものである。めっき処理を行うめっき装置は、電気めっき装置を使用した。
【0050】
続いて、Cuボールを使用したCu核ボール例を示す。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態に係るCu核ボールの構成例を示す断面図、図2は、本発明の他の実施形態に係るCu核ボールの構成例を示す断面図である。説明の都合上、図示は誇張して描いてある。
【0052】
Cu核ボール10は、図1のように、Cuボール12と、この例ではNi下地めっき層14を介してSn系はんだ合金からなるはんだめっき層16が形成されている。Ni下地めっき層14はCuボール12とはんだめっき層16との間で金属拡散によるはんだめっき層16の組成変化を防止するための下地めっきの役割を担うもので、1〜4μm程度の厚みである。このNi下地めっき層14は必須の要件ではなく、図2のようにCuボール12の表面に直接はんだめっき層を形成することもできる。なお、下地めっき層14を形成する場合、下地めっき層14は、Ni、Coから選択される1元素以上からなる層で構成しても良い。
【0053】
Cuボール12で使用するCuは純銅でも、銅の合金でもよい。
【0054】
Cuを主成分とする合金組成のCuボール12を使用する場合には、その純度は特に限定されないが、純度の低下によるCu核ボールの電気伝導度や熱伝導率の劣化を抑制し、また必要に応じてα線量を抑制する観点から、99.9質量%以上が好ましい。
【0055】
核としては、Cu以外にも、Ni、Ag、Bi、Pb、Al、Sn、Fe、Zn、In、Ge、Sb、Co、Mn、Au、Si、Pt、Cr、La、Mo、Nb、Pd、Ti、Zr、Mgの金属単体やこれらの二種以上の合金、金属酸化物、あるいは金属混合酸化物により構成しても良い。
【0056】
Cuボール12は、スタンドオフ高さを制御する観点から真球度が0.95以上であることが好ましく、さらに0.99以上であることがより好ましい。Cuボール12の真球度が0.95未満であると、Cuボール12が不定形状になるため、バンプ形成時に高さが不均一なバンプが形成され、接合不良が発生する可能性が高まる。さらに、Cu核ボール10を電極に搭載してリフローを行う際、真球度が低いとCu核ボール10が位置ずれを起こしてしまい、セルフアライメント性も悪化する。
【0057】
ここに、真球度とは真球からのずれを表す。真球度は、例えば、最小二乗中心法(LSC法)、最小領域中心法(MZC法)、最大内接中心法(MIC法)、最小外接中心法(MCC法)など種々の方法で求められる。詳しくは、真球度とは、500個の各Cuボールの直径を長径で割った際に算出される算術平均値であり、値が上限である1.00に近いほど真球に近いことを表す。長径の長さとは、ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350−PRO測定装置によって測定された長さをいう。
【0058】
はんだめっき層16を含めたCu核ボール10全体の直径は1〜1000μmであることが好ましい。この範囲にあると、球状のCu核ボール10を安定して製造でき、また、粒径を選定することによって電極端子間が狭ピッチである場合の接続短絡を抑制することができる。
【0059】
粒径が1〜300μm程度のCu核ボール10の集合体を「Cu核パウダ」と呼称する場合がある。このCu核パウダは、はんだペースト中の粉末用はんだとして配合された状態で使用される場合がある。
【0060】
はんだめっき層16ははんだ合金であって、この例ではSnとSbからなる。この場合、前述のようにはんだめっき層16中のSb含有量は目標値の5質量%に対して許容範囲として3.59質量%(濃度比率71.8%)〜5.94質量%(濃度比率118.8%)程度が好ましい。
【0061】
はんだめっき層16は電気めっき層の一例であり、はんだめっき層16の厚みは、Cuボール12の粒径によっても相違するが径方向の片側100μm以下が好ましい。例えば、粒径が215μmφのCuボール12であるときは、50〜70μmの厚みとなるようにはんだめっき層16が形成される。十分なはんだ接合量を確保するためである。はんだめっき層を溶融めっきで形成する場合、Cuボールの粒径が小さくなると、はんだめっき層の膜厚が均一とならず、Cu核ボール中でのCuボールの偏心や、はんだめっき層表面の凹凸が大きくなり、Cu核ボールの真球度が低下する。このため、はんだめっき層16は電気めっき処理で形成される。
【0062】
めっき液としては、有機酸、Sb(III)化合物、例えば、酢酸Sb、フッ化Sb、塩化Sb、臭化Sb、ヨウ化Sb、酒石酸Sbカリウム、クエン酸Sb、硝酸Sb、酸化Sb、リン酸Sbおよび界面活性剤の混合液が使用される。めっき液にSb(III)化合物が連続して、または間欠的に供給されることで、めっき液中のSbの濃度ははんだめっき層形成中、一定となるように制御される。
【0063】
SnとSbからなるSn−Sb系はんだ合金組成のはんだめっき層を電気めっきにて形成する場合、SbがSnより優先されてはんだめっき層に取り込まれる為、電気めっき液中のSb濃度とはんだめっき層中のSb量が一致しないという問題があり、Sbの濃度分布が均質なはんだ合金めっき層を形成することはできなかった。そこで図6の条件になるようにアノード電極とカソード電極との間に所定の直流電圧が印加されると共に、Cuボールを揺動させながら、液中のSb濃度が均一となるように調整して電気めっき処理を行う。
【0064】
この電気めっき処理によるはんだめっき層16の生成過程について図6を参照してさらに詳細に説明する。図6は、はんだめっき層16の厚さと、はんだめっき層16中のSb濃度(曲線L)との関係を、Cu核ボール径を基準にしたときの特性曲線図である。
【0065】
この例では、Cuボールの初期値として粒径215μmのものを使用した場合である。はんだめっき層16の厚みを逐一モニターし、この例でははんだめっき層16の厚みが所定値ずつ順次増加したときのCu核ボール10をその都度サンプルとして採集する。採集したサンプルは洗浄してから乾燥させた上で、粒径を計測する。
【0066】
計測タイミングのCu核ボールの粒径が、目的の値となっているときのはんだめっき層中のSbの含有量を順次測定すると、図6曲線Lのような結果が得られた。この結果よりはんだめっき層16が所定の厚みだけ順次増加してもそのときのSbの含有量は、直前の含有量とほぼ同じ値となっていることが判る。曲線Lの場合にはSbの含有量はほぼ4.0〜7.0質量%となっている。従って、図6曲線LからSbの濃度分布はめっき厚に対して均質(均等)となっており、濃度勾配が無いことが理解できる。以上のように、膜厚は均一にコントロールできる反面、濃度が不均質となってしまう電気めっきの問題点を、Sb濃度比率が所定の範囲内に収まるように、はんだめっき層16中のSb濃度をコントロールすることで、Sbが均質に分布するはんだめっき層16を有するCu核ボール10が得られる。
【0067】
図3はこのときのCu核ボール10の断面図を示す。これを拡大した図4から明らかなように、はんだめっき層16はSnとSbが均質に混在しながら成長した過程がよく分かる。
【0068】
また、図5はCu核ボール10の表面の拡大図である。Cu核ボール等、核材料が球体である場合、核を被覆するはんだめっき層の最表面が単一金属の状態に近いほど、結晶粒が大きくなるため、核材料の真球度は低下する傾向にある。これに対し、はんだめっき層16中のSbがほぼ均質に分布した状態であるので、はんだめっき層16の最表面が単一金属ではなく、合金状態となり、結晶粒が小さくなる。これにより、Cu核ボール10の真球度が高く、0.98以上である。Cu核ボール10の真球度が0.98以上であると、Cu核ボール10を電極に搭載してリフローを行う際、Cu核ボール10が位置ずれを起こすことが抑制され、セルフアライメント性が向上する。
【0069】
はんだめっき層16中のSbの濃度は、はんだめっき層16の厚みが成長してもほぼ同じ状態を維持していることから、はんだめっき層16中のSbはほぼ均質に分布した状態で成長(析出)していることが明らかとなった。Sb濃度が所期の値内に収まるようにめっき液中のSb濃度が均質にされた状態でめっき処理が行われる。この例では、はんだめっき層16中のSbの含有量としては5質量%を目標値としているので、目標値に到達するようにめっき液中のSb濃度が制御される。
【0070】
はんだめっき層16中のSbの濃度分布を所期値に収めるためには、電圧・電流制御を行いながらめっき処理がなされる。このようなめっき処理によってはんだめっき層16中のSbの分布を所期値に維持することができる。
【0071】
はんだめっき層16におけるSbの濃度分布が目標値に相応した値となっていることを確認するため以下のような実験を行った。
(1)下記条件にてはんだめっき層16の組成が(Sn−5Sb)となるCu核ボール10を作成した。
・Cuボール12の直径 :250μm
・Ni下地めっき層14の膜厚:2μm
・はんだめっき層16の膜厚 :23μm
・Cu核ボール10の直径 :300μm
【0072】
実験結果の測定を容易にするため、Cu核ボール10としてはその厚みが比較的薄いはんだめっき層を有するCu核ボールを作製した。
【0073】
めっき方法は電気めっき工法にて図6の条件となるように作製した。
(2)試料としては、同一組成の(Sn−5Sb)系はんだ合金のはんだめっき層が形成されたCu核ボール10を10個用意した。これらを試料Aとして使用した。
(3)それぞれの試料A1〜A10を樹脂で封止する。
(4)封止した各試料A1〜A10を、樹脂ごと研磨して各試料A1〜A10の断面を観察する。観察機材は日本電子製のFE−EPMAJXA−8530Fを使用した。
【0074】
試料A1の断面図を図7に示す。はんだめっき層16のうちCuボール12の表面側から便宜上内層16a、中間層16bおよび外層16cに分ける。内層16aはCuボール12の表面から9μmまで、中間層16bは9〜17μmまで、そして外層16cは17〜23μmとし、内層16a、中間層16bおよび外層16cより、図7のようにこの例では厚み5μmで幅が40μmの内層領域17a、中間層領域17b、外層領域17cをそれぞれ切り取り、各領域を計測領域として、定性分析によりSbの濃度の計測を行った。この作業を計10視野ずつ各内層16a、中間層16bおよび外層16cについて行った。
【0075】
その結果を纏めたものが表1である。この表1によれば、内層、中間層、外層において最小値4.25質量%(濃度比率85.1%)、最大値6.20質量%(濃度比率124.0%)の範囲にあることが分かる。
【0076】
【表1】
【0077】
試料A(A1〜A10)は、目標とするSbの含有量(目標値)が5(質量%)である。そこで、表1中の試料A1〜A10の濃度比率(%)は、以下の(1)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値/5)×100・・・(1)
【0078】
そして試料A1〜A10の算術平均を算出した結果、
内層領域17a=4.79(質量%)(濃度比率95.8%)
中間層領域17b=5.12(質量%)(濃度比率102.4%)
外層領域17c=4.82(質量%)(濃度比率96.5%)
となった。
【0079】
また、内層、中間層、外層の各領域17a〜17cをこのように算術平均でははんだめっき層中のSbは上記の3.59質量%〜5.94質量%の許容範囲内にあるために、ほぼ目標値のSbの濃度比率となっていることが分かる。
【0080】
このような計測作業を試料A(A1〜A10)とは別に作成した試料B〜Dについても同様に行い、その結果を表2に示す。試料B〜Dは、試料Aと同様に、同一組成の(Sn−5Sb)系はんだ合金のはんだめっき層が形成されたCu核ボール10を例えば10個用意したものを使用した。
【0081】
【表2】
【0082】
試料A〜Dは、目標とするSbの含有量(目標値)が5(質量%)である。そこで、表2中の試料A〜Dの濃度比率(%)は、以下の(2)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値の平均値/5)×100・・・(2)
【0083】
表2の結果から分かることは、多少のばらつきはあるものの、はんだめっき層16中のSb濃度は目標値の3.59〜5.94質量%に収まっていることがわかる。
【0084】
そしてこれらの試料A(A1〜A10)、及び、試料B〜Dと同じロットで製造したCu核ボールそれぞれ10個(例)を抽出し、それぞれを基板に通常のリフロー処理により接合した。接合結果も併せて表2に示す。
【0085】
接合結果については、全てのサンプルにて一切の接合不良が測定されなかったものを「良」、1つのサンプルでも接合時に位置ずれが発生したもの、及び1つのサンプルでも接合時にCu核ボール10がはじけ飛ばされたものを「不良」と判定した。
【0086】
いずれも内周側が外周側より早めに溶融して、内周側と外周側とで体積膨張差が生じてCu核ボール10がはじき飛ばされるような事態は、発生せず、またはんだめっき層16全体がほぼ均一に溶融するから、溶融タイミングのずれによって発生すると思われる核材料の位置ずれは生じていないので、位置ずれなどに伴う電極間の短絡などのおそれはない。よって接合不良は一切発生しない良好な結果が得られた為、「良」と判定した。
【0087】
上述したように、(Sn−5Sb)系はんだ合金である場合、表1及び表2の結果から、3.59質量%(濃度比率71.8%)〜6.20質量%(濃度比率124.0%)の範囲まで許容できることがわかり、3.59質量%(濃度比率71.8%)〜5.94質量%(濃度比率118.8%)の範囲が、より好ましい許容できる範囲であることがわかった。
【実施例2】
【0088】
実施例2は、Ag、Cuを含み、かつ、Sbを含む(Sn−4Ag−1Cu−10Sb)からなる四元のSn系はんだ合金のはんだめっき層16を形成した場合について同様な計測を行った。このときのSbの分布は目標値としては10質量%であるが、許容範囲としては7.91質量%(濃度比率79.1%)〜12.01質量%(濃度比率120.1%)である。
Cu核ボールの作製方法は、実施例1と同じである。
【0089】
使用したCuボールおよびCu核ボールの直径、Ni下地めっき層とはんだめっき層の膜厚等の仕様、および実験条件についてははんだめっき層の組成以外、実施例1と同条件である。
【0090】
その結果を表2試料E〜Hとして示す。この場合には目標値となるSbは10質量%であるので、試料E〜Hに示すように、7.91〜12.01質量%(何れも同一試料に付き10回計測した平均値)と、多少のバラツキ(平均値の最小7.91質量%(濃度比率79.1%)〜最大12.01質量%(濃度比率120.1%)程度はあるものの、許容範囲である。したがって7.91質量%(濃度比率79.1%)〜最大12.01質量%(濃度比率120.1%)に収まっていることが分かる。接合判定は、実施例1と同じく接合不良は一切発生しない良好な結果が得られた為、「良」と判定した。
【0091】
試料E〜Hは、目標とするSbの含有量(目標値)が10(質量%)である。そこで、表2中の試料E〜Hの濃度比率(%)は、以下の(3)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値の平均値/10)×100・・・(3)
【0092】
上記実施例1〜実施例2の結果を表3にまとめた。Sbの濃度比率は71.8%〜120.1質量%である。ここで、上記実施例1〜実施例2で作成したCu核ボールについて真球度を測定したところ、いずれも0.99以上であり、0.98以上を満たした。
【0093】
【表3】
【0094】
表3中の濃度比率(%)は、以下の(4)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値/目標値)×100・・・(4)
【0095】
なお、比較例としてはんだめっき層中のSbの分布が濃度勾配を有するときの実験結果を上述した表2中に示す。使用したCuボール、Cu核ボールの球径、Ni下地めっき層とはんだめっき層の膜厚等、および実験条件については、下記電気めっきの方法以外、実施例1と同条件である。
【比較例1】
【0096】
比較例1では、めっき液は、メタンスルホン酸Sn、有機酸および界面活性剤を含んでいるめっき液で電気めっきを行う。そして、めっき膜厚が目標値の80%の段階で、さらに、Sb(III)化合物のみを追加する。これにより、めっき液中のメタンスルホン酸Snの濃度を減少させつつ、Sb(III)化合物の濃度を増加しながら電気めっき処理を行った。
【0097】
その結果、はんだめっき層全体としてSbの含有量を目標値5質量%となるようなはんだめっき層を形成しても、はんだめっき層中のSb濃度が内側が薄く、外側に向かうにつれ濃くなる濃度勾配(内層0質量%、中層0質量%、外層31.72質量%)となった。
【比較例2】
【0098】
比較例2では、メタンスルホン酸Sn、Sb(III)化合物、有機酸および界面活性剤を含んだめっき液で電気めっきを行う。めっきを開始してから、アノード電極とカソード電極との間に所定の直流電圧が印加されると共に、Cuボールを揺動させながら、電気めっき処理を行った。
【0099】
その結果、はんだめっき層全体としてSbの含有量を目標値5質量%となるようなはんだめっき層を形成しても、はんだめっき層中のSb濃度が内側が高く、外側に向かうにつれ低くなる濃度勾配(内層50.29質量%、中層0質量%、外層0質量%)となった。なお、比較例1、2も、目標とするSbの含有量が5(質量%)であり、濃度比率(%)が(2)式で求められる。
【0100】
結果、比較例1では接合時に位置ずれが発生し、比較例2ではCu核ボールがはじき飛ばされてしまったため、共に「不良」と判定した。ここで、上記比較例1〜比較例2で作成したCu核ボールについて真球度を測定したところ、いずれも0.98を下回った。
【0101】
このようにはんだめっき層16内のSb濃度を変えた場合には、位置ずれやCu核ボール10の吹き飛びなどの現象が発生した。
【0102】
この発明における核表面にはんだめっき層を被覆した材料中に含まれるSbは均質になっている。例えば、BGAのような半導体パッケージ、また、はんだ継手においてははんだバンプとしてこの発明に係る核材料を使用することができる。核としてはボールが好適であり、しかもCuなどの金属球が好適である。
【0103】
なお、この発明における技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。その形状も球体その他の形状(柱状のカラムやシート状など)を含む。
【0104】
例えば上面および底面の径:1〜1000μm,高さ:1〜3000μmであるCu製のカラムの表面へ片側1〜4μmのNi下地めっき層、Fe下地めっき層やCo下地めっき層等を設け、実施例と同じ条件にて(Sn−Sb)系はんだめっき層を被覆したCu核カラムは、はんだめっき層中のSbが71.8%〜120.1%の所定範囲の濃度比率となり、本願実施例のCu核ボールと同じく、接合不良が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
この発明にかかる核材料は、BGAなどのような半導体パッケージの接合材、はんだ継手として利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
10・・・Cu核ボール、12・・・Cuボール、14・・・下地めっき層、16・・・はんだめっき層、16a・・・内層、16b・・・中間層、16c・・・外層、17a・・・内層領域、17b・・・中間層領域、17c・・・外層領域
【要約】      (修正有)
【課題】はんだめっき層中のSbが均質であり、Sb濃度比が所定範囲内となされた核材料の提供。
【解決手段】この核材料は、SnとSbからなる(Sn−Sb)系はんだ合金を核12の表面にめっき被膜した核材料において、はんだめっき層16中のSbは、所定範囲の濃度比率70.0〜125.0%の所定範囲内ではんだめっき層中に分布している核材料。はんだめっき層中のSbは、均質であるので、はんだめっき層中の内周側、外周側を含めてその全領域に亘りSb濃度比率が所定範囲内にあり、このため、内周側が外周側より早めに溶融して、内周側と外周側とで体積膨張差が生じて核材料がはじき飛ばされるような事態は発生しせず、又はんだめっき層全体がほぼ均一に溶融するから、溶融タイミングのずれによって発生すると思われる核材料の位置ずれは生じないので、位置ずれなどに伴う電極間の短絡などのおそれはない核材料。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7